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JP4390869B2 - 万線状凹凸模様を有する化粧材 - Google Patents

万線状凹凸模様を有する化粧材 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、木目の「照り」による木肌感等を、人工的でとらしくなく自然な感じに表現できる、化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、木目柄等有する化粧材が、シート、板材、或いはその他立体物等として、広く使用されている。そして、天然木材が有する独特の「照り」をも化粧材にて表現する為に、万線凹凸模様を設ける事が試みられている。照りは、着色インキの印刷で表現できる木目模様とは本質的に異なる、木材の視覚的特性の一つである光沢感である。それは、着色インキの印刷で表現できる木目模様は、木材切断面に入射した光が散乱した散乱反射光成分に該切断面固有の色成分が含まれ、それが切断面で面分布するからである。しかし、「照り」は、木材切断面に現れる細胞、繊維、導管等の多数の繊維質によって鏡面反射した鏡面反射光成分による。この反射光は鏡面反射である為、反射物体の色を反映せず、前記繊維質の部分部分の微妙な配向方向の違いによる鏡面反射光量の強弱が面分布となって現れて、「照り」となる。そこで、この鏡面反射光の面的強弱の分布模様を、従来は万線模様のパターンを設けて表現する事が試みられて来た訳である。
【0003】
以上の様な「照り」を表現する為に万線凹凸模様を設けた化粧材は、例えば、▲1▼特公平7−22989号公報、▲2▼特公平7−106625号公報、▲3▼特開平4−125199号公報等で提案されている。
▲1▼では、平行曲線群〔図12(A)及び(C)参照〕若しくは平行曲線群と平行直線群を組み合わせた線群〔図12(B)参照〕のパターンからなる万線凹凸模様を開示している。平行曲線群の代表例としては、正弦波、サイクロイド曲線、円弧の曲線単位を複数本互いに平行移動して配列したものを挙げている。また、線群のパターンを、輪郭線にて囲まれた複数の閉領域毎に、線の方向や形状を変えた万線凹凸模様等も挙げている〔図12(D)参照〕。
▲2▼では、前記図12(A)の様な、一定周期又は不定周期のウェーブ状曲線型の凹状溝を互いに平行に多数配列してなる平行曲線群凹凸模様の他に、図12(E)の様な、閉曲線で囲まれた区画領域内に同一方向に走る直線状凹状溝を互いに平行に多数配列してなる平行直線群からなる万線凹凸模様を挙げている。
▲3▼では、万線同士が完全平行では無い形態として、ウェーブ状曲線群からなる溝状凹凸模様にて、図13に示す様な、ウェーブ状曲線群を関数曲線からなり各曲線の関数パラメータを順次変化させ各曲線間の間隔が線方向に滑らかに変化させた万線凹凸模様とする事で、木目の照りをより自然なものとして表現できると、提案している。
そして、以上の様な従来の万線凹凸模様は、図12の(F)の斜視図に示す如く、いずれも単調な平行関係を有する連続の曲線等であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
以上の様に、特に天然木の照りを微細な溝状凹凸模様を設ける事で表現した化粧材が各種提案され、照り感は一応表現できる様になった。しかし、その照り感は、人工的に設けた万線凹凸による為に、天然木の照りと比べると不自然感が残った。それは、上記説明した様な従来の万線凹凸模様は、その全てに於いて、図12(C)及び(D)等の様に一部特殊な場合もあるが、それらも含めて、溝間の間隔は一定(完全平行)か、一定で無い場合でも滑らかに変化する規則性を有している。しもか、溝となる万線の長さは領域内で連続乃至は無限長を前提にしたからである。すなわち、図12(A)、(B)、図13は万線が無限長であり、また、図12(C)、(D)、(E)も、万線の長さ自体は有限長ではあるが、万線を、エンドレスに繋いだり〔図12(C)〕、或いは1つの閉領域内の全領域にわたって連続している〔図12(D)、(E)〕。
【0005】
そこで、本発明の課題は、独特の万線状凹凸模様により、特に木目の「照り」による木肌感等を、人工的でとらしくなく自然な感じに表現できる化粧材とする事である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで上記課題を解決すべく、本発明の万線状凹凸模様が形成された層を有する化粧材では、その万線状凹凸模様が、線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の走行方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンから成る凹凸模様とした。その結果、万線状凹凸模様のパターンの構成要素である線素には、近傍の線素同士が揃った平行関係ではなく、各線素の長さも不規則である為に、人工的なとらしい感じが無く、自然な感じで照り等が表現できる様になった。
また、本発明の化粧材は、前記構成に於いて更に、前記万線状凹凸模様を形成する線素が、始点及び終点の両端の線幅を細く先鋭化した先端を有するものとした
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材の実施の形態を説明する。
【0008】
〔万線状凹凸模様〕
先ず、図1は、本発明の万線状凹凸模様を説明する概念図である。同図(A)の如く、本発明の化粧材Dは、溝状の凹部1と凸部2とからなる万線状凹凸模様3を有する。しかし、本発明に於ける万線状凹凸模様3のパターンは、図1(B)に示す如く、従来公知の万線凹凸模様に見られた様に、任意領域内に於いて線が連続していないで有限長である。つまり領域内で無限長を想定した連続線が互いに平行に多数配列したパターンでも、閉曲線でも無く、有限長の線分(線素4)を、しかもその長さを不規則に変えた上に、隣接する線素間で必ずしも完全平行に揃ってはいないが略平行となる様な揺らぎによる不規則性を有した平行関係で配置したパターンからなる。従って、図1(B)からも分かる様に、本発明に於ける万線状凹凸模様においては、或る線素の終端の延長上に別の線素の先端が位置するとは限らない。しかし、各線素はその走る方向が全くランダムに配置されているのではなく、図1(B)に例示した万線状凹凸模様4が波状を示す如く、線素の集合体の平均として見た場合には、波等の或る方向性、つまり異方性を有する。
なお、通常は万線状凹凸模様が外表面に存在する場合など、線素4の部分が凹部1に該当し、線素と線素との間隙部分が凸部2に該当するが、この逆でもよい。
【0009】
次に、図2の概念図で、本発明の万線状凹凸模様に於ける特徴の一つである、揺らぎを持った平行関係での線素の配置について説明する。同図は、線素4が配置される仮想面Pの小領域について、該仮想面(上の任意ポイント)が有する互いに平行な方向ベクトル場に於いて各ベクトルを、その向きに連ねて得られる線、すなわちベクトル場の流線を複数の線5として図示してある。仮想面Pは平面である。但し、実際の化粧材に於いて万線状凹凸模様を有する面は平面以外にも曲面や折れた面等があり得る。また、隣接する線5同士は同図の場合では平行である。もちろん、より広い領域で離れた線5同士では平行関係とは限らない。しかし、非平行関係でも、小領域でみれば平行関係が成立する。そして、線5上の或る点Qに於ける方向ベクトルはVq→であり、同じ線5上で点Qから離れた点Rに於ける方向ベクトルはVr→である。〔なお、ベクトルは文字上に横矢印を付して本来は表すが、ここでは便宜上、文字の右側に付してある〕方向ベトクルは二次元ベクトルである。方向ベクトルは、もちろん、線素を配置する仮想面全領域ではランダムでは無く、例えば、波状等と任意の異方性が定義されるベクトルである。また、ここでは、それぞれの線5は、互いに平行に図示したが、図示された線5と線5との間にも、例えばそれらの中間値とした方向ベクトルが存在するが、説明上、離散的に線5を描いてある。
なお、この様な平行な複数の線5は、従来の万線模様に於ける万線と考えても良い。平易に説明すれば、本発明の万線状凹凸模様は、従来の万線模様に於ける万線(線5)に対して、不規則な長さの複数の線素4を平均値が万線(線5)に一致する様にして線素の走行方向に所定の分散を持たせ、万線に対する平行関係に揺らぎを持たして配置して、万線状凹凸模様としてのパターンとしたものである。
【0010】
そして、図2の如く、仮想面Pに配置された各線素4a〜4d等は、それぞれの線長が一定ではなく不規則である。しかも、小領域で見た場合に、各線素は揺らいだ平行関係にあり、おおよそ平行である。つまり、各線素の持つ方向ベクトルは、仮想面Pが持つ平行方向ベクトル場に対して揺らいでいるが、大略は一致している。つまり、各線素(の方向ベトクル)が走る形状は、仮想面Pの線5に沿っているか、或いはずれていても大略は沿った形状である。従って、各線素5はこの点では規則性を持つ(仮想面Pの方向ベクトルはランダムではなく異方性が或る為、この異方性による規則性を持つ)。
なお、線素は、図2の線素4a及び4bで例示する様に、線素同士は必ずしも分離独立している必要はなく、一部が接触していても良い。
【0011】
なお、図1(B)に示す概念図では、図3(A)でも示す様に各線素4の線幅(太さ)は同じで、その始点から終点まで均一な太さとしたが、図3(B)に示す様に、始点及び終点の両端を細く先鋭化しても良い。また、線幅も、不規則、或いは線長に応じて短い場合は細く、或る長さ以上では一定又は略一定等とある程度の規則性を持たせても良い。特に、両端を細く先鋭化すると、線素が突然終了した事による不自然さを防げる。但し、先鋭化した先端は滑らかな丸まっていても良く、鋭角でも良い。
【0012】
次に、図4は、本発明に於ける万線状凹凸模様3の大きさを説明する概念図である。万線状凹凸模様3は、溝状の凹部1と、凸部2とからなるが、凹部1の幅w1と凸部の幅w2とは、用途により異なるが、それぞれ通常1〜1000μmの範囲である。1μm未満であると照りの再現効果が不十分であり、また、1000μmを超える場合は、各線素が目視で識別できる程度に目立ってしまう。もちろん、各線素を識別出来る程度に目だ立たせる意匠表現もあり得るが、木目の照りの再現には、線素は目立たない方が良い。従って、木目の照りの再現の場合には、w1及びw2の幅は、5〜100μm、より好ましくは5〜50μmの範囲が良い。なお、図1〜図3による説明からも分かる様に、w1とw2とは必ずしも同一値とは限らない。
また、凹部の深さ(凹部と凸部との高低差)は、通常1〜100μm程度であるが、木目の照り表現の場合は、好ましくは5〜50μmの範囲とするのが良い。なお、凹部の深さも、w1及びw2の大きさが大きい場合は深くしたり、或いは深さ単独で独立に不規則に変化させても良い。
なお、凹部(或いは凸部)の横断面形状は、通常は概念図の図4の如き四角形であり、この様な形状は、木目の照りの表現等の独特の光沢感を表現する場合には、底面による鏡面反射を活かせるので、好ましい形状である。しかし、凹部及び凸部の横断面形状はこれ以外の形状でも良い。例えば、目視出来る程度の万線状凹凸模様の場合などでは、その凹部の横断面形状を角が丸くなった四角形や半円や三角等その他形状としても良い。
【0013】
以上説明した様に、本発明に於ける万線状凹凸模様は、少なくとも▲1▼線素が隣接する線素同士の平行関係が揺らいだ平行関係にあり、各線素の方向が一定の平均値と分散を有する分布をしているという不規則性が加味された規則性が有る点と、▲2▼線素が無限長の連続線ではなく線長が有限長で且つ不規則である点に、特徴がある。この為、本発明の万線状凹凸模様は、異方性の点では従来の連続万線による凹凸模様の「万線凹凸模様」とは類似しているが、図9に例示の具体例からも分かる様に、そのパターンは万線が線素からなること、及び揺らぎ等による不規則性の点で全く異質である為、「万線状凹凸模様」と称して区別してある。ところで、本発明の万線状凹凸模様は、上記▲1▼及び▲2▼以外の不規則性を備えていてもよい。例えば、凹凸の高低差、線幅、線長と線幅との比率、線素が分布する面密度等である。また、▲1▼の線素の線長の不規則性も、一定の長さの平均値を中心に所定の分散で分布する揺らぎを持つ不規則性でも良い。これら、各種不規則性を更に付与する事で、木目照り感はより自然に表現できる。
【0014】
万線状凹凸模様が全体として示す平均化した万線の異方性(の形状)の一つは、図12(A)或いは図5(A)に示す波形であり、波形は、樹木を成長方向に斜め又は平行に切断した木肌面に於ける木目の照り感の表現に好適なパターンである。もちろん、本発明に於ける万線状凹凸模様は、特に木目の照り感の表現に好適になる事を意識したものではあるが、その他の意匠表現にも当然使用できるものである。万線状凹凸模様の線素の走る向きを部分部分で変えたパターンとすれば、表面の部分部分の領域で異なる鏡面反射光量を持たせた意匠表現の化粧材にできる。もちろん、該パターンは、意匠表現に応じて任意のパターンとすれば良い。
従って、万線状凹凸模様4は、図5(A)に示す波形以外にも、例えば、図5(B)の如き略直線の全面が一方向のみの異方性、或いは、図5(C)の如き螺旋状の異方性等と、その異方性のパターンは任意である。但し、図5(D)の如く、各線素は線長が不規則で有るが向きも完全に不規則で、異方性が無いものは対象外である。図5(D)では、或る微小領域に於ける照りが他の領域と区別されず、全面均一な照りとなる。また、従来の万線凹凸模様として説明した図12(A)〜(E)、及び図13の各種万線凹凸模様も、線素を配置する際の方向ベトクル場(の流線)としても良い。
【0015】
次に、図6の概念図を用いて、鏡面反射光量の大小と万線状凹凸模様との関係を説明する。図6(A)及び(C)は、照明光源の入射角と観察者の視線方向とを或る特定の組み合わせに固定した場合の天然木板の或る面に於いて表現すべき鏡面反射光量の大小を、スカラー値で示した図であり、領域a1のそれは1.05、領域a2では2.35、領域a3では0.95である。この値は、天然木板に於ける木材繊維の配向方向と相関を持つ。なお、照明光Lは光源Lsから入射角θで面に入射し、観察者Oは面の法線方向Nに位置する。そして、図6(B)は、図6(A)に対応して割り付けた万線状凹凸模様4の一例である。すなわち、図6(B)では、スカラー値が小さい領域、即ち鏡面反射性の高い領域a1やa3では、万線状凹凸模様4の向きは大略縦方向としてy軸方向からの角度を少な目にし、また、スカラー値が大きい領域、即ち拡散反射性の高い領域a2では、万線状凹凸模様4の向きを大きく左右に波状に振らして、y軸方向からの角度を大き目にしてある。この様に、万線状凹凸模様は、表現すべき鏡面反射光量の大小のパターンに応じて、線素の向き、或いは更に線素の密度や線素の幅等を変化させた模様とすれば良い。なお、各領域間に引かれた線分は便宜上描いたもので、領域間で鏡面反射光量は連続的に滑らかに変化する。但し、意匠表現次第では、鏡面反射光量が領域間で不連続に変化しても良い事はもちろんである。
【0016】
なお、図5及び6に於いては、平行な点線(つまり或る線素の終端の延長上に次の線素の始点が来て、点線同士の平行関係に揺らぎが無い)で複数の線素を図示しているが、これは単なる図示に於ける便宜の為である。
【0017】
次に、図7〜図9により、本発明による実際の万線状凹凸模様の一例を説明する。図7は、線素を配置する仮想面の方向ベクトル場の流線、即ち線素の平均方向の一例で、板目等の木目等に適用できる方向ベクトルの一例である。そして、図8は図7の方向ベクトルと組み合わせ得る木材切断面模様として、板目面に現れる年輪模様の一例である。そして、図9は、実際に図7の方向ベクトルに対して、線素を配置して得られたパターンによる、本発明の万線状凹凸模様の具体例を示す部分拡大図である。
図9の様に、本発明の万線状凹凸模様は、従来の万線凹凸模様に比べて、人工的感触が極めて少ない。例えて言えば、図9の万線状凹凸模様は、実際の照りの面分布を持たせる為に波うっている事が異なる他は、あたかも実物のラワン合板の表面に現れる導管溝の拡大図の如くであり、極めて自然な感触のパターンである。
【0018】
〔万線状凹凸模様による再現テクスチュア〕
代表的には木目板の「照り」であるが、特に限定はない。例えば、石板、織布等のテクスチュア等の表現でも良い。本発明の万線状凹凸模様独特の穏やかな表面反射模様、或いはその凹凸模様を目視できる様な表面凹凸模様として等と、活かせるテクスチュアであれば何でも良い。
【0019】
〔万線状凹凸模様の作成方法〕
以上説明した様な万線状凹凸模様の作成方法は、特に限定は無い。その一つは、コンピュータによる画像合成で得る方法である。仮想面上の異方性を持った方向ベトクルは、従来の万線凹凸模様同様に得られる。線素の線長を不規則にするには、仮想面に配置する時に所定の平均値と分散を持った分布でランダム化して配置し、また、平行関係に揺らぎを持たせるには、例えば、配置済の線素をフラクタル処理して変形させたり、図7の様な平行流線群上に一旦配置済の線素をその中心を回転軸として所定の平均値と分散を持った回転角度分布でランダムにわずかに回転させたりすれば良い。なお、平行関係に揺らぎを付与する場合、正規分布の様な線素の操作すべき座標値に対して、或る中心値が最も確率が大きく、両側に離れる程小さくする様にしても良いが、或る中心値に対して両側に或る幅を持った範囲内で一様な確率になる様にしても良い。
そして、この様にして作成した万線状凹凸模様を、実際に基材等の付与対象物に形成する為に、それをコンピュータ上の画像データとして作成しておき、画像データから金属版材上の感光性レジスト膜上に直接露光して、現像、腐食工程を行うダイレクトエッング法で、エンボス版を作製し、該エンボス版を押圧すること等によって万線状凹凸模様を付与対象物に形成したり、或いは写真フィルム原稿として作成しておく。
【0020】
〔万線状凹凸模様を形成する基材〕
万線状凹凸模様を形成する基材としては特に限定はなく、その用途及び形状等により、樹脂、金属、セラミックス、或いはこれらの積層物や混合物等の複合物が使用される。例えば樹脂では、熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、オレフィン系熱可塑性エラストマー等のオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等があり、硬化性樹脂としては、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂や、多官能アクリレート系、エポキシ系等の電離放射線硬化性樹脂等がある。また、金属ではアルミニウム、銅、鉄等がある。また、セラミックスでは、ガラス等がある。これらは下記のいずかの方法で万線状凹凸模様を形成できる基材である。
【0021】
なお、これらの基材は、万線状凹凸模様が付与されてなくても、化粧材の基材として使用できる。また、化粧材の構成においては、これらの基材に万線状凹凸模様を付与したものに、さらに積層する等して複合して使用し得る基材(万線状凹凸模様は付与出来ないか付与しずらいもの)として繊維質基材がある。例えば、薄葉紙、チタン紙、コート紙の紙類や、織布、不織布等の布類である。
化粧材の形状がシートや板の場合には、通常、基材はシート(フィルム)や板の単層、又はこれらの積層体で使用される。
【0022】
〔万線状凹凸模様の付与方法〕
万線状凹凸模様を化粧材に付与する方法は、特に限定されず、従来公知の万線模様の場合と同様に、付与対象物である基材の材質等に応じて各種方法で付与すれば良い。例えば、直接に付与する対象物に応じて次の様な方法がある。
【0023】
▲1▼付与対象物が熱可塑性樹脂シート等で熱圧によって塑性変形可能の場合には、エンボス版で熱圧を加えて、賦形すれば良い。エンボスには、平版プレス機、ロールエンボス機等の公知の各種プレス、エンボス機を使用する。円筒状のエンボス版を使用するロールエンボス法は、付与対象物を長尺帯状シート等として連続生産出来るので生産性が良い。付与対象物への加熱加圧条件は、付与対象物の熱圧的挙動による異なるが、通常の熱可塑性樹脂の場合、軟化点又は熱変形温度と融点又は熔融温度との間の適当な温度に加熱し、エンボス版を押圧して賦形し、冷却して形状を固定する。
また、熱硬化性樹脂等の硬化性樹脂で塑性変形不可能の場合でも、その硬化前の固体で塑性変形可能な段階でエンボス版で熱圧又は圧を与えて賦形するか、液状段階で取り扱えるならば、エンボス版を成形型として使用して硬化させる(後で詳述する)等して、賦形できる。エンボス版による賦形は、通常、付与対象物がシート又は板状の場合に適する。
【0024】
▲2▼付与対象物が立体物で樹脂等の成形体である場合には、成形型の型面に万線状凹凸模様を形成しておいた成形型を使って、成形と同時にその表面に万線状凹凸模様を付与する。成形方法は、例えば射出成形、キャスティング成形、圧縮成形等である。
【0025】
▲3▼付与対象物が金属の場合には、フォトエッチング法、或いは腐食するのではなくメッキするフォトエレクトロフォーミング法等がある。なお、付与対象物が金属の場合の方法は、上記▲1▼や▲2▼等で用いる通常は金属製のエンボス版、或いは成形型に凹凸模様を形成しておく為の方法としても使用される。
【0026】
以上は、凹凸模様を直接に付与する付与対象物の素性に応じた方法であるが、エンボス版、成形型は当然だが、これらで得られたシート等を賦形型として、化粧材の基材等の構成要素に、間接的に凹凸模様を付与する方法も勿論ある。
例えば、シートの場合でも、それをエンボス版として使用する他に、該シートを、支持体と転写層とからなる転写シートの支持体として用いて、被転写体の転写移行する転写層の表面に凹凸模様を転写と共に賦形する方法等である。この場合、成形型内に転写シートを挿入して成形すれば、樹脂等の成形体の表面に成形と同時に万線状凹凸模様を適宜絵柄等と共に賦形できる方法となる(射出成形では所謂射出成形同時絵付け方法に於ける転写方法)。
【0027】
次に、上記各種付与方法の中から、前記▲1▼で挙げた硬化性樹脂の未硬化液状段階にてエンボス版を成形型として使用して硬化させる方法として、電離放射線硬化性樹脂を用いて、円筒状のエンボス版で連続帯状の基材シート上に電離放射線硬化性樹脂硬化物による万線状凹凸模様を連続形成する方法を更に詳述しておく。
【0028】
この方法は、特開昭57−87318号公報、特公昭57−22755号公報、特公昭63−50066号公報、特開平7−32476号公報等に開示されるものであって、型(版)の凹凸形状を忠実に電離放射性硬化性樹脂の硬化物に賦形する方法である。基本的には、以下の工程からなる。
【0029】
▲1▼表面に目的とする形状と同形状且つ逆凹凸の凹凸形状(万線状凹凸模様)を形成した円筒形状の版胴(型)を用意し、これを軸芯の回りに回転させる。
▲2▼長尺帯状の基材シートを、該版胴の周速度と同速度で供給する。
▲3▼該基材シートと該版胴とを、その間に電離放射線硬化性樹脂の未硬化液状組成物を介して重ね合わせて密着させ、該液状組成物が該版胴の少なくとも凹部を完全に充填する様にする。
▲4▼その状態のままで電離放射線を照射して、該液状組成物を架橋、硬化させる。
▲5▼而る後に、基材シートを、それに接着し且つ版胴上の凹凸模様が賦形された電離放射線硬化性樹脂の硬化物と共に剥離除去する。
【0030】
以上の方法に於いて、円筒形状の版胴(型)としては、公知の凹版、グラビア版、エンボス版と基本的には、同様の材料、同様の構造、同様の製法によるものを用いれば良い。版の材料としては、通常は鉄、銅等の金属が用いられる。但し、版胴内部から紫外線或いは可視光線を照射する場合には、硝子、石英等の透明な材料を用いる。
版胴の軸芯の回りの回転駆動は、通常の輸転式グラビア印刷機、輪転式エンボス機等と同様な機構、方法を用いれば良い。基材シートの版胴への密着の為には、ゴム、金属等のローラ(圧着ローラ)で圧着する。又基材シートの版胴からの剥離にもゴム、金属等のローラ(剥離ローラ)で押さえて剥離する。基材シートは、長尺・帯状のものを用いる。此の様な基材シートは巻出ロール(供給ロール)から巻き出して、賦形後は巻取りロール(排紙ロール)で巻き取る。
【0031】
基材シートと版胴とを、その間に電離放射線硬化性樹脂の未硬化液状組成物を介して重ね合わせて密着させる態様としては、次の(1) 〜(3) がある。(1) 先ず基材シート上に液状組成物を塗布し、次いで該塗布面が版胴表面に向くようにして、該基材シートを該版胴に重ね合わせる。(2) 先ず版胴上に液状組成物を塗布し、次いで該版胴上の塗布面に基材シートを重ね合わせる。(3) 先ず版胴上と基材シート上との各々に液状組成物を塗布し、次いで該基材シートと該版胴とを各々の塗布面が対向する様にして重ね合わせる。
【0032】
版胴と基材シート間にある未硬化液状組成物への電離放射線の照射の態様としては、次の▲1▼と▲2▼がある。▲1▼電離放射線に対して透明な基材シートを選び(例えば、紫外線に対してはポリブロピレン基材シート、電子線に対しては薄葉紙を選択)、基材シート側から照射する。▲2▼電離放射線に対して透明な版胴を選び(例えぱ、紫外線に対して石英の版胴を選択)、版胴の内部から照射する。
【0033】
基材シートの材料は、▲1▼ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の熱可塑性樹脂ポリエステル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、オレフィン系熱可塑性樹脂エラストマー等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ABS、アクリル樹脂等の樹脂シート、▲2▼薄葉紙、上質紙、クラフト紙、和紙等の紙、▲3▼硝子、ビニロン、ポリエステル、セルロース等の繊維からなる不織布、或いは織布、▲4▼アルミニウム、鉄、銅等の金属箔等がある。なお、上記▲2▼〜▲4▼は、透明版胴内からの紫外線照射射、又は電子線等の高透過性放射線の場合のみ可能である。また、基材シートの厚さは通常20〜200μm程度のものを用いる。
【0034】
電離放射線硬化性樹脂としては、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等の重合性不飽和結合、又は、エポキシ基等のカチオン重合性官能基を有するプレポリマー、モノマー、又はポリマー、或いはポリチオ一ル化合物からなり、これらを1種のみ又は2種以上適宜混合した組成物を用いる。組成物は、未硬化時に液状のものを用いる。
【0035】
前記分子中に重合性不飽和結合を有するプレポリマーの例としては、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類がある〔尚、本明細書では(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味で用いる。以下同様〕。前記分子中に重合性不飽和結合を有するモノマーの例としては、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン系モノマー、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル等の単官能(メタ)アクリル酸エステル類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジメチルアミノ)エチル、(メタ)アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)エチル等の不飽和酸の置換アミノアルコールエステル類、(メタ)アクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、分子中に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、例えば、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコール等がある。
【0036】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂肪族型エポキシ樹脂等、脂肪環型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル、ウレタン系ビニルエーテル、エステル系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂、環状エーテル系樹脂、スピロ系化合物等のプレポリマー等がある。
【0037】
以上の化合物を必要に応じ1種もしくは2種以上混合して用いるが、樹脂組成物に通常の塗工適性を付与するために、前記プレポリマー又はオリゴマーを5重量%以上、前記モノマー及び/又はポリチオールを95重量%以下とすることが好ましい。また、硬化物の可撓性、表面硬度等の物性を調節する為に前記プレポリマー、オリゴマー、モノマーの少なくとも1種に対して、以下の様な電離放射線非硬化性樹脂を1〜70重量%程度混合して用いることができる。電離放射線非硬化性樹脂としてはウレタン系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0038】
特に紫外線で硬化させる場合には前記電離放射線硬化性樹脂組成物に光重合開始剤を添加する。分子中にラジカル重合性不飽和結合を有する化合物に対しては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルメウラムモノサルファイド、チオキサントン類等がある。
分子中にカチオン重合性官能基を有する化合物に対しては、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル、ジアリルヨードシル塩等がある。又、必要に応じて更に、光増感剤としてn−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等を混合して用いることもできる。
【0039】
以上の電離放射線硬化性樹脂組成物の未硬化液状組成物を版胴、或いは基材シートに塗工するには公知の各種方法、例えば、ロールコート、カーテンフローコート、Tダイコート等の方法を用る。特に版胴塗工の場合はインキパン中の液状組成物に、回転する版胴を浸漬させる(所謂ドブ浸け)も可能である。
【0040】
尚、ここで電離放射線としては、電磁波又は荷電粒子線のうち分子を重合、架橋し得るエネルギーを有するものを意味し、紫外線、可視光線、X線、電子線、α線等があるが、通常紫外線、又は電子線が用いられる。紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライトランプ、メタルハライドランプ等の光源が使用される。電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。
【0041】
〔化粧材の構成〕
以上、万線状凹凸模様の付与方法を各種説明したところで、次に、本発明独特の万線状凹凸模様が付与された化粧材の各種形態について説明する。
【0042】
本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材は、上記説明した形状的特徴を有する万線状凹凸模様を有しておれば、その層構成、材料構成、形状等は特に限定されない。それらの点については、従来公知の各種化粧材と同様で良い。万線状凹凸模様の位置は、化粧材の表側面や裏側面等の表面、或いは内面等と任意である。もちろんだが、万線状凹凸模様は、それによる反射光を利用し得る程度に隠蔽されない位置とする。
【0043】
そこで、先ず、本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材について、その幾つかの形態について、図10及び図11に断面図として例示する。
【0044】
図10(A)及び(B)に示す万線状凹凸模様を有する化粧材Dは、その基本形とでも言える構成のもので、基材11の片面に万線状凹凸模様3を有する構成である。万線状凹凸模様3は基材の表側面に有っても良いし〔図10(A)〕、裏側面に有っても良い〔図10(B)〕。これら於いて、基材は例えば、シートや板、樹脂成形体等である。最も単純な例では、基材11が透明な樹脂フィルムからなる基材シートで、その片面に万線状凹凸模様3のみが装飾処理として施されている化粧シートの形態での化粧材である。
次に、図10(C)に示す本発明の化粧材Dの一形態は、図10(A)の形態に対して、万線状凹凸模様3を表側面として、基材11の裏側面に、模様層12a及び隠蔽層12bがこの順に絵柄層12として、形成された構成である。この場合は、基材11は透明である。
【0045】
次に、図10(D)に示す本発明の化粧材Dの一形態は、化粧シート等として使用される場合であり、裏側から順に着色樹脂層13、透明接着剤層14、絵柄層12、透明保護層15が積層され、着色樹脂層13と透明接着剤層14との界面に万線状凹凸模様3が有る構成である。また、図10(E)は、図10(D)の構成に於いて、更に透明保護層15の表側面に導管模様等の(万線状凹凸模様よりも大きい)凹凸模様16を有する構成である。なお、着色樹脂層13に金属箔粉や二酸化チタン被覆雲母の鱗片状粒子等からなる光輝性のある顔料を添加しておくと、万線状凹凸模様3による光の異方性反射と着色樹脂層13の光の拡散反射との相乗効果により、より明瞭な照りを再現できる。
【0046】
(万線状凹凸模様以外の装飾)
本発明の化粧材は、基材が万線状凹凸模様のみで装飾処理されたものでも良い。例えば、図10(A)及び(B)の形態の場合で、基材11がそれ自体には何も装飾処理が施されていない透明樹脂の基材の場合である。しかし、もちろんだが、本発明では、その万線状凹凸模様が木目の照りの自然な再現に極めて効果的な様に、必要に応じ、例えば木目等の絵柄を付与する等のその他の装飾処理が、付与されたものでも良い。そこで、化粧材に付与され得る各種装飾処理について説明する。
【0047】
化粧材に付与される装飾処理としては、▲1▼処理対象の基材が樹脂やガラス等の透明性が有る場合は基材自体に着色剤を添加して着色(透明又は不透明)する処理、▲2▼模様印刷や金属薄膜形成、▲3▼万線状凹凸模様以外の凹凸模様賦形等がある。これら各種の装飾処理は組み合わせて使用する事もある。また、化粧材の形態においては、これら装飾処理の処理対象物が、万線状凹凸模様の付与対象物と同じ場合も有るし、異なる場合もある。異なる場合は、それら対象物を積層する等して化粧材としての形態とする〔図10(D)及び(E)参照〕。
【0048】
例えば、上記▲1▼の装飾処理では、図10(A)及び(B)に於いて、その基材11に着色剤を添加する形態がある。或いは、図10(D)及び(E)の化粧材の一構成要素である着色樹脂層13である。これらの場合、処理対象物と付与対象物は同一である。また、着色樹脂層13は、万線状凹凸模様の付与対象物たる基材でもある。
基材が樹脂等の場合には、その着色剤は、例えば、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニリンブラック等の有機顔料(或いは染料も含む)、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等である。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも良い。なかでも、万線状凹凸模様が形成された面に接する層中には、真珠光沢(パール)顔料等の光反射量が多い顔料を添加すると、万線状凹凸模様の効果を強調できる。同様に、万線状凹凸模様が形成された面に光反射性の金属薄膜層を形成するのも同様な効果が得られる。
【0049】
また、上記▲2▼の装飾処理の例では、図10(C)の模様層12a及び隠蔽層12bからなる絵柄層12、図10(D)及び(E)の化粧材の一構成要素である透明保護層15に対する絵柄層12等の、印刷等による形成等である。図10(D)及び(E)の化粧材の場合では、絵柄層12は通常は、透明保護層15を基材(基材シート)として、その表面に形成された後、シート状の着色樹脂層13と透明保護層15とを、間に例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂等からなる透明接着剤層14を介して積層する事で得られる。従って、この場合、処理対象物と付与対象物は別物である。絵柄層は印刷インキ層や金属薄膜層等である。
絵柄層形成の為の印刷や塗工に用いる印刷インキ(或いは塗料)は、例えば、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を、1種又は2種以上を混合して用い、これに前記▲1▼で列記した様な公知の着色剤等を添加した物を用いる。
印刷は、グラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等の公知の印刷法で行う。絵柄が全ベタの場合は、グラビア塗工等の公知の塗工法を用い塗料にて形成する事もできる。
金属薄膜層形成は、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等の金属を用い、真空蒸着、スパッタリング等の方法で製膜して形成する。該金属薄膜層は、全面に設けても、或いは、部分的にパターン状に設けて良い。
絵柄層の模様としては、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、或いは全面ベタ等がある。特に、本発明での万線状凹凸模様による意匠表現として、木目の照りの表現は極めて好適でありので、絵柄層の模様としては、木目模様は好ましい模様である。例えば、杉、松、欅、檜、チーク、オーク等の木目柄との万線状凹凸模様との組み合わせが好適である。模様は、基材の表側面、裏側面、表裏両面、或いは、多層構成の基材では層間の場合もある。
【0050】
(万線状凹凸模様以外の凹凸模様)
また、上記▲3▼の装飾処理の例では、図10(D)の化粧材の一構成要素である透明樹脂層15に対する、(万線状凹凸模様よりも大きい)凹凸模様16の賦形である。凹凸模様16は、例えば木目の導管、石板表面凹凸模様(花崗岩の劈開面等)、布表面のテクスチュア等の凹凸を表現する。この場合は、処理対象物と付与対象物は別物である。なお、凹凸模様16が木目導管の場合には、更に公知のワイピング法(特公昭58−14312号公報等参照)等によって、着色インキを充填する装飾処理もある。
また、図11の要部拡大図で概念的に例示する様に、万線状凹凸模様3よりも小さい微細凹凸模様17の賦形もある。図11の微細凹凸模様17は、万線状凹凸模様3と同一面に形成した例だが、他の面の場合もある。微細凹凸模様17は、例えばサンドブラスト等により形成する砂目模様状やマット面、或いはヘアライン等の凹凸である。特に、図11の様に、微細凹凸模様17を万線状凹凸模様3と同一面に付与すると、同図の如く微細凹凸模様17を、万線状凹凸模様3の凸部2の面の他に凹部1内部にも付与すると、万線状凹凸模様3の鏡面反射性を抑制気味にして照り感を若干抑える等と、万線状凹凸模様の意匠感を調整できる。
なお、万線状凹凸模様に対する、それよりも大きい凹凸模様、それよりも小さい微細凹凸模様と区別して説明したが、少なくとも万線状凹凸模様と同一面にその他の凹凸模様を形成する場合は、万線状凹凸模様の凹凸が暈けて消失してしまわない様であれば良い。例えば、同一面への付与で幅が同じ様であっても深さが浅ければ万線状凹凸模様の効果の消失は防げる。また、万線状凹凸模様の付与面と異なる面に、その他の凹凸模様を形成するのであれば、万線状凹凸模様の効果を消失せず、且つその他の凹凸による効果も得られるものであれば、その凹凸は万線状凹凸模様の凹凸の同程度の大きさのものであっても良い。
【0051】
以上の、万線状凹凸模様以外の凹凸模様の形成は、形成する対象物により既に述べた万線状凹凸模様の付与方法によりば良い。また、図11の様に、万線状凹凸模様と同一面の場合には、万線状凹凸模様を付与するエンボス版等の版面状にそれらが組合わさった凹凸を形成してものを使用して付与しても良い。
【0052】
(上塗り層)
また、装飾処理としては、上記▲1▼〜▲3▼以外に化粧材の表面に上塗り層を設ける処理もある。上塗り層は無色透明又は有色透明層で、塗装感や着色による意匠感等の表現に使用される。もちろん、上塗り層はも、この他にも、表面の耐久性の付与の目的でも使用される。但し、万線状凹凸模様が表面の有る場合には、上塗り層は、万線状凹凸模様の凹凸がそれによって埋没しない程度の厚さ(例えば3μm程度)とする。但し、万線状凹凸模様の凹凸が埋没しても、表面での鏡面反射は期待できないが、凹凸界面を挟む層間に屈折率差や、或いは下側層が金属薄膜層や光輝性顔料を有する等で光反射性であれば、それらによる内部界面反射を利用して、万線状凹凸模様の効果を得ることも可能である。上塗り層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等のバインダーに、必要に応じ、紫外線吸収剤、着色顔料、体質顔料、滑剤等を添加した塗料を塗工して形成する。
【0053】
(その他)
以上、図10及び図11による化粧材を一例として、本発明の化粧材の基本的構成を説明してきたが、本発明の化粧材の形態は、これら説明に限定されるものではない。本発明の化粧材は、その層構成、材料、装飾処理の組み合わせ等は従来公知の化粧材同様の各種の形態があり得る。
なお、化粧材が複層構成等で、万線状凹凸模様を形成された基材と、積層する他の基材には、万線状凹凸模様を形成する基材として列記した各種材料が使用できる。
【0054】
〔化粧材の用途〕
本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材の用途は、特に限定されず、その従来に無い凹凸模様を活かして、各種用途に用いられ得る。例えば、壁面、天井、床等の建築物の内装建材用途、或いは、外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の外装建材用途、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨居等の建具類の表面化粧材用途、箪笥等の家具やテレビ受像機等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧材用途、自動車、電車等の車両、航空機、船舶等の各種乗物の内装材用途、或いは、化粧品容器や小物入れ、包装シート等の各種包装容器及び材料、景品や小物等の雑貨等のその他各種用途に用いられ得る。そして、化粧材は、シートや板、立体形状物品等の各種形状で使用される。なお、万線状凹凸模様も含めた装飾面は、平面の他に曲面等でも良い。
【0055】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳述する。
【0056】
(万線状凹凸模様のパターンの作成)
先ず、万線状凹凸模様のパターンとして、図9に例示した様なパターンを、コンピュータを利用した画像の人工合成により次の様にして作成した。該パターンの人工合成は、コンピュータによる仮想的な三次元空間内に、木材の成長方向に配向した多数の繊維束からなる三次元樹木モデルを定義しておき、これを板目が出る様な切断面で切断する。なお、繊維束の配向は、成長方向に向かって繊維束が螺旋や波状等にうねる等の揺らぎを付与する事で、実際の木材の状況に近づけたモデルを用いた。そして、切断面に現れる繊維束の切断面との成す角度として定義する「繊維潜り角」の、切断面に於ける面分布を演算によって求めた。繊維潜り角が大きい、つまりより垂直に近い状態で繊維が潜り込む程、照りは少なくなる。そして、繊維潜り角の面分布に応じて、切断面上には照りの濃淡が現れることになる。次に、この繊維潜り角を、線素を配置すべき仮想面の方向ベトクルに置き換えた。置き換えは、繊維潜り角度(−90°〜+90°)を、任意方向(例えば水平方向)の基準軸から方向ベトクルの成す角度(0°〜180°)とを対応させる。対応は、繊維潜り角度の増加に比例して、方向ベトクルの角度も単調に増加する関係を用いた。そして、図7に示す様な、仮想面の方向ベトクルの面分布を得た。
【0057】
次に、線素の配置密度を適宜調整して、線素を仮想面にランダムに配置し、また重なりが大きい場合は配置を省略した。次に、配置された各線素それぞれに対して、その線上の位置座標について、フラクタル処理を行って、線素を変形させる事で、平行関係に揺らぎを付与した。なお、フラクタル処理は中点変位法を用いた。この際、仮想面の異方性は、全体的には一方向(図8の図面上下方向を主軸とする)で波うった異方性であるで、主軸に直交方向の座標値に対してのみ、フラクタル処理を行った。変形量は結果を見ながら適度な量に調整した。次いで、線素の幅(太さ)を、中央は太くし、先端と終端は細くし、中央部の太さもランダムにした。そして、図9に示す様な万線状凹凸模様の2値画像からなるパターンを作成した。
【0058】
次いで、上記合成したパターンを用いて、レーザー露光によるダイレクトエッチング法によって、円筒状のエンボス版に凹凸を直接形成した。エンボス版上の凹凸は、万線状凹凸模様の線素に対応する部分が、凸部を成す。なお、エンボス版は、エッチング前とエッチング後の両方で、艶調整の為にサンドブラスト処理して、微細凹凸模様を全面に形成した(図11参照)。
【0059】
そして、図10(C)の如き構成の化粧材を作るべく、厚み100μmのポリプロピレン系のオレフィン系熱可塑性エラストマーフィルムを基材11として、そのコロナ処理面に対して、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーの樹脂とするビヒクルに対して着色顔料等を添加した絵柄インキで、模様層12aとその上の全ベタの隠蔽層12bとからなる木目柄の絵柄層12を印刷形成した。次いで、印刷面の反対面に対して、上記エンボス版を用いて熱圧を加えて、万線状凹凸模様3を賦形して、本発明の化粧材Dとして化粧シートを得た。該凹凸模様に於ける線素は、中央部での最大幅は、40〜60μm、線長は最大3mm、凹凸の高低差(深さ)は30〜40μmである。得られた木目模様の化粧材は、万線状凹凸模様によって、従来の万線凹凸模様では表現出来なかった落ち着いた自然な感じの天然木に近い照りが表現されていた。
【0060】
【発明の効果】
本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材によれば、人工的なとらしく、鋭くギラギラした感じでは無く、落ち着いたより自然な感じで実物の木目の照りに近い感じで表現できる。また、その万線状凹凸模様独特の、従来に無い自然な表面反射模様が醸しだす風合い等を活かした意匠表現ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の万線状凹凸模様を説明する概念図。
【図2】本発明の万線状凹凸模様のパターンを形成する線素の、平行関係に付与された揺らぎ(不規則性)を説明する概念図。
【図3】本発明の万線状凹凸模様となる線素の形状を説明する概念図。
【図4】本発明の万線状凹凸模様の断面の大きさを説明する概念図。
【図5】本発明の万線状凹凸模様の異方性の各種例を示す概念図。
【図6】本発明の万線状凹凸模様で、照り等に面分布を持たせた一例を示す概念図。
【図7】本発明の万線状凹凸模様で、板目等の柾目に対する方向ベクトルの一例を示す概念図。
【図8】図7の万線状凹凸模様と組み合わせる、板目の年輪模様一例を示す概念図。
【図9】図7の方向ベクトルに対する万線状凹凸模様にて、その線素のパターンの具体例を示す部分拡大図。
【図10】本発明の万線状凹凸模様を有する化粧材に於いて、層構成の各種形態を例示する断面図。
【図11】万線状凹凸模様より更に小さい微細凹凸模様が複合した形態を概念的に例示する断面図。
【図12】従来の万線凹凸模様の各種例を説明する説明図。
【図13】従来の万線凹凸模様の他の例を説明する説明図。
【符号の説明】
1 凹部(溝状凹部)
2 凸部
3 万線状凹凸模様
4、4a〜4d 線素
5 近傍では平行関係にある仮想面の方向ベクトルを連ねた線
6 年輪模様
7 線素を配置する仮想面の方向ベクトル(を連ねた線)
11 基材
12 絵柄層
12a 模様層
12b 隠蔽層
13 着色樹脂層
14 透明接着剤層
15 透明保護層
16 (万線状凹凸模様よりも大きい)凹凸模様(導管模様等)
17 (万線状凹凸模様よりも小さい)微細凹凸模様(砂目模様等)
a1〜a3 或る面の領域
D 化粧材
L 照明光
Ls 光源
N 法線方向
O 観察者
P 線素を配置する仮想面
Q 仮想面の方向ベトクルを表す線上の点
R 仮想面の方向ベトクルを表す線上の点
Vq→ 点Qに於ける仮想面の方向ベクトル
Vr→ 点Rに於ける仮想面の方向ベクトル
w1 凹部幅
w2 凸部幅
θ 入射角

Claims (2)

  1. 万線状凹凸模様が形成された層を有する化粧材において、
    該万線状凹凸模様は、線長が有限長であり、かつ、その長さが不規則に異なる多数の線素を隣接する線素間に於いては、各線素の走行方向が一定の平均値と分散を有する分布からなる揺らぎによる不規則性を有した平行関係となる様に配置したパターンから成ることを特徴とする万線状凹凸模様を有する化粧材。
  2. 前記万線状凹凸模様を形成する線素が、始点及び終点の両端の線幅を細く先鋭化した先端を有することを特徴とする請求項1に記載の万線状凹凸模様を有する化粧材。
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