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JP4378439B2 - 骨吸収抑制剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、白血球活性化タンパク質因子又は白血球活性化タンパク質因子由来の物質を有効成分とすることを特徴とする骨吸収抑制剤に関する。さらに、白血球活性化タンパク質因子又は白血球活性化タンパク質因子由来の物質を利用した骨吸収抑制剤のスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
白血球活性化タンパク質因子[以下LECT2(Leukocyte−derived chemotaxin 2)と称することもある。]は鈴木和男らにより見出された好中球走化性因子である(特開平8−140683公報)。ヒトおよびウシLECT2についてはクローニングが行われ、その塩基配列が決定されている(S.Yamagoe et al, Immunol. Lett. 52, 9−13, 1996、 S.Yamagoe et al, Biochem. Biophys. Acta, 1396, 105−113, 1998)。ヒトLECT2のmRNAはシグナルペプチドと考えられる18個のアミノ酸配列を含む151アミノ酸をコードすることが明らかとなっている。ウシおよびヒトLECT2のアミノ酸配列は、ニワトリ由来のmim−1遺伝子産物と高いホモロジーをもっており、このmim−1遺伝子産物の機能は不明であるが、骨髄の前骨髄球の顆粒に含まれ、癌遺伝子のmybが発現調節に関わっていることが知られている。
【0003】
走化性因子として発見されたLECT2の作用については、好中球を活性化することによって、がん細胞破壊反応の亢進や、インターロイキン類の分泌の促進等が誘導され、自然免疫能が高められるので、腫瘍免疫としての治療、診断、予後の判定に利用できることが示唆されている。LECT2は好中球の活性化に関連する作用が知られているのみであり、骨に対する作用については全く知られていなかった(蛋白質 核酸 酵素 42, (7), 1086, 1997)。
【0004】
一方、鈴木不二男らは、ウシ胎児軟骨より精製された分子量約16KDaのタンパク質であるコンドロモジュリン2を精製した(Y.Hiraki et al, J. Biol. Chem. 271, 22657−22662, 1996)。コンドロモジュリン2は軟骨細胞を増殖、分化を促進することが示されており(特開平5−255398公報)、また、破骨細胞の形成促進、破骨細胞活性化作用も有することが明らかになっている(特開平8−27020公報)。最近になり、ホモロジー検索の結果、LECT2とコンドロモジュリン2は同一であることが明らかとなった。
【0005】
破骨細胞は骨組織で吸収を目的として存在し、骨のリモデリングに重要な働きをしている多核巨細胞である。破骨細胞の前駆細胞は、造血幹細胞に由来する細胞で、血流を介して骨表面に運ばれ、破骨細胞へと分化する。一方、骨芽細胞は、未分化間葉系細胞や線維芽細胞、間質細胞などの基質形成細胞系に属する前駆細胞から分化し、破骨細胞とはまったく細胞系列の異なる前駆細胞から由来している。骨は、常に骨の形成と骨の吸収を繰り返し、骨リモデリングを行っている。組織学的には骨リモデリングは、破骨細胞による骨吸収が行われ、その後、吸収された部位に骨芽細胞によって骨が作られ、バランスが保たれている。加齢に伴い種々の原因でそのバランスに異常が生じると、骨量が滅少し、この状態が長期間続くと骨組織が脆くなり、骨粗鬆症、骨折、腰痛等の各種骨疾患を生じることになる。
【0006】
骨吸収抑制作用を有する薬剤としては、エストロジェン、カルシトニン、ビスフォスフォネート等が知られているが、いずれも副作用が報告されており、効果的に破骨細胞による骨吸収を抑制することができ、しかも安全性の高い薬剤が望まれていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする問題点は、新規な骨吸収抑制剤を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明はLECT2又はLECT2由来の物質が骨吸収抑制作用を有することを見出したことを最も主要な特徴とする。そして、この情報を利用して新規な骨吸収抑制剤を提供することを実現した。
【0009】
本発明者らはLECT2の新規な作用を見出すため、鋭意検討を行った結果、骨に対する作用として、骨吸収を抑制する作用、特に破骨細胞に対する骨吸収抑制作用を見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明はLECT2又はLECT2由来の物質を有効成分とする骨吸収抑制剤に関する。さらに詳しくは、配列表の配列番号1のアミノ酸番号1〜151番又は19番〜151番で表されるアミノ酸配列を有するLECT2又はLECT2由来の物質を有効成分とする骨吸収抑制剤に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のLECT2は、白血病細胞のような細胞の培養上清からタンパク質をCM−セファロースで濃縮し、DEAE−セファロース、CM−セファロース、HPLCによるハイドロキシアパタイト、逆相クロマトグラフィーにかけることによって精製することができる。例えば、培養したSKW−3などの白血病細胞をPHA−Pにより刺激して培養上清中に本発明の白血球活性化因子を放出させ、この上清から、カラムクロマトグラフィーなどの手法を用いて、精製することができる。
【0011】
また、本発明のLECT2又はLECT2由来の物質は、遺伝子工学的手法(特開平8−140683,特開平10−146189)を用いて作製してもよい。例えば、pMALTM−C又はpGEX−3Xをベクターとして作製した形質転換体で産生しても良い。宿主細胞としては従来公知の細菌(大腸菌など)、酵母および動物細胞を用いることができる。動物細胞としては例えば、チャイニーズハムスターCHO細胞、サルCVI細胞、サルCOS細胞、マウス線維芽細胞、マウスC127細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞およびヒトHeLa細胞などがあげられる。酵母としては、パン酵母、ピキア酵母等生産系の確立したものが利用に便利である。なお、工業生産の目的からは酵母分泌系を利用することがもっとも簡便である。
【0012】
本細胞の培養、培養上清からの本発明のタンパク質の精製、組換えプラスミドの作製、形質転換の方法、さらに形質転換からの精製は公知の方法によって実施することができる。
【0013】
本発明で用いるLECT2由来の物質は、骨吸収を抑制するものであれば、特に限定されない。公知のLECT2アミノ酸配列中に1若しくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、付加若しくは誘導といった任意の変異を有し、骨吸収を抑制するものも含まれる(Ulmer, K. M., Science, 219,666, 1983)。さらに、LECT2由来の物質には、キメラタンパク質、融合タンパク質、部分欠失、部分配列および化学的に修飾されたものも含まれる。さらに、LECT2の各種たんぱく質情報(一次、二次、三次構造及び立体表面構造)をもとにして創薬されるペプチドあるいは低分子化合物も候補化合物になりうる(特開平5−255398、特開平8−140683、WO/16177)(Li et al, Bioorganic & Medical chemistry, , 1421−1427, 1996)(S.Yamagoe et al, B.B.R.C., 237, 116−120, 1997:Monoclonal Antibody to a Recombinant LECT2)。なお、その由来となるLECT2は骨吸収抑制活性を有する限り、その動物種を問わないが、抗原性を考慮すればヒト由来のものを使用するのが好ましい。
【0014】
本発明において、LECT2又はLECT2由来の物質の骨吸収抑制活性は、例えば次のようにして測定される。ウサギより単離した破骨細胞を象牙片上に播種し、翌日に形成されたピットの数を計測する骨吸収活性を見るアッセイ系に、LECT2若しくはLECT2由来の物質又はこれら物質の情報をもとにして創製された修飾化合物を添加し、形成されるピット数の減少により、候補化合物の骨吸収の抑制活性を測定することができる(Takeda et al, Bone and Mineral 17, 347−359, 1992)(亀田ら,日薬理誌 109, 75−84,1997)。
【0015】
この測定による抑制率を指標にして、骨吸収抑制剤の候補化合物をスクリーニングし、例えば、抑制率80%を10μg/mlの濃度で発揮する化合物が選択される。
【0016】
本発明の骨吸収抑制剤を使用することのできる骨疾患の例としては、骨粗鬆症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症、ぺージェット病等が上げられる。
【0017】
本発明の骨吸収抑制剤を治療薬剤として投与する場合には、通常成人1日当たり0.005〜10mg/kg、好ましくは、0.01〜3mg/kgを1日1〜3回に分けて投与すればよく、これらの投与量は、用いる化合物、年齢、症状等により適宜増減することが可能である。
【0018】
本発明の骨吸収抑制剤はその投与ルートについては所望により経口的、非経口的、あるいは局所的に投与することができる。経口投与剤としてはタンパク質又はペプチドの場合における消化分解、腸内吸収の問題を考慮して、散剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤などの固形製剤あるいはシロップ剤、エリキシル剤などの液状製剤とすることができる。また、非経口投与剤として注射剤、点滴用剤、又は粘膜若しくは皮膚吸収の問題を考慮して粘膜投与剤若しくは外用剤とすることができる。
【0019】
剤形についても所望により、必要に応じて、公知の担体等を併用して、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、腸溶解性製剤等の経口投与剤、又は、注射剤(静脈内、筋肉内、皮下、腹腔等)、点滴剤、坐剤等による非経口剤等に製剤化されるものである。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、着色剤、安定化剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤、溶解補助剤、 粘着剤、乳化剤、リポソーム製剤、pH調整剤、懸濁剤、コーティング剤、腸吸収促進剤、除放性製剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
【0020】
【実施例】
以下の実施例により、本発明をさらに詳細に説明する。以下に実施例をもって、本発明をいっそう具体的に説明するが、これらは実施の一例として示すものであり、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0021】
【実施例1】
(1)未分画骨細胞の調製
ジエチルエーテルを用いた深麻酔により10日齢、110g前後の仔ウサギを屠殺し、四肢長管骨を採取した。軟組織を取り除いた後、5%仔ウシ胎児血清(FBS)を含むアルファ最小必須培地(α−MEM)の中でハサミを用いて細切した。充分に細切した骨片と培養液を回収し、vortexミキサーを用いて骨片に付着している細胞を剥離させ、2分間静置した後上清を回収することにより未分画骨細胞を調製した。
【0022】
(2)ピットアッセイ
20〜40μm厚の象牙スライスを直径6mmの円盤状に切断し、70%エタノール中で超音波処理することにより滅菌を行った。各象牙スライスをPBS、α−MEMにて洗浄後、200μlの培養液(5%FBS含有α−MEM)と共に96穴プレートのウェルに移し、COインキュベーター内(5%CO/95%Air)にて、37℃、2時間保温した。2時間後にウェル内の培養液を完全に取除き、各濃度のヒトLECT2を含む培養液および5×10個の未分画骨細胞を添加した後、さらにCOインキュベーター内(5%CO/95%Air)にて、37℃、18時間保温した。18時間後、ラバーポリスマンを用いて象牙スライスに付着している骨細胞を完全に取除き、酸性ヘマトキシリン溶液にて数分間染色し、顕微鏡下で象牙スライス一枚あたりのピット数を計測することにより破骨細胞の骨吸収活性を求めた。
【0023】
図1の横軸は本アッセイ系に用いたヒトLECT2濃度を、縦軸は象牙スライス一枚あたりのピット数を示している。 ヒトLECT2は1μg/mlの濃度で約50%の骨吸収阻害活性を示し、10μg/mlの濃度でほぼ100%の骨吸収阻害活性を示した。
【0024】
【実施例2】
(1)破骨細胞の分離精製
実施例1の方法に従って調製した未分画骨細胞をコラーゲンゲル(新田ゼラチン、cell matrix type I)でコートしたシャーレに播種し、COインキュベーター内(5%CO/95%Air)にて、37℃、2時間保温した。2時間後、シャーレ内の培地を完全に取除いた後、広口ピペットを用い、10mlのPBSにて3回洗浄することによりゲル上から細胞を洗い流した。さらに0.001% プロナーゼ E/0.02% EDTA溶液を添加し、室温15分静置した後、再び10mlのPBSにて3回洗浄を行った。最後に、0.01% コラゲナーゼ溶液を添加し、室温5分静置、10mlのPBSによる3回の洗浄を行うことによって破骨細胞以外の細胞をゲル上から完全に取除いた。ゲル上に残った破骨細胞は、0.1% コラゲナーゼ溶液を添加し、室温10分静置することにより細胞の足場ごと溶解し、破骨細胞のみを含む細胞浮遊液を回収した。
【0025】
(2)ピットアッセイ
実施例1で用いた象牙スライス、培養液を用意し、実施例1と同様の方法でピットアッセイを行った。ただし、ここでは未分画骨細胞の代わりに、1ウェルあたり3000個の精製破骨細胞を用いた。図2には本アッセイ系を用いてヒトLECT2の骨吸収阻害活性について調べた結果を示したが、未分画骨細胞を用いたピットアッセイと同様に、ヒトLECT2は10μg/mlの濃度でほぼ100%の骨吸収阻害活性を示した。
【0026】
【実施例3】
(急性毒性試験)
配列番号19番から151番のアミノ酸配列からなる化合物を公知の手法によって調製し、このものを体重20±1gのdd系マウスの一群5匹に0.1mg/gを尾静脈より投与した。投与7日後まで観察し死亡例は確認できなかった。
【発明の効果】
本発明により、LECT2が骨吸収活性を抑制することが判明した。本発明により、高カルシウム血症、骨粗鬆症等に対して有効な治療法を提供することができる。さらに、LECT2由来の物質について、骨吸収抑制剤のスクリーニング法が提供できた。
【配列表】
Figure 0004378439
Figure 0004378439

【図面の簡単な説明】
【図1】未分画骨細胞に対するヒトLECT2の骨吸収抑制活性のアッセイの結果を示す図面である。
【図2】精製破骨細胞に対するのヒトLECT2の骨吸収抑制活性のアッセイの結果を示す図面である。

Claims (3)

  1. 白血球活性化タンパク質因子又は白血球活性化タンパク質因子由来の物質を有効成分とする骨吸収抑制剤であって、白血球活性化タンパク質因子又は白血球活性化タンパク質因子由来の物質が配列表の配列番号1のアミノ酸番号1番〜151番又は19番〜151番で表されるアミノ酸配列を有する骨吸収抑制剤。
  2. 白血球活性化タンパク質因子又は白血球活性化タンパク質因子由来の物質が破骨細胞による骨吸収を抑制する請求項1に記載の骨吸収抑制剤。
  3. 白血球活性化タンパク質因子若しくは白血球活性化タンパク質因子由来の物質を出発原料とし、又はこれらを情報源として調製した骨吸収抑制剤候補化合物について、骨吸収作用についてのインビトロ試験を指標にしてスクリーニング試験を実施し選別することからなる骨吸収抑制剤のスクリーニング方法であって、白血球活性化タンパク質因子若しくは白血球活性化タンパク質因子由来の物質が配列表の配列番号1のアミノ酸番号1番〜151番又は19番〜151番で表されるアミノ酸配列を有するスクリーニング方法。
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