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JP4379971B2 - 電気エネルギー貯蔵素子 - Google Patents

電気エネルギー貯蔵素子 Download PDF

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  • Secondary Cells (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、小型、軽量の電気機器や電気自動車の電源として好適な、非水系リチウム二次電池をはじめとする、電気エネルギー貯蔵素子に関し、更には該素子の負極材及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ビデオカメラ、携帯電話やポータブルパソコン等の携帯機器の普及に伴い、一次電池に代わって繰り返し使用できる二次電池の需要が高まっている。特に負極活物質に炭素質材料を、正極活物質にLiMO2(M=Co、Ni等)を用い、電解液に有機溶媒を使った非水系二次電池(特開昭63−121260号公報)が開発され、注目されている。また負極活物質として、例えば、特公平4−24831号公報には、コークス等のソフトカーボン系の材料が、特開平3−252053号公報には、ハードカーボン系の材料が提案されている。また、負極材料として、Al、Si、Sn等、リチウムと化合する金属系材料を使用することも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の金属系材料を非水系二次電池の負極として用いると、充放電サイクルに伴い、容量が著しく低下するという問題があった。これを改善する技術として、特開平9−249407号公報には、LiやSiと黒鉛とを2G以上の粉砕加速度で粉砕混合し、負極とすることで、長期の充放電サイクル後の容量低下を防ぐ方法が提案されている。しかしながら我々の知る限りでは、この提案された方法によって製造された負極を用いると、放電容量は確保されるものの、初期充放電の際にリチウムの吸蔵放出に関与できなくなる、いわゆる不可逆容量が増加し、充放電効率が低下する傾向が見られ、実際の電気エネルギー貯蔵素子として不利になるという問題が残る。
【0004】
更に、従来の炭素質材料を負極活物質として用いた非水系二次電池には、1回の充電で使える時間の伸長などの要望から、エネルギー密度がより一層向上したものが望まれている。このためには、従来の炭素質材料を越える高い容量の負極材を備えた電気エネルギー貯蔵素子の開発が必要である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、特定の金属元素と炭素よりなる負極を備えた電気エネルギー貯蔵素子により、上記問題が解決できることを見出し、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明は、正極と負極とイオン伝導体を含む電気エネルギー貯蔵素子であって、該負極が、炭素と、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn及びPbより選ばれる少なくとも1種の金属元素からなり、アルカリ金属元素を吸蔵したときのアルカリ金属元素の全吸蔵量が900mAh/ml以上で、かつ可逆的な吸蔵量が全吸蔵量の70%以上である、繰り返し使用可能な電気エネルギー貯蔵素子に関し、また、それに用いられる負極材の製造方法に関する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
繰り返し使える電気エネルギー貯蔵素子として、リチウム二次電池が挙げられる。負極材に、炭素元素、例えば黒鉛のみを用いる電池では、負極材の容量が372mAh/gと限られるために、そのエネルギー密度の向上には限界がある。黒鉛より多くの量のエネルギーを蓄えられる材料として、アルカリ金属元素、特にリチウムと合金を作る金属類が挙げられる。具体的には、Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pbであり、Ag、Zn、Al、Si、Ge、Sn、Pbが好ましく、更に好ましくはZn、Al、Si、Ge、Snである。これらのうちでも、コスト及び電池電圧の観点からSiが最も望ましい。しかしながら、金属元素単体ではリチウムの吸蔵と脱離に伴う大きな体積変化のため、実用的な電池を作ることができなかった。即ち、金属は、黒鉛より多くの量のアルカリ金属元素、例えばリチウムを吸蔵できるが、同時に金属内部に捕獲されて使えないリチウム等もまた多い。以下、本発明では、可逆的吸蔵量の全吸蔵量に対する割合が70%以上と効率が高い。
【0008】
本発明は、機械的なエネルギーにより、黒鉛等の炭素材と高い容量の源である特定の金属元素、例えばSi粉末を複合化することで、上記問題が解決されることを見出した。これは、機械的エネルギーにより、炭素と金属の性質を大きく変えることなく、局所的に生じるいわゆるメカノケミカルな反応で、お互いをより強く結びつけることによって達成された。メカノケミカル処理は、機械的エネルギーの助けを借りて、極めて低い温度で、反応が局所的に進行する。そのため、炭素とSiの組み合わせのように、加熱により両者の化合物(例えば炭化ケイ素)を生じる場合に、元の材料の性質を失うことなく、強固な複合材を得る方法として優れている。両者の強固な結合は、リチウム等の吸蔵と脱離に伴う金属の大きな体積変化により、材料又は該材料の集合体である電極の劣化や破壊を防止あるいは減速させる。このようにして、高い可逆的吸蔵量を維持しながら、負極材中に捕獲され、容量に寄与しなくなるリチウム等を減らして、全吸蔵量が900mAh/ml以上で、かつ効率が70%以上となる材料を、炭素元素と特定の金属元素よりなる材料によって可能にした。
【0009】
負極におけるアルカリ金属元素の全吸蔵量は、体積当たりの容量で900mAh/ml以上であり、好ましくは1,100mAh/ml以上、更に好ましくは1,200mAh/ml以上である。また、重量当たりの容量では、通常500mAh/g以上、好ましくは600mAh/g以上、更に好ましくは1,100mAh/g以上である。また、アルカリ元素の全吸蔵量に対する電気化学的に可逆的な吸蔵量の百分率である効率は、最低でも70%以上が必要であり、好ましくは75%以上、更には80%以上、特に好ましくは85%以上がよい。金属の濃度は、低すぎると全吸蔵量が小さくなり、また高すぎると効率が低下して、好ましくない。即ち、金属元素の割合は、30〜90重量%がよく、更に好ましくは30〜70重量%がよく、より好ましくは40〜60重量%がよい。負極材の高容量は、リチウムと合金を作る前記金属元素によるところが大きい。したがって、負極中の金属元素の内、少なくとも80%以上がリチウムと合金化可能な構造を有することがよく、更には85%以上、より好ましくは90%以上がリチウムと合金化可能であることが望ましい。この合金化可能な構造以外の金属元素の状態としては、金属炭化物や黒鉛構造の層間にインターカレートされた金属元素などがある。
【0010】
また、該金属元素に、炭素以外で、かつ該金属元素とは異なる第三の元素を共存させることができる。これは主にリチウム等の吸蔵・脱離を繰り返すと、金属元素が凝集することがあり、これを防ぐ目的で使われる。具体的には、遷移金属元素、例えば、Cu、Ti、Cr、V、Fe、Ni、Zr、Nb、Mo、Wなど、及びGe、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Zn、Mg、Ca、Sr、Baが挙げられ、好ましくはリチウムと合金を作らない元素や、Sb等がよい。また、電池の電圧を制御する目的で、上記第三の元素を用いる場合には、リチウムと高い組成の合金を作る元素が好ましく、Ge、Sn、Pb、Al、Ga、In、Ti、Zn及びAgが更に好ましい。第三の元素の配合量は、前記の金属元素に対する元素比で、最大20%までである。
【0011】
本発明における炭素は、金属の体積変化を補う作用と同時に、リチウム等を吸蔵し、容量に寄与する役割も担う。即ち、全吸蔵量が大きく、かつ効率が高い材料がよい。これらの観点から、炭素元素の80%以上が黒鉛構造を有し、この割合は好ましくは85%以上、更に好ましくは90%以上がよい。更に、黒鉛構造としては、結晶面(002)の面間隔d002が0.348nm以下、好ましくは0.340nm以下、更に好ましくは0.338nm以下がよい。また、該積層の厚さLcは1.5nm以上で、好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上がよい。また、含まれる水素の量は、炭素との元素比H/Cが0.1以下、好ましくは0.07以下、更に好ましくは0.03以下がよい。黒鉛構造以外の炭素の構造として、本発明の特定の金属元素との化合物、前記第三の元素との化合物等、具体的には例えば金属炭化物等がある。
【0012】
金属粒子の表面が、炭素質物層で被覆された構造の負極材について説明する。核となる金属粒子は、前記の元素Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn及びPbより選ばれるが、前述と同じ理由により、遷移金属元素、例えば、Cu、Ti、Cr、V、Fe、Ni、Zr、Nb、Mo、Wなど、並びに前記金属元素とは異なるGe、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Zn、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれる元素を、1種以上共存させることができる。該金属粒子の大きさは、通常0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、更に好ましくは1〜20μmがよい。被覆する炭素質物層の厚さは、通常1nm〜100μmから選ばれ、好ましくは1nm〜20μm、更に好ましくは1nm〜10μmがよい。該被覆炭素質物中の炭素の構造は、特に限定されるものではないが、結晶面(002)の面間隔d002が0.380nm以下、該積層の厚さLcが0.5nm以上の黒鉛構造を、少なくとも80重量%以上、好ましくは90重量%以上含むことが望ましい。
【0013】
また、前述の炭素質物で被覆された金属粒子と、炭素粒子との混合物を使用するのもまた好ましい。この場合、これらの混合割合は、炭素元素の割合は30〜90重量%である。前記炭素粒子は、結晶面(002)の面間隔d002が0.348nm以下、好ましくは0.340nm以下、更に好ましくは0.338nm以下、該積層の厚さLcは1.5nm以上、好ましくは50nm以上、更に好ましくは100nm以上であって、含まれる水素の原子比H/Cで0.1以下、好ましくは0.07以下、更に好ましくは0.03以下の黒鉛構造を有する炭素粒子を核として、その表面に80重量%以上、好ましくは90重量%以上の炭素からなり、残りが前記金属元素Ag、Zn、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn及びPbより選ばれる1種以上の元素からなる、炭素質物層で被覆された粒子であることが好ましい。なお、上述の金属粒子表面及び/又は黒鉛構造を有する炭素粒子を被覆する炭素質物は、結晶面(002)の面間隔d002が0.380nm以下、該積層の厚さLcが0.5nm以上の構造を有することが望ましい。
【0014】
本発明の電気エネルギー貯蔵素子に用いられる負極材は、その表面がピッチやフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂などの有機物を加熱分解して得られる炭素質物で被覆されたものでもよい。また、負極材は、粉体として実用に供されることが多いが、その際の粒径は5〜40μm、好ましくは10〜30μm、更に好ましくは10〜25μmがよい。
【0015】
本発明の負極材をピッチや熱硬化性樹脂などの炭素質物前駆体と混合し、その後不活性雰囲気中で焼成する方法などにより、本発明の負極材を非晶質炭素中に分散させた形態、あるいは本発明の負極材を、例えば、結晶面(002)の面間隔d002が0.345nm以下の黒鉛の表面に、一体化あるいは付着させた形態で使用することもできる。
【0016】
本発明の負極材を得るための方法は、特に限定されるものではないが、機械的エネルギーによるメカノケミカル処理を、好ましいものとして挙げることができる。具体的な方法として、原料粉体を運動する気体にのせて、粉体同士をぶつける、あるいは粉体を強固な壁にぶつける方法、例えばジェットミル、ハイブリダイゼーション等がある。また、狭い空間を大きな力で通す等の方法により、粉体にせん断力を与えて、その際のエネルギーを利用する方法を採ることができる。例えばホソカワミクロン(株)製メカノヒュージョン等が挙げられる。せん断力を与える場合、与えるせん断速度は10sec-1以上、好ましくは100sec-1以上、更に好ましくは1,000sec-1以上がよい。上限は通常50,000sec-1以下である。
【0017】
また、ポット中に原料粉体と反応に関与しない運動体とを入れて、これに振動、回転、あるいはこれらが複数組合わされた動きを与える方法、例えばボールミル、振動ボールミル、遊星ボールミル、転動ボールミル等を用いることもできる。なお、これらの処理を用いる場合には、炭素粒子を過度に粉砕してしまわないように、原料粉体の投入の順序や混合方法に工夫が必要となる。例えば、まず金属粒子のみを大きな機械的エネルギーを与えて粉砕し、金属粒子の微細化を行った後、炭素粒子を加えて、より弱い機械的エネルギーで短時間に均一に混合を行うこと等が挙げられる。
【0018】
処理に供する原料粉体として、前記の炭素粒子と前記の金属粒子を用いることができる。第三成分を添加する場合、その元素単体を用いるのが好ましいが、該元素を含む化合物を共存させることもできる。原料粉体として用いられる炭素粉末及び金属粉末の粒径は、通常1〜100μmであり、好ましくは1〜40μm、更に好ましくは5〜30μmがよい。該炭素粉末の結晶面(002)の面間隔d002は、0.345nm以下、好ましくは0.340nm以下、更に好ましくは0.338nm以下がよい。また、該積層の厚さLcは、2.0nm以上、好ましくは100nm以上がよい。含まれる水素の量は、炭素との元素比H/Cが0.1以下、好ましくは0.07以下、更に好ましくは0.03以下がよい。
【0019】
処理に際して、雰囲気の温度を高くすると、炭素と金属元素の反応が促進され、炭化物等の生成が多くなり、よくない。処理時の雰囲気温度は、500℃以下、好ましくは400℃以下、更に好ましくは300℃以下がよい。また、処理は大気中で行うこともできるが、不活性ガス中、例えば窒素中が好ましく、アルゴン等の不活性雰囲気が更に好ましい。
【0020】
以下に本発明の電気エネルギー貯蔵素子の構成の一例を述べるが、本発明は、その要旨を越えない限り以下によって限定されるものではない。正極材としては、従来から知られているいずれも使用でき、特に限定されるものではない。具体的には、LiFeO2、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24及びこれらの非定比化合物、MnO2、TiS2、FeS2、Nb34、Mo34、CoS2、V25、P25、CrO3、V33、TeO2、GeO2等を用いることができる。
【0021】
イオン伝導体は、リチウム等のアルカリ金属イオンを含み、かつ非水系溶液、該非水系溶液を含むゲル、あるいは固体イオン伝導体から選ばれる1種以上からなる。一例として有機電化液を挙げることができる。該電解液は、有機溶剤に電解質を溶解したもので、従来から知られているいずれも使用できる。有機溶剤としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチルラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、置換テトラヒドロフラン、ジオキソラン、ピラン及びその誘導体、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン等のエーテル類、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の3置換−2−オキサゾリジノン類、スルホラン、メチルスルホラン、アセトニトリル、プロピオニトル等が挙げられ、これらを単独で、もしくは2種類以上を混合して使用できる。また、電解質としては、過塩素酸リチウム、ホウフッ化リチウム、リンフッ化リチウム、塩化アルミン酸リチウム、ハロゲン化リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム等が使用できる。また、イオン伝導体として、上記電解液をポリフッ化ビニリデン等の高分子中に含ませたゲルを用いることができる。更には、ポリエチレンオキシド等のイオン伝導性の有機高分子や、硫化リチウム等を主成分とする無機物など、自立性の高い固体イオン伝導体を用いることもできる。
【0022】
電池の構成としては、帯状の正極と負極を、セパレータを介して渦巻き状にした構造や、正極と負極を、セパレータを介して積層した構造等が採用される。自立性の高い固体イオン伝導体を用いる場合には、セパレータを省略することができる。
【0023】
本発明の電気エネルギー貯蔵素子の主な動作原理は、リチウム等のアルカリ金属イオンが、正負極間を充放電に伴って往復することにある。ただし、電気二重層形成によるエネルギー貯蔵等の他の原理が重複して使われてもよい。
【0024】
次に電気エネルギー貯蔵素子の作成方法及び測定方法を示す。最初に、図1の正極3を次のようにして作成した。LiCoO2 90重量部と、導電剤としてのアセチレンブラック5重量部と、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン5重量部とを混合し、これにN−メチルピロリドンを分散剤として加えて、ペーストを作成した。そして、このペーストをアルミ箔上に塗布し、乾燥後、直径15mmに打ち抜いて正極体とした。
【0025】
次いで負極1を、以下のようにして作成した。上記負極材を用いて、負極材95重量部と結着剤としてのポリフッ化ビニリデン5重量部とを混合し、これにN−メチルピロリドンを分散剤として加えて、ペーストを作成した。そして、このペーストを銅箔上に塗布し、乾燥後、直径12.5mmに打ち抜いて負極体とした。電化液としては、エチレンカーボネートとEMC(エチルメチルカーボネート)との混合液に、LiClO4を1.25mol/L溶解して用いた。
【0026】
上記負極と上記正極とセパレータ5、電解液、負極カップ2、正極缶4、ガスケット6を用いて、正極、セパレータ、負極の順で積層し、電解液を注入し、かしめて、CR2016型と同一形状の直径20×1.3mm厚さのリチウムイオンコイン型二次電池を作成した。この二次電池を用いて、室温において、セル電圧が4.2Vに達するまで、充電を0.2mAで行い、同様にセル電圧が2.5Vに達するまで、放電を0.4mAで行い、充放電容量を測定した。なお充放電ともに、所定の電位に達した時点で測定を終了した。
【0027】
次に負極材の容量評価方法について述べる。正極の代わりに金属リチウム箔を用いた以外は、上記二次電池と同様なセルを作成し、室温において、セル電圧が0Vに達するまで、充電を0.2mAにて行い、同様にセル電圧が1.5Vまで、放電を0.4mAにて行った。なお、充放電ともに、所定の電位に達した時点で測定を終了した。
【0028】
以下に本発明の材料に関する測定方法を詳細に説明する。水素と炭素の原子比H/Cは、パーキンエルマー社製「CHN計240C」で求めた炭素及び水素の重量割合から、それぞれの原子量を用いて計算した。
【0029】
粒径は、オレイン酸ナトリウム0.1重量%水溶液中で、レーザ回折・散乱法により、堀場製作所社製のLA-500を用いて測定した。粒径は、体積基準で積算が50%となる粒径として求めた。
【0030】
(002)面の面間隔d002と該積層の厚さLcは、X線回折により、学術振興会117委員会提案の方法に準拠して求めた。フィリップス社製の回折計PW1710 BASEDを用いて、反射法により測定した。X線源はCu Kα線(Niフィルター使用)を用いて、モノクロメータとして黒鉛を使用した。X線出力は40kv、30mAとして、回折X線の計測は、0.02度/stepのステップスキャン方式で、積算時間を1秒とした。使用した装置及びその測定条件を以下に示す。
Figure 0004379971
【0031】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。
【0032】
実施例1
メカノケミカル処理には、ホソカワミクロン(株)社製のメカノヒュージョンAM-20FSを用いた。遠心力で内壁に粉体を固定する回転ケーシング(内径200mm、高さ70mm)と、ケーシング内面に固定された粉体に、機械的エネルギーを付与するインナーピースとからなり、ケーシングの回転数を2,000rpm、ケーシングとインナーピースとの間隙を5mmとした。したがって、粉体に与えられるせん断場の平均的な強さは、4,187sec-1であった。
【0033】
炭素粉末として、Timcal社製の人造黒鉛KS44(平均粒径19.5μm)を36.1g、金属シリコン粉末として、山石金属社製のM-Si No.360(平均粒径23μm)を54g用いた(重量比 Si:C=6:4)。処理に先立って、それぞれの粉末を予備混合した後、窒素雰囲気中で15分間処理を行った。酸素濃度は0.1%以下であり、温度は最高53℃であった。KS44のd002は0.336nm、Lcは2,641nm、H/Cは検出限界の0.01以下であった。M-Si No.360の純度は98.5%程度であった。電池性能、負極材容量等を表1に示す。得られた負極をX線回折により調べたところ、面間隔d002=0.366nm、該積層の厚さLc=228nmであった。
【0034】
実施例2
メカノケミカル処理時間を35分とした以外は、実施例1と同様にした。最高温度は70℃であった。電池性能、負極材容量等を表1に示す。得られた負極をX線回折により調べたところ、d002=0.366nm、Lc=228nmであった。該負極材を樹脂に包埋し、ミクロトームで断面を作り、これをSEMで観察したところ、シリコン粒子表面に約1μmの炭素質物層がみられた。
【0035】
実施例3
炭素粉末として下記の炭素粉末を用いた以外は、実施例1と同様にした。即ちピッチを1,100℃で不活性雰囲気中で焼成して得た、d002=0.342nm、Lc=25nm、H/C=0.04の、平均粒径12μmの炭素粉末を用いた。最高温度は、55℃であった。
【0036】
比較例1
負極材として、炭素粉末であるKS44のみをそのまま用いた。
【0037】
比較例2
負極材として、金属シリコン粉末であるM-Si No.360をそのまま用いた。
【0038】
比較例3
金属シリコン粉末M-Si No.360と炭素粉末KS44とを、実施例1と同じ6:4の割合で、容量200mlのプラスチック製ビンに入れ、約3分間、手で振って混合して負極材とした。
【0039】
実施例1〜3及び比較例1〜3で得られた負極材を用いて、前述の方法によってセルを作成し、電池性能及び負極材容量を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004379971
【0041】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、黒鉛粉末及びリチウムと合金化可能な金属粉末を、単独あるいは単に混合して用いるより、メカノケミカル処理した負極材は、高い電池容量の電気エネルギー貯蔵素子を得ることができる。即ち、本発明により、エネルギー密度が非常に高い上記電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電気エネルギー貯蔵素子の構成を示す概念断面図である。

Claims (13)

  1. 正極と負極とイオン伝導体を含む電気エネルギー貯蔵素子であって、該負極が、炭素とSiをメカノケミカル処理してなり、Siの割合が30〜70重量%であり、リチウムを吸蔵したときのリチウムの全吸蔵量が1100mAh/ml以上で、かつ可逆的な吸蔵量が全吸蔵量の80%以上である、繰り返し使用可能な電気エネルギー貯蔵素子。
  2. イオン伝導体がリチウムイオンを含み、かつ非水系溶液、該非水系溶液を含むゲル、及び固体イオン伝導体から選ばれる、請求項1記載の電気エネルギー貯蔵素子。
  3. Siの80%以上がリチウムと合金化可能な構造を有する、請求項1又は2記載の電気エネルギー貯蔵素子。
  4. 負極が、Siに対して、元素比で最大20%までの、遷移金属元素、Ge、Sn、Pb、P、Sb、Bi、Al、Ga、In、Zn、Mg、Ca、Sr及びBaから選ばれ1種以上の元素を添加した、請求項1〜3のいずれか1項記載の電気エネルギー貯蔵素子。
  5. 負極炭素の80%以上が、結晶面(002)の面間隔d002が0.348nm以下、該積層の厚さLcが1.5nm以上であって、含まれる水素が原子比H/Cで0.1以下の、黒鉛構造を有する、請求項1〜のいずれか1項記載の電気エネルギー貯蔵素子。
  6. 負極が、Si粒子からなり、その表面が炭素質物層で被覆され、該炭素質物層が、80重量%以上の炭素と、残りがSiからなる、請求項1〜のいずれか1項記載の電気エネルギー貯蔵素子。
  7. 負極が、
    Si粒子を核として、その表面が炭素質物層で被覆され、該炭素質物層が、80重量%以上の炭素と、残りがSiからなる粒子、及び
    結晶面(002)の面間隔d002が0.348nm以下、該積層の厚さLcが1.5nm以上であって、含まれる水素が原子比H/Cで0.1以下の、黒鉛構造を有する炭素粒子を核として、その表面が炭素質物層で被覆され、該炭素質物層が、80重量%以上の炭素と、残りがSiからなる粒子
    の混合物からなる、請求項1〜6のいずれか1項記載の電気エネルギー貯蔵素子。
  8. 炭素粉末とSi粉末の混合物を機械的エネルギーによりメカノケミカル処理する、請求項1〜のいずれか1項記載の電気エネルギー貯蔵素子の負極材の製造方法。
  9. 炭素粉末が、結晶面(002)の面間隔d002が0.345nm以下の黒鉛構造を有する、請求項記載の負極材の製造方法。
  10. 平均粒径1〜100μmの炭素粉末及びSi粉末を用いる、請求項8又は9記載の負極材の製造方法。
  11. 該メカノケミカル処理を不活性雰囲気中で行う、請求項記載の負極材の製造方法。
  12. メカノケミカル処理時のせん断速度が、10sec-1以上である、請求項記載の負極材の製造方法。
  13. メカノケミカル処理時の雰囲気温度が、500℃以下である、請求項記載の負極材の製造方法。
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