JP4386556B2 - フィルム付着体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像が印刷されたフィルムを付着したフィルム付着体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種のフィルム付着体、例えば、炊飯器のパネル部等は、ポリエチレンテレフタレートフィルム等からなるフィルム基材に、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像を、スクリーン印刷等によって印刷し、その後、そのフィルム基材を合成樹脂製の基体に貼り付ける等して製造していた。すなわち、具体的には、以下の工程を経て製造していた。
(1)原稿を基に、色ごとの版下を製作する工程。
(2)この版下より版を製作する工程。
(3)この版で、前記フィルム基材の一方の面に、色ごとの印刷を行う工程(例えば、炊飯器、電子レンジ等の場合、通常10〜15色程度)。
(4)その印刷が施された面側に、両面テープ等の粘着テープを貼るか、あるいは接着材を塗布し、所定形状に打ち抜く工程。
(5)前記基体に、フィルム基材を、その両面テープ等の粘着テープが貼られている面あるいは接着材が塗布されている面が付着されるように貼り付ける工程。
【0003】
なお、このようにフィルム基材を基体に貼り付ける方法ではなく、フィルム基材を金型内に装着して溶融合成樹脂を射出注入する、いわゆる、インサート成形による方法もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記従来のフィルム付着体は、スクリーン印刷等によって印刷するため、前記文字とか絵柄等の像の、色の階調を表すのが困難で画質レベルが劣るといった問題があった。
【0005】
さらに、スクリーン印刷は、色ごとに、場合によっては十数種類の版を起こさなければならないため、大ロットの生産にはよくても、小ロットの生産には効率が良くなく不向きであった。
【0006】
この発明は、上記した従来の問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、優れた画質レベルの像が印刷されたフィルム付着体の製造方法を提供することにある。また、他の目的は、小ロット生産にも対応可能なプリント方式で印刷されたフィルム付着体の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る、フィルム付着体の製造方法は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
【0008】
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
請求項1に記載の発明に係るフィルム付着体の製造方法は、フィルム基材層の一方の面側に、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像が印刷される受像層を設けた、フィルム体を形成し、前記フィルム基材層の他方の面側に、光反射層を介在させて、あるいは、そのような光反射層を介在させずして、接着材を塗布するか、あるいは、両面テープ等の粘着テープを貼る等して、前記フィルム体を基体に貼り付け、その後、前記受像層に、前記像を、インクジェットプリント方式、熱転写プリント方式、あるいは電子写真プリント方式のいずれか一の方式によって印刷することを特徴としている。このインクジェットプリント方式等のプリント方式によれば、文字とか絵柄等の像は、微小なドットによる印刷を可能にするため、優れた画質レベルで印刷され得る。また、フィルム体は、基体に、受像層を表面側として貼り付けられ、その後にインクジェット方式等による印刷が施されることとなる。よって、予め、基体にフィルム体を貼り付けたものをいくつか造っておくことにより、その後、デザインの異なる像を印刷する場合でも、各像ごとに迅速に対応して製造することができるので、小ロットの生産に好適である。
【0017】
請求項2に記載の発明に係るフィルム付着体の製造方法は、フィルム基材層の一方の面側に、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像が印刷される受像層を設けた、フィルム体を形成し、そのフィルム体を、前記受像層側が表面側となるよう、金型内に装着し、その金型内に、溶融合成樹脂を、光反射層を介在させて、あるいは、そのような光反射層を介在させずして、前記フィルム基材層の他方の面側に向けて射出注入して、フィルム付きの樹脂基体を成形し、その後、そのフィルム付きの樹脂基体を取り出して、前記受像層に、前記像を、インクジェットプリント方式、熱転写プリント方式、あるいは電子写真プリント方式のいずれか一の方式によって印刷することを特徴としている。このインクジェットプリント方式等のプリント方式によれば、文字とか絵柄等の像は、微小なドットによる印刷を可能にするため、優れた画質レベルで印刷され得る。また、いわゆる、インサート成形法によると、短時間で大量にフィルム付きの樹脂基体を製造できる。そして、予め、フィルム付きの樹脂基体をいくつか造っておくことにより、その後、デザインの異なる像を印刷する場合でも、各像ごとに迅速に対応して製造することができるので、小ロットの生産に好適である。
【0018】
また、請求項3に記載の発明に係るフィルム付着体の製造方法のように、前記インクジェットプリント方式は、3次元曲面形状を有する物への印刷を可能とするインクジェットプリンタによるのが望ましい。こうすると、フィルム付着体の表面形状が湾曲面等の3次元曲面形状である場合にも、優れた画質レベルの像を印刷することができる。
【0019】
【0020】
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、この発明に係るフィルム付着体の製造方法の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。
【0022】
フィルム付着体は、図1に示すように、例えば、所要の像1がパネルボタン部2aあるいは標章部2b等に印刷された、炊飯器等の家庭用電化製品のパネル部3等として好適に利用されるものである。もっとも、フィルム付着体は、このようなものに限定されることはなく、印刷が必要とされる銘板その他の各種成形品等に広く利用されることができる。そして、この発明の、第一の実施の形態に係るフィルム付着体4は、図2に示すように、基体5と、その基体5の表面側に配される、フィルム基材層6と、そのフィルム基材層6の表面側に設けられる、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像1が印刷される受像層7とを備えるものである。そして、この像1は、インクジェットプリント方式によって、前記受像層7に印刷されている。なお、図中の各層の膜厚の比は、実際の膜厚の比に、正確に対応するものではない。
【0023】
前記基体5は、フィルム付着体4の形状、構造を具現化するものであって、そのフィルム付着体4に応じて種々の態様を示し、特定の形状、構造を有するものではない。よって、基体5の表面形状も、平面形状はもちろんのこと3次元曲面形状であってもよい。そして、その材質は、例えば、合成樹脂、金属、ガラス、木材、紙等であって、特に限定されるものではない。しかし、合成樹脂からなる基体5は、フィルム基材層6との一体化が図られるので好ましい。
【0024】
また、前記フィルム基材層6も、プラスチックフィルムとして、その材料を特に限定するものではなく、フィルムの延伸性、耐溶剤性、耐熱性、強度、腰の強さ、および取り扱い容易性等の種々の要因を総合的に勘案して決定することができる。もっとも、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET樹脂フィルム)、ポリカーボネートフィルム(PC樹脂フィルム)、あるいはポリメタクリル酸メチルフィルム(PMMA樹脂フィルム)等が汎用性もあることから好ましいと言える。
【0025】
このフィルム基材層6の表面側に設けられる、前記受像層7は、インクジェットプリント用のインクが使用されるものとして、そのインクの吸収性、速乾性、および耐水性等を考慮しつつ、公知の技術をそのまま利用して、あるいは公知の技術に変更を加える等して製造することができる。このように、インクジェットプリント方式による印刷の場合には、フィルム基材層6の上に直接印刷するよりも、インクの定着性を向上させるため、フィルム基材層6の上に受像層7を設け、その受像層7に印刷するのが望ましい。もっとも、これらフィルム基材層6とそのフィルム基材層6の上に設けられる受像層7とは、例えば、特開平9−52434号公報記載の方法によって製造することができ、また、その他の入手可能もしくは製造容易なインクジェットプリント用OHP(オーバーヘッドプロジェクター)フィルムも使用することができる。なお、ここでフィルムと呼ぶのは、通例シートと呼ばれるようなものをも含む概念である。
【0026】
前記受像層7に前記像1が印刷された後において、インクが充分保持されていないと、水等がかかった場合にインクが取れて、像1がくずれてしまうことも起こり得る。よって、前記受像層7がフィルム付着体4の最表面に位置しないよう、受像層7の表面側には、前記像1を保護するための保護層8が設けられているのが望ましい。かかる保護層8としては、例えば、熱硬化性樹脂とかUV硬化性樹脂等から形成されるものが望ましいが、これらに限らず、透明性、耐候性、耐溶剤性、および可撓性等の、保護層8として満たすべき要件をクリアするものであればそれを利用することができる。よって、例えば、ポリメタクリル酸メチルフィルム(PMMA樹脂フィルム)、その他の周知のフィルムを積層させたものでもあってもよい。
【0027】
また、フィルム基材層6の裏面側には、基体5との間に、光反射層30が介在するように設けられているとよい。この光反射層30は、例えば、メタリックインキとかパールインキ(光反射率が高い)、あるいは、鏡面仕上げインキ(光反射率が特に高い)、もしくは白色インキ(光反射率が弱い)等をスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷その他の周知の印刷手法によって塗布してなる層、あるいは、銀蒸着とか銀色フィルムもしくは白色フィルムからなる層のことをいい、受けた光の相当量を反射させる性質を有する。よって、図3に示すように、人間が受像層7に印刷された像1を見ると、人間の目31は、主として、受像層7の、像1が印刷された印刷部32において反射する経路をとる光Xと、一旦受像層7およびフィルム基材層6を透過した後、光反射層30で反射して、もう一度印刷部32を通る経路をとる光Yと、両経路の光X、Yを受けて、像1を認知するようになる。ここで、光反射層30を設けない場合には、光Yに相当する反射光は、わずかに付加されるにすぎない。したがって、受像層7に印刷された像1は、光反射層30で反射する光Yの作用が付加されることで、画像レベルをより鮮明にして人間の目31に認知される。なお、画像レベルを鮮明にする作用効果に着目するならば、光反射層30は、受像層7の、像1が印刷された印刷部32の裏面側をカバーするように設けられていればよいので、必ずしも、フィルム基材層6の裏面側に、全面的に設けられていなくてもよい。よって、光反射層30は、フィルム基材層6の裏面側に、部分的に設けられているだけでも構わない。また、フィルム基材層6の裏面側に、その直下に光反射層30を設けてもよいが、光反射層30が前記銀色フィルムもしくは白色フィルムからなる層である場合には、その銀色フィルムもしくは白色フィルムからなる層がフィルム基材層6側に付着するように、銀色フィルムもしくは白色フィルムからなる層とフィルム基材層6との間に透明接着材層(図示せず)を介在させる。
【0028】
また、光反射層30が前記メタリックインキまたはパールインキを塗布してなる層であると、光反射層30としての必要な反射率を確保しつつ、強い膜強度を有するようになるので好ましい。特に、基体5が合成樹脂からなる場合には、後述する溶融合成樹脂の熱からフィルム基材層6とか受像層7を保護することができる。そして、かかる光反射層30は、印刷された像1の画像レベルを優れたものにするばかりでなく、必要以上に光を反射しないので、像1が人間の目に心地よく映る。なお、メタリックインキとしては、例えば、シルバーメタリックとかゴールドメタリックその他のメタリック色のインキを使用できる。
【0029】
また、フィルム基材層6の裏面側(光反射層30を設けない場合)または光反射層30の裏面側には、白色インキを塗布してなる層または白色フィルムからなる層33を設けるとよい。このような白色インキを塗布してなる層または白色フィルムからなる層33は、基体5の表面色を隠ぺいする隠ぺい力を有し、この基体5の表面色が受像層7に印刷された像1の色調に影響を及ぼさないように作用する。もっとも、白色インキを塗布してなる層または白色フィルムからなる層33は、既述したように光反射層30の概念にも含まれ、光反射層30としての機能をも兼ね備えているので、表面側に光反射層30が設けられていない場合にも、それ自体が光反射層30の作用効果を発揮し、また、表面側に光反射層30が設けられている場合には、その光反射層30の作用効果を補強する。
【0030】
ところで、この第一の実施の形態に係るフィルム付着体4のように、その表面に前記保護層8を設けなくても、参考ではあるが、前記フィルム基材層6が保護層8の役目を果たすような構成にしてもよい。すなわち、参考として、第二の実施の形態に係るフィルム付着体9は、図4に示すように、基体5と、その基体5の表面側に配される、フィルム基材層6と、これら基体5とフィルム基材層6との間に設けられる、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像1が印刷される受像層7とを備えるものとする。これにより、フィルム基材層6が受像層7よりも表面側となるので、このフィルム基材層6によって像1が保護されることとなる。
【0031】
そして、受像層7の裏面側には、透明接着材層(図示せず)を介して、あるいは、そのような透明接着材層を介さずして基体5との間に、光反射層30が介在するように設けられているとよい。これにより、図5に示すように、人間が受像層7に印刷された像1を見ると、人間の目31は、主として、受像層7の、像1が印刷された印刷部32において反射する経路をとる光Xと、一旦受像層7を透過した後、光反射層30で反射して、もう一度印刷部32を通る経路をとる光Yと、両経路の光X、Yを受けて、像1を認知するようになる。よって、受像層7に印刷された像1は、光反射層31で反射する光Yの作用で、画像レベルをより鮮明にして人間の目31に認知される。また、光反射層30が、シルバーメタリックインキ等のメタリックインキまたはパールインキを塗布してなる層であると、光反射層30としての必要な反射率を確保しつつ、強い膜強度を有するようになるので好ましい。そして、メタリックインキまたはパールインキを塗布してなる層は、印刷された像1の画像レベルを優れたものにするばかりでなく、必要以上に光を反射しないので、像1が人間の目に心地よく映し出されるというメリットもある。また、光反射層30の裏面側または受像層7の裏面側に、光反射層30の機能をも兼ね備えた、白色インキを塗布してなる層または白色フィルムからなる層33を設けてもよい。なお、第二の実施の形態に係るフィルム付着体9の、その他の留意事項および作用効果は、第一の実施の形態に係るフィルム付着体4と同様であって、既述した通りである。
【0032】
また、第一の実施の形態に係るフィルム付着体4の、光反射層30、または白色インキを塗布してなる層もしくは白色フィルムからなる層33と基体5との間(これら光反射層30および白色インキを塗布してなる層もしくは白色フィルムからなる層33をともに設けない場合には、フィルム基材層6と基体5との間)、および、第二の実施の形態に係るフィルム付着体9の、光反射層30、または白色インキを塗布してなる層もしくは白色フィルムからなる層33と基体5との間(これら光反射層30および白色インキを塗布してなる層もしくは白色フィルムからなる層33をともに設けない場合には、受像層7と基体5との間)には、密着性を高めるため、接着層10を設けるのが望ましい。この接着層10を形成するための接着材としては、特に限定されず、周知の接着材を使用することができるが、後述する、いわゆるインサート成形法によって製造する場合には、成形樹脂との密着性を考慮して適性のあるものを使用するのが望ましい。もっとも、光反射層30および白色インキを塗布してなる層もしくは白色フィルムからなる層33をともに設けない場合で、しかも、基体5とフィルム基材層6とが同種素材であって、インサート成形によって互いに一体性よく密着されるような場合には、接着層10はなくてもよい。
【0033】
次に、このフィルム付着体4、9の製造方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。まず、前記受像層7が前記フィルム基材層6よりも表面側となる、前記第一の実施の形態に係るフィルム付着体4の製造方法について説明する。
【0034】
実施例1、1)フィルム基材層6の一方の面に、前記受像層7を設けてフィルム体11を形成する。もっとも、この実施の形態においては、フィルム体11は、市販品として入手可能な前記インクジェット用OHPフィルム(肉厚約188マイクロメートル)を使用する。
2)そのフィルム体11の、フィルム基材層6を備える面側に、好ましくは、白色インキ(例えば、十条ケミカル社製FMインキ(白))を、全面的にスクリーン印刷(270メッシュ)にて印刷する等して塗布する。これにより、前記像1は、引き立って映えるようになり、また、後述する溶融合成樹脂の熱から保護されるようになる。このとき、スクリーン印刷に替えて、前記フィルム基材層6を備える面側に、例えば、白色フィルムを積層させてもよい。もっとも、前記接着層10によっても、溶融合成樹脂の熱から保護されるので、この白色インキをスクリーン印刷したり、あるいは白色フィルムを積層させたりする工程は、不要と判断されるなら省略してもよい。また、このような白色インキを塗布してなる層もしくは白色フィルムからなる層33を形成するよりも前に、フィルム体11の、フィルム基材層6を備える面側に、例えば、シルバーメタリックインキをスクリーン印刷等の印刷手法によって塗布して光反射層30を設け、この光反射層30の上に前記白色インキを印刷塗布するとよい。
3)さらに、前記白色インキの上に、前記接着材(例えば、十条ケミカル社製FMバインダーインキ(A5))を、全面的にスクリーン印刷(200メッシュ)にて印刷するようにして接着層10を形成する。この場合、接着材は、既述したように、インサート成形に適したインサート成形用接着材であるのが望ましい。
4)このフィルム体11を所要の形状に打ち抜き加工する。もっとも、この打ち抜き工程は、フィルム体11を切断するものであってもよいし、また、最初から所要の形状となっていれば、打ち抜いたり切断したりする必要はない。
5)こうして打ち抜いたフィルム体11を、図6に示すように、キャビティ側の金型20aとコア側の金型20bとからなる金型20内に装着する。このとき、前記受像層7側が表面側となり得るよう、受像層7をキャビティー側の金型20aの内面に密着させるようにして装着する。そして、金型20を閉じ、キャビティ側の金型20a内に、溶融合成樹脂として、溶融したアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)を、前記フィルム基材層6の他方の面側に向けて、すなわち、前記接着層10に接するように、ゲート21から射出注入する。この際の充填条件は、金型20の特性とか溶融合成樹脂および接着材の性質等を考慮して好適な条件になるよう設定する。また、溶融合成樹脂としては、その他、ポリメタクリル酸メチル(PMMA樹脂)とか、ポリカーボネート(PC樹脂)とかが好適に用いられるが、もちろんこれらに限定される訳ではない。
6)射出注入した溶融合成樹脂は、冷却、固化されることにより、フィルム付きの樹脂基体として成形される。このように、インサート成形法によれば、短時間で大量にフィルム付きの樹脂基体を製造することができるので効率がよいと言える。その後、金型20を開いてフィルム付きの樹脂基体を取り出し、その表面に設けられた受像層7に、所要の絵柄等からなる前記像1を、インクジェットプリント方式によって印刷する。印刷方法としては、インクジェットプリント方式の他、熱転写プリント方式とか電子写真プリント方式でもよい。そして、具体的には、これらのプリント方式は、コンピューター制御の下、画像編集ソフトによって作製した前記像1を、各プリント方式(インクジェットプリント方式、熱転写プリント方式、電子写真プリント方式)を実行するための画像出力装置により、前記受像層7に印刷することにより行う。
【0035】
よって、これらのプリント方式によれば、微小なドットによる印刷が可能であるため、優れた画像レベルの像1となる。また、これらのプリント方式は、何種類もの版を起こす必要がなく、また、注文ごとに個別に印刷することが可能であるため、小ロットの生産にも対応することができる。さらには、このように、印刷工程を後工程で行うことで、予め、フィルム付きの樹脂基体をいくつか造っておけば、その後、注文ごとにデザインの異なる像を印刷する場合でも、各像ごとに迅速に対応して製造することができる。そのため、小ロットの生産に一層好適であり、例えば、インターネット等による受注生産システムが確立しつつある今日においては、個々の消費者がデザインした、独自の絵柄等の像を有する家庭用電化製品等のフィルム付着体4を生産供給することも可能となる。よって、画一的とも言えた家庭用電化製品等にバリエーションの幅を持たせることができる。
【0036】
また、前記受像層7の、印刷が施される印刷面の形状は、平面形状に限らず3次元曲面形状であってもよい。この場合、インクジェットプリント方式は、3次元曲面形状を有する物への印刷を可能とするインクジェットプリンタによるのが好ましい。すなわち、このインクジェットプリンターは、ヘッドを、3次元曲面形状の表面に等距離の間隔でスライド移動させて前記像1を描くものであり、これによって、フィルム付着体4の、印刷が施される面形状に対する制限が大幅に緩和される。
7)最後に、印刷が施された前記受像層7の表面側に、公知の材料からなる前記熱硬化性樹脂とかUV硬化性樹脂等をスプレーコートして、それぞれ熱および紫外線照射で処理して硬化させて、保護層8を形成する。もっとも、この保護層8は、既述したように、例えば、ポリメタクリル酸メチルフィルム(PMMA樹脂フィルム)等の周知のフィルムを積層させてもよい。このポリメタクリル酸メチルフィルム(PMMA樹脂フィルム)は、耐候性がよいので、保護層8に要求される透明性を経時的に維持できる点において優れている。なお、この保護層8は、受像層7へのインクの定着性がよく、像1がくずれる虞がないならば必ずしも設けなくてもよい。
【0037】
以上の工程を経て製造されるフィルム付着体4は、その像1が優れた画質レベルで印刷され、また、小ロットの生産にも対応可能なプリント方式で印刷されていることとなる。
【0038】
なお、印刷工程は、既述した理由により、後工程で行うのが望ましいが、製造上の都合その他の理由により、前記フィルム体11を前記金型20内に装着する前に行ってもよい。
【0039】
また、この第一の実施の形態に係るフィルム付着体4は、次の実施例2のように製造することもできる。なお、実施例1と重複する箇所は説明を省略することとする。
【0040】
実施例2、1)実施例1と同様に、フィルム体11として、前記インクジェット用OHPフィルム(肉厚約188マイクロメートル)を用意する。
2)実施例1と同様に、そのフィルム体11の、フィルム基材層6を備える面側に、好ましくは、光反射層30として、シルバーメタリックインキをスクリーン印刷する等して塗布し、さらに、白色インキ(例えば、十条ケミカル社製FMインキ(白))を、全面的にスクリーン印刷(270メッシュ)にて印刷塗布する。
3)実施例1と同様に、フィルム体11を所要の形状に打ち抜き加工する。
4)フィルム基材層6の、前記受像層7が設けられる一方の面とは反対側の他方の面に、前記接着材を塗布するか、あるいは両面テープ等の粘着テープを貼る等して接着層10を形成し、フィルム体11を、予め用意して置いた所要の基体5に貼り付ける。このとき、接着材として、スクリーン印刷用粘着剤、例えば、帝国インキ製造株式会社製のCAT1300S粘着剤等を用い、スクリーン印刷にて印刷してもよい。その後、前記受像層7に、前記像1を、インクジェットプリント方式、熱転写プリント方式、あるいは電子写真プリント方式のいずれか一の方式によって印刷する。そして、さらに必要に応じて、表面に前記保護層8を設ける。
【0041】
この方法によれば、前記インサート成形法の場合と異なり、短時間で大量に製造することはできないが、基体5の材質として、特に限定されず、合成樹脂以外のものでも使用できるという利点がある。もっとも、この実施例2で製造されるフィルム付着体4の、その他の作用効果については、実施例1によって製造されるフィルム付着体4の場合と同様である。
【0042】
次に、前記フィルム基材層6が前記受像層7よりも表面側となる、第二の実施の形態に係るフィルム付着体9の製造方法について、以下、実施例3および実施例4において説明する。なお、実施例1と重複する箇所は説明を省略することとする。
【0043】
実施例3、1)実施例1と同様に、フィルム体11として、前記インクジェット用OHPフィルム(肉厚約188マイクロメートル)を用意する。
2)このフィルム体11の受像層7に、前記像1を、インクジェットプリンタ(ローランド社製CJ−70)でインクジェットプリント方式の印刷をする。プリント方式としては、その他、熱転写プリント方式とか電子写真プリント方式でもよい。
3)そして、この受像層7の上に、好ましくは、光反射層30として、シルバーメタリックインキをスクリーン印刷する等して塗布し、さらに、白色インキ(例えば、十条ケミカル社製FMインキ(白))を、全面的にスクリーン印刷(270メッシュ)で印刷塗布する。
4)この白色インキを印刷した上に、前記接着材(例えば、十条ケミカル社製FMバインダーインキ(A5))を、全面的にスクリーン印刷(200メッシュ)で印刷するようにして接着層10を形成する。
5)実施例1と同様に、所要の形状に打ち抜き加工する。
6)その後、この印刷されたフィルム体11を、キャビティ側の金型20aとコア側の金型20bとからなる金型20内に装着する。このとき、前記フィルム基材層6側が表面側となり得るよう、フィルム基材層6をキャビティー側の金型20aの内面に密着させるようにして装着する。そして、金型22を閉じ、キャビティ側の金型20a内に、溶融合成樹脂として、溶融した前記アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)を、受像層7側に向けて、すなわち、前記接着層10に接するように、ゲートから射出注入充填する。
7)射出注入した溶融合成樹脂を、冷却、固化した後、金型20を開いて、印刷されたフィルム付きの樹脂基体を取り出す。そして、さらに、この印刷されたフィルム付きの樹脂基体の、フィルム基材層6側の面に、必要に応じて、前記フィルム保護層を設けてもよい(図示せず)。このフィルム保護層は、フィルム基材層6を保護するためのものであって、周知のフィルムを積層する等すればよく、例えば、フィルム基材層6が耐候性に劣るフィルムから形成される場合には、フィルム保護層として、前記ポリメタクリル酸メチルフィルム(PMMA樹脂フィルム)を積層させるとよい。
【0044】
上記した1)から7)の工程を経て、フィルム基材層6が受像層7よりも表面側となるフィルム付着体9が製造されるため、前記像1がフィルム基材層6によって保護されることとなる。また、かかるフィルム付着体9が、インサート成形によって効率よく製造されることとなる。そして、第二の実施の形態に係るフィルム付着体9の、その他の製造上の留意事項、およびプリント方式に関する作用等に関しては、第一の実施の形態に係るフィルム付着体4の実施例1のところで既述した通りである。
【0045】
実施例4、1)実施例3の1)から3)までの工程を行う。
2)像1が印刷されたフィルム体11の、受像層7および光反射層30の上側、すなわち、前記白色インキを印刷した上に、前記接着材を塗布するか、あるいは両面テープ等の粘着テープを貼る等して接着層10を形成し、前記印刷されたフィルム体11を、予め用意して置いた所要の基体5に貼り付ける。そして、必要に応じて、フィルム基材層6の上に、前記フィルム保護層を設ける。
【0046】
実施例4は、実施例3におけるインサート成形のように、短時間で大量に製造することはできないが、実施例3と異なり、基体5として合成樹脂製のものに限定されることはない。
【0047】
【発明の効果】
以上、詳述したところから明らかなように、この発明に係るフィルム付着体の製造方法によれば、次の効果がある。
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
請求項1または2に記載されたフィルム付着体の製造方法によれば、優れた画質レベルの像が印刷されたフィルム付着体を製造することができる。また、小ロットの生産に好適である。
【0054】
請求項3に記載されたフィルム付着体の製造方法によれば、加えて、フィルム付着体の表面形状が3次元曲面形状である場合にも、優れた画質レベルの像を印刷することができる。
【0055】
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明として、第一の実施の形態の、フィルム付着体の斜視図である。
【図2】 図1におけるX−X線の縦断面図である。
【図3】 同じく、フィルム基材層の裏面側に光反射層が設けられることで奏する作用効果を説明するための要部拡大断面図である。
【図4】 参考として、第二の実施の形態の、フィルム付着体の縦断面図である。
【図5】 同じく、受像層の裏面側に光反射層が設けられることで奏する作用効果を説明するための要部拡大断面図である。
【図6】 フィルム付着体の、インサート成形による製造方法を示す、概略的な断面図である。
【符号の説明】
1 像 4(3) フィルム付着体
5 基体 6 フィルム基材層
7 受像層 8 保護層
11 フィルム体 20 金型
30 光反射層
Claims (3)
- フィルム基材層の一方の面側に、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像が印刷される受像層を設けた、フィルム体を形成し、前記フィルム基材層の他方の面側に、光反射層を介在させて、あるいは、そのような光反射層を介在させずして、接着材を塗布するか、あるいは、両面テープ等の粘着テープを貼る等して、前記フィルム体を基体に貼り付け、その後、前記受像層に、前記像を、インクジェットプリント方式、熱転写プリント方式、あるいは電子写真プリント方式のいずれか一の方式によって印刷することを特徴とするフィルム付着体の製造方法。
- フィルム基材層の一方の面側に、文字、図形、記号、もしくは絵柄等の像が印刷される受像層を設けた、フィルム体を形成し、そのフィルム体を、前記受像層側が表面側となるよう、金型内に装着し、その金型内に、溶融合成樹脂を、光反射層を介在させて、あるいは、そのような光反射層を介在させずして、前記フィルム基材層の他方の面側に向けて射出注入して、フィルム付きの樹脂基体を成形し、その後、そのフィルム付きの樹脂基体を取り出して、前記受像層に、前記像を、インクジェットプリント方式、熱転写プリント方式、あるいは電子写真プリント方式のいずれか一の方式によって印刷することを特徴とするフィルム付着体の製造方法。
- 前記インクジェットプリント方式は、3次元曲面形状を有する物への印刷を可能とするインクジェットプリンタによることを特徴する請求項1または2に記載のフィルム付着体の製造方法。
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