JP4323037B2 - 薄膜半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は薄膜半導体装置に関するものであり、特に、アクティブマトリクス型液晶表示装置のデータドライバ及びゲートドライバ、或いは、画素スイッチング素子等として用いる多結晶シリコン薄膜トランジスタ(TFT)のゲート電極構造及び駆動方法に特徴のある薄膜半導体装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、液晶表示装置は小型・軽量・低消費電力であるため、OA端末やプロジェクター等に使用されたり、或いは、携帯可能性を利用して小型液晶テレビ等に使用されており、特に、高品質液晶表示装置用には、画素毎にスイッチング用のアクティブ素子を設けたアクティブマトリクス型液晶表示装置が用いられている。
【0003】
この様なアクティブマトリクス型液晶表示装置においては、表示部における個々の画素をTFT等のアクティブ素子で動作させることによって、単純マトリクス型液晶表示装置の様な非選択時のクロストークを完全に排除することができ、優れた表示特性を示すことが可能になる。
【0004】
なかでも、TFTを用いたアクティブマトリクス型液晶表示装置は、制御素子として駆動能力が高いので、ドライバ内蔵液晶表示装置や、高解像度・高精細液晶表示装置に適用されているが、特に多結晶シリコンはアモルファスシリコンに比べて移動度が高いので、高速動作に適しており、また、周辺回路を同時に形成することが可能であるので、高級機種のアクティブマトリクス型液晶表示装置用としては多結晶シリコンを用いた薄膜TFTが用いられている。
【0005】
ここで、図8を参照して従来のTFTを説明する。
図8参照
図8は、従来のTFTの概略的断面図であり、ガラス基板61上に下地絶縁膜となるSiN膜62及びSiO2 膜63を介して、PCVD法(プラズマCVD法)を用いて、厚さが、例えば、50nmのα−Si膜を堆積させたのち、エキシマレーザを用いてレーザアニールを施すことによって多結晶Si膜64に変換する。
【0006】
次いで、ドライ・エッチングを施すことによって多結晶Si膜を所定形状の島状領域(図示せず)にエッチングしたのち、再び、PCVD法によってゲート酸化膜65を堆積させ、次いで、スパッタリング法によってAl膜を堆積させたのち、ドライ・エッチングを施すことによってAlゲート電極66を形成する。
【0007】
次いで、Alゲート電極66をマスクとしてP(リン)等のn型不純物をイオン注入することによってn型ソース領域67及びn型ドレイン領域68を形成したのち、全面にSiO2 膜及びSiN膜を順次堆積させて層間絶縁膜69とし、次いで、n型ソース領域67、n型ドレイン領域68、及び、Alゲート電極66に対するコンタクトホールを形成したのち、全面に、Ti,Al,Tiを順次堆積させ、パターニングすることによってTi/Al/Ti構造のソース電極70、ドレイン電極71、及び、ゲート引出電極(図示せず)を形成することによってTFTの基本構成が得られる。
【0008】
しかし、この様な多結晶シリコンTFTにおいては、ゲート絶縁膜の膜厚分布等に起因するしきい値Vthのバラツキが大きく、このようなVthのバラツキをなくすためにはゲート絶縁膜を薄くすれば良いが、そうすると耐圧が低下してオン電流を多くすることができないという問題が発生する。
【0009】
そこで、この様な問題を解決するために、同導電型の多結晶シリコン電極からなるバックゲート電極を設けることによりオン電流を増大させることが提案されているので(必要ならば、特開平5−235351号公報の従来例参照)、ここで、図9を参照して従来の二重ゲート電極TFTを説明する。
【0010】
図9参照
図9は従来の二重ゲート電極TFTの概略的構成図であり、まず、シリコン基板81上に下地酸化膜82を介して不純物ドープ多結晶シリコンからなる下部ゲート電極83を形成したのち、CVD法によって下部ゲート絶縁膜84を堆積させ、次いで、活性層となる多結晶Si薄膜85を形成したのち、左右にn型ソース領域86及びn型ドレイン領域87を形成する。
【0011】
次いで、CVD法によって上部ゲート絶縁膜88、及び、不純物ドープの多結晶シリコンからなる上部ゲート電極89を形成したのち、全面に層間絶縁膜90を設け、次いで、n型ソース領域86及びn型ドレイン領域87に対するコンタクトホールを形成したのち、配線金属膜の堆積とパターニングとを行ってソース電極91及びドレイン電極92を形成することによって二重ゲート電極TFTの基本構成が得られる。
【0012】
しかし、上記のような多結晶シリコンTFTに用いる多結晶シリコン膜は、単結晶シリコン膜に比べて結晶性が劣るため、単結晶シリコンTFTと比較してオフ電流が高いという問題があり、この様なオフ電流の問題を解決するために、LDD(Lightly Doped Drain)構造を採用することによって、TFTのオフ状態の時のチャネル−ドレイン領域(ソース領域)間の電界を緩和し、それによって、リーク電流を低減することが試みられている。
【0013】
さらに、上記の提案においては、上下の多結晶シリコンゲート電極を互いに逆導電型にすることによって、ゲート電圧の高い動作領域におけるオン電流を減少させることなしに、ゲート電圧0V付近でチャネル−ドレイン領域間の電界を緩和してオフ電流を大幅に低減することが試みられている。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来のガラス基板を用いたTFTにおいては、温度の上昇に伴ってガラス基板の熱伝導特性が低下するので、動作環境温度の上昇に伴ってブレークダウンが発生したり、素子が熱破壊されるという問題がある。
【0015】
また、上述の従来の二重ゲート電極TFTはシリコン基板を用いているので、大画面アクティブマトリクス型液晶表示装置に適用することはできないという問題があり、また、シリコン基板をガラス基板に置き換えたとしても、上下のゲート電極は多結晶シリコン膜で形成されているので、熱伝導性に劣り、熱的に弱いという問題は解消されないという問題がある。
【0016】
したがって、本発明は、オン電流を増大させるとともにオフ電流を低減し、且つ、耐熱性を向上させることを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
ここで、図1を参照して本発明における課題を解決するための手段を説明する。
図1参照
(1)本発明は、薄膜半導体装置において、同一の透明絶縁基板1上に、金属膜2、陽極酸化膜3、絶縁膜4、第1の多結晶シリコン膜5、第1のゲート絶縁膜6、及び、第1の金属ゲート電極7を前記透明絶縁基板1側から順次積層した積層構造を有するpチャネル型薄膜トランジスタと、前記絶縁膜4、第2の多結晶シリコン膜、第2のゲート絶縁膜、及び、第2の金属ゲート電極を前記透明絶縁基板1側から順次積層した積層構造を有するnチャネル型薄膜トランジスタとを有し、且つ、前記金属膜2を前記pチャネル型薄膜トランジスタを設ける領域のみに設けたことを特徴とする。
【0018】
この様に、透明絶縁基板1と能動層を構成する第1の多結晶シリコン膜5との間に熱伝導性に優れる金属膜、即ち、金属膜2を設けることによって、この金属膜2がヒートシンクとして機能するので、薄膜半導体装置の動作環境温度を高めることができ、耐熱性が向上し、また、オフ電流IOFFを低減することができる。
【0019】
また、金属膜2上に陽極酸化膜3を設けることによって、第1の多結晶シリコン膜5を形成する際のレーザアニール工程における金属膜2を構成する元素のマイグレーションを抑制し、それによって、ヒロックが発生することを防止することができる。
なお、金属膜2としては、熱伝導性に優れ且つ陽極酸化が可能なAl、Al合金、Ta、Mo−Ta、或いは、Auが望ましい。
【0020】
さらに、金属膜2に電圧を印加することによって、即ち、金属膜2をバックゲート電極とすることによって、薄膜半導体装置のオン電流を増大することができるとともに、キャリアの移動度を高めることができる。
【0022】
特に、金属膜2を設けることによってキャリアの移動度を高めることができるので、pチャネル型薄膜トランジスタにのみ金属膜2を設けることによって正孔の移動度を高め、nチャネル型薄膜トランジスタの動作速度に近づけることによって、相補型薄膜半導体装置の動作速度の整合性を高めることができる。
【0023】
(2)また、本発明は、上記(1)において、金属膜2を、第1のゲート電極7と電気的に接続した電極、或いは、第1のゲート電極7とは独立の電極のいずれかとすることを特徴とする。
【0024】
この様に、金属膜2を第1のゲート電極7と電気的に接続した電極として同電位の電圧を印加することによってオン電流を増大することができ、また、金属膜2を第1のゲート電極7とは独立の電極とし、任意の電圧を印加することによってしきい値電圧Vthを任意に制御することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
ここで、図2を参照して本発明の前提となる参考例1のTFTの製造工程を説明する。 図2(a)参照
まず、TFT基板となる厚さが、例えば、1.1mmの透明のガラス基板11上に、スパッタリング法によって厚さが50〜500nm、例えば、200nmのAl膜12を堆積させたのち、酒石酸エチレングリコール溶液中で陽極酸化を行うことによって、厚さが20〜150nm、例えば、30nmの陽極酸化膜、即ち、Al2O3膜13を形成する。
【0026】
図2(b)参照
以降は、従来と同様に、PCVD法を用いて厚さが、例えば、50nmのSiN膜14、厚さが、例えば、100nmのSiO2 膜15、及び、厚さが、例えば、50nmのα−Si膜16を順次堆積させたのち、XeClエキシマレーザを用いてレーザ光17をオーバラップさせながらスキャンニングしてレーザアニールすることによってα−Si膜16を多結晶化する。
なお、このレーザアニール工程において、Al膜12の表面に陽極酸化によって形成したAl2 O3 膜13がAl膜12からのAlのマイグレーションを抑制されてヒロックの発生が防止されることが、走査型電子顕微鏡像によって確認された。
【0027】
図2(c)参照
次いで、多結晶化させた多結晶Si膜18にドライ・エッチングを施すことによって島状領域にしたのち、島状領域とした多結晶Si膜18上に、PCVD法を用いて厚さが、例えば、120nmのSiO2 膜を堆積させ、次いで、スパッタリング法によって厚さが、例えば、300nmのAl膜を堆積させたのち、通常のフォトエッチング工程を用いてパターニングすることによってゲート酸化膜19及びAlゲート電極20を形成する。
【0028】
次いで、Alゲート電極20をマスクとして多結晶シリコン膜18にP(リン)をイオン注入することによって、n型ソース領域21及びn型ドレイン領域22を形成したのち、全面に、SiO2 膜及びSiN膜を順次堆積させて層間絶縁膜23とし、次いで、n型ソース領域21、n型ドレイン領域22、及び、Alゲート電極20に対するコンタクトホールを形成したのち、全面にTi,Al,Tiを順次堆積させ、パターニングすることによってTi/Al/Ti構造のソース電極24、ドレイン電極25、及び、ゲート引出電極(図示せず)を形成することによってnチャネル型TFTの基本構成が得られる。
【0029】
図3(a)参照
図3(a)は、参考のために示した図8の従来のTFTのId −Vg 特性図であり、ゲート長Lを5μm、ゲート幅Wを3μmとし、ドレイン電圧Vd を1Vにした状態でゲート電圧Vg を変化させた場合のドレイン電流Id を示しており、図から明らかなように、動作環境温度が75℃においてブレークダウンが発生し、100℃においては、素子が熱的に破壊され、ゲート電圧Vg によらず、一定のドレイン電流Id が流れることになる。
【0030】
図3(b)参照
図3(b)は、本発明の前提となる参考例1のTFTのId−Vg特性図であり、ゲート長Lを5μm、ゲート幅Wを3μmとし、ドレイン電圧Vdを1Vにした状態でゲート電圧Vgを変化させた場合のドレイン電流Idを示しており、図から明らかなように、動作環境温度が100℃になっても室温とほぼ同等の特性が得られるとともに、ゲート電圧Vgが負におけるドレイン電流Id、即ち、オフ電流IOFFを図3(a)の従来のTFTに比べて低減することができる。
【0031】
これは、動作環境温度が上昇してガラス基板11の熱伝導率が低下しても、ガラス基板11上に設けたAl膜12がヒートシンクとして機能するので、素子の自己加熱による熱的破壊に対する耐性が向上するためと考えられる。
【0032】
図4(a)参照
図4(a)は、上記の前提となる参考例1のTFTのAl膜12に対しても引出電極を設け、引出電極を介してAl膜12に所定のバックゲート電圧Vbgを印加した場合のVthのバックゲート電圧依存性の説明図であり、この場合も、ドレイン電圧Vdを1Vにした状態でゲート電圧Vgを変化させた場合のドレイン電流Idを示している。
図から明らかなように、バックゲート電圧Vbgとして正電圧を印加した場合には、正電圧の増加とともにVthが高くなり、バックゲート電圧Vbgとして負電圧を印加した場合には、負電圧の増加とともにVthが低くなる。
【0033】
図4(b)参照
図4(b)は、上記の前提となる参考例1のTFTの導電型を反転してpチャネル型TFTとした場合のVthのバックゲート電圧依存性の説明図であり、その他の条件は図4(a)の場合と同様である。
図から明らかなように、バックゲート電圧Vbgとして正電圧を印加した場合には、正電圧の増加とともにVthが低くなり、バックゲート電圧Vbgとして負電圧を印加した場合には、負電圧の増加とともにVthが高くなる。
【0034】
この様に、本発明の前提となる参考例1においては、Al膜12がヒートシンクとして機能するので、耐熱性が高くなり、100℃の動作環境温度においても適正な動作が可能になり、且つ、オフ電流IOFFを低減することができ、同じ動作環境温度においては、Al膜を設けない従来のTFTのオフ電流IOFFの1/10以下にすることができる。
【0035】
また、Al膜12の表面を陽極酸化してAl2 O3 膜13を形成しているので、このAl2 O3 膜13がAl膜12を構成するAlのマイグレーションを抑制するので、レーザアニール工程においてヒロックが発生することを防止することができる。
【0036】
また、図4に示すように、Al膜12に電圧を印加した場合には、バックゲート電極となるので、VthをAl膜12に印加する電圧によって制御することができ、また、キャリアの移動度を高めることができる。
なお、この場合には、各TFT毎にAl膜12を分割する必要がある。
【0037】
次に、図5を参照して、本発明の前提となる参考例2のTFTの製造工程を説明する。
図5(a)参照
まず、TFT基板となる厚さが、例えば、1.1mmの透明のガラス基板11上に、スパッタリング法によって厚さが50〜500nm、例えば、200nmのAl膜を堆積させたのち、ドライ・エッチングを施すことによって所定形状にパターニングしてAlバックゲート電極26を形成し、次いで、酒石酸エチレングリコール溶液中で陽極酸化を行うことによって、Alバックゲート電極26の表面に厚さが20〜150nm、例えば、30nmの陽極酸化膜、即ち、Al2O3膜27を形成する。
【0038】
図5(b)参照
以降は、上記の参考例1と同様に、PCVD法を用いてAl2O3膜27上の厚さが、例えば、50nmのSiN膜14、厚さが、例えば、100nmのSiO2膜15、及び、厚さが、例えば、50nmのα−Si膜16を順次堆積させたのち、XeClエキシマレーザを用いてレーザ光17をオーバラップさせながらスキャンニングしてレーザアニールすることによってα−Si膜16を多結晶化する。
なお、このレーザアニール工程において、Alバックゲート電極26の表面に陽極酸化によって形成したAl2O3膜27がAlのマイグレーションを抑制するので、ヒロックの発生が防止される。
【0039】
図5(c)参照
次いで、多結晶化させた多結晶Si膜にドライ・エッチングを施すことによって島状領域にしたのち、島状領域とした多結晶Si膜18上に、PCVD法を用いて厚さが、例えば、120nmのSiO2 膜を堆積させ、次いで、スパッタリング法によって厚さが、例えば、300nmのAl膜を堆積させたのち、通常のフォトエッチング工程を用いてパターニングすることによってゲート酸化膜19及びAlゲート電極20を形成する。
【0040】
次いで、Alゲート電極20をマスクとして多結晶シリコン膜18にP(リン)をイオン注入することによって、n型ソース領域21及びn型ドレイン領域22を形成したのち、全面に、SiO2 膜及びSiN膜を順次堆積させて層間絶縁膜23とし、次いで、n型ソース領域21、n型ドレイン領域22、Alゲート電極20、及び、Alバックゲート電極26に対するコンタクトホールを形成したのち、全面にTi,Al,Tiを順次堆積させ、パターニングすることによってTi/Al/Ti構造のソース電極24、ドレイン電極25、ゲート引出電極(図示せず)、及び、バックゲート引出電極(図示せず)を形成することによって二重ゲート電極nチャネル型TFTの基本構成が得られる。
【0041】
この本発明の前提となる参考例2においては、ガラス基板11上に設けたAl膜がAlバックゲート電極26としてパターニングされているので、Alバックゲート電極26に起因するS−G間容量、D−G間容量、及び、配線容量等の寄生容量を低減することができ、それによって、動作速度の遅延を抑制することができる。
【0042】
また、この場合も、バックゲート電極は熱伝導性に優れたAlで形成されているので、従来の多結晶Siによってバックゲート電極を形成した二重ゲート電極TFTに比べて耐熱性を向上することができる。
【0043】
次に、以上を前提として、図6及び図7を参照して、本発明の第1の実施の形態の相補型TFTの製造工程を説明する。
図6(a)参照
まず、TFT基板となる厚さが、例えば、1.1mmの透明のガラス基板31上に、スパッタリング法によって厚さが50〜500nm、例えば、200nmのAl膜を堆積させたのち、ドライ・エッチングを施すことによってpチャネル型TFTを形成する領域に対応する所定形状にパターニングしてAlバックゲート電極32を形成し、次いで、酒石酸エチレングリコール溶液中で陽極酸化を行うことによって、Alバックゲート電極32の表面に厚さが20〜150nm、例えば、50nmの陽極酸化膜、即ち、Al2O3膜33を形成する。
この場合、全てのAlバックゲート電極32の表面が陽極酸化されるように、各pチャネル型TFTに対応するAlバックゲート電極32を相互に電気的に接続させておき、陽極酸化ののちに接続部を切断すれば良い。
【0044】
図6(b)参照
次いで、上記の参考例1と同様に、PCVD法を用いてAl2O3膜33上の厚さが、例えば、50nmのSiN膜34、厚さが、例えば、100nmのSiO2膜35、及び、厚さが、例えば、50nmのα−Si膜を順次堆積させたのち、XeClエキシマレーザを用いてレーザ光をオーバラップさせながらスキャンニングしてレーザアニールすることによってα−Si膜を多結晶化し、次いで、多結晶化させた多結晶Si膜にドライ・エッチングを施すことによって多結晶Si島状領域36及び多結晶Si島状領域37を形成する。
なお、この場合にも、レーザアニール工程において、Alバックゲート電極32の表面に陽極酸化によって形成したAl2O3膜33がAlバックゲート電極32を構成するAlのマイグレーションを抑制するので、ヒロックの発生が防止される。
【0045】
図6(c)参照
次いで、PCVD法を用いて全面に、厚さが、例えば、100nmのSiO2 膜を堆積させ、次いで、スパッタリング法によって厚さが、例えば、300nmのAl膜を堆積させたのち、通常のフォトエッチング工程を用いてパターニングすることによってnチャネル型TFTのゲート酸化膜38及びAlゲート電極39と、pチャネル型TFTのゲート酸化膜40及びAlゲート電極41を形成する。
【0046】
次いで、多結晶Si島状領域37をレジストマスク42で被覆したのち、Alゲート電極39をマスクとして多結晶Si島状領域36にBイオン43をイオン注入することによって、p型ソース領域44及びp型ドレイン領域45を形成する。
【0047】
図7(d)参照
次いで、レジストマスク42を除去したのち、多結晶Si島状領域36を新たなレジストマスク46で被覆し、Alゲート電極41をマスクとして多結晶Si島状領域37にPイオン47をイオン注入することによって、n型ソース領域48及びn型ドレイン領域49を形成する。
【0048】
図7(e)参照
次いで、全面に、SiO2 膜及びSiN膜を順次堆積させて層間絶縁膜50とし、次いで、p型ソース領域44、p型ドレイン領域45、n型ソース領域48、n型ドレイン領域49、Alゲート電極39、Alゲート電極41、及び、Alバックゲート電極32に対するコンタクトホールを形成したのち、全面にTi,Al,Tiを順次堆積させ、パターニングすることによってTi/Al/Ti構造のソース電極51、ドレイン電極52、ソース電極53、ドレイン電極54、Alゲート電極39に対するゲート引出電極(図示せず)、Alゲート電極41に対するゲート引出電極(図示せず)、及び、バックゲート引出電極55を形成することによって二重ゲート電極相補型TFTの基本構成が得られる。
【0049】
この本発明の第1の実施の形態においては、pチャネル型TFTに対応する領域にのみAlバックゲート電極32を設けているので、キャリア、即ち、正孔の移動度を向上することができ、それによって、nチャネル型TFTにおける電子の移動度とのバランスを改善することができるので、nチャネル型TFTとpチャネル型TFTの動作速度の整合性を取ることができ、良好な高速動作が可能になる。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明してきたが、本発明は実施の形態に記載した構成及び条件に限られるものではなく、各種の変更が可能である。
例えば、上記の実施の形態においては、ガラス基板上にAl膜を設けているが、Alに限られるものではなく、Al以外に、Al合金、Ta、Mo−Ta、或いは、Au等の金属膜を用いても良いものであり、熱伝導性に優れ、且つ、陽極酸化が可能な金属膜であれば良い。
【0051】
また、上記の実施の形態においては、ゲート電極としてAlを用いているが、バックゲート電極をAl以外に変更した場合には、それに合わせてゲート電極を同じ金属膜に変更しても良いものであり、さらには、互いに別の金属膜を用いても良いものである。
【0052】
また、上記の実施の形態においては、LDD(Lightly Doped Drain)構造を採用していないが、必要に応じてLDD構造を採用しても良いものであり、それによって、TFTのオフ状態の時のチャネル−ドレイン領域(ソース領域)間の電界を緩和して、オフ電流IOFF、即ち、リーク電流をさらに低減することができる。
【0053】
また、上記の実施の形態においては、ガラス基板上に堆積させたAl膜をパターニングしたのち陽極酸化を行っているが、Al膜を陽極酸化したのち、パターニングしても良いものである。
【0054】
また、上記の実施の形態においては、nチャネル型TFTとの動作速度のバランスを取るためにpチャネル型TFTにのみAlバックゲート電極を設けているが、nチャネル型TFT側にもAlバックゲート電極を設けても良いものであり、それによって、相補型TFTの耐熱性を向上することができるとともに、オフ電流IOFFを低減することができる。
【0055】
また、上記の実施の形態においては、pチャネル型TFT全体に対応する大きさのAlバックゲート電極を設けているが、上記の第2の実施の形態のように、ゲート電極に対応する大きさのバックゲート電極としても良いものであり、それによって、寄生容量を低減して動作速度を向上することができる。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、ガラス基板等の透明絶縁基板上に金属膜及び陽極酸化膜を介して多結晶Si膜を設けているので、α−Si膜の多結晶Si化に伴うヒロックの発生を防止することができ、また、耐熱性を向上することができるとともに、リーク電流を少なくすることができ、薄膜半導体装置の動作特性を向上することができる。
【0057】
また、金属膜に電圧を印加することによってしきい値電圧Vthを制御することができるとともに、キャリアの移動度を改善することができ、それによって、高性能で安定した動作特性の薄膜半導体装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の原理的構成の説明図である。
【図2】 本発明の前提となる参考例1のTFTの製造工程の説明図である。
【図3】 本発明の前提となる参考例1のTFTのId−Vg特性図である。
【図4】 本発明の前提となる参考例1のTFTのVthのバックゲート電圧依存性の説明図である。
【図5】 本発明の前提となる参考例2のTFTの製造工程の説明図である。
【図6】 本発明の第1の実施の形態の相補型TFTの途中までの製造工程の説明図である。
【図7】 本発明の第1の実施の形態の相補型TFTの図6以降の製造工程の説明図である。
【図8】従来のTFTの概略的断面図である。
【図9】従来の二重ゲート電極TFTの概略的断面図である。
【符号の説明】
1 透明絶縁基板
2 第1の金属膜
3 陽極酸化膜
4 第1の絶縁膜
5 多結晶シリコン膜
6 第2の絶縁膜
7 第2の金属膜
11 ガラス基板
12 Al層
13 Al2 O3 膜
14 SiN膜
15 SiO2 膜
16 α−Si膜
17 レーザ光
18 多結晶Si膜
19 ゲート酸化膜
20 Alゲート電極
21 n型ソース領域
22 n型ドレイン領域
23 層間絶縁膜
24 ソース電極
25 ドレイン電極
26 Alバックゲート電極
27 Al2 O3 膜
31 ガラス基板
32 Alバックゲート電極
33 Al2 O3 膜
34 SiN膜
35 SiO2 膜
36 多結晶Si島状領域
37 多結晶Si島状領域
38 ゲート酸化膜
39 Alゲート電極
40 ゲート酸化膜
41 Alゲート電極
42 レジストマスク
43 Bイオン
44 p型ソース領域
45 p型ドレイン領域
46 レジストマスク
47 Pイオン
48 n型ソース領域
49 n型ドレイン領域
50 層間絶縁膜
51 ソース電極
52 ドレイン電極
53 ソース電極
54 ドレイン電極
55 バックゲート引出電極
61 ガラス基板
62 SiN膜
63 SiO2 膜
64 多結晶Si膜
65 ゲート酸化膜
66 Alゲート電極
67 n型ソース領域
68 n型ドレイン領域
69 層間絶縁膜
70 ソース電極
71 ドレイン電極
81 シリコン基板
82 下地酸化膜
83 下部ゲート電極
84 下部ゲート絶縁膜
85 多結晶Si薄膜
86 n型ソース領域
87 n型ドレイン領域
88 上部ゲート絶縁膜
89 上部ゲート電極
90 層間絶縁膜
91 ソース電極
92 ドレイン電極
Claims (2)
- 同一の透明絶縁基板上に、金属膜、陽極酸化膜、絶縁膜、第1の多結晶シリコン膜、第1のゲート絶縁膜、及び、第1の金属ゲート電極を前記透明絶縁基板側から順次積層した積層構造を有するpチャネル型薄膜トランジスタと、前記絶縁膜、第2の多結晶シリコン膜、第2のゲート絶縁膜、及び、第2の金属ゲート電極を前記透明絶縁基板側から順次積層した積層構造を有するnチャネル型薄膜トランジスタとを有し、且つ、前記金属膜を前記pチャネル型薄膜トランジスタを設ける領域のみに設けたことを特徴とする薄膜半導体装置。
- 上記金属膜を、上記第1のゲート電極と電気的に接続した電極、或いは、前記第1のゲート電極とは独立の電極のいずれかとすることを特徴とする請求項1に記載の薄膜半導体装置。
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