JP4374880B2 - 積層コイル及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、絶縁性セラミック基板上に、複数の絶縁層とコイル導体層とが各層毎に焼成されて積層されている積層コイル及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子部品の1つとして、絶縁体基板上に導体パターンが順次絶縁層を介して積層配置されてなる多層構造部品がある。従来の多層構造部品の製造方法の一例を説明する。
【0003】
図6(a)に示すように、絶縁体基板120上に導体ペースト等により導体パターン121が形成される。その後、その導体パターン121が焼成され、次に絶縁体基板120及び導体パターン121が冷却される。焼成時には導体パターン121は収縮し、冷却時には絶縁体基板120及び導体パターン121が収縮する。導体パターン121は絶縁体基板120よりも熱伸縮率が大きいため、導体パターン121は絶縁体基板120よりも熱収縮率が大きくなる。絶縁体基板120と導体パターン121の熱収縮率の差に起因して、導体パターン121には引っ張り応力が発生する。それによって、図6(b)に示すように、絶縁体基板120と導体パターン121とからなる積層体は中央が下方に凸状となるように反る。
【0004】
次に、図6(c)に示すように導体パターン121上に絶縁層122が形成される。絶縁層122の形成に際しても、前記同様に焼成後に冷却が行われる。この焼成工程において、絶縁層122は収縮する。また、冷却時には絶縁体基板120と絶縁層122は両方共に収縮する。もっとも、導体パターン121の場合には、絶縁体基板120よりも熱収縮率が大きいので、中央が下に凸となる反りが強くなって引っ張り応力が発生するのに対して、絶縁層122の場合には、絶縁体基板120よりも熱収縮率を十分に小さくすることにより、収縮による下面との反りよりも、中央が上方に凸となる上向きの反りを大きくすることができ、それによって圧縮応力を発生させることができる。絶縁層122の圧縮応力によって導体パターン121の引っ張り応力が相殺され得るので、このことを考慮して絶縁層122の構成材料が選定されている。
【0005】
その後、図6(d)に示すように、上記同様に導体パターン121と絶縁層122が交互に積層形成され、多層構造部品123が作製される。なお、従来、全ての絶縁層122は同一の絶縁材料により構成されていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−26530号公報
【特許文献2】
特開2001−210141号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、絶縁層122を構成している材料は、絶縁体基板120と導体パターン121と絶縁層122とからなる積層体の反りを防止するように選定されている。しかしながら、それにも拘わらず、絶縁層122の材料の例えば純度等のばらつきの問題や製造装置の問題等の様々な原因によって、積層体の反りを完璧に抑制することは非常に困難であった。このため、導体パターン121や絶縁層122の積層数が多くなると、図6(d)に示すように、積層体の反りが顕著に現れてきてしまうことになる。
【0008】
積層体の反りが大きくなると、様々な問題が発生する。例えば、導体パターン121を形成する際に、積層体を設定の配置位置に固定することがあるが、積層体が大きく反って積層体の底面が湾曲していると、積層体を固定することが困難となる。従って、導体パターン121の形成に大きな支障を来す。また、導体パターン121が細かいパターン形状の場合には、積層体の表面が湾曲しているために、導体パターン121を精度良く形成することができないという問題も発生する。
【0009】
多層構造部品123を製造する際に、1つずつ多層構造部品123を作製するのではなく、例えば、複数の絶縁体基板120を形成することができる絶縁体のマザー基板を利用して、多数の多層構造部品123を同時に作製することがある。つまり、マザー基板の状態のままで、多層構造部品123となる複数の領域毎にそれぞれ同時に導体パターン121や絶縁層122を積層形成していき、全ての導体パターン121と絶縁層122の形成終了後にマザー基板を各々の多層構造部品123毎に分離分割して、多数の多層構造部品123を同時に作製することがある。この場合にも、前記同様に、マザー基板と導体パターン121と絶縁層122からなる積層体の反りが大きくなるという問題が発生する。この積層体の反りに因り、上記同様に、マザー基板を固定することが難しくなるという問題や導体パターン121を精度良く形成することができないという問題が発生する。また、マザー基板を各多層構造部品123毎に分離分割する際にマザー基板を設定通りに分割することが困難となる。そのため多層構造部品123の不良品率が高くなる。
【0010】
他方、例えば積層セラミックコンデンサでは、マザーの積層体を個々の積層セラミックコンデンサ単位の積層体に切断した後に焼成が行われる。従って、焼成時の反りの問題は比較的小さい。
【0011】
これに対して、積層コイルでは、マザー基板段階で焼成が行われる。すなわち、焼成した後にマザーの焼結体が個々の積層コイルに分割される。従って、焼成がマザー基板段階で行われるため、上記焼成時の反りの問題がより一層顕著になる。
【0012】
しかも、積層コイルでは、部品の種類毎にコイル導体の導体幅や巻数などが異なる。さらに、1つの積層コイル内においてもコイル導体層毎に導体幅や巻数が異なる場合もある。そのため、積層コイルでは、部品毎に反りの状態が異なるのが実情である。従って、複数の内部電極が同じ形状である積層セラミックコンデンサに比べて、コイル導体層の形状が種々異なる積層コイルでは、上述した焼成時の反りを制御することはより困難であった。
【0013】
加えて、積層コイルのコイル導体層の厚みは、積層セラミックコンデンサの内部電極の厚みより一般的に厚い。そのため、上述した電極層による反りの影響が積層コイルではより一層大きくなる。
【0014】
本発明の目的は、上述した従来技術の現状に鑑み、絶縁性セラミック基板上に、コイル導体層及び絶縁層が積層されている一体焼成型の積層コイルであって、焼成時の反りが抑制された積層コイル及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本願の第1の発明は、アルミナからなるセラミック基板上にセラミックスからなる複数の絶縁層と、Agを含むコイル導体層とが積層されている積層コイルであって、2層のコイル導体層が少なくとも1層の絶縁層を介して積層されており、かつ前記各コイル導体層の導体の幅が10〜300μm、巻数が3/4〜10ターン、厚みが3〜15μmであり、前記絶縁層が、線膨張係数を制御するガラス成分を含み、前記絶縁層が、反り防止絶縁層と、反り防止絶縁層以外の絶縁層とを有し、前記反り防止絶縁層は、前記絶縁層の最上部に設けられており、前記反り防止絶縁層の線膨張係数が、残りの絶縁層の線膨張係数よりも大きく、かつ前記コイル導体層の線膨張係数と比べて同等以下であり、前記セラミック基板の線膨張係数が、前記反り防止絶縁層の線膨張係数より小さく、前記残りの絶縁層の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする、積層コイルである。
【0017】
第1の発明のある特定の局面では、複数の絶縁層が、前記コイル導体に接触されない厚み調整用絶縁層をさらに有する。
また、本発明の積層コイルのさらに他の特定の局面では、最上部に反り防止絶縁層が設けられており、該反り防止絶縁層上に設けられており、かつ絶縁性セラミックスからなる保護層がさらに備えられている。
【0018】
本発明の製造方法は、上記本発明の積層コイルの製造方法であって、セラミック基板上において複数の絶縁層及びコイル導体層とを各層毎に焼成してマザーの焼結体を用意する工程と、前記マザーの焼結体を個々の積層コイル単位に切断する工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明に係る製造方法のある特定の局面では、前記反り防止絶縁層がスクリーン印刷工程及び焼成工程を経て形成され、前記コイル導体層に接触されている絶縁層がフォトリソグラフィー工程及び焼成工程を経て形成される。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0021】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る積層コイルを示す正面断面図であり、図2(a)及び(b)は、この積層コイル内に形成されている第1,第2のコイル導体層を示す模式的平面断面図である。
【0022】
積層コイル1は、絶縁性セラミックスよりなるセラミック基板2を有する。セラミック基板2上に、第1のコイル導体層3が積層されている。図2(b)に示されているように、第1のコイル導体層3は、コの字状で約3/4ターンの巻数を有するように構成されている。第1のコイル導体層3の外側端3aは、積層コイル1の奥側の側面1aに引き出されている。第1のコイル導体層3の内側端3bは、後述のビアホール電極4の下端に接続されている。
【0023】
コイル導体層3を被覆するように、絶縁層5が形成されている。絶縁層5を貫通するようにビアホール電極4が形成されている。ビアホール電極4の下端が、前述したようにコイル導体層3の内側端3b近傍に電気的に接続されている。
【0024】
他方、絶縁層5上には、第2のコイル導体層6が形成されている。第2のコイル導体層6は、コの字状で約3/4ターンの巻数を有する。図2(a)に示すように、第2のコイル導体層6の内側端6a近傍は、ビアホール電極4の上端に電気的に接続されている。また、第2のコイル導体層6の外側端6bは、積層コイル1の手前側の側面1bに引き出されている。
【0025】
図2(a)及び(b)に想像線で示すように、外部電極11,12が積層コイル1の側面1a,1bに形成される。外部電極11,12は、コイル導体層3の外側端3a及びコイル導体層6の外側端6aにそれぞれ電気的に接続されている。従って、積層コイル1では、約1.5ターンの巻数のコイルが構成されている。
【0026】
図1に戻り、第2のコイル導体層6を被覆するように、絶縁層7が形成されている。そして、絶縁層7上に、厚み調整層としての絶縁層8が形成されている。また、絶縁層8上に、反り防止絶縁層9が形成されている。反り防止絶縁層9上に、保護層10が形成されている。
【0027】
積層コイル1では、上記絶縁性セラミック基板2上において、第1,第2のコイル導体層3,6、絶縁層5,7〜9及び保護層10は、各層毎に焼成されて積層されている。そして、絶縁性セラミック基板2、コイル導体層3,6、絶縁層5,7〜9及び保護層10が以下のようにして構成されるため、後述する実験例から明らかなように、焼成時の反りを確実に抑制することができる。これを、積層コイル1の製造方法を説明することにより明らかにする。
【0028】
積層コイル1の製造に際しては、厚みが0.15〜0.25mm、線膨張係数が7〜10ppm/℃のアルミナからなるマザーのセラミック基板が先ず用意される。
【0029】
マザーのセラミック基板上に、焼成後の線膨張係数が13〜20ppm/℃の導体ペーストを用いて複数の第1のコイル導体層3が形成される。この第1のコイル導体層3の形成は、フォトリソグラフィー法により行われ得る。なお、焼成後には、コイル導体層3は冷却される。
【0030】
第1のコイル導体層3を構成するための材料としては、感光性Agペーストが用いられる。なお、Au、Pt、Cu、Ni、Pdまたはこれらの合金を用いた適宜の感光性導体ペーストを使用することもできる。
【0031】
また、第1のコイル導体層の厚みは3〜15μm(好ましくは5〜7μm)、線幅は10〜300μm、巻数は3/4〜10ターンとされる。
後述する第2のコイル導体層6についても、第1のコイル導体層3と同様の導体ペーストを用いて構成することができ、かつ厚み、線幅及び巻数についても同様の範囲とすることが望ましい。
【0032】
コイル導体層3を形成した後に、複数のビアホール電極4を有するマザーの絶縁層が形成される。そして、マザーの絶縁層上に、複数の第2のコイル導体層6がコイル導体層3と同様にして形成される。しかる後、絶縁層5を構成するためのマザーの絶縁層と同様にして、絶縁層7を構成するためのマザーの絶縁層が形成される。マザーの絶縁層の焼成後の厚みは7.5〜70μm、好ましくは15〜30μmとされる。
【0033】
これらのマザーの絶縁層を構成する材料は特に限定されないが、好ましくは、感光性ガラスペーストを塗布し、焼成することにより形成される。この感光性ガラスペーストとしては、例えばアクリル酸エステル系共重合体などの有機成分と、SiO2、K2O、B2O3などのガラス粉末と、溶剤等とを含む組成物が好適に用いられる。感光性ガラスペーストが塗布された後、フォトリソグラフィーによりパターニングされる。次に、焼成・冷却により絶縁層が形成される。焼成温度については、800〜900℃とされる。
【0034】
上記のようにして、絶縁層7を構成するためのマザーの絶縁層が形成された後に、厚み調整用絶縁層8を構成するマザーの厚み調整用絶縁層が焼成・冷却により形成される。ここでは、感光性ではないガラスペーストをスクリーン印刷し、焼成・冷却することによりマザーの厚み調整用絶縁層が形成される。すなわち、厚み調整用絶縁層8には、ビアホール電極を形成する必要がないため、スクリーン印刷により容易に厚み調整用絶縁層用のガラスペーストを付与することができる。
【0035】
次に、反り防止用絶縁層9を構成するためのマザーの反り防止用絶縁層が形成される。マザーの反り防止用絶縁層の形成に際しては、絶縁層5,6を構成するのに用いた感光性ガラスペーストよりも、焼成後の線膨張係数が大きい、感光性ではないガラスペーストが好適に用いられる。このガラスペーストをスクリーン印刷し、焼成・冷却することにより、マザーの反り防止用絶縁層が形成される。マザーの反り防止用絶縁層の形成は、スクリーン印刷及び焼成により行われるため、フォトリソグラフィー−焼成法に比べて容易に行われ得る。
【0036】
マザーの反り防止用絶縁層の厚みは、7〜20μmとされる。
なお、反り防止用絶縁層の焼成後の線膨張係数は、絶縁層5,7の線膨張係数が大きくされているが、このような線膨張係数の制御は、ガラスペースト中に含まれているガラス成分の含有量や種類などによって制御することができる。
【0037】
マザーの反り防止用絶縁層を形成した後に、保護層10を構成するためのガラスペーストがスクリーン印刷により付与され、焼成・冷却される。このようにして、マザーの保護層が形成される。マザーの保護層の厚みは10〜50μmとされる。保護層10を形成するためのガラスペーストは、感光性である必要はない。従って、保護層を構成するためのガラスペーストはスクリーン印刷により容易に付与される。また、保護層10は、積層コイル1において上面を保護するために設けられているものである。従って、保護層10を構成するためのガラスペーストとしては、好ましくは、SiO2,K2O,B2O3などのガラス成分と溶剤とを含む組成物が好適に用いられる。
【0038】
積層コイル1の製造に際しては、図1の積層コイル1が連ねられたマザーの焼結体が得られた後、マザーの焼結体が一旦短冊状に分割された後に、その短冊状のマザーの焼結体をさらに分割することにより、個々の積層コイル1単位に分割される。
【0039】
個々の積層コイル単位にマザーの焼結体を分割する方法についても特に限定されず、レーザー、スクライブ、カットまたはダイシング等により格子状にブレイク溝を形成した後、ローラーなどを用いて分割する方法などを適宜用いることができる。このようにして、個々の積層コイル1単位の焼結体を得た後に、前述した外部電極11,12を形成することにより、積層コイル1が得られる。
【0040】
上記のように、積層コイル1の製造に際しては、セラミック基板2上において第1のコイル導体層3、絶縁層5、第2のコイル導体層6、絶縁層7、厚み調整用絶縁層8、反り防止用絶縁層9及び保護層10が各層毎に焼成・冷却されてマザーの焼結体が用意される。このように各層を順次焼成してマザーの焼結体を得た場合、従来の積層コイルの製造方法では、マザーの焼結体において反りが生じがちであるという問題があった。
【0041】
これに対して、本実施形態では、コイル導体層3,6の導体の幅が10〜300μm、巻数が3/4〜10ターン、厚みが3〜15μmの範囲にあり、反り防止用絶縁層9の線膨張係数が残りの絶縁層4,7,8の線膨張係数よりも大きくされているため、マザーの焼結体段階における反りを効果的に抑制することができる。従って、マザーの焼結体段階における搬送に際しての吸着不良やマザーの焼結体の割れなどを抑制することができる。これを具体的な実験例に基づき説明する。
【0042】
上述した製造方法に従ってマザーの焼結体を得た。
すなわち、実施例として、最終的な寸法が長さ0.6mm×幅0.3mm×厚み0.3mmの積層コイル1を作製した。この場合、マザーのセラミック基板として、100mm×100mm×厚み0.15mmのセラミックスからなるアルミナ板を用意した。そして、第1,第2のコイル導体層3,6は、感光性Agペーストのフォトリソ及び焼成により形成し、焼成後の導体の幅を10μm、巻数は4ターン、厚みは5μmとした。さらに、絶縁層5,7を構成するための感光性ガラスペーストとして、前述の組成物を用い、絶縁層5,7の焼成後の厚みが、それぞれ、15μm及び30μmとした。また、反り防止用絶縁層9については、感光性ではないガラスペーストを用い、焼成後の厚みは7〜20μmとした。上記感光性ガラスペースト及び反り防止用絶縁層9を構成するためのガラスペーストの組成を制御することにより、絶縁層5,7を構成するためのマザーの絶縁層の焼成後の線膨張係数は4.5ppm/℃とし、反り防止用絶縁層9の焼成後の線膨張係数は12.0〜13.0ppm/℃とした。また、保護層10については、前述のガラスペーストを印刷及び焼成することにより20μmの厚みに形成した。保護層10の焼成後の線膨張係数は3〜6ppm/℃である。
【0043】
比較のために、第1,第2のコイル導体層の厚みが8μm、絶縁層5,7に相当する絶縁層の厚みは15μmとし、さらに、絶縁層9に反り防止用ガラスペーストを使用せず、厚み調整用ガラスペーストを使用したことを除いては上記実施例と同様にして積層コイルを作製した。実施例及び比較例のそれぞれの製造工程で得たマザーの焼結体における反りを測定した。その結果、100mm×100mm×厚み0.3mmのマザーの焼結体において、比較例の反りは1.5mmであったのに対し、実施例では0.3mmと著しく小さくなった。
【0044】
なお、マザーの焼結体の反りの大きさとは、図7に模式的断面図で示すようにマザーの焼結体31が上向きに反っている場合には、マザーの焼結体31の下面中央と水平面との間の高いHをいうものとする。また、マザーの焼結体31が下向きに反っている場合には、マザーの焼結体31の上面中央と周辺部との間の高さ方向寸法をいうものとする。
【0045】
上記のように、実施例の積層コイルを得るためのマザーの焼結体において反りが著しく低下したのは、反り防止用絶縁層9が下方に突出するようになったためと考えられる。すなわち、図3(c)に略図的断面図で示すように、第1,第2のコイル導体層3,6は、導体の中央部分が周辺に比べて下方に突出するように焼成によって反ることが分かっている。他方、絶縁層5,7及び厚み調整用の絶縁層8は、いずれも、焼成後に中央部分が外側に比べて上方に突出するように反る(図3(b)及び(d)参照)。
【0046】
そして、コイル導体層3,6が下向きに反っていたとしても、絶縁層5,7及び厚み調整用絶縁層8が上向きに反っているため、全体としては、中央部が上方に突出するように反ることとなる。ところが、図3(a)に示すように反り防止用絶縁層9の焼成後の線膨張係数が残りの絶縁層の線膨張係数よりも大きいため、反り防止用絶縁層9は、中央部が下向きに突出するように反ることとなる。すなわち、反り防止用絶縁層9の反りの向きが、絶縁層5,7及び厚み調整用絶縁層8と逆方向であるため、全体として、マザーの焼結体の反りが効果的に抑制されていると考えられる。
【0047】
なお、保護層10については、絶縁層5,7と同様に上向きに反るように構成されているが、保護層10の反りをも相殺するように、反り防止用絶縁層9が下向きに反るように構成されている。
【0048】
図1に示した積層コイル1では、第1,第2のコイル導体層3,6が積層されていたが、本発明においては、3以上のコイル導体層が積層されていてもよい。
図4に示す第2の実施形態では、第1のコイル導体層3及び第2のコイル導体層6に加えて、第3のコイル導体層13がさらに積層されている。第3のコイル導体層13は、ビアホール電極14により第2のコイル導体層6に電気的に接続されている。第2の実施形態の積層コイル16では、第3のコイル導体層13上に絶縁層15が形成されている。絶縁層15は、絶縁層5,7と同様に形成されている。
【0049】
また、図5に示す第3の実施例の積層コイル21では、第3のコイル導体層11上に、ビアホール電極22により接続された第4のコイル導体層23及び絶縁層24がさらに形成されている。
【0050】
このように、本発明においては、3以上のコイル導体層が絶縁層を介して積層されていてもよい。
もっとも、図4,5に示した3層以上のコイル導体層を有する積層コイル16,21では、反り防止用絶縁層9の線膨張係数は、残りの絶縁層の線膨張係数よりも小さくされることが必要である。これは、コイル導体層の数が増大するにつれて、コイル導体層が、中央部分が下方に突出するように反るため、マザーの焼結体全体として中央部分が下方に突出するように反りがちとなるためである。すなわち、反り防止用絶縁層9Aが中央において上方に突出するように反るように構成することにより、コイル導体層3,6,13,23の反りによる影響を相殺することができる。本願発明者の実験によれば、3層以上のコイル導体層が設けられている積層コイルでは、マザーの焼結体段階において、前述した反り量を±0.5mm以下とし得ることが確かめられている。従って、コイル導体層の数が3以上の場合であっても、本発明に従ってマザーの焼結体における反りを効果的に抑制し得ることがわかる。
【0051】
【発明の効果】
以上のように、第1の発明に係る積層コイルでは、2層のコイル導体層の導体の幅が10〜300μm、巻数が3/4〜10ターン、厚みが3〜15μmであり、反り防止用絶縁層の線膨張係数が、残りの絶縁層の線膨張係数よりも大きいため、マザーの焼結体段階における反りを確実に防止することができる。従って、マザーの焼結体を搬送したり、分割する工程において、マザーの焼結体が吸着等によって割れ難い。従って、積層コイルの生産を安定に行うことができ、積層コイルの良品率を効果的に高めることが可能となる。
【0053】
複数の絶縁層が、コイル導体層に接触されていない厚み調整用絶縁層をさらに備える場合には、該厚み調整用絶縁層より積層コイルの厚みを調整することができる。
【0054】
反り防止用絶縁層上に絶縁性セラミックスからなる保護層がさらに備えれている場合には、保護層により積層のコイルの上部を効果的に保護することができる。
【0055】
本発明に係る積層コイルの製造方法では、マザーのセラミック基板上において、複数の絶縁層及び複数のコイル導体層が順次焼成されてマザーの焼結体が得られ、該マザーの焼結体を個々の積層コイル単位に切断されて積層コイルが得られる。そして、積層コイルを構成するコイル導体層の導体の幅及び巻数及び厚みが第1の発明に従って構成されており、反り防止用絶縁層の線膨張係数が第1の発明に従って残りの絶縁層の線膨張係数よりも大きく、あるいは小さくされているため、第1の発明と同様に、マザーの焼結体段階における反りを確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る積層コイルを示す正面断面図。
【図2】(a)及び(b)は、第1の実施例の積層コイルの第1のコイル導体層及び第2のコイル導体層を示す各平面断面図。
【図3】(a)〜(d)は、反り防止用絶縁層、他の絶縁層、コイル導体層及び他の絶縁層の焼成後の反りの状態を示す模式的正面図。
【図4】第2の実施例に係る積層コイルを示す正面断面図。
【図5】第3の実施例に係る積層コイルを示す正面断面図。
【図6】(a)〜(d)は、従来の多層構造部品の製造方法の一例を説明するための各正面断面図。
【図7】マザーの焼結体の反りを説明するための正面図。
【符号の説明】
1…積層コイル
2…セラミック基板
3…第1のコイル導体層
4…ビアホール電極
5…絶縁層
6…第2のコイル導体層
7…絶縁層
8…厚み調整用絶縁層
9…反り防止用絶縁層
10…保護層
11,12…外部電極
13…第3のコイル導体
14…ビアホール電極
15…絶縁層
16…積層コイル
121…積層コイル
122…ビアホール電極
123…第4のコイル導体層
Claims (5)
- アルミナからなるセラミック基板上にセラミックスからなる複数の絶縁層と、Agを含むコイル導体層とが積層されている積層コイルであって、
2層のコイル導体層が少なくとも1層の絶縁層を介して積層されており、かつ
前記各コイル導体層の導体の幅が10〜300μm、巻数が3/4〜10ターン、厚みが3〜15μmであり、
前記絶縁層が、線膨張係数を制御するガラス成分を含み、
前記絶縁層が、反り防止絶縁層と、反り防止絶縁層以外の絶縁層とを有し、
前記反り防止絶縁層は、前記絶縁層の最上部に設けられており、
前記反り防止絶縁層の線膨張係数が、残りの絶縁層の線膨張係数よりも大きく、かつ前記コイル導体層の線膨張係数と比べて同等以下であり、前記セラミック基板の線膨張係数が、前記反り防止絶縁層の線膨張係数より小さく、前記残りの絶縁層の線膨張係数よりも大きいことを特徴とする、積層コイル。 - 前記複数の絶縁層が、コイル導体層に接触されていない厚み調整用絶縁層をさらに有する、請求項1に記載の積層コイル。
- 前記反り防止絶縁層上に設けられており、かつ絶縁性セラミックスからなる保護層をさらに備える、請求項1または2に記載の積層コイル。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の積層コイルの製造方法であって、
セラミック基板上において複数の絶縁層及びコイル導体層とを各層毎に焼成してマザーの焼結体を用意する工程と、
前記マザーの焼結体を個々の積層コイル単位に切断する工程とを備える、積層コイルの製造方法。 - 前記反り防止絶縁層がスクリーン印刷工程及び焼成工程を経て形成され、前記コイル導体層に接触されている絶縁層がフォトリソグラフィー工程及び焼成工程を経て形成される、請求項4に記載の積層コイルの製造方法。
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