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JP4303499B2 - 化学剤の探知装置 - Google Patents

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JP4303499B2
JP4303499B2 JP2003080380A JP2003080380A JP4303499B2 JP 4303499 B2 JP4303499 B2 JP 4303499B2 JP 2003080380 A JP2003080380 A JP 2003080380A JP 2003080380 A JP2003080380 A JP 2003080380A JP 4303499 B2 JP4303499 B2 JP 4303499B2
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真純 深野
繁 本城
久志 永野
安章 高田
康雄 瀬戸
輝雄 糸井
一光 井浦
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株式会社日立ハイテクコントロールシステムズ
警察庁科学警察研究所長
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、化学剤の探知装置に係り、特に、質量分析計、大気圧化学イオン化(APCI)を用いた2,2'-Dichloroethyl sulphide(以下、硫黄マスタードという)、2-Chlorovinyldichloroarsine(以下、ルイサイト1という)の探知に用いて好適な化学剤の探知装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、サリン事件をはじめとした化学テロ対策のために、化学剤を探知するための探知装置が求められている。化学剤の探知は、化学剤の分析を行うことによる方法が一般的であり、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)による検査が主流となっている。そして、通常、試料から化学剤そのものが検出されることは少なく、残留性の高い分解物を検出することにより化学剤の存在を証明している。
【0003】
また、化学剤の分析を行う他の分析装置の従来技術として、揮発性または不揮発性化合物の分離分析を行う液体クロマトグラフィー質量分析法(LC/MS)が知られている。
【0004】
図14は従来技術による液体クロマトグラフィー質量分析法を用いる分析装置の概略構成を説明する図であり、以下、従来技術による分析装置について説明する。図14において、101は液体クロマトグラフ(LC)、102は連結チューブ、103はイオン源、104はイオン源電源、105、109は信号線、106は質量分析部、107は真空系、108はイオン検出器、110はデータ処理部である。
【0005】
従来技術による液体クロマトグラフィー質量分析法を用いる分析装置は、図14に示すように、試料溶液を成分毎に分離する液体クロマトグラフ(LC)101と、イオン源電源104により制御され試料分子に由来するイオンを生成するイオン源103と、真空系107により真空排気されていて、生成されたイオンの質量を分析する質量分析部106と、分析されたイオンを検出するイオン検出器108と、データを処理するデータ処理部110とにより構成される。そして、イオン源103、質量分析部106、イオン検出器108を含む部分が質量分析装置(MS)を構成している。
【0006】
前述において、液体クロマトグラフ(LC)101で成分毎に分離された試料溶液は、連結チューブ102を経て大気圧下で動作するイオン源103に導かれる。イオン源103は、イオン源電源104により信号線105を通して制御され、試料溶液中の試料分子に由来するイオンを生成する。続いて、生成されたイオンは、質量分析部106に導入され、質量分析される。質量分析部106は、真空系107により真空排気されている。質量分析されたイオンは、イオン検出器108により検出される。検出された信号は、信号線109を経てデータ処理部110に送られ、質量スペクトルやクロマトグラフ等の分析データを与える。
【0007】
前述のように構成される分析装置の質量分析装置は、真空中でイオンを扱う必要があるため、液体クロマトグラフ(LC)101との間にインタフェース手段を必要とする。すなわち、LCが大気圧下で水や有機溶媒を大量に取り扱う装置であるのに対して、MSは、高真空下でイオンを取り扱う装置である。このため、両者を直接結合することは困難とされてきた。
【0008】
また、IMSと呼ばれる方式は、主に、放射線源による試料のイオン化と組み合わせて電界中の移動度を測定する方式であり、現場探知として主流であり、欧州、米国での製品群も多い。そして、IMS方式は、GC/MS、LC/MSに比べて小型化できることからミリタリー仕様含めて多用されている。但し、IMSは、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)による試料の判別を行っていないため、検知の表示が大まかで警報が鳴れば兵士は防護マスクを着用するように探知機携帯を意義付けている。
【0009】
なお、IMS方式に関する従来技術として、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0010】
【特許文献1】
米国特許第6225623B1号明細書
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前述した従来技術は、次のような問題点を有している。電子イオン化(EI)の技術は、探知物その物に強いエネルギーを与えるために探知物を分解し易い。GC/MSによる探知装置は、探知物の分子量以上のイオンのモニタが困難であり、試料の特定が難しい。検知物の分離のためのGCやLC処理は、探知時間を長くさせる。
【0012】
IMS方式は、化学剤の種類を特定できるものではなく、広範囲な化合物に反応するために、検知試料の判定が困難で誤報率が高いという問題点を有している。前述したように、IMS方式は、試料の特定が困難で、誤報率が高いのが現状である。
【0013】
本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点を解決し、化学剤を探知するスピード、誤報率の低減、化学剤の種類の絞込み、無人の連続モニタリング装置としての仕様を備えた硫黄マスタード、ルイサイト1の探知に用いて好適な化学剤の探知装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば前記目的は、検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideに由来するm/z(イオンの質量数/イオンの価数)を有するイオンのイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成され、
また、検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideに由来するm/z(イオンの質量数/イオンの価数)を有するイオンのイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成される。
【0015】
また、前記目的は、検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記イオン源は、試料導入部からの検査試料がコロナ放電を生起する針電極に向かって流れる逆流型の大気圧化学イオン化(APCI)を用いて構成され、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成される。
【0016】
また、前記目的は、検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記イオン源は、前記試料導入部からの検査試料がコロナ放電を生起する針電極に向かって流れる逆流型の大気圧化学イオン化(APCI)を用いて構成され、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成される。
【0017】
さらに、前記目的は、検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記質量分析部の差動排気部の両側に設けられる細孔付電極相互間に印加するドリフト電圧が50V〜80Vに設定されており、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成される。
【0018】
また、前記目的は、検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記質量分析部の差動排気部の両側に設けられる細孔付電極相互間に印加するドリフト電圧が50V〜80Vに設定されており、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成される。
【0019】
また、前記目的は、検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記検出しようとする化学剤は、2,2'− Dichloroethyl sulphide であり、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成される。
【0020】
また、前記目的は、検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、前記検出しようとする化学剤は、2,2'−Dichloroethyl sulphideであり、前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することにより達成される。
【0021】
前述した手段を備える本発明は、化学剤の絞込みが可能になり、誤報率を低減させることが可能となり、特に、硫黄マスタード、ルイサイト1の探知に適用して好適である。そして、試料導入部からの検査試料がコロナ放電発生部と質量分析部との間に導入され、質量分析部とは反対のコロナ放電発生部に向かって流れる逆流型の大気圧化学イオン化(APCI)を用いた化学剤探知は、本発明に特有なものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による化学剤の探知装置の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の一実施形態による化学剤の探知装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、1は試料導入部、2はイオン化部、3は質量分析部、4は制御部、5は吸入ポンプ、6は計測処理用計算機、7は真空ポンプ、16は試料である。
【0024】
本発明の実施形態による化学剤の探知装置は、図1に示すように、試料導入部1、イオン源であるイオン化部2、質量分析部3、制御部4、吸入ポンプ5、計測処理用計算機6、真空ポンプ7を備えて構成される。このように構成される化学剤の探知装置において、試料導入部1に挿入された危険物の微粒子が付着した試料16は、試料導入部1に設けられる図示しない加熱機構により加熱されて気体になる。気体となった試料は、吸入ポンプ5により引かれる図に太線で示す大気の流れ81によってイオン化部2に導かれる。吸入ポンプ5は、吸入した大気を排気する機能と、質量フローコントローラにより吸入量を0リットル〜2リットル/分の間で可変にできる機能を持つ。
【0025】
イオン源であるイオン化部2に導入された検査試料は、後述するコロナ放電用針電極先端のコロナ放電領域に送られ、針電極に印加された正の高電圧(2kV〜5kV程度)により、対象成分に応じて正イオン化される。そして、正にイオン化された成分のみが、イオン化部2から質量分析部3にかけて印加された電界に導かれて、イオン化部2に設けられた第1細孔を通過し、質量分析部3に誘導される。このとき、イオン化部2内の第1細孔を通過するイオンや分子以外の余剰物質は、吸入ポンプ5によりイオン化部2の外部に排出され、その後装置外部に排気される。また、試料導入部1及びイオン化部2の間の試料導入経路とイオン化部2とを高温に保つことにより、導入経路内壁やイオン化部2内部への試料の吸着を防止することができる。
【0026】
質量分析部3に誘導されたイオンは、真空ポンプ7によって減圧された質量分析部3内の差動排気部を通り過ぎ、静電レンズ系によって収束されて、質量分析計によりその質量が分析される。真空ポンプ7は、質量分析計の入ったチャンバー内を高真空状態に保つ機能も持つ。質量分析計により取り出されたイオンは、質量分析部3内の2次電子増倍管でイオンが電子に変換され、得られた電流信号が増幅アンプにより増幅された後、計測処理用計算機6に送られる。
【0027】
計測処理用計算機6は、質量分析部3から入力された信号を処理し、質量数/電荷(m/z)とイオン強度の関係(質量スペクトル)や、あるm/zのイオン強度の時間変化(質量クロマトグラム)等を表示する。最終的な表示は、前述の質量スペクトルや質量クロマトグラムではなく、さらに簡略化したものであってもよい。すなわち、本発明の実施形態による化学剤の探知装置を危険物検知装置として使用しているような場合には、問題となる化学剤が検出されたか否かを表示するだけでもよい。
【0028】
制御部4は、探知装置を構成する各機能部のON/OFF制御や温度/電圧/真空圧力の設定、ステータスモニタ等を行う。これらの接続を図1に細線で示す制御信号、データ82で示している。
【0029】
前述したように、本発明の実施形態によれば、試料導入部1に挿入された試料16に付着した危険物の微粒子を、質量分析部3で分析することが可能となる。
【0030】
図2は本発明の実施形態による探知装置の外観を示す斜視図である。図2に示すように、探知装置は、濾紙挿入口20を有する濾紙加熱部21、分析部22、表示部23より構成され、装置下部に配置される車輪により移動可能である。
【0031】
通常、化学剤を作成したり、化学剤を運搬する過程において、極微量の化学剤か、その化学剤を取り扱った人物の手や皮膚、服等に付着する。この人物がカバン等の身の回りの物を扱うと、これらの身の回りの物にも化学剤が付着することになる。
【0032】
そこで、本発明の実施形態は、布や濾紙の様な清浄で柔らかい素材(以下では試験紙と記載するが、材質は必ずしも紙でなくてもよい)で、検査対象(探知対象物)であるカバンなどの表面などを拭い取り、その試験紙に付着した化学剤を分析するようにしている。すなわち、化学剤が付着した試験紙を濾紙挿入口20を介して濾紙加熱部21に挿入する。濾紙加熱部21で試験紙が加熱されるので、試験紙に付着していた化学物質は気化し、分析部22により分析される。分析部22には、図1により説明した構成の探知装置が収納されると共に、化学剤由来の信号に関わる情報が登録されたデータベースが設けられている。そして、分析された結果と、データベースに登録された情報とから、化学剤に特有の所定の信号が検出されたと認められた場合、計測処理用計算機6は、表示部23に警報を表示する。
【0033】
図3は図2に示す濾紙加熱部(オーブン)21の構成例を示す断面図である。図3において、24は濾紙、25はトレー、25’は取っ手、26はトレーホルダー、27はセンサー、28はハロゲンランプ、29は空気取り入れ管、30はフィルタ、31は試料導入管、32はカバーである。
【0034】
濾紙加熱部(オーブン)21は、トレーホルダ26、トレーホルダ26に設けられた熱源としてのハロゲンランプ28、濾紙24が載置されるトレー25により構成される。このような濾紙加熱部21において、まず、検査対象物を拭き取った試験紙である濾紙24が、スライド式のトレー25に置かれる。濾紙24の置かれたトレー25は、トレーホルダ26内に挿入される。トレー25が所定の位置に押し込まれたことをセンサー27が感知すると、トレーホルダ26の上部に設けられたハロゲンランプ28が点灯される。ハロゲンランプ28からの熱線により、濾紙24は加熱され、濾紙24に付着していた物質が気化する。加熱温度は100℃以上とすることが望ましい。濾紙24から発生した試料は、空気取り入れ管29から取り込まれた空気と一緒に、試料導入管31を介して分析部22に送られる。
【0035】
なお、空気取り入れ管29には、ホコリなどを除去するためのフィルタ30を設けるとよく、また、濾紙加熱部21は高温になるため、安全のため断熱を施したカバー32や取っ手25’を設けるとよい。また、試料導入部1として、外部から吸入した検査試料(探知物)を直接イオン化部2に導入するものであってもよい。
【0036】
図4は本発明の実施形態による探知装置のイオン化部、質量分析部の構成例を示すブロック図である。図4において、33は針電極、34は対向電極、35は開口部、36は吸入ポンプ、37a、37bは細孔付電極、38aは第1のイオン導入細孔、38bは第2のイオン導入細孔、39は差動排気部、40a、40bは排気系、41は真空部、42a、42bはエンドキャップ電極、43はイオン収束レンズ、44はリング電極、45は石英リング、46はガス供給器、47はガス導入管、48はゲート電極、49は変換電極、50はシンチレータ、51はフォトマルチプライヤ、52はデータ処理装置である。
【0037】
図4において、イオン化部2には、針電極33が配置され、対向電極34との間に高電圧が印加される。これにより、針電極33の先端付近にコロナ放電が発生し、まず、窒素、酸素、水蒸気等がイオン化される。これらのイオンは、一次イオンと呼ばれる。一次イオンは、電界により対向電極34側に移動する。試料導入管31を介して対向電極34と細孔付電極37aとの間に供給される試料導入部からの検査試料は、吸入ポンプ36により、イオン化部2の対向電極34に設けられた開口部35を介して針電極33側に流れ、一次イオンと反応することによりイオン化される。
【0038】
対向電極34と細孔付電極37aとの間には1kV程度の電位差があり、イオンは、細孔付電極37a方向に移動して、細孔38aを介して差動排気部39に取り込まれる。差動排気部39では断熱膨張が起こり、イオンに溶媒分子等が付着する、いわゆるクラスタリングが起きる。クラスタリングを軽減するため、細孔付電極37a、37bをヒーターなどで加熱することが望ましい。
【0039】
図4に示した構造のイオン化部2を用いると、コロナ放電で生成された一次イオンは、針電極33と対向電極34との間の電位差で対向電極34の方向に移動し、さらに、開口部35を通って細孔付電極37aの方向へと移動する。試料導入部からの検査試料は、対向電極34と細孔付電極37aとの間に供給されるので、一次イオンと検査試料との反応が起きる。コロナ放電で生じた中性分子等は、吸入ポンプ36により対向電極34から針電極33の方向に流れるので、コロナ放電部分より除去され、さらに、一次イオンと試料とのイオン化反応が起きる領域には流れにくい。このように、コロナ放電による一次イオンの生成領域と、一次イオン及び試料のイオン化反応領域とを切り分け、イオン化領域にコロナ放電で生じたラジカルな中性分子が流入することを防止することにより、イオン化領域での試料の分解を低減することができる。
【0040】
前述したように、本発明の実施形態は、大気中のコロナ放電を利用して一次イオンを生成し、この一次イオンと検査試料との化学反応を利用して検査試料をイオン化している。この方法は、大気圧化学イオン化法と呼ばれる。硫黄マスタードの場合、針電極33に正の高電圧を印加して正イオンを生成する正イオン化モードを使用する。この場合、一次イオンは、水分子のイオン〔(H2O)+〕である場合が多い。代表的な正イオン化反応の式は、Mを検知対象の分子、Hを水素原子とした場合、
M+(H2O)+ →M++(H2O) 、 M++H →(M+H)+
と表すことができる。
【0041】
ルイサイト1の場合、針電極33に負の高電圧を印加して負イオンを生成する負イオン化モードを使用する。この場合、一次イオンは、酸素分子のイオン 〔(O2)-〕である場合が多い。代表的な負イオン化反応を以下に示す。以下の式において、Mはガス中の分子を表す。
【0042】
M+(O2)- → (M)-+O2
と表すことができる。
【0043】
前述のようにして生成されたイオンは、細孔付電極37aに開口する第1のイオン導入細孔38a、排気系40aにより排気された差動排気部39、細孔付電極37bに開口する第2のイオン導入細孔38bを介して、排気系40bにより排気された真空部41に導入される。細孔付電極37aと37bとの間には、ドリフト電圧と呼ばれる電圧が印加される。このドリフト電圧は、差動排気部39に取り込まれたイオンを第2のイオン導入細孔38bの方向にドリフトさせることにより、イオン導入細孔38bのイオン透過率を向上させる効果と、差動排気部39に残留しているガス分子とイオンとを衝突させることにより、イオンに付着している水などの溶媒分子を脱離させる効果がある。細孔付電極37bには、さらに電圧が印加される。この電圧は、イオンがエンドキャップ電極42aに設けられた開口部を通過する際のエネルギー(入射エネルギー)に影響する。
【0044】
本発明の実施形態で使用するイオントラップ質量分析器のイオン閉じ込め効率は、イオンの入射エネルギーに依存するので、閉じ込め効率が高くなるように前述の電圧が設定される。真空部41に導入されたイオンは、イオン集束レンズ43により収束された後、エンドキャップ電極42a、42b、及び、リング電極44により構成されるイオントラップ質量分析器に導入される。エンドキャップ電極42a、42bとリング電極44とは、石英リング45により保持されている。
【0045】
質量分析器には、ガス供給器46からガス導入管47を介してヘリウム等の衝突ガスが導入される。ゲート電極48は、イオントラップ質量分析器へのイオン入射のタイミングを制御するために設けられている。質量分析されて質量分析器の外に排出されたイオンは、変換電極49、シンチレータ50、フォトマルチプライヤ51で構成される検出器により検出される。イオンは、イオンを加速する電圧が印加された変換電極49に衝突する。イオンの変換電極49への衝突により、変換電極49の表面より荷電粒子が放出される。この荷電粒子は、シンチレータ50により検知され、信号がフォトマルチプライヤ51で増幅される。検出された信号は、データ処理装置52に送られる。前述では、質量分析器としてイオントラップ質量分析器を使用するとして説明したが、質量分析器として四重極質量分析器を用いてもよい。
【0046】
データ処理装置52は、検出しようとする化学剤、例えば、硫黄マスタードに由来するm/zを持つ正イオンを同定、ルイサイト1の場合ルイサイト1に由来するm/zを持つ負イオンを同定し、その信号強度を求めることにより、検出しようとする化学剤である硫黄マスタード、ルイサイト1が検出されたか否かを検定する。データ処理装置52は、硫黄マスタード、ルイサイト1が検出された場合に、表示部23に警報を表示すると共に何が検出されたかも表示する。この警報の表示は、注意を集めるため高音の発生、赤色警報灯の点滅によって行ってもよい。
【0047】
図5は前述した本発明の実施形態により得られた硫黄マスタードの質量スペクトルについて説明する図である。この例は、試料導入部に硫黄マスタードの蒸気を直接導入した場合で、正イオン検出、ドリフト電圧50V、イオン化部の温度150℃、試料導入部の温度180℃の設定をした例である。
【0048】
図5に示すように、この例の場合、m/z=123、158の信号を検出した。硫黄マスタードは、その分子量MHD=158、160であるので、m/z=123は、(MHD−Cl)+ の信号であり、m/z=158は、(MHD)+ の信号である。すなわち、m/z=123、158の両方の信号が検知されたとき、硫黄マスタードが検知されたものとする。この検知方法は誤報率を小さくすることができる。別の成分が偶然m/z=123(あるいは158)の信号を与える場合で、m/z=123(あるいは158)のみを検知した場合に、硫黄マスタードを検知したとすると誤報となる場合がある。
【0049】
図6〜図7は、硫黄マスタードを試料として導入して検出したm/z=123、158の信号の温度依存性について説明する図であり、図6に示す例は、試料導入部110℃、イオン源110℃における硫黄マスタードガスを一定時間吸引して吸引を止めた時のイオン強度信号量の時間変化である。試料導入部は、温度調整機能付きSUS配管により構成した。図7に示す例は、試料導入部180℃、イオン源150℃における硫黄マスタードガスを一定時間吸引して吸引を止めた時のイオン強度信号量の時間変化である。試料導入部は、温度調整機能付きSUS配管により構成した。
【0050】
試料導入部およびイオン源を高温に設定することにより吸着が減少して硫黄マスタードガスがイオン源への到達が加速する可能性がある。ガス吸引してから信号検出するまでの信号立ち上がり時間の短縮とガス吸引を止めてから信号レベルがバックグラウンドレベルまで戻る立下り時間の短縮に効果がある。
【0051】
図8は硫黄マスタードを試料として導入して検出したm/z=123の信号のドリフト電圧依存性を説明する図である。この図から判るように、ドリフト電圧が40Vを超え80Vまでの間でバックグラウンドよりも大きな信号を得ることができる。バックグラウンドとは、硫黄マスタードを試料導入しなかった場合でのm/z=123の信号のレベルのことである。バックグラウンドより大きな信号をモニタして硫黄マスタードが検知されたかどうかを判定する。従って、ドリフト電圧を50Vから80Vの間にすることでより大きな信号量を得ることができる。
【0052】
図9は前述した本発明の実施形態により得られたルイサイト1の質量スペクトルについて説明する図である。この例は、試料導入部にルイサイト1の蒸気を直接導入した場合で、負イオン検出、ドリフト電圧−40V、イオン化部の温度180℃、試料導入部の温度180℃の設定をした例である。
【0053】
図9に示すように、この例の場合、m/z=187、205の信号を検出した。ルイサイト1は、その分子量ML =206、208であるので、m/z=205は、(ML−H)- の信号であり、m/z=187は、ルイサイト1の分解物の信号である。すなわち、m/z=187、205の両方の信号が検知されたとき、ルイサイト1が検知されたものとする。この検知方法は誤報率を小さくすることができる。別の成分が偶然m/z=187(あるいは205)の信号を与える場合で、m/z=187(あるいは205)のみを検知した場合に、ルイサイト1を検知したとすると誤報となる場合がある。
【0054】
図10〜図12はルイサイト1を試料として導入して検出したm/z=187、205の信号の温度依存性について説明する図である。図10に示す例は、試料導入部30℃、イオン源110℃とし、ルイサイト1ガスを一定時間吸引して吸引を止めた時のイオン強度信号量の時間変化を示している。試料導入部は、テフロン(登録商標)配管により構成した。図11に示す例は、試料導入部110℃、イオン源110℃とし、ルイサイト1ガスを一定時間吸引して吸引を止めた時のイオン強度信号量の時間変化を示している。試料導入部は、温度調整機能付きSUS配管により構成した。図12に示す例はは、試料導入部180℃、イオン源150℃とし、ルイサイト1ガスを一定時間吸引して吸引を止めた時のイオン強度信号量の時間変化を示している。試料導入部は、温度調整機能付きSUS配管により構成した。
【0055】
試料導入部およびイオン源を高温に設定することにより、吸着が減少して硫黄マスタードがイオン源への到達が加速する可能性がある。ガス吸引してから信号検出するまでの信号立ち上がり時間の短縮とガス吸引を止めてから信号レベルがバックグラウンドレベルまで戻る立下り時間の短縮に効果がある。
【0056】
図13はルイサイト1を試料として導入して検出したm/z=187、205の信号のドリフト電圧依存性を説明する図である。この図から判るように、ドリフト電圧が−30Vから−60Vまでの間でバックグラウンドよりも大きな信号を得ることができる。バックグラウンドとは、ルイサイト1を試料導入しなかった場合でのm/z=187、205の信号のレベルのことである。バックグラウンドより大きな信号をモニタしてルイサイト1が検知されたかどうかを判定することができる。従って、ドリフト電圧を−30Vから−60Vの間に設定することにより、より大きな信号量を得ることができる。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、検査試料を吸引して探知装置〔大気圧化学イオン化(APCI)−質量分析計(MS)〕の分析部によりm/zを確認することにより、硫黄マスタード、ルイサイト1の有無を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態による化学剤の探知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態による探知装置の外観を示す斜視図である。
【図3】図2に示す濾紙加熱部(オーブン)の構成例を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態による探知装置のイオン化部、質量分析部の構成例を示すブロック図である。
【図5】本発明の実施形態により得られた硫黄マスタードの質量スペクトルについて説明する図である。
【図6】硫黄マスタードを試料として導入して検出したm/z=123、158の信号の試料導入部温度110℃、イオン源110℃特性について説明する図である。
【図7】硫黄マスタードを試料として導入して検出したm/z=123、158の信号の試料導入部温度180℃、イオン源150℃特性について説明する図である。
【図8】硫黄マスタードを試料として導入して検出したm/z=123の信号のドリフト電圧依存性を説明する図である。
【図9】本発明の実施形態により得られたルイサイト1の質量スペクトルについて説明する図である。
【図10】ルイサイト1を試料として導入して検出したm/z=187、205の信号の試料導入部温度が30℃、イオン源110℃特性について説明する図である。
【図11】ルイサイト1を試料として導入して検出したm/z=187、205の信号の試料導入部温度が110℃、イオン源110℃特性について説明する図である。
【図12】ルイサイト1を試料として導入して検出したm/z=187、205の信号の試料導入部温度が180℃、イオン源150℃特性について説明する図である。
【図13】ルイサイト1を試料として導入して検出したm/z=187、205の信号のドリフト電圧依存性を説明する図である。
【図14】従来技術による液体クロマトグラフィー質量分析法を用いる分析装置の概略構成を説明する図である。
【符号の説明】
1 試料導入部
2 イオン化部
3 質量分析部
4 制御部
5 吸入ポンプ
6 計測処理用計算機
7 真空ポンプ
16 試料
20 濾紙挿入口
21 濾紙加熱部
22 分析部
23 表示部
24 濾紙
25 トレー
25’ 取っ手
26 トレーホルダー
27 センサー
28 ハロゲンランプ
29 空気取り入れ管
30 フィルタ
31 試料導入管
32 カバー
33 針電極
34 対向電極
35 開口部
36 吸入ポンプ
37a、37b 細孔付電極
38a 第1のイオン導入細孔
38b 第2のイオン導入細孔
39 差動排気部
40a、40b 排気系
41 真空部
42a、42b エンドキャップ電極
43 イオン収束レンズ
44 リング電極
45 石英リング
46 ガス供給器
47 ガス導入管
48 ゲート電極
49 変換電極
50 シンチレータ
51 フォトマルチプライヤ
52 データ処理装置
101 液体クロマトグラフ(LC)
102 連結チューブ
103 イオン源
104 イオン源電源
105、109 信号線
106 質量分析部
107 真空系
108 イオン検出器
110 データ処理器

Claims (10)

  1. 検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideに由来するm/z(イオンの質量数/イオンの価数)を有するイオンのイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
  2. 検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideに由来するm/z(イオンの質量数/イオンの価数)を有するイオンのイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
  3. 前記イオン源は、試料導入部からの検査試料がコロナ放電を生起する針電極に向かって流れる逆流型の大気圧化学イオン化(APCI)を用いて構成されることを特徴とする請求項1または2に記載の化学剤の探知装置。
  4. 前記質量分析部は、その差動排気部の両側に設けられる細孔付電極相互間に印加するドリフト電圧が50V〜80Vに設定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の化学剤の探知装置。
  5. 検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記イオン源は、試料導入部からの検査試料がコロナ放電を生起する針電極に向かって流れる逆流型の大気圧化学イオン化(APCI)を用いて構成され、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
  6. 検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記イオン源は、前記試料導入部からの検査試料がコロナ放電を生起する針電極に向かって流れる逆流型の大気圧化学イオン化(APCI)を用いて構成され、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
  7. 検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記質量分析部の差動排気部の両側に設けられる細孔付電極相互間に印加するドリフト電圧が50V〜80Vに設定されており、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
  8. 検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記質量分析部の差動排気部の両側に設けられる細孔付電極相互間に印加するドリフト電圧が50V〜80Vに設定されており、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
  9. 検査試料を取り込みコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記検出しようとする化学剤は、2,2'− Dichloroethyl sulphide であり、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
  10. 検査試料を取り込み前記検査試料を加熱する温度が110℃〜180℃に設定されている試料導入部と、加熱により発生した気体をコロナ放電により正にイオン化する温度が110℃〜180℃に設定されているイオン源と、前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、検出しようとする化学剤に由来するイオン強度をモニタするモニタ手段とを有し、
    前記検出しようとする化学剤は、2,2'−Dichloroethyl sulphideであり、
    前記モニタ手段は、m/z(イオンの質量数/イオンの価数)=123、158を有するイオンのイオン強度をモニタして検出しようとする化学剤である2,2'−Dichloroethyl sulphideを探知することを特徴とする化学剤の探知装置。
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