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JP4395315B2 - 排ガス中の水銀除去方法およびそのシステム - Google Patents

排ガス中の水銀除去方法およびそのシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボイラー等の燃焼装置から排出される排ガス中より水銀を除去する水銀除去方法およびそのシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
石炭や重質油焚きボイラー等の燃焼装置から排出される排ガスには、水銀等の有害微量物質が存在しており、これらの有害物質を排ガス中から除去することが必要である。一般に排ガス中に存在する水銀は、水に不溶な金属水銀(Hg)と、水に可溶な塩化水銀(HgCl2)が存在すると考えられている。塩化水銀は水に容易に吸収されるため、脱硫吸収塔などで除去することができるが、金属水銀は水への溶解度が極めて低いため、脱硫吸収塔では吸収されず、金属水銀蒸気としてそのまま排出されてしまうおそれがある。
【0003】
そこで従来、活性炭吸着法や次亜塩素酸ソーダ吸収法などの他、例えば、触媒が充填されている脱硝装置において、塩素化剤を添加して触媒上で金属水銀を塩化水銀に変換する方法が提案されてきた。これは、脱硝触媒等の触媒存在下、金属水銀を塩化水銀に変換できれば、後流の脱硫装置にて水銀を除去可能となるからである(例えば、特許文献1参照)。
また、排ガス処理システムでは脱硝触媒が300℃以上の高温下に置かれるため、塩素化剤の添加によるシステムへの悪影響を考慮して、脱硝触媒とは別個に、水銀酸化触媒を設置する方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。この方法によれば、該水銀酸化触媒の存在下、塩素化剤を添加しなくとも排ガス中の塩素分によって金属水銀を塩化水銀に変換することが可能であり、脱硫装置にて水銀を除去できる。
しかしながら、上記いずれの方法においても、一旦酸化された水銀が、後流の冷却塔や脱硫装置等のスクラバーで捕集された場合、排煙ガス中に共存するSO2の作用によって金属水銀に還元され、再び揮散してしまう問題があった。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−230137号公報
【特許文献2】
特願2001−242596号
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、吸収液中の塩化水銀がSO等の作用により金属水銀に還元され、排ガス中に飛散することを防止し、環境対策の面から、大気開放する処理後の排ガスに水銀が含まれない、排ガス中の水銀除去方法を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、スクラバーへの空気の強制的な吹き込みによって、吸収液中の酸化還元電位ORPを制御し、塩化水銀の蒸気水銀への還元を防止することによって、かかる問題点が解決されることを見出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、燃焼装置から排出される排ガス中の水銀を除去する水銀除去方法であって、該排ガス中の水銀を触媒存在下にて塩化水銀に変換する、水銀変換工程と、スクラバーにて、該排ガスを吸収液と接触させて排ガス中から水銀成分を吸収除去する、接触工程と、該スクラバーへ空気の通気を行い、空気の通気量を調整して、前記吸収液の酸化還元電位を制御する、制御工程とを含むことを特徴とする排ガス中の水銀除去方法を提供するものである。本発明では、前記制御工程において燃焼装置負荷またはスクラバー出口水銀濃度の少なくともいずれか一を検出して、空気通気量を制御することができる。ここで、燃焼装置負荷の検出は、制御工程において酸化還元電位を測定する電位計が無い場合などに、燃料性状及びボイラー負荷によりSO供給量が変化することを用いること等により行うことができる。
本発明では、さらに加えて、前記吸収液中の生成物を酸または酸化剤によって酸化処理する、排水処理工程を含むことができる。さらに加えて、前記接触工程後の排ガスに、空気を混合した洗浄液を接触させる、気液接触工程を含み、かつ、該洗浄液の酸化還元電位を制御する第二の制御工程を含むこともできる。
【0007】
また、本発明は、燃焼装置から排出される排ガス中の水銀を除去する水銀除去システムであって、該排ガス中の水銀を塩化水銀に変換する、触媒装置と、該排ガスを吸収液と接触させて水銀成分を除去する、スクラバーと、空気の通気量を調整する弁が設けられており、該スクラバーへ空気の通気を行う、導入管と、該スクラバー中の吸収液の酸化還元電位を測定する、電位計とを備えることを特徴とする排ガス中の水銀除去システムを提供するものである。本発明では、さらに加えて、燃焼装置負荷またはスクラバー出口水銀濃度の少なくともいずれか一を連続的に検出する手段と、その検出値に基づいて空気通気量を制御する手段とを備えることができる。本発明では、さらに加えて、前記スクラバーの後流に設けられ、前記吸収液中の生成物を酸または酸化剤によって酸化処理する、処理槽を備えることができる。さらに加えて、前記スクラバーの後流に設けられ、空気を洗浄液槽に混合して、該洗浄液と排ガスとを接触させる、気液接触部を備え、かつ、該洗浄液の酸化還元電位を測定する、第二の電位計を備えることもできる。
【0008】
本発明の一の形態では、排ガス中の金属水銀を塩化水銀に変換する、水銀変換工程を、燃焼装置後流に設けられる脱硝触媒あるいは水銀酸化触媒存在下において行う。この際、必要に応じて、脱硝触媒あるいは水銀酸化触媒前流において塩素化剤を添加し、該触媒上で水銀を塩化水銀に変換する。
本発明の他の一の形態では、排ガス中の金属水銀を塩化水銀に変換する、水銀変換工程を、燃焼装置後流に設けられる脱硝触媒とスクラバーとの間に設けられる水銀酸化触媒存在下において行う。この水銀酸化触媒は、システム中にエアヒーター(空気予熱器)、集塵器又は熱交換器などが設けられている場合、これら装置の前流もしくは後流に設置することができるが、排ガス中HCl濃度が低い場合でも塩化水銀への反応が生じやすい、例えば60〜200℃の温度域で行われるように設置することが好ましい。この場合、排ガス中に含まれるHClを用いて、金属水銀を塩化水銀に変換することができる。
【0009】
本発明の水銀除去方法は、排ガス中の水銀を冷却塔又は脱硫吸収塔などのスクラバーで除去するものであり、一旦、HgClとしてスクラバーで除去した水銀が、SOで還元されて再気化(Hg(g))しないように、過剰に空気を通気する。これによって、スクラバー内吸収液のORP(酸化還元電位)を、HgClが安定な領域になるように制御する。
【0010】
加えて、本発明に係る水銀除去方法および水銀除去システムでは、脱硫吸収塔等のスクラバー出口に、空気を添加した洗浄液を排ガスと接触させる気液接触部(すなわち、ミストエリミネータ(M/E)洗浄スプレー部等)を設けることを必須とする。この際、排ガス中の水銀がSOで還元されて再気化(Hg(g))しないように、洗浄液槽におけるORPを、HgClが安定な領域である600mV以上になるように空気の通気の添加によって制御した後、洗浄液を排ガス中に噴霧することが必要である。
【0011】
本発明によれば、吸水液中に水銀を固定し、より確実に水銀を吸収除去可能であり、排ガス中の水銀除去率を向上させることができる。また、既存の設備に付帯設備を設けるだけで実施可能であり、水銀除去専用の装置等を必要としないため、排ガス処理システムの省スペース、低コスト化が期待できる。特に、酸化に際して空気を用いる場合には、酸化剤の消費による負担もなく、低コスト化が容易に実現できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る排ガス中の水銀除去システムの具体的な実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
排ガス中の水銀除去方法
ボイラー等の燃焼装置から排出される排ガスは、脱硝を必要とするプラントでは、脱硝作用を有する脱硝触媒が備えられた装置に送られ、脱硝が行われる。脱硝触媒の前流では、通常、還元剤としてアンモニアNH3が添加される。
本発明の排ガス中の水銀除去方法では、燃焼装置から排出される排ガス中の水銀を除去するために、水銀酸化工程において、排ガス中の金属水銀を塩化水銀に変換する。この水銀酸化工程では、排ガス中の金属水銀を触媒の存在下、排ガス中に含まれている塩化水素もしくは添加した塩素化剤と酸化反応させて塩化水銀に変換する。
【0013】
本発明の一実施の形態では、排ガス中の金属水銀を塩化水銀に変換する、水銀酸化工程を、燃焼装置後流に設けられた上記脱硝触媒あるいは水銀酸化触媒存在下において行う。この際、必要に応じて、脱硝触媒あるいは水銀酸化触媒前流において塩素化剤を添加し、該触媒上で金属水銀を塩化水銀に変換する。脱硝触媒存在下、脱硝工程と同時に金属水銀を塩化水銀に変換する場合、通常、脱硝装置が300℃以上の高温であるため、HCl又は塩化アンモニウム等の塩素化剤を添加するのが効果的である。
【0014】
本発明の他の一実施の形態では、排ガス中の金属水銀を塩化水銀に変換する、水銀変換工程を、燃焼装置後流に設けられる脱硝触媒とスクラバーとの間に設けられる水銀酸化触媒存在下において行う。水銀酸化工程が脱硝工程後流で行われる際には、温度を60℃〜200℃の範囲で所定温度に制御することが好ましく、水銀酸化触媒は、システム中にエアヒーター(空気予熱器)、集塵器又は熱交換器などが設けられている場合、これら装置の前流もしくは後流に設置することができる。また、水銀酸化工程における酸化触媒出口ガス中の金属水銀もしくは塩化水銀濃度を測定し、該水銀酸化工程の温度を制御することもできる。このように水銀酸化触媒を用いる場合、排ガス中に含まれるHClを用いて、金属水銀を塩化水銀に変換することができる。
ここで、前記水銀酸化触媒としては、例えばTi02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒が挙げられる。
【0015】
次いで、本発明では、塩化水銀を含む排ガスを後流に設けられるスクラバーに通す。スクラバーには、脱硫吸収塔のみからなる態様、あるいは、冷却塔と脱硫吸収塔からなる態様などが挙げられる。スクラバーにおける接触工程において、排ガスを吸収液と接触させて、水銀成分が吸収液中に吸収、除去される。脱硫吸収塔では同様に、湿式脱硫工程において、排ガス中の硫黄酸化物がアルカリ吸収液中に吸収、除去させる。
【0016】
このスクラバーでは、空気の通気が行われる。この際、空気の通気量を調整して、吸収液の酸化還元電位を制御する。空気の通気を行って制御する場合、脱硫吸収塔ではSOを酸化するだけの通気量では不十分であり、SO酸化に必要とされる空気量以上に通気量が必要である。
【0018】
スクラバーへの空気の通気(吹き込み)は、通常、吸収液中に微細な気泡状に吹き込む形態で行われる。この際、空気の通気量が過剰であることが必要であるが、過剰量の通気であることは吸収液のORP値が所定の値以上で運転することによって制御できる。空気が過剰の状態であることは、吸収液のORPを計測して、それによって通気量を調整することにより行われる。
脱硫吸収塔へ空気を通気する場合、湿式脱硫工程では通常吸収液中の亜硫酸塩を酸化させて、石膏として回収するための空気吹き込み装置が備えられているので、この装置をそのまま利用して過剰量の通気を行うことができる。そして、空気の通気量がSO2酸化に必要とされる空気量以上に過剰であることは、吸収液のORPを計測して過剰分を調整することによって行われる。
このとき、燃料性状及び燃焼装置負荷によりSO2供給量が変化するため、燃焼装置負荷信号およびあらかじめ入力した燃料性状より最適なORP制御値を算出し、空気通気量あるいは酸化剤添加量を調整することにより、より速く制御する態様も可能である。また、スクラバー出口で水銀濃度を連続的に計測し、検出した水銀濃度信号によりORP制御値を調整し、排出水銀濃度が所定濃度以下となるよう制御する態様も可能である。
【0019】
スクラバーでの吸収液の酸化還元電位(ORP)については、処理排ガス量に対する空気の通気量を調整して制御する。この制御によって、排ガス中の水銀除去率が一定以上に維持されることになるが、スクラバーの形態によって制御するORP値は異なる。
例えば、スクラバーが後述する冷却塔および脱硫吸収塔からなるシステムである場合、冷却塔および脱硫吸収塔の両方、又は、冷却塔もしくは脱硫吸収塔の一方、の空気の通気量を調整することによって、いずれの形態でも吸収液中で酸化還元電位を制御することができる。具体的には、処理排ガス量200mN/hを処理する装置において冷却塔で空気の通気を行ってORPを制御する場合、空気通気量(mN/h)の増加によって液のORP値(V)が上昇し、下記表1のように水銀除去率(%)も上昇する。
【0020】
【表1】
Figure 0004395315
【0021】
また、吸収塔において空気の通気を行ってORPを制御する場合も、同様に空気通気量(m3N/h)の増加によって液のORP値(V)が上昇し、下記表2のように水銀除去率(%)も上昇する。なお、吸収塔においては、SO2を酸化するために空気の通気を行っているので、処理するSO2量に応じた酸化空気量を通気する必要があるが、その必要量(例えばSO2:500ppmとして0.2〜1m3N/h程度)以上に通気を行うことが必要である。
【0022】
【表2】
Figure 0004395315
【0023】
図5には、処理排ガス量200m3N/hを処理する装置において冷却塔および吸収塔それぞれに対して、酸化空気量の通気に対するORP値の上昇変化を示す。図6には、冷却塔および吸収塔それぞれに対して、ORP値に対する水銀除去率の変化を示す。
これらの結果から、冷却塔を有するシステムにおいては、例えば冷却塔への空気の通気量を0.05m3N/h以上にすることによって冷却塔のORP値が500mV以上に制御されて、水銀除去率約85%以上が達成できることがわかる。空気の通気量を0.1m3N/h以上にすることによって冷却塔のORP値が700mV以上に制御されて、水銀除去率約90%以上が達成できることがわかる。
また、例えば脱硫吸収塔への空気の通気量を、2.8m3N/h以上と過剰にすることによって吸収塔のORP値が800mV以上に制御されて、水銀除去率約61%以上が達成できることがわかる。
【0024】
本発明では、スクラバーの吸収液を所定のORP値まで酸化することにより、水溶した塩化水銀の還元を防止し、スクラバーにて水銀を除去可能であり、別途水銀除去塔などを設ける必要がない。また、空気を過剰に通気して酸化する態様によれば、酸化剤の消費も抑制することが可能である。
【0025】
スクラバーが冷却塔および脱硫吸収塔からなるシステムである場合、冷却塔に空気の通気を行うことによって効率的な水銀除去が可能である。また、脱硫吸収塔への過剰な空気の通気によっても、水銀除去率を上昇させることができるが、例えば冷却塔を有しないシステムの場合、より水銀除去率を向上させるためには、スクラバーにおける接触工程の後流に気液接触工程を設けてもよい。気液接触工程では、前記接触工程後の排ガスに、空気を混合した洗浄液を接触させる。この場合、接触工程後の排ガスは気体であり、直接ORPを計測できないので、例えばミストエリミネータ(M/E)によって分離回収した液のORP計測により行う。また、分離回収した液は、ミストエリミネータの前流から噴霧する洗浄液に混合し、この洗浄液のORP計測によって行うことができる。この際、第二の制御工程により、該洗浄液の酸化還元電位を制御する。空気の混合による制御は、気液接触部へ送られる洗浄液への空気の通気(混合)によって行われ、当該洗浄液を排ガス中に噴霧する。
【0027】
排ガス中の水銀除去システム
本発明の水銀除去システムは、燃焼装置から排出される排ガス中の水銀を除去するものであり、燃焼装置の後流に触媒装置およびスクラバーが備えられており、該スクラバーには空気の通気を行う導入管と、吸収液の酸化還元電位を測定する電位計とが備えている。触媒装置では、排ガス中の水銀を塩化水銀に変換する。スクラバーでは、排ガスを吸収液と接触させて水銀成分を除去するが、脱硫吸収塔のみからなる態様、あるいは、冷却塔と脱硫吸収塔からなる態様などが挙げられる。
【0028】
図1に、スクラバーが冷却塔と脱硫吸収塔からなるシステムの一例を示す。このシステムでは、さらに脱硫吸収塔の後段に気液接触部が設けられている。以下、本発明の水銀除去システムについて、添付図面を参照しながら、その具体的な実施形態を詳細に説明する。
【0029】
本発明では、水銀を含むボイラー1の排ガスを、触媒存在下、金属水銀を塩化水銀に酸化する。スクラバーの前流で触媒により、金属水銀を水溶性の塩化水銀に変換してから、スクラバーに導くものである。スクラバーではアルカリ吸収液によって脱硫処理が行われる。この処理によって、システム内の脱硫吸収塔において、排ガスは石灰スラリー循環液などの吸収液と接触して、SOxが吸収、除去されると同時に、排ガス中に含まれる塩化水銀(HgC12)が上記吸収液に溶解、除去される。
【0030】
図1のシステムにおいて、ボイラー1の後流には、脱硝装置(SCR)2、加熱手段であるエアヒーター(A/H)3、集じん器4、熱エネルギーを回収する熱交換器(GGH)5、冷却塔6、脱硫吸収塔7、再加熱用の熱交換器(GGH)10、煙突(スタック)11の順で配置されている。脱硫吸収塔7で得られる石灰スラリーは、石膏分離器8に送られて固形分は石膏として回収される。
図1に示すシステムでは、脱硝装置2の脱硝触媒存在下において金属水銀を塩化水銀に変換する。よって、脱硝装置2の一例を示せば、脱硝触媒の排ガス流入側に、アンモニアを含む還元剤を注入する還元剤注入手段が設けられているとともに、脱硝装置が300℃以上の高温であるため、HCl又は塩化アンモニウム等の塩素化剤を添加する、塩素化剤添加手段(図示せず)も設けられている。脱硝装置2の脱硝触媒の形状は特に限定されないが、例えばハニカム形状触媒又はこれを積み重ねたものや、粒状の触媒を充填させたもの等が用いられる。
【0031】
脱硝触媒の種類としては、TiO2あるいはTiO2+SiO2複合酸化物を担体に、V,W,及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の活性金属を含有させたものを用いることができる。また、A123,Si02,Zr02,Ti02,メタロシリケート及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種の担体に、Pt,Pd,Ir,Ru,Cu,Co,Fe,Ag,Mn,Ni,Zn及びInからなる群より選ばれる少なくとも1種の活性金属を含有させたものを用いることができる。活性金属としては、Pt,Pd,Ru、Rh、Ir等の貴金属系が好ましく、特にPt系が好ましい。また、担体はメタロシリケート、ZSM5、シリカライト、Y型ゼオライト、モルデナイト、アルミナ、シリカ、チタニア等が好適に使用できる。
【0032】
図1のシステムでは、加熱手段であるエアヒーター(A/H)3、および、集じん器4が設けられる。集じん器4は排ガスをスクラバーに導入する前に、粗集じんできるものであればよく、特に限定されるものではない。
集じん器4の後流には、熱エネルギーを回収する熱交換器(GGH)5、続いて冷却塔6および脱硫吸収塔(湿式脱硫装置)7が設けられる。湿式脱硫に使用する吸収液としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸ソーダ、苛性ソーダ等の吸収剤の水溶液(アルカリ吸収液)が挙げられる。
【0033】
冷却塔6および脱硫吸収塔7のそれぞれには、空気の通気を行う導入管が設けられている。この導入管には、空気の通気量を調整する弁が備えられている。冷却塔6に連通する導入管の弁の開閉機構は、冷却塔6内で吸収液の酸化還元電位を測定する電位計15と接続されている。また、脱硫吸収塔7に連通する導入管の弁の開閉機構は、冷却塔6内で吸収液の酸化還元電位を測定する電位計16と接続されている。この機構により、冷却塔6又は脱硫吸収塔7内の吸収液の酸化還元電位によって、空気の通気量を調整し、ORPを制御することができる。
また、本発明のシステムでは、冷却塔6又は脱硫吸収塔7に連通する導入管の弁の開閉機構が、ボイラー1の燃焼負荷の検出器や、または冷却塔6又は脱硫吸収塔7出口の水銀濃度を連続的に計測する水銀濃度計の少なくとも一方と接続されることで、負荷信号より空気の通気量を制御する形態も可能である。
【0034】
図1のシステムでは、さらに加えて、脱硫吸収塔7の後段の排ガス出口付近に、前記排ガスに空気を混合して接触させる、気液接触部18を備えている。この気液接触部18には、例えばミストエリミネータ(M/E)を設置することができる。ミストエリミネータ(M/E)の分離作用によって回収された排ガス中の液分は、洗浄液槽12に送られる。
洗浄液槽12内には、空気の通気を行う導入管が設けられている。この導入管には、空気の通気量または酸化剤の添加量を調整する弁が備えられている。導入管の弁の開閉機構は、洗浄液槽12内で洗浄液の酸化還元電位を測定する第二の電位計17と接続されている。この機構により、洗浄液槽12内の洗浄液の酸化還元電位によって、空気の通気量を調整し、ORPを制御することができる。ここでのORPの制御は、HgClが安定な領域である例えば600mV以上になるように制御することが好ましい。
【0035】
上記によりORPが制御された洗浄液は、再び脱硫吸収塔7後段の排ガス流路へ、洗浄スプレー等の噴霧部から戻される。このような洗浄液を排ガス中に噴霧することによって、ミストエリミネータ(M/E)18では気液接触が効果的に起こり、結果として、水銀が吸収液中で再度SO2により還元されて再気化(Hg(g))することを有効に防止することができる。
【0036】
また、図1のシステムでは、脱硫吸収塔7の後流に、吸収液中の生成物を酸または酸化剤によって酸化処理する処理槽9を備える。
【0037】
本発明のシステムでは、脱硫吸収塔7の後流には、再加熱用の熱交換器10が設けられていて、これらの装置を経て排ガスは煙突11から大気中に放出される。ここで、再加熱用の熱交換器10では、脱硫吸収塔7前段の熱回収用の熱交換器5で回収した熱エネルギーによって、温度低下した燃焼排ガスを加熱することができる。熱回収用の熱交換器5と再加熱用の熱交換器10は、通常、熱媒を媒体として熱エネルギーを交換する方式のガスヒーターで構成されており、直接熱交換するガスガスヒーターであっても、別々の系統であってもよい。
【0038】
なお、本発明では、図1のシステムに限られず、脱硝装置2の脱硝触媒とは別個に、水銀酸化工程を行うための水銀酸化触媒を設置する形態も可能である。水銀酸化触媒は、脱硝触媒2の後流であって冷却塔6の前流に設置される。水銀酸化触媒をエアヒーター(A/H)3後流に設置する形態の場合、通常、HCl等の塩素化剤を添加する塩素化剤添加手段は設けない。ボイラー1からの排ガス中には、燃料中のCl分がHC1として存在しており、水銀酸化触媒は脱硝触媒2よりも低温側に設置されるため、触媒上で金属水銀(Hg)を塩化水銀(HgC12)に酸化できるからである。この形態でも、冷却塔6又は脱硫吸収塔7にて、排ガス中のS02の除去と同時にHgC12の除去が行われる。
【0039】
本発明で用いる水銀酸化触媒としては、Ti02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒が挙げられる。担体としては、特にチタン酸化物やケイ素酸化物、あるいはその複合酸化物を用いるのが好ましく、Ti02やSi02を含む複合酸化物を担体として、バナジウム、タングステン又はモリブデンなどの酸化物を活性金属種として担持させた触媒の活性が良好である。水銀酸化触媒は、システム構成に合わせて任意に形状を選択することが可能であり、例えばペレット状、板状、円筒状、コルゲート状、ハニカム状等の一体成型された任意の形状とすることができる。
【0040】
本発明で対象とする排ガスは、例えば石炭、重質油等の硫黄や水銀を含む燃料を燃焼する火力発電所、工場等のボイラー排ガス、あるいは、金属工場、石油精製所、石油化学工場等の加熱炉排ガスであり、二酸化炭素、酸素、SOx、ばい塵又は水分を含む排出量の多いものである。
本発明における水銀除去の効果を確認するため、以下の実験を行ったが、本発明はこれら実施例の記載によって何ら限定されるものではない。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
図2に示す水銀吸収試験装置を用いて、塩化水銀が硫黄酸化物(SO2)によって還元される条件を調べる試験を行った。
本実施例1の装置では、SO2を含むN2ガスに02を添加し、塩化水銀(HgCl2)を混合して模擬ガスを調製した。模擬ガスは、恒温槽21で温度を制御された反応器20に導入され、反応器20内に設けられた撹拌翼で撹拌された。反応器20内の液は、ORP計22によって酸化還元電位が測定された。反応器20のガスは上部の出口から排気した。S1にて入口ガス、S2にて出口ガスをそれぞれ採取した。
【0042】
試験条件としては、添加した02:4.0%,10%、SO2:1000ppm、HgCl2:10μg/m3Nであって、常圧、反応器温度60℃、液組成が純水、添加酸化剤としてNaClOを用いた。
下記表3に、試験結果を示す。
【0043】
【表3】
Figure 0004395315
【0044】
表3に示す試験結果より、酸素濃度の増加および酸化剤の添加によって、いずれもORP値が上昇して水銀除去率が向上することがわかった。また、酸化剤の添加を行わなくとも酸素濃度を高くすることによって、ORP値600mVまで上昇して、水銀除去率95%を達成できることも確認できた。
【0045】
実施例2
図3に示す排ガスの水銀除去システムを用いて、水銀の除去率を評価する試験を行った。
本実施例2のシステムでは、微粉炭を空気と共に燃焼する燃焼装置、エアヒーター(A/H)3、電気集じん器4、電気ヒータ14で保温された水銀酸化触媒13、冷却塔6、脱硫吸収塔7、熱交換器(GGH)10、煙突(スタック)11の順で配置されている。冷却塔6には、空気の通気を行う導入管が設けられており、該導入管には、空気の通気量を調整する弁が備えられている。該弁の開閉機構は、冷却塔6内で吸収液の酸化還元電位を測定する電位計15と接続されている。同様に、脱硫吸収塔7にも弁が備えられている導入管が備えられ、該弁の開閉機構は電位計16と接続されている。
【0046】
図3のシステムを用いた試験では、燃焼装置とエアヒーター(A/H)3の間で金属水銀を添加する。次いで、水銀酸化触媒13の直前でHClを添加し、触媒上では金属水銀から塩化水銀への変換を行う。冷却塔6および脱硫吸収塔7の両方について、吸収液中で酸化還元電位を測定し、それぞれに導入管より空気を導入した。脱硫吸収塔7には、CaCO3を添加した。
入口ガスは冷却塔6の直前、出口ガスは冷却塔6の直後または脱硫吸収塔7の直後でそれぞれ採取した。システム全体の出口ガスは、脱硫吸収塔7後流で採取した。
【0047】
試験条件としては、ガス量:200m3N/h、添加したH20:8%、C02:14%、02:4%、N2:74%、HCl:10ppm、SO2:500ppmであって、水銀濃度がHg:10μg/m3Nであり、常圧、水銀酸化触媒13の種類はV2O5(4wt%)-WO3(5wt%)/TiO2、触媒温度:150℃、触媒SV:6000h-1であった。冷却塔6温度:55℃、冷却塔6液組成:純水(初期)、脱硫吸収塔7温度:55℃、脱硫吸収塔7液組成:20wt%CaSO4であった。
比較実験1では、冷却塔6への空気の通気を行わず、実験1では、冷却塔6への空気の通気を行い(0.1m3N/h)、実験2では、冷却塔6への空気の通気とともに脱硫吸収塔7への過剰量空気の通気を行った(1.5m3N/h)。
下記表4に、試験結果を示す。
【0048】
【表4】
Figure 0004395315
【0049】
表4に示す試験結果より、比較実験1と比べて、冷却塔6へ空気の通気を行った実験1および2では、冷却塔6における水銀除去が高い率で起こり、全体の水銀除去率が向上することが確認できた。また、脱硫吸収塔7への過剰量の空気通気によっても、水銀除去率が向上することも確認できた。
【0050】
実施例3
図4に示す排ガスの水銀除去システムを用いて、水銀の除去率を評価する試験を行った。
本実施例3のシステムでは、微粉炭を空気と共に燃焼する燃焼装置、エアヒーター(A/H)3、電気集じん器4、電気ヒータ14で保温された水銀酸化触媒13、脱硫吸収塔7、熱交換器(GGH)10、煙突(スタック)11の順で配置されている。脱硫吸収塔7の下部には、空気の通気を行う導入管が設けられており、該導入管には、空気の通気量を調整する弁が備えられている。該弁の開閉機構は、吸収液の酸化還元電位を測定する電位計16と接続されている。
【0051】
脱硫吸収塔7の後段の排ガス流路には、気液接触部18が備えられている。この気液接触部18には、ミストエリミネータが設置され、該ミストエリミネータの分離作用によって回収された排ガス中の液分は、洗浄液槽12に送られる。洗浄液槽12内には、空気の通気または酸化剤の添加を行う導入管が設けられ、該導入管には、空気の通気量または酸化剤の添加量を調整する弁が備えられている。導入管の弁の開閉機構は、洗浄液槽12内で洗浄液の酸化還元電位を測定する第二の電位計17と接続されている。ORPが制御された洗浄液は、再び脱硫吸収塔7後段の排ガス流路へ、洗浄スプレー等の噴霧部から戻される。
【0052】
図4のシステムを用いた試験では、燃焼装置とエアヒーター(A/H)3の間で金属水銀を添加する。次いで、水銀酸化触媒13の直前でHClを添加し、触媒上では金属水銀から塩化水銀への変換を行う。脱硫吸収塔7および洗浄液槽12の両方について、液中で酸化還元電位を測定し、それぞれに導入管より空気を導入した。脱硫吸収塔7には、CaCO3を添加した。
入口ガスは脱硫吸収塔7の直前、出口ガスは脱硫吸収塔7の直後および気液接触部18の直後でそれぞれ採取した。システム全体の出口ガスは、気液接触部18後流で採取した。
【0053】
試験条件としては、ガス量:200m3N/h、添加したH20:8%、C02:14%、02:4%、N2:74%、HCl:5ppm、SO2:500ppmであって、水銀濃度がHg:10μg/m3Nであり、常圧、水銀酸化触媒13の種類はV2O5(4wt%)-WO3(5wt%)/TiO2、触媒温度:150℃、触媒SV:6000h-1であった。脱硫吸収塔7温度:55℃、脱硫吸収塔7液組成:20wt%CaSO4、洗浄液温度:55℃、洗浄液組成:純水、添加酸化剤:1%NaClO溶液であった。
比較実験2では、洗浄液槽12への空気の通気又は酸化剤の添加を行わず、実験3では、洗浄液槽12への空気の通気を行い、実験4では、洗浄液槽12への空気の通気および酸化剤の添加を行った。
下記表5に、試験結果を示す。
【0054】
【表5】
Figure 0004395315
【0055】
表5に示す試験結果より、比較実験2と比べて、気液接触部を設けて洗浄液槽12への空気の通気または酸化剤の添加を行った実験3および4では、気液接触部における水銀除去が高い率で起こり、全体の水銀除去率が向上することが確認できた。
【0056】
【発明の効果】
本発明によれば、吸水液中に水銀を固定し、あるいは、洗浄液中に水銀を分離することにより、より確実に水銀を吸収除去可能であり、排ガス中の水銀除去率を向上させることができる。また、既存の設備に付帯設備を設けるだけで実施可能であり、水銀除去専用の装置等を必要としないため、排ガス処理システムの省スペース、低コスト化が期待できる。特に、酸化に際して空気を用いる場合には、酸化剤の消費による負担もなく、低コスト化が容易に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排ガスの水銀除去システムの一例を示す図である。
【図2】実施例1における水銀吸収試験に用いられる装置の模式図である。
【図3】実施例2の水銀除去システムの概略を説明するための装置の配置図である。
【図4】実施例3の水銀除去システムの概略を説明するための装置の配置図である。
【図5】冷却塔および吸収塔それぞれについて、酸化空気量の通気に対するORP値の上昇変化を示す図である。
【図6】冷却塔および吸収塔それぞれについて、ORP値に対する水銀除去率の変化を示す図である。
【符号の説明】
1 ボイラー
2 脱硝装置
3 エアヒーター(A/H)
4 集じん器
5 熱回収側熱交換器(GGH)
6 冷却塔
7 脱硫吸収塔(湿式脱硫装置)
8 石膏分離器
9 処理槽
10 再加熱側熱交換器(GGH)
11 スタック
12 洗浄液槽
13 水銀酸化触媒
14 電気ヒータ
15、16、17、22 ORP計
18 気液接触部
20 反応器
21 恒温槽

Claims (4)

  1. 燃焼装置から排出される排ガス中の水銀を除去する水銀除去方法であって、
    排ガス中の水銀を触媒存在下にて塩化水銀に変換する、水銀酸化工程と、
    スクラバーにて、該排ガスを吸収液と接触させて排ガス中から水銀成分を吸収除去する、接触工程と、
    該スクラバーへ空気の通気を行い、空気通気量を調整して、前記吸収液の酸化還元電位を制御する、制御工程とを含み、
    さらに加えて、前記接触工程後の排ガスに、空気を混合した洗浄液を、ミストエリミネータにより接触させる、気液接触工程を含み、
    かつ、前記空気の通気量を調整し、該洗浄液の酸化還元電位を600mVになるように制御する第二の制御工程
    を含むことを特徴とする排ガス中の水銀除去方法。
  2. 前記制御工程において、燃焼装置負荷またはスクラバー出口水銀濃度の少なくともいずれか一を検出して、空気通気量を制御することを特徴とする請求項1に記載の水銀除去方法。
  3. 燃焼装置から排出される排ガス中の水銀を除去する水銀除去システムであって、
    該排ガス中の水銀を塩化水銀に変換する、触媒装置と、
    該排ガスを吸収液と接触させて水銀成分を除去する、スクラバーと、
    空気の通気量を調整する弁が設けられており、該スクラバーへ空気の通気を行う、導入管と、
    該スクラバー中の吸収液の酸化還元電位を測定する、電位計と
    を備え、
    さらに加えて、前記スクラバーの後流に設けられ、空気を洗浄液槽に混合して、該洗浄液と排ガスとを接触させる、ミストエリミネータを気液接触部として備え、
    かつ、前記空気の通気量を調整し、洗浄液の酸化還元電位が600mV以上となるように制御するために、前記洗浄液の酸化還元電位を測定する、第二の電位計を備える
    ことを特徴とする排ガス中の水銀除去システム。
  4. さらに加えて、燃焼装置負荷またはスクラバー出口水銀濃度の少なくともいずれか一を連続的に検出する手段と、その検出値に基づいて空気通気量を制御する手段とを備えることを特徴とする請求項3に記載の排ガス中の水銀除去システム。
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