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JP4398556B2 - 遠心油圧クラッチ - Google Patents

遠心油圧クラッチ Download PDF

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JP4398556B2
JP4398556B2 JP2000021802A JP2000021802A JP4398556B2 JP 4398556 B2 JP4398556 B2 JP 4398556B2 JP 2000021802 A JP2000021802 A JP 2000021802A JP 2000021802 A JP2000021802 A JP 2000021802A JP 4398556 B2 JP4398556 B2 JP 4398556B2
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16DCOUPLINGS FOR TRANSMITTING ROTATION; CLUTCHES; BRAKES
    • F16D43/00Automatic clutches
    • F16D43/28Automatic clutches actuated by fluid pressure
    • F16D43/284Automatic clutches actuated by fluid pressure controlled by angular speed
    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
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    • F16H2045/002Combinations of fluid gearings for conveying rotary motion with couplings or clutches comprising a clutch between prime mover and fluid gearing

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  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Hydraulic Clutches, Magnetic Clutches, Fluid Clutches, And Fluid Joints (AREA)
  • Control Of Fluid Gearings (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は遠心油圧クラッチに関し,特に,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにしたものゝ改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゝる遠心油圧クラッチは,例えば特開昭62−67333号公報に開示されているように,既に知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記公報記載のものでは,クラッチケーシングの外周部に,クラッチオン位置及びクラッチオフ位置間を移動し得るスプール形のクラッチ弁を設け,このクラッチ弁をクラッチオン位置に操作することにより遠心油圧室を入力軸の作動油圧供給油路に連通し,クラッチオフ位置に操作することにより遠心油圧室をクラッチケーシング外に開放するようにしているので,入力軸の作動油供給油路から,クラッチケーシング外周部のクラッチ弁までの距離が長く,このためクラッチ弁のクラッチオン位置への操作時には,遠心油圧室に作動油が充満するまでの所要時間が比較的長くかゝり,クラッチオンの応答性が良好であるとは言い難い。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,クラッチオンの応答性が良好な前記遠心油圧クラッチを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を開閉する入口弁を設けると共にこの入口弁に弁作動手段を接続し,また,前記クラッチケーシングの外周壁に前記遠心油圧室の内外を連通する出口孔を設け,前記外周壁の外周面に摺動可能に密接してこの出口孔を開閉する出口弁を,前記弁作動手段に一体に形成して,該弁作動手段の作動により,前記入口弁及び出口弁を交互に開閉するようにしたことを第1の特徴とする。
【0006】
この第1の特徴によれば,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,入口弁を開弁すると共に出口弁を閉弁したとき,入力部材の作動供給油路から遠心油圧室への作動油の供給を迅速に行うことができて,遠心油圧クラッチのクラッチオン状態への応答性を高めることができる。また,出口弁の弁作動手段との一体化により,出口弁の構造の簡素化を図ることができる。
【0007】
また本発明は,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに,前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を連通すると共に,前者から後者への作動油の流量を制限するオリフィスを設ける一方,前記クラッチケーシングの外周壁に,前記遠心油圧室の内外を連通する出口孔を設け,前記外周壁の外周面に摺動可能に密接してこの出口孔を開閉する出口弁を,これを開閉する弁作動手段に一体に形成したことを第2の特徴とする。
【0008】
この第2の特徴によれば,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,しかも出口弁を開閉するのみで,遠心油圧室からの作動油の排出及び遠心油圧室への作動油の供給を行うことができ,構成の簡素化を図ることができる。また,出口弁の弁作動手段との一体化により,出口弁の構造の簡素化を図ることができる。
【0009】
さらに本発明は,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を開閉する入口弁を設ける一方,前記クラッチケーシングの外周壁に,前記遠心油圧室の内外を連通し且つその遠心油圧室への開口端部を弁座に形成した出口孔を設けて,この弁座に遠心力で着座し得る出口弁を設け,これら入口弁及び出口弁に,これらを交互に開閉する弁作動手段を接続し,前記出口弁は前記弁座への着座時に前記出口孔より前記クラッチケーシングの外周側に突出する部分を有し,前記弁作動手段を,この弁作動手段のクラッチオン位置では前記出口弁の前記弁座(への着座を許容し,クラッチオフ位置では前記出口弁の前記部分を半径方向内方へ押圧してこの出口弁を前記弁座から離座させるように構成したことを第3の特徴とする。
【0010】
この第3の特徴によれば,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,入口弁を開弁すると共に出口弁を閉弁したとき,入力部材の作動供給油路から遠心油圧室への作動油の供給を迅速に行うことができて,遠心油圧クラッチのクラッチオン状態への応答性を高めることができる。また,弁作動手段のクラッチオン位置では,出口弁は,それ自体の遠心力と遠心油圧室の遠心油圧により弁座に着座して,出口孔を確実に閉鎖することができ,そのシール性が高い。しかも出口弁と弁作動手段との間にクラッチケーシングを貫通する部分が存在しないので,遠心油圧室の油密性を容易に確保することができる。
【0011】
さらにまた本発明は,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに,前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を連通すると共に,前者から後者への作動油の流量を制限するオリフィスを設ける一方,前記クラッチケーシングの外周壁に,前記遠心油圧室の内外を連通し且つその遠心油圧室への開口端部を弁座に形成した出口孔を設けて,この弁座に遠心力で着座し得る出口弁を設け,この出口弁に,これを開閉する弁作動手段を接続し,前記出口弁は前記弁座への着座時に出口孔より前記クラッチケーシングの外周側に突出する部分を有し,前記弁作動手段を,この弁作動手段のクラッチオン位置では前記出口弁の前記弁座への着座を許容し,クラッチオフ位置では前記出口弁の前記部分を半径方向内方へ押圧してこの出口弁を前記弁座から離座させるように構成したことを第4の特徴とする。
【0012】
この第4の特徴によれば,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,しかも出口弁を開閉するのみで,遠心油圧室からの作動油の排出及び遠心油圧室への作動油の供給を行うことができ,構成の簡素化を図ることができる。また,弁作動手段のクラッチオン位置では,出口弁は,それ自体の遠心力と遠心油圧室の遠心油圧により弁座に着座して,出口孔を確実に閉鎖することができ,そのシール性が高い。しかも出口弁と弁作動手段との間にクラッチケーシングを貫通する部分が存在しないので,遠心油圧室の油密性を容易に確保することができる。
【0013】
さらにまた本発明は,第1〜第の特徴の何れかに加えて,前記クラッチケーシングに,前記遠心油圧室の内周側を外部に連通する空気孔を設けたことを第の特徴とする。
【0014】
この第の特徴によれば,入口弁を閉弁すると共に出口弁を開弁したとき,又は入口弁をオリフィスに置き換えたものにおいて出口弁を開弁したときには,空気孔から遠心油圧室への空気の流入により,遠心油圧室からの出口弁への作動油の排出をスムーズに行うことができて,変速クラッチのクラッチオフ状態への応答性を高めることができる。また出口弁を閉弁すると共に入口弁を開弁したとき,又は入口弁をオリフィスに置き換えたものにおいて出口弁を閉弁したときには,遠心油圧室の空気が空気孔から外部に流出することにより,作動油供給油路から遠心油圧室への作動油の充填をスムーズに行うことができて,変速クラッチのクラッチオン状態への応答性をも高めることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を,添付図面に示す本発明の実施例に基づいて以下に説明する。
【0016】
図1〜図11は本発明の第1参考例を示すもので,図1は自動二輪車用パワーユニットの縦断面図,図2は上記パワーユニットにおける伝動装置の拡大縦断面図,図3は図2の3−3線断面図,図4は図2の4−4矢視図,図5は上記伝動装置の側面図,図6は図2の変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す拡大図,図7は同クラッチのクラッチオフ状態を示す拡大図,図8は図2の8−8線断面図,図9は図2の9−9線断面図,図10は図2のロックアップクラッチの制御弁を閉弁状態で示す拡大図,図11は同制御弁を開弁状態で示す拡大図,図12は本発明の第実施例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図,図13は同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図,図14は本発明の第2参考例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図,図15は同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図,図16は図14の16−16線断面図,図17は本発明の第3参考例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図,図18は同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図,図19は本発明の第4参考例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図,図20は同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図,図21は本発明の第実施例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図,図22は同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図,図23は本発明の第実施例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図である。
【0017】
先ず,図1〜図11に示す本発明の第1参考例の説明より始める。
【0018】
図1において,自動二輪車用のパワーユニットPは,エンジンE及び多段変速機Mを一体化して構成される。そのエンジンEは,従来普通のように,クランクケース1に左右一対のボールベアリング3,3′を介して支承されるクランク軸2と,シリンダブロック5のシリンダボア5aに摺動自在に嵌装されてコンロッド6を介してクランク軸2に連接されるピストン7とを備える。クランクケース1にはミッションケース8が一体に連設されており,このミッションケース8の左右両側壁により多段変速機Mの,クランク軸2と平行に配置された入力軸10及び出力軸11がそれぞれボールベアリング12,12′;13,13′を介して支承され,これら入力軸10及び出力軸11にわたり,図1で左側から第1速ギヤ列G1,第2速ギヤ列G2,第3速ギヤ列G3及び第4速ギヤ列G4が配設される。そして第2速ギヤ列G2の被動ギヤG2b,及び第3速ギヤ列G3の駆動ギヤG3aがシフトギヤを兼ねており,両シフトギヤG2b,G3aが共に中立位置にあるときは,変速機Mはニュートラル状態にあり,シフトギヤG2bが図で左動又は右動すると第1速ギヤ列G1又は第3速ギヤ列G3が確立し,シフトギヤG3aが左動又は右動すると,第2速ギヤ列G2又は第4速ギヤ列G4が確立するようになっている。上記シフトギヤG2b,G3aは,図示しない公知のペダル式その他のマニュアル式チェンジ装置により作動される。
【0019】
前記クランク軸2の右端と変速機Mの入力軸10の右端とは,クランクケース1及びミッションケース8外で互いに直列関係に接続される変速クラッチCc(遠心油圧クラッチ),トルクコンバータT及び1次減速装置14を介して相互にに連結される。その際,特に,変速クラッチCc,トルクコンバータT及び1次減速装置14の駆動ギヤ14aはクランク軸2上に,クランクケース1の右側壁側から外方に向かって駆動ギヤ14a,トルクコンバータT及び変速クラッチCcの順で取付けられる。そしてこれらを覆う右サイドカバー15aがクランクケース1及びミッションケース8の右端面に接合される。
【0020】
またクランク軸2の左端には,発電機16のロータ17が固着され,それのステータ18は,発電機16を覆ってクランクケース1の左端面に接合される左サイドカバー15bに取付けられる。
【0021】
図1及び図2に示すように,クランク軸2には,その右端面に開口する上流供給油路271と,コンロッド6の大端部を支持するクランクピン外周のニードルベアリング49(潤滑部)に連通する下流供給油路272と,これら両油路271,272を直接連通するオリフィス48と,上流供給油路271から変速クラッチCcに向かって半径方向に延びる第1流入孔431と,上流供給油路271からトルクコンバータTに向かって半径方向に延びる第2流入孔432と,下流供給油路272からトルクコンバータTに向かって半径方向に延びる流出孔45とが設けられる。上流供給油路271には,エンジンEにより駆動されるオイルポンプ44が油溜め46からオイルを吸い上げて油路27を通して上流供給油路271に圧送するようになっている。油溜め46は,クランクケース1,ミッションケース8及び右サイドカバー15aの底部に形成されるものである。
【0022】
変速機Mの出力軸11の左端には,ミッションケース8外で,自動二輪車の後輪(図示せず)を駆動するチェーン式の最終減速装置19が連結される。
【0023】
図1及び図2において,変速クラッチCcは,一端に端壁20aを,また中心部にクランク軸2(入力部材)にスプライン結合されるボス20bを有する円筒状のクラッチケーシング20と,このクラッチケーシング20内にあって上記ボス20bの外周に摺動自在にスプライン嵌合される加圧板21と,クラッチケーシング20の開放端部に油密に固着される受圧板22と,上記加圧板21及び受圧板22の間に介裝される環状の摩擦クラッチ板23とを備え,その摩擦クラッチ板23の内周に後述するポンプ羽根車50(出力部材)の伝動板24がスプライン係合される(図3参照)。
【0024】
加圧板21は,クラッチケーシング20の端壁20a及び周壁との間に遠心油圧室25を画成する。この遠心油圧室25は,クラッチケーシング20のボス20bに設けられる入口弁26を介してクランク軸2の前記第1流入孔431に接続されると共に,端壁20aの外周部に設けられる出口弁28を介してクラッチケーシング20外に開放されるようになっている。
【0025】
図2及び図3に示すように,ボス20bには,クランク軸2と平行に延びる複数個(図示例では3個)の弁孔29と,各弁孔29を経て前記第1流入孔431から遠心油圧室25に至る複数本の通孔30とが穿設されており,各弁孔29に,スプール弁からなる入口弁26が摺動可能に嵌合される。そして,これら入口弁26が図2で右動位置を占めると(図2の上半部側),通孔30を開通し,左動位置を占めると(図2の下半部側参照),通孔30を閉鎖するようになっている。尚,ボス20bの通孔30とクランク軸2の第1流入孔431との連通を確実にするために,クランク軸2及びボス20bの互いに嵌合するスプライン部の一部の歯を切除することが効果的である。
【0026】
またクラッチケーシング20の端壁20aの外周部には,その周方向等間隔置きに複数個(図示例では3個)の出口孔32が穿設され,これら出口孔32を遠心油圧室25側で開閉し得る,リード弁からなる出口弁28の一端が端壁20aにかしめ結合される。
【0027】
端壁20aには,さらに,各出口孔32に連通するガイドカラー33が固着されており,各ガイドカラー33に開弁棒31が摺動可能に嵌合される。この開弁棒31は,その外周に軸方向に延びる溝31aを有しており,図2で右動位置を占めると(図2の上半部側及び図6参照),出口弁28の自己の弾性力による出口孔32に対する閉鎖を許容し,左動位置を占めると(図2の下半部側及び図7参照),出口弁28を遠心油圧室25内方へ撓ませて出口孔32を開放するようになっている。
【0028】
上記入口弁26及開弁棒31の外端には,共通の弁作動板34が連結される。この弁作動板34は,クラッチケーシング20のボス20bに図2で左右方向摺動可能に支承されるもので,その右動位置を規定するストッパ環35がボス20bに係止され,このストッパ環35に向けて弁作動板34を付勢する戻しばね36がクラッチケーシング20及び弁作動板34間に縮設される。
【0029】
弁作動板34には,ボス20bを同心上で囲繞するレリーズベアリング37を介して押圧環38が装着され,この押圧環38の外端面に変速クラッチ操作軸39に固設されたアーム39aが係合し,変速クラッチ操作軸39を往復回動することにより,戻しばね36と協働して,弁作動板34を入口弁26及び開弁棒31と共に左右動させ得るようになっている。
【0030】
変速クラッチ操作軸39には,図5に示すように,それを回動するための電動式又は電磁式の変速クラッチアクチュエータ40が連結され,この変速クラッチアクチュエータ40は,エンジンEのアイドリング状態を検知するアイドリングセンサ41,及び変速機Mの変速操作を検知する変速センサ42の出力信号が入力され,それらの何れの信号にも応動して,弁作動板34を図2で左動するクラッチオフ方向に変速クラッチ操作軸39を回動するようになっている。以上において,弁作動板34,レリーズベアリング37,変速クラッチ操作軸39,変速クラッチアクチュエータ40,アイドリングセンサ41及び変速センサ42は,入口弁26及び出口弁28を交互に開閉する弁作動手段Aを構成する。
【0031】
またクラッチケーシング20の端壁20aには,遠心油圧室25の中心部を外部に連通する複数の空気孔89が穿設される。
【0032】
こゝで変速クラッチCcの作用について説明すると,エンジンEの作動中で,アイドリングセンサ41及び変速センサ42が出力信号を発していない状態では,変速クラッチアクチュエータ40は非作動状態を保持するので,弁作動板34が戻しばね36の付勢力によりクラッチオン位置,即ち図2で右動位置に保持されて,図2の上半部側及び図6に示すように,入口弁26を開弁すると共に,出口弁28の閉弁を許容する。したがって,オイルポンプ44から圧送されたオイルが上流供給油路271から第1流入孔431及び通孔30を経てクラッチケーシング20内の遠心油圧室25に供給されて該室25を満たすことになる。
【0033】
クラッチケーシング20はクランク軸2と共に回転しているから,クラッチケーシング20の遠心油圧室25のオイルは遠心力を受けて油圧を発生し,その油圧をもって加圧板21が摩擦クラッチ板23を受圧板22に対して押圧することにより,加圧板21,受圧板22及び摩擦クラッチ板23の三者は摩擦連結される。即ち変速クラッチCcはオン状態を呈し,クランク軸2の出力トルクを摩擦クラッチ板23からトルクコンバータTに伝達する。
【0034】
一方,エンジンEのアイドリング時又は変速機Mの変速操作時には,アイドリングセンサ41又は変速センサ42が出力信号を出力するので,それを受けた変速クラッチアクチュエータ40が直ちに作動して,変速クラッチ操作軸39を回動し,弁作動板34を図2で左動位置,即ちクラッチオフ位置へ移動する。これにより,図2下半部側に示すように,入口弁26を閉弁すると共に出口弁28を開弁する。その結果,上流供給油路271から遠心油圧室25へのオイル供給が遮断されると共に,遠心油圧室25のオイルが出口孔32及び開弁棒31の溝31aを通ってクラッチケーシング20外に排出されて遠心油圧室25の油圧を低下させ,加圧板21の摩擦クラッチ板23に対する押圧力が激減するため,加圧板21,受圧板22及び摩擦クラッチ板23の三者の摩擦連結は解かれる。即ち変速クラッチCcはオフ状態を呈し,クランク軸2からトルクコンバータTへのトルク伝達を遮断する。クラッチケーシング20外に排出されたオイルは油溜め46に還流する。
【0035】
その状態から,発進のためにエンジンEの回転が加速され,又は変速操作が完了することにより,アイドリングセンサ41及び変速センサ42が共に出力信号を停止すると,変速クラッチアクチュエータ40は直ちに非作動状態に戻り,弁作動板34は戻しばね36の付勢力をもって右動位置,即ちクラッチオン位置まで一気に後退して,再び入口弁26を開弁すると共に,出口弁28を閉弁させるので,前述の作用から明らかなように変速クラッチCcは,半クラッチ状態を経ずにオフ状態からオン状態に復帰することになる。即ち,変速クラッチCcは半クラッチ領域を持たないオン・オフ型であり,そのトルク容量は,トルクコンバータTのそれより大きく設定される。
【0036】
而して,入口弁26は,クランク軸2の上流供給油路271とクラッチケーシング20の遠心油圧室25とを最短距離で結ぶべくクラッチケーシング20のボス20bに設けた通孔30に配設されるので,出口弁28を閉弁して入口弁26を開弁したときには,上流供給油路271から遠心油圧室25への作動油の供給を迅速に行うことができて,変速クラッチCcのクラッチオン状態への応答性を高めることができる。
【0037】
また入口弁26及び出口弁28はクラッチケーシング20の半径方向に離隔していても,これら入口弁26及び出口弁28は共通の弁作動板34により連動,連結されているので,弁作動板34の単純な往復操作により,入口弁26及び出口弁28の交互開閉作動を簡単,確実に行うことができる。
【0038】
さらにクラッチケーシング20の端壁20aには,遠心油圧室25の中心部を外部に連通する複数の空気孔89が穿設されるので,入口弁26を閉弁して出口弁28を開弁したときには,空気孔89から遠心油圧室25への空気の流入により,遠心油圧室25からの出口弁28への作動油の排出をスムーズに行うことができて,変速クラッチCcのクラッチオフ状態への応答性を高めることができる。また出口弁28を閉弁すると共に入口弁26を開弁したときには,遠心油圧室25内の空気が空気孔89から外部に流出することにより,上流供給油路271から遠心油圧室25への作動油の充填をスムーズに行うことができて,変速クラッチCcのクラッチオン状態への応答性をも高めることができる。
【0039】
しかも出口弁28は,クラッチケーシング20の端壁20aの出口孔32を遠心油圧室25側で開閉し得るリード弁からなるものであるから,その閉弁時には,遠心油圧室25の遠心油圧がその閉弁力として作用することになり,出口弁28のシール性が良好である。
【0040】
再び図2おいて,トルクコンバータTは,ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52からなっており,そのポンプ羽根車50は,前記受圧板22に隣接して配置されると共に,そのボス50aがニードルベアリング53を介してクランク軸2に支承される。このポンプ羽根車50の外側面に,前記摩擦クラッチ板23の内周にスプライン係合する伝動板24が固着されている。したがって,摩擦クラッチ板23の伝動トルクは,この伝動板24を介してポンプ羽根車50に伝達される。
【0041】
またクランク軸2には,ポンプ羽根車50のボス50aと,クランク軸2を支持する前記ボールベアリング3′との間に配置されるステータ軸60の右端部がニードルベアリング54を介して支承され,このステータ軸60にステータ羽根車52のボス52aが凹凸係合により連結される。ステータ軸60の左端部にはステータアーム板56が固着されており,このステータアーム板56が中間部に有する円筒部56aの外周面がボールベアリング57を介してクランクケース1に支承される。またステータアーム板56の外周部はフリーホイール58を介してクランクケース1に支持される。
【0042】
ポンプ羽根車50に対向するタービン羽根車51は中心部にタービン軸59を一体に有し,その右端部はニードルベアリング61を介してステータ軸60に支承され,その左端部はステータアーム板56の円筒部56a内周面にボールベアリング62を介して支承される。このタービン軸59とクランク軸2間には,ステータ軸60の横孔63を貫通して一方向クラッチ64が設けられる。この一方向クラッチ64は,タービン軸59に逆負荷が加えられたときオン状態となって,タービン軸59及びクランク軸2間を直結するようになっている。
【0043】
図2に示すように,ポンプ羽根車50のボス50a,タービン軸59及びステータ羽根車52のボス52aの各間の間隙がトルクコンバータTの流体入口47iとされ,またタービン軸59のタービン羽根車51外側へ延びる部分にトルクコンバータTの流体出口47oが設けられ,その流体入口47iはクランク軸2の前記第2流入孔432と連通し,流体出口47oは,ステータ軸60の横孔63を介してクランク軸2の前記流出孔45に連通する。したがって,オイルポンプ44からクランク軸2の上流供給油路271に供給されたオイルが第2流入孔432に入ると,流体入口47iからポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室に入り,その油室及び後述するロックアップクラッチLcの油圧室77を満たした後,流体出口47oから流出孔45を経てクランク軸2の下流供給油路272へと流れるようになっている。
【0044】
タービン軸59には,1次減速装置14の駆動ギヤ14aが一体に形成され,これに噛合する被動ギヤ14bが変速機Mの入力軸10にスプライン結合される。こうして構成される1次減速装置14は,クランクケース1とトルクコンバータTとの間に配置される。
【0045】
そのトルクコンバータTの作用について説明する。
【0046】
クランク軸2の出力トルクがオン状態の変速クラッチCcを介してポンプ羽根車50に伝達されると,そのトルクは,トルクコンバータT内を満たしたオイルの作用によりタービン羽根車51に流体的に伝達される。このとき,両羽根車50,51間でトルクの増幅作用が生じていれば,それに伴う反力はステータ羽根車52に負担され,ステータ羽根車52は,フリーホイール58のロック作用によりクランクケース1に固定的に支持される。またトルクの増幅作用が生じていなければ,ステータ羽根車52は,フリーホイール58の空転作用により空転が可能となるから,ポンプ羽根車50,タービン羽根車51及びステータ羽根車52の三者は,共に同方向へ回転する。
【0047】
ポンプ羽根車50からタービン羽根車51に伝達されたトルクは1次減速装置14を介して変速機Mの入力軸10に伝達され,そして確立を選択された変速ギヤ列G1〜G4,出力軸11及び最終減速装置19を順次経て図示しない後輪へと伝達され,それを駆動する。
【0048】
走行中のエンジンブレーキ時には,タービン軸59に逆負荷トルクが加わることにより,一方向クラッチ64がオン状態となるから,タービン軸59及びクランク軸2相互が直結され,逆負荷トルクがトルクコンバータTを経由することなくクランク軸2に伝達されることになり,良好なエンジンブレーキ効果を得ることができる。
【0049】
再び図2において,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間には,それらを直結状態にし得るロックアップクラッチLcが設けられる。このロックアップクラッチLcは,ポンプ羽根車50の外周部に連設されてタービン羽根車51を囲繞する円筒状のクラッチケーシング70と,タービン軸59の外周面に回転自在に支承された支持筒71に摺動可能にスプライン嵌合される加圧板72と,この加圧板72に対向してクラッチケーシング70の端部に油密に固着されると共に,上記支持筒71のスプライン嵌合される受圧板73と,これら加圧板72及び受圧板73間に介裝される環状の摩擦クラッチ板74とを備え,その摩擦クラッチ板74は,タービン羽根車51の外側面に固着された伝動板75に外周部がスプライン係合される(図8参照)。加圧板72は,受圧板73に対する後退位置が支持筒71に係止されたストッパ環76によって規定される。
【0050】
クラッチケーシング70の内部は受圧板73により油圧室77に画成され,この油圧室77は,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51の対向間隙を通してそれらの内部と連通していて,オイルが満たされ,トルクコンバータTの作動時には,その内部と同様に高圧となる。
【0051】
図2,図10及び図11に示すように,加圧板72及び受圧板73には,摩擦クラッチ板74の内周側で周方向等間隔置きに複数個(図示例では3個)の弁孔78,79がそれぞれ穿設され,加圧板72の弁孔78を油圧室77側で開閉し得る,リード弁からなる制御弁80の一端が加圧板72にかしめ結合される。
【0052】
加圧板72及び受圧板73の弁孔78,79は互いに同軸上に配置され,これらに制御弁80の開閉を制御する制御棒81が摺動可能に嵌合される。この制御棒81は,その外周に軸方向に延びる連通溝81aを有しており,図2で左動位置を占めると(図2の上半部側及び図10参照),制御弁80の自己の弾性力による弁孔78に対する閉鎖を許容すると共に,制御棒81の連通溝81aにより摩擦クラッチ板74の内周側を受圧板73の弁孔79外へ開放し,また右動位置を占めると(図2の下半部側及び図11参照),この制御棒81により受圧板73の弁孔79を閉鎖すると共に,制御弁80を油圧室77内方へ撓ませて,摩擦クラッチ板74の内周側で加圧板72の両側面間を制御棒81の連通溝81aを介して連通するようになっている。
【0053】
上記制御棒81の外端には,弁作動板82が連結される。この弁作動板82は,前記支持筒71に図2で左右方向摺動可能に支承されるもので,その左動位置を規定するストッパ環83が支持筒71に係止され,このストッパ環83に向けて弁作動板82を付勢する戻しばね84が受圧板73及び弁作動板82間に縮設される。
【0054】
弁作動板82には,支持筒71と同心配置のレリーズベアリング85を介して,ロックアップクラッチ操作軸86のアーム86aが係合され,ロックアップクラッチ操作軸86を往復回動することにより,戻しばね84と協働して,弁作動板82を制御棒81と共に左右動させ得るようになっている。
【0055】
ロックアップクラッチ操作軸86には,図5に示すように,それを回動するための電動式又は電磁式のロックアップクラッチアクチュエータ87が連結され,このロックアップクラッチアクチュエータ87は,所定値以下の車速を検知する車速センサ88の出力信号が入力され,その信号に応動して,弁作動板82を図2で右動する方向にロックアップクラッチ操作軸86を回動するようになっている。
【0056】
このロックアップクラッチLcの作用について説明する。車速センサ88が所定値以下の車速を検知して出力信号を発すると,それを受けてロックアップクラッチアクチュエータ87は作動して,ロックアップクラッチ操作軸86を回動し,弁作動板82を図2で右動位置へ移動する。これに伴い,図2下半部側及び図11に示すように,制御棒81が制御弁80を開き,連通溝81aを介して加圧板72の両側面を連通させるので,加圧板72の両側面に油圧室77の油圧が等しく作用すること,及び制御棒81の制御弁80に対する押圧力で加圧板72が後退位置へ押圧されることにより,加圧板72,受圧板73及び摩擦クラッチ板74の三者の摩擦連結は起こらず,ロックアップクラッチLcはオフ状態を呈する。したがって,この状態では,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51の相対回転が可能であり,したがってトルクの増幅作用が可能である。また,この場合,受圧板73の弁孔79は制御棒81により閉鎖されるので,油圧室77から弁孔79への油圧の無用なリークを防ぐことができる。
【0057】
車速が所定値以上に上昇して,車速センサ88が出力信号を停止すると,ロックアップクラッチアクチュエータ87は非作動状態に戻り,弁作動板82は,図2の上半部側及び図10に示すように,戻しばね84の付勢力をもって左動位置まで後退して,制御弁80の弁孔78に対する閉弁を許容すると共に,摩擦クラッチ板74の内周側を制御棒81の連通溝81aを介して弁孔29外に開放するため,加圧板72は,その内側面にのみ油圧室77の油圧を受けて,摩擦クラッチ板74を受圧板73に対して押圧する。その結果,加圧板72,受圧板73及び摩擦クラッチ板74の三者が摩擦連結して,ロックアップクラッチLcはオン状態となり,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51を相互に直結させるので,車両の高速走行時には,両羽根車50,51相互の滑りを無くし,伝動効率を高めることができる。
【0058】
ところで,エンジンEの運転中,オイルポンプ44から吐出されたオイルは,先ず上流供給油路271に入り,第1流入孔431を経て変速クラッチCcの遠心油圧室25に入り,その作動と冷却に寄与し,また第2流入孔432を経てポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間の油室及びロックアップクラッチLcの油圧室77に流入して,トルクコンバータT及びロックアップクラッチLcの作動と冷却に寄与する。そして,油圧室77から流出孔45から下流供給油路272へ出たオイルは,クランクピン外周のニードルベアリング49に供給され,その潤滑に寄与し,その潤滑を終えたオイルは,クランク軸2の回転に伴い周囲に飛散してピストン7等の潤滑に供される。上記オイルポンプ44は,元来,エンジンEに潤滑用オイルを供給するものであるが,そのオイルを変速クラッチCcやトルクコンバータT,ロックアップクラッチLcのための作動オイルに利用するようにしたので,作動オイル供給のための専用オイルポンプを設ける必要がなく,構成の簡素化を図ることができる。
【0059】
またクランク軸2に設けられた上流供給油路271及び下流供給油路272は,オリフィス48を介して直接的にも連通しているから,オイルポンプ44から上流供給油路271 に送られたオイルの一部は,トルクコンバータT等を経由せず,オリフィス48を通して下流供給油路272へ直接移るので,エンジンEの潤滑と冷却を良好に行うことができる。
【0060】
一方,トルクコンバータTにおいては,エンジンEのアイドリング時でも,ポンプ羽根車50及びタービン羽根車51間で多少ともトルク伝達が生ずるところ,アイドリング時には,変速クラッチCcが前述のようにオフ状態に制御されるので,多段変速機Mの第1速ギヤ列G1が確立していても,トルクコンバータTの存在に関係なく,変速クラッチCc以降への動力伝達を遮断して,クリープ現象を防ぐことができる。このことは,多段変速機Mの各伝動部材が無負荷状態に置かれることを意味するから,車両の発進のために,図1でシフトギヤG2bを左方へシフトして,第1速ギヤ列G1を確立する場合でも,トルクショックを伴うことなく,スムーズなシフトが可能となる。そして,発進すべくエンジンEの回転を加速すると,変速クラッチCcは半クラッチ領域を飛び越えて一気にオン状態へと移行するが,それに伴うトルクショックは,トルクコンバータTのポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互の滑り作用により吸収され,それらの増幅作用も手伝って,スムーズな発進を行うことができ,乗り心地の改善に寄与し得る。
【0061】
また走行中,シフトギヤG2b,G3aを所望の方向へシフトして,所望の変速を行う際にも,その都度,前述のように変速クラッチCcがオフ状態に制御され,多段変速機Mの各伝動部材を無負荷状態にするため,トルクショックを伴うことなく,スムーズな変速が可能となる。変速後においても,変速クラッチCcは半クラッチ領域を飛び越えて一気にオン状態へと移行するが,それに伴うトルクショックも,トルクコンバータTのポンプ羽根車50及びタービン羽根車51相互の滑り作用により吸収される。したがって乗員に違和感を与えず,乗り心地が改善される。
【0062】
このように変速クラッチCcのオン・オフに伴い生ずるトルクショックをトルクコンバータTに吸収させるようにしたことで,変速クラッチCcを,半クラッチ領域を持たないオン・オフ型に構成することを可能にしたのであり,半クラッチによる摩擦部の発熱及び摩耗を回避して,変速クラッチCcの耐久性を向上させることができる。
【0063】
また変速クラッチCcのトルク容量は,トルクコンバータTのそれ以上に設定されるので,全負荷状態でも,変速クラッチCcの滑りを防ぎ,その耐久性を確保することができる。
【0064】
またクランク軸2は,これが減速装置14を介して駆動する多段変速機Mの入力軸10より高速で回転するものであるから,このクランク軸2に取付けられるトルクコンバータT及び変速クラッチCcが負担する伝達トルクは比較的小さく,それだけトルクコンバータT及び変速クラッチCcの各容量を小さくして,それらのコンパクト化が可能となり,トルクコンバータT及び変速クラッチCcの併設によるも,パワーユニットPのコンパクト化を図ることができる。
【0065】
しかも1次減速装置14,トルクコンバータT及び変速クラッチCcのうち,1次減速装置14がクランクケース1の右側壁に最も近接して,次にトルクコンバータTが近接して配置されるので,1次減速装置14の作動に伴いクランク軸2及び入力軸10に加わる曲げモーメントを最小とすることができ,またトルクコンバータTは変速クラッチCcより重量が大であるが,それらの重量によりクランク軸2に加わる曲げモーメントも最小にすることができ,トルクコンバータT及び変速クラッチCcのコンパクト化と相俟って,クランク軸2,入力軸10及びこれらを支持するベアリング3′,12′の耐久性向上を図ることができる。
【0066】
次に,図12及び図13により本発明の第実施例について説明する。この第実施例は,出口弁128の構成において前参考例と異なる。即ち,クラッチケーシング20の外周壁20cに,遠心油圧室25に開口して周方向等間隔置きに並ぶ複数個の出口孔132が穿設され,これら出口孔132に対応して前記外周壁20cの外周面に摺動可能に密接する舌片状の複数の出口弁128が弁作動板34に一体に形成され,各出口弁128内周面には逃がし溝91が設けられる。その他の構成は前参考例と同様であるので,図中,前参考例との対応部分には,同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0067】
而して,弁作動板34の,図12に示すクラッチオン位置(右動位置)では,出口弁128が出口孔132の外方開口端を閉鎖し,反対に図13に示すクラッチオフ位置(左動位置)では,出口孔132に逃がし溝91を合わせて,遠心油圧室25を外部に開放する。この第実施例によれば,出口弁128の弁作動板34への一体形成により,出口弁128の構造を簡素化することができる。
【0068】
次に,図14〜図16により本発明の第2参考例について説明する。この第2参考例も出口弁228の構成において前記第1参考例と異なる。即ち,クラッチケーシング20の外周壁20cに,遠心油圧室25に開口して周方向等間隔置きに並ぶ複数個の出口孔232が穿設されると共に,各出口孔232の遠心油圧室25への開口部が円錐状の弁座232aに形成され,これら弁座232aに着座し得るように複数の球状の出口弁228が配設される。これら出口弁228を保持するため,加圧板21に,各出口弁228を収容する保持凹部93と,この保持凹部93に連続して各出口弁228を囲むU字状の保持壁100が形成される。
【0069】
クラッチケーシング20の端壁20aには,各出口弁228に対応して複数のガイド孔94が穿設され,これらガイド孔94を摺動自在に貫通して,対応する出口弁228の側面に対向する開弁棒95が弁作動板34に固着される。その他の構成は前記第1参考例と同様であるので,図中,第1参考例との対応部分には,同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0070】
而して,弁作動板34の,図14に示すクラッチオン位置(右動位置)では,開弁棒95が出口弁228から離れていて,出口弁228は,それ自体の遠心力と遠心油圧室25の遠心油圧により弁座232aに着座することにより,出口孔232を確実に閉鎖することができる。また図15に示すクラッチオフ位置では,開弁棒95が対応する出口弁228を加圧板21の保持凹部93側へ押圧して,弁座232aから離座させるから,出口孔232を開放することができる。
【0071】
次に,図17及び図18により本発明の第3参考例について説明する。この第3参考例は,入口弁126及び出口弁328の構成において前記第1参考例と異なる。即ち,弁作動板34は,前記第1参考例とは反対に左動位置(図17参照)がクラッチオン位置であり,右動位置(図18参照)がクラッチオフ位置であり,したがって入口弁126は,弁作動板34の左動位置で開弁し,右動位置で閉弁するように構成される。
【0072】
一方,クラッチケーシング20の端壁20aの外周部には,周方向に等間隔に並ぶ複数の出口孔332が穿設され,これらに係合する複数の出口弁328が弁作動板34に固着される。各出口弁328は,根元を弁作動板34にかしめて固着される円柱状弁部328aと,この弁部328aの先端に同軸に形成された,それより小径の円柱状ガイド部328bとからなっており,弁作動板34の左動位置で弁部328aが出口孔332に密合して,それを閉鎖し,弁作動板34の右動位置でガイド部328bのみが出口孔332に緩く係合して,出口孔332を開放するようになっている。
【0073】
したがって,弁作動板34の左動位置(クラッチオン位置)では,入口弁126が開弁すると共に,出口弁328が閉弁するので,上流供給油路271から遠心油圧室25へ作動油が供給され,変速クラッチCcをクラッチオン状態にすることができ,また弁作動板34の右動位置(クラッチオフ位置)では,入口弁126が閉弁すると共に,出口弁328が開弁するので,遠心油圧室25の作動油が出口弁328から外部に排出され,変速クラッチCcをクラッチオフ状態にすることができる。特に,この第3参考例の場合,弁作動板34に固着される出口弁328に,出口孔332に緩く係合するガイド部328bが形成されるので,このガイド部328bの案内作用により弁部328aの出口孔332への密合をスムーズに行うことができる。
【0074】
次に,図19及び図20により本発明の第4参考例について説明する。この第4参考例は,クラッチケーシング20の出口孔332に係合する出口弁428のガイド部428bを円錐状に形成した点を除けば,上記第3参考例と同様であり,図中,第3参考例との対応部分には,同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0075】
この第4参考例によれば,円錐状のガイド部528bの調心,案内作用により,弁部528aの出口孔332への密合をよりスムーズに行うことができる。
【0076】
次に図21及び図22により本発明の第実施例について説明する。この第実施例では,クラッチケーシング20の外周壁20cに,遠心油圧室25に開口して周方向等間隔置きに並ぶ複数個の出口孔532が穿設されると共に,各出口孔532の遠心油圧室25への開口部が円錐状の弁座532aに形成され,これら弁座532aに着座し得るように複数の球状の出口弁528が配設される。これら出口弁528を保持するためには,クラッチケーシング20と共に回転する加圧板21に,図15の参考例と同様な保持凹部93及び保持壁100が形成される。各出口弁528は,弁座532aへの着座時には,出口孔532からクランクケーシング20の外周面外方に一部528aを突出させるようになっている。
【0077】
一方,弁作動板34には,クラッチケーシング20の外周に摺動可能に嵌合する円筒部34aが一体に連設され,この円筒部34aには,クラッチケーシング20の外周面に摺動自在に嵌合するガイド面102と,このガイド面102に環状段部を介して連なると共に,円筒部34aの開放端まで延びる逃がし面103とが設けられる。ガイド面102は,これが出口孔532との対向位置にくると,出口弁528の,出口孔532から突出した部分528aを半径方向内方へ押圧するようになっており,またこの逃がし面103は,これが出口孔532との対向位置にきても,閉弁状態の出口弁528と干渉しないように,クラッチケーシング20の外周面から充分に離れている。その他の構成は前記第1参考例と同様であるので,図21及び図22中,第1参考例との対応部分には,同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0078】
而して,図21に示すように,弁作動板34のクラッチオン位置(右動位置)では,円筒部34aの逃がし面103がクラッチケーシング20の出口孔532との対向位置にくるが,この逃がし面103は,クラッチケーシング20の外周面から充分に離れているので,弁座532aに着座した出口弁528が一部528aを出口孔532外へ突出していても,円筒部34aが出口弁528と干渉することはなく,したがって出口弁228は,それ自体の遠心力と遠心油圧室25の遠心油圧により弁座532aに対する着座状態を確保することができる。
【0079】
また図22に示すように,弁作動板34のクラッチオフ位置(左動位置)では,円筒部34aのガイド面102がクラッチケーシング20の出口孔532との対向位置に移る。このときガイド面102は,出口弁528の,出口孔532外に突出させた部分528aを押圧することにより,出口弁528を弁座532aから離座させるので,出口孔532を開放することができる。出口孔532の開放時,遠心油圧室25から出口孔532を出た作動油は,円筒部34aの逃がし面103とクラッチケーシング20の外周面との間隙を通ってクラッチケーシング20外に流出する。
【0080】
最後に,図23により本発明の第実施例について説明する。
【0081】
この第実施例は,図21の第実施例において,その入口弁26をオリフィス101に置き換えたものである。即ち,クラッチケーシング20のボス20bに設けられて,クランク軸2の第1流入孔431とクラッチケーシング20の遠心油圧室25との間を接続する通孔30には,上流供給油路271から遠心油圧室25への作動油の流量を制限するオリフィス101が設けられる。その他の構成は,図21の第実施例と同様であるので,図23中,第実施例との対応部分には,同一の参照符号を付して,その説明を省略する。
【0082】
而して,弁作動板34をクラッチオフ位置に操作して出口弁528を開弁すれば,上流供給油路271から遠心油圧室25へ流入する作動油の流量がオリフィス101により制限されるのに対して,遠心油圧室25内の作動油は出口孔532からスムーズに流出するので,遠心油圧室25は速やかに減圧して,変速クラッチCcをオフ状態にすることができる。また弁作動板34をクラッチオン位置に操作して出口弁528を閉弁すれば,オリフィス101を通過した作動油により遠心油圧室25が満たされるので,クランク軸2の回転数の時,遠心油圧室25が昇圧して,変速クラッチCcをオン状態にすることができる。特に,この実施例においても,クラッチケーシング20のボス20bに設けられた通孔30を通してクランク軸2の上流供給油路271から遠心油圧室25へ作動油を導入するので,上流供給油路271と遠心油圧室25との間の油路を最短にすることができ,変速クラッチCcの応答性を高めることができる。しかも出口弁を開閉するのみで,遠心油圧室25からの作動油の排出及び遠心油圧室25への作動油の供給を行うので,構成の簡素化を図ることができる。
【0083】
本発明は上記実施例に限定されるものではなく,その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば,図23の第実施例のオリフィス101は,他の実施例の入口弁26とも置き換えることができる。また図22の実施例において,球状の出口弁228,528を閉弁方向に付勢するばねを設けることもできる。
【0084】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を開閉する入口弁を設けると共にこの入口弁に弁作動手段を接続し,また,前記クラッチケーシングの外周壁に前記遠心油圧室の内外を連通する出口孔を設け,前記外周壁の外周面に摺動可能に密接してこの出口孔を開閉する出口弁を,前記弁作動手段に一体に形成して,該弁作動手段の作動により,前記入口弁及び出口弁を交互に開閉するようにしたので,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,入口弁を開弁すると共に出口弁を閉弁したとき,入力部材の作動供給油路から遠心油圧室への作動油の供給を迅速に行うことができて,遠心油圧クラッチのクラッチオン状態への応答性を高めることができる。また,出口弁の弁作動手段との一体化により,出口弁の構造の簡素化を図ることができる。
【0085】
また本発明の第2の特徴によれば,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに,前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を連通すると共に,前者から後者への作動油の流量を制限するオリフィスを設ける一方,前記クラッチケーシングの外周壁に,前記遠心油圧室の内外を連通する出口孔を設け,前記外周壁の外周面に摺動可能に密接してこの出口孔を開閉する出口弁を,これを開閉する弁作動手段に一体に形成したので,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,しかも出口弁を開閉するのみで,遠心油圧室からの作動油の排出及び遠心油圧室への作動油の供給を行うことができ,構成の簡素化を図ることができる。また,出口弁の弁作動手段との一体化により,出口弁の構造の簡素化を図ることができる。
【0086】
さらに本発明の第3の特徴によれば,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を開閉する入口弁を設ける一方,前記クラッチケーシングの外周壁に,前記遠心油圧室の内外を連通し且つその遠心油圧室への開口端部を弁座に形成した出口孔を設けて,この弁座に遠心力で着座し得る出口弁を設け,これら入口弁及び出口弁に,これらを交互に開閉する弁作動手段を接続し,前記出口弁は前記弁座への着座時に前記出口孔より前記クラッチケーシングの外周側に突出する部分を有し,前記弁作動手段を,この弁作動手段のクラッチオン位置では前記出口弁の前記弁座(への着座を許容し,クラッチオフ位置では前記出口弁の前記部分を半径方向内方へ押圧してこの出口弁を前記弁座から離座させるように構成したので,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,入口弁を開弁すると共に出口弁を閉弁したとき,入力部材の作動供給油路から遠心油圧室への作動油の供給を迅速に行うことができて,遠心油圧クラッチのクラッチオン状態への応答性を高めることができる。また,弁作動手段のクラッチオン位置では,出口弁は,それ自体の遠心力と遠心油圧室の遠心油圧により弁座に着座して,出口孔を確実に閉鎖することができ,そのシール性が高い。しかも出口弁と弁作動手段との間にクラッチケーシングを貫通する部分が存在しないので,遠心油圧室の油密性を容易に確保することができる。
【0087】
さらにまた本発明の第4の特徴によれば,入力部材に連結されて一端面を開放したクラッチケーシングと,このクラッチケーシング内に摺動自在に装着される加圧板と,前記クラッチケーシングの開放端部に固着される受圧板と,前記加圧板及び受圧板間に介裝され,出力部材に連結される摩擦クラッチ板とを備え,前記加圧板と前記クラッチケーシングの端壁との間に,入力部材に設けられた作動油供給油路に連なる遠心油圧室を画成し,この遠心油圧室に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板及び受圧板間で前記摩擦クラッチ板を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシングの,前記入力部材に連結されるボスに,前記作動油供給油路及び遠心油圧室間を連通すると共に,前者から後者への作動油の流量を制限するオリフィスを設ける一方,前記クラッチケーシングの外周壁に,前記遠心油圧室の内外を連通し且つその遠心油圧室への開口端部を弁座に形成した出口孔を設けて,この弁座に遠心力で着座し得る出口弁を設け,この出口弁に,これを開閉する弁作動手段を接続し,前記出口弁は前記弁座への着座時に出口孔より前記クラッチケーシングの外周側に突出する部分を有し,前記弁作動手段を,この弁作動手段のクラッチオン位置では前記出口弁の前記弁座への着座を許容し,クラッチオフ位置では前記出口弁の前記部分を半径方向内方へ押圧してこの出口弁を前記弁座から離座させるように構成したので,入力軸の作動油供給油路とクラッチケーシングの油室との間が最短距離の油路で接続することが可能となり,しかも出口弁を開閉するのみで,遠心油圧室からの作動油の排出及び遠心油圧室への作動油の供給を行うことができ,構成の簡素化を図ることができる。また,弁作動手段のクラッチオン位置では,出口弁は,それ自体の遠心力と遠心油圧室の遠心油圧により弁座に着座して,出口孔を確実に閉鎖することができ,そのシール性が高い。しかも出口弁と弁作動手段との間にクラッチケーシングを貫通する部分が存在しないので,遠心油圧室の油密性を容易に確保することができる。
【0088】
さらにまた本発明の第5の特徴によれば,前記クラッチケーシングに,前記遠心油圧室の内周側を外部に連通する空気孔を設けたので,入口弁を閉弁すると共に出口弁を開弁したとき,又は入口弁をオリフィスに置き換えたものにおいて出口弁を開弁したときには,空気孔から遠心油圧室への空気の流入により,遠心油圧室からの出口弁への作動油の排出をスムーズに行うことができて,遠心油圧クラッチのクラッチオフ状態への応答性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1参考例を示すもので,伝動装置を備えた自動二輪車用パワーユニットの縦断面図。
【図2】図2は上記伝動装置の拡大縦断面図。
【図3】図2の3−3線断面図。
【図4】図2の4−4矢視図。
【図5】上記伝動装置の側面図。
【図6】図2の変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)の出口弁を閉弁状態で示す拡大図。
【図7】同出口弁を開弁状態で示す拡大図。
【図8】図2の8−8線断面図。
【図9】図2の9−9線断面図。
【図10】図2のロックアップクラッチの制御弁を閉弁状態で示す拡大図。
【図11】同制御弁を開弁状態で示す拡大図。
【図12】本発明の第実施例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図。
【図13】同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図。
【図14】本発明の第2参考例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図。
【図15】同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図。
【図16】図14の16−16線断面図。
【図17】本発明の第3参考例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図。
【図18】同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図。
【図19】本発明の第4参考例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図。
【図20】同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図。
【図21】本発明の第実施例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図。
【図22】同クラッチのクラッチオフ状態を示す縦断面図。
【図23】本発明の第実施例に係る変速クラッチ(遠心油圧クラッチ)をクラッチオン状態で示す縦断面図。
【符号の説明】
A・・・・・・弁作動手段
Cc・・・・・遠心油圧クラッチとしての変速クラッチ
2・・・・・・入力部材としてのクランク軸
20・・・・・クラッチケーシング
20a・・・・クラッチケーシングの端壁
20b・・・・クラッチケーシングのボス
20c・・・・クラッチケーシングの外周壁
21・・・・・加圧板
22・・・・・受圧板
23・・・・・摩擦クラッチ板
25・・・・・遠心油圧室
26・・・・・入口
271 ・・・・作動油供給油
128・・・・出口
528・・・・出口
132・・・・出口
532・・・・出口孔
532a・・・弁
89・・・・・空気
101・・・・オリフィス

Claims (5)

  1. 入力部材(2)に連結されて一端面を開放したクラッチケーシング(20)と,このクラッチケーシング(20)内に摺動自在に装着される加圧板(21)と,前記クラッチケーシング(20)の開放端部に固着される受圧板(22)と,前記加圧板(21)及び受圧板(22)間に介裝され,出力部材(50)に連結される摩擦クラッチ板(23)とを備え,前記加圧板(21)と前記クラッチケーシング(20)の端壁(20a)との間に,入力部材(2)に設けられた作動油供給油路(271)に連なる遠心油圧室(25)を画成し,この遠心油圧室(25)に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板(21)及び受圧板(22)間で前記摩擦クラッチ板(23)を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,
    前記クラッチケーシング(20)の,前記入力部材(2)に連結されるボス(20b)に前記作動油供給油路(271)及び遠心油圧室(25)間を開閉する入口弁(26)を設けると共にこの入口弁(26)に弁作動手段(A)を接続し,また,前記クラッチケーシング(20)の外周壁(20c)に前記遠心油圧室(25)の内外を連通する出口孔(132)を設け,前記外周壁(20c)の外周面に摺動可能に密接してこの出口孔(132)を開閉する出口弁(128)を,前記弁作動手段(A)に一体に形成して,該弁作動手段(A)の作動により,前記入口弁(26)及び出口弁(128)を交互に開閉するようにしたことを特徴とする,遠心油圧クラッチ。
  2. 入力部材(2)に連結されて一端面を開放したクラッチケーシング(20)と,このクラッチケーシング(20)内に摺動自在に装着される加圧板(21)と,前記クラッチケーシング(20)の開放端部に固着される受圧板(22)と,前記加圧板(21)及び受圧板(22)間に介裝され,出力部材(50)に連結される摩擦クラッチ板(23)とを備え,前記加圧板(21)と前記クラッチケーシング(20)の端壁(20a)との間に,入力部材(2)に設けられた作動油供給油路(271)に連なる遠心油圧室(25)を画成し,この遠心油圧室(25)に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板(21)及び受圧板(22)間で前記摩擦クラッチ板(23)を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,
    前記クラッチケーシング(20)の,前記入力部材(2)に連結されるボス(20b)に,前記作動油供給油路(271)及び遠心油圧室(25)間を連通すると共に,前者(271)から後者(25)への作動油の流量を制限するオリフィス(101)を設ける一方,前記クラッチケーシング(20)の外周壁(20c)に,前記遠心油圧室(25)の内外を連通する出口孔(132)を設け,前記外周壁(20c)の外周面に摺動可能に密接してこの出口孔(132)を開閉する出口弁(128)を,これを開閉する弁作動手段(A)に一体に形成したことを特徴とする,遠心油圧クラッチ。
  3. 入力部材(2)に連結されて一端面を開放したクラッチケーシング(20)と,このクラッチケーシング(20)内に摺動自在に装着される加圧板(21)と,前記クラッチケーシング(20)の開放端部に固着される受圧板(22)と,前記加圧板(21)及び受圧板(22)間に介裝され,出力部材(50)に連結される摩擦クラッチ板(23)とを備え,前記加圧板(21)と前記クラッチケーシング(20)の端壁(20a)との間に,入力部材(2)に設けられた作動油供給油路(27 1 )に連なる遠心油圧室(25)を画成し,この遠心油圧室(25)に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板(21)及び受圧板(22)間で前記摩擦クラッチ板(23)を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,
    前記クラッチケーシング(20)の,前記入力部材(2)に連結されるボス(20b)に前記作動油供給油路(27 1 )及び遠心油圧室(25)間を開閉する入口弁(26)を設ける一方,前記クラッチケーシング(20)の外周壁(20c)に,前記遠心油圧室(25)の内外を連通し且つその遠心油圧室(25)への開口端部を弁座(532a)に形成した出口孔(532)を設けて,この弁座(532a)に遠心力で着座し得る出口弁(528)を設け,これら入口弁(26)及び出口弁(528)に,これらを交互に開閉する弁作動手段(A)を接続し,
    前記出口弁(528)は前記弁座(532a)への着座時に前記出口孔(532)より前記クラッチケーシング(20)の外周側に突出する部分(528a)を有し,前記弁作動手段(A)を,この弁作動手段(A)のクラッチオン位置では前記出口弁(528)の前記弁座(532a)への着座を許容し,クラッチオフ位置では前記出口弁(528)の前記部分(528a)を半径方向内方へ押圧してこの出口弁(528)を前記弁座(532a)から離座させるように構成したことを特徴とする,遠心油圧クラッチ。
  4. 入力部材(2)に連結されて一端面を開放したクラッチケーシング(20)と,このクラッチケーシング(20)内に摺動自在に装着される加圧板(21)と,前記クラッチケーシング(20)の開放端部に固着される受圧板(22)と,前記加圧板(21)及び受圧板(22)間に介裝され,出力部材(50)に連結される摩擦クラッチ板(23)とを備え,前記加圧板(21)と前記クラッチケーシング(20)の端壁(20a)との間に,入力部材(2)に設けられた作動油供給油路(27 1 )に連なる遠心油圧室(25)を画成し,この遠心油圧室(25)に供給された作動油が遠心力を受けて発生する油圧により前記加圧板(21)及び受圧板(22)間で前記摩擦クラッチ板(23)を挟圧するようにした,遠心油圧クラッチにおいて,
    前記クラッチケーシング(20)の,前記入力部材(2)に連結されるボス(20b)に,前記作動油供給油路(27 1 )及び遠心油圧室(25)間を連通すると共に,前者(27 1 )から後者(25)への作動油の流量を制限するオリフィス(101)を設ける一方,前記クラッチケーシング(20)の外周壁(20c)に,前記遠心油圧室(25)の内外を連通し且つその遠心油圧室(25)への開口端部を弁座(532a)に形成した出口孔(532)を設けて,この弁座(532a)に遠心力で着座し得る出口弁(528)を設け,この出口弁(528)に,これを開閉する弁作動手段(A)を接続し,
    前記出口弁(528)は前記弁座(532a)への着座時に出口孔(532)より前記クラッチケーシング(20)の外周側に突出する部分(528a)を有し,前記弁作動手段(A)を,この弁作動手段(A)のクラッチオン位置では前記出口弁(528)の前記弁座(532a)への着座を許容し,クラッチオフ位置では前記出口弁(528)の前記部分(528a)を半径方向内方へ押圧してこの出口弁(528)を前記弁座(532a)から離座させるように構成したことを特徴とする,遠心油圧クラッチ。
  5. 請求項1〜の何れかに記載の遠心油圧クラッチにおいて,前記クラッチケーシング(20)に,前記遠心油圧室(25)の内周側を外部に連通する空気孔(89)を設けたことを特徴とする,遠心油圧クラッチ。
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