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JP4354473B2 - 容量帰還型チョッパ増幅回路 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばCMOS回路で形成され、スイッチドオペアンプと、チョッパ変調器とを用いて構成され、低電圧で動作可能な容量帰還型チョッパ増幅回路に関する。
最近、ミックスドシグナルCMOS技術を使用するセンサチップが生物学的機能の検出及び監視に応用されている(例えば、非特許文献1,2参照。)。低雑音増幅器は、低レベルの信号を検出することからセンサチップにおける最も重要な回路の1つである。しかしながら、スケーリングされるCMOS技術においては、直流オフセット電圧及び低周波(1/f)雑音の増加が重大な問題になる。
オートゼロ動作及びチョッパ安定化は、これらの雑音を低減するために広く使用される技術である(例えば、非特許文献3参照。)。これらの技術の原理を、図13乃至図18に示す。図13は、従来技術に係る雑音軽減技術の原理の1つであるオートゼロ動作回路を含むオペアンプ増幅回路の構成を示す回路図であり、図14は図13のオペアンプ増幅回路でオフセットキャンセレーションのために用いる制御信号φ1,φ2を示すタイミングチャートである。
図13において、オートゼロ動作回路を含むオペアンプ増幅回路は、差動型オペアンプ50と、オートゼロ動作回路を形成するためのオペアンプ51、サンプルホールド回路52及び加算器53と、ゼロ入力における直流オフセットVoff及び1/f雑音Vfnを等価的に考慮するための加算器54と、オフセットキャンセレーションのために制御信号φ1,φ2により動作する4個のスイッチ55乃至58とを備えて構成される。
図14において、制御信号φ2はオフセットキャンセレーション期間のみハイレベルになり、オフセットキャンセレーション期間の終了後、制御信号φ1がローレベルからハイレベルになる。オートゼロ動作技術では、ゼロ入力における直流オフセットVoff及び1/f雑音Vfn等の雑音をサンプリングし、次いで、入力信号から、フィードバックに起因する雑音効果を、オペアンプ51、サンプルホールド回路52及び加算器53からなるオートゼロ動作回路により減算する。オートゼロ動作技術は、こうして、当該増幅回路の低周波雑音を低減することができるが、オートゼロ動作の1つの欠点は、サンプリングプロセス固有の広帯域雑音のエイリアシングによって生じるベースバンド雑音フロアの増加にある。
図15は従来技術に係る雑音軽減技術の原理の1つであるチョッパ安定化回路を含むオペアンプであるチョッパ増幅回路の構成を示す回路図であり、図16は図15のオペアンプ増幅回路でチョッパ変調及びチョッパ復調のために用いる制御信号φ1,φ2を示すタイミングチャートである。図16において、制御信号φ1,φ2は所定のチョッパ周波数fcを有し、互いに相補的な制御信号であり、ここで、チョッパ周期Tcはチョッパ周波数fcの逆数である。また、図17は図15のチョッパ増幅回路に入力される入力電圧信号Vin(f)の周波数特性を示す図であり、図18は図15のチョッパ増幅回路のオペアンプ60に入力される入力電圧信号V(f)の周波数特性を示す図であり、図19は図15のチョッパ増幅回路のチョッパ復調器62から出力される出力電圧信号Vout(f)と、低域通過フィルタ63から出力される出力電圧信号との周波数特性を示す図である。
図15において、チョッパ増幅回路は、差動型オペアンプ60と、オペアンプ60の前段に設けられ4個のスイッチ71乃至74からなるチョッパ変調器61と、オペアンプ60の前段に設けられ直流オフセットVoff及び1/f雑音Vfnを等価的に考慮するための加算器64と、オペアンプ60の後段に設けられ4個のスイッチ81乃至84からなるチョッパ復調器62と、その後段であって最終段に挿入され所望の入力信号を抽出する低域通過フィルタ63とを備えて構成される。変調技術を基礎とするチョッパ安定化は、図17の周波数スペクトルを有する入力信号の周波数範囲をチョッパ変調器61により、より高い周波数範囲に周波数変換することによりチョッパ変調信号を得る(図18参照。)。なお、オペアンプ60の前段で、当該チョッパ変調信号に直流オフセットVoff及び1/f雑音Vfnが加算される。当該チョッパ変調信号はオペアンプ60により増幅された後、チョッパ復調器62によりチョッパ復調されかつ低域通過フィルタ63により元のベースバンド信号である入力信号を得る(図19参照。)。なお、1/f雑音Vfnのレベルは熱雑音のレベルより低い。当該チョッパ増幅回路において、チョッピング周波数fcを用いたチョッパ変調により、低周波雑音に起因した大きなエネルギーが発生するが、チョッパ安定化技術で用いる低域通過フィルタ63により、よりクリーンな出力信号を得ることができる。
オートゼロ動作技術及びチョッパ安定化技術の併用は、オートゼロ動作が直流オフセットを除去しかつチョッパ安定化がベースバンド雑音を低減することから、ベースバンドの雑音フロア及びチョッパ周波数における変調雑音の低減に寄与する(例えば、非特許文献4参照。)。
低電圧で動作する低雑音増幅器には両技術が必要であるが、これらは通常のアナログスイッチでは実施が困難である。理由は、アナログスイッチが低電源電圧で中間の電圧レベルを送信できないことにある。このアナログスイッチ問題を解決するために、クロック信号ブースト技術(例えば、非特許文献5参照。)及びスイッチドオペアンプ技術(例えば、非特許文献6参照。)が開発されている。以下、上記の理由について図20及び図21を参照して詳述する。
図20は従来技術に係るCMOSアナログスイッチ回路の構成を示す回路図であり、図21は図20のCMOSアナログスイッチ回路の動作を示す、入力電圧Vinに対する各MOSFETP101,N101のコンダクタンスGp,Gnを示すグラフである。図20のCMOSアナログスイッチを構成しているNチャンネルMOSFETN101及びPチャンネルMOSFETP101は、電源電圧源Vddを例えば1Vに低下させるとオン時でも入力電圧がVdd/2付近でコンダクタンスGp,Gnが低下し、当該アナログスイッチはオンしなくなる。このような条件では、アナログスイッチを使用するA/D変換器、D/A変換器及び直流増幅回路などの電子回路の実現が困難になるという問題点があった。
すなわち、近年の微細化されたCMOSプロセスでは、デバイスのスケーリング則に従って、電源電圧Vddの低電圧化が進んでいるが、CMOSデバイスのしきい値電圧Vthは大規模デジタル回路の待機時消費電力を低減するために低電圧化されない。例えば電源電圧Vdd=1.0V、しきい値電圧Vth=0.5VのCMOSプロセスでは、入力信号が中間電位のときにフローティングのアナログスイッチがオフ状態となり、信号経路を切り換えるチョッパ回路を実現できない(図20及び図21参照。)。低電源電圧下でもアナログスイッチを実現するには、トランジスタのゲート電圧を昇圧するブートストラップ技術及びアナログ回路用低しきい値電圧デバイスがある。しかしながら、前者では、通常のデバイスの耐圧より高い耐圧のデバイスが必要であり、プロセスの複雑化、信頼性の低下、回路面積の増加という問題点があった。また、後者においても、リーク電流の増加、信頼性の低下という問題点があった。
以上の問題点を解決するために、従来技術に比較して回路構成が簡単であって、しかも高い信頼性を有し、低電圧で動作可能なチョッパ増幅回路が非特許文献8において開示されている。
図22は従来技術に係るチョッパ増幅回路の構成を示すブロック図であり、図23は図22のチョッパ増幅回路で用いる制御信号φ0,φ1,φ2を示すタイミングチャートである。この従来技術に係るチョッパ増幅回路は、低電源電圧で動作するオートゼロ動作及びチョッパ安定化を基礎とする低雑音増幅器である。チョッパ安定化の低電圧動作では、入力電圧レベルが不確定であるために、従来技術に係るチョッパ変調器61やチョッパ復調器62をフローティング型アナログスイッチで実施することはできない。この問題点を解決するために、図22に示すように、負のフィードバックを有するスイッチドオペアンプ3を使用することを特徴としている。
図22において、従来技術に係るチョッパ増幅回路は、チョッパ変調器1と、加算器2と、チョッパ復調器4を最終段に備えるスイッチドオペアンプ3と、負のフィードバック回路のためのチョッパ変調器5と、低域通過フィルタ6と、入力端子T1と、中間出力端子T2と、出力端子T3と、カップリング用キャパシタC1と、負のフィードバック回路用キャパシタC2と、オートゼロ動作のためのスイッチ7及び端子T4とを備えて構成される。図23において、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時において(好ましくは、1乃至5μsecの期間であって、1Hz以下の周期で実行される。)、スイッチ7をオンする期間を示す制御信号φ0、並びに、チョッパ変調及び復調のための制御信号φ1はともにハイレベルになる一方、制御信号φ1の相補信号である制御信号φ2はローレベルになる。次いで、チョッパ増幅期間においては、制御信号φ0はローレベルを保持し、制御信号φ1は繰り返し矩形パルス信号となり、制御信号φ2は制御信号φ1の相補信号である繰り返し矩形パルス信号となる。
図22において、入力端子T1に入力される直流信号又は低周波信号である入力信号Vinは、カップリング用キャパシタC1を介して乗算器であるチョッパ変調器1に入力され、チョッパ変調器1は、上記入力信号Vinと制御信号φ1(又はφ2)とを乗算し、乗算結果であるチョッパ変調信号を加算器2に出力する。加算器2は、上記チョッパ変調信号から、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時においてスイッチ7及び端子T4を介して戻されるオートゼロ動作用オフセット信号を減算し、また、チョッパ増幅期間において、上記チョッパ変調信号から、負のフィードバック回路のチョッパ変調器5からのチョッパ変調信号を減算した後、減算結果の信号をスイッチドオペアンプ3に出力する。
スイッチドオペアンプ3は、入力段と、位相補償付き増幅段と、オートゼロ動作用出力段と、最終段であってチョッパ復調を行うチョッパ復調器4とを備えて構成される。スイッチドオペアンプ3は、入力される信号を位相補償しながら増幅した後、制御信号φ1(又はφ2)に従ってチョッパ復調し、チョッパ復調後の出力信号Voutを中間出力端子T2を介して低域通過フィルタ6に出力するとともに、フィードバック回路用キャパシタC2を介してチョッパ変調器5に出力する。ここで、キャパシタC2は、オートゼロ動作時において、チョッパ復調器4の出力端子における直流オフセット電圧を蓄積保持し、これにより、オートゼロ動作後のチョッパ増幅期間において、スイッチドオペアンプ3の入力端子のオフセット電圧を、上記キャパシタC2により蓄積保持された直流オフセット電圧により相殺する。また、スイッチドオペアンプ3のオートゼロ動作用出力段からの出力信号は、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時のみオンとなるスイッチ7及び端子T4を介して、オートゼロ動作信号Vazとして加算器2にフィードバックされる。上記チョッパ変調器5は、キャパシタC2からのフィードバック信号を、制御信号φ1(又はφ2)に従ってチョッパ変調した後、加算器2に出力する。さらに、低域通過フィルタ6は、中間出力端子T2を介して入力される出力信号Voutを、所望の入力信号の周波数成分のみを低域通過ろ波するように通過させ、低域通過ろ波後の出力信号を、増幅された入力信号として端子T3に出力する。
K. D. Wise, "Wireless implantable Microsystems: Coming breakthroughs in health care", Symposium on VLSI Circuits Digest of Technical Papers, pp.106-109, June 2002. T. Yoshida et al., "A design of neural signal sensing LSI with multi-input-channels", IEICE Transactions Fundamentals, Vol. E87-A, No. 2, pp.376-383, February 2004. C. C. ENZ et al., "Circuit Techniques for Reducing the Effects of Op-Amp Imperfections: Autozeroing, Correlated Double Sampling, and Chopper Stabilization", Proceedings of The IEEE, Vol. 84, No. 11, pp.1584-1614, November 1996. A. T. K. Tang, "A 3mV-Offset Operational Amplifier with 20μV/√(Hz) Input Noise PSD at DC Employing both Chopping and Autozeroing", ISSCC Digest of Technical Papers, pp.386-387, February 2002. A. M. Abo et al., "A 1.5-V, 10-bit, 14.3-MS/s CMOS pipeline analog-to-digital converter", Journal of Solid State Circuits, Vol.34, No. 5, pp.599-606, May 1999. V. Cheung et al., "A 1V CMOS Switched-Opamp Switched-Capacitor Pseudo-2-Path Filter", ISSCC Digest of Technical Papers, pp.154-155, February 2000. Q. Huang, C. Menolfi, "A 200nV offset 6.5nV/√(Hz) Noise PSD 5.6kHz Chopper Instrumentation Amplifier in 1μm Digital CMOS", ISSCC Digest of Technical Papers, pp.362-363, February 2001. J. F. Duque-Carrillo et al., "1-V Rail-to-Rail Operational Amplifiers in Standard CMOS Technology", Journal of Solid State Circuits, Vol.35, No. 1, pp.33-44, January 2000. T. Yoshida, "A 1V Supply 50nV/√Hz Noise PSD CMOS Amplifier Using Noise Reduction Technique of Autozeroing and Chopper Stabilization", Symposium on VLSI, pp.118-121, 2005.
しかしながら、非特許文献8において開示された従来技術に係るチョッパ増幅回路では、オペアンプのDCオフセット電圧をキャパシタC1,C2に保持するため、リークによる保持電圧の減少を低減するには容量値を大きくする必要があり、レイアウト面積が増大する問題点があった。また、全差動オペアンプの1対の仮想接地点の間にオペアンプのDCオフセット電圧が存在するため、チョッパ変調回路のオン抵抗や、クロックフィードスルーのミスマッチ(すなわち、ゲートスイッチをオン/オフする場合、ゲートに印加される電圧が出力側にノイズを発生すること)が発生する問題点があった。
本発明の目的は以上の問題点を解決し、スイッチドオペアンプを備えた従来技術に係る容量帰還型チョッパ増幅回路においてオペアンプの動作点を容易に設定することができ、しかもオートゼロ動作によってオフセット電圧を適切に相殺して補償できる容量帰還型チョッパ増幅回路を提供することにある。
本発明に係る容量帰還型チョッパ増幅回路は、
入力端子及び第1と第2の出力端子を有する増幅手段であって、上記増幅手段の第1の出力端子から出力される出力信号を、第1のキャパシタを含む容量帰還回路とその帰還点を介して上記入力端子に帰還するように接続された容量帰還回路を備え、上記入力端子に入力される信号を増幅して上記第1の出力端子から出力する増幅手段と、
増幅期間の前のオートゼロ動作期間において、上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧を上記増幅手段の入力端子に入力してオートゼロ動作を実行することにより、上記増幅手段をボルテージフォロワ回路で構成する第1のスイッチ手段と、
上記増幅期間において、入力信号を所定の制御信号に従ってチョッパ変調してチョッパ変調信号を上記容量帰還回路の帰還点を介して上記増幅手段の入力端子に出力する第1のチョッパ変調手段と、
上記増幅手段の終段に設けられ、増幅されたチョッパ変調信号を上記制御信号に従ってチョッパ復調して復調された出力信号を上記第1の出力端子から出力するチョッパ復調手段と、
上記容量帰還回路に挿入され、上記チョッパ復調手段から出力される復調された出力信号を、上記制御信号に従ってチョッパ変調してチョッパ変調信号を上記容量帰還回路とその帰還点を介して上記増幅手段の入力端子に出力する第2のチョッパ変調手段と、
上記増幅手段の第1の出力端子から出力される出力信号から、上記入力信号の周波数帯域を低域通過ろ波することにより、増幅された入力信号を通過させて出力する低域通過フィルタ手段とを備えた容量帰還型チョッパ増幅回路において、
上記オートゼロ動作期間において、上記容量帰還回路の帰還点を接地する第2のスイッチ手段と、
上記容量帰還回路の帰還点と上記増幅手段の入力端子との間に挿入され、上記オートゼロ動作期間において、上記増幅手段の第1の出力端子のオフセット電圧に対応する、上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧を上記第1のスイッチ手段を介して蓄積保持した後、上記オートゼロ動作期間後の増幅期間において、上記増幅手段の入力端子のオフセット電圧を、上記蓄積保持された電圧により相殺する第2のキャパシタとを備えたことを特徴とする。
記帰還型増幅回路において、上記容量帰還型チョッパ増幅回路全差動型で構成され、上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧に基づいて、上記増幅手段の第1の出力端子からの出力信号レベルがコモンモードで所定の基準値になるように、上記増幅手段の入力端子へのフィードバック信号を発生するコモンモードフィードバック回路をさらに備えたことを特徴とする。
本発明に係る容量帰還型チョッパ増幅回路によれば、従来技術に係る容量帰還型チョッパ増幅回路において、上記オートゼロ動作期間において、上記容量帰還回路の帰還点を接地する第2のスイッチ手段と、上記容量帰還回路の帰還点と上記増幅手段の入力端子との間に挿入され、上記オートゼロ動作期間において、上記増幅手段の第1の出力端子のオフセット電圧に対応する、上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧を上記第1のスイッチ手段を介して蓄積保持した後、上記オートゼロ動作期間後の増幅期間において、上記増幅手段の入力端子のオフセット電圧を、上記蓄積保持された電圧により相殺する第2のキャパシタを備える。従って、上記第2のキャパシタより直流を阻止でき、ボルテージフォロワ回路で構成した上記増幅手段の動作点を自由に設定することができ、しかもオートゼロ動作期間において増幅手段の入力端でのDCオフセット電圧をキャンセルすることができる。リーク電流によるDCオフセット電圧の減少は上記第2のキャパシタみで補償できるため、帰還回路の第1のキャパシタ依存しない設計ができる。さらに、オートゼロ期間中は容量帰還回路の仮想接地点(上記帰還点)の電圧は上記第2のスイッチ手段により接地されるために、オン抵抗やクロックフィードスルーのミスマッチは発生しない。従って、上記増幅手段のDCオフセット電圧の影響を除去することができる。
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の各実施形態において、同様の構成要素については同一の符号を付している。
第1の実施形態.
図1は本発明の第1の実施形態に係るチョッパ増幅回路の構成を示すブロック図であり、図2は図1のチョッパ増幅回路で用いる制御信号φ0,φ1,φ2を示すタイミングチャートである。第1の実施形態に係るチョッパ増幅回路は、図22の従来技術に係るチョッパ増幅回路に比較して、以下のように構成したことを特徴としている。
(a)加算器2とスイッチドオペアンプ3の入力端子との間に、直流を阻止しかつリーク電流によるDCオフセット電圧の減少を補償するためのキャパシタC3と、オートゼロ動作信号Vazを帰還するための加算器2aとを挿入した。
(b)制御信号φ0がハイレベルとなるオートゼロ動作期間において、キャパシタC1の両端及び出力信号端である出力端子T2を接地するスイッチ8a,8b,9を備えたこと。
図1において、第1の実施形態に係るチョッパ増幅回路は、チョッパ変調器1と、加算器2,2aと、チョッパ復調器4を最終段に備えるスイッチドオペアンプ3と、負のフィードバック回路のためのチョッパ変調器5と、低域通過フィルタ6と、入力端子T1と、中間出力端子T2と、出力端子T3と、カップリング用キャパシタC1と、負のフィードバック回路用キャパシタC2と、上述のキャパシタC3と、オートゼロ動作のためのスイッチ7及び端子T4とを備えて構成される。図1において、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時において(好ましくは、1乃至5μsecの期間であって、1Hz以下の周期で繰り返し実行される。)、スイッチ7をオンする期間を示す制御信号φ0、並びに、チョッパ変調及び復調のための制御信号φ1はともにハイレベルになる一方、制御信号φ1の相補信号である制御信号φ2はローレベルになる。次いで、チョッパ増幅期間においては、制御信号φ0はローレベルを保持し、制御信号φ1は繰り返し矩形パルス信号となり、制御信号φ2は制御信号φ1の相補信号である繰り返し矩形パルス信号となる。なお、本実施形態においては、チョッパ変調器1,5及びチョッパ復調器4に対しては、制御信号φ1又はφ2のいずれかをチョッパ制御信号として用いればよい。
図1において、入力端子T1に入力される直流信号又は低周波信号である入力信号Vinは、カップリング用キャパシタC1を介して乗算器であるチョッパ変調器1に入力され、チョッパ変調器1は、上記入力信号Vinと制御信号φ1(又はφ2)とを乗算し、乗算結果であるチョッパ変調信号を加算器2に出力する。加算器2は、チョッパ増幅期間において、上記チョッパ変調信号から、負のフィードバック回路のチョッパ変調器5からのチョッパ変調信号を減算した後、キャパシタC3を介して加算器2aに出力する。加算器2aは入力されるチョッパ変調信号から、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時においてスイッチ7及び端子T4を介して戻されるオートゼロ動作用オフセット信号を減算し、減算結果の信号をスイッチドオペアンプ3の入力端子に出力する。
スイッチドオペアンプ3は、入力段と、位相補償付き増幅段と、オートゼロ動作用出力段と、最終段であってチョッパ復調を行うチョッパ復調器4とを備えて構成される。スイッチドオペアンプ3は、入力される信号を位相補償しながら増幅した後、制御信号φ1(又はφ2)に従ってチョッパ復調し、チョッパ復調後の出力信号Voutを中間出力端子T2を介して低域通過フィルタ6に出力するとともに、フィードバック回路用キャパシタC2を介してチョッパ変調器5に出力する。ここで、キャパシタ3は、オートゼロ動作時において、チョッパ復調器4の出力端子における直流オフセット電圧を蓄積保持し、これにより、オートゼロ動作後のチョッパ増幅期間において、スイッチドオペアンプ3の入力端子のオフセット電圧を、上記キャパシタ3により蓄積保持された直流オフセット電圧により相殺する。また、スイッチドオペアンプ3のオートゼロ動作用出力段からの出力信号は、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時のみオンとなるスイッチ7及び端子T4を介して、オートゼロ動作信号Vazとして加算器2aにフィードバックされる。上記チョッパ変調器5は、キャパシタC2からのフィードバック信号を、制御信号φ1(又はφ2)に従ってチョッパ変調した後、加算器2に出力する。さらに、低域通過フィルタ6は、中間出力端子T2を介して入力される出力信号Voutを、所望の入力信号の周波数成分のみを低域通過ろ波するように通過させ、低域通過ろ波後の出力信号を、増幅された入力信号として端子T3に出力する。なお、チョッパ変調器1,5及びチョッパ復調器4の各スイッチは、図15のスイッチ71乃至74及び81乃至84と同様のスイッチであって、例えばCMOS回路を用いて形成することができる。
以上のように構成された実施形態に係るチョッパ増幅回路によれば、スイッチドオペアンプ3のチョッパ復調器4からの出力信号をチョッパ変調器5によりチョッパ変調した後、スイッチドオペアンプ3の入力端子にフィードバックするように構成したので、回路構成が簡単であって、しかも高い信頼性を有し、低電圧で動作可能なチョッパ増幅回路を提供することができる。さらに、オートゼロ動作回路を備えているので、入力信号に対して直流オフセットを適切に実行でき、低周波雑音を軽減できる。
さらに、本実施形態では、スイッチドオペアンプ3のDCオフセット電圧を独立に保持できるキャパシタC3をスイッチドオペアンプ3の仮想接地点(加算器2とスイッチドオペアンプ3の入力端子との間)に挿入した。制御信号φ0のフェーズ中にオートゼロ動作を行うことで、キャパシタC3により直流を阻止できスイッチドオペアンプ3の動作点(入力端子における動作点)を、ボルテージフォロワ回路で構成したスイッチドオペアンプ3により自由に設定することができ、しかもオートゼロ動作期間においてスイッチドオペアンプ3の入力端でのDCオフセット電圧をキャンセルすることができる。リーク電流によるDCオフセット電圧の減少はキャパシタC3のみで補償できるため、帰還用キャパシタC1,C2に依存しない設計ができる。さらに、制御信号φ0のフェーズ中は帰還ループの仮想接地点(加算器2の接続点)の電圧はスイッチ8bにより接地されているために、チョッパ変調器1,5のオン抵抗やクロックフィードスルーのミスマッチは発生しない。従って、本実施形態に係るチョッパ増幅回路は、仮想接地点にチョッパ変調器1,5を備えたチョッパ増幅回路において、スイッチドオペアンプ3のDCオフセット電圧の影響を除去することができる。
第2の実施形態.
図3は本発明の第2の実施形態に係る全差動型チョッパ増幅回路の構成を示すブロック図である。図3において、第2の実施形態に係るチョッパ増幅回路は、図1の第1の実施形態に係るチョッパ増幅回路を全差動型回路で実現した回路であり、チョッパ変調器11と、チョッパ復調器14を最終段に備える全差動型2入力4出力のスイッチドオペアンプ13と、負のフィードバック回路のためのチョッパ変調器15と、低域通過フィルタ16と、コモンモードフィードバック回路(以下、CMFB回路という。)19と、入力端子T1a,T1bと、中間出力端子T2a,T2bと、出力端子T3a,T3bと、カップリング用キャパシタC1a,C1bと、負のフィードバック回路用キャパシタC2a,C2bと、直流阻止及びオートゼロ動作用キャパシタC3a,C3bと、オートゼロ動作期間接地用トランジスタM11−M18とを備えて構成される。図3において、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時において(好ましくは、1乃至5μsecの期間であって、1Hz以下の周期で繰り返し実行される。)、トランジスタM11−M18をオンして接地する期間を示す制御信号φ0、並びに、チョッパ変調及び復調のための制御信号φ1はともにハイレベルになる一方、制御信号φ1の相補信号でありかつチョッパ変調及び復調のための制御信号φ2はローレベルになる。次いで、チョッパ増幅期間においては、制御信号φ0はローレベルを保持し、制御信号φ1は繰り返し矩形パルス信号となり、制御信号φ2は制御信号φ1の相補信号である繰り返し矩形パルス信号となる。
図3において、入力端子T1aに入力される直流信号又は低周波信号である正側入力信号Vinpは、カップリング用キャパシタC1aを介してチョッパ変調器11に入力される一方、入力端子T1bに入力される直流信号又は低周波信号である負側入力信号Vinnは、カップリング用キャパシタC1bを介してチョッパ変調器11に入力される。チョッパ変調器11は、従来技術と同様に制御信号φ1又はφ2に従ってオン・オフされる4個のスイッチ21乃至24から構成され、入力される差動型入力信号をチョッパ変調した後、チョッパ変調後の正側チョッパ変調信号を、キャパシタC3bを介してスイッチドオペアンプ13の非反転入力端子に出力するとともに、チョッパ変調後の負側チョッパ変調信号を、キャパシタC3aを介してスイッチドオペアンプ13の反転入力端子に出力する。なお、キャパシタC1aの両端はオートゼロ動作期間接地用トランジスタM11,M12を介して接地され、キャパシタC1bの両端はオートゼロ動作期間接地用トランジスタM13,M14を介して接地される。
スイッチドオペアンプ13は、例えば図4に示すように、入力インターフェース回路を構成する入力回路13Aと、位相補償付き増幅回路13Bと、オートゼロ出力回路41と、最終段であってチョッパ復調を行うチョッパ復調器14とを備えて構成される。スイッチドオペアンプ13は、入力される信号を入力回路13Aを介して入力し、位相補償付き増幅回路13Bにより位相補償しながら増幅した後、チョッパ復調器14により制御信号φ1,φ2に従ってチョッパ復調し、チョッパ復調後の正側出力信号Vopを中間出力端子T2aを介して低域通過フィルタ16に出力するとともに、フィードバック回路用キャパシタC2aを介してチョッパ変調器15に出力し、また、チョッパ復調後の負側出力信号Vonを中間出力端子T2bを介して低域通過フィルタ16に出力するとともに、フィードバック回路用キャパシタC2bを介してチョッパ変調器15に出力する。ここで、チョッパ復調器14は、図15のチョッパ復調器62と同様に、制御信号φ1,φ2に従ってオン・オフされる4個のスイッチから構成される。また、キャパシタCa,Cbは、オートゼロ動作時において、チョッパ復調器14の出力端子における直流オフセット電圧を蓄積保持し、これにより、オートゼロ動作後のチョッパ増幅期間において、スイッチドオペアンプ13の入力端子のオフセット電圧を、上記キャパシタ3a,C3bにより蓄積保持された直流オフセット電圧により相殺する。また、チョッパ復調器14は、例えばAB級で動作するCMOSバッファ出力回路におけるNMOSスイッチを制御信号φ1、φ2に従って、入力信号をスイッチングすることによりチョッパ復調機能を実現することができる。
また、スイッチドオペアンプ13のオートゼロ動作用出力段から、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時のみオンとなるスイッチ用トランジスタM15を介して出力される正側出力信号はオートゼロ動作信号Vazpとしてスイッチドオペアンプ13の反転入力端子にフィードバックされる。また、スイッチドオペアンプ13のオートゼロ動作用出力段から、オートゼロ動作期間であるオフセットサンプリング時のみオンとなるスイッチ用トランジスタM16を介して出力される負側出力信号はオートゼロ動作信号Vaznとしてスイッチドオペアンプ13の非反転入力端子にフィードバックされる。
さらに、上記チョッパ変調器15は、従来技術と同様に制御信号φ1又はφ2に従ってオン・オフされる4個のスイッチ31乃至34から構成され、入力される差動型入力信号をチョッパ変調してキャパシタC3a,C3bの各入力端にフィードバックする。すなわち、チョッパ変調器15は、チョッパ変調後の正側チョッパ変調信号を、スイッチドオペアンプ13の反転入力端子側のキャパシタC3bに出力するとともに、チョッパ変調後の負側チョッパ変調信号を、スイッチドオペアンプ13の非反転入力端子側のキャパシタC3aに出力する。さらに、低域通過フィルタ16は、中間出力端子T2a,T2bを介して出力される差動型出力信号Vop,Vonを、所望の入力信号の周波数成分のみを低域通過ろ波するように通過させ、低域通過ろ波後の出力信号を、増幅された入力信号として端子T3a,T3bに出力する。
さらに、CMFB回路19aは、スイッチドオペアンプ13のチョッパ変調器15から出力される2つの差動型出力信号Vop,Von及び所定の基準電圧Vrefに基づいて、前者の差信号の所定の長期間平均値が上記基準電圧Vrefとなるようにフィードバック信号を発生してスイッチドオペアンプ13の中間段のIcmb端子(図4参照。)に電流源制御でフィードバックすることにより、コモンモードフィードバックを行う。また、CMFB回路19bは、1対のオートゼロ出力信号Vazp,Vazn及び基準電圧Vrefに基づいて、前者の差信号の所定の長期間平均値が上記基準電圧Vrefとなるようにフィードバック信号を発生してスイッチドオペアンプ13の中間段のIcmb端子(図4参照。)に電流源制御でフィードバックすることにより、コモンモードフィードバックを行う。
なお、チョッパ変調器11,15及びチョッパ復調器14の各スイッチは、図15のスイッチ71乃至74及び81乃至84と同様のスイッチであって、例えばCMOS回路のNMOS電界効果トランジスタを用いて形成することができる。
図4は図3のスイッチドオペアンプ13と、オートゼロ出力回路41と、チョッパ復調器14とを含む主要部回路を示す回路図である。当該主要部回路は、図4に示すように、入力インターフェース回路を構成する入力回路13Aと、位相補償付き増幅回路13Bと、オートゼロ出力回路41と、最終段であってチョッパ復調を行うチョッパ復調器14とを備えて、p型MOSFETとn型MOSFETとの多数組の組み合わせであるCMOS回路、並びに位相補償用の抵抗及びキャパシタで構成される。図4の図上おおむね左側は正側信号を処理する回路であり、図4の図上おおむね右側は負側信号を処理する回路である。
以上説明したように、本実施形態に係る全差動型チョッパ増幅回路によれば、フローティングのアナログスイッチ(n型MOSFETで構成される。)を用いて、チョッパ増幅回路を構成するために、入力部のチョッパ変調器15をフィードバックループ回路内に構成し、仮想接地点の入力電圧Vvp,Vvnを接地電位Vss付近(例えば、0.25V)に設定した。信号振幅の大きい出力回路のチョッパ復調器14は、アナログスイッチで構成できないため、多出力スイッチドオペアンプ13の出力を切り替えることで実現した。以上の構成により、一般的なアナログスイッチを使用できない低電源電圧において、1/f雑音や直流オフセット電圧を低減するチョッパ増幅回路を実現できる。また、本実施形態に係るチョッパ増幅回路では、多出力スイッチドオペアンプ13の出力端子を入力端子に接続したボルテージフォロワ構成とし、直流オフセット電圧をキャパシタCa,Cbに保持することで、オートゼロ動作も実現できる。
以上のように構成された第2の実施形態に係るチョッパ増幅回路によれば、スイッチドオペアンプ13のチョッパ復調器14からの出力信号をチョッパ変調器15によりチョッパ変調した後、スイッチドオペアンプ13の入力端子にフィードバックするように構成したので、従来技術に比較して回路構成が簡単であって、しかも高い信頼性を有し、低電圧で動作可能なチョッパ増幅回路を提供することができる。さらに、オートゼロ動作回路を備えているので、入力信号に対して直流オフセットを適切に実行でき、低周波雑音を軽減できる。
さらに、本実施形態では、スイッチドオペアンプ13のDCオフセット電圧を独立に保持できるキャパシタC3a,C3bをスイッチドオペアンプ13の仮想接地点(Vvp,Vvn)に挿入した。制御信号φ0のフェーズ中にオートゼロ動作を行うことで、キャパシタC3a,C3bにより直流を阻止できスイッチドオペアンプ13の動作点(Vgip,Vgin)を、ボルテージフォロワ回路で構成したスイッチドオペアンプ13により自由に設定することができ、しかもオートゼロ動作期間においてスイッチドオペアンプ13の入力端でのDCオフセット電圧をキャンセルすることができる。リーク電流によるDCオフセット電圧の減少はキャパシタC3a,C3bのみで補償できるため、帰還用キャパシタC1a,C1b,C2a,C2bに依存しない設計ができる。さらに、制御信号φ0のフェーズ中は帰還ループの仮想接地点(Vvp,Vvn)は接地されているために、チョッパ変調器11,15のオン抵抗やクロックフィードスルーのミスマッチは発生しない。従って、本実施形態に係るチョッパ増幅回路は,仮想接地点(Vvp,Vvn)にチョッパ変調器11,15を備えたチョッパ増幅回路において、スイッチドオペアンプ13のDCオフセット電圧の影響を除去することができる。
次いで、図3の低電圧動作低雑音増幅回路に係る実施例について以下に説明する。
低雑音増幅回路を設計する場合、オートゼロ技術とチョッパ安定化技術の併用は大変有効である(例えば、非特許文献9参照。)。本実施例では両技術を併用し、通常の0.18μmCMOS技術(図21のしきい値Vthna=0.42V,Vthp=0.5V)を用いて、低電源電圧化の限界値を追求し、0.6Vで動作可能な低雑音増幅回路を設計した。その回路は図3に示すように容量帰還構成とし、多出力スイッチドオペアンプ13を利用することでオートゼロ技術の導入を可能とした。制御信号φ0のフェーズで出力側チョッパ復調器14の動作を停止する。このとき、スイッチドオペアンプ13をボルテージフォロア構成とし(出力電圧Vop1,Von1で動作)、オフセット電圧を検出する。検出したオフセット電圧はキャパシタ3a,C3bに蓄積し、制御信号φ1及びφ2のフェーズ中(増幅動作時)で入力信号から蓄積したオフセット電圧を差し引き素子の相対ばらつきを補償する。また、チョッパ安定化技術は3つのチョッパ変調器等11,14,15を制御することで実現している。まず、入力側チョッパ変調器15を仮想接地点(Vvp,Vvn)に配置する。仮想接地点(Vvp,Vvn)での信号振幅は微小であるので、そのDCレベルを十分低い値に設定することで、低電源電圧においてもチョッパ変調器15を非フローティングアナログスイッチで実現できる。出力側チョッパ復調器14には、大振幅動作フローティングアナログスイッチが必要となるので、出力側チョッパ復調器14は多出力スイッチドオペアンプ13の出力部で構成する。
全差動型多出力スイッチドオペアンプ13を用いた増幅回路を低電圧で増幅回路を設計する場合、十分なオーバードライブ電圧Vovが確保できず電圧利得が低くなる。そのため、全差動型多出力スイッチドオペアンプ13を3ステージ構成とした。低電圧化を律則する初段回路は入力部をp型MOSFETで構成し、オーバードライブ電圧Vovを50mVとして設計した。50mVは素子の絶対ばらつきを考慮しMOSFETが常に飽和領域で動作できる最低値であり、オーバードライブ電圧Vovを50mVにすることで電源電圧の最低値は0.6Vと決まる。利得を得るための2段目には位相補償用のRC回路で帰還をかけている。最終段の回路はn型MOSFET及びp型MOSFETを個別にバイアスし、AB級バッファとグランデッドスイッチで構成する。出力のコモンモードレベルは電流型コモンモードフィードバックを端子Icmpに帰還して300mVに自動制御する。
以上のように構成されたチョッパ増幅回路においては、スイッチドオペアンプ13の入力段回路は、供給電圧の低下を制限する。また、スイッチドオペアンプ13は、その入力が仮想接地点であることから広範な入力電圧範囲を必要としない。入力されるコモンモード電圧は0Vに設定され、仮想接地電位は、オーバードライブ電圧0.05Vを設定して0.55Vに決定される。電源電圧は次式のごとく0.6Vまで低減することができる。
[数1]
Vin+Vgs(M2,M3)+Vds(M1)=0.6V (1)
ここで、入力電圧範囲は、ほぼ0に設定する必要がある。出力段の回路はAB級で動作し、電圧範囲は次式で表される。
[数2]
Vss+0.05(V)<出力電圧範囲<Vdd−0.05(V) (2)
第3の実施形態.
図5は本発明の第3の実施形態に係る帰還型増幅回路の構成を示すブロック図であり、図6は図5の帰還型増幅回路で用いる制御信号φ0を示すタイミングチャートである。図5の帰還型増幅回路は、図3のチョッパ増幅回路を一般的な帰還型増幅回路に適用した一例であり、図3において、チョッパ変調器11,15及びチョッパ復調器14を削除したことを特徴としている。当該帰還型増幅回路においては、図6に示すように、所定の周期で繰り返されるオフセットサンプリング期間の後に、信号の増幅を実行する。この帰還型増幅回路によれば、全差動型スイッチドオペアンプ13の仮想接地点(Vvp,Vvn)にオートゼロ用キャパシタC3を挿入することで、スイッチドオペアンプ13の動作点(Vgip,Vgin)を自由に設定でき、かつオートゼロ動作によって全差動型スイッチドオペアンプ13のDCオフセット電圧を補償できる。
図24は図5の帰還型増幅回路の変形例に係る帰還型増幅回路の構成を示すブロック図である。図24の帰還型増幅回路は、図5の帰還型増幅回路に比較して、全差動型スイッチドオペアンプ13の仮想接地点(Vvp,Vvn)において、スイッチドキャパシタを構成するためのアナログスイッチ回路11Aをさらに備えたことを特徴としている。ここで、アナログスイッチ回路11Aは、例えばNMOSトランジスタでそれぞれ構成され、制御信号φ1に従ってオン・オフするスイッチ21,22を含む。スイッチ21,22はオートゼロ動作期間においてオンとなり、増幅期間において所定の周期でオン・オフを繰り返す。これにより、スイッチドキャパシタ帰還型増幅回路を構成できる。
図7はICチップ上に形成された図3のチョッパ増幅回路の上表面の顕微鏡写真である。また、図8は図3のチョッパ増幅回路において、チョッピング無しでかつオートゼロ動作無しの場合と、チョッピング有りでかつオートゼロ動作有りの場合における、出力電圧波形を示す図であり、図9は図3のチョッパ増幅回路で用いたスイッチドオペアンプ単体(チョッピング無しかつオートゼロ動作無し)における入力雑音の電力スペクトル密度(PSD)の周波数特性と、1MHzのチョッピング信号を用いて動作するチョッパで安定化されたチョッパ増幅回路(チョッピング有りかつオートゼロ動作有り)における入力雑音の電力スペクトル密度(PSD)の周波数特性とを示す図である。さらに、図10は図3の低雑音チョッパ増幅回路の電圧利得の周波数特性を示す図であり、図11は図3の低雑音チョッパ増幅回路における、正側の電源電圧変動除去比(PSRR+)、負側の電源電圧変動除去比(PSRR−)及び同相信号除去比(CMRR)の周波数特性を示す図である。以下、図7乃至図11について説明する。
本実施例に係る差動型チョッパ増幅回路の試作チップの写真を図7に示す。増幅回路のチップ面積は0.38×0.54mmである。測定結果の図8乃至図11において、図8は100kHz、8mVp−pの正弦波信号を入力した場合の増幅回路の出力波形を示している。オートゼロが素子の相対ばらつきを補償し、オフセット電圧を低減していることが実験で確認できた。オートゼロを行わない場合のオフセット電圧が270mVであるのに対して、オートゼロを行った場合のオフセット電圧は3.3mVと98%の低減を実現した。増幅回路を低電圧化する場合、素子の相対ばらつきはより深刻な問題となり大きなオフセット電圧を生む。また、電圧の低下と共に有効出力レンジも減少するため必ず素子の相対ばらつきを補償する仕組みが必要となる。本実施形態で提案した仮想接地点を利用した、フローティングアナログスイッチを必要としないオートゼロ方式が低電圧で動作する回路に大変有効であることを証明できた。
スイッチドオペアンプ13及び低雑音増幅回路の入力換算雑音を図9に示す。低雑音増幅回路は5μsecのオートゼロ、1MHzでのチョッピングを行った。スイッチドオペアンプ13の入力換算雑音は典型的なフリッカ雑音のスペクトラムを示しており、ノイズスペクトラムは100kHzにおいて1.45μV/√(Hz)、100kHzまでの帯域内入力換算雑音は30.8μVである。それに対して、低雑音増幅回路は100Hzにおいて89nV/√(Hz)、100kHzまでの帯域内入力換算雑音は15.9μVと低周波領域において低雑音な特性を実現しており、49%の低減を実現した。低周波領域における雑音は熱雑音が支配的であり、さらに。低雑音化するためは帯域制限等を行う必要がある。
電圧利得の周波数特性の測定結果を図10に示す。図10から明らかなように、電圧利得32dB、カットオフ周波数1.6MHz、ユニティゲイン周波数13MHzという結果を得た。また、図11はCMRR及びPSRRの測定結果を示しており、1kHzにおいてCMRRは57dB、PSRR+は67dB、PSRR−は71dBを達成した。
従来技術文献に開示された低雑音・低電圧に特化した増幅回路と、本実施形態に係る図3の低電圧動作低雑音増幅回路の仕様を比較し図12にまとめた。これまで、0.6Vで動作する低雑音増幅回路は報告されておらず、他の増幅回路は消費電力も大きい。増幅回路の特性を評価するためFOM(Figure Of Merit;性能係数)を次式のように定義する。Nは雑音電力、Pは消費電力、Sはチップ面積である。提案する低雑音増幅回路は既発表の増幅回路に対し約9倍のFOMを達成した(例えば、非特許文献4、8及び9参照。)。
[数3]
FOM=1/(N×P×S) (3)
以上説明したように、本発明に係る容量帰還型チョッパ増幅回路によれば、従来技術に係る容量帰還型チョッパ増幅回路において、上記オートゼロ動作期間において、上記容量帰還回路の帰還点を接地する第2のスイッチ手段と、上記容量帰還回路の帰還点と上記増幅手段の入力端子との間に挿入され、上記オートゼロ動作期間において、上記増幅手段の第1の出力端子のオフセット電圧に対応する、上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧を上記第1のスイッチ手段を介して蓄積保持した後、上記オートゼロ動作期間後の増幅期間において、上記増幅手段の入力端子のオフセット電圧を、上記蓄積保持された電圧により相殺する第2のキャパシタを備える。従って、上記第2のキャパシタより直流を阻止でき、ボルテージフォロワ回路で構成した上記増幅手段の動作点を自由に設定することができ、しかもオートゼロ動作期間において増幅手段の入力端でのDCオフセット電圧をキャンセルすることができる。リーク電流によるDCオフセット電圧の減少は上記第2のキャパシタみで補償できるため、帰還回路の第1のキャパシタ依存しない設計ができる。さらに、オートゼロ期間中は容量帰還回路の仮想接地点(上記帰還点)の電圧は上記第2のスイッチ手段により接地されるために、オン抵抗やクロックフィードスルーのミスマッチは発生しない。従って、上記増幅手段のDCオフセット電圧の影響を除去することができる。

本発明の第1の実施形態に係るチョッパ増幅回路の構成を示すブロック図である。 図1のチョッパ増幅回路で用いる制御信号φ0,φ1,φ2を示すタイミングチャートである。 本発明の第2の実施形態に係る全差動型チョッパ増幅回路の構成を示すブロック図である。 図3のスイッチドオペアンプ13と、オートゼロ出力回路41と、チョッパ復調器14とを含む主要部回路を示す回路図である。 本発明の第3の実施形態に係る帰還型増幅回路の構成を示すブロック図である。 図5の帰還型増幅回路で用いる制御信号φ0を示すタイミングチャートである。 ICチップ上に形成された図3のチョッパ増幅回路の上表面の顕微鏡写真である。 図3のチョッパ増幅回路において、チョッピング無しでかつオートゼロ動作無しの場合と、チョッピング有りでかつオートゼロ動作有りの場合における、出力電圧波形を示す図である。 図3のチョッパ増幅回路で用いたスイッチドオペアンプ単体(チョッピング無しかつオートゼロ動作無し)における入力雑音の電力スペクトル密度(PSD)の周波数特性と、1MHzのチョッピング信号を用いて動作するチョッパで安定化されたチョッパ増幅回路(チョッピング有りかつオートゼロ動作有り)における入力雑音の電力スペクトル密度(PSD)の周波数特性とを示す図である。 図3の低雑音チョッパ増幅回路の電圧利得の周波数特性を示す図である。 図3の低雑音チョッパ増幅回路における、正側の電源電圧変動除去比(PSRR+)、負側の電源電圧変動除去比(PSRR−)及び同相信号除去比(CMRR)の周波数特性を示す図である。 本実施形態と各非特許文献のオペアンプの比較を示す表である。 従来技術に係る雑音軽減技術の原理の1つであるオートゼロ動作回路を含むオペアンプ増幅回路の構成を示す回路図である。 図13のオペアンプ増幅回路でオフセットキャンセレーションのために用いる制御信号φ1,φ2を示すタイミングチャートである。 従来技術に係る雑音軽減技術の原理の1つであるチョッパ安定化回路を含むオペアンプであるチョッパ増幅回路の構成を示す回路図である。 図15のオペアンプ増幅回路でチョッパ変調及びチョッパ復調のために用いる制御信号φ1,φ2を示すタイミングチャートである。 図15のチョッパ増幅回路に入力される入力電圧信号Vin(f)の周波数特性を示す図である。 図15のチョッパ増幅回路のオペアンプ60に入力される入力電圧信号V(f)の周波数特性を示す図である。 図15のチョッパ増幅回路のチョッパ復調器62から出力される出力電圧信号Vout(f)と、低域通過フィルタ63から出力される出力電圧信号との周波数特性を示す図である。 従来技術に係るCMOSアナログスイッチ回路の構成を示す回路図である。 図20のCMOSアナログスイッチ回路の動作を示す、入力電圧Vinに対する各MOSFETP101,N101のコンダクタンスGp,Gnを示すグラフである。 従来技術に係るチョッパ増幅回路の構成を示すブロック図である。 図22のチョッパ増幅回路で用いる制御信号φ0,φ1,φ2を示すタイミングチャートである。 図5の帰還型増幅回路の変形例に係る帰還型増幅回路の構成を示すブロック図である。
符号の説明
1,11…チョッパ変調器、
2,2a…加算器、
3,13…スイッチドオペアンプ、
13A…入力回路、
13B…位相補償付き増幅回路、
4,14…チョッパ復調器、
5,15…チョッパ変調器、
6,16…低域通過フィルタ、
7,8a,8b,9,21,22,23,24,31,32,33,34…スイッチ、
11A…アナログスイッチ回路、
17,18…スイッチ回路、
19,19a,19b…コモンモードフィードバック回路(CMFB回路)、
41…オートゼロ出力回路、
C1,C2,C3,C1a,C1b,C2a,C2b,C3a,C3b…キャパシタ、
T1,T2,T3,T4,T1a,T1b,T2a,T2b,T3a,T3b,T4a,T4b…端子。

Claims (2)

  1. 入力端子及び第1と第2の出力端子を有する増幅手段であって、上記増幅手段の第1の出力端子から出力される出力信号を、第1のキャパシタを含む容量帰還回路とその帰還点を介して上記入力端子に帰還するように接続された容量帰還回路を備え、上記入力端子に入力される信号を増幅して上記第1の出力端子から出力する増幅手段と、
    増幅期間の前のオートゼロ動作期間において、上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧を上記増幅手段の入力端子に入力してオートゼロ動作を実行することにより、上記増幅手段をボルテージフォロワ回路で構成する第1のスイッチ手段と、
    上記増幅期間において、入力信号を所定の制御信号に従ってチョッパ変調してチョッパ変調信号を上記容量帰還回路の帰還点を介して上記増幅手段の入力端子に出力する第1のチョッパ変調手段と、
    上記増幅手段の終段に設けられ、増幅されたチョッパ変調信号を上記制御信号に従ってチョッパ復調して復調された出力信号を上記第1の出力端子から出力するチョッパ復調手段と、
    上記容量帰還回路に挿入され、上記チョッパ復調手段から出力される復調された出力信号を、上記制御信号に従ってチョッパ変調してチョッパ変調信号を上記容量帰還回路とその帰還点を介して上記増幅手段の入力端子に出力する第2のチョッパ変調手段と、
    上記増幅手段の第1の出力端子から出力される出力信号から、上記入力信号の周波数帯域を低域通過ろ波することにより、増幅された入力信号を通過させて出力する低域通過フィルタ手段とを備えた容量帰還型チョッパ増幅回路において、
    上記オートゼロ動作期間において、上記容量帰還回路の帰還点を接地する第2のスイッチ手段と、
    上記容量帰還回路の帰還点と上記増幅手段の入力端子との間に挿入され、上記オートゼロ動作期間において、上記増幅手段の第1の出力端子のオフセット電圧に対応する、上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧を上記第1のスイッチ手段を介して蓄積保持した後、上記オートゼロ動作期間後の増幅期間において、上記増幅手段の入力端子のオフセット電圧を、上記蓄積保持された電圧により相殺する第2のキャパシタとを備えたことを特徴とする容量帰還型チョッパ増幅回路。
  2. 上記容量帰還型チョッパ増幅回路全差動型で構成され、
    上記増幅手段の第2の出力端子から出力される信号電圧に基づいて、上記増幅手段の第1の出力端子からの出力信号レベルがコモンモードで所定の基準値になるように、上記増幅手段の入力端子へのフィードバック信号を発生するコモンモードフィードバック回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の容量帰還型チョッパ増幅回路
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