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JP4175465B2 - 排ガス中の水銀除去方法およびそのシステム - Google Patents

排ガス中の水銀除去方法およびそのシステム Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボイラーの排ガス中から水銀を除去する水銀除去方法およびそのシステムに関し、特に、石炭焚きボイラー等から排出されるCl含有量の低い排ガス中に含まれる水銀を除去するのに好適な水銀除去方法およびそのシステムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、排煙中に存在する水銀は、水に不溶な金属水銀と水に可溶な塩化水銀が存在すると考えられており、脱硝触媒等の触媒存在下、金属水銀を塩化水銀に変換できれば、後流の脱硫装置にて水銀を除去可能である(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、脱硝触媒を用いて塩化水銀に転換する場合、使用温度が300〜450℃と限られるため、Cl含有量の低い石炭の場合、排ガス中にHClを供給し、塩化水銀への転換率を維持する必要が生じ、ユーティリティコストの増大および材料腐食を引き起こす問題があった。
【0003】
一方、脱硝触媒とは別個に、低温で使用できるように水銀酸化触媒を設置して、該水銀酸化触媒の存在下、金属水銀を塩化水銀に変換する方法も考えられる。しかしながら、低温で水銀酸化触媒を用いて塩化水銀に転換する場合、前流の脱硝装置等で注入した過剰のNHが流下して、触媒上で硫安あるいは酸性硫安として付着してしまい、触媒性能を著しく低下させる場合がある。また、触媒自体をこれらの付着物が閉塞させてしまう問題も生じ得る。すなわち、燃焼ボイラーに適用されるアンモニア脱硝装置では、燃焼ボイラー内又はその後流にて、注入ノズルからアンモニア(NH)を噴射して、窒素酸化物(NO,NO)と還元的に反応させ、窒素(N)と水(HO)に分解処理する工程を行う。よって、かかる工程において過剰に添加されたアンモニアが、排ガス中に存在して、脱硝触媒後流へと流下することにより、硫安あるいは酸性硫安を生じてしまうためである。
【0004】
他方、上記脱硝触媒又は水銀酸化触媒のいずれの触媒を用いる場合にも、NH共存下では、水銀酸化反応を阻害するため、触媒充填量の増加要因となってしまっていた。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−230137号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記問題点に鑑み、脱硝触媒の後流へNHをリークしても、水銀酸化処理においてNHによる反応阻害を回避可能であり且つ触媒耐久性向上によって触媒量が低減できるとともに、エアヒーター等の加熱手段やGGH等の熱交換器への硫安付着を防止することができる、排ガス中の水銀除去方法を開発すべく、鋭意検討した。
その結果、本発明者らは、脱硝装置出口から流下するNH3を分解するNH3分解触媒と、その後流に水銀を塩化水銀に酸化する水銀酸化触媒とを組み合わせることによって、かかる問題点が解決されることを見出した。本発明は、かかる見地より完成されたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、石炭焚きボイラーの排ガス中から水銀を除去する水銀除去システムであって、脱硝装置と湿式脱硫装置の間に、該脱硝装置出口から流下するNHを分解するNH分解触媒と、該NH分解触媒の後流に水銀を塩化水銀に酸化する水銀酸化触媒とが設置されており、塩化水銀に酸化された水銀を前記湿式脱硫装置にて除去する、排ガス中の水銀除去システムを提供するものである。
【0008】
本発明では、前記脱硝装置と湿式脱硫装置との間に、加熱手段および熱交換器が設置されている水銀除去システムであって、前記水銀酸化触媒が、前記NH3分解触媒の後流で加熱手段の前流、前記加熱手段の後流で熱交換器の前流、又は、前記熱交換器の後流で湿式脱硫装置の前流、の少なくとも1箇所に設置されている態様が好適に挙げられる。ここで、前記水銀酸化触媒は、Ti02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒であることが好ましい。また、前記NH3分解触媒は、担体としてTi02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,RbRh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒であることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、石炭焚きボイラーの排ガス中から水銀を除去する水銀除去方法であって、脱硝工程と湿式脱硫工程の間で、該脱硝工程から流下するNHを分解するNH分解工程と、該NH分解工程の後流にて水銀を塩化水銀に酸化する水銀酸化工程とを含み、塩化水銀に酸化された水銀を前記湿式脱硫工程にて除去する排ガス中の水銀除去方法を提供するものである
【0010】
本発明では、前記脱硝工程と湿式脱硫工程との間に、加熱工程および熱回収工程を含む水銀除去方法であって、前記NH3分解工程が、脱硝工程後流の300〜450℃の温度域で行われるとともに、前記水銀酸化工程が、NH分解工程後流の300〜450℃の温度域、加熱工程後流の120〜200℃の温度域、又は、熱回収工程後流の60〜120℃の温度域、の少なくとも1箇所で行われる態様が好適に挙げられる。ここで、前記水銀酸化工程が加熱工程後流側で行われる際には、温度を60℃〜200℃の範囲で所定温度に制御することができる。また、前記水銀酸化工程における酸化触媒出口ガス中の金属水銀もしくは塩化水銀濃度を測定し、該水銀酸化工程の温度を制御することもできる。さらに、前記NH3分解工程においては、出口NH3濃度を1ppm以下、好ましくは0.lppm以下に処理した後、前記水銀酸化工程で水銀を酸化処理することが好適である。
【0011】
本発明のシステムによれば、脱硝触媒の後流へリークしたNHを分解した後に、水銀酸化処理することにより、NHによる反応阻害を回避でき、触媒性能向上による触媒量低減が可能となる。また、エアヒーター等の加熱手段以降の温度域に設置する場合、硫安付着防止できるため、耐久性向上による触媒量低減が可能となる。
また、脱硝触媒の後流へリークしたNH3を分解処理することで、エアヒーター等の加熱手段やGGH等の熱交換器への硫安付着を防止することができ、さらには、スートブローの頻度低減による装置の耐久性向上が図られる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る排ガス中の水銀除去システムの具体的な実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。
排ガス中の水銀除去方法
本発明の排ガス中の水銀除去方法では、石炭焚きボイラーより排出された排ガスが脱硝触媒に送られ、脱硝工程が行われる。脱硝工程では、脱硝触媒の前流にて、還元剤としてアンモニアNHが添加される。よって、脱硝処理後の排ガス中には、添加した過剰のNHが多く含まれている。このNHは、後流の水銀酸化反応(水銀酸化工程)を阻害するとともに、低温水銀酸化触媒の場合には触媒上で硫安や酸性硫安として付着し、触媒性能を著しく低下させて、触媒を閉塞させる可能性がある。
【0013】
このことから本発明では、脱硝工程から流下する排ガスについて、水銀酸化触媒の前流にて、水銀酸化反応(水銀酸化工程)を阻害するNH3を除去する。そのために、脱硝触媒の後流直後にはNH3分解触媒を設置する。このNH3分解触媒上で、脱硝触媒から後流に送られた過剰のNH3は分解除去されて、排ガス中から除かれる。
次いで、本発明では、NH分解工程を経てNHが除去された排ガス中から水銀を除去する。そのために先ず、排ガス中の水銀を水銀酸化触媒の存在下、水銀酸化工程によって、排ガス中に多く含まれている塩化水素と酸化反応させて塩化水銀に変換する。次いで、この塩化水銀を含む排ガスを、後流の湿式脱硫装置を通すことによって、排ガス中の水銀成分は湿式脱硫工程に用いるアルカリ吸収液中に吸収、除去させる。
【0014】
上記のような脱硝工程と湿式脱硫工程との間には、ヒーターもしくはスチームによる加熱工程と、ガスヒーターによる熱回収工程とが含まれる。このようなシステムでは、NH3分解工程が脱硝工程後流の300〜450℃の温度域で行われる。そして、水銀酸化工程が、NH3分解工程後流の300〜450℃の温度域、加熱工程後流の120〜200℃の温度域、又は、熱交換器による熱回収工程後流の60〜120℃の温度域、のいずれか1箇所で行われる。
前記水銀酸化工程が加熱工程後流側で行われる際には、温度を60℃〜200℃の範囲で所定温度に制御することが好ましい。また、前記水銀酸化工程における酸化触媒出口ガス中の金属水銀もしくは塩化水銀濃度を測定し、該水銀酸化工程の温度を制御することもできる。さらに、前記NH3分解工程においては、出口NH3濃度を通常1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下に処理した後、前記水銀酸化工程で水銀を酸化処理することがよい。
【0015】
排ガス中の水銀除去システム
図1に、これらの方法を用いた場合のシステムの一例を示す。以下、本発明の水銀除去システムについて、これらの添付図面を参照しながら、その具体的な実施形態を詳細に説明する。
【0016】
本発明では、水銀(Hg)を含む石炭焚きボイラーの排ガスを、NH分解触媒を経た後、水銀酸化触媒下、金属水銀を塩化水銀に酸化する。湿式脱硫装置の前流で水銀酸化触媒により、金属水銀を水溶性の塩化水銀に変換してから、脱硫吸収塔に導くものである。そして、後流の湿式脱硫装置のアルカリ吸収液によって脱硫処理を行う。この処理によって、システム内の脱硫吸収塔において、排ガスは石灰スラリー循環液などの吸収液と接触して、SOxが吸収、除去されると同時に、排ガス中に含まれる塩化水銀(HgC1)が上記吸収液に溶解、除去される。
【0017】
図1のシステムにおいて、ボイラー1の後流には、脱硝装置(SCR)2、NH分解触媒3、加熱手段であるエアヒーター(A/H)4、集じん器5、熱エネルギーを回収する熱交換器(GGH)6、脱硫吸収塔(湿式脱硫装置)7、再加熱用の熱交換器(GGH)8、煙突(スタック)9の順で配置されている。そして、水銀酸化触媒10は、NH分解触媒3の後流でエアヒーター(A/H)4の前流か、エアヒーター(A/H)4の後流で集じん器5の前流か、あるいは、熱交換器(GGH)6の後流で脱硫吸収塔(湿式脱硫装置)7の前流、のいずれか1箇所に設置されている。
【0018】
本システムで用いられる脱硝装置2の一例を示せば、脱硝触媒の排ガス流入側に、還元剤注入手段が設けられている。還元剤注入手段としては、還元剤注入管と複数のスプレーノズルとから構成されたものが用いられ、アンモニアを含む還元剤の注入方法としては、還元剤を気化させ、これに空気、不活性ガスや水蒸気等を加えて希釈したのち加える方法などがある。このとき、触媒層に均一に還元剤が流れるようノズルを配置することが有効であり、場合によってはガス流れに対して垂直方向に複数のノズルを配置する。また、脱硝触媒層としては、ハニカム形状触媒、又はこれを積み重ねたものや、粒状の触媒を充填させたもの等が用いられる。
【0019】
脱硝触媒としては、TiO2,あるいはTiO2+SiO2複合酸化物を担体に、V,W,及びMoからなる群より選ばれる少なくとも1種の活性金属を含有させたものを用いることができる。A1,Si0,Zr0,Ti0,メタロシリケート及びゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種の担体に、Pt,Pd,Ir,Ru,Cu,Co,Fe,Ag,Mn,Ni,Zn及びInからなる群より選ばれる少なくとも1種の活性金属を含有させたものを用いることができる。
活性金属としては、Pt,Pd,Ru、Rh、Ir等の貴金属系が好ましく、特にPt系が好ましい。また、担体はメタロシリケート、ZSM5、シリカライト、Y型ゼオライト、モルデナイト、アルミナ、シリカ、チタニア等が好適に使用できる。触媒の形状は特に限定されないがハニカム形状が好ましく、必要触媒量はGHSVにて通常1000〜50000h−1の範囲にある。
【0020】
脱硝装置(SCR)2の後流には、NH分解触媒3が設けられる。
本発明で用いるNH3分解触媒3としては、Ti02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒が挙げられる。ここで、排ガス中に含まれる硫黄酸化物に対する耐久性の点から、担体としては、特にチタン酸化物やケイ素酸化物を用いるのが好ましく、Ti02やSi02を含む複合酸化物を担体として、バナジウム、タングステン又はモリブデンなどの酸化物を活性金属種として担持させた触媒の活性が良好である。
【0021】
本実施の形態では、水銀酸化触媒10a,b,cが、上記NH3分解触媒3の後流でエアヒーター4の前流a(300〜450℃の温度域)、エアヒーター4の後流で集塵機5の前流b(120〜200℃の温度域)、又は、熱回収用熱交換器6の後流で湿式脱硫装置7の前流c(60〜120℃の温度域)、のいずれか1箇所に設置される。
本発明で用いる水銀酸化触媒10としては、Ti02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒が挙げられる。ここで、NH分解触媒3と同様に、排ガス中に含まれる硫黄酸化物に対する耐久性の点から、担体としては、特にチタン酸化物やケイ素酸化物、あるいはその複合酸化物を用いるのが好ましく、Ti02やSi02を含む複合酸化物を担体として、バナジウム、タングステン又はモリブデンなどの酸化物を活性金属種として担持させた触媒の活性が良好である。
【0022】
本発明では、触媒3,10の比表面積や固体酸量を増大させるために、複合酸化物化したTi酸化物を担体に用いることができる。Tiの複合酸化物を形成する金属としては、例えばシリコン(Si)、ジルコニウム(Zr)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)が挙げられる。例えば、TiとSi、TiとZr、TiとAl、TiとWなどの複合酸化物を用いることができる。これらいずれの複合酸化物ともに、硫酸塩を形成しにくいため安定な構造を維持することができ、比表面積や固体酸量の増大が可能である。また、必要に応じて、TiとSi+Zr、TiとSi+W、TiとSi+Al、TiとZr+Al、TiとZr+Wなどの三成分系の複合酸化物を用いることができる。
【0023】
本発明の触媒3,10では、上記のような担体に、Pt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持して用いる。このような触媒はいずれも酸化能力を有し、水銀酸化触媒10として用いた場合には、金属水銀を塩化水銀に酸化することができる。
【0024】
本発明で用いられる触媒の組成比は特に限定されるものではないが、一例として、一種の酸化物又は複合酸化物からなる担体100重量部に対して、活性成分がV,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnなどの卑金属系元素ではその酸化物として、0.5〜20重量部の組成が、またPt,Ru,Rh,Pd,Irの貴金属系元素では、その金属として 0.01〜1重量部の組成が好適に挙げられる。より具体的には、水銀酸化触媒10の場合には、Ti02−Si02の複合酸化物担体100重量部に対して、活性成分が五酸化バナジウム1.2重量部とタングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物や、Pt0.05重量部、タングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物などが挙げられる。また、NH3分解触媒3の場合には、Ti02担体100重量部に対して、活性成分が五酸化バナジウム4〜10重量部の組成物や、Pt0.5重量部、五酸化バナジウム0.6重量部、タングステン酸化物(WO3)9重量部の組成物などが挙げられる。
【0025】
また、本発明で用いる前記触媒は、システム構成に合わせて任意に形状を選択することが可能であり、例えばペレット状、板状、円筒状、コルゲート状、ハニカム状等の一体成型された任意の形状とすることができる。
【0026】
図1に示す本システムでは、NH3分解触媒3の後流に、加熱手段であるエアヒーター(A/H)4、および、集じん器5が設けられる。集じん器5は排ガスを脱硫吸収塔7に導入する前に、粗集じんできるものであればよく、特に限定されるものではない。
集じん器5の後流には、熱エネルギーを回収する熱交換器(GGH)6、続いて脱硫吸収塔(湿式脱硫装置)7が設けられる。脱流吸収塔7は、一般に排煙処理で用いられている湿式脱硫装置や吸収塔の前段に冷却塔を設置した脱硫装置などでよく、特に限定されるものではなく、通常の湿式脱硫装置が使用できる。湿式脱硫に使用する吸収液としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸ソーダ、苛性ソーダ等の吸収剤の水溶液(アルカリ吸収液)が挙げられる。
【0027】
湿式脱硫法による本システムでは、脱硫吸収塔7の後流には、再加熱用の熱交換器8が設けられていて、これらの装置を経て排ガスは煙突9から大気中に放出される。ここで、再加熱用の熱交換器8では、脱硫吸収塔7前段の熱回収用の熱交換器6で回収した熱エネルギーによって、温度低下した燃焼排ガスを加熱する。燃焼排ガスを放出する際には、浄化後のガスを加熱して、高温ガスにしてから排出することが行われており、湿式脱硫装置7の後流では、熱の供給を行う熱交換器8が設けられている。
なお、熱回収用の熱交換器6と再加熱用の熱交換器8は、熱媒を媒体として熱エネルギーを交換する方式のガスヒーターで構成されている。ここで、熱交換器6と8はそれぞれ排ガスの温度を冷却、加熱するものであればよく、別々の系統であっても直接熱交換するガスガスヒーターであってもよい。
【0028】
以上のような図1に示すシステムでは、次のように金属水銀が除去される。すなわち、ボイラー1からの排ガス中には、石炭等の燃料中のCl分がHC1として存在しており、水銀酸化触媒10の触媒上で金属水銀(Hg)が塩化水銀(HgC1)に酸化される。脱硫吸収塔7では、排ガス中のS0の除去と同時にHgC1の除去が行われる。排ガス中のHCl濃度はHg濃度に比べ圧倒的に大きいため、過剰のHClが含まれるが、脱硫吸収塔7で石灰乳等のアルカリ水溶液に吸収されるので、煙突から排出されることはない。脱硫吸収塔7においてHgが除去された排ガスは、再加熱用熱交換器8に導入され、熱交換器5で回収した熱エネルギーによって加熱され、煙突9から排出される。
【0029】
このように本発明においては、水銀酸化触媒下で水銀の酸化処理を行い、水溶性に変換した排ガス中の水銀を湿式脱硫工程で除去する。一方、燃料中のCl含有量によっては水銀の酸化処理する最適温度が変化するため、温度が高すぎたり低すぎたりすることで金属水銀が十分酸化されず、排出されてしまう場合があり得る。
【0030】
そこで本実施の形態では、水銀酸化触媒10を、NH分解触媒3の後流でエアヒーター4の前流a(300〜450℃の温度域)、エアヒーター4の後流で集塵機5の前流b(120〜200℃の温度域)、又は、熱回収用熱交換器6の後流で湿式脱硫装置7の前流c(60〜120℃の温度域)、のいずれか1箇所に設置する。
図2に、水銀酸化触媒の設置位置を検討する際の手順をフロー図で示す。
【0031】
本発明で対象とする排ガスは、例えば石炭、重質油等の硫黄や水銀を含む燃料を燃焼する火力発電所、工場等のボイラー排ガス、あるいは、金属工場、石油精製所、石油化学工場等の加熱炉排ガスであり、二酸化炭素、酸素、SOx、ばい塵又は水分を含む排出量の多いものである。以下、石炭焚きの排ガスを処理する場合の好ましい態様について、説明する。
第1に、低濃度(0.01%以下)Clの石炭を使用せず、中高濃度(0.01%以上)Clの石炭を使用する際には、NH分解触媒3の後流でエアヒーター4の前流a(300〜450℃の温度域)、脱硝触媒2の温度域に水銀酸化触媒10を設置する。この態様では、水銀酸化触媒10を高温で用いるため、触媒量を少なくすることが可能となる。
【0032】
第2に、低濃度Clの石炭を使用する際には、エアヒーター4等による加熱工程後流側の60℃〜200℃の温度域に水銀酸化触媒10を設置する。そして、集塵器5において、アンモニアを注入する系か否かによって、設置位置を変更する。これは、アンモニアを排ガス中に注入してしまうと、NH3分解触媒によって低下した排ガス中のアンモニア濃度が再び上昇し、水銀酸化触媒10による水銀酸化反応を阻害してしまい、塩化水銀への転換効率を低下させてしまうからである。
よって、集塵器5にアンモニアを注入する系では、排ガスにアンモニアが注入されていない集塵器5の前流であって、エアヒーター4の後流b(120〜200℃の温度域)の位置に、水銀酸化触媒10を設置する。
【0033】
一方、集塵器5に、アンモニアを注入しない系では、集塵器5の後流で且つ熱回収用熱交換器6の後流であって湿式脱硫装置7の前流c(60〜120℃の温度域)の位置に、水銀酸化触媒10を設置する。この態様では、アンモニアの注入を行わないので、集塵器5の前後いずれにも触媒を設置可能であるが、集塵器5の後流では、排ガス中のばい塵が除去されており、低ばい塵濃度により触媒目開きを低減可能であるため、触媒量を低減できる効果がある。
【0034】
図1の排ガスの水銀酸化触媒では、図2のフローに従い、各温度域を有する最適な箇所に水銀酸化触媒を設置することにより、燃焼排ガス中の金属水銀を、脱硫吸収塔7で吸収除去可能な塩化水銀に効果的に酸化できる。
また本システムによれば、水銀酸化触媒10出口のガス中の金属水銀もしくは塩化水銀濃度を測定することにより、水銀酸化工程を適正な温度に制御することにより、排ガス中のCl含有量に対応して、塩素化剤(HCl等)を添加しなくても金属水銀を安定して塩化水銀に酸化して、排ガス中の金属水銀を有効に除去できる。
【0035】
本発明における水銀除去の効果を確認するため、以下の実験を行ったが、本発明はこれら実施例の記載によって何ら限定されるものではない。
【0036】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1
図3に示す排ガスの水銀除去装置を用いて、水銀の酸化率およびアンモニアの分解率を評価する試験を行った。
本実施例1の装置では、NガスにH0,C0,0,NHおよびHClを添加し、金属水銀の蒸気を混合して模擬ガスを調整した。模擬ガスは、反応器13に導入され、反応器13内に設けられたNH分解触媒11と水銀酸化触媒12に通し、触媒は電気ヒータ14で温度を制御した。入口ガス、NH分解触媒11の出口ガス、および、水銀酸化触媒12の出口ガスをそれぞれ採取した。
【0037】
試験条件としては、添加したH0:7%、C0;12%、0:5%、NH:10ppm、HCl:10ppmであって、水銀濃度がHg:30μg/m3Nであり、常圧、反応器温度350℃、NH分解触媒SVが6000h-1、水銀酸化触媒SVが6000h-1、NH分解触媒がV2O5/TiO2-SiO2、水銀酸化触媒がV2O5-WO3/TiO2-SiO2であった。
下記表1に、試験結果を示す。
【0038】
【表1】
Figure 0004175465
【0039】
表1に示す試験結果より、NH分解触媒でアンモニアを99%以上分解除去することにより、水銀酸化触媒12が350℃と高温でも、ガス中の金属水銀を95%以上酸化することが可能であり、後流の湿式脱硫装置で除去可能となることがわかった。
本実施例により、上記実施の形態において、水銀酸化触媒10を、NH分解触媒3直後の後流でエアヒーター4の前流a(300〜450℃の温度域)に設置した場合に、十分な水銀酸化反応が進行することが明らかになった。
【0040】
実施例2
図4に示す排ガスの水銀除去装置を用いて、水銀の酸化率およびアンモニアの分解率を評価する試験を行った。
本実施例2の装置でも、NガスにH0,C0,0,NHおよびHClを添加し、金属水銀の蒸気を混合して模擬ガスを調整した。模擬ガスは、先ずリアクタ16に導入され、リアクタ16内に設けられたNH分解触媒11に通し、触媒は電気ヒータ14で温度を制御した。リアクタ16を出たガスは、冷却器15を経てから、次のリアクタ17に導入された。リアクタ17内に設けられた水銀酸化触媒12にガスを通し、触媒は電気ヒータ14で温度を制御した。入口ガス、NH分解触媒11の出口ガス、および、水銀酸化触媒12の出口ガスをそれぞれ採取した。
【0041】
試験条件としては、添加したH0:7%、C0:12%、0:5%、NH:10ppm、HCl:10ppmであって、水銀濃度がHg:30μg/m3Nであり、常圧、NH分解触媒温度が350℃、水銀酸化触媒温度が160℃、NH分解触媒SVが6000h-1、水銀酸化触媒SVが6000h-1、NH分解触媒がV2O5/TiO2-SiO2、水銀酸化触媒がV2O5-WO3/TiO2-SiO2であった。
下記表2に、試験結果を示す。
【0042】
【表2】
Figure 0004175465
【0043】
表2に示す試験結果より、NH分解触媒でアンモニアを99%以上分解除去することにより、水銀酸化触媒12が160℃と低温でも、ガス中の金属水銀を95%以上酸化することが可能であり、後流の湿式脱硫装置で除去可能となることがわかった。
本実施例により、上記実施の形態において、水銀酸化触媒10を、エアヒーター4等による加熱工程後流側の60℃〜200℃の温度域(b、c)に設置した場合に、十分な水銀酸化反応が進行することが明らかになった。
【0044】
【発明の効果】
本発明のシステムによれば、脱硝触媒の後流へリークしたNH3を分解した後に、水銀酸化処理することにより、NH3による反応阻害を回避でき、触媒性能向上による触媒量低減が可能となる。また、エアヒーター等の加熱手段以降の温度域に設置する場合、硫安付着防止できるため、耐久性向上による触媒量低減が可能となる。
また、脱硝触媒の後流へリークしたNH3を分解処理することで、エアヒーター等の加熱手段やGGH等の熱交換器への硫安付着を防止することができ、さらには、スートブローの頻度低減による装置の耐久性向上が図られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る排ガスの水銀除去システムの一例を示す図である。
【図2】本発明の水銀除去システムにおいて、水銀酸化触媒の設置位置を検討する際の手順フローを示す図である。
【図3】実施例1において用いた排ガスの水銀除去装置の概略説明図である。
【図4】実施例2において用いた排ガスの水銀除去装置の概略説明図である。
【符号の説明】
1 ボイラー
2 脱硝装置
3、11 NH3分解触媒
4 エアヒーター(A/H)
5 集じん器
6 熱回収側熱交換器(GGH)
7 脱硫吸収塔(湿式脱硫装置)
8 再加熱側熱交換器(GGH)
9 スタック
10、12 水銀酸化触媒
13 反応器
14 電気ヒーター
15 冷却器
16、17 リアクタ

Claims (9)

  1. ボイラーの排ガス中から水銀を除去する水銀除去システムであって、
    脱硝装置と湿式脱硫装置の間に、該脱硝装置出口から流下するNHを分解するNH分解触媒と、該NH分解触媒の後流に水銀を塩化水銀に酸化する水銀酸化触媒とが設置されており、塩化水銀に酸化された水銀を前記湿式脱硫装置にて除去することを特徴とする排ガス中の水銀除去システム。
  2. 前記脱硝装置と湿式脱硫装置との間に、加熱手段および熱交換器が設置されている水銀除去システムであって、
    前記水銀酸化触媒が、前記NH分解触媒の後流で加熱手段の前流、前記加熱手段の後流で熱交換器の前流、又は、前記熱交換器の後流で湿式脱硫装置の前流、の少なくとも1箇所以上に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の排ガス中の水銀除去システム。
  3. 前記水銀酸化触媒が、Ti02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス中の水銀除去システム。
  4. 前記NH3分解触媒が、Ti02,Si02,Zr02,Al23およびゼオライトからなる群より選ばれる少なくとも1種類を担体として、該担体上にPt,Ru,Rh,Pd,Ir,V,W,Mo,Ni,Co,Fe,Cr,CuおよびMnからなる群より選ばれる少なくとも1種類を活性成分として担持した触媒であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス中の水銀除去システム。
  5. ボイラーの排ガス中から水銀を除去する水銀除去方法であって、
    脱硝工程と湿式脱硫工程の間で、該脱硝工程から流下するNHを分解するNH分解工程と、該NH分解工程の後流にて水銀を塩化水銀に酸化する水銀酸化工程とを含み、塩化水銀に酸化された水銀を前記湿式脱硫工程にて除去することを特徴とする排ガス中の水銀除去方法。
  6. 前記脱硝工程と湿式脱硫工程との間に、加熱工程および熱回収工程を含む水銀除去方法であって、
    前記NH3分解工程が、脱硝工程後流の300〜450℃の温度域で行われるとともに、
    前記水銀酸化工程が、NH3分解工程後流の300〜450℃の温度域、加熱工程後流の120〜200℃の温度域、又は、熱回収工程後流の60〜120℃の温度域、の少なくとも1箇所以上で行われることを特徴とする請求項5に記載の排ガス中の水銀除去方法。
  7. 前記水銀酸化工程が加熱工程後流側で行われる際に、温度を60℃〜200℃の範囲で所定温度に制御することを特徴とする請求項6に記載の排ガス中の水銀除去方法。
  8. 前記水銀酸化工程における酸化触媒出口ガス中の金属水銀もしくは塩化水銀濃度を測定し、該水銀酸化工程の温度を制御することを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の排ガス中の水銀除去方法。
  9. 前記NH3分解工程において、出口NH3濃度を1ppm以下に処理した後、前記水銀酸化工程で水銀を酸化処理する特徴とする請求項5〜7のいずれか1項に記載の排ガス中の水銀除去方法。
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