JP4384592B2 - 高温浸炭特性と熱間鍛造性に優れた浸炭用圧延鋼材 - Google Patents
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C:0.05〜0.30%、
Si:0.01〜2.0%、
Mn:0.01〜2.0%、
S:0.005〜0.2%、
Cr:0.01〜2.0%、
N:0.003〜0.030%、
Al:0.01〜0.12%、
Nb:0.01〜0.20%、
Ti:0.005〜0.12%、
を含み、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる鋼材からなり、圧延材としてのミクロ組織が、フェライト組織+パーライト組織の面積率で90%以上、フェライト粒度番号が11番以下である、高温浸炭特性と熱間鍛造特性に優れた浸炭用圧延鋼材である。
1)Cu:1.0%以下(0%を含まない)および/またはNi:3.0%以下(0% を含まない)、
2)Mo:1.0%以下(0%を含まない)、
3)B:0.0005〜0.0030%、
4)Pb:0.1%以下(0%を含まない)および/またはBi:0.1%以下(0% を含まない)、
5)Mg:0.0001〜0.02%、Ca:0.0001〜0.02%、Te:0. 0005〜0.02%、REM:0.0005〜0.02%よりなる群から選択さ れる少なくとも1種、
6)Zr:0.2%以下(0%を含まない)および/またはV:0.5%以下(0%を 含まない)。
Cは機械部品として必要な芯部硬さを確保する上で重要な元素であり、0.05%未満では硬さ不足により部品としての静的強度が不足気味となる。しかしC量が多過ぎると、硬くなり過ぎて熱間鍛造性や被削性が低下するので、0.30%以下に抑える必要がある。この様な観点からより好ましいC含量は、0.15%以上、更に好ましくは0.17%以上で、0.25%以下、更に好ましくは0.23%以下である。
Siは脱酸剤として作用し、酸化物系介在物量を低減して内部品質を高める作用を有すると共に、焼戻し処理時の硬さ低下を抑えて浸炭部品の表層硬さを確保するのに有効な元素であり、0.01%以上の添加を必要とする。しかし、Si量が多過ぎると、素材が硬くなりすぎて切削性や熱間鍛造性が劣化するので、2.0%を上限と定めた。より好ましいSi含量は、0.02%以上、更に好ましくは0.05%以上で、0.8%以下、更に好ましくは0.6%以下である。
Mnは脱酸剤として作用し、酸化物系介在物量を低減して鋼材の内部品質を高める作用を有すると共に、浸炭焼入れ時の焼入性を著しく高める作用を有しており、こうした作用を有効に発揮させるには0.01%以上含有させる必要がある。しかし多過ぎると、中心偏析が顕著となって内部品質を却って劣化させるばかりでなく、縞状組織が顕著となって内部特性のバラツキも大きくなり衝撃特性が低下するので、上限を2.0%とする。Mnのより好ましい含有量は0.2%以上、更に好ましく0.3%以上で、1.5%以下、更に好ましくは1.0%以下である。
Sは、MnやTiなどと結合してMnS介在物やTiS介在物などを形成し、部品の衝撃強度に悪影響を及ぼすので、なるべく少なく抑えるのが好ましく、衝撃特性が求められる本発明では上限を0.2%と定めた。しかし反面Sは、切削性を高める作用も有しているので、切削性が重視される場合は適量含有させることが望ましく、0.005%程度以上は含有させることが望ましい。通常の機械構造用鋼では0.01%程度以上、0.07%程度以下が好ましい。
Crは、Ti,Nbなどの炭化物中に固溶してそれらの硬さを高める作用を有しているため、耐摩耗性の向上に寄与する。そのため、歯車や軸受等の摺動部品ではよく用いられる合金元素であり、0.01%以上含有させることが望ましい。ちなみに、JIS規格の肌焼鋼(SCr420)ではCr量を0.9〜1.2%と規定している。しかしCr量が2.0%を超えると、鋼材が硬くなり過ぎて被削性や熱間鍛造性が劣化するので、2.0%を上限と定めた。より好ましくは0.4%以上、更に好ましくは0.9%以上で、1.5%以下、更に好ましくは1.2%以下である。
Nは、Al,Ti,Nbと結合して窒化物や炭窒化物を形成し、浸炭加熱時におけるオーステナイト粒成長を抑制する作用を有しており、この作用を有効に発揮させるには0.003%以上含有させねばならず、好ましくは0.005%以上含有させるのがよい。しかしN含量が多過ぎると、熱間鍛造性や衝撃特性に悪影響を及ぼす様になるので、多くとも0.030%以下、より好ましくは0.025%以下、更に好ましくは0.020%以下に抑えるのがよい。
Alは鋼材の結晶粒の調整に有効な元素である。即ちAlは、鋼中のNと結合して窒化物を生成するが、この窒化物は熱処理時における結晶粒の成長を抑制する作用を発揮するのである。しかも、Alを後述するNbやTiと複合添加すると、単独析出物よりも安定なAl窒化物とTi炭窒化物との複合析出物や、Al窒化物とNb炭窒化物との複合析出物、或いはAl窒化物とNb−Ti複合炭窒化物との複合析出物を形成し、高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性を高める。これらの効果を有効に発揮させるには、0.01%以上含有させる必要がある。しかしAl含量が多過ぎると、硬質で粗大な非金属介在物(Al2O3)が生成して衝撃強度を劣化させ、更には熱間鍛造時の変形抵抗を高めるので、0.12%を上限と定めた。Alのより好ましい含有量は0.015%以上、更に好ましくは0.02%以上で、0.10%以下、更に好ましくは0.07%以下である。
Nbは本発明において重要な役割を果たす元素で、鋼中のNおよびCと結合して窒化物や炭化物もしくは炭窒化物を生成し、浸炭時の加熱工程で結晶粒粗大化の抑制に寄与する元素であり、0.01%未満では、高温で安定な窒化物や炭化物、もしくは炭窒化物が生成しないため、結晶粒粗大化防止効果が得られない。しかもNbは、AlやTiと複合添加することで、Nbを含む単独析出物よりも安定なAl窒化物とNb炭窒化物の複合析出物やNb−Ti複合炭窒化物、あるいはAl窒化物とNb−Ti複合炭窒化物の複合析出物を形成し、高温浸炭時の結晶粒粗大化防止特性を高める作用も発揮する。
Tiも本発明において重要な役割を果たす元素である。すなわち、鋼中のNおよびCと結びついて炭化物、窒化物、炭窒化物を形成し、高温浸炭時の結晶粒粗大化を抑制する。また、AlやNbと複合添加することで、Tiを含む単独析出物よりも安定なAl窒化物とTi炭窒化物の複合析出物やNb−Ti複合炭窒化物、あるいは、Al窒化物とNb−Ti複合炭窒化物の複合析出物を形成し、結晶粒粗大化防止特性の向上に寄与する。Ti含量が0.005%未満では、析出するTi炭窒化物や他元素との複合炭窒化物の数が不十分となり、満足のいく結晶粒粗大化防止特性が得られない。しかし反面、Ti含量が多過ぎると熱間鍛造時の変形抵抗が上昇するので、0.12%以下に抑えねばならない。Tiのより好ましい含有量は、0.008%以上で、0.10%以下、より好ましくは0.05%以下である。
Ni,Cuは共に鋼材の耐食性を向上させる元素であり、必要に応じて各々単独で、或いは2種を添加することができる。またNiは、鋼材の耐衝撃性の向上にも寄与するので、適量の添加は有効である。しかしNi,Cuの過度の添加は鋼材コストの上昇を招き、しかもCuの過度の添加は熱間加工性の低下も引き起こすので、Niは3.0%以下、Cuは1.0%以下に抑えるべきである。Niのより好ましい添加量は0.1〜2.0%、更に好ましくは0.3〜1.5%で、Cuのより好ましい添加量は0.1〜0.8%、更に好ましくは0.2〜0.6%である。
Moは、焼戻し処理時の硬さ低下を抑え、浸炭部品の表層硬さを確保するのに有効な元素であり、また、浸炭焼入れ時の焼入性を著しく高めると共に、耐水素脆性を抑えるうえでも有効に作用することが知られている。しかし、過度に添加しても効果が飽和するので鋼材コストの上昇を招き、更には鋼素材が硬質化して被削性が劣化するので、添加するにしても1.0%以下に抑えるべきである。Moのより好ましい添加量は0.1〜0.8%、更に好ましくは0.15〜0.45%である。
Bは微量で鋼材の焼入性を大幅に高める作用を有しており、しかも結晶粒界を強化して衝撃強度を高める作用も有している。こうした作用は0.0005%以上添加することで有効に発揮される。しかし、それらの効果は約0.010%で飽和し、またB量が多過ぎると、B窒化物が生成し易くなって冷間および熱間鍛造性にも悪影響が表れてくる。そのため、添加する場合は0.0005〜0.010%、より好ましくは0.0008〜0.005%、更に好ましくは0.0010〜0.0025%の範囲内で調整するのがよい。
Pb,Biは鋼材の被削性向上に寄与する元素であり、被削性が特に求められる場合はこれらの1種または2種を添加することが有効である。しかし添加量が多過ぎると鋼素材の強度が低下するので、各々0.1%以下、より好ましくはPb+Biで0.1%以下に抑えるべきである。Pb+Biとしてのより好ましい添加量は0.02〜0.08%、更に好ましくは0.03〜0.06%である。
Ca,Mg,Te,REMは、1種または2種以上添加することで鋼中に存在する硫化物の展伸を抑制し、衝撃特性を高める作用を有している。こうした作用は、Mg,Caの場合、0.0001%未満の添加では有効に発揮されず、0.02%を超えると粗大な酸化物の生成によって鋼強度を逆に低下させる。そのためMg,Caは夫々0.0001〜0.02%、より好ましくは0.001〜0.010%の範囲とするのがよい。
Zr,Vは、前記NbやTiと同様に炭化物や窒化物を形成し、Al,Nb,Tiの炭窒化物と複合析出することで、それら炭窒化物の高温安定性を高める作用を発揮する。しかし多過ぎると、ZrやVを含む粗大析出物が生成して結晶粒粗大化防止特性を害するので、Zrは0.2%以下、Vは0.5%以下に抑えるべきである。それらの利害得失を考慮してより好ましい含有量は、Zrは0.001〜0.1%、Vは0.005〜0.2%である。
本発明において圧延材の金属組織は極めて重要な要素であり、該圧延材組織を粗大なフェライト−パーライト(残部はベイナイト)組織とすることで、熱間鍛造のための熱により逆変態する際に粗大なオーステナイトを形成させ、それにより熱間鍛造時の変形抵抗を低減する。フェライト−パーライト(残部はベイナイト)組織の面積率が90%未満では、混在するベイナイトによって逆変態オーステナイトが微細化し、熱間圧延時の変形抵抗が増大する。こうした傾向はベイナイト混在率が10%を超えると顕著に現れるので、本発明ではフェライト+パーライトの面積率を90%以上と定めた。また該圧延材組織中のフェライト粒度番号が11番を超える場合も、逆変態時に形成されるオーステナイト組織が微細化して変形抵抗が上昇するため、フェライト粒度番号は11番以下と定めた。
本発明では、上記金属組織の制御に加えて、熱間鍛造時の変形抵抗にはあまり悪影響を及ぼすことのない析出物を鋼中に微分散させれば、高温浸炭条件を採用した場合に生じる結晶粒の粗大化を抑えつつ、熱間鍛造時の変形抵抗を低減できるので好ましい。ここでいう析出物とは、Al,Nb,Tiの各々の炭化物や窒化物、炭窒化物、あるいはそれらの1種以上が複合した複合析出物のことであり、それらの析出物の存在によって熱間鍛造時の変形抵抗を高めることなく高温浸炭時の結晶粒の粗大化をより一層確実に抑えることができる。
表1,2に示す化学組成の鋼材を小型溶製炉で溶製し、鋳造、均熱ののち熱間鍛造を行なって一辺が155mmの鋼片を得た。この鋼片を使用し、同表に示す温度に加熱してから最終圧延を行い、更に該温度から500℃までの温度域を同表に示す速度で冷却することによって、直径50mmの圧延棒鋼を得た。
各供試棒鋼の横断面D/4の位置から抽出レプリカを作製し、日立製作所製の透過型電子顕微鏡(商品名「H−800」)を用いて150,000倍で10視野(約7.5μm2)を写真撮影し、その写真画像をMicromedia社製のImage Proを用いて画像解析することにより、円相当径が15〜100nmの範囲の析出物の数密度を測定した。
各供試棒鋼について、試験片加工で直径32mm×48mmの試験片を作製し、1000℃で70%の鍛造を加えた後、浸炭処理を模擬するため1075℃で3時間保持した後、焼入れ温度:930℃で油冷し、その後170℃で焼戻し処理を行なった。この試験片の中心からJIS Z2242に規定する衝撃試験片を切り出して衝撃試験を行い、またJIS Z2244に準拠して芯部硬さを調べた。
Claims (7)
- 質量%で、
C:0.05〜0.30%、
Si:0.01〜2.0%、
Mn:0.01〜2.0%、
S:0.005〜0.2%、
Cr:0.01〜2.0%、
N:0.0085〜0.030%、
Al:0.01〜0.12%、
Nb:0.038〜0.20%、
Ti:0.008〜0.12%、
を含み、残部はFeおよび不可避的不純物よりなる鋼材からなり、圧延材としてのミクロ組織が、フェライト組織+パーライト組織の面積率で90%以上、フェライト粒度番号が11番以下であり、
断面内に粒径15〜100nmの析出物が1.0×10 7 個/mm 2 以上存在することを特徴とする高温浸炭特性と熱間鍛造特性に優れた浸炭用圧延鋼材。 - 鋼が、更に他の元素として、Cu:1.0%以下(0%を含まない)および/またはNi:3.0%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1に記載の浸炭用圧延鋼材。
- 鋼が、更に他の元素として、Mo:1.0%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1または2に記載の浸炭用圧延鋼材。
- 鋼が、更に他の元素として、B:0.0005〜0.010%を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の浸炭用圧延鋼材。
- 鋼が、更に他の元素として、Pb:0.1%以下(0%を含まない)および/またはBi:0.1%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜4のいずれかに記載の浸炭用圧延鋼材。
- 鋼が、更に他の元素として、Mg:0.0001〜0.02%、Ca:0.0001〜0.02%、Te:0.0005〜0.02%、REM:0.0005〜0.02%よりなる群から選択される少なくとも1種を含むものである請求項1〜5のいずれかに記載の浸炭用圧延鋼材。
- 鋼が、更に他の元素として、Zr:0.2%以下(0%を含まない)および/またはV:0.5%以下(0%を含まない)を含むものである請求項1〜6のいずれかに記載の浸炭用圧延鋼材。
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