JP4364343B2 - 混練成形水硬性材料補強材及び混練成形体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は混練成形水硬性材料補強材及び混練成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、セメント、石膏等の水硬性材料の補強材として繊維を用いることが検討されている。
たとえば特開昭54―31421号公報等には15〜25d、強度9g/d以上、伸度5〜10%のビニロン繊維を配合した繊維補強抄造セメント板が開示されている。繊維及び水硬性材料を水に分散させてなるスラリーを抄き上げる抄造法を採用する場合、繊維は2次元的に成形体の広がり方向に配向するため効率的に補強効果を発揮することができる。しかしながら、繊維をマトリックス中に配合して均一混合する混練成形法を採用する場合、繊維は3次元的にランダムに配向するため実際には十分な補強効果を発揮することが難しく、靭性の高い混練成形体を得ることは困難となる。
【0003】
また特開昭56―125269号公報等には、1〜4d程度、8〜9g/d、伸度5〜6%のPVA系繊維を用いた抄造セメント板及び混練成形体が記載されている。該方法により得られる抄造成形体は優れた性能を有しているものの、混練成形を行うと該繊維は細径であるためファイバーボール等の問題が発生して十分な補強効果が奏されない。
さらに特開昭59―8664号公報には100〜1000d、アスペクト比30〜150のPVA系繊維、また特開昭63―303837号公報には1000〜9000d、アスペクト比20〜150のPVA系繊維を混練成形して得られる水硬性硬化体が開示され、高強力高弾性率繊維が好ましいと示されている。しかしながら、単に高強力高弾性率繊維を用いたりマトリックスとの接着性を高めるだけでは、混練成形体が曲げ応力を受けるとPVA系繊維がその本来の強度を十分発現する前に破断する傾向があることから、混練成形体の靭性を十分に向上させることができない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、均一分散性及び補強効果が顕著に改善された混練成形水硬性材料補強材及び水硬性材料からなる混練成形体を提供することにあり、さらに第1クラックが発生しにくいのみでなく第1クラック発生後においても高い応力を奏する混練成形体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1) 繊度5〜100d、アスペクト比10〜500、破断強度5g/d以上、伸度(A)6〜20%、屈曲時強力利用率(B)35%以上、(B)≧(A)×4のポリビニルアルコール系繊維からなる混練成形水硬性材料補強材、(2) 繊度5〜100d、アスペクト比10〜500、破断強度5g/d以上、伸度(A)6〜20%、屈曲時強力利用率(B)35%以上、(B)/(A)≧4のポリビニルアルコール系繊維からなる補強材を水硬性材料に三次元的に均一に分散混練後、成形させてなる水硬性材料からなる混練成形体、に関する。
【0006】
水硬性材料を混練成形すると、繊維補強材はマトリックス中で一方向ではなく3次元的にランダムに配向する。このとき、成形体に曲げ応力が加わると引張方向と近似の方向に配向した繊維(繊維群a)は補強効果を発揮しやすいものの、引張方向と異なった方向に配向した繊維や屈曲した状態で存在する繊維(繊維群b)は繊維性能を十分発揮する前に破断しやすい問題があり、特に引張方向に対して大きな角度で配向している繊維はこの傾向が一層強くなる。
【0007】
すなわち繊維群bの繊維に応力が加わると、引張方向及び引張力は同一繊維内で均一にならず特定の部分に応力が集中することとなるが、繊維(特にPVA系繊維)は折り曲げ応力に対して弱い、あるいは折り曲げた状態における引張破断強力が小さい傾向があるため、補強効果を十分に発揮することなく容易に破断してしまうのである。従って、補強材を配合した水硬性硬化体を引張破断すると、破断面では硬化体の引張方向とは相違する方向に配向した繊維が多数破断していることが観察される。
【0008】
従来、繊維群aの挙動のみが集中的に検討され、高度に延伸が行われた高強力低伸度の繊維が補強材として好ましいとされてきたが、本発明は混練成形体において優れた補強効果を得るためには繊維群aのみでなく繊維群bの挙動を検討する必要があることを見出し、伸度及び屈曲時強力利用率を特定の範囲とすることに至ったものである。
具体的には、本発明は、伸度(A)6〜20%、屈曲時強力利用率(B)35%以上、(B)/(A)≧4の繊維を補強材とするものである。かかる補強材は、繊維群aのみでなく繊維群bにおいても優れた補強効果を奏するものであり、該繊維を用いることにより成形体の靭性は顕著に向上する。伸度及び屈曲時強力利用率が上記範囲をはずれると、マトリックスに繊維補強材を均一分散させた系では十分な補強効果が得られない。
【0009】
これまで繊維群aの補強効果にのみ検討が加えられ、繊維群aの補強効果を高めるために高強力低伸度の繊維が使用されていたが、伸度を小さくすると屈曲時の強力利用率が低下する傾向があり、繊維群aは優れた補強効果を奏するものの繊維群bの補強効果は十分に奏されない。本発明は繊維の屈曲時強力利用率を高めることにより、これまで実質的に奏されていなかった繊維群bの補強効果が大幅に向上し、その結果、成形体の靭性を顕著に完全するものである。
【0010】
繊維群bの屈曲時強力利用率を高める具体的手段は限定されないが、繊維の伸度を高めると屈曲時強力利用率が向上する傾向があるために、繊維の伸度を高める方法が好適に採用できる。伸度を大きくすることにより繊維群aはマトリックスから抜けやすくなって補強効果は低減することとなるが、本発明で規定した伸度及び屈曲時強力利用率を有する繊維であれば、繊維群aの補強効果が若干低減するとしても、これまで実質的に発揮されていなかった繊維群bの補強効果が大幅に高まるために、結果として優れた補強効果が奏される。
【0011】
本発明においては屈曲時強力利用率(B)を35%以上、好ましくは40%以上、さらに好ましくは45%以上、特に好ましくは50%以上とする必要があり、屈曲時強力利用率が小さすぎると繊維群bが容易に破断するため補強効果が不十分となる。
逆に屈曲時強力利用率が高くなると繊維群aの補強効果が低下する傾向があり、また屈曲時強力利用率をある範囲以上に高めることは実際上困難であることから、屈曲時強力利用率は80%以下、さらに70%以下、特に65%以下であるのが好ましい。
なお本発明にいう屈曲時の強力利用率は実施例に示した方法により求めることができ、繊維群bの補強性能を示す指標となる値である。
【0012】
また伸度(A)は6〜20%、好ましくは7%以上とする必要があり、また15%以下、特に14%以下、さらに13%以下とするのが好ましい。伸度が高すぎると繊維群aにおいては容易に「抜け」が生じて繊維群aの補強効果が実質的に奏されなくなるので混練成形体の靭性が低下する。逆に伸度が低すぎると繊維群bの補強効果が実質的に奏されにくくなるため所望の結果が得られない。
繊維の屈曲時強力利用率は伸度により必ずしも決定されるものではなく、繊維の種類、繊維の製造方法、繊度、繊維を構成するポリマーの重合度等により影響され、同一伸度を有する繊維であってもその屈曲時強力利用率は異なったものとなる。しかしながら、伸度は屈曲時強力利用率を決定する重要なパラメータの1つであることから、伸度が低すぎると繊維群bが十分な補強効果を奏することが困難となり、高度に延伸が施された低伸度繊維は剛直で柔軟性が低いため、繊維群bのように繊維長さ方向以外の方向に応力が加わると十分な機械的性能・補強効果が奏されにくくなる。伸度を高めると繊維群aの補強効果が低下する傾向があるが、多少繊維群aの補強効果を犠牲にしてでも伸度を特定の範囲とした場合に一層顕著な補強効果が得られる。
【0013】
さらに本発明においては、屈曲時強力利用率(B)≧伸度(A)×4とする必要がある。すなわち伸度(A)を高くすると、先に説明したように繊維群aの補強効果が低くなるため、その繊維群aの補強効果の低下分を繊維群bの補強効果により補う必要がある。従って、伸度(A)が高ければ高いほど屈曲時強力利用率(B)を高くする必要があり、具体的には屈曲時強力利用率(B)を伸度(A)の4.5倍以上、好ましくは6倍以上とする必要がある。事実上の繊維性能の点からは、(B)≦(A)×15とするのが好ましい。
【0014】
また本発明においては繊維の破断強度を5g/d以上、好ましくは6g/d以上とする必要がある。破断強度が低すぎると繊維群a及び繊維群bにおいて共に十分な補強効果を奏することができない。繊維製造コスト等の点からは30g/d以下、さらに20g/d以下とするのが好ましい。また繊維のヤング率は150g/d以上、さらに200g/d以上であるのが好ましく、製造コスト等の点から500g/d以下であるのが好ましい。
【0015】
さらに本発明の補強材は混練成形を行うものであることから、均一分散性に優れた繊維とする必要がある。以上のことから、繊度5d以上、好ましくは10d以上、さらに好ましくは12d以上とするとともに、アスペクト比10以上、特に20以上とするのが好ましく、また500以下、さらに400以下とするのが好ましい。
繊度が小さすぎたりアスペクト比が大きすぎる場合には、均一分散性が不十分となり混練によりファイバーボールが発生して十分な補強効果が得られない。また逆にアスペクト比が小さすぎる場合には比表面積が小さくなってマトリックスとの接着性が不十分となり、さらにブリッジング効果が得られなくなるため補強効果が不十分となる。
【0018】
また主として第1クラック発生後の耐衝撃性を改善を目的とする場合には、繊度5〜100d、アスペクト比20〜500とするのが好ましく、特に繊度10d以上、さらに12d以上、また50d以下、特に30d以下とするのが好ましい。
アスペクト比は20〜500とするのが好ましく、なかでも60以上、さらに70以上、またさらに80以上とするのが好ましく、また400以下、さらに300以下、またさらに200以下とするのが好ましい。該繊維を補強材とすることにより、繊維群bの補強効果が顕著に高まると同時に応力の伝達が容易になされるため、第1クラックの発生が抑制されるのみでなく、第1クラック発生後の硬化体の曲げ荷重の低下が抑制されて耐衝撃性に優れた混練成形体が得られる。繊維の繊度が大きい場合には、比表面積が小さいために繊維の応力を効率的に伝達することが困難であり、また配合本数が少なくなるため、第1クラックの発生は効果的に抑制されるものの、第1クラック発生後の耐衝撃性は該細径繊維に比してそれほど改善されない。よって成形体の耐衝撃性を改善したい場合には細径の繊維を配合するのが好ましい。
【0019】
ブリッジングファイバ−の局所に応力が集中して繊維群bが破断したり、また繊維強度や摩擦抵抗が低すぎてブリッジング効果が不十分であるとモノクラックしか発生しない。よって曲げ試験後のクラックの発生状況は、引張側になる面に多くのクラック(マルチクラック)が発生するものが好ましい。繊維群a及び繊維群bがともに補強効果を奏している場合、第1クラック発生が抑制されるのみでなく、クラックが発生してもブリッジングファイバ−が切断する前に応力が分散され、他の多くの繊維もブリッジング効果を発揮することが可能となるため耐衝撃性が向上する。1本の繊維強力には限界があるが、細径繊維の場合には繊維の配合本数が多くなるため変形歪量に分布をもった多数の積分的強力の向上で第1クラックの進展が妨げられ、マトリックスの他の部分にクラックが発生してマルチクラックが生じることとなる。このような破壊経過をたどるものは成形体の耐衝撃性・耐震性が優れたものとなる。耐震性を高める点からは補強繊維の本数を増加させるのが好ましく、1〜4vol%配合するのが好ましい。
また細径繊維の場合には、太径繊維に比して絶対的な強力(デニールあたりに換算する前の破断強力)が小さく、破断強度(g/d)が与える影響が大きいことから、太径繊維に比して高い破断強度(g/d)を有しているのが好ましい。具体的には9g/d以上、さらに10g/d以上、またさらに11g/d以上であるのが好ましい。特に上限は限定されないが、一般には30g/d以下である。
【0020】
具体的には、たわみ曲げ荷重試験を行った際の第1クラック発生時のたわみをAmm、このときの曲げ荷重をBkgfとするとき、第1クラック発生時以降に曲げ荷重Bkgfとなるたわみが11×Amm以上、特に12×Amm以上、さらに13×Amm、またさらに15×Amm以上となるのが好ましい。かかる硬化体は第1クラック発生以降も曲げ荷重の低下が小さく高い曲げ荷重が維持されることから耐衝撃性に優れたものとなる。曲げ荷重Bkgfとなるたわみの大きさの上限は特に限定されないが一般には30×Amm以下となる。
【0021】
具体的な曲げ荷重の値は硬化体の形態、大きさ、組成等により変化するが、第1クラック発生時の応力が100kgf以上、特に150kgf以上であるものが好ましく、第1クラック発生後に曲げ荷重がさらに大きくなるものが好ましい。最高曲げ荷重は第1クラック発生時の応力の1.2倍以上、さらに1.5倍以上,特に1.6倍以上とするのが好ましく、一般には5倍以下となる。
【0022】
なお本発明でいう第1クラック発生時とは、たわみ−応力曲線を作成したとき、たわみと応力が実質的に比例関係を有し、かつ最大のたわみを示すときをいう。
【0023】
またさらに繊維とマトリックスの接着性(親和性)を引抜抵抗1〜10N/mm2、さらに引抜抵抗2〜9N/mm2とすることにより一層顕著な効果が得られる。すなわち、繊維がマトリックスから容易に「抜け」が生じず、かつ繊維とマトリックス間が強固に固定されず適度に可動な状態とすることによって、繊維が屈曲した際の自由度が大きくなって応力分散が容易になり、応力分散する前に繊維が破断する現象が生じにくくなる。よって屈曲時の破断強度を高めたこととあいまって繊維群bの補強効果が相乗的に高まる。特に100d以下の繊維の場合にはその傾向は大きくなる。
【0024】
繊維とマトリックスとの種類によってその親和性をコントロールするのが好ましく、場合によっては両者の親和性を低減させるのが好ましい。たとえば100d以下のPVA系繊維は水硬性材料との親和性が高いために繊維群aにおいては優れた補強効果が奏される反面、繊維群bにおいてはマトリックスに強固に接着して固定されるために局所に応力が集中し、応力が分散される前に破断しやすくなる問題があったが、水硬性材料との親和性を適度に低減させることにより一層優れた効果が得られる。
【0025】
水硬性材料との親和性を低減させる具体的手段としては、エポキシ樹脂、ポリオレフィン系樹脂、酸化ポリエチレン樹脂、フッ素系化合物等の疎水性物質を付与又はコーテイングしてマトリックスに対する親和性をコントロールする方法が挙げられる。疎水基で変性したPVAを表面に付与しても良い。このとき繊維への付着率が0.1〜10重量%程度とするのが好ましい。逆に引抜抵抗の低い繊維(疎水性の高い繊維)を用いる場合には、たとえば低温プラズマ処理による繊維表面の活性化や、エッチングなどでマトリックスへの親和性を高めたり、インデント加工(押し付け加工)等の処理を施す方法を採用すれば良い。
本発明で使用される補強用繊維は、耐候性、機械的性能、耐アルカリ性等の点からはポリビニルアルコール(PVA)系繊維であることが必要である。
なおPVA系繊維と水硬性材料の親和性を低減させたい場合には、酸化ポリエチレン樹脂を付与することでコントロールするのが好ましい。該樹脂はPVA系繊維との親和性が高く、しかも水硬性材料と適度な親和性を有していることから好ましい結果が得られる。
【0026】
本発明で用いるPVA系繊維は上記の値を満たしているものであれば特に限定されない。PVA系繊維を構成するビニルアルコール系ポリマーについては、耐熱性、コスト及び機械的性能等の点から30℃の水溶液で粘度法により求めた平均重合度が500〜24000、さらに1000以上、特に1500以上のものであるのが好ましい。かかるPVAを用いると高強度、高弾性率のPVA繊維が得られやすくなる。コストの点からは5000以下であるのが好ましい。
耐熱性、耐久性、寸法安定性等の点からはけん化度は99モル%以上、さらに99.8モル%以上であるのが好ましい。
【0027】
勿論他の変性ユニットが導入されたものを使用してもよい。変性ユニットの導入方法は共重合でも後反応でもかまわない。変性ユニットは30モル%以下、特に10モル%以下とするのが好ましい。
【0028】
勿論、補強用繊維はビニルアルコール系ポリマーのみで構成されている必要はなく、他の添加物や他のポリマーが配合されていても、また他のポリマーとの複合繊維や海島繊維であってもかまわない。耐候性及び耐アルカリ性の高いPVAを繊維表面に存在させるのがより好ましい。
【0029】
本発明に好適に使用できるPVA系繊維の製造方法は特に限定されないが、たとえば湿式紡糸法、乾式紡糸法、乾湿式紡糸法等により製造すれば良い。なお乾湿式方法とは紡糸ノズルと凝固浴間に空気や不活性ガスなど満たした空間(エア−ギャップ)を形成させて紡糸する方法をいう。
使用するノズルの孔形は特に限定されず、円形であってもそれ以外の異形であってもかまわない。たとえば偏平状、十字型、T字型、Y字型、L字型、三角型、四角型、星型等が挙げられる。
【0031】
100d未満の繊維を製造する場合には、製造工程性、コスト等の点から湿式紡糸又は乾湿式紡糸により繊維を製造するのが好ましい。具体的な製造方法としては、たとえばPVAを含む水溶液からなる紡糸原液を紡糸口金から、脱水能を有する無機塩類を含む室温の凝固浴中に湿式紡糸する方法が挙げられる。紡糸原液のPVA系ポリマーの濃度は、その重合度によって異なるが5〜30重量%、特に10〜20重量%とするのが好ましい。勿論、必要に応じて他の添加剤を配合してもかまわない。たとえば紡糸時の口金寿命延長や延伸工程の安定性を高めるために、紡糸原液に1種又は2種以上の界面活性剤や無機物を添加すればよい。また紡糸原液へ硼酸や硼酸塩類を添加してもかまわない。
【0032】
凝固液としては紡糸原液に対する凝固能を有するものであれば特に限定されないが、工程性及びコスト等の点から、水を溶媒とする凝固液を用いるのが好ましい。具体的には、硫酸ナトリウム(芒硝)、硫酸アンモニウム、炭酸ナトリウムなど脱水能を有する塩類の水溶液が用いられる。水溶液濃度は100g/リットル以上から飽和濃度まで選択できるが、なるべく飽和濃度に近い方が脱水凝固能が高く好ましい。なかでも工程性、コスト等の点から飽和水溶液凝固浴を用いるのが好ましい。またホウ酸を0.1〜3重量%程度含む紡糸原液を、水酸化ナトリウム等を含有するアルカリ性凝固浴に吐出する方法も好適に採用できる。凝固浴の温度は20〜70℃、特に30〜50℃とするのが好ましい。凝固浴から離浴した糸篠を所望により湿熱延伸・乾燥することにより紡糸原糸を容易に製造できる。
【0033】
また50d以下の繊維を製造する場合には、タフネスが高くしかも膠着等が生じにくいことから、たとえばPVAを溶剤に溶解した液を紡糸原液として凝固浴中に湿式吐出する方法により繊維を製造するのが好ましい。好適には以下の方法が挙げられる。
繊維の製造に用いる溶媒としてはPVAを溶解する有機溶媒を用いるのが好ましく、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジンなどの極性溶媒やグリセリン、エチレングリコールなどの多価アルコールなどがあげられる。またこれら2種以上の混合物やこれらと水の混合物なども使用し得る。数多い溶媒の中でもDMSOは比較的低温でPVAを溶解することができPVA溶液の熱劣化、着色を防ぐことができ好ましい溶媒である。DMSOは凍結温度が比較的高いことから、メタノール等を低濃度添加して凝固液の凝固点を降下させるのが好ましい。紡糸原液のPVA濃度はPVAの重合度や溶媒の種類によって異なるが、通常2〜30重量%、好ましくは3〜20重量%である。
【0034】
凝固浴としてはPVAに対して凝固能を有する有機溶媒を用いる。例えばメタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類などPVAに対して凝固能を有するものならば特に限定はない。なかでも低コストであり、しかも凝固能が比較的緩やかで均一な微結晶構造をつくりやすい点でメタノールが好ましい。高強力繊維を得るために本発明においては凝固浴中に原液溶媒を含有してもよい。原液溶媒の含有量は凝固能を有する有機溶媒の種類によって変化するが10〜50重量%、特に15〜45重量%とするのが好ましく、マイルドな凝固による均一ゲルが得られ易くなる。
【0035】
凝固浴温度は20℃以下がよく、20℃を越えると凝固糸は相分離が進行し不透明化し不均一凝固になり高強度繊維が得られない。凝固浴温度は15℃以下、特に10℃以下とするのが均一凝固糸を得る点でさらに好ましい。
本発明の紡糸方式はノズルと凝固浴の間にエアーギャップ層を介する乾湿式紡糸やゲル紡糸法でもかまわないが、繊維性能、紡糸工程性等の点からノズルが凝固浴と直接接触している湿式紡糸法を採用するのが好ましい。
次いで得られた凝固糸篠を抽出浴に浸漬して凝固糸篠中の原液溶媒などを洗浄除去する。抽出浴は凝固能を有する有機溶媒などにより構成するのが好ましく、次いで2.5〜5.5倍の湿熱延伸を施すのが好ましい。かかる糸篠を乾燥することにより紡糸原糸が得られる。
【0036】
以上のような種々の方法により紡糸原糸を得られるが、繊維性能を高める点からは高温下で熱延伸して配向結晶化を進行させるのが好ましい。特に有機溶剤からなる紡糸原液を用いる上記の方法を採用した場合には、繊維間の膠着が生じにくくより機械的性能に優れる繊維を得ることができる。具体的には強度9g/d以上の繊維を得ることができる。
繊維の熱延伸方法は非接触あるいは接触式のヒーター、熱風炉、オイル浴、高温蒸気など特に限定はない。なかでも熱風式延伸炉内で約20秒〜3分間の時間をかけて行うのが好ましく、温度を多段に制御することにより二段以上で熱延伸してもよい。延伸温度は200℃以上、さらに220〜250℃とするのが好ましく、全延伸倍率は8〜25倍、特に9〜18倍となるよう熱延伸を実施するのが好ましい。
【0037】
通常の高強度低伸度繊維を製造する場合には破断延伸倍率の80〜90%程度の延伸が行われているが、本発明においては比較的高伸度の繊維とずる点から50〜75%程度とするのが好ましい。
また繊維の伸度は、たとえば延伸後の繊維に適度に収縮処理を施すことにより調整することもできる。好適には延伸加熱炉より2〜5℃高い加熱炉にて適度に繊維が緩和状態となるように保持し(収縮量を入れ)、その状態で熱処理することにより伸度を高める方法が挙げられる。収縮量を上げることにより伸度は向上する。一般的には収縮率3〜20%、特に5〜15%程度とするのが好ましい。
延伸倍率を高めれば繊維強度は向上する反面伸度が低下し、また収縮量が多くなると伸度が高める反面機械的性能が低下することなる。従って、これら諸条件(紡糸原液吐出量、延伸条件、収縮条件等)を適宜調整し、所望の繊維とするのが望ましい。
なお収縮率を高めることにより伸度を高めることができるが、ポリマーの種類、重合度、紡糸方法、紡糸条件、延伸条件(延伸倍率、延伸温度)、収縮処理温度等の条件によっては、伸度を高くしても屈曲時強力強力利用率が高くならない場合がある。したがって、所望の屈曲時強力利用率を得るために、これら条件を適宜調整する必要がある。
【0038】
本発明の繊維は、混練成形材料補強材として優れた性能を有している。繊維の配合割合は適宜設定すればよいが、補強性の点から、マトリックスの0.01vol%以上、さらに0.1vol%以上、さらに0.5vol%以上とするのが好ましく、均一分散性の点から10vol%以下、特に5vol%以下、さらに4vol%以下配合するのが好ましい。
本発明の繊維は補強効果に優れていることから極微量添加することにより補強効果を顕著に高めることができる。
【0039】
本発明の補強材を配合することにより靭性等の諸性能に優れた混練成形体が得られる。具体的な成形方法としては例えば、吹付成形法、注入成形法、加圧成型法、振動成型法、振動及び加圧併用成型法、遠心力成型法、巻取成型法、真空成型法、そして押出成型法等が利用できる。勿論、左官材料として塗り付けて得られる物品(成形体)も本発明に包含される。
なお本発明にいう混練成形とは、水の存在する系において泥濘状態にあるマトリックスと繊維を均一混練した後に、上記のような成形方法により所望の形状に成形する方法をいい、従来広く行われている抄造法とは明確に区別されるものである。本発明においては、固体成分と水を100/15〜100/60程度の重量比、特に100/15〜100/40で均一混練して得られる混合物、すなわち抄造法に比して水の割合が小さく流動性の低い混合物とした場合であっても優れた効果が奏される。
【0040】
本発明に使用される水硬性物質は特に限定されず、セッコウ、セッコウスラグ、マグネシア等が挙げられるが、なかでもセメントが好適に使用される。ポルトランドセメントがその代表的なものであるが、高炉セメント、フライアッシュセメント、アルミナセメント等を使用してもよく、これらを併用してもかまわない。
また本発明の補強材は、繊維が損傷しやすく補強効果が奏されにくい骨材を配合したモルタルやコンクリ−トに対しても優れた補強効果を奏するものである。骨材としては、細骨材としてたとえば川、海、陸の各砂、破砂、砕石等が用いられ、粗骨材としてたとえばぐり石や破石などが使用できる。また人工の軽量骨材、充填材を配合してもよく、具体的には鉱滓、石灰石、その他発泡パ−ライト、発泡黒よう石、炭酸カルシウム、バ−ミュライト、シラスバル−ン等が挙げられる。さらに混和剤として、空気連行剤(AE剤)、流動化剤、減水剤、増粘剤、保水剤撥水剤、膨脹剤、硬化促進剤、凝結遅延剤などを併用してもかまわない。
なお発明にいう細骨材とは開口径5mmのふるいにかけたとき95重量%以上ふるいを通過するものをいい、粗骨材とは開口径5mmのふるいにかけたときその0〜10重量%がふるいを通過するものをいう。
【0041】
水硬性材料の組成は特に限定されないが、主として第1クラック発生後の耐衝撃性の改善を目的とする場合には応力の伝達を円滑にする点から実質的に粗骨材を配合しない系とするのが好ましく、繊度5〜100d、アスペクト比20〜500の繊維を配合することにより、応力の伝達が一層効果的になされることからより優れた効果が得られる。粗骨材が配合されている場合には応力伝達が阻害されたり、また混練時に細経繊維が損傷する場合がある。繊維は繊度10d以上、さらに12d以上、また50d以下、特に30d以下とするのが好ましい。また繊維のアスペクト比は60以上、さらに70以上、またさらに80以上とするのが好ましく、40以下とするのが好ましい。勿論、該繊維と太径繊維を併用しても構わない。好適な配合例としては実施例の靭性係数の測定に用いた供試体のような配合が挙げられる。具体的には粗骨材を配合しない系(モルタル)においてはセメント80〜120重量部、水40〜80重量部を配合した組成物とするのが好ましく、さらに他の添加剤等配合してもかまわない。たとえば、さらに硅砂80〜120重量部、シリカヒューム10〜50重量部、メチルセルロース0.1〜5重量部、高性能減水材0.1〜5重量部のいずれか1種以上を配合するのが好ましく、これらすべてを配合するのが好ましい。また粗骨材を配合する系(コンクリート)においては、セメント80〜120重量部、水120〜200重量部、粗骨材200〜400重量部を配合した組成物とするのが好ましく、さらに他の添加剤(減水剤等)を配合してもかまわない。またさらに細骨材20〜100重量部配合するのが好ましい。
【0042】
本発明の混練成形体の具体例としては、スレ−ト板、パイプ類、壁パネル、床パネル、屋根板、間仕切り、道路舗装、トンネルライニング、法面保護、コンクリ−ト工場製品等のすべてのセメント、コンクリ−ト成形物や2次製品に用いることができる。また前述したセメント製品に限らずこれら以外の構造物、建築内外装部材、土木材料に応用使用することもできる。また左官用モルタルとして使用してもよく、機械用基礎、原子炉圧力容器、液化天然ガスの容器等として用いてもよい。
以下更に本発明を実施例でもって説明するが、本発明は実施例により何等限定されるものではない。
【0043】
【実施例】
[繊度 d]
得られた繊維状物の一定試長の重量を測定して見掛け繊度をn=5以上で測定し、平均値を求めた。なお、一定糸長の重量測定により繊度が測定できないもの(細デニ−ル繊維)はバイブロスコ−プにより測定した。
【0044】
[密度 g/cm3]
4塩化炭素/ノルマルヘキサン等を媒体とする密度勾配管法で測定した(測定雰囲気20℃)。
[繊維強度 g/d、ヤング率 g/d、伸度 %]
予め温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下で24時間繊維を放置して調湿したのち、単繊維を試長20cm、引張速度10cm/分としてインストロン試験機「島津製作所製オートグラフ」にて繊維強度及びヤング率を測定した。
伸度は、単繊維破断伸度(cm)/把持長(cm)×100により算出した。
なお繊維長が20cmより短い場合は、そのサンプルの可能な範囲での最大長さを把持長として測定することとする。
【0045】
[屈曲時強力利用率 %]
試料繊維を40mm角の型枠に、試料繊維の長さ方向(配向方向)が型枠の高さ方向になるように設置し、次いでこの型枠にセメント/硅砂/水=1/1/0.4(重量比)で調整したモルタルを流し込み(繊維の埋込長さ40mm)、振動を十分に与えた後一昼夜気中で養生(25℃×65%RH)し、次いで水中(20℃×28日間)にて硬化させて水硬性硬化体を製造した。なおセメントとして普通ポルトランドセメント(浅野セメント製 普通ポルトランドセメント)、硅砂としてシリカ#4000(ブレーン値4000cm2/g 啓和炉材株式製)を用いた。
この成形体に埋め込んだ繊維を、島津製作所製オ−トグラフAG−5000Bにて0.5mm/minの速度、繊維埋め込み方向に対して45°の方向に引張り、このときの破断応力(g/d)を屈曲時の強度として求めた(図1参照)。
次いで上記の方法で求めた繊維強度(g/d)に対する屈曲時の強度(g/d)の割合(%)を求め、これを屈曲時強力利用率とした。
【0046】
[引抜抵抗 N/mm2]
普通ポルトランドセメント(浅野セメント製 普通ポルトランドセメント)に対し、重量で同量のシリカ #4000(ブレーン値4000cm2/g 啓和炉材株式製)をホバート型ミキサーで2分間ドライ混合した後、水/セメント比が0.4になるような計算量の水道水を加えて2分間ウエット混合した。これを厚さ0.2mmのポリエチレンフィルムを床に敷いたアルミ製バットに厚さ5〜10mmに敷きならした。これに菓子折仕切枠(経木製3cm×3cm)を埋め込み、1枠に1本の繊維を埋め込んだ。
【0047】
繊維の埋め込みは、予め埋め込み長さ相当の深差に印をつけた縫針をマトリックス面に垂直に差し込んだ後に引き抜き、繊維をその深さまで(細デニール繊維以外はマトリックス層の底まで)差込んだ。なお繊維が細すぎて上記方法が採用できない場合には、繊維を予め枠内に設置し、次いでマトリックスを流し込み、必要に応じて表面を削って平滑にすることにより繊維を埋め込むことができる。繊維の埋め込み長さは適宜変更すれば良いが、本発明の5〜100dの繊維の場合には埋め込み長さを1〜2mm以下とするのが好ましい。
繊維を差し込んだ後、アルミバットをビニール袋に密封して50℃で20時間1次養生後、20℃の部屋にシートで包み込んだまま21日間放置して養生した。養生完了後、繊維差し込み面にペンキでスプレーして空中に露出した繊維を着色し、埋め込み長さLbを引抜き試験後に測定可能できるようにした。次いで、経木仕切板に沿って個々のセメントモルタルのブロックに分割し、オートグラフ(島津製作所製 5000―AGB)を用いて2mm/分で引抜試験を行って変位荷重曲線を得た。
【0048】
引抜の荷重/変位の記録により最大荷重Pa(kgf)をよみとり、下記式により算出した。引抜試験により繊維切れを起したものを除き、n=5以上となるように試験を行い、得られた値の平均値を記載した。なお埋め込み長さLb(mm)は引抜試験後1/10mm単位で埋め込み長さを計測した値であり、周長L(mm)は繊維の断面形状を円と仮定し、平均繊度Dr(デニール)、繊維密度A(g/cm3)から0.2(Dr・π/(90・A))1/2として求めたものである。
引抜抵抗力(N/mm2)=9.8・Pa/(L×Lb)
【0049】
[靭性係数 N/mm2(100d以下の繊維補強材が配合されていない系)]
普通ポルトランドセメント193kg、細骨材(木更津山砂)113kg、粗骨材(最大径13mmの八王子産6号砕石)611kg、水350kg及び減水剤(ポソリス#70)0.88kgを2軸強制連ミキサーに投入し、1分間混練してプレーンコンクリートを製造した。このプレーンコンクリートに繊維0.75vol%投入して1分間混練した後、得られたスラリーを用いて土木学会基準JSCE―F552「鋼繊維補強コンクリートの強度及びタフネス試験用供試体の作り方」に準じて供試体(10cm×10cm×40cmの角柱体)を製造し、室温20℃、湿度65%の室内にて養生後脱型し、次いで20℃×28日間水中養生後、土木学会基準JSCE―G522「鋼繊維補強コンクリートの曲げ強度およびタフネス試験方法」に準じ、島津万能試験機にて3等分点載荷方式により成形体の靭性係数を測定した。成形体の靭性係数が高いものほど靭性(耐衝撃性)に優れているといえる。
【0050】
なお曲げ強度はP・l/(b・h2)により算出し、靭性係数は、曲げ応力―たわみ曲線において、たわみが0からスパンの1/150となるまでの荷重―たわみ曲線下の面積(Tb)を求め、次いで(Tb/Stb)・(l/bh2)により算出した。
このとき、Pは試験機の示す最大荷重(N)、lはスパン長(cm)、bは破壊断面の幅(cm)、hは破壊断面の高さ(cm)、Stbはスパンの1/150となるまでのたわみ(cm)を示す。
【0051】
[靭性係数(100d以下の繊維補強材が配合されている系)、たわみ−曲げ荷重試験]
試験に使用した硬化物の配合は以下の通りである。なお、具体的には普通ポルトランドセメント(秩父小野田製 普通ポルトランドセメント)、7号硅砂(東洋マテラン製)、シリカヒューム(EFACO社製)、メチルセルロース(信越シリコン製ハイメトローズ90SH30000)、高性能AE減水剤(ポゾリス物産製SP―8N)、PVA系繊維(株式会社クラレ製)を使用した。
セメント 100重量部
7号硅砂 100重量部
シリカヒューム 0.4重量部
メチルセルロース 1.5重量部
高性能AE減水剤 0.75重量部
水 60重量部
なおPVA系繊維は、上記成分からなるプレーンセメントに対して3vol%となるように配合した。
【0052】
これらを、オムニミキサ−(千代田技研製 OM−5)を用いて混合、混練し、これを4cm×4cm×厚さ16cmの型枠に流し込み室温で24時間置いた後に6日間室温で水中養生を行い供試体を製造した。なお硬化体が4cm×4cm×16cmよりも大きい場合には切り出してサイズを整えて性能を評価する。該供試体の靭性係数(I20)をASTM C1108―94に準じて測定した。成形体の靭性係数が高いものほど靭性(耐衝撃性)に優れているといえる。
【0053】
また同供試体を用いて、島津製オ−トグラフを用いてスパン長150mm、載荷速度0.5mm/分の3点曲げ試験を行い、たわみ−曲げ荷重曲線を作成した。
たわみと曲げ荷重が実質的に比例関係にあって、最大のたわみを有する点を第1クラック発生時としてこのときのたわみAと応力Bを曲線から読み取り、また応力Bを呈するたわみ(C)も同様に読み取った。3点以上で応力曲線を作成してA,B,Cを測定しこれらの平均により評価した。また該曲線から最大曲げ荷重をよみとり同様に平均値を求めた。
なお第1クラック発生以降に応力Bを呈するたわみが2点以上ある場合には最も値の大きいものを採用することとする。C/Aが大きいものほと耐震性に優れているといえる。
【0054】
[実施例1]
粘度平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAをDMSOに添加して紡糸原液(PVA濃度18重量%)を調製した。次いで孔径0.2mm、孔数100の円形ノズルより、温度5℃、メタノール/DMSOの重量比が70/30よりなる凝固液に吐出して湿式紡糸した。得られた固化糸篠をメタノール/DMSOの混合重量比95/5よりなる50℃の湿延伸浴で3倍の延伸を施し、次いでメタノールと向流接触させてDMSOを抽出除去した後に乾燥した。さらに230℃で全延伸倍率が10倍になるように熱延伸し、次いで温度235℃で10%の収縮処理を施して繊維を製造した。得られた繊維に酸化ポリエチレン油剤(竹本油脂社製「VOS513」)を0.5重量%/繊維を付与した後に表1に示した長さにカットして補強材を得た。結果を表1に示す。
【0055】
[実施例2]
延伸倍率を14倍、収縮率を7.5%にした以外は実施例1と同様に補強材を得た、結果を表1に示す。
[実施例3]
粘度平均重合度1700、ケン化度99.9モル%のPVA及びホウ酸を水に添加して紡糸原液(PVA濃度16.5重量%,ホウ酸濃度1.8重量%/PVA)を調製した。次いで孔径0.2mm、孔数2000の円形ノズルより、温度40℃、芒硝濃度380g/リットル、かつ水酸化ナトリウム濃度12g/リットルの凝固液に吐出して湿式紡糸した。得られた糸篠をロ−ラ−延伸(延伸倍率2倍)し、ホウ酸濃度が0.4重量%/PVAとなるように水洗し、その後75℃の飽和芒硝浴中で1.5倍の湿熱延伸した後に乾燥し、さらに230℃で全延伸倍率14.5倍となるように熱延伸した。得られた繊維に酸化ポリエチレン油剤(竹本油脂社製「VOS513」)を0.5重量%/繊維を付与した後に表1に示した長さにカットして補強材を得た。結果を表1に示す。
【0056】
[実施例4、5]
粘度平均重合度3300、ケン化度99.9モル%のPVA及びホウ酸を水に添加して紡糸原液(PVA濃度12重量%,ホウ酸濃度1.8重量%/PVA)を調製した。次いで孔径0.2mm、孔数2000の円形ノズルより、温度65℃、芒硝濃度350g/リットル、かつ水酸化ナトリウム濃度12g/リットルの凝固液に吐出して湿式紡糸した。得られた糸篠をロ−ラ−延伸(延伸倍率2倍)し、その後75℃の飽和芒硝浴中で1.5倍の湿熱延伸した後に乾燥し、さらに238℃で全延伸倍率21倍となるように熱延伸した。次いで温度242℃で4.4%の収縮処理を施して繊維を製造した。得られた繊維に酸化ポリエチレン油剤(竹本油脂社製「VOS513」)を0.5重量%/繊維を付与した後に表1に示した長さにカットして補強材を得た。結果を表1に示す。
【0057】
[実施例6]
粘度平均重合度1700、ケン化度99.9モル%のPVAを水に添加して紡糸原液(PVA濃度41重量%)を調製した。次いで孔径0.1mm、孔数2000の円形ノズルより、95℃の空気中へ吐出して絶乾状態まで乾燥した。引き続き243℃の熱風式延伸炉において12倍の熱延伸を行い、次いで温度248℃で3.0%の収縮処理を施して繊維を製造した。得られた繊維に酸化ポリエチレン油剤(竹本油脂社製「VOS513」)を0.5重量%/繊維を付与した後に表1に示した長さにカットして補強材を得た。結果を表1に示す。
【0058】
[実施例7]
繊維に油剤を付与しない以外は実施例6と同様に行った。結果を表1に示す。
[実施例8]
粘度平均重合度1700、ケン化度99.8モル%のPVAをDMSOに添加して紡糸原液(PVA濃度18重量%)を調製した。次いで孔径0.4mm、孔数100の円形ノズルより、温度5℃、メタノール/DMSOの重量比が70/30よりなる凝固液に吐出して湿式紡糸した。得られた固化糸篠をメタノール/DMSOの混合重量比95/5よりなる50℃の湿延伸浴で3倍の延伸を施し、次いでメタノールと向流接触させてDMSOを抽出除去した後に乾燥し、さらに230℃で全延伸倍率が14倍になるように熱延伸し、次いで温度235℃で7.5%の収縮処理を施して繊維を製造した。得られた繊維に酸化ポリエチレン油剤(竹本油脂社製「VOS513」)を0.5重量%/繊維を付与した後に表1に示した長さにカットして補強材を得た。結果を表1に示す。
【0059】
[実施例9、10、比較例1、2]
カット長を変更する以外は実施例2と同様に補強材を得た。比較例1では補強材のアスペクト比が小さすぎるため、また比較例2では補強材のアスペクト比が大きすぎて分散性が低下し、十分な補強効果が得られなかった。結果を表1に示す。
[比較例3]
繊維として株式会社クラレ製「RMU182」を用いた以外は実施例1と同様に行った。繊維径が小さすぎるために混練時にファイバーボールが生じ、しかも屈曲時強力利用率が低すぎるために補強効果は低いものとなった。なお比較例3の引抜抵抗は、補強材とマトリックスとの接着性が高くかつ繊維径が小さく破断しやすいことから、引き抜く前に繊維が破断して測定できなかった。結果を表1に示す。
【0060】
[比較例4]
延伸倍率を14倍、収縮率を0%に変更した以外は実施例1と同様に補強材を得た。伸度及び屈曲時強力利用率が低すぎるために補強効果が十分奏されなかった。結果を表1に示す。
[比較例5]
延伸倍率を13.5倍、収縮率を0%に変更した以外は実施例1と同様に行った。伸度及び屈曲時強力利用率が低すぎるために補強効果が十分奏されなかった。結果を表1に示す。
【0067】
【表1】
【0069】
本発明の補強材は、繊維群a及び繊維群bにおいてともに優れた補強効果を奏するものであり、靭性に優れた成形体が得られた。なかでも、実施例12〜14で得られた成形体は優れた靭性を有するものであった。最大曲げ応力が高い成形体であっても靭性の低い成形体はエネルギー吸収能が低いために衝撃的な応力に対して弱く、また変形許容量が小さいために破壊が一気に進みやすいという問題が生じるが、靭性の高い成形体は応力が加わっても該応力を吸収することから耐衝撃性に優れたものとなる。
また表1に示された実施例(なかでも実施例1〜5)により得られた成形体は、繊維強度が極めて高く、しかも繊維群a及び繊維群bにおいてともに優れた補強効果を奏していることから靭性が高く、しかも第1クラック発生後も補強効果が持続する耐震性に優れたものであり、優れた性能を有するものであった。特に実施例2、実施例4、実施例5においては繊維破断強度が高いために一層優れた効果が奏されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】屈曲時強力利用率の測定に用いられる水硬性成形体の形態及び引張方向を示した模式図。
【図2】混練成形体のたわみ−曲げ荷重曲線の1例を模式的に示した図。
【符号の説明】
1:引張方向
2:繊維補強材
3:水硬性成形体
4:固定部
5:たわみー曲げ応力曲線
6:最大曲げ応力
7:第1クラック発生(A)
8:たわみC
Claims (2)
- 繊度5〜100d、アスペクト比10〜500、破断強度5g/d以上、伸度(A)6〜20%、屈曲時強力利用率(B)35%以上、(B)≧(A)×4のポリビニルアルコール系繊維からなる混練成形水硬性材料補強材。
- 繊度5〜100d、アスペクト比10〜500、破断強度5g/d以上、伸度(A)6〜20%、屈曲時強力利用率(B)35%以上、(B)/(A)≧4のポリビニルアルコール系繊維からなる補強材を水硬性材料に三次元的に均一に分散混練後、成形させてなる水硬性材料からなる混練成形体。
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