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JP4300494B2 - 高周波パワートランスおよびこれを用いた電力変換装置 - Google Patents

高周波パワートランスおよびこれを用いた電力変換装置 Download PDF

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JP4300494B2 JP34009098A JP34009098A JP4300494B2 JP 4300494 B2 JP4300494 B2 JP 4300494B2 JP 34009098 A JP34009098 A JP 34009098A JP 34009098 A JP34009098 A JP 34009098A JP 4300494 B2 JP4300494 B2 JP 4300494B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、 Feを主成分とし、結晶粒径50nm以下の微細な結晶粒がその組織の体積全体の50%以上を占めるノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線と、少なくとも1組以上のセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランスおよびこれを用いた電力変換装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高周波パワートランスを用いた絶縁形の電力変換装置の1つとして、図3に示すフルブリッジ型DC−DCコンバータが用いられている。図3において、1は入力直流電源、2、3、4および5は主スイッチ、6、7、8および9は帰還ダイオード、20はセンタータップを持たない1次巻線とセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランス、21は前記高周波パワートランス20の1次巻線、22および23は前記高周波パワートランス20の2次巻線、31および32は出力整流ダイオード、33は出力平滑チョークコイル、34は出力平滑コンデンサ、35および36は出力端子、37は負荷である。
【0003】
図3のフルブリッジ型DC−DCコンバータでは、主スイッチ2と3、および4と5がそれぞれ1組のスイッチになって、これら2組のスイッチが交互にスイッチングすることにより、高周波パワートランス20の1次巻線21には図4のv21のような高周波電圧が印可され、同高周波パワートランス20の2次巻線22および23から、出力整流ダイオード31および32、平滑チョークコイル33、コンデンサ平滑34を介し、負荷37に電力が供給される。図4において、主スイッチ2と3がオンの期間がTon23、主スイッチ4と5がオンの期間がTon45であり、Tpが周期である。(Ton23+Ton45)/Tpがオンデューティ比Donであり、入力直流電源1の電圧Eの変動や負荷37の変動に対し、出力電圧Voを一定に保つために、Tpを一定としDonを変化させて制御するPWM制御(パルス幅変調制御)が一般に用いられている。なお、高周波パワートランス20の駆動周波数fは1/Tpで与えられる。
【0004】
本コンバータにおける高周波パワートランス20の動作B−Hループ概念図を図5に示す。図3に示す高周波パワートランス20の1次巻線21の黒丸側から電流が流入したときに高周波パワートランス20に生じる磁界の向きを図5のH軸の正極側にとることにする。したがって、主スイッチ2と3がオンの期間Ton23には、同高周波パワートランス20の磁束密度は図5のa点からb点まで2Bmだけ変化し、主スイッチ4と5がオンの期間Ton45には、高周波パワートランス20の磁束密度は図5のb点からa点まで−2Bmだけ変化する。すなわち、本コンバータにおける高周波パワートランス20は、B−Hループの原点に対し対称のマイナーループを描く動作をする。
【0005】
本コンバータにおける高周波パワートランス20では、小型化と低損失化が重要な課題である。高周波パワートランス20の小型化の一般的な手法として、駆動周波数を高めることが行われている。しかし、高周波パワートランス20に用いる磁心や主スイッチ2、3、4および5、帰還ダイオード6、7、8、および9、あるいは出力整流ダイオード31および32などの素子の高周波特性を考慮しない極端な高周波化は、これらの素子の損失を増加させるばかりでなく、高周波パワートランス20の損失増加も招き、コンバータの効率低下や過大な温度上昇による信頼性低下を引き起こす。
【0006】
本コンバータにおける高周波パワートランス20には、一般に、主スイッチ2、3、4および5の高周波特性を考慮して選定される駆動周波数において、最も小型化可能で低損失の磁心を選定する必要がある。
【0007】
例えば、出力電力が数kW程度までの比較的小さい場合には、通常、主スイッチ4および5にパワーMOS−FETが選択され、駆動周波数は50kHz程度以上に選定される。この場合、高周波パワートランス20の磁心には、従来、主に、室温の飽和磁束密度Bsが0.5T程度と小さいが、数百kHz以上での磁心損失の小さなMn−Znフェライト磁心が用いられていた。
【0008】
一方、出力電力が数kWを超える領域では、一般に、主スイッチ2、3、4および5にIGBTが選択され、駆動周波数は数kHzから20kHz程度に選定される。
この場合、萩原、斎藤、加茂、豊田、山内、吉沢:「超微結晶合金を鉄心に用いたインバータ用変圧器」、電気学会研究会資料、MAG−90−194、1990年12月6日(以下、文献1と呼ぶ)に記載されているように、高周波パワートランス20の磁心には、室温での飽和磁束密度がMn−Znフェライト磁心の2倍を超える1T以上で、20kHzでの磁心損失も小さな、特開昭63−302504号に記載されるようなFeを主成分とし、結晶粒径50nm以下の微細な結晶粒がその組織の体積全体の50%以上を占めるFe基ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心が優れることが知られている。
【0009】
前記Fe基ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心においては、前記文献1、あるいは福永、古賀、江口、太田、掛橋:「鉄系磁性薄帯を用いたギャップ付カットコアの磁気特性、電気学会研究会資料、MAG−89−203、1989年12月1日(以下、文献2と呼ぶ)に記載されているように、同巻磁心を樹脂含浸処理や表面固着処理することによって同巻磁心を構成するナノ結晶軟磁性合金薄帯の層間に樹脂あるいはワニスなどが浸透し、同ナノ結晶軟磁性合金薄帯に応力が加わることによって、その磁心損失が著しく増加することが知られている。
【0010】
ところで、高周波パワートランス20用の磁心では、巻線作業を容易にするためカットした磁心が広く用いられている。ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心をカットするためには、同巻磁心をエポキシ系接着剤などの含浸材で含浸処理し、同巻磁心を構成するナノ結晶軟磁性合金薄帯の各層間を前記含浸材で固着させた後、回転砥石などによりカットする必要がある。また、カット後、端面を鏡面研磨することも行われている。しかし、このような手法を用いたナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心をカットした磁心は、前記文献1および文献2に記載されているように、その磁心損失が著しく増加してしまう。
【0011】
このためナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いカットした磁心の磁心損失を低減するため、吉沢、森、荒川、山内:「Fe−Cu−Nb−Si−B系ナノ結晶合金の高周波磁気特性」、電気学会研究会資料、MAG−94−202、1994年11月22日(以下、文献3と呼ぶ)に記載されるように、その飽和磁歪定数λsが10−6以下と小さなナノ結晶軟磁性合金薄帯を使用し、同薄帯表面をセラミックスで被覆した層間絶縁処理を行うことが有効ではあるが、その場合でも、含浸やカットをしない通常のナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心の磁心損失の約1.4倍にも達してしまう。
【0012】
このため、ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心の特徴である低磁心損失を有効に活用するためには、同巻磁心を構成するナノ結晶軟磁性合金薄帯に極力応力を加えないように構成する必要がある。そのような構成のナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心としては、ノーカットの同巻磁心をシリコングリスやゲル状のシリコンゴムなどを緩衝材としてプラスチックやセラミック等の絶縁ケース中に収納し、外部からの応力が直接巻磁心に加わり難いようにしたものが広く用いられている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
図3のフルブリッジ型DC−DCコンバータのように、高周波パワートランス20の磁束密度が図5に示すようにB−Hループの原点に対し対称なB−Hマイナーループを描く動作をする電力変換装置の高周波パワートランス20において、その動作時のB−Hマイナーループが図6のようにB−Hループの原点に対し非対称な動作をする偏磁により、前記高周波パワートランス20が磁気飽和し励磁電流が著しく増加するのを抑制し、主スイッチ2、3、4および5の安全動作を確保することが極めて重要である。
【0014】
高周波パワートランス20の偏磁は、よく知られているように、主に、主スイッチ2、3、4および5の電気的な特性のバラツキに起因するものであり、励磁電流は回路インピーダンスによってある値で平衡する。しかし、高周波パワートランス20の偏磁が大きい場合、動作時のB−Hマイナーループは図6に示すように一方の飽和領域に達し、励磁電流は著しく増加するため、主スイッチ2、3、4および5の主電極間に過大な電流が流れ、同主スイッチ2、3、4および5は破壊に至る場合があった。特に、入力直流電源1の電圧の急変や負荷27の急変時には、過渡的に高周波パワートランス20の動作時の磁束密度の変化量ΔBが大きくなるため、偏磁による励磁電流の増加量も大きくなり、主スイッチ2、3、4およびと5が破壊に至る危険性が高かった。
【0015】
なお、主スイッチ2、3、4および5の主電極間に流れる過電流を抑制する応答速度の速い過電流保護回路が設けられている場合には、著しい偏磁により前記主スイッチ2、3、4および5に過大な電流が流れるのを抑制でき、これらの主スイッチが破壊するのを防止できる。しかし、同過電流保護回路が動作したときには、出力側に十分な電力を供給できなくなるため出力電圧の定電圧精度が確保できなくなるなどの問題があった。
【0016】
上記高周波パワートランス20の偏磁を防止するための最も一般的な手法として、同高周波パワートランス20に、透磁率の小さな磁心を採用するとともに、同磁心の動作磁束密度波高値Bmを同磁心の飽和磁束密度Bsに対して十分小さな値となるように選定することが行われている。上記、透磁率の小さな磁心を得る手法としては、カット磁心にギャップを設けて、その実効的な比透磁率を下げるのが最も簡便な方法である。この手法によれば、ギャップ幅を調整することにより、磁心の実効的な比透磁率を任意に選定できると言う利点もあった。
【0017】
しかし、ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心の場合に上記のようにギャップを設けることによって実効的な比透磁率を低下させる手法は、前記文献1から文献3にも記載されているように、カット磁心にすることとギャップを設けることによって、磁心損失が大幅に増加するため、前記高周波パワートランス20に用いるときの最大の利点である低磁心損失という特徴が損なわれる上、ギャップ部で生じる漏れ磁束の影響により銅損が増加する問題があった。
【0018】
ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心において、ギャップを設けることなしに比透磁率を低下させる手法としては、同巻磁心の薄帯幅方向(巻磁心の高さ方向)に磁界を加えながら熱処理する手法、および巻磁心を構成するナノ結晶軟磁性合金薄帯に応力を加える手法がある。しかし、磁心損失が比較的小さな組成系において、前者の手法を用いて達成できる比透磁率のレベルは50kHzにおいて数万にも達し、Mn−Znフェライト磁心の数千程度に対し1ケタも大きい値に留まり、偏磁対策に十分なレベルに達しなかった。一方、後者の手法は、前記、文献1および2に記載されるように、磁心損失の大幅な上昇を招く問題があった。
【0019】
このため、図3のフルブリッジ型DC−DCコンバータのように、高周波パワートランス20の磁束密度が図5に示すようなB−Hループの原点に対し対称なB−Hマイナーループを描く動作をする電力変換装置の高周波パワートランス20に、ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を使用し、低磁心損失という特徴を発揮させるためには、極度な偏磁を抑制するために同高周波トランス20の偏磁量を検出するとともに、これを矯正するために主スイッチ2、3、4および5で形成される2組スイッチの各々のオン期間を独立に制御することの可能な偏磁抑制回路を追加するなどの対策を行う必要があり、部品点数が増加する問題があった。
【0020】
なお、以上の説明ではフルブリッジ型DC−DCコンバータを例にナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた高周波パワートランス20、およびこれを用いた電力変換装置の問題点について説明したが、ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線と少なくとも1組以上のセンタータップ付き2次巻線を設けた構成のハーフブリッジ型コンバータなどの他の電力変換装置の高周波パワートランス20、およびこれを用いた電力変換装置に対しても、全く同様の問題があった。
【0021】
本発明の目的は、前記従来技術では、実現困難であった、実用上障害となるレベルの偏磁の発生を防止し得るとともに低磁心損失で小型なノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線と少なくとも1組以上のセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランス、およびこれを用いた高効率で信頼性の高い電力変換装置を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Feを主成分とし、結晶粒径50nm以下の微細な結晶粒がその組織の体積全体の50%以上を占め、50kHzにおける比透磁率が20,000以上で、直流磁気特性における残留磁束密度Brと飽和磁束密度Bsの比である角型比Br/Bsは0.2以下で、ノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線と、少なくとも1組以上のセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランスにおいて、前記センタータップ付き2次巻線のうちの少なくとも1組は、これを構成する各巻線を前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心に略均等にバイファイラ巻されており、前記2次巻線は前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心に略均等に巻かれた1次巻線によってサンドイッチ巻されていて、かつ2次巻線端の全てを短絡して1次巻線端で測定した50kHzにおける漏れインダクタンスの値が0.3μH以下であることを特徴とする高周波パワートランスである。
【0023】
このような構成とすることによって、低磁心損失のノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線と少なくとも1組以上のセンタータップ付2次巻線を設けた高周波パワートランスをフルブリッジ型コンバータやハーフブリッジ型コンバータなどの電力変換装置に用いる際に問題となっていた偏磁による磁気飽和を複雑な偏磁抑制回路を加えることなしに防止でき、同高周波パワートランスの損失をより減少させることができ、更に小型化と高効率化が図れ、好ましい。
【0027】
前記高周波パワートランスにおいて、その駆動周波数を5kHz以上100kHz以下の範囲に選定した場合には、その選定した周波数において従来の高周波パワートランスに比べて、より小型化と高効率化が図れ好ましい。
【0028】
上記本発明による高周波パワートランスを用いた電力変換装置は、従来の電力変換装置に比べて、小型化と高効率化が図れるとともに、簡単な回路構成で高周波パワートランスの偏磁による励磁電流の増加を抑制できるため主スイッチの安全動作が図れ、信頼性が向上して好ましい。
【0029】
【実施例】
以下本発明の実施例について詳細に説明する。
(実施例1)
回路構成が図3、仕様が表1で与えられるスイッチング周波数fが50kHzのフルブリッジ型DC−DCコンバータの高周波パワートランス20、および同フルブリッジ型DC−DCコンバータの性能について検討した。
【0030】
図3において、1は入力直流電源、2、3、4および5は主スイッチ、6、7、8および9は帰還ダイオード、20はセンタータップを持たない1次巻線とセンタータップ付2次巻線を設けた高周波パワートランス、21は前記高周波パワートランス20の1次巻線、22および23は前記高周波パワートランス20の2次巻線、31および32は出力整流ダイオード、33は出力平滑チョークコイル、34は出力平滑コンデンサ、35および36は出力端子、37は負荷である。
【0031】
【表1】
Figure 0004300494
【0032】
なお、本実施例において、高周波パワートランス20の偏磁の原因となる主スイッチ2、3、4、および5のオン期間のバラツキを抑制するため、図3の主スイッチ2、3、4および5にはパワーMOS−FETを用い、これらMOS−FETのターンオフタイムのバラツキを抑制するためターンオフ時のゲート電流波高値を大きく取ることのできるゲート駆動回路を採用した。
【0033】
また、図3の回路において、帰還ダイオード6、7、8および9は高周波パワートランス20の励磁エネルギーを入力直流電源1に回生することによりコンバータの高効率化を図るとともに同高周波パワートランス20の偏磁を抑制する機能を有する。
【0034】
高周波パワートランス20には表2に示す磁心を用いた。表2において、磁心イから磁心チはFeを主成分とし結晶粒径50nm以下の微細な結晶粒がその組織の体積全体の50%以上を占めるナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心である。このうち磁心チはカットした上で非磁性の絶縁体ギャップを挿入したもの、それ以外はノーカットである。
また、磁心リはノーカットのFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心、磁心ヌはノーカットの部分的に結晶質を含むFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心、磁心ルはノーカットのMn−Znフェライト磁心、磁心ヲはカットした上で非磁性の絶縁体のギャップを挿入したMn−Znフェライト磁心である。
【0035】
【表2】
Figure 0004300494
【0036】
表2の磁心のうち磁心イから磁心ヌは、いずれもその寸法が外径44mm、内径24mm、高さ20mmのトロイダル形状であり、その寸法が外径46.5mm、内径21.5mm、高さ23mmのプラスチック製絶縁ケースに挿入した。また、磁心ルおよび磁心ヲは、表2に示すよう120℃の飽和磁束密度Bsは0.32Tしかないため偏磁に対する余裕度をとるとその動作時の磁束密度の変化量ΔBは0.35T程度しか取れない。そこで、磁心ルおよび磁心ヲはいずれも前記磁心イから磁心ヌと同一寸法の磁心を2ヶ重ね、その寸法が外径46.5mm、内径21.5mm、高さ44mmのプラスチック製絶縁ケースに挿入した。
【0037】
高周波パワートランス20の巻線仕様を表3に示す。
表3において、本発明Aから本発明G、および比較例mから比較例qに適用したサンドイッチ巻と記載されている巻線構造を図1に示す。図1は、本発明Aから本発明G、および比較例mから比較例qの高周波パワートランス20の径方向断面の1/4周部分を示したものである。同図において、50はケースを含む磁心、黒で塗りつぶされている円51および白抜きの円52は図3の1次巻線21、網掛けの円53および斜線の円54は各々図3の2次巻線22と23に相当するものである。
【0038】
2次巻線53および54は各々0.23φのポリウレタン絶縁被覆電線を69本用いて構成したリッツ線を2本パラ合計4本を交互に並列にケースで覆われた磁心50に略均等にバイファイラ巻した。図1ではその1ターン分の巻線の断面図が示されている。
【0039】
一方、1次巻線は、0.9φの3層絶縁被覆電線を4本パラでその巻数の1/2にあたる8ターンをケースを含む磁心50に対し略均等に巻いた巻線51と0.9φの3層絶縁被覆電線を4本パラで残り1/2の巻数にあたる8ターンをケースを含む磁心50に対し略均等に巻いた巻線52で、前記2次巻線53および54をサンドイッチ状に挟み込むと同時に、前記巻線51と巻線52を直列接続することにより16ターンの1次巻線21を構成している。なお、図1では、上記1次巻線の約4ターン分の巻線の断面図が示されている。
【0040】
【表3】
Figure 0004300494
【0041】
表3において、比較例aから比較例lに適用した均等巻と記載されている巻線構造を図2に示す。図2は、比較例aから比較例lの高周波パワートランス20の径方向断面の1/4周部分を示したものである。
同図において、50はケースを含む磁心、黒で塗りつぶされている円61は図3の1次巻線21、網掛けの円62および斜線の円63は各々図3の2次巻線22と23に相当するものである。
【0042】
1次巻線61は、1.4φのテフロンコート絶縁被覆電線を2本パラで磁心50に対し略均等に16ターン巻いて構成している。なお、図2では、上記1次巻線61の約4ターン分の巻線の断面図が示されている。
一方、2次巻線62および63は、各々0.23φのポリウレタン絶縁被覆電線を69本用いて構成したリッツ線を2本パラ合計4本を交互にならべた形でケースで覆われた磁心50に略均等にバイファイラ巻されており、図2ではその1ターン分の巻線の断面図が示されている。
【0043】
表4に、表3に示す24種類の高周波パワートランス20について、2次巻線端全てを短絡して1次巻線で測定した漏れインダクタンス、同高周波パワートランス20を前記回路構成が図3、仕様が表1のフルブリッジ型DC−DCコンバータに実装したときの同高周波パワートランス20の偏磁の程度、動作時の磁束密度の変化量ΔBおよび温度上昇ΔTを示す。
【0044】
偏磁については、表1の仕様の範囲において、入力電圧と負荷が急変をしても偏磁による異常がない場合を○、入力電圧と負荷が急変したときのみ偏磁による異常がでた場合を△、定常動作でも偏磁による異常を生じた場合を×とした。
また、動作時の磁束密度の変化量ΔBおよび温度上昇ΔTは、周囲温度25℃において入力電圧260V、出力電圧40V、負荷電流30Aの入出力条件のもとで連続通電してその値が飽和した時点で測定した結果である。
【0045】
【表4】
Figure 0004300494
【0046】
表4からわかるように、サンドイッチ巻構造の低漏れインダクタンスのノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた本発明AからGの高周波パワートランスによれば、偏磁を実用上問題のないレベルに押さえることができるとともに、その温度上昇ΔTも実用上支障のない許容値である50℃以下に押さえることができる。
なお、ここで温度上昇ΔTの許容値は、表1の動作時の周囲温度の上限である40℃と動作時のDC−DCコンバータケース内部の温度上昇想定上限値を30℃を足した70℃をE種絶縁の許容温度である120℃から差し引いて50℃以下とした。
【0047】
一方、漏れインダクタンスが大きなノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた比較例aからg、ノーカットのFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた比較例iあるいはノーカットのMn−Znフェライト磁心を用いた比較例kの高周波パワートランス20では、偏磁の影響により最大出力を安定に取り出せず、温度上昇ΔTの測定が不可能であった。
【0048】
また、ギャップを設けたナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心チ、ノーカットの部分的に結晶質を含むFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心ヌおよびギャップを設けたMn−Znフェライト磁心ヲを用いた漏れインダクタンスが大きい比較例h、jおよびlの高周波パワートランス20は偏磁の影響を押さえることができるが、温度上昇ΔTが実用上要求される50℃を超えるため問題となることがわかる。
【0049】
ギャップ付のナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心チ、ノーカットのFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心リ、ノーカットの部分的に結晶質を含むFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心ヌ、ノーカットのMn−Znフェライト磁心ルおよびギャップを用いたMn−Znフェライト磁心ヲを用い、サンドイッチ巻構造として低漏れインダクタンスとした比較例mからqの高周波パワートランス20においては偏磁の影響を押さえることができるが、比較例pを除きその温度上昇ΔTが50℃を超えるため問題となることがわかる。
【0050】
一方、比較例pでは偏磁の影響を押さえられると同時に温度上昇ΔTも50℃以内に押さえることができるが、Mn−Znフェライト磁心ヲを用いているためその飽和磁束密度の制約からΔBをナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心イからチおよびFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心リとヌを用いた場合に比べ約1/2に選定しなくてはならず前記のように磁心体積を2倍としているため高周波パワートランス20の体積も約2倍になるという問題があることがわかる。
【0051】
なお、本実施例で得られた結果に基づき詳細に検討した結果、ノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線とセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランス20において、2次巻線端の全てを短絡して1次巻線端で測定した50kHzにおける漏れインダクタンスの値が0.3μH以下であれば、実用上、偏磁の影響で図3の回路構成と表1の仕様のフルブリッジ型DC−DCコンバータの動作に支障をきたすことはないことがわかった。
【0052】
また、本発明AからGについて比較すると50kHzにおける比透磁率μr(50kHz)が20,000を超えるナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた本発明AからDの場合には、その温度上昇ΔTが実用上の上限である50℃に対し10%以上のマージンを持つ45℃未満とすることができるため、信頼性が高く高性能な高周波パワートランスと電力変換装置を実現できることがわかる。
【0053】
(実施例2)
前記実施例1と全く同様の回路構成と仕様において、スイッチング周波数fを50kHzから20kHzに変更したフルブリッジ型DC−DCコンバータの高周波パワートランス20、および同フルブリッジ型DC−DCコンバータの性能について検討した。
【0054】
高周波パワートランス20の巻線仕様を表5に示す。なお、比較例r、s、tおよびuを除き、前記実施例1の表2に記載される磁心を用いた表3の巻線仕様のものを使用した。
また、表5において、比較例rから比較例uについて記載されるサンドイッチ巻と均一巻の構成は、前記実施例1における図1および図2と同様の構成のものである。
【0055】
【表5】
Figure 0004300494
【0056】
比較例r、s、tおよびuで用いた磁心の直流磁気特性と50kHzにおける比透磁率μr(50kHz)を表6に示す。表6の磁心ワはノーカットのMn−Znフェライト磁心、磁心カはカットした上で非磁性の絶縁体ギャップを挿入したMn−Znフェライト磁心である。
また、磁心ワおよび磁心カは、表6に示すように120℃の飽和磁束密度Bsが前記表2に示される磁心イから磁心ヌの1/4程度しかないため、それぞれ前記磁心イから磁心ヌと同一寸法の磁心を4ヶ重ねて、その寸法が外径46.5mm、内径21.5mm、高さ84mmのプラスチック製絶縁ケースに挿入した。
【0057】
【表6】
Figure 0004300494
【0058】
表7に、表5に示す24種類の高周波パワートランス20について、2次巻線端全てを短絡して1次巻線で測定した漏れインダクタンス、同高周波パワートランス20を前記回路構成が図3、仕様が表1のフルブリッジ型DC−DCコンバータの高周波パワートランス20に実装したときの偏磁の程度、動作時の磁束密度の変化量ΔBおよび同高周波パワートランス20の温度上昇ΔTを示す。
【0059】
偏磁については、表1の仕様の範囲において、入力電圧と負荷が急変をしても偏磁による異常がない場合を○、入力電圧と負荷が急変したときのみ偏磁による異常がでた場合を△、定常動作でも偏磁による異常を生じた場合を×とした。
また、動作時の磁束密度の変化量ΔBおよび温度上昇ΔTは、周囲温度25℃において入力電圧260V、出力電圧40V、負荷電流30Aの入出力条件のもとで連続通電してその値が飽和した時点で測定した結果である。
【0060】
【表7】
Figure 0004300494
【0061】
表7からわかるように、サンドイッチ巻構造の低漏れインダクタンスのノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた本発明AからGの高周波パワートランス20によれば、偏磁を実用上問題のないレベルに押さえることができるとともに、その温度上昇ΔTも実用上支障のない50℃以下に押さえることができる。
【0062】
これに対し、漏れインダクタンスが大きなノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた比較例aからg、ノーカットのFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた比較例iおよびノーカットのMn−Znフェライト磁心を用いた比較例rの高周波パワートランスでは、偏磁の影響により最大出力を安定に取り出せず、温度上昇ΔTの測定が不可能であった。
【0063】
また、ギャップを設けたナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心チ、ノーカットの部分的に結晶質を含むFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心ヌおよびギャップを用いたMn−Znフェライト磁心カを用いた漏れインダクタンスが大きい比較例h、jおよびsの高周波パワートランス20は偏磁の影響を押さえることができるが、温度上昇ΔTが実用上要求される50℃を超えるため問題となることがわかる。
【0064】
さらに、ギャップ付のナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心チ、ノーカットのFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心リ、ノーカットの部分的に結晶質を含むFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心ヌ、ノーカットのMn−Znフェライト磁心ワおよびギャップを用いたMn−Znフェライト磁心カを用い、サンドイッチ巻構造として低漏れインダクタンスとした比較例m、n、o、t、uの高周波パワートランスにおいては、偏磁の影響を押さえることができるが、比較例tとuを除き、その温度上昇ΔTが50℃を超えるため問題となることがわかる。
【0065】
一方、比較例tおよびuでは偏磁の影響を実用上十分なレベルに押さえられると同時に温度上昇ΔTも50℃以内に押さえることができる。しかし、Mn−Znフェライト磁心ヲを用いているため120℃の飽和磁束密度の制約からΔBを0.38Tと、ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心イからチおよびFe基非晶質軟磁性合金薄帯巻磁心リとヌを用いた場合の1/4以下に選定しなくてはならないため、前記のように磁心体積を4倍にしているため高周波パワートランス20の体積も約4倍以上になるという問題があることがわかる。
【0066】
なお、本実施例で得られた結果に基づき詳細に検討した結果、ノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線とセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランス20において、2次巻線端の全てを短絡して1次巻線端で測定した50kHzにおける漏れインダクタンスの値が0.3μH以下であれば、実用上、偏磁による影響で図3の回路構成と表1の仕様の駆動周波数20kHzのフルブリッジ型DC−DCコンバータの動作に支障が生じることはないことがわかった。
【0067】
また、本発明AからGについて比較すると50kHzにおける比透磁率μr(50kHz)が20,000を超えるナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた本発明AからDの場合には、その温度上昇ΔTが実用上の上限である50℃に対し20%以上のマージンを持つ40℃未満とすることができるため、信頼性が高く高性能な高周波パワートランス20およびこれを用いた電力変換装置を実現できることがわかる。
【0068】
さらに、本発明C、DおよびEのように直流磁気特性における残留磁束密度Brと飽和磁束密度Bsの比である角型比Br/Bsが0.2以下の場合には、動作時の磁束密度の変化量ΔBを表7に示す1.69Tの約1.1倍の1.86Tまで大きくしても偏磁の影響による本DC−DCコンバータの安定動作に支障がないことが確認された。
【0069】
この結果、高周波パワートランス20の1次巻線21の巻数を1ターン減少させることが可能となるが、本実施例では、入力電圧と出力電圧の関系から1次巻線と2次巻線の巻数比を4:1とする必要があり、巻数を変更することは得策でない。
そこで、巻線仕様を同一としたままで、磁心ハ、ニおよびホの断面積を10%減じることによりΔBを1.86Tに増加し、磁心および高周波パワートランスの体積を小型化して動作を確認した結果、偏磁の影響による問題もなく、その温度上昇ΔTも50℃未満のより小型軽量の高周波パワートランス20が得られた。
【0070】
(実施例3)
同一磁心寸法の高周波パワートランスを前記図3の回路構成のフルブリッジ型DC−DCコンバータに実装し、入力電圧DC260V、出力電圧40V、周囲温度25℃での同高周波パワートランスの温度上昇が50℃のときに、出力できる最大電力を、駆動周波数を2kHzから200kHzまで変えて測定した。
【0071】
本実施例で使用した高周波パワートランス20の巻線仕様を表8から表14に示す。表8は駆動周波数2kHz、表9は5kHz、表10は10kHz、表11は20kHz、表12は50kHz、表13は100kHzおよび表14は200kHzでの検討に用いたものである。上記表8から表14の高周波パワートランス20の磁心には、前記表2の磁心イから磁心ヌ、および表15に示す磁気特性の磁心ヨおよび磁心タを使用した。表15の磁心ヨはノーカットのMn−Znフェライト磁心、磁心タはカットした上で非磁性の絶縁体ギャップを挿入したMn−Znフェライト磁心である。
【0072】
なお、表8から表14に記載される巻線構造におけるサンドイッチ巻と均等巻は前記実施例1および実施例2の場合と同様の巻線構造を意味する。また、表8から表14に示すように高周波パワートランス20の巻線の巻数が駆動周波数により異なるのは、それぞれの駆動周波数で最も大きな出力電力を取り出せるように決定したためである。
【0073】
前記表8から表14の高周波パワートランス20を前記図3の回路構成のフルブリッジ型DC−DCコンバータに実装し、入力電圧DC260V、出力電圧40V、周囲温度25℃の同高周波パワートランスの温度上昇が50℃のとき、出力できる最大電力を駆動周波数を2kHzから200kHzまで変えて測定した結果を表16に示す。
表16において、−は偏磁などの影響で測定ができなかったことを示す。また、()内に示すのはその最大出力電力が得られた高周波パワートランス20の巻線構造を示すもので、表8から表14に対応している。
【0074】
【表8】
Figure 0004300494
【0075】
【表9】
Figure 0004300494
【0076】
【表10】
Figure 0004300494
【0077】
【表11】
Figure 0004300494
【0078】
【表12】
Figure 0004300494
【0079】
【表13】
Figure 0004300494
【0080】
【表14】
Figure 0004300494
【0081】
【表15】
Figure 0004300494
【0082】
表16からわかるように、本発明によれば5kHz以上100kHz以下駆動周波数範囲において、偏磁の影響による不安定な動作をすることなしに、同一磁心体積で比較例よりも大きな出力電力を安定に供給しうる高周波パワートランス20が得られる。
【0083】
また、表16に示す本発明の高周波パワートランス20について、2次巻線端の全てを短絡して1次巻線端で測定した50kHzにおける漏れインダクタンスは、いずれも0.3μH以下の値を示した。
一方、同表に示す比較例のうちノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心である磁心イから磁心トに均等巻の巻線構造とした高周波パワートランス20において、同様にして測定した漏れインダクタンスはいずれも0.3μHを超えており、このためこれらの高周波パワートランス20では偏磁の影響により不安定な動作を引き起こし、安定して出力を取り出せなかったこともわかった。
【0084】
以上から、ノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線とセンタータップ付きの2次巻線を設けた高周波パワートランス20においては、その2次巻線端の全てを短絡して1次巻線端で測定した50kHzにおける漏れインダクタンスの値が0.3μH以下であれば、実用上偏磁の影響による不安定な動作を示すことなしに安定に出力電力を取り出すことができ、信頼性の高い高周波パワートランス20およびこれを用いた高効率で高信頼性のフルブリッジ型DC−DCコンバータが得られることがわかった。
【0085】
【表16】
Figure 0004300494
【0086】
また、表16において、50kHzにおける比透磁率μr(50kHz)が20,000以上の値を示すノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心である磁心イから磁心ニにセンタータップを持たない1次巻線とセンタータップ付きの2次巻線を設けた本発明の高周波パワートランス20は高周波領域での磁心損失が小さいため、20kHz以上を超える高周波において、より大きな出力電力を取り出すことができ、特に高周波での仕様に適することがわかる。
【0087】
さらに、表16において、直流磁気特性における残留磁束密度Brと飽和磁束密度Bsの比である角型比Br/Bsが0.2以下のノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心である磁心ハから磁心トにセンタータップを持たない1次巻線とセンタータップ付きの2次巻線を設けた本発明の高周波パワートランス20は、10kHz以下の周波数で動作時の磁束密度の変化量を大きく取ることができ表8、表9および表10のように巻数を少なくできるため、より大きな出力電力を取り出すことができることがわかる。
【0088】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、特に複雑な偏磁抑制回路を設けることなしに実用上障害となる偏磁の発生を抑制し得るとともに低磁心損失で小型のノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心を用いた小型で温度上昇が小さく高効率の高周波パワートランス、およびこれを用いた高効率で信頼性の高い電力変換装置が得られる。
なお、前記実施例では、高周波パワートランスを用いた代表的な電力変換装置としてフルブリッジ型DC−DCコンバータへの応用例について詳細に説明したが、本発明はハーフブリッジ型コンバータを始めとするセンタータップを持たない1次巻線と、少なくとも1組以上のセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランス全般、および同高周波パワートランスを用いた電力変換装置全般に適用され、同様に有効な効果を発揮し、その効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による、高周波パワートランス20の1実施例の巻線構造断面の概念図。
【図2】比較例である高周波パワートランスの巻線構造断面の概念図。
【図3】フルブリッジ型DC−DCコンバータの回路構成ブロック図。
【図4】図3のフルブリッジ型DC−DCコンバータの高周波パワートランス10の1次巻線21の端子電圧概念図。
【図5】偏磁がない場合の図3のフルブリッジ型DC−DCコンバータの高周波パワートランス20の動作B−Hループ概念図。
【図6】偏磁により磁心が飽和したときの図3のフルブリッジ型DC−DCコンバータの高周波パワートランス20の動作B−Hループ概念図。
【符号の説明】
1:入力直流電源
2、3、4、5:主スイッチ素子
6、7、8、9:帰還ダイオード
20:高周波パワートランス
21:高周波パワートランス20の1次巻線
23:高周波パワートランス20の2次巻線
31、32:出力整流ダイオード
33:出力平滑チョークコイル
34:出力平滑コンデンサ
35、36:出力端子
37:負荷

Claims (3)

  1. Feを主成分とし、結晶粒径50nm以下の微細な結晶粒がその組織の体積全体の50%以上を占め、50kHzにおける比透磁率が20,000以上で、直流磁気特性における残留磁束密度Brと飽和磁束密度Bsの比である角型比Br/Bsは0.2以下で、ノーカットのナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心にセンタータップを持たない1次巻線と、少なくとも1組以上のセンタータップ付き2次巻線を設けた高周波パワートランスにおいて、前記センタータップ付き2次巻線のうちの少なくとも1組は、これを構成する各巻線を前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心に略均等にバイファイラ巻されており、前記2次巻線は前記ナノ結晶軟磁性合金薄帯巻磁心に略均等に巻かれた1次巻線によってサンドイッチ巻されていて、かつ2次巻線端の全てを短絡して1次巻線端で測定した50kHzにおける漏れインダクタンスの値が0.3μH以下であることを特徴とする高周波パワートランス。
  2. 請求項1に記載の高周波パワートランスにおいて、その駆動周波数は5kHz以上100kHz以下の範囲にあることを特徴とする高周波パワートランス。
  3. 請求項1又は2に記載の高周波パワートランスを用いたことを特徴とする電力変換装置。
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