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JP4346666B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層に用いた空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、軽量化を図りつつ操縦安定性を向上することを可能にした空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤは、通常、一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周側にベルト層を配置したケーシング構造を備えると共に、カーカス層の内面に沿ってブチルゴムからなるインナーライナー層を備えている。このような空気入りタイヤのケーシング剛性を高めて操縦安定性を向上するには、ビード部からサイドウォール部にかけて有機繊維コードやスチールコードを含む補強部材を埋設することが有効である。しかしながら、コード入りの厚手の補強部材を追加した場合、それに伴ってタイヤの重量が増加するという問題がある。
一方、インナーライナー層の材料として、ブチルゴムに替えて、空気透過防止性能に優れた熱可塑性樹脂を用いた空気入りタイヤが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この場合、インナーライナー層を薄くすることが可能であるため、タイヤの軽量化が可能である。しかしながら、このような空気入りタイヤであっても、ケーシング剛性を高めて操縦安定性を向上するために補強部材を追加した場合、それに伴ってタイヤの重量が増加し、インナーライナー層の薄肉化に基づくタイヤの軽量化が無駄になってしまう。
特開平8−217922号公報
本発明の目的は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層に用い、軽量化を図りつつ操縦安定性を向上することを可能にした空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤは、一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周側にベルト層を配置した空気入りタイヤにおいて、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層を前記カーカス層の内面に沿って配置し、前記インナーライナー層を各ビード部に埋設されたビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、該インナーライナー層の少なくとも一方の巻き上げ部分を前記ベルト層と重なる位置まで延在させると共に、前記インナーライナー層の巻き上げ部分にタイヤ径方向に延長する複数本の切り込みを設けたことを特徴とするものである。
本発明では、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層をカーカス層の内面に沿って配置しているので、ブチルゴムからなるインナーライナー層の場合に比べて、インナーライナー層を薄くし、タイヤを軽量化することが可能である。しかも、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層をビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、該インナーライナー層の少なくとも一方の巻き上げ部分をベルト層と重なる位置まで延在させているので、軽量化を図りながら操縦安定性を向上することができる。つまり、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムは、ゴム単体に比べて弾性率が高いため、薄いものであってもタイヤのケーシング剛性を効果的に高めることができる。そのため、ビード部からサイドウォール部にかけて埋設される他の補強部材を削減又は排除しても、優れた操縦安定性を発揮することができる。
本発明において、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定されたタイヤでは、インナーライナー層の車両外側の巻き上げ部分だけをベルト層と重なる位置まで延在させることにより操縦安定性の改善効果を得ることができる。しかしながら、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定されていないタイヤでは、インナーライナー層の両方の巻き上げ部分をベルト層と重なる位置まで延在させることが必要である。勿論、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定されたタイヤにおいて、インナーライナー層の両方の巻き上げ部分をベルト層と重なる位置まで延在させても良い。
インナーライナー層の巻き上げ部分とベルト層とのタイヤ幅方向の重なり幅は10mm以上とすることが好ましい。重なり幅を十分に大きく取ることにより、ビードコアとベルト層との間に二重のフィルムをしっかりと掛け渡し、ケーシング剛性を効果的に高めることが可能になる。
また、インナーライナー層の巻き上げ部分にはタイヤ径方向に延長する複数本の切り込みを設けることが必要である。つまり、インナーライナー層の剛性が過剰であると、タイヤ成形工程において成形ドラム上に成形された円筒状の1次グリーンタイヤを膨径させることが困難になる。そのため、インナーライナー層の巻き上げ部分、即ち、空気透過防止性能を担持しない部分に切り込みを設けることにより、タイヤ成形工程を円滑に行うことが可能になる。切り込みの本数は4〜20本とし、これら切り込みをタイヤ周方向に等間隔で配置することが好ましい。
以下、本発明の構成について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示し、1はトレッド部、2はサイドウォール部、3はビード部である。左右一対のビード部3,3間には複数本の補強コードを含むカーカス層4が装架され、そのカーカス層4がビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側に巻き上げられている。カーカス層4の補強コードとしては、一般的にナイロンコードやポリエステルコード等の有機繊維コードが使用される。トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には複数層のベルト層6が埋設されている。これらベルト層6は補強コードがタイヤ周方向に対して傾斜し、かつ層間で補強コードが互いに交差するように配置されている。
上記空気入りタイヤにおいて、カーカス層4の内面に沿ってインナーライナー層7が配置されている。このインナーライナー層7は、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物のフィルムから構成されている。フィルムの厚さは、特に限定されるものではないが、0.001mm〜1.000mmの範囲から選択することができ、より好ましくは、0.005mm〜0.5mmである。インナーライナー層7は熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むことが必要であるが、フィルムの片側又は両側に薄いゴムシートを積層したものであっても良い。
上記インナーライナー層7は、カーカス層4と同様に、ビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げられている。そして、インナーライナー層7の巻き上げ部分7aはカーカス層4の巻き上げ部分4aの端末を超えてベルト層6と重なる位置まで延在するように配置されている。特に、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定されたタイヤでは少なくとも車両外側の巻き上げ部分7aをベルト層6と重なる位置まで延在させたものとし、車両装着時におけるタイヤ表裏の装着方向が指定されていないタイヤでは両側の巻き上げ部分7aをベルト層6と重なる位置まで延在させたものとする。
上述のように構成される空気入りタイヤでは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層7をカーカス層4の内面に沿って配置しているので、ブチルゴムからなるインナーライナー層の場合に比べて、インナーライナー層7を薄くし、タイヤを軽量化することが可能である。
しかも、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層7をビードコア5の廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、インナーライナー層7の少なくとも一方の巻き上げ部分7aをベルト層6と重なる位置まで延在させているので、軽量化と操縦安定性との両立が可能になる。つまり、熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物のフィルムは、ゴム単体に比べて弾性率が高いため、薄いものであってもタイヤのケーシング剛性を効果的に高めることができる。このようなフィルムを含むインナーライナー層7をカーカス層4と隣接させて配置することから、タイヤのケーシング剛性を高める目的で一般的に付加される他の補強部材を削減又は排除しても、優れた操縦安定性を発揮することができる。なお、インナーライナー層7の巻き上げ部分7aと共にカーカス層4の巻き上げ部分4aをベルト層6と重なる位置まで延在させた場合、タイヤのケーシング剛性を更に増大させることが可能になる。
上記空気入りタイヤにおいて、インナーライナー層7の巻き上げ部分7aとベルト層6とのタイヤ幅方向の重なり幅Wは10mm以上に設定されている。重なり幅Wを十分に大きく取ることにより、ビードコア5とベルト層6との間に二重のフィルムをしっかりと掛け渡し、ケーシング剛性を効果的に高めることが可能になる。この重なり幅Wが10mm未満であるとケーシング剛性の増大効果が低下する。
図2は上記空気入りタイヤにおけるインナーライナー層の巻き上げ部分を抽出してタイヤ側方から見た状態を示すものである。図2に示すように、インナーライナー層7の巻き上げ部分7aにはタイヤ径方向に延長する複数本の切り込み17が設けられている。これら切り込み17は、タイヤ成形工程において成形ドラム上に巻き付けられたインナーライナー材料に予め形成され、円筒状の1次グリーンタイヤから完成タイヤの至る過程においてカーカス層の変形に伴って扇状に変形したものである。
インナーライナー層7の巻き上げ部分7aはタイヤケーシング剛性の増大に大きく寄与するが、インナーライナー層7の剛性が過剰であると、タイヤ成形工程において成形ドラム上に成形された円筒状の1次グリーンタイヤを膨径させることが困難になり、場合によっては部材が破損する恐れがある。これに対して、インナーライナー層7の巻き上げ部分7a、即ち、空気透過防止性能を担持しない部分に切り込み17を設けた場合、タイヤ成形工程を円滑に行うことが可能になる。
切り込み17の本数は4〜20本、より好ましくは、6〜20本とし、これら切り込み17をタイヤ周方向に等間隔で配置することが望ましい。これら切り込み17の延長方向は、タイヤ径方向に対して実質的に0°とすることが好ましいが、30°以下の角度であればタイヤ径方向に対して傾斜していても良い。また、切り込み17はビードコア5の内端位置からタイヤ径方向外側へ5mm以上隔てた領域に形成することが望ましい。これにより、空気透過防止性能をより確実に保証することができる。更に、タイヤサイズ等に応じて決まる材料の変形割合等を考慮して切り込み17の形成領域を適宜設計すれば良い。例えば、成形ドラム上に巻き付けられたインナーライナー材料の外径に対して完成タイヤの状態で20%以上の拡張を生じる領域に切り込み17を設けることが望ましい。
以下、本発明で使用されるインナーライナー層のフィルムについて説明する。このフィルムは、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成することができる。
本発明で使用される熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体(ETFE)〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
本発明で使用されるエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリアミド系エラストマー〕等を好ましく使用することができる。
前記した特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマーとの界面張力が低下し、その結果、分散を形成しているゴム粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマーの両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマーと反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらは混合される熱可塑性樹脂とエラストマーの種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定はないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマーとの合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
熱可塑性エラストマー組成物において、特定の熱可塑性樹脂とエラストマーとの組成比は、特に限定されるものではなく、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとるように適宜決めればよいが、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。
本発明において、フィルムを構成する熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物には、インナーライナー層としての必要特性を損なわない範囲で前記した相溶化剤などの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマーとの相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。また、一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等をインナーライナー層としての必要特性を損なわない限り任意に配合することもできる。
また、エラストマーは熱可塑性樹脂との混合の際、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマーの組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔本明細書において、「phr」は、エラストマー成分100重量部あたりの重量部をいう。以下、同じ。〕程度用いることができる。
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr程度用いることができる。
その他として、亜鉛華(5phr程度)、酸化マグネシウム(4phr程度)、リサージ(10〜20phr程度)、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr程度)、メチレンジアニリン(0.2〜10phr程度)が例示できる。
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr程度用いることができる。
具体的には、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等、グアジニン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアジニン等、チアゾール系加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアマイド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイド、2−(チモルポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等、ジチオ酸塩系加硫促進剤としては、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジエチルジチオカーバメート、Zn−ジ−n−ブチルジチオカーバメート、Zn−エチルフェニルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等、チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア等を挙げることができる。
また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(5phr程度)、ステアリン酸やオレイン酸及びこれらのZn塩(2〜4phr程度)等が使用できる。
熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂とエラストマー(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマーを分散させることによる。エラストマーを加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマーを動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマーへの各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマーの混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマーの混練およびエラストマーの動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は1000〜7500sec-1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で製作されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望の形状にすればよい。
このようにして得られる熱可塑性エラストマー組成物は、熱可塑性樹脂のマトリクス中にエラストマーが不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、インナーライナー層に十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な剛性を併せ付与することができると共に、エラストマーの多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
熱可塑性樹脂および熱可塑性エラストマー組成物のJIS K7100により定められるところの標準雰囲気中におけるヤング率は、特に限定されるものではないが、好ましくは1〜500MPa、より好ましくは50〜500MPaにするとよい。
上記熱可塑性樹脂又は熱可塑性エラストマー組成物はシート又はフィルムに成形して単体で用いることが可能であるが、隣接するゴムとの接着性を高めるために接着層を積層しても良い。この接着層を構成する接着用ポリマーの具体例としては、分子量100万以上、好ましくは300万以上の超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンメチルアクリレート樹脂(EMA)、エチレンアクリル酸共重合体(EAA)等のアクリレート共重合体類及びそれらの無水マレイン酸付加物、ポリプロピレン(PP)及びそのマレイン酸変性物、エチレンプロピレン共重合体及びそのマレイン酸変性物、ポリブタジエン系樹脂及びその無水マレイン酸変性物、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SEBS)、フッ素系熱可塑性樹脂、ポリエステル系熱可塑性樹脂などを挙げることができる。これらは常法に従って例えば樹脂用押出機によって押し出してシート状又はフィルム状に成形することができる。接着層の厚さは特に限定されないが、タイヤ軽量化のためには厚さが少ない方がよく、5μm〜150μmが好ましい。
タイヤサイズ205/55R16であって、一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周側にベルト層を配置した空気入りタイヤにおいて、カーカス層の内面に沿って配置されるインナーライナー層の構成材料、インナーライナー層の巻き上げ部分とベルト層との重なり幅Wを種々異ならせた従来例、実施例1,2及び比較例1,2のタイヤを製作した。
従来例のタイヤは、ブチルゴムを主体とするゴム組成物からなる厚さ1.5mmのインナーライナー層を採用し、そのインナーライナー層をタイヤ内面にて終端させたものである。実施例1のタイヤは、熱可塑性樹脂(ナイロン6,66)とエラストマー(臭素化ブチルゴム)とをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物のフィルムからなる厚さ0.3mmのインナーライナー層を採用し、そのインナーライナー層をビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、各巻き上げ部分とベルト層との重なり幅を10mmに設定したものである。実施例2のタイヤは、熱可塑性樹脂(ビニルアルコール/エチレン共重合体)のフィルムからなる厚さ0.3mmのインナーライナー層を採用したこと以外は、実施例1と同じ構成を備えたものである。比較例1のタイヤは、インナーライナー層をタイヤ内面にて終端させたこと以外は、実施例1と同じ構成を備えたものである。比較例2のタイヤは、インナーライナー層をタイヤ内面にて終端させたこと以外は、実施例2と同じ構成を備えたものである。
上述した従来例、実施例1,2及び比較例1,2のタイヤについて、質量、縦剛性、横剛性を測定し、下記の評価方法により操縦安定性を評価し、その結果を表1に示した。
操縦安定性:
各試験タイヤを標準リムに組み付けて試験車両に装着し、空気圧を200kPaとし、テストドライバーによるフィーリング評価を行った。評価結果は、従来例を100とする指数にて示した。この指数値が大きいほど操縦安定性が優れていることを意味する。
Figure 0004346666
この表1から明らかなように、実施例1,2のタイヤは、従来例に比べて軽量でありながら縦剛性及び横剛性が高く、操縦安定性が優れていた。一方、比較例1,2のタイヤは、軽量ではあるものの操縦安定性の改善効果は得られなかった。
本発明の実施形態からなる空気入りタイヤを示す子午線半断面図である。 本発明の実施形態からなる空気入りタイヤにおけるインナーライナー層の巻き上げ部分を抽出してタイヤ側方から見た状態を示す側面図である。
符号の説明
1 トレッド部
2 サイドウォール部
3 ビード部
4 カーカス層
4a カーカス層の巻き上げ部分
5 ビードコア
6 ベルト層
7 インナーライナー層
7a インナーライナー層の巻き上げ部分 17 切り込み

Claims (3)

  1. 一対のビード部間にカーカス層を装架し、該カーカス層の外周側にベルト層を配置した空気入りタイヤにおいて、熱可塑性樹脂又は熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物からなるフィルムを含むインナーライナー層を前記カーカス層の内面に沿って配置し、前記インナーライナー層を各ビード部に埋設されたビードコアの廻りにタイヤ内側から外側へ巻き上げ、該インナーライナー層の少なくとも一方の巻き上げ部分を前記ベルト層と重なる位置まで延在させると共に、前記インナーライナー層の巻き上げ部分にタイヤ径方向に延長する複数本の切り込みを設けたことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記インナーライナー層の巻き上げ部分と前記ベルト層とのタイヤ幅方向の重なり幅を10mm以上としたことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記切り込みの本数を4〜20本とし、これら切り込みをタイヤ周方向に等間隔で配置したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
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