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JP4368100B2 - スパークプラグ - Google Patents

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JP4368100B2
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修 吉本
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関に使用されるスパークプラグに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン等の内燃機関の着火用に使用されるスパークプラグにおいては、エンジンの高出力化や燃費向上の目的で、燃焼室内の温度も高くなる傾向にある。また着火性向上のために、スパークプラグの火花放電ギャップに対応する放電部を燃焼室内部に突き出させるタイプのエンジンも多く使用されるようになってきている。このような状況では、スパークプラグの放電部が高温にさらされるので、その火花消耗が進み易くなる。そこで、火花放電ギャップに対応する放電部の耐火花消耗性向上のために、電極の先端にPtやIr等を主体とする貴金属チップを溶接したタイプのものが多数提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、貴金属チップがIr及びRhを主体として構成することにより、高融点であるIrのメリットを生かしつつ、Irの高温(約900℃以上)での酸化揮発を防止するために、Rhを添加するによって、より高温における耐消耗性を向上させることができるスパークプラグが開示されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平9−7733号公報(第2頁)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、本発明者等が実験を行ったところ、前述の特許文献1に記載されているような耐消耗性に優れる貴金属チップを用いても、必ずしも放電部の消耗を完全には抑制できない場合があることがわかった。本発明者等は、主成分としてのIrと20質量%のRhを含有した貴金属チップにて構成した放電部を中心電極にのみ設けたスパークプラグを、6気筒ガソリンエンジン(排気量2000cc)に取り付け、無鉛ガソリンを燃料として、スロットル全開状態、エンジン回転数5000rpmにて運転を行なった。そして、20時間後の放電部の外観を観察したところ、図5に示すように、放電部の放電面ではない外周側面を円弧状にえぐるような形態で異常消耗が生じていることが観察された。図5においては、放電面は、放電部の上面である。この異常消耗は、図5をみてわかるとおりその消耗形態も特殊であり、その消耗要因も単に火花放電や酸化揮発のみでは簡単に説明できないものと考えられる。従って、貴金属チップからなる放電部の火花消耗や単純な酸化消耗のみを抑制しようとする従来の方法では、完全に解消できないものであった。
【0006】
本発明の課題は、Ir、Rh、Niとからなる貴金属チップにて放電部を形成したスパークプラグであって、特に顕著にみられる上記のような異常消耗を十分に抑制することができるスパークプラグを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段及び作用・効果】
上記課題を解決するために本発明のスパークプラグは、中心電極と、その中心電極の先端面に自身の側面が対向するように配置された接地電極とを備え、前記中心電極の先端面と前記接地電極の側面により形成された火花放電ギャップに対応する位置においてそれら中心電極と接地電極との少なくとも一方に、貴金属チップを溶接することにより放電面を有する放電部が形成されたスパークプラグにおいて、前記貴金属チップは主成分としてのIr及びRh及びNiとを含有する貴金属チップ本体部と、前記貴金属チップ本体部の少なくとも径方向外周面に、Niが50質量%以上含有されるNi合金からなり、膜厚が2〜30μmの被膜層とで形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明者等が、図5に示す異常消耗が生じた放電部を調べたところ、該放電部の表面にCa及び/又はPを含有する堆積物が付着していることが明らかとなった。また、該堆積物が付着する放電部において、異常消耗が生じない場合もあったが、異常消耗が見られる全ての放電部に該Ca及び/又はPに起因する堆積物が付着していた。これにより、前述した異常消耗はこのような堆積物が要因の一端となっていると推測される。一方、該異常消耗は放電部のある一定方向からのみ進行していることが図5から明らかである。そのため、放電部において着火が行なわれる着火雰囲気中において、何らかの流体の流れが存在しており、該流体の流れが異常消耗の要因の一端となっているとも考えられる。例えば、上記流体とは、混合気体中の燃料を均一に拡散させるための一定の流れを有する混合気流(スワール流)であると推測することができる。また、該異常消耗は上記二つの要因により進行する消耗であると推測することもできる。いずれにしても、このような異常消耗は、火花放電による溶解・離散や、あるいは、放電部の単純な酸化揮発による消耗とは異なる機構により生じているものと推測でき、従来の方法では、完全に抑制するには至らないものであった。
【0009】
本発明者等は、異常消耗が進行した放電部において、図5に示すようにその放電部の放電面周辺がほとんど異常消耗していないことに着目した。そして、該放電面周辺において成分分析を行い、該放電面周辺にNiが含有されていることを見出した。なお、異常消耗が生じている部分(外周側面)において同様の成分分析を行ったところ、Niの存在は認められなかった。つまり、この放電面周辺に存在するNiは、貴金属チップに作製当初から含有されていたものではなく、スパークプラグの使用過程において含有されたものである。すなわち、火花放電の繰り返しによりNi系耐熱合金等にて構成される接地電極からNi成分が飛び出し、その後該Ni成分が貴金属チップの放電面周辺に注入されたものと考えられる。いずれにしても、本発明者等は、異常消耗が観察される貴金属チップにおいて、異常消耗の起こりにくい部分(放電面周辺)にNiが含有されているという知見を得た。
【0010】
そこで、本発明者等は、Ir−Rh合金にNi成分を含有させた貴金属チップを用いることで、上記のような異常消耗を抑制すること考えた。実際、上記貴金属チップを使ったスパークプラグにおいて、異常消耗を抑制することができるようになった。しかし、条件等によっては、Ir−Rh−Ni合金の貴金属チップを使用しても、十分に異常消耗が抑制されていないものがあった。
【0011】
本発明者等は、上記のような鋭意検討の結果、主成分としてのIrと、Rh、Niとからなる貴金属チップ本体部の少なくとも径方向外周面に、Niが50質量%以上含有されるNi合金からなる被膜層を形成することで、前述のような異常消耗を十分に抑制できることを見出し、本発明の完成に至ったものである。なお、本発明において、「主成分としてのIr」とは、貴金属チップ本体部中にてIrを50質量%以上含有していることをいうものである
【0012】
貴金属チップ本体部の少なくとも径方向外周面に形成される被膜層は、Niが50質量%以上含有されるNi合金とする。被膜層が50質量%未満のNiが含有されるNi合金であると、異常消耗抑制の効果が十分に発揮されにくい。
【0013】
なお、被膜層の膜厚2〜30μmの範囲とする。被膜層の膜厚が2μm未満であると、膜厚が薄すぎて異常消耗抑制の効果を十分に得にくい。一方被膜層の膜厚が30μmを越えると、貴金属チップ本体部に対する被膜層の割合が多くなり、貴金属チップの耐火花消耗性が低下する。
【0014】
また、上記スパークプラグの製造方法としては、中心電極と、その中心電極の先端面に自身の側面が対向するように配置された接地電極と、前記中心電極の先端面と前記接地電極の側面により形成された火花放電ギャップに対応する位置においてそれら中心電極と接地電極との少なくとも一方に、貴金属チップを備えたスパークプラグの製造方法において、主成分としてのIrと、Rh、Niとを含有した前記貴金属チップ本体部の少なくとも径方向外周面に、Niが50質量%以上含有されるNi合金からなり膜厚が2〜30μmのメッキ層を形成するメッキ処理を行なうことを特徴とする。貴金属チップ本体部にメッキ処理を行うことで、貴金属チップ本体部の少なくとも径方向外周面にNiが50質量%以上含有されるNi合金からなる被膜層を貴金属チップ本体部に形成することできる。なお、メッキ層の膜厚は、2〜30μmのものを採用する。
【0015】
さらに、貴金属チップ本体部にメッキ処理を行った後、貴金属チップに熱処理を行っても良い。これにより、被膜層が貴金属チップ本体部により強固に接合される。なお、そのときの熱処理の温度は800℃〜1000℃とすることが良い。熱処理の温度を800℃未満とすると、熱処理にかける時間が長くなり、被膜層と貴金属チップ本体との接合強度が充分に得られず、被膜層が貴金属チップ本体部から剥離しやすくなる。また、1000℃を越えても、Niの粒成長が促進されて、被膜層で粒界割れを発生し易くなり、貴金属チップ本体部から剥離しやすくなる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のいくつかの実施の形態について断面を用いて説明する。図1は本発明のスパークプラグ100の一例を示した縦断面図であり、図2(a)はスパークプラグ100の放電部周辺の拡大図である。本発明の一例たる抵抗体入りスパークプラグ100は、筒状の主体金具1、先端部21が突出するようにその主体金具1の内側に嵌め込まれた絶縁体2、先端に形成された放電部31を突出させた状態で絶縁体2の内側に設けられた中心電極3、及び主体金具1に一端が溶接等により結合されるとともに、他端4a側が側方に曲げ返されて、その側面4cが中心電極3に形成された放電部31と対向するように配置された接地電極4等を備えている。また、接地電極4には上記放電部31に対向する放電部32が形成されており、それら放電部31と放電部32とに挟まれた隙間に火花放電ギャップgが形成されている。
【0017】
絶縁体2は、例えばアルミナあるいは窒化アルミニウム等のセラミック焼結体により構成され、その内部には自身の軸方向に沿って中心電極3を嵌め込むための貫通孔6を有している。また主体金具1は、低炭素鋼等の金属により円筒状に形成されており、スパークプラグ100のハウジングを構成するとともに、その径方向外周面には、スパークプラグ100を図示しないエンジンブロックに取付けるためのねじ部7が形成されている。貫通孔6の一方の端部側に端子金具13が挿入・固定され、同じく他方の端部側に中心電極3が挿入・固定されている。また、該貫通孔6内において端子金具13と中心電極3との間に抵抗体15が配置されている。この抵抗体15の両端部は、導電性ガラスシール層17、18を介して中心電極3と端子金具13とにそれぞれ電気的に接続されている。なお、放電部31及び対向する放電部32のいずれか一方を省略する構成としてもよい。この場合には、放電部31又は対向する放電部32及び接地電極4又は中心電極3との間で火花放電ギャップgが形成される。
【0018】
放電部31は例えば、図2(b)に示すように円板上の貴金属チップ31'をINCONEL600(英国INCO社の商標)等のNi系耐熱合金、又はFe系耐熱合金で構成される中心電極3の先端部3aの端面に重ね合わせ、さらにその接合面外周縁に沿ってレーザー溶接、電子ビーム溶接、電気抵抗溶接等により溶接部Wを形成してこれを固着するようにして形成される。また、例えばINCONEL600、INCONEL601等のNi系耐熱合金で構成されている接地電極4側に放電部32を形成する場合には、放電部32は中心電極3側の放電部31と対応する位置において、接地電極4に貴金属チップ32'を位置合わせし、その接合面外周縁部に沿って同様に溶接部W'を形成してこれを固着することにより形成される。
【0019】
ここで、放電部31、32には、主成分としてのIrを含有し0.5〜8質量%のNiと0.5〜40質量%のRhとを含有しているIr基合金にてなる貴金属チップ本体部33、34と、貴金属チップ本体部33、34の径方向外周面に主成分としてNiが含有されるNi合金からなる被膜層33'、34'により構成される貴金属チップ31'、32'を使用する。なお、被膜層33'、34'の膜厚Kは2〜30μmである。(図3参照)
【0020】
なお、貴金属チップ本体部33、34に含有されるNiの含有量は、0.5〜8質量%の範囲となることが好ましい。被膜層33'、34'が何らかの原因で消耗し、貴金属チップ本体部33、34が外部に露出した場合でも、貴金属チップの異常消耗を抑制するためである。Niの含有量が0.5質量%未満であると、異常消耗抑制の効果が十分に発揮されない。一方、Niの含有量が8質量%を超えると、Niの含有量が多くなりすぎ、火花放電による通常の消耗に対する耐久性が劣化するため好ましくない。
【0021】
さらに、貴金属チップに含有されるRhの含有量は、0.5〜40質量%とすることが好ましい。Rhの含有量が0.5質量%未満であると、Rhを含有させることの酸化揮発抑制に対する効果が十分に得られない。一方、40質量%を超えると、貴金属チップの融点が低下して、火花放電による消耗を効果的に抑制することができなくなる。従って、上記範囲のRhを含有させることにより、火花放電による消耗とIrの酸化揮発による消耗等の前記異常消耗に起因しない放電部の消耗を効果的に抑制することが可能となる。
【0022】
貴金属チップ31'、32'は、例えば、以下のようにして形成される。すなわち、原料となる貴金属粉末を所期の比率で配合し、これを溶解して合金インゴットを形成する。具体的な溶解方法としては、例えばアーク溶解や、プラズマビーム溶解、高周波誘導溶解等の方法が採用される。また、合金溶液を水冷鋳型等により鋳造、急冷インゴットとすれば、合金の偏析を低減することができるため、該方法を採用してもよい。また、上記インゴットは所望の組成にて配合した貴金属粉末を圧縮成形したあと、焼結することによって作製するようにしてもよい。
【0023】
その後、合金を熱間鍛造、熱間圧延及び熱間伸線の1種又は2種以上の組合せにより線状あるいはロッド状の素材に加工した後、これを長さ方向に所定長さに切断して形成する。例えば、熱間鍛造によりロッド状に加工した後、溝付圧延ロールによる熱間圧延と、熱間スエージングによりさらに縮径し、最終的に熱間伸線により0.8mm以下の線径の線材に加工する。その後、該線材を所望の厚さとなるように切断し、貴金属チップ本体部33、34を得る。
【0024】
また、貴金属チップ31'、32'の作製は、各合金成分を配合・溶解することにより得られる溶解合金を熱間圧延により板状に加工し、その板材を熱間打抜加工により所定のチップ形状に打ち抜いて形成することも可能である。さらに、公知のアトマイズ法により球状の貴金属合金を作製し、該球状の貴金属合金をそのまま放電部として使用するようにしてもよいし、これをプレスあるいは平ダイスで圧縮して、扁平状あるいは円柱状の貴金属チップ本体部33、34とすることもできる。
【0025】
そして、貴金属チップ本体部33、34の径方向外周面に主成分としてNiが含有されるNi合金メッキ処理を施し、被膜層33'、34'を形成することで、貴金属チップ31'、32'を作製することができる。具体的には、貴金属チップ本体部33、34をNiが含有するメッキ浴に浸漬し、貴金属チップ本体部33、34の表面に被膜層33'、34'を形成する。更に被膜層33'、34'を形成した後、貴金属チップ31'、32'に熱処理を行うこともできる。そのとき、熱処理の温度は、800℃〜1000℃とすることができる。
【0026】
また、本発明のスパークプラグにおいて放電部31を構成する貴金属チップのチップ径D(mm)が0.3〜0.8mm、放電部厚さH(mm)が0.4〜2mmとなっていることがよい。これらチップ径D及び放電部厚さHは図3に示すように規定する。すなわち、チップ径Dは放電部31の外径Dであって、放電部厚さHは、放電部31の放電面31tの外縁から、中心電極3と貴金属チップ31'を溶接する溶接部Wの対応する端縁までの軸線方向における最短距離である。以上、中心電極3側の放電部31についてのみ示したが、接地電極4側の放電部32においても同様にチップ径D及び放電部厚さHを規定することができる。
【0027】
なお、貴金属チップ31'と中心電極3とを溶接する溶接部Wは、図4に示すように貴金属チップ31'の径方向において連続して形成される場合もある。
【0028】
また、図4に示すように、貴金属チップ31'にはチップ表面全体に被膜層33'を形成してよい。これにより、貴金属チップ31'の放電面31tにも被膜層33'が形成され、異常消耗をさらに抑制することができる。
【0029】
上記のような本発明のスパークプラグ100は、そのねじ部7においてエンジンブロックに取り付けられ、燃焼室に供給される混合気の着火源として使用される。使用時においては、放電部31及び放電部32との間に放電電圧が印加されて、火花放電ギャップgに火花が生じる(各符号については図1を参照)。なお、本発明のスパークプラグ100は、Ca及び/又はPが存在する着火雰囲気中にて使用されると、本発明を適用する効果が有効に発揮されることになる。また、これらの着火雰囲気中に存在するCa及び/又はPは内燃機関に使用されるエンジンオイルに含有されるものであるため、このようなエンジンオイルを使用する内燃機関に本発明のスパークプラグ100を好適に使用することができる。
【0030】
また、本発明のスパークプラグ100において、貴金属チップ本体部33,34には、Pt、Pd、Ru及びReから選ばれる1種又は2種以上が含有されているものを使用することができる。このような元素を上記Ir基合金にてなる貴金属チップ本体部33、34に含有することにより、上記範囲のNi成分を含有させて異常消耗を抑制するメリットに加えて、高温におけるIrの酸化揮発を抑制することが可能となる。
【0031】
さらに、貴金属チップ本体部33、34は、RuあるいはReの少なくとも一方が1〜5質量%含有されているものとすることもできる。これらの元素はIrよりは劣るもののRhよりも融点が高いために、火花放電に対する耐久性を向上させるのに有効であるとともに、Irよりも高温で酸化揮発しにくいため、耐高温酸化性を向上させる観点からも有効である。これらの元素の含有量が1質量%未満では十分な上記効果が得られず、5質量%を超えると逆に耐火花消耗性及び耐高温酸化性が劣化するため、上記範囲内に設定するのがよい。
【0032】
また、本発明のスパークプラグ100において、貴金属チップ本体部33,34は、Sr、Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ti、Zr及びHfから選ばれる元素の酸化物(複合酸化物を含む)が含有されていてもよい。これにより、Irの高温での酸化揮発による消耗がさらに効果的に抑制される。上記酸化物の含有量は0.5〜3質量%の範囲にて設定するのがよい。0.5質量%未満になると、当該酸化物添加による添加金属元素成分の酸化揮発防止効果が十分に得られなくなる。一方、酸化物の含有量が3質量%を超えると、貴金属チップ33、34の耐熱性が却って損なわれてしまうことがある。なお、上記酸化物としては、La及びYの少なくとも一方が含有されているのがよいが、このほかにもThO、ZrO等を好ましく使用することができる。
【0033】
【実験例】
本発明の効果を調べるために、以下の実験を行った。
(実験例1)
まず、スパークプラグの放電部に使用される貴金属チップを以下のように製造した。成分がIr−10質量%Rh−0.5質量%Niである貴金属チップ本体部を形成するために、それぞれ配合・混合し、原料粉末を得た。次いで、この原料粉末を直径20mm、長さ130mmの円柱状に加圧成形した。そして、その成形体をアーク溶解炉内に配置し、アーク溶解を行って各種組成の合金インゴットを得た。さらに、この合金を、約1500℃にて熱間鍛造、熱間圧延及び熱間スエージングし、さらに熱間伸線することにより、合金線材を得た。これを長手方向に切断することにより、円板状の貴金属チップ本体部を得た。そしてこの貴金属チップ本体部をNiメッキ浴に浸漬し、貴金属チップ本体部の表面に表1に示すNiの含有量を各種変化させた被膜層形成する事により直径(チップ径)0.6mm、厚さ0.8mmの貴金属チップを作製する。なお被膜層の膜厚は15μmである。また、Niめっき浴は、Niを主成分として、B、W、Fe等が含有されている。この貴金属チップを、INCONEL600製の中心電極母材にレーザー溶接により溶接して、図1ないし図2示す形態のスパークプラグを製造した。なお、上記レーザー溶接後において、放電面の外縁から、中心電極と貴金属チップとを溶接した溶接部の対応する端縁までの軸線方向における最短距離(放電部厚さH:図3参照)が0.5mmとなるように、各組成の貴金属チップに見合うレーザー溶接条件を適宜調整して上記レーザー溶接は実施した。また、本実験においては接地電極側の放電部はチップ径0.9mm、厚さ0.6mmであって、成分がPt−20質量%Niである貴金属チップにより構成した。また、比較例として、成分がIr−10質量%Rh−0.5質量%Niであり、被膜層にはNiが実質的に含有しない貴金属チップも作製した。なお、「実質的に含有しない」とは、不可避以上のNiが含有されていないことと同じことを示す。
【0034】
【表1】
Figure 0004368100
【0035】
上記のようにして得た各スパークプラグの耐久試験を下記の条件にて行った。すなわち、排気量2000ccのガソリンエンジン(6気筒)にそれらスパークプラグを取り付け、チップの放電部付近の温度が1000℃以上になるようにしてスロットル全開状態エンジン回転数5000rpmにて累積50時間、運転を行う高温耐久試験を行った。
【0036】
耐久試験後の各スパークプラグにおいて異常消耗の程度を目視にて評価した。異常消耗が生じなかったものは○、異常消耗は生じたが最後まで耐久試験に耐えられたものは△、異常消耗により耐久試験が続行不能となったものは×として評価した。異常消耗についての評価結果を表1に示す。これにより、被膜層は、主成分としてNiが含有されるNi合金とすると、異常消耗が抑制されることがわかる。
【0037】
(実施例2)
次に、被膜層のNi含有量を98質量%に固定して、被膜層の膜厚(μm)を表2のように各種変化させた以外は実験例1と同様となるスパークプラグを作製した。そして、各スパークプラグにおいて、実験1と同様の高温耐久試験を行った。そして、その後それぞれのスパークプラグにおいて放電部の周辺部を光学顕微鏡にて観察し、異常消耗の発生の程度を目視にて評価した。結果を表2に示す。また、平均車速120km(全開、アイドリング、部分負荷の混合モード)で8万km相当走行の実走耐久試験を行った。なお、燃料は無鉛ガソリンを使用し、中心電極の先端温度は900℃であった。また、各スパークプラグの火花放電ギャップについては1.1mmに設定して、耐久試験を行った。実走耐久試験を行い、実走耐久試験前に被膜層が形成されない貴金属チップの実走耐久試験後の面積を100(%)としたときのそれぞれの面積の比を評価し、表2に示した。なお、貴金属チップの面積とは、ニコン社製プロファイルプロジェクターV−12で図2(a)の手前から奥に向かって光を当てたときの影の面積のことを示す。
【0038】
【表2】
Figure 0004368100
【0039】
表2より、Niの膜厚が30μmを超えると、基準面積に比べて大幅に面積が少ないことが分かる。また、Niの膜厚が2μm以下であると、異常消耗が発生した。よって、被膜層の膜厚は、3〜30μmであることがよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスパークプラグの一実施例を示す正面全体断面図。
【図2】図1のスパークプラグの部分断面図及び要部を示す拡大断面図。
【図3】放電部周辺を拡大して示すとともに、チップ径D及び放電部厚さH等の定義を説明する図。
【図4】図3に続いてチップ径D及び放電部厚さH等の定義を説明する図。
【図5】異常消耗による中心電極側の放電部の様子を示す観察図。
【符号の説明】
100 スパークプラグ
3 中心電極
4 接地電極
1 主体金具
g 火花放電ギャップ
31、32 放電部
31'、32' 貴金属チップ
33、34 貴金属チップ本体部
33'、34' 被膜層
W 溶接部

Claims (4)

  1. 中心電極と、その中心電極の先端面に自身の側面が対向するように配置された接地電極とを備え、前記中心電極の先端面と前記接地電極の側面により形成された火花放電ギャップに対応する位置においてそれら中心電極と接地電極との少なくとも一方に、貴金属チップを溶接することにより放電面を有する放電部が形成されたスパークプラグにおいて、
    前記貴金属チップは主成分としてのIr及びRh及びNiとを含有する貴金属チップ本体部と、前記貴金属チップ本体部の少なくとも径方向外周面に、Niが50質量%以上含有されるNi合金からなり、膜厚が2〜30μmの被膜層とで形成されていることを特徴とするスパークプラグ。
  2. 中心電極と、その中心電極の先端面に自身の側面が対向するように配置された接地電極と、前記中心電極の先端面と前記接地電極の側面により形成された火花放電ギャップに対応する位置においてそれら中心電極と接地電極との少なくとも一方に、貴金属チップを備えたスパークプラグの製造方法において、
    主成分としてのIrと、Rh、Niとを含有した前記貴金属チップ本体部の少なくとも径方向外周面に、Niが50質量%以上含有されるNi合金からなり膜厚が2〜30μmのメッキ層を形成するメッキ処理を行なうことを特徴とするスパークプラグの製造方法。
  3. 前記メッキ処理後、貴金属チップに熱処理を行うことを特徴とする請求項2に記載のスパークプラグの製造方法。
  4. 前記熱処理の温度は、800℃〜1000℃である請求項3に記載のスパークプラグの製造方法。
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