JP4321039B2 - 固体高分子型燃料電池、固体高分子型燃料電池用の酸化剤ガスセパレータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は細孔を備えた多孔質の酸化剤ガスセパレータをもつタイプの固体高分子型燃料電池、及び、固体高分子型燃料電池に組み込まれる細孔を備えた多孔質の酸化剤ガスセパレータに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保護、エネルギ等の面から固体高分子型燃料電池が着目されている。固体高分子型燃料電池は、一般に、酸化剤及び燃料に基づいて発電を行うものである。固体高分子型燃料電池は、イオン伝導性をもつ電解質膜と、電解質膜の厚み方向の一方側に設けられた燃料極と、電解質膜の厚み方向の他方側に設けられた酸化剤極と、燃料極に燃料を供給する燃料通路を形成する燃料セパレータと、酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路を形成する酸化剤ガスセパレータとを備えている。MEAは、電解質膜と燃料極と酸化剤極とで形成される。一般的には、酸化剤ガスセパレータ及び燃料セパレータは、ガスリークが生じないように緻密体で形成されている。
【0003】
上記した固体高分子型燃料電池によれば、イオン伝導性をもつ電解質膜が過剰乾燥すると、電解質膜のイオン伝導性が低下する。そこで電解質膜の過剰乾燥を抑える必要がある。上記した従来の固体高分子型燃料電池によれば、固体高分子型燃料電池に供給される酸化剤ガス、燃料を加湿することが行われている。
【0004】
また、近年、細孔をもつ多孔質体で酸化剤ガスセパレータ、燃料セパレータを形成した固体高分子型燃料電池も開発されている。このものによれば、液相としての水を細孔に浸透させてMEAに供給すると共に、水を酸化剤ガスセパレータ、燃料セパレータの細孔に浸透させて細孔を封止することができる。
【0005】
上記したように細孔をもつ多孔質体をもつ固体高分子型燃料電池として、特許文献1には、燃料セパレータを多孔質体で形成すると共に、酸化剤ガスセパレータを多孔質体で形成し、更に燃料セパレータの裏面側に通水路を形成すると共に、酸化剤ガスセパレータの裏面側に通水路を形成したものが開示されている。このものによれば、各通水路の水を多孔質の燃料セパレータの細孔を介してMEA側に供給すると同時に、多孔質の酸化剤ガスセパレータの細孔を介して生成水をくみ取ることができる。
【0006】
また特許文献2には、多数の細孔をもつ導電性多孔質体で親水性をもつ燃料セパレータを形成すると共に、燃料セパレータの裏面側には、MEAと背向する位置に、撥水性をもつ導電性多孔質体で形成した加湿水透過体を配置した固体高分子型燃料電池が開示されている。このものによれば、加湿水透過体に保持されている液相としての水は、導電性多孔質体で形成された燃料セパレータの細孔を経てMEA側に移行し、電解質の過剰乾燥を抑える。このものによれば、燃料セパレータは親水性をもつので、燃料セパレータの細孔には液相としての水が浸透し、細孔を封止できる。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−338338号
【特許文献2】
特許番号第2922132号(特開平8−250130号公報)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記した固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤ガス(一般的には、酸素を含む空気)の流れの下流領域では、発電反応に基づいて生成された水が溜まるため、電解質膜の乾燥の不具合は生じにくい。しかしながら酸化剤ガスの流れの上流領域では、発電反応に基づいて生成された水が溜まりにくいため、多孔質体の細孔を介して水を電解質膜に供給しているといえども、酸化剤ガスの流れの上流領域では、運転条件によっては、電解質膜の乾燥の不具合が生じるおそれがある。
【0009】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、酸化剤ガス通路のうち乾燥が生じ易い上流領域における酸化剤ガスを水蒸気によって積極的に加湿させることができ、上流領域において電解質膜の乾燥の不具合を抑制するのに効果的に寄与することができる固体高分子型燃料電池、固体高分子型燃料電池用の酸化剤ガスセパレータを提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
(1)第1発明に固体高分子型燃料電池は、イオン伝導性をもつ電解質膜と、電解質膜の厚み方向の一方側に設けられた燃料極と、電解質膜の厚み方向の他方側に設けられた酸化剤極と、燃料極に燃料を供給する燃料通路を形成する燃料セパレータと、酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路を形成する酸化剤ガスセパレータと、酸化剤ガスセパレータのうち酸化剤極に背向する位置に通水路を形成する通水板とを具備する固体高分子型燃料電池において、
酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有しており、
酸化剤ガスが流れる上流を上流領域とし、酸化剤ガスが流れる下流を下流領域とするとき、
酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域は、酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、
酸化剤ガス通路に対向する側に設けられていると共に下流領域よりも疎水性が強い疎水性領域と、疎水性領域よりも通水路に近い側に設けられた親水性をもつ親水性領域とを有するものである。
【0011】
第1発明に係る固体高分子型燃料電池によれば、酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有する。酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域は、酸化剤ガス通路に対向すると共に下流領域よりも疎水性が強い疎水性領域と、疎水性領域よりも通水路に近い側に設けられた親水性をもつ親水性領域とを有する。酸化剤ガスセパレータのうちの親水性領域は、通水路に対向しており且つ親水性をもつため、通水路に存在する液相である水を親水性領域の細孔に浸透させることができる。
【0012】
酸化剤ガスセパレータのうちの疎水性領域は、疎水性を有する。このため親水性領域に浸透した水は、液相としてよりも、水蒸気として疎水性領域の細孔に浸透しやすい。更に疎水性領域は、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路に対向しているため、酸化剤ガスに触れる頻度が高い。従って疎水性領域の細孔では水蒸気化が進行し易い。このため、酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域の細孔においては、水蒸気化が促進され、水蒸気によって酸化剤ガス通路の酸化剤ガスを加湿させることができる。
【0013】
(2)第2発明に係る固体高分子型燃料電池用の酸化剤ガスセパレータは、固体高分子型燃料電池の酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路を形成すると共に、酸化剤極に背向する位置に通水板とで通水路を形成する酸化剤ガスセパレータにおいて、
酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有しており、
酸化剤ガスが流れる上流を上流領域とし、酸化剤ガスが流れる下流を下流領域とするとき、
酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域は、酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、
酸化剤ガス通路に対向する側に設けられていると共に下流領域よりも疎水性が強い疎水性領域と、疎水性領域よりも通水路に近い側に設けられた親水性をもつ親水性領域とを有するものである。
【0014】
第2発明に係る固体高分子型燃料電池用の酸化剤ガスセパレータによれば、酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有する。酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域は、酸化剤ガス通路に対向する側に設けられていると共に下流領域よりも疎水性が強い疎水性領域と、疎水性領域よりも通水路に近い側に設けられた親水性をもつ親水性領域とを有する。酸化剤ガスセパレータのうちの親水性領域は、通水路に対向する側に設けられていると共に親水性をもつため、通水路に存在する液相である水を親水性領域の細孔に浸透させることができる。
【0015】
酸化剤ガスセパレータのうちの疎水性領域は、疎水性を有する。このため親水性領域に浸透した水は、液相としてよりも、水蒸気として疎水性領域の細孔に浸透しやすい。更に疎水性領域は、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路に対向しているため、酸化剤ガスに触れる頻度が高く、従って疎水性領域の細孔では水蒸気化が進行し易い。このため、酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域の細孔においては、水蒸気化が促進され、水蒸気によって酸化剤ガス通路の酸化剤ガスを加湿させることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
第1発明に固体高分子型燃料電池、第2発明に係る固体高分子型燃料電池用の酸化剤ガスセパレータによれば、次の形態のうちの少なくとも一つを採用することができる。
【0017】
・酸化剤ガスセパレータのうち酸化剤ガス通路に対向する対向面については、上流領域において疎水性が強く設定されており、上流領域から下流領域に向かうにつれて、疎水性が弱くなるように設定されている形態を採用することができる。この場合、疎水性を連続的に変化させても良いし、段階的に変化させても良い。上記したように酸化剤ガスセパレータの上流領域の細孔は、疎水性をもつため、水を液相よりも水蒸気として存在させるのに有利となる。このため、酸化剤ガスセパレータの上流領域においては、水蒸気によって酸化剤ガスを加湿させ易くなる。
【0018】
・酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、酸化剤ガスセパレータのうち通水路に対向する側は、上流領域から下流領域にかけて、親水性を有する形態を採用することができる。通水路では水は主として液相として存在する。通水路に存在する液相としての水は、親水性により、酸化剤ガスセパレータの細孔に浸透し易くなる。この結果、液相としての水は、酸化剤ガスセパレータのうち酸化剤ガス通路に対向する疎水性領域、または、これのできるだけ近くまで到達し易くなる。よって、水による細孔封止を期待できる。更に、酸化剤ガスセパレータの疎水性領域の細孔において水蒸気化が一層促進される。
【0019】
・酸化剤ガスセパレータのうち酸化剤ガス通路に対向する側において、下流領域の少なくとも一部は親水性をもつ形態を採用することができる。この場合、酸化剤ガスセパレータの下流領域のうちの少なくとも一部は親水性をもつため、当該細孔には、水は水蒸気よりも液相として存在し易くなる。この状態において、酸化剤ガス通路の下流領域の圧力が、通水路のうち当該下流領域に背向する通水路部分の圧力よりも高ければ、酸化剤ガスの流れの下流領域に存在している液相としての水を、酸化剤ガスセパレータの親水性をもつ細孔を経て、通水路に移行させるのに寄与させることができる。この結果、通水路の水を補給できるばかりか、下流領域における余剰水の滞留を抑制することができ、フラッディング現象を抑制することができる。更に、フラッディング現象による発電ムラを低減させることができる。フラッディング現象とは、酸化剤ガスや燃料が通る流路を水が閉鎖するため、MEAに対して酸化剤ガスや燃料の供給が制約されることをいう。
【0020】
・酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、酸化剤ガスセパレータは、通水路に対向する第1層と、酸化剤ガス通路に対向する第2層とを有する形態を採用することができる。第1層は上流領域から下流領域にかけて親水性を有しており、第2層において、酸化剤ガスの流れの上流領域では、下流領域よりも疎水性が強く設定されている形態を採用することができる。第1層は親水性をもつため、通水路に存在する液相としての水は、第1層の細孔に浸透し易くなり、第1層の細孔を水で封止させることができる。また、第2層のうち酸化剤ガスの流れの上流領域の細孔は、下流領域よりも相対的に強い疎水性をもつため、水を液相よりも水蒸気として存在させ易くなり、酸化剤ガスセパレータの上流領域の細孔における水蒸気化が促進される。
【0021】
・本発明によれば、好ましくは、下流領域については、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路のうち下流領域の圧力をPa’とし、通水路のうち下流領域に背向する通水路部分の圧力をPw’とすると、Pa’はPw’よりも大きく(Pa’>Pw’)設定されている形態を採用できる。これにより下流領域において酸化剤ガス通路の過剰の生成水を酸化剤ガスセパレータの細孔を介して通水路に移動させることができ、下流領域におけるフラッディング現象の抑制に有効である。
【0022】
・また、上流領域については、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路のうち上流領域の圧力をPaとし、通水路のうち上流領域に背向する通水路部分の圧力をPwとするとき、PaはPwよりも大きく設定されている形態を採用することもできる(Pa>Pw)。この場合、酸化剤ガスセパレータの親水性領域の細孔に存在する水は、液相状態では、酸化剤セパレータの親水性領域の細孔には浸透するものの、疎水性領域の細孔に浸透しにくくなる。このため酸化剤ガスセパレータの上流領域の細孔では、水は液相よりも水蒸気の形態で一層存在し易くなり、酸化剤ガスセパレータの疎水性領域の細孔において水蒸気化が促進される。但し、細孔の毛細管圧により酸化剤ガスセパレータの親水性領域の細孔に水が浸透するため、酸化剤ガスセパレータの細孔のシールが行われる。更に、上流領域については、酸化剤ガスセパレータの細孔の毛細管圧に応じて、Pa<Pwとすることもでき、Pa=Pw、Pa≒Pwとすることもできる。
【0023】
・上記したように酸化剤ガスセパレータは細孔を有する。細孔径としては適宜選択できるが、1〜200μm、1〜100μm、殊に2〜30μm、2〜15μm、更に3〜4μmを例示することができる。酸化剤セパレータの気孔率としては適宜選択できるが、体積比で10〜90%、15〜60%、殊に20〜40%とすることができる。但し細孔径、気孔率は上記した範囲に限定されるものではない。なお、固体高分子型燃料電池としては、車載用、定置用、ポータブル用、家庭用、業務用等を問わない。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の第1実施例について図1〜図7を参照して説明する。図1は本実施例に係る固体高分子型燃料電池の概念図を模式的に示し、電解質膜の厚み方向に沿った断面を模式的に示す。図1に示すように、本実施例に係る固体高分子型燃料電池のMEA1は、プロトン伝導性を有する電解質膜11と、電解質膜11の厚み方向の一方側に設けられアノードとも呼ばれる燃料極12と、電解質膜11の厚み方向の他方側に設けられカソードとも呼ばれる酸化剤極15とを有する。
【0025】
更に、固体高分子型燃料電池は、MEA1の外側に配置され燃料極12にガス状の燃料を供給する溝状の燃料通路21を形成する燃料セパレータ2と、MEA1の外側に配置され酸化剤極15に酸化剤ガス(一般的には空気)を供給する溝状の酸化剤ガス通路31を形成する酸化剤ガスセパレータ3と、酸化剤ガスセパレータ3のうち酸化剤極15に背向する位置に通水路41を形成する通水板4とを有する。
【0026】
図1に示すセル構造が積層されて固体高分子型燃料電池が形成される。図1ではMEA1、燃料セパレータ2、酸化剤ガスセパレータ3等は縦方向に沿って図示されているが、図1はあくまでも概念図であり、水平方向に沿って配置されていても良い。
【0027】
図1において、酸化剤極15は、多孔質性及び導電性をもつカーボン系の第1ガス拡散層16と、触媒を主要成分とする多孔質性及び導電性をもつ第1触媒層17とを有する。燃料極12は、多孔質性及び導電性をもつカーボン系の第2ガス拡散層13と、触媒を主要成分とする多孔質性及び導電性をもつ第2触媒層14とを有する。触媒としては触媒機能を有するものであればよく、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、金、銀等の少なくとも1種を例示できる。
【0028】
燃料セパレータ2は、導電性をもつ材料(カーボン材料)で形成されており、封止用の樹脂を含浸させた緻密体とされている。従って燃料通路21からの燃料リークは抑制される。
【0029】
酸化剤ガスセパレータ3は、これの厚み方向に連通する連通孔となりうる多数の細孔をもつ多孔質体で形成されており、多孔質性及び導電性を有する。酸化剤ガスセパレータ3は、水蒸気を利用した加湿機能を有する。酸化剤ガス通路31において、酸化剤ガスが流れる上流を上流領域91とする。酸化剤ガスが流れる下流を下流領域93とする。
【0030】
本実施例に係る固体高分子型燃料電池は、酸化剤ガスセパレータ3の細孔から放出される水蒸気による加湿機能を利用して、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを積極的に加湿させるものである。図1に示すように、酸化剤ガスセパレータ3は溝状の酸化剤ガス通路31を形成するものであり、厚み方向に複層構造とされており、通水路41に対向する対向面30をもつように配置された薄い第1層32と、酸化剤ガス通路31及び酸化剤極15に対向する対向面34をもつようにように第1層32に積層された薄い第2層33とを有する。従って、酸化剤ガスセパレータ3は、第1層32と第2層33とを一体的に積層することにより形成されている。
【0031】
第1層32は、導電性をもつ材料(カーボン材料等)を基材として形成されており、第1層32の厚み方向に連通する連通孔となる多数の細孔をもつ。第2層33は、導電性をもつ材料(カーボン材料等)を基材として形成されており、第1層32の厚み方向に連通する連通孔となる多数の細孔をもつ。第1層32の全体は親水性処理を施されており、親水性物質を有する親水性領域X1とされている。従って第1層32の表面、第1層32の親水性領域X1の細孔の内壁面は、親水性をもつ。
【0032】
第1層32の細孔の細孔径は、第1層32の上流から下流にかけてほぼ均一範囲とされている。第2層33の細孔の細孔径は、第2層33の上流から下流にかけてほぼ均一範囲とされており、第1層32の細孔の細孔径とほぼ同じ程度とされている。
【0033】
第2層33は、主として疎水性処理を施されており、疎水性物質を有する疎水性領域X2を備えている。従って第2層33の疎水性領域X2の細孔の内壁面は疎水性をもつ。酸化剤ガスセパレータ3の第2層33に係る疎水性領域X2においては、上流領域91では下流領域93よりも疎水性が相対的に強く設定されている。
【0034】
図6は、第2層33における疎水性の強さの変化を模式的に示す。図6の横軸は第2層33の上流端91aから下流端93aまでの位置を示す。図6の縦軸は疎水性の強さを示す。図6の特性線S1〜S3に示すように、酸化剤ガスセパレータ3の第2層33のうち酸化剤極15に対向する対向面34については、上流領域91の疎水性が下流領域93よりも相対的に強く設定されている。換言すれば、酸化剤ガスセパレータ3の第2層33のうち上流領域91の上流端91aの疎水性が最も強く設定されており、上流領域91から下流領域93に向かうにつれて、疎水性が次第に傾斜的にまたは段階的に弱くなるように設定されている。酸化剤ガスセパレータ3のうち第1層32の下流領域93の下流端93a側では、疎水性というよりも、親水性とされている。具体的には、酸化剤ガスセパレータ3の最表面のうち上流領域91の上流端91aから下流領域93の下流端93aまでの面積を100としたとき、一般的には、上流端91aから60〜95%の領域は疎水性とすることができ、下流端93aから40〜5%の領域は親水性とすることができる。親水性領域X1の面積及び強さの大小は、燃料電池の用途によって設定する。
【0035】
あるいは、上流端91aから70〜90%の領域は疎水性とすることができ、下流端93aから30〜10%の領域は親水性とすることができる。あるいは、上流端91aから80〜90%の領域は疎水性とすることができ、下流端93aから20〜10%の領域は親水性とすることができる。但しこれらの数値範囲に限定されるものではない。このように疎水性領域X2の面積割合、親水性領域X1の面積割合は、固体高分子型燃料電池の用途等に応じて、適宜設定することができる。
【0036】
図1に示すように、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガス入口35は、酸化剤ガスを搬送させる搬送源47に繋がれている。燃料通路21の燃料入口25は、ガス状の燃料を搬送させる燃料搬送源28に繋がれている。
【0037】
図1に示すように、通水路41は、燃料電池を冷却する冷却用及び加湿用の水を流すものであり、給水源45に繋がる給水口43と、吐水口44とをもつ。更に給水源45からの水を通水路41に供給する通水駆動部49が設けられている。通水駆動部49は例えばポンプで形成できる。通水駆動部49は、通水路41の給水口43の上流側に設けられている。
【0038】
固体高分子型燃料電池を運転する際には、酸化剤ガス(一般的にはガス状の空気)が搬送源47により酸化剤極15用の酸化剤ガスセパレータ3の溝状の酸化剤ガス通路31に供給される。この酸化剤ガスは、酸化剤ガス通路31から酸化剤極15の第1ガス拡散層16、第1触媒層17に向けて矢印E1方向に流入する。更に、ガス状の燃料(純水素ガスや改質ガス等の水素含有ガス)は、燃料搬送源28により、燃料セパレータ2の溝状の燃料通路21に供給される。ガス状の燃料は、燃料通路21から燃料極12の第2ガス拡散層13及び第2触媒層14に向けて矢印E2方向に流入する。
【0039】
そして、第2触媒層14の触媒作用により、燃料に含まれている水素からプロトン(水素イオン)と電子(e-)とが生成される。生成されたプロトンは、電解質膜11を厚み方向に透過して酸化剤極15に至る。電子は導電経路60を流れ、導電経路60の負荷61で電気的仕事を行った後に、酸化剤極15に至る。そして酸化剤極15では、酸化剤極15の第1触媒層17の触媒作用により、酸化剤極15に供給された酸化剤ガス(一般的に空気)とプロトンと電子とが反応して水が生成される。このような発電反応により熱が発生するが、通水路41の水により固体高分子型燃料電池は冷却される。
【0040】
固体高分子型燃料電池の運転の際には、酸化剤ガス及び水の下流領域において、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路31の下流領域93の酸化剤ガスの圧力(Pa’)は、通水路41のうち下流領域93に背向する下流通水路部分41dの水の圧力(Pw’)よりも大きく設定されている。
【0041】
上記した発電反応に基づいてMEA1では水が生成され、その生成水が下流領域93に移送される等の理由により、酸化剤ガスの上流領域91よりも下流領域93の方が生成水が相対的に多くなる傾向となる。上記したMEA1では、上流領域91では乾燥が生じるおそれがあり、下流領域93では余剰水が滞留するおそれがある。
【0042】
なお固体高分子型燃料電池の酸化剤ガス通路31の酸化剤ガス入口35に供給される酸化剤ガスとしては、加湿されていないものでも良いし、加湿されているものでも良い。固体高分子型燃料電池の燃料通路21に供給される燃料についても、同様に、加湿されていないものでも良いし、加湿されているものでも良い。
【0043】
図2は酸化剤ガスセパレータ3を示す。図2に示すように、酸化剤ガスセパレータ3には、酸化剤ガスが流れる凹状の酸化剤ガス通路31が案内凸部37と共に形成されている。酸化剤ガスセパレータ3の一辺部3a(下辺部)に、酸化剤ガス入口35、酸化剤ガス出口36が隣設して形成されている。酸化剤ガス通路31は、上下方向に延設された仕切壁38で仕切られている。酸化剤ガスセパレータ3のうち一辺部3aに対向する他辺部3b(上辺部)には、中間口39が形成されている。酸化剤ガスは、酸化剤ガス入口35から酸化剤ガス通路31に流入し、上流領域91→中間口39→下流領域93→酸化剤ガス出口36のように、矢印K1方向に流れる。
【0044】
図2に示すように、酸化剤ガス入口35から導入された酸化剤ガスは、中間口39に至るまでは上向きに流れ、中間口39から酸化剤ガス出口36までは下向きに流れる。即ち、酸化剤ガスセパレータ3においては、酸化剤ガスは逆U字形状に流れる。このため図2、図3に示すように、下流領域93では、酸化剤ガスは下向きに流れるため、重力を利用して生成水を酸化剤ガス出口36に排出させ易くなり、下流領域93におけるフラッディング現象を抑制するのに一層寄与することができる。
【0045】
なお、図2に示すように、酸化剤ガス通路31の通路幅は、仕切壁38によって、上流側の通路幅L1と下流側の通路幅L2として仕切られ、且つ、L1>L2に設定されているため、下流側を流れる酸化剤ガスの流速を増加させるのに寄与でき、余剰水を酸化剤ガス出口36に排出させ易くなる効果を期待できる。
【0046】
図2に示すように、酸化剤ガスセパレータ3のうち一辺部3aに隣設する隣設辺部3cには、燃料入口25及び吐水口44が隣設して形成されている。酸化剤ガスセパレータ3のうち他辺部3bに隣設する隣設辺部3dには、燃料出口26及び給水口43が隣設して形成されている。
【0047】
ここで、酸化剤ガスセパレータ3は多孔質であり、細孔をもつため、燃料入口25及び燃料出口26を流れるガス状の燃料が細孔を介して酸化剤ガス通路31に混入するおそれがある。そこで本実施例によれば、図3に示すように、酸化剤ガスセパレータ3のうち燃料入口25及び燃料出口26の付近に緻密体部分3r(図3においてハッチングで示す領域)を設けており、緻密体部分3rにより上記した燃料の混入が抑えられている。緻密体部分3rは、酸化剤ガス入口35,酸化剤ガス出口36,中間口39付近にも設けられてる。緻密体部分3rは樹脂を含浸させて、当該部分3rにおける細孔を封止してガスシール性を高めることにより形成できる。なお必要に応じて、仕切壁38にも樹脂を含浸させて、仕切壁38の細孔を封止させて緻密体とすることができる。
【0048】
図4は燃料セパレータ2を示す。図4に示すように、燃料セパレータ2には、ガス状の燃料が流れる凹状の燃料通路21が案内凸部27と共に形成されている。燃料セパレータ2の一辺部に燃料入口25、吐水口44が形成されている。燃料セパレータ2の他辺部には燃料出口26、給水口43が形成されている。図4において、燃料は燃料入口25→燃料通路21→燃料出口26に向けて矢印K3方向に流れる。なお、図4において、燃料セパレータ2のうち一辺部に対向する他辺部には、中間口39が形成されている。燃料セパレータ2には、酸化剤ガス入口35、酸化剤ガス出口36が形成されている。
【0049】
図4に示すように、燃料通路21において燃料は矢印K3方向に流れる。図4及び図2を比較すれば、燃料が流れる矢印K3方向における上流は、酸化剤ガスの流れの下流領域93に相当するといえる。また、燃料が流れる矢印K3方向における下流は、酸化剤ガス入口35の近傍に配置されており、酸化剤ガスの流れの上流領域91に相当するといえる。この結果本実施例によれば、燃料通路21における燃料の主流れ方向と、酸化剤ガス通路31における酸化剤ガスの主流れ方向とは、基本的には、逆の配向性をもつ。
【0050】
図5は通水部材としての通水板4を示す。図5に示すように、通水板4には、水が流れる凹状の通水路41が案内凸部47と共に形成されている。通水板4の一辺部に燃料入口25、吐水口44が形成されている。通水板4の他辺部には燃料出口26、給水口43が形成されている。図5において、水は給水口43→通水路41→吐水口44に向けて、蛇行しつつ矢印K4方向に流れる。なお、図5において、通水板4のうち一辺部に対向する他辺部には、中間口39が形成されている。通水板4には、酸化剤ガス入口35、酸化剤ガス出口36が形成されている。
【0051】
図5に示すように、通水路41において、冷却兼加湿用の水は矢印K4方向に流れる。図5及び図2を比較すれば、水が流れる矢印K4方向における上流は、酸化剤ガス入口35の近傍に配置されており、酸化剤ガスの流れの上流領域91に相当するといえる。また、水が流れる矢印K4方向における下流は、酸化剤ガス出口36の近傍に配置されており、酸化剤ガスの流れの下流領域93に相当するといえる。この結果本実施例によれば、通水路41における水の主流れ方向と、酸化剤ガス通路31における酸化剤ガスの主流れ方向とは、基本的には、同じ配向性を有する。
【0052】
以上説明したように本実施例によれば、酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91では、下流領域93よりも疎水性が相対的に強く設定されている。このため酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91の細孔の内壁面は、相対的に強い疎水性を有する。よって、酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91の細孔では、水は、液相よりも水蒸気として存在し易くなる。故に、酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91においては、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを水蒸気によって加湿させ易くなる。このように液相としての水よりも、細孔内の水蒸気によって酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを加湿すれば、フラッディング現象を抑えるのに寄与できる。
【0053】
通水路41における水圧が変動すると、MEA1の湿分が変動し、発電ムラが増加し、発電性能に影響を与える。この点本実施例によれば、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを加湿することにより、MEA1に湿分を与える方式が採用されている。このため、MEA1に湿分を与えるにあたり、通水路41における水圧の変動を直接的に受けることを抑制できる利点が得られ、発電ムラの低減に有利である。
【0054】
細孔における疎水性及び親水性が、多孔質体の細孔における液体の蒸気圧に与える影響について、Kelvinの式に基づいて説明を加える。Kelvinの式は数式1であらわされる。ここで、Pは細孔内の液体の平衡蒸気圧、Poはその液体の飽和蒸気圧、σはその液体の表面張力、Mはその液体の分子モル質量、θはその液体の接触角、ρはその液体の密度、Rは気体定数、Tは絶対温度を示す。一般的には、親水性はθが0〜90度以下とされ、疎水性はθが90度越え〜180度とされる。
【0055】
【数1】
【0056】
Kelvinの式によれば、細孔の内壁面が疎水性の場合には、θが90度越え〜180度とされるため、cosθは負の値となり(cosθ<0)、PはPoよりも大きくなる(P>Po)。このため細孔の内壁面が疎水性を有する場合には、細孔における平衡状態の水蒸気分圧は、その温度における飽和蒸気圧よりも大きくなる。従って、酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91の細孔は、疎水性が相対的に強く設定されているため、酸化剤ガスセパレータ3の上流領域91の細孔における水蒸気分圧は、飽和蒸気圧よりも大きくなる。このように細孔における水蒸気分圧が大きいと、酸化剤ガスに対する加湿速度を増加させることができる。このため、酸化剤ガスセパレータ3の疎水性の下流領域93の細孔に存在する水蒸気によって、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを加湿させることができ、ひいてはMEA1の電解質膜11に効果的に水分を与えることができる。
【0057】
図7は、酸化剤ガスセパレータ3の細孔構造をモデル化して示す。本実施例によれば、酸化剤ガスセパレータ3の第1層32の細孔は親水性を有するため、図7に示すように、通水路41に存在する液相としての水を、これの水圧と毛細管圧を利用して、酸化剤ガスセパレータ3において、通水路41に対向する対向面30から矢印A1方向に向けて移動させて、第1層32の細孔に浸透させることができる。この結果、液相としての水が酸化剤ガスセパレータ3のうち通水路41側の細孔に浸透して細孔を封止できるため、酸化剤ガスセパレータ3の細孔のシールを図ることができ、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスが通水路41に洩れることが抑えられ、発電反応を良好に行うことができる。
【0058】
本実施例によれば、前述したように酸化剤ガスセパレータ3の第1層32は親水性を有するため、通水路41に存在する液相としての水を、毛細管圧により酸化剤ガスセパレータ3において矢印A1方向(図7参照)に向けて移動させて、第1層32の細孔に浸透させることができる。この結果、酸化剤ガスセパレータ3の第1層32に隣設する第2層33の細孔、または、第2層33の細孔の近くまで、水を近づけることができる。しかし酸化剤ガスセパレータ3の第2層33のうち上流領域91の細孔では疎水性が強いため、水は液相よりも水蒸気として存在し易くなる。この結果、酸化剤ガスセパレータ3の第2層33のうち上流領域91の細孔では、水蒸気化が促進される。この意味においても、酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91においては、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを水蒸気によって加湿させ易くなる利点が得られる。
【0059】
殊に本実施例によれば、酸化剤ガス通路31のうち上流領域91の酸化剤ガスの湿度は、生成水が滞留しがちの下流領域93の酸化剤ガスの湿度よりも低い。このため、酸化剤ガス通路31の上流領域91の水蒸気分圧よりも、酸化剤ガスセパレータ3の上流領域91の細孔に存在する水蒸気の水蒸気分圧は高くなる。このため、酸化剤ガスセパレータ3の上流領域91の細孔に存在する水蒸気を、酸化剤ガス通路31に矢印A3方向(図7参照)に拡散させることができる。この意味においても、酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91においては、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを水蒸気によって加湿させ易くなる利点が得られる。
【0060】
本実施例によれば、酸化剤ガスセパレータ3のうち酸化剤極15に対向する側の対向面34において、下流領域93の下流端93a側は疎水性が相対的に弱く設定されており、むしろ親水性とされている。このため酸化剤ガスセパレータ3の下流領域93の下流端93a側の細孔に、液相としての水は良好に浸透することができる。
【0061】
そして本実施例によれば、図1において、下流領域93について、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路31の下流領域93の酸化剤ガスの圧力をPa’とし、通水路41のうち下流領域93に背向する下流通水路部分41d(通水路41の下流)の水の圧力をPw’とする。本実施例によれば、圧力Pa’は圧力Pw’よりも大きく設定されている(Pa’>Pw’)。このため、酸化剤ガスセパレータ3のうち下流領域93においては、下流領域93に滞留する余剰の水を、酸化剤ガスセパレータ3の第2層33の細孔、酸化剤ガスセパレータ3の第1層32の細孔を経て、通水路41へと矢印A2方向(図1参照)に押し出すことができる。これにより下流領域93において液相としての水が余剰に滞留するときであっても、下流領域93における余剰水を通水路41に戻すのに寄与することができる。この結果、酸化剤ガスの下流領域93における水の余剰滞留を一層抑制することができ、下流領域93におけるフラッディング現象の抑制に寄与することができる。
【0062】
本実施例によれば、図1において、酸化剤ガス通路31のうち上流領域91の酸化剤ガスの圧力をPaとし、通水路41のうち上流領域91に背向する上流通水路部分41uの水の圧力をPwとすると、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスの圧力Paは水の圧力Pwよりも大きく設定することもできる(Pa>Pw)。この場合でも、上流領域91では、細孔の毛細管圧や親水性により、酸化剤ガスセパレータ3の第1層32の親水性領域X1の細孔に通水路41の水が浸透するため、細孔のシールが行われるものの、液相としての水を酸化剤ガス通路31に一層移動させにくくなる。このため、酸化剤ガスセパレータ3の上流領域91の細孔では、水は、液相よりも水蒸気の形態で一層存在し易くなる。この意味においても、酸化剤ガスセパレータ3の疎水性領域X2の細孔において水蒸気化が一層促進される。このため、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを水蒸気により一層効果的に加湿させることができる。上流領域91では、通水路41の水を細孔の毛細管圧で酸化剤ガスセパレータ3の細孔に浸透させることができる。
【0063】
また本実施例によれば、上流領域91については、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスの圧力Paと水の圧力Pwとの関係としては、疎水性領域X2の疎水性、酸化剤ガスセパレータ3の細孔の毛細管圧にもよるが、Pa=Pw、Pa≒Pwとすることもできる。また、酸化剤ガスセパレータ3の疎水性領域X2の疎水性が充分あり、撥水性が高ければ、通水路41の水が酸化剤ガス通路31に過剰に浸透することが撥水性により抑制されるため、Pa<Pwとすることができる。このように本実施例によれば、圧力Paと水の圧力Pwとの関係としては、Pa=Pw、Pa≒Pw、Pa<Pw、Pa>Pwの一つに必要に応じて設定することができる。
【0064】
上記した説明から理解できるように、本実施例に係る酸化剤ガスセパレータ3は、上流領域91では、酸化剤ガス通路31を水蒸気等で加湿できる加湿機能を有し、下流領域93では、酸化剤ガス通路31の水分を吸収する吸湿機能を有する。
【0065】
酸化剤ガス通路31の上流領域91では、酸化剤ガス通路31の下流領域93よりも湿度が低いため、乾燥が生じるおそれがある。これに対して、燃料通路21の下流領域21dでは、燃料通路21の上流領域21uよりも湿分が多くなりがちである。この点本実施例によれば、図1に示すように、燃料通路21における燃料の主流れ方向(矢印K3方向)と、酸化剤ガス通路31における酸化剤ガスの主流れ方向(矢印K1方向)とは、基本的には逆の配向性をもつ。従って、図1に示すように、電解質膜11、燃料極12、酸化剤極15を膜・接合体であるMEA1としたとき、酸化剤ガスセパレータ3の厚み方向に沿った断面(図1)において、酸化剤ガス通路31の上流領域91は、燃料通路21の下流領域21dとはMEA1を介して対向するように設定されている。このため、燃料通路21の下流領域21dにおける湿分を酸化剤ガス通路31の上流領域91に矢印B1方向(図1参照)に移行させるのに貢献でき、上流領域91における電解質膜11の過剰乾燥を抑制するのに有利であり、発電性能を高めることができる。
【0066】
更に本実施例によれば、図1に示すように、通水路41における水の主流れ方向(矢印K4方向)と、酸化剤ガス通路31における酸化剤ガスの主流れ方向(矢印K1方向)とは、基本的には同じ配向性を有する。従って、図1に示すように、酸化剤ガスセパレータ3の厚み方向に沿った断面(図1)において、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路31の上流領域91と通水路41の上流通水路部分41uとは、酸化剤ガスセパレータ3を介して対向するように設定されている。ここで、通水路41の上流通水路部分41u(上流)の水圧は、圧力損失の影響を受けた下流通水路部分41dの水圧よりも高いため、通水路41の上流通水路部分41uの水を、酸化剤ガスセパレータ3を厚み方向(矢印A1方向)に浸透させて、酸化剤ガス通路31のうち乾燥しがちの上流領域91に水蒸気として供給させるのに有利となる。なお、前述したように必要に応じて、Pw>Paに設定しても、Pw<Paに設定しても、Pw=Pa,Pw≒Paに設定しても良い。
【0067】
(第2実施例)
図8は、第2実施例に係る酸化剤ガスセパレータ3Bの細孔構造の概念をモデル化して示す。第2実施例は第1実施例と基本的には同様の発明であり、同様の作用効果を奏する。但し、図8に示すように、酸化剤ガスセパレータ3Bは一層のみで形成されている。酸化剤ガスセパレータ3Bの厚み方向に沿った断面のうち、通水路41に対向する側が親水性とされており、酸化剤ガスセパレータ3Bのうち、酸化剤ガス通路31に対向する側が疎水性とされている。特に、酸化剤ガスセパレータ3Bのうち、酸化剤ガス通路31に対向する側の上流領域91が、他の箇所よりも相対的に強い疎水性とされている。
【0068】
本実施例によれば、酸化剤ガスセパレータ3Bのうち通水路41に対向する側は、親水性を有するため、通水路41に存在する液相としての水を、毛細管圧により、酸化剤ガスセパレータ3において矢印A1方向に向けて移動させて、酸化剤ガスセパレータ3Bの細孔に浸透させ封止させ易くなる。この結果、液相としての水を利用して酸化剤ガスセパレータ3Bの細孔のシールを図ることができ、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスが通水路41に洩れることが抑えられる。
【0069】
更に本実施例においても、酸化剤ガスセパレータ3Bの上流領域91のうち酸化剤ガス通路31に対向する側では疎水性が強い。このため、酸化剤ガスセパレータ3Bの上流領域91の細孔では、水は液相よりも水蒸気として存在し易くなる。この結果、第1実施例と同様に、酸化剤ガスセパレータ3Bのうち酸化剤ガス通路31に対向する側については、上流領域91の細孔では、水蒸気化が促進される。従って、酸化剤ガスセパレータ3のうち上流領域91においては、水蒸気によって酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを加湿させることができる。なお本実施例においても、下流領域93については、圧力Pa’は圧力Pw’よりも大きく設定されている(Pa’>Pw’)。
【0070】
(第3実施例)
図9〜図11は第3実施例を示す。第3実施例は第1実施例と基本的には同様の構成を有し、同様の作用効果を奏する。本実施例においても、酸化剤ガスセパレータ3Cのうち酸化剤ガス通路31に対向する対向面34において、疎水性が設定されている。図10の特性線S10〜S12に示すように、酸化剤ガスセパレータ3Cのうち上流領域91の上流端91a側では、下流領域93よりも疎水性が相対的に強く設定されている。そして上流端91aから下流領域93の下流端93aに向かうにつれて、疎水性が次第に相対的に弱くなるように設定されている。即ち、酸化剤ガスセパレータ3Cの疎水性領域X2のうち下流領域93では、上流領域91に比較して、疎水性が相対的に弱くなるように設定されている。酸化剤ガスセパレータ3Cのうち酸化剤ガス通路31に対向する対向面34において、下流端93aでも疎水性は設定されている。
【0071】
このため、図9に示す酸化剤ガスセパレータ3Cのうち上流領域91の細孔の内壁面は、相対的に強い疎水性を有する。このため、第1実施例と同様に、酸化剤ガスセパレータ3Cのうち上流領域91の細孔においては、水は液相よりも水蒸気として存在し易くなる。故に、酸化剤ガスセパレータ3Cのうち上流領域91においては、酸化剤ガス通路31の酸化剤ガスを水蒸気によって加湿させることができる。
【0072】
本実施例においても、酸化剤ガスが流れる酸化剤ガス通路31の下流領域93の圧力をPa’とし、通水路41のうち下流領域93に対向する水の圧力をPw’とすると、圧力Pa’は圧力Pw’よりも大きく設定されている(Pa’>Pw’)。このため、酸化剤ガスセパレータ3Cのうち下流領域93においては、下流領域93に滞留する水を、酸化剤ガスセパレータ3Cの第2層33の細孔→第1層32の細孔→通水路41へと、矢印A2方向に押し出して循環させることを期待できる。これにより酸化剤ガス通路31における下流領域93において液相としての水が余剰に滞留するときであっても、その余剰水を通水路41に移行させるのに寄与できる。この結果、酸化剤ガスの下流領域93における水の余剰滞留を抑制することができ、フラッディング現象の抑制に一層寄与することができる。なお、上流領域91については、必要に応じて、Pw>Paに設定しても、Pw<Paに設定しても、Pw=Pa,Pw≒Paに設定しても良い。
【0073】
図11は、第3実施例に係る酸化剤極15に用いられる第1ガス拡散層16Cが親水性及び疎水性を有する形態を模式的に示す。図11に示すように、第1ガス拡散層16Cにおいては、上流領域91は、親水性処理されており、親水性物質を有する親水性領域200(図11においてハッチングで示す領域)を有する。下流領域93は、疎水性処理されており、疎水性物質を有する疎水性領域210を有する。図11に示すように、酸化剤ガスが透過する第1ガス拡散層16Cにおいては、上流領域91が親水性領域200とされているため、水蒸気が第1ガス拡散層16Cの親水性領域200において凝縮し易くなり、その水をMEA1の電解質膜11に供給することができる。
【0074】
また図11に示すように、酸化剤ガスが透過する第1ガス拡散層16Cについては、下流領域93が疎水性領域210とされている。このため、水が余剰となりがちの下流領域93において水がはじかれ、フラッディング現象を抑制するのに寄与できる。
【0075】
(製造例)
上記した多孔質な酸化剤ガスセパレータ3,3B,3Cは次のように形成できる。即ち、カーボン系材料(天然黒鉛、人造黒鉛等)とバインダ(熱硬化性樹脂、例えばフェノール樹脂)と消失可能な造孔材(セルロース系有機質材)とを混合した混合材料を用いる。この混合材料を成形型のキャビティ型面でプレス成形して成形体とし、その成形体を焼成温度(例えば500〜600℃)において焼成し、成形体の造孔材を消失させることにより、多数の細孔をもつ酸化剤ガスセパレータ3,3B,3Cを形成することができる。細孔径としては1〜100μm、2〜30μm、2〜15μm、殊に3〜4μmとすることができるが、これらに限定されるものではない。気孔率としては体積比で10〜90%、15〜60%、殊に20〜40%とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
酸化剤ガスセパレータ3,3B,3Cに疎水性を与える疎水性物質としては、フッ素原子,CF2基,CF3基,CH3基,CH2基等を有するものがあげられ、フッ素、フッ素樹脂(PTFE、FEP、PFA、PVDF等)、フッ化黒鉛、疎水性カーボン、シラン化合物、パラフィン等を例示できる。
【0077】
疎水性処理の代表例としては、酸化剤ガスセパレータ3,3B,3Cの上流領域91では、疎水処理時間を長めとし、上流領域91から下流領域93にかけて疎水処理時間を次第に短くすることができる。これにより上流領域91から下流領域93にかけて疎水性に強さの勾配を与えることができる。
【0078】
例えば次のように行うことができる。図12に示すように、疎水処理を行う処理容器100の処理室101を、仕切部材102により疎水処理室103と隔離室104とに仕切る。仕切部材102としてはゴムシール材等の可撓性材料を採用できる。疎水処理室103には、疎水処理を行う疎水性物質を含む改質ガスが供給される。隔離室104への改質ガスの供給は、仕切部材102により制約される。そして、酸化剤ガスセパレータ3をこれの先端3xから疎水処理室103に向けて矢印W1方向に所定の速度で移動させる。酸化剤ガスセパレータ3の先端3xでは、疎水処理室103で改質ガスにより改質される改質時間が長くなるため、疎水処理が進行して、疎水性物質が多く付着し、酸化剤ガスセパレータ3の疎水性が強めとなる。この結果、酸化剤ガスセパレータ3の上流領域91で疎水性を強くでき、上流領域91から下流領域93に向かうにつれて疎水性を次第に低下させることができ、疎水性の強さの勾配をつけることができる。
【0079】
疎水処理を行う改質ガスとしては、フッ素ガス、あるいは、フッ素ガスと不活性ガス(窒素等)とを主要成分とするガスを用いることができる。疎水処理室103の雰囲気温度としては適宜選択できるが、一般的には、室温から400℃程度とすることができる。
【0080】
親水処理としては、親水性物質を液状媒体(水、アルコール等)に溶解または分散させた溶液を用い、その溶液と酸化剤ガスセパレータ3とを接触させることにより行い得る。親水性物質としては、過酸化水素水、二酸化珪素の粉末、酸化アルミニウムの粉末等を例示することができ、その表面に水酸基やカルボキシル基等の親水性の官能基を多量に含むものを例示することができる。更に、吸水性の樹脂である、デンプン・アクリル酸共重合体、ポリアクリル酸塩、ポリビニルアルコール等を用いることもできる。また、イオン交換樹脂、吸水性多糖類を親水性物質として例示できる。いずれもその構造内に、水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基、アミノ基、スルホ基等の親水性の官能基のうちの少なくとも1種を有するものを例示することができる。親水性の強さに勾配をつけるときには、親水性物質を含む溶液に酸化剤ガスセパレータ3をこれの先端3xから所定の速度で浸漬させる。酸化剤ガスセパレータ3の先端3xでは、親水性物質を含む溶液に触れる時間が長くなるため、親水処理が進行して、酸化剤ガスセパレータ3の親水性が強めとなる。
【0081】
(その他)
上記した実施例によれば、燃料極セパレータ2は緻密体とされているが、これに限らず、細孔をもつ多孔質体とすることもでき、その細孔を水で封止してシールすることができる。第1触媒層17及び第2触媒層14は電解質膜11の表裏に直接的に被覆されていても良い。上記した実施例によれば、酸化剤ガスは逆U字形状に流れるが、これに限らず、U字形状に流れても良いし、横U字形状に流れても良い。その他、本発明は上記した実施例のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。上記した記載から次の技術的思想を把握できる。
(付記項1)各請求項において、酸化剤ガスセパレータは、上流領域では、酸化剤ガス通路を加湿できる加湿機能を有し、下流領域では、酸化剤ガス通路の水分を吸収する吸湿機能を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池。通水路における水の循環に寄与できる。
(付記項2)イオン伝導性をもつ電解質膜の厚み方向の他方側に設けられ酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路を形成すると共に、酸化剤極に背向する位置に通水路を形成する酸化剤ガスセパレータにおいて、
酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有しており、酸化剤ガスが流れる上流を上流領域とし、酸化剤ガスが流れる下流を下流領域とするとき、酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域は、酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、
酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、酸化剤ガスセパレータは、通水路に対向する第1層と、酸化剤ガス通路に対向する第2層とを有しており、第1層は、上流領域から下流領域にかけて親水性を有しており、第2層において上流領域では下流領域よりも疎水性が強く設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池用の酸化剤ガスセパレータ。
(付記項3)イオン伝導性をもつ電解質膜と、電解質膜の厚み方向の一方側に設けられた燃料極と、電解質膜の厚み方向の他方側に設けられた酸化剤極と、燃料極に燃料を供給する燃料通路を形成する燃料セパレータと、酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路を形成する酸化剤ガスセパレータと、酸化剤ガスセパレータのうち酸化剤極に背向する位置に通水路を形成する通水板とを具備する固体高分子型燃料電池において、酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有しており、酸化剤ガスが流れる上流を上流領域とし、酸化剤ガスが流れる下流を下流領域とするとき、
酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域は、酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、酸化剤ガス通路に対向すると共に下流領域よりも疎水性が強い疎水性領域をもつことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
【0082】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、酸化剤ガスセパレータのうち上流領域は、相対的に強い疎水性を有する。このため、酸化剤ガスセパレータのうち上流領域の細孔には、液相としての水が浸透しにくくなる。よって、酸化剤ガスセパレータのうち上流領域の細孔において、水は、液相よりも水蒸気として存在し易くなる。故に、酸化剤ガスセパレータのうち上流領域においては、酸化剤ガス通路の酸化剤ガスを水蒸気によって加湿させ易くなり、酸化剤ガスの流れの上流領域において電解質膜の乾燥の不具合を抑制できる。このように水蒸気によって酸化剤ガスを加湿すれば、液相の余剰水に起因するフラッディング現象を抑制するのに寄与することができる。更に酸化剤ガス通路の酸化剤ガスの加湿にあたり、通水路における水圧の変動を直接的に受けることを抑制できる利点が得られる。
【0083】
殊に、上記したKelvinの式に基づけば、細孔の内壁面が疎水性の場合には、細孔における水蒸気分圧は飽和蒸気圧よりも相対的に大きくなる傾向が得られる。従って、故に、酸化剤ガスセパレータの上流領域の細孔における水蒸気分圧は相対的に大きくなり、細孔における水蒸気分圧が大きいと、酸化剤ガス通路の酸化剤ガスに対する加湿速度を増加させることができる。このため酸化剤ガス通路の酸化剤ガスを効果的に加湿させることができる。
【0084】
更に酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、酸化剤ガスセパレータの通水路側は親水性を有するため、通水路に存在する液相としての水を、毛細管圧により、酸化剤ガスセパレータの細孔に浸透させることができる。この結果、液相としての水を利用して、酸化剤ガスセパレータの細孔のシールを図ることができ、酸化剤ガス通路の上流領域の酸化剤ガスが通水路に洩れることが抑えられる。
【0085】
更にまた、酸化剤ガスセパレータの通水路側は親水性を有するため、通水路に存在する液相としての水を、毛細管圧により、酸化剤ガスセパレータの細孔に浸透させ、酸化剤ガスセパレータのうち酸化剤ガス通路のできるだけ近くまで近づけさせることができる。この結果、酸化剤ガスセパレータの上流領域の細孔では、水蒸気化が促進される。この意味においても、酸化剤ガスセパレータのうち上流領域においては、酸化剤ガスを水蒸気によって加湿させ易くなる利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例に係り、固体高分子型燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図2】酸化剤ガスセパレータの正面図である。
【図3】シール用の緻密体部分を有する酸化剤ガスセパレータの正面図である。
【図4】燃料セパレータの正面図である。
【図5】通水板の正面図である。
【図6】酸化剤ガスセパレータにおける疎水性の強さの変化を示すグラフである。
【図7】酸化剤ガスセパレータの断面における細孔構造をモデル化して示す断面図である。
【図8】第2実施例に係り、酸化剤ガスセパレータの断面における細孔構造をモデル化して示す断面図である。
【図9】第3実施例に係り、固体高分子型燃料電池の概念を模式的に示す断面図である。
【図10】第3実施例に係り、酸化剤ガスセパレータにおける疎水性の強さの変化を示すグラフである。
【図11】第3実施例に係り、酸化剤極に用いられる第1ガス拡散層が親水性及び疎水性を有する形態を模式的に示す正面図である。
【図12】酸化剤ガスセパレータに疎水性処理を行う工程を模式的に示す斜視図である。
【符号の説明】
図中、1はMEA、11は電解質膜、12は燃料極、15は酸化剤極、2は燃料セパレータ、21は燃料通路、3は酸化剤ガスセパレータ、31は酸化剤ガス通路、32は第1層、33は第2層、4は通水板、41は通水路、43は給水口、44は吐水口、49は通水駆動部、91は上流領域、91aは上流端、93は下流領域、93aは下流端、X1は親水性領域、X2は疎水性領域を示す。
Claims (7)
- イオン伝導性をもつ電解質膜と、前記電解質膜の厚み方向の一方側に設けられた燃料極と、前記電解質膜の厚み方向の他方側に設けられた酸化剤極と、前記燃料極に燃料を供給する燃料通路を形成する燃料セパレータと、前記酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路を形成する酸化剤ガスセパレータと、前記酸化剤ガスセパレータのうち前記酸化剤極に背向する位置に通水路を形成する通水板とを具備する固体高分子型燃料電池において、
前記酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有しており、
酸化剤ガスが流れる上流を上流領域とし、酸化剤ガスが流れる下流を下流領域とするとき、
前記酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも前記上流領域は、前記酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、
前記酸化剤ガス通路に対向する側に設けられていると共に前記下流領域よりも疎水性が強い疎水性領域と、前記疎水性領域よりも前記通水路に近い側に設けられた親水性をもつ親水性領域とを有することを特徴とする固体高分子型燃料電池。 - 請求項1において、前記酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、前記酸化剤ガスセパレータのうち前記酸化剤ガス通路に対向する対向面において、前記上流領域では前記下流領域よりも疎水性が強く設定されていると共に、前記上流領域から前記下流領域に向かうにつれて疎水性が弱くなるように設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
- 請求項1または請求項2において、前記酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、前記酸化剤ガスセパレータのうち前記通水路に対向する側は、前記上流領域から前記下流領域にかけて、親水性を有することを特徴とする固体高分子型燃料電池。
- 請求項1において、前記酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、前記酸化剤ガスセパレータのうち酸化剤ガス通路に対向する側において、前記下流領域のうちの少なくとも一部は親水性をもつことを特徴とする固体高分子型燃料電池。
- 請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、前記酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、前記酸化剤ガスセパレータは、前記通水路に対向する第1層と、前記酸化剤ガス通路に対向する第2層とを有しており、
前記第1層は前記上流領域から前記下流領域にかけて親水性を有しており、前記第2層において前記上流領域では前記下流領域よりも疎水性が強く設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。 - 請求項1〜請求項5のうちのいずれか一項において、酸化剤ガスが流れる前記酸化剤ガス通路のうち前記下流領域の圧力は、前記通水路のうち前記下流領域に背向する通水路部分の圧力よりも大きく設定されていることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
- 固体高分子型燃料電池の酸化剤極に酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス通路を形成すると共に、前記酸化剤極に背向する位置に通水板とで通水路を形成する酸化剤ガスセパレータにおいて、
前記酸化剤ガスセパレータは多数の細孔をもつ多孔質性を有しており、
酸化剤ガスが流れる上流を上流領域とし、酸化剤ガスが流れる下流を下流領域とするとき、
前記酸化剤ガスセパレータのうち少なくとも上流領域は、前記酸化剤ガスセパレータの厚み方向に沿った断面において、
前記酸化剤ガス通路に対向する側に設けられていると共に前記下流領域よりも疎水性が強い疎水性領域と、前記疎水性領域よりも前記通水路に近い側に設けられた親水性をもつ親水性領域とを有することを特徴とする固体高分子型燃料電池用の酸化剤ガスセパレータ。
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