JP4350884B2 - 熱交換装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、P型素子、N型素子とこれらを接合する電極板とにより構成される熱電素子対を対向する熱交換器間に介在させて成る熱交換装置に係わり、詳しくは、熱交換器に対する熱電素子対の配置及び接合方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、半導体製造ラインにおけるシリコンウェハの洗浄、液晶製造ラインにおけるガラス基板の洗浄等においては、加熱した超純水を利用して上記洗浄を行っている。
【0003】
また、半導体製造ラインにおいて、フォトリソグラフィーにより形成したレジストパターンをマスクとして半導体基板をエッチングし、該エッチングの終了後、有機溶剤を用いてレジストを剥離する場合、この剥離に使用する有機溶剤の温度を80度近くまで加熱している。
【0004】
このように、超純水や有機溶剤等の各種の流体を冷却あるいは加熱して一定温度の流体を得るための素子として、ペルチェ効果を利用して冷却、加熱を行う電子冷熱素子(サーモモジュール)が知られている。
【0005】
サーモモジュールは、N型とP型の半導体素子(熱電素子)を縦及び横方向に交互に複数並べたうえで、隣接する素子同士を上側と下側の接合板(金属電極)で電気的に直列接続となるよう相互に接合したものである。
【0006】
このサーモモジュールに対して、N型からP型の方向に直流電流を流すと、上側の接合板は冷却して周囲から熱を奪い、下側の接合板は発熱して周囲に熱を放出するように動作する。
【0007】
そこで、上述した各種流体を例えば冷却する場合には、サーモモジュールの上側の接合板面に冷却対象の流体(循環水)が通る流路を持つ熱交換器(熱交換板)を当接させる一方、下側の接合板面には放熱水が通る流路を持つ熱交換器(水冷板)を当接させた熱交換ユニットを用意し、このユニット内のサーモモジュールに対して上述した通電制御を行い、この時に冷却される上側の接合板面を介して熱交換板の流路を流れる循環水を目標温度まで冷却する一方、この冷却により奪われた熱を下側の水冷板の流路を流れる放熱水を介して放出させるようにしている。
【0008】
ところで、この種の従来の熱交換ユニットでは、複数の熱電素子対を矩形に並べて予め部品化した矩形モジュールを必要数だけ熱交換板と水冷板の間に介在せしめる構造のものが一般的であった。
【0009】
図9は、従来の熱交換ユニットの水冷板30aに対するサーモモジュールの配置構造を示す図である。図9において、31a,31b,31cは、熱電素子312(P型),313(N型)を複数対配することにより予め部品化された矩形モジュールであり、各々がリード線接続端子(315a,316a)、(315b,316b)、(315c,316c)を有している。また、305,306は水冷板30aと対向する熱交換板30b(図示せず)とを締め付け固定するための締付ボルト用のねじ孔である。
【0010】
かかる従来の熱交換ユニットによれば、各矩形モジュール31a,31b,31c間をリード線により配線するためのスペースを確保したり、水冷板30aと熱交換板30bとを固定する締付ボルト用のねじ孔305,306等を塞がないようにするために、各矩形モジュール31a,31b,31c間を一定距離離間する必要があり、これによって、ユニット全体の構造が大型化せざるを得なかった。
【0011】
また、この種の熱交換ユニットでは、サーモモジュール表面の接合板と、熱交換器(水冷板、熱交換板)とが共に金属製のため、これらの間を電気的に絶縁するための工夫が必要であった。
【0012】
図10は、従来の熱交換ユニットの概念断面構成を示す図である。
【0013】
この熱交換ユニットにおいて、冷却側熱交換器は、冷却対象の循環水を流すことのできるステンレス製のパイプ40bをアルミニューム板401bに鋳込んで構成される。この冷却側熱交換器は、グリス402b、セラミック板403b、半田404bを介してサーモモジュール31(P型半導体素子312,N型半導体素子313、接合板311a及び311bから成る)の上側の接合板311bに接合される。
【0014】
同様に、放熱側熱交換器は、放熱水を流すことのできるステンレス製のパイプ40aをアルミニューム板401aに鋳込んで構成される。この放熱側熱交換器は、グリス402a、セラミック板403a、半田404aを介してサーモモジュール31の下側の接合板311aに接合される。
【0015】
かかる従来の熱交換ユニットの接合構造によれば、サーモモジュール31の表面の接合板(311a,311b)と、放熱側及び冷却側の熱交換器とを電気的に絶縁するために、セラミック板(403a,403b)を用い、かつグリス(402a,402b)または接着剤等により熱交換器に固定していたため、接触熱抵抗が大きく、熱交換効率が低かった。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の熱交換ユニットは、複数の熱電素子対が集まって矩形にまとめられた矩形モジュールを必要数だけ熱交換器間に介在させた構造を有していたため、各モジュール間を一定距離だけ離して配置する必要があり、ユニット全体の大型化を招来するという問題点があった。
【0017】
また、従来の熱交換ユニットでは、サーモモジュールの接合板面と熱交換器間の電気的絶縁のためにセラミック板等の絶縁部材を介挿し、グリスまたは接着剤等により熱交換器に固定していたため、接触熱抵抗が大きく、熱交換効率の低下を来すという問題点があった。
【0018】
本発明は上述の問題点を解消し、矩形モジュールを用いる場合のようなスペースの無駄を極力無くして装置全体の小型化が図れ、しかも熱電素子と熱交換器との間の接触熱抵抗が小さく熱交換効率に優れる熱交換装置を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、P型素子、N型素子とこれらを接合する電極板とにより構成される熱電素子対を対向する水冷板と熱交換板との間に介在させて成る熱交換装置において、
水冷板と熱交換板の外周に形成された締め付け用の外周側貫通孔と、
水冷板と熱交換板の内側に形成された締め付け用の内側貫通孔と、
水冷板と熱交換板との間に介在され、外周側貫通孔を回避するように当該外周側貫通孔の内側側近に配置された外側のOリングと、
水冷板と熱交換板との間に介在され、内側貫通孔を包囲するように配置された内側のOリングと
が設けられ、
外側のOリングの内側でかつ内側のOリングの外側となるエリア内に、熱電素子対が等密度に配置され、
外周側貫通孔と、内側貫通孔を介して水冷板と熱交換板とが締結されてなる
ことを特徴とする。
【0021】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、水冷板と熱交換板は、熱交換対象の流体の流路を有し、該流路は、当該水冷板と熱交換板の伝熱面表面の前記熱電素子対の配置エリアに対応して巡らされ、かつ隣接する流路間で互いに異なる方向に流体を流し得る形状に構成されることを特徴とする。
【0022】
請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、水冷板と熱交換板の伝熱面表面であって、外側のOリングの内側でかつ内側のOリングの外側となるエリアに絶縁性の溶射膜を形成すると共に、
前記絶縁性溶射膜上に、前記電極板のパターンに対応する導電性の溶射膜を形成し、
前記導電性溶射膜と対向する電極板とを半田を介して接合したことを特徴とする。
【0023】
請求項4記載の発明は、上記請求項1記載の発明において、水冷板と熱交換板の伝熱面表面であって、外側のOリングの内側でかつ内側のOリングの外側となるエリアに絶縁性の溶射膜を形成すると共に、
前記絶縁性溶射膜上に、前記電極板のパターンに対応しかつ当該電極板相当の厚みを有する導電性の溶射膜を形成し、
前記導電性溶射膜を前記電極板として代用し、対向する熱電素子に半田を介して接合したことを特徴とする。
【0025】
請求項5記載の発明は、上記請求項3、4記載の発明において、前記絶縁性溶射膜は酸化アルミニュームを溶射して形成され、前記導電性溶射膜は銅を溶射して形成されることを特徴とする。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明に係わる熱交換ユニット100の上面図であり、図2は図1における熱交換ユニット100の右側面図である。
【0028】
図1及び図2に示すように、この熱交換ユニット100は、熱交換器(水冷板)110aと熱交換器(熱交換板)110bとの間にサーモモジュール50と該サーモモジュール50の外周全周を包囲するOリング60とを狭持した構造を有する。
【0029】
熱交換板110bにはボルト貫通孔111b,112b,113b,114b,115b,116b,117b,118b,119bが設けられる。これらボルト貫通孔111b,112b,113b,114b,115b,116b,117b,118b,119bからそれぞれ貫通させた各締付ボルトを対向する水冷板110aに設けられたねじ孔111a,112a,113a,114a,115a,116a,117a,118a,119a(図3参照)にねじ込むことで、水冷板110aと熱交換板110bとを所定の締付力で固定することができる。
【0030】
なお、水冷板110aと熱交換板110bを上述の如く固定するには、他に、締付ボルトとナットを用いて締め付ける方法もある。
【0031】
この締め付け固定により、水冷板110a、熱交換板110b、Oリング60及び後述する内側Oリング61の4者間による気密スペースが形成され、該スペース中にサーモモジュール50が封入されることとなる。
【0032】
サーモモジュール50を気密封入するのは、熱交換ユニット100稼働時の水冷板110a側または熱交換板110b側が雰囲気空気の露点以下に下がった場合に生じた結露が当該モジュール50に流れ込まないように、また、湿った雰囲気がサーモモジュール50の周囲に連続的に浸入しないようにするための対策である。
【0033】
水冷板110a及び熱交換板110bは、それぞれ、銅製のもので、内部に各々放熱水及び循環水を流す流路125a及び125bを持ついわゆるCuジャケット式熱交換器である。
【0034】
水冷板110a及び熱交換板110bの流路125a及び125bの端部には、それぞれ、(流体入口121a,流体出口122a)、(流体入口121b,流体出口122b)が形成される。
【0035】
熱交換板110bの流体入口121b,流体出口122bには、それぞれ、冷却対象の循環水の流入管,流出管が連結され、流入管より流入する循環水は熱交換板110b内の流路125bを通り、流出管より流出される。
【0036】
また、水冷板110aの流体入口121a,流体出口122aには、それぞれ、放熱水の流入管,流出管が連結され、流入管より流入する放熱水は水冷板110a内の流路125aを通り、流出管より流出される。
【0037】
熱交換板110bは、水冷板110aの流体入口121a,流体出口122aへの流入管,流出管の配管スペース分だけ当該水冷板110aからオフセットされた状態に取り付けられている。
【0038】
次に、この熱交換ユニット100における熱電素子の配置構造について図3及び図4を参照して説明する。
【0039】
図3は、図2のA−A線による断面図であり、図4は同B−B線による断面図である。
【0040】
図3及び図4からも分かるように、水冷板110aと熱交換板110bとの間には、外側のOリング60の他、内側のOリング61も介在する。
【0041】
外側のOリング60は、水冷板110aのねじ孔112a,113a,114a,115a,116a,117a,118a,119a、及び熱交換板110bのボルト貫通孔112b,113b,114b,115b,116b,117b,118b,119bの内側ぎりぎりに納まる大きさで、かつこれら各孔を避けるように(塞がないように)要所が蛇行された形状のものから成る。
【0042】
内側のOリング61は熱交換板110bのボルト貫通孔111bより大きな径を持ち、該ボルト貫通孔111b及び水冷板110aのねじ孔111aを同心円状に包囲するように配置される。
【0043】
この外側のOリング60と内側のOリング61との間のエリア内にサーモモジュール50が取り付けられる。
【0044】
サーモモジュール50は、P型熱電素子、N型熱電素子とこれらを接合する電極板とにより構成される熱電素子対を複数備えて成るものであり、具体的には、N型熱電素子とP型熱電素子を縦及び横方向に交互に複数対並べたうえで、隣接する素子同士を上側の接合板(電極板)と下側の接合板とで電気的に直列接続となるよう相互に接合したものである。
【0045】
上側の各接合板と下側の各接合板は、それぞれ、上記熱電素子の配列エリアに対応した平面(以下、上側接合板面、下側接合板面という)を構成する。
【0046】
図3において、水冷板110aの伝熱面表面には、サーモモジュール50の例えば下面側接合板面を構成する複数の接合板501aが上述したOリング60とOリング61との間のエリア全域に等密度で配置されている。
【0047】
具体的には、外側のOリング60との境界付近では、該Oリング60との間に無駄なエリアを極力生じないように、当該Oリング60の蛇行に沿った任意の形(熱交換板110bとの間にサーモモジュール50を固定するためのねじ孔等を避ける形)に配置されている。
【0048】
また、内側のOリング61との境界付近では当該Oリング61を避ける形で接合板501aが配置されている。
【0049】
なお、実際には、水冷板110aの伝熱面表面に、Oリング60とOリング61との間のエリア内にぎりぎり納まる形状の、後で詳しく述べる溶射による絶縁層(アルミナ溶射層511a:図7参照)が形成され、該絶縁層上に上記各接合板501aが配置される。
【0050】
水冷板110aの伝熱面表面に配置される各接合板501aには、1つにつきそれぞれ一対ずつのN型熱電素子502とP型熱電素子503が立設されており、対向する側(上面側)の接合板面の各接合板501bにつながっている。
【0051】
同様に、図4において、熱交換板110bの伝熱面表面には、サーモモジュール50の上面側接合板面を構成する複数の接合板501bがOリング60とOリング61との間のエリア全域に等密度で配置されている。
【0052】
具体的には、外側のOリング60との境界付近では、当該Oリング60との間に無駄なエリアを極力生じないように、当該Oリング60の蛇行に沿った任意の形(水冷板110aとの間にサーモモジュール50を固定するためのボルト貫通孔等を避ける形)に配置され、内側のOリング61との境界付近では当該Oリング61を避ける形で接合板501bが配置されている。
【0053】
ここでも、熱交換板110bの伝熱面表面には、Oリング60とOリング61との間のエリア内にぎりぎり納まる形状の溶射による絶縁層(アルミナ溶射層511b:図7参照)が形成され、該絶縁層上に上記各接合板501bが配置される。
【0054】
そして、熱交換板110bの伝熱面表面に配置される各接合板501bには、1つにつきそれぞれ一対のN型熱電素子502とP型熱電素子503が立設されており、対向する側(下面側)の接合板面の各接合板501aにつながっている。
【0055】
上記構造を有するサーモモジュール50の末端部の2つの接合板501L(リード電極用)には、それぞれ、例えば正電極の電極棒131と負電極の電極棒132が接続される。
【0056】
この電極棒131,132間に直流電流を流すことにより、熱交換板110b側の各接合板501bが冷却され、これにより熱交換板110bが冷やされ、当該熱交換板110b内の流路125bを流れる循環水が冷却される。
【0057】
他方、水冷板110a側の各接合板501aが発熱し、この熱が水冷板110aに伝わり、その中の流路125aを流れる放熱水と熱交換され放熱される。
【0058】
図3及び図4からも分かるように、本発明の熱交換ユニット100では、熱交換器(水冷板110a、熱交換板100b)の伝熱面表面に、接合板501(該接合板501には一対の熱電素子502,503が接続されているため、接合板501を熱電素子502,503と読み替えることもできる)を任意形状エリア内に任意の数だけ等密度で配置している。
【0059】
この配置構造によれば、図9に示す従来の熱交換ユニットでネックとなっていた、既製品の矩形のモジュール間で一定距離を離間させざるを得ないことからくる無駄なスペースを無くすることができる。
【0060】
これにより、同数の熱電素子(熱電素子数によって冷却能力が決まる)を配置する場合のスペースが従来装置に比べて小さくて済み、サーモモジュール50及び熱交換器(水冷板110a,熱交換板110b)を小型化でき、引いては熱交換ユニット100全体の小型化に寄与できる。
【0061】
言い換えれば、本発明に係わる熱交換ユニット100は、外形形状の大きさが同一の場合、部品化された矩形モジュールを複数配置する従来ユニットに比べて、熱交換効率がより高いと言える。
【0062】
この熱交換効率を更に高めるために、本発明に係わる熱交換ユニット100では、上述した熱電素子502,503の配置構造に合わせて水冷板110a、熱交換板110bの流路の形状にも工夫を凝らしている。
【0063】
図5は、本発明に係わる熱交換ユニット100の水冷板110aの流路125aの構造を示す図である。
【0064】
図5からも分かるように、この熱交換ユニット100の水冷板110aでは、流体入口121aから送り込まれる放熱水を流体出口122aに送り出す流路125aが、上述の如く等密度配置された熱電素子502,503をくまなく網羅するように巡らされ、場所によっては大きく蛇行した部分125a−1も設けられる。
【0065】
また、この水冷板110aの流路125aは、基本的に、どの部分においても、隣接する流路(図5では、2本分が1つの流路に当たる)が互いに異なる方向に放熱水を流し得る形状に構成されている。
【0066】
かかる流路構造を有する水冷板110aでは、等密度配置された全ての熱電素子502,503によって、上述した蛇行部分125a−1を含む流路125aの全域で途切れのない熱交換作用が働くことになる。
【0067】
特に、この水冷板110aでは、例えば、流体入口121aから取り込まれた直後の十分に冷却された放熱水に対して、隣接する流路を流れる放熱水つまり流体出口122aへ流出される直前の放熱により加熱された放熱水から熱が与えられ、逆に、流体出口122aへ流出される直前の放熱により加熱された放熱水から、隣接する流路を流れる放熱水つまり流体入口121aから取り込まれた直後の十分に冷却された放熱水によって熱が奪われる。
【0068】
このような熱交換作用(熱相殺作用)が、流路125aの全域で働く結果、水冷板110aの伝熱面表面の温度分布を均一に保つことができ、これにより、熱交換効率を高めることができる。
【0069】
なお、水冷板110aに対向する熱交換板110bにおいても、水冷板110aの流路125aと同等の形状の流路125b(図1の点線で示される部分)が形成される。
【0070】
これにより、熱交換板110bでは、例えば、流体入口121bから取り込まれた直後の十分に冷却されていない循環水に対して、隣接する流路を流れる循環水つまり流体出口122bへ流出される直前の十分に冷却された循環水からの冷却作用が働き、こうした作用が流路125bの全域で働く結果、熱交換板110bの伝熱面表面の温度分布を均一に保ちつつ、冷却効果を高めることができる。
【0071】
ところで、本発明に係わる熱電素子の配置方法は、矩形の熱交換器に限らず、他の様々な形状の熱交換器にも適用できるものである。また、熱交換器の板面の面積により制限されるものでもなく、更には、熱交換器が上下2層のものに限らず、多層のものにも適用できるものである。
【0072】
図6は、本発明の他の実施形態に係わる熱交換ユニット200の水冷板210aの熱電素子配置構造を示す図である。
【0073】
この熱交換ユニット200の水冷板210aは、対向する例えばアルミ製の熱交換プレート210b(冷却対象の半導体ウェハを載せるもの:図示せず)との間にサーモモジュール250を狭持して成るものであり、熱交換プレート210bに合わせて円形の形状を有している。
【0074】
この水冷板210aと熱交換プレート210bとの間に狭持されるサーモモジュール250もまた円形形状を有するものである。
【0075】
具体的に、サーモモジュール250は、水冷板210aより円周の小さい円形エリア内に、水冷板210aと熱交換プレート210b間を締め付け固定するための締付ボルトの貫通孔(図中、221,222等)の位置や、結露対策用のOリングシール(図示せず)の位置を避けるようにして、熱電素子252,253(接合板251上にある)を等密度に配置して成るものである。
【0076】
この熱交換ユニット200では、円形の水冷板210a及び熱交換プレート210bに対して、その内周エリア内に熱電素子252,253を等密度に配置しているため、熱交換プレート210bの表面の温度分布を均一化でき、この上に置かれる半導体ウェハを一定温度に冷却するうえで極めて有用である。
【0077】
次に、本発明に係わる熱交換ユニット100の熱交換器に対する熱電素子の接合方法について説明する。
【0078】
図7は、本発明に係わる熱交換ユニット100の概念断面構成を示す図であり、例えば図1のC−C線による断面図に相当する。
【0079】
図7において、放熱水の流路125aを有する水冷板110aと冷却対象の循環水の流路125bを有する熱交換板110bとはサーモモジュール50を挟んで互いに締め付け固定されている。
【0080】
この締め付け固定は、上述した如く、熱交換板110bのボルト貫通孔(図1及び図4参照)からそれぞれ貫通させた各締付ボルトを対向する水冷板110aに設けられたねじ孔(図3参照)にねじ込むことにより実現できる。また、締付ボルトとナットを用いて締め付け固定する方法もある。
【0081】
サーモモジュール50は、上述したように、N型熱電素子502とP型熱電素子503を縦及び横方向に交互に複数並べたうえで、隣接する素子同士を上側の接合板と下側の接合板とで電気的に直列接続となるよう相互に接合して成るものであって、本発明では、これら各熱電素子502,503が、対向する熱交換器(水冷板110a,熱交換板110b)に対して、それぞれ、図3及び図4に示す態様で配置されている。
【0082】
この対向する熱交換器(水冷板110a,熱交換板110b)のうち、図の下方にある水冷板110aのサーモモジュール50側の上面には酸化アルミニューム(アルミナ)の溶射膜511aが形成される。アルミナ溶射膜511aの上には更に銅(Cu)の溶射膜512が形成される。更に、この銅溶射膜512は半田513を介してサーモモジュール50の下面側の各接合板501bに接合されている。
【0083】
他方、図の上方にある熱交換板110bのサーモモジュール50側の上面には、水冷板110a側と同様のアルミナ溶射膜511bが形成される。このアルミナ溶射膜511bはグリス514を介してサーモモジュール50の上面側の各接合板501bと接合している。
【0084】
この接合構造において、アルミナ溶射膜511bは、熱交換板110b(銅製)とサーモモジュール50の上面側の各接合板501bとの間を電気的に絶縁する作用を果たす。同様に、アルミナ溶射膜511aは、水冷板110a(銅製)とサーモモジュール50の下面側の各接合板501aとの間を電気的に絶縁する作用を果たす。
【0085】
これらアルミナ溶射膜511a,511bは、上記絶縁作用をより増強するために、例えば樹脂素材を含浸させるようにしても良い。
【0086】
また、この接合構造において、サーモモジュール50の上面側の各接合板501bとアルミナ溶射膜511bとの間に介在するグリス514は、水冷板110aと熱交換板110bをサーモモジュール50を挟んで締め付けた際に、上記各接合板501bと熱交換板110b間を摺動自在にするための作用を果たす。
【0087】
この作用は、サーモモジュール50の上面側の冷却作用と下面側の熱交換作用との温度差に起因する熱膨張差を吸収して、サーモモジュール50と熱交換板110b間の接合破壊を防止するためのものである。
【0088】
次に、この接合構造の形成プロセスについて説明する。
【0089】
まず、水冷板110aの伝熱面表面の所定エリアにアルミナ溶射膜511aを形成する。このアルミナ溶射膜511aの形成エリアは、例えば図4におけるOリング60とOリング61との間のエリア全域である。
【0090】
次に、このアルミナ溶射膜511aの上面に所定パターンのマスク部材を介して銅を溶射することにより、銅溶射膜512を形成する。この時のマスク部材のマスキングパターンは例えば図4における接合板501(サーモモジュール50の下面側接合板)の配置に対応するパターンである。
【0091】
次に、上記パターンから成る銅溶射膜512上にそれぞれ半田513を置き、更にその上にサーモモジュール50を下面側の各接合板501aが該当する銅溶射膜512の位置に合うように載置し、この状態を保ったままこれらの全体を所定温度の加熱炉の中に入れて加熱する。
【0092】
これにより、半田513が溶解し、その後、これら全体を加熱炉の中から取り出して冷却すると半田513が固まり、水冷板110aの伝熱面表面にアルミナ溶射膜511a、銅溶射膜512を介して各接合板501aが例えば図4に示す配置パターンで固着、接合される。
【0093】
一方で、熱交換板110bの伝熱面表面にも水冷板110aと同様の方法でアルミナ溶射膜511bを形成する。このアルミナ溶射膜511bの形成エリアは、例えば図3におけるOリング60とOリング61との間のエリア全域である。
【0094】
次に、このアルミナ溶射膜511bの上面にグリス514を塗り、この状態で、上述した熱交換板110aの伝熱面表面に固着されているサーモモジュール50の上面側接合板501bにグリス塗布面が当接するように熱交換板110bを覆い被せる。
【0095】
その後、水冷板110aのねじ孔に対して熱交換板110bのボルト貫通孔が合わさるように位置決めしたうえで、熱交換板110bのボルト貫通孔からそれぞれ貫通させた各締付ボルトを対向する水冷板110aのねじ孔にねじ込むことにより、水冷板110aと熱交換板110bをサーモモジュール50を挟み込んだ状態で締め付け、固定する。
【0096】
このように、本発明によれば、極めて薄いアルミナ溶射膜511aを絶縁層として介在させたうえで、銅溶射膜512を介して熱交換器(水冷板110a)に対する熱電素子(502,503)の接合を半田513を用いて金属的に行うようにしたため、セラミック板等の絶縁層を介在させかつグリスや接着剤を用いて接合していた従来のものに比べて接触熱抵抗が非常に小さくて済む。
【0097】
なお、上記接合構造形成プロセスにおいては、サーモモジュール50を予め例えば図3及び図4に示す素子配列となるものを用意しておき、これを水冷板110a側の銅溶射膜512上に半田付けする例について述べたが、水冷板110aの銅溶射膜512上に最初にサーモモジュール50の下面側の接合板501aのみを半田付けにより固着し、次いでそのうえに熱電素子(502,503)を立設し、更にその上に上面側の接合板501aを接合していくというプロセスを経てサーモモジュール50を完成させるようにしても良い。
【0098】
また、図7の例では、水冷板110aの伝熱面表面のアルミナ溶射膜511aの上に銅溶射による薄膜(銅溶射膜512)を施し、サーモモジュール50の下面側の接合板501aに半田513により接合しているが、変形例としては、上記銅溶射膜512をより厚く形成し、接合板501aの代用としても良い。
【0099】
図8は、その変形例に係わる熱交換ユニット100の概念断面構成を示す図でり、図7における熱交換ユニット100と同等の部分には同一の符号を付している。
【0100】
この変形例のユニットでは、水冷板110aの伝熱面表面のアルミナ溶射膜511aの上に、例えばサーモモジュール50の下面側接合板501aと同程度の厚さ(例えば、1 mm〜1.5mm)に銅を溶射した銅溶射膜515を形成している。そして、この銅溶射膜515を半田516,516′を介してサーモモジュール50のN型熱電素子502とP型熱電素子503に接合している。
【0101】
この構成によれば、銅溶射膜515をサーモモジュール50の下面側の接合板501aとして代用でき、図7に示すものと比べた場合、銅溶射膜512を形成してからこれに接合板501aを半田接合するという工程を削減できる。
【0102】
この他、本発明は、上記し、且つ図面に示す実施形態に限定することなく、その要旨を変更しない範囲内で適宜変形して実施できるものである。
【0103】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、熱交換器の伝熱面表面の任意エリアに、熱電素子対を任意の数だけ等密度に配置したため、熱電素子対及び熱交換器の小型化が図れ、熱交換装置全体の小型化に寄与する。
【0104】
また、本発明の熱電素子配置方法を適用することにより、例えば、熱電素子対をその外周全周をOリングで包囲して該Oリングと共に熱交換器間に締付ボルトで締め付けて固定する機構を備えたものでは、熱電素子対をOリングの内側でかつ締付ボルト用の孔を避けるエリア内に配置することで、熱電素子対及び熱交換器を最大限まで小さくでき、熱交換装置全体をより小型化できる。
【0105】
また、本発明では、熱交換器内の流路を、該熱交換器の伝熱面表面の熱電素子の配置エリアに対応して巡らし、かつ隣接する流路間で互いに異なる方向に流体を流し得る形状としたため、熱交換器の伝熱面表面の温度分布を均一化できる。
【0106】
また、本発明では、熱交換器の伝熱面表面に絶縁性の溶射膜を形成すると共に、該絶縁性溶射膜上に、電極板のパターンに対応する導電性の溶射膜を形成し、導電性溶射膜と対向する電極板とを半田を介して接合したため、熱電素子と熱交換器との接合を半田で金属的に行うことができ、熱電素子と熱交換器の接触抵抗を小さく抑えて熱交換効率を向上させることができる。
【0107】
また、上記導電性溶射膜を例えば電極板相当の厚さに形成し、該導電性溶射膜を電極板として代用し、対向する熱電素子に半田を介して接合しても良く、この場合には、導電性溶射膜を形成してからこれに電極板を半田接合するという工程を削減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる熱交換ユニットの上面図。
【図2】図1における熱交換ユニットの右側面図。
【図3】図2のA−A線による断面図。
【図4】図2のB−B線による断面図。
【図5】本発明に係わる熱交換ユニットの水冷板の流路の構造を示す図。
【図6】他の実施形態に係わる熱交換ユニットの水冷板の熱電素子配置構造を示す図。
【図7】本発明に係わる熱交換ユニットの概念断面構成を示す図。
【図8】変形例に係わる熱交換ユニットの概念断面構成を示す図。
【図9】従来の熱交換ユニットの水冷板に対するサーモモジュールの配置構造を示す図。
【図10】従来の熱交換ユニットの概念断面構成を示す図。
【符号の説明】
100,200 熱交換ユニット
110a,210a 熱交換器(水冷板)
110b 熱交換器(熱交換板)
111a,112a,113a,114a,115a,116a,117a,118a,119a ねじ孔
111b,112b,113b,114b,115b,116b,117b,118b,119b,221,222 ボルト貫通孔
121a,121b 流体入口
122a,122b 流体出口
125a 放熱水の流路
125b 循環水の流路
131,132 電極棒
50,250 サーモモジュール
501a,501b,251 接合板
501L リード電極用接合板
502,503,251,252 熱電素子
60,61 Oリング
511a,511b アルミナ溶射層
512,515 銅溶射層
513,516,516′ 半田
514 グリス
Claims (5)
- P型素子、N型素子とこれらを接合する電極板とにより構成される熱電素子対を対向する水冷板と熱交換板との間に介在させて成る熱交換装置において、
水冷板と熱交換板の外周に形成された締め付け用の外周側貫通孔と、
水冷板と熱交換板の内側に形成された締め付け用の内側貫通孔と、
水冷板と熱交換板との間に介在され、外周側貫通孔を回避するように当該外周側貫通孔の内側側近に配置された外側のOリングと、
水冷板と熱交換板との間に介在され、内側貫通孔を包囲するように配置された内側のOリングと
が設けられ、
外側のOリングの内側でかつ内側のOリングの外側となるエリア内に、熱電素子対が等密度に配置され、
外周側貫通孔と、内側貫通孔を介して水冷板と熱交換板とが締結されてなる
ことを特徴とする熱交換装置。 - 水冷板と熱交換板は、熱交換対象の流体の流路を有し、該流路は、当該水冷板と熱交換板の伝熱面表面の前記熱電素子対の配置エリアに対応して巡らされ、かつ隣接する流路間で互いに異なる方向に流体を流し得る形状に構成されることを特徴とする請求項1記載の熱交換装置。
- 水冷板と熱交換板の伝熱面表面であって、外側のOリングの内側でかつ内側のOリングの外側となるエリアに絶縁性の溶射膜を形成すると共に、
前記絶縁性溶射膜上に、前記電極板のパターンに対応する導電性の溶射膜を形成し、
前記導電性溶射膜と対向する電極板とを半田を介して接合したことを特徴とする請求項1記載の熱交換装置。 - 水冷板と熱交換板の伝熱面表面であって、外側のOリングの内側でかつ内側のOリングの外側となるエリアに絶縁性の溶射膜を形成すると共に、
前記絶縁性溶射膜上に、前記電極板のパターンに対応しかつ当該電極板相当の厚みを有する導電性の溶射膜を形成し、
前記導電性溶射膜を前記電極板として代用し、対向する熱電素子に半田を介して接合したことを特徴とする請求項1記載の熱交換装置。 - 前記絶縁性溶射膜は酸化アルミニュームを溶射して形成され、前記導電性溶射膜は銅を溶射して形成されることを特徴とする請求項3、4のいずれかに記載の熱交換装置。
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