JP4349510B2 - 車両用前照灯 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本願発明は、可動シェードを移動させて灯具配光を変化させるように構成された車両用前照灯に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に車両用前照灯は、光源からの光をリフレクタで前方へ反射させて、ロービームまたはハイビームで光照射を行うようになっている。
【0003】
その際、ロービームとハイビームとでは要求される配光パターンが異なるので、2つの光源の点灯切換えによりロービームとハイビームとのビーム切換えを行うのが一般的であるが、単一の光源でビーム切換えを行うように構成された車両用前照灯も知られている。
【0004】
例えば「特許文献1」には、光源からリフレクタへの入射光の一部を遮蔽可能な可動シェードを設け、この可動シェードを上記入射光に対する遮蔽量が異なった値となる2位置間において移動させることにより、ビーム切換えを行うように構成された車両用前照灯が記載されている。
【0005】
なお「特許文献2」には、固定シェードを備えたロービーム用の車両用前照灯において、光源からの光を固定シェードの内面でリフレクタに向けて反射させるように構成されたものが記載されている。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−118409号公報
【特許文献2】
特開2002−117710号公報
【発明が解決しようとする課題】
「特許文献1」に記載された構成において、ハイビーム用の配光パターンに所要の明るさを確保するためには、リフレクタに、ロービームでの光照射の際には光源からの光が入射しないハイビーム専用の反射領域を、ある程度の大きさで確保する必要がある。しかしながら、このようにした場合には、ロービームでの光照射の際に利用可能な光束がその分だけ減少してしまうので、ロービーム用配光パターンの明るさを十分に確保することができなくなってしまう、という問題がある。
【0007】
なお「特許文献2」に記載された構成によれば、ロービームでの光照射に利用可能な光束を増大させることはできるが、ハイビームでの光照射に関しては何ら考慮されていない。
【0008】
上述したような問題は、可動シェードを移動させてロービームとハイビームとのビーム切換えを行う場合だけでなく、可動シェードを移動させて灯具配光を変化させるようにした場合一般において生じ得る問題である。
【0009】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、可動シェードを移動させて灯具配光を変化させるように構成された車両用前照灯において、可動シェードがいずれの位置に移動した場合においても光照射に利用可能な光束を十分に確保することができる車両用前照灯を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明は、可動シェードの内面の一部を所定の内面反射部として構成することにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0011】
すなわち、本願発明に係る車両用前照灯は、
光源と、この光源からの光を前方へ反射させるリフレクタと、上記光源から上記リフレクタへの入射光の一部を遮蔽可能な可動シェードと、この可動シェードを、上記入射光に対する遮蔽量が大きい第1の位置と該遮蔽量が小さい第2の位置との間において移動させるシェード駆動装置と、を備えてなる車両用前照灯において、
上記可動シェードの内面の一部が、該可動シェードが上記第1および第2いずれの位置に移動した場合においても、上記光源からの光を上記リフレクタの所定反射領域へ向けて反射させる内面反射部として構成されており、
上記可動シェードが、該可動シェードが上記第1の位置に移動したときよりも上記第2の位置に移動したときの方が、上記内面反射部で反射して上記所定反射領域で再度反射した上記光源からの光を上向きにするように構成されており、
上記可動シェードが、上記第1および第2いずれの位置に移動した場合においても、そのときに形成される配光パターンを、上記光源から上記リフレクタに直接入射した光を該リフレクタで反射させることにより形成される基本配光パターンと、上記光源から上記可動シェードの内面反射部に入射した後、該内面反射部で反射して上記リフレクタの上記所定反射領域に入射した光を該所定反射領域で再度反射させることにより形成される付加配光パターンと、の合成配光パターンとして形成するように構成されており、
上記所定反射領域が、上記光源よりも下方に設けられており、
上記可動シェードの内面反射部の表面形状が、該内面反射部で反射した上記光源からの光を該光源の側方近傍位置において集光させるような形状に設定されており、
上記可動シェードの内面反射部が、上記光源の中心位置に第1焦点を有するとともに該第1焦点の右側方に第2焦点を有する左側楕円球面部と、上記光源の中心位置に第1焦点を有するとともに該第1焦点の左側方に第2焦点を有する右側楕円球面部とで構成されており、これにより、上記可動シェードが上記第1および第2いずれの位置に移動した場合においても、上記光源から上記内面反射部の左側楕円球面部に入射した光を、上記第1焦点の右側方の第2焦点に集光させるようにして上記所定反射領域の右側反射領域へ向けて反射させるとともに、上記光源から上記内面反射部の右側楕円球面部に入射した光を、上記第1焦点の左側方の第2焦点に集光させるようにして上記所定反射領域の左側反射領域へ向けて反射させるように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0012】
上記「光源」の種類は特に限定されるものではなく、例えば、放電バルブの放電発光部、ハロゲンバルブのフィラメント等が採用可能である。
【0013】
上記「可動シェード」は、光源バルブからリフレクタへの入射光の一部を遮蔽可能なものであれば、その形状、大きさ、材質等の具体的構成は特に限定されるものではない。
【0014】
上記「入射光に対する遮蔽量が異なった値となる所定の2位置」は、これら各位置に可動シェードが移動したときに、ロービーム用配光パターンまたはハイビーム用配光パターンを形成する位置であってもよいし、それ以外の配光パターンを形成する位置であってもよい。
【0015】
上記「シェード駆動装置」は、可動シェードを第1の位置と第2の位置との間において移動させるように構成されたものであれば、特定の駆動装置に限定されるものではなく、例えばソレノイドを用いたもの、パルスモータを用いたもの等が採用可能である。また、この「シェード駆動装置」の駆動による可動シェードの移動態様や移動方向は特に限定されるものではなく、例えば、水平軸線回りの回動、前後方向の直線往復動等が採用可能である。
【0016】
上記「所定反射領域」の位置、形状、範囲等の具体的構成は特に限定されるものではない。
【0017】
【発明の作用効果】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用前照灯は、光源からリフレクタへの入射光に対する遮蔽量が大きい第1の位置と該遮蔽量が小さい第2の位置との間において移動する可動シェードを備えているが、この可動シェードの内面の一部は、該可動シェードが第1および第2いずれの位置に移動した場合においても、光源からの光をリフレクタの所定反射領域へ向けて反射させる内面反射部として構成されているので、上記各位置において光照射に利用可能な光束を増大させることができる。
【0018】
したがって本願発明によれば、可動シェードを移動させて灯具配光を変化させるように構成された車両用前照灯において、可動シェードがいずれの位置に移動した場合においても光照射に利用可能な光束を十分に確保することができる。
【0019】
すなわち、可動シェードがいずれの位置に移動した場合においても、そのときに形成される配光パターンは、光源からリフレクタに直接入射した光をリフレクタで反射させることにより形成される基本配光パターンと、光源から可動シェードの内面反射部に入射した後、該内面反射部で反射してリフレクタの所定反射領域に入射した光を該所定反射領域で再度反射させることにより形成される付加配光パターンとの合成配光パターンとなるので、配光パターンの明るさを十分に確保することが可能となる。
【0020】
ところで、可動シェードが第1の位置に移動したときには、その遮蔽量が大きくなるのでロービームでの光照射等に適したものとなり、一方、可動シェードが第2の位置に移動したときには、その遮蔽量が小さくなるのでハイビームでの光照射等に適したものとなる。
【0021】
そこで、上記可動シェードを、該可動シェードが第1の位置に移動したときよりも第2の位置に移動したときの方が、その内面反射部で反射して所定反射領域で再度反射した光源からの光を上向きにするような構成とすれば、付加配光パターンを第1の位置では相対的に低い位置、第2の位置では相対的に高い位置に形成することができるので、ロービーム用配光パターン等における基本配光パターンおよびハイビーム用配光パターン等における基本配光パターンのいずれに対しても付加配光パターンを適切な位置に形成することができる。
【0022】
また上記構成において、リフレクタの所定反射領域を光源よりも下方に設けるようにすれば、リフレクタにおいて光源よりも上方に位置する反射領域を、光源からリフレクタに対して直接入射する光のみを反射させる直接光入射領域とすることができるので、基本配光パターンを形成するための配光設計を容易に行うことができる。
【0023】
この場合において、可動シェードの内面反射部の表面形状を、該内面反射部で反射した光源からの光を該光源の側方近傍位置において集光させるような形状に設定すれば、この内面反射部で反射した光源からの光が該光源を収容するガラス管等によって遮蔽されたり偏向してしまうのを未然に防止することができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯を示す側断面図である。
【0027】
図示のように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、透光カバー12とランプボディ14とで形成される灯室内に、リフレクタユニット16がエイミング機構50を介して上下方向および左右方向に傾動可能に設けられてなっている。
【0028】
エイミング機構50は、エイミング支点ピン52と、エイミングスクリュウ54と、エイミング支点ピン52の側方に配置された図示しないもう1つのエイミングスクリュウとを備えてなり、リフレクタユニット16を3点においてランプボディ14に支持せしめるように構成されている。
【0029】
リフレクタユニット16は、放電バルブ18と、リフレクタ20と、可動シェード22と、シェード駆動装置24と、バルブ支持ベース26とを備えてなっている。
【0030】
本実施形態においては、透光カバー12は素通し状に形成されており、リフレクタユニット16に配光制御機能が付与されている。すなわち、このリフレクタユニット16のリフレクタ20は、光源18aすなわち放電バルブ18の放電発光部からの光を前方へ反射する反射面20aを有しており、該反射面20aの拡散あるいは偏向反射機能により、所定の配光パターンを形成するための光照射を行うようになっている。
【0031】
図2および図3は、リフレクタユニット16を単品で示す側断面図および正面図であり、図4は、図3の要部詳細図である。
【0032】
これらの図にも示すように、放電バルブ18は、バルブ支持ベース26を介してリフレクタ20に固定支持されている。すなわち、このバルブ支持ベース26は、リフレクタ20の後頂開口部20bに後方から挿入された状態で該リフレクタ20にネジ締め固定されており、その環状支持部26aに放電バルブ18が線バネにより固定支持されている。そしてこれにより、光源18aがリフレクタ20の光軸Ax上に位置決めされるようになっている。この光軸Axは、車両前後方向に延びる水平線に対して前方へ向けて0.5〜0.6°程度下向きとなる方向に延びている。
【0033】
リフレクタ20の反射面20aは、その光軸Axの上方側および左右両側に位置する主反射領域20aAと、その下側に位置する所定反射領域20aBとからなっている。所定反射領域20aBにおける後頂開口部20bの下方部位には、該後頂開口部20bと連通する縦長短形状のスリット20cが形成されている。
【0034】
可動シェード22は、放電バルブ18をその前方側から所定範囲にわたって囲むシェード本体22Aと、このシェード本体22Aの下端部から下方へ向けて延びる左右1対のシェード脚部22Bとが一体的に形成されてなり、両シェード脚部22Bの上端部近傍部位において、左右方向に延びる回動軸部材30を介してバルブ支持ベース26に回動可能に支持されている。この支持は、光軸Axの下方においてバルブ支持ベース26から前方へ突出するように形成された支持ブラケット部26cの先端部において行われている。
【0035】
そして、この可動シェード22は、シェード駆動装置24により回動部材30回りに前後方向に回動して、図1および2において実線で示す、第1の位置としてのロービーム構成位置と、これらの図において2点鎖線で示す、第2の位置としてのハイビーム構成位置とを取り得るようになっている。ロービーム構成位置では、光源18aから反射面20aの主反射領域20aAにおける周縁領域20aA2に入射する光を遮蔽して、ロービームでの光照射に必要な光だけを主反射領域20aAの中央領域20aA1に入射させるようになっている。一方、ハイビーム構成位置では、この遮蔽を解除して主反射領域20aAの全領域に光を入射させることにより、ハイビームでの光照射に必要な光束を確保するようになっている。
【0036】
このシェード本体22Aの後端縁22bは、可動シェード22がロービーム構成位置にあるとき、光源18aから主反射領域20aAの周縁領域20aA2への入射光を遮蔽するため、その上部が後方へ大きく回り込むように形成されている。一方、このシェード本体22Aの後端縁22bにおける下部は、後方へ大きく回り込むようには形成されておらず、これにより、可動シェード22がロービーム構成位置およびハイビーム構成位置のいずれにある場合においても、光源18aから所定反射領域20aBへの光入射を許容するようになっている。
【0037】
また、このシェード本体22Aの内面における上部領域は、アルミニウム蒸着等による反射面処理が施された内面反射部22aとして構成されている。この内面反射部22aは、光源18aから該内面反射部22aに入射した光を、可動シェード22がロービーム構成位置およびハイビーム構成位置のいずれにある場合においても、所定反射領域20aBへ向けて反射させるようになっている。
【0038】
シェード駆動装置24は、光軸Axの下方においてバルブ支持ベース26にネジ締め固定されたソレノイド本体24Aと、このソレノイド本体24Aから前方へ突出するプランジャ24Bとからなるソレノイドで構成されている。プランジャ24Bは、バルブ支持ベース26の下端部に形成された逆U字溝26bを挿通するようにして前方へ延びており、その先端近傍部位の周面には、環状切欠き部24aが形成されている。
【0039】
可動シェード22は、その1対のシェード脚部22Bの下端部においてプランジャ24Bの先端部に係合連結されている。この係合連結は、各シェード脚部22Bの下端部に円弧状に形成された係合部22cをプランジャ24Bの環状切欠き部24aに挿入することにより行われている。そして、係合部22cと環状切欠き部24aの前端面または後端面との当接作用により、プランジャ24Bの往復運動を可動シェード22の回動運動に変換するようになっている。
【0040】
この可動シェード22のシェード本体22Aは、その光軸Axの近傍部位が円筒状に前方へ突出するように形成されるとともに、その周辺部位が光源18aの中心位置を中心とする左右1対の楕円球面状に形成されている。そして、内面反射部22aも、図4に示すように左側楕円球面部22a1と右側楕円球面部22a2とで構成されている。すなわち、左側楕円球面部22a1は、光軸Ax上における光源18aの中心位置に第1焦点F1を有するとともに該第1焦点F1の右側方に第2焦点F2を有しており、一方、右側楕円球面部22a2は、光軸Ax上における光源18aの中心位置に第1焦点F1を有するとともに該第1焦点F1の左側方に第2焦点F2を有している。
【0041】
そしてこれにより、内面反射部22aは、可動シェード22がロービーム構成位置およびハイビーム構成位置のいずれにある場合においても、光源18aから左側楕円球面部22a1に入射した光を、第1焦点F1の右側方の第2焦点F2に集光させるようにして所定反射領域20aBの右側反射領域20aB2へ向けて反射させるとともに、光源18aから右側楕円球面部22a2に入射した光を、第1焦点F1の左側方の第2焦点F2に集光させるようにして所定反射領域20aBの左側反射領域20aB1へ向けて反射させるようなっている。
【0042】
図5は、車両用前照灯10からの光照射により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。
【0043】
同図(a)に示す配光パターンは、ロービーム用配光パターンPLであって、2つの基本配光パターンP1、P2と、付加配光パターンP3との合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0044】
基本配光パターンP1は、主反射領域20aAの中央領域20aA1からの反射光により形成されるようになっている。この基本配光パターンP1は、その上端縁に水平および斜めカットオフラインCL1、CL2を有する左配光の配光パターンであって、両カットオフラインCL1、CL2の交点であるエルボ点Eの位置は、灯具正面方向の消点であるH−Vの0.5〜0.6°程度下方の位置に設定されている。そして、このロービーム用配光パターンPLにおいては、エルボ点Eの左側に高光度領域であるホットゾーンHZLが形成されるようになっている。
【0045】
基本配光パターンP2は、光源18aから所定反射領域20aBに直接入射して該所定反射領域20aBで反射した光(以下「直接反射光」という)により形成されるようになっている。この基本配光パターンP2は、水平カットオフラインCL1よりも下方において左右両側に大きく広がる拡散配光パターンであって、基本配光パターンP1の明るさを補強するようになっている。
【0046】
付加配光パターンP3は、光源18aからシェード本体22Aの内面反射部22aに入射して該内面反射部22aで反射した後、所定反射領域20aBに入射して該所定反射領域20aBで再度反射した光(以下「間接反射光」という)により形成されるようになっている。この付加配光パターンP3は、基本配光パターンP2と同様、水平カットオフラインCL1よりも下方において左右両側に大きく広がる拡散配光パターンであって、基本配光パターンP1、P2の明るさをさらに補強するようになっている。
【0047】
一方、同図(b)に示す配光パターンは、ハイビーム用配光パターンPHであって、3つの基本配光パターンP1、P2、P4と、付加配光パターンP5との合成配光パターンとして形成されるようになっている。
【0048】
基本配光パターンP1、P2は、ロービーム用配光パターンPLを構成する基本配光パターンP1、P2と同じものであり、主反射領域20aAの中央領域20aA1からの反射光および所定反射領域20aBからの直接反射光により形成されるようになっている。
【0049】
基本配光パターンP4は、主反射領域20aAの周辺領域20aA2からの反射光により形成されるようになっている。この基本配光パターンP4は、左右両側に比較的小さく広がる拡散配光パターンであって、H−Vを中心にしてホットゾーンHZHが形成されるようになっている。
【0050】
付加配光パターンP5は、所定反射領域20aBからの間接反射光により形成されるようになっている。この付加配光パターンP5は、ロービーム用配光パターンPLを構成する付加配光パターンP3と略同じ形状を有する配光パターンであるが、付加配光パターンP3よりも上方へ変位した位置に形成されるようになっている。その際、この付加配光パターンP5は、水平および斜めカットオフラインCL1、CL2の上方空間に、基本配光パターンP4をカバーするようにして形成されるようになっている。
【0051】
以上詳述したように、本実施形態に係る車両用前照灯10は、光源18aからリフレクタ20への入射光に対する遮蔽量が大きいロービーム構成位置と該遮蔽量が小さいハイビーム構成位置との間において移動する可動シェード22を備えているが、この可動シェード22の内面の一部は、該可動シェード22がロービーム構成位置およびハイビーム構成位置のいずれに移動した場合においても、光源18aからの光をリフレクタ20の所定反射領域20aBへ向けて反射させる内面反射部22aとして構成されているので、上記各位置において光照射に利用可能な光束を増大させることができる。
【0052】
したがって本実施形態によれば、可動シェード22がいずれの位置に移動した場合においても光照射に利用可能な光束を十分に確保することができる。
【0053】
すなわち、可動シェード22がロービーム構成位置に移動したときに形成されるロービーム用配光パターンPLは、光源18aからリフレクタ20の主反射領域20aAに直接入射した光を該主反射領域20aAで反射させることにより形成される基本配光パターンP1、P2と、光源18aから可動シェード22の内面反射部22aに入射した後、該内面反射部22aで反射してリフレクタ20の所定反射領域20aBに入射した光を該所定反射領域20aBで再度反射させることにより形成される付加配光パターンP3との合成配光パターンとなるので、ロービーム用配光パターンPLの明るさを十分に確保することが可能となる。一方、可動シェード22がハイビーム構成位置に移動したときに形成されるハイビーム用配光パターンPHは、光源18aからリフレクタ20の主反射領域20aAに直接入射した光を該主反射領域20aAで反射させることにより形成される基本配光パターンP1、P2、P4と、光源18aから可動シェード22の内面反射部22aに入射した後、該内面反射部22aで反射してリフレクタ20の所定反射領域20aBに入射した光を該所定反射領域20aBで再度反射させることにより形成される付加配光パターンP5との合成配光パターンとなるので、ハイビーム用配光パターンPHの明るさを十分に確保することが可能となる。
【0054】
特に本実施形態においては、可動シェード22がロービーム構成位置に移動したときよりもハイビーム構成位置に移動したときの方が、その内面反射部22aで反射して所定反射領域20aBで再度反射した光源18aからの光を上向きにするように可動シェード22が構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0055】
すなわち、ロービーム構成位置では付加配光パターンP3を相対的に低い位置することができるので、ロービーム用配光パターンPLの基本配光パターンP1、P2に対して付加配光パターンP3を適切な位置に形成することができ、一方、ハイビーム構成位置では付加配光パターンP5を相対的に高い位置に形成することができるので、ハイビーム用配光パターンPHの基本配光パターンP1、P2、P4に対して付加配光パターンP5を適切な位置に形成することができる。
【0056】
また本実施形態においては、リフレクタ20の所定反射領域20aBが光源18aよりも下方に設けられているので、リフレクタ20において光源18aよりも上方に位置する反射領域を、光源18aからリフレクタ20に対して直接入射する光のみを反射させる直接光入射領域とすることができ、これにより基本配光パターンP1あるいはP1、P4を形成するための配光設計を容易に行うことができる。
【0057】
しかも本実施形態においては、可動シェード22の内面反射部22aが、左側楕円球面部22a1と右側楕円球面部22a2とで構成されており、この内面反射部22aで反射した光源18aからの光を該光源18aの側方近傍位置において集光させるようになっているので、この内面反射部22aで反射した光源18aからの光が該光源18aを収容する放電バルブ18のガラス管によって遮蔽されたり偏向してしまうのを未然に防止することができる。
【0058】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0059】
図6、7および8は、本変形例に係るリフレクタユニット56を示す、図2、3および4と同様の図である。
【0060】
これらの図に示すように、本変形例に係るリフレクタユニット56は、その基本的構成は上記実施形態に係るリフレクタユニット16と同様であるが、可動シェード62の構成および該可動シェード62とシェード駆動装置24との連結構造が上記実施形態とは異なっている。
【0061】
すなわち、本変形例においては、左右1対のシェード脚部62Bのうちの一方が、シェード本体62Aの真下の位置から左右方向に離れた位置においてシェード駆動装置24に連結されている。
【0062】
これを実現するため、各シェード脚部62Bは、その基端部がシェード本体62Aから左右外方へ延びるように形成されている。また、リフレクタ20の所定反射領域20aBにおける後頂開口部20bの真下の位置から左右方向に離れた位置には、1対の縦長短形状のスリット20dが形成されている。さらに、バルブ支持ベース26には、これら各スリット20dを介して前方へ突出する1対の支持ブラケット部26dが形成されている。そして、可動シェード62は、その一方のシェード脚部62Bの下端部においてシェード駆動装置24のプランジャ24Bの先端部に係合連結されている。
【0063】
また本変形例においては、図8に示すように、シェード本体62Aの内面反射部62aの形状が上記実施形態とは異なっている。
【0064】
すなわち、本変形例におけるシェード本体62Aの内面反射部62aは、その左側楕円球面部62a1の第2焦点F2が光軸Axの左側方に位置するとともに、その右側楕円球面部62a2の第2焦点F2が光軸Axの右側方に位置するように形成されている。
【0065】
このように構成した場合には、内面反射部62aで反射した光源18aからの光は、リフレクタ20の所定反射領域20aBにおけるシェード本体62Aの真下に位置する中央反射領域20aB3に多く入射することとなる。
【0066】
その際、本変形例においては、左右1対のシェード脚部62Bがシェード本体62Aの真下の位置から左右方向に離れた位置において下方に延びており、そのうちの一方がシェード駆動装置24に連結されているので、可動シェード62の内面反射部62aで反射した光源18aからの光を、シェード脚部22Bとシェード駆動装置24との連結構造に遮蔽されてしまうことなく、リフレクタ20の所定反射領域20aBにおける中央反射領域20aB3に入射させることができる。
【0067】
上記実施形態およびその変形例においては、内面反射部22a、62aが左側楕円球面部22a1、62a1および右側楕円球面部22a2、62a2で構成されているので、可動シェード62の内面反射部62aで反射した光源18aからの光を、該光源18aの側方近傍位置において精度良く集光させることができる。なお、このようにする代わりに、内面反射部22a、62aを、中心位置を左右にずらした左右1対の球面部で簡易的に構成することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯を示す側断面図
【図2】上記車両用前照灯のリフレクタユニットを示す側断面図
【図3】上記リフレクタユニットを示す正面図
【図4】上記リフレクタユニットの可動シェードの構成を詳細に示す、図3の要部詳細図
【図5】上記車両用前照灯からの光照射により灯具前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(a)がロービーム用配光パターン、同図(b)がハイビーム用配光パターンを示す図
【図6】上記実施形態の変形例に係るリフレクタユニットを示す、図2と同様の図
【図7】上記変形例に係るリフレクタユニットを示す、図3と同様の図
【図8】上記変形例に係るリフレクタユニットを示す、図4と同様の図
【符号の説明】
10 車両用前照灯
16、56 リフレクタユニット
18 放電バルブ
18a 光源としての放電発光部
20 リフレクタ
20a 反射面
20aA 主反射領域
20aA1 中央領域
20aA2 周辺領域
20aB 所定反射領域
20aB1 左側反射領域
20aB2 右側反射領域
20aB3 中央反射領域
20b 後頂開口部
20c、20d スリット
22、62 可動シェード
22A、62A シェード本体
22B、62B シェード脚部
22a、62a 内面反射部
22a1、62a1 左側楕円球面部
22a2、62a2 右側楕円球面部
22b 後端縁
22c 係合部
24 シェード駆動装置
24A ソレノイド本体
24B プランジャ
24a 環状切欠き部
26 バルブ支持ベース
26a 環状支持部
26b 逆U字溝
26c、26d 支持ブラケット部
30 回動軸部材
50 エイミング機構
52 エイミング支点ピン
54 エイミングスクリュウ
Ax 光軸
CL1 水平カットオフライン
CL2 斜めカットオフライン
E エルボ点
F1 第1焦点
F2 第2焦点
HZL、HZH ホットゾーン
PH ハイビーム用配光パターン
PL ロービーム用配光パターン
P1、P2、P4 基本配光パターン
P3、P5 付加配光パターン
Claims (1)
- 光源と、この光源からの光を前方へ反射させるリフレクタと、上記光源から上記リフレクタへの入射光の一部を遮蔽可能な可動シェードと、この可動シェードを、上記入射光に対する遮蔽量が大きい第1の位置と該遮蔽量が小さい第2の位置との間において移動させるシェード駆動装置と、を備えてなる車両用前照灯において、
上記可動シェードの内面の一部が、該可動シェードが上記第1および第2いずれの位置に移動した場合においても、上記光源からの光を上記リフレクタの所定反射領域へ向けて反射させる内面反射部として構成されており、
上記可動シェードが、該可動シェードが上記第1の位置に移動したときよりも上記第2の位置に移動したときの方が、上記内面反射部で反射して上記所定反射領域で再度反射した上記光源からの光を上向きにするように構成されており、
上記可動シェードが、上記第1および第2いずれの位置に移動した場合においても、そのときに形成される配光パターンを、上記光源から上記リフレクタに直接入射した光を該リフレクタで反射させることにより形成される基本配光パターンと、上記光源から上記可動シェードの内面反射部に入射した後、該内面反射部で反射して上記リフレクタの上記所定反射領域に入射した光を該所定反射領域で再度反射させることにより形成される付加配光パターンと、の合成配光パターンとして形成するように構成されており、
上記所定反射領域が、上記光源よりも下方に設けられており、
上記可動シェードの内面反射部の表面形状が、該内面反射部で反射した上記光源からの光を該光源の側方近傍位置において集光させるような形状に設定されており、
上記可動シェードの内面反射部が、上記光源の中心位置に第1焦点を有するとともに該第1焦点の右側方に第2焦点を有する左側楕円球面部と、上記光源の中心位置に第1焦点を有するとともに該第1焦点の左側方に第2焦点を有する右側楕円球面部とで構成されており、これにより、上記可動シェードが上記第1および第2いずれの位置に移動した場合においても、上記光源から上記内面反射部の左側楕円球面部に入射した光を、上記第1焦点の右側方の第2焦点に集光させるようにして上記所定反射領域の右側反射領域へ向けて反射させるとともに、上記光源から上記内面反射部の右側楕円球面部に入射した光を、上記第1焦点の左側方の第2焦点に集光させるようにして上記所定反射領域の左側反射領域へ向けて反射させるように構成されている、ことを特徴とする車両用前照灯。
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