JP4233004B2 - インモールドコート方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性樹脂から成る射出成形品の表面に射出成形工程中に皮膜を形成するインモールドコート方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、特開平7−112450号公報により、熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出充填した後に型締めを行ったまま、熱可塑性樹脂の表面とキャビティ内表面との間に隙間を生じさせ、この隙間に皮膜原料を注入して、射出成形工程中に皮膜形成を行うインモールドコート方法が知られている。このものの第1の態様では、金型のキャビティ内に充填された樹脂が冷却して凝固する際の体積減少で樹脂表面とキャビティ内表面との間に生ずる隙間に皮膜原料を注入している。しかし、かかる隙間がキャビティ内表面に対して樹脂表面のいずれの側、即ち、キャビティを形成する可動型と固定型のいずれの側に生じるか確実でないため、第2の態様では、金型の可動型に可動式のコア部を設け、樹脂の凝固の際に、金型を閉じたままこのコア部のみを後退させて、樹脂の可動型側の表面とコア部との間に機械的に隙間を生じさせ、この隙間に皮膜原料を注入している。さらに、第3の態様では、金型を構成する固定型と可動型とを入子構造に構成すると共に、樹脂の凝固の際に樹脂が可動型側に固着するようなキャビティ構造を採用して、可動型を少許後退させることにより樹脂の固定型側の表面と固定型のキャビティ内表面との間に機械的に隙間を生じさせ、この隙間に皮膜原料を注入している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記方法では、樹脂表面に対して隙間が生じる位置が不確実な第1の態様を改善するため、第2の態様では金型の可動型に可動式のコア部を設け、又、第3の態様では金型を構成する固定型と可動型とを入子構造で係合するようにしているが、両態様とも金型の構造が複雑でコストアップの要因となる。
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑み、簡易な構造の金型を用いて、熱可塑性樹脂の射出成形工程中に、射出成形品の皮膜形成を行うべき表面に皮膜を形成し得るようにしたインモールドコート方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、金型のキャビティ内の熱可塑性樹脂から成る射出成形品の表面に皮膜を形成するインモールドコート方法において、金型を型締めした状態で金型のキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出充填した後、金型を型締めしたまま金型を構成する1対の型のうち射出成形品の皮膜を形成すべき表面側に位置する一方の型を他方の型より低温に保った状態で前記樹脂を凝固させ、前記樹脂の表面と前記一方の型のキャビティ内表面との間に生じる隙間に皮膜原料を注入している。
【0006】
本発明によれば、金型の1対の型の間に温度差が付けられることになり、相対的に温度の低い一方の型側の皮膜を形成すべき樹脂表面とこの型のキャビティ内表面との間に確実に隙間が生じる。かくて、この隙間に注入する皮膜原料で射出成形品の表面に正確に皮膜を形成できる。
【0007】
又、この場合、上記の金型を上型と下型とを有する立て形のものとし、この上型で前記一方の型を構成すれば、樹脂の凝固による収縮に加え、凝固した樹脂の上型側の表面がその自重でキャビティ内表面の上型側から剥離して下型側に収縮することにより、皮膜を形成すべき上型側の樹脂表面と上型のキャビティ内表面との間に確実に隙間が生じ、さらに、かかる樹脂の収縮が重力により均一に行われて皮膜形成用の隙間が所望の形状に生じるので、この隙間に皮膜原料を注入して、皮膜付きの射出成形品を精度良く成形できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1(a)〜(d)は、立て形射出成形機を用いたインモールドコート工程を示す。図1を参照して1は、立て形射出成形機の金型の要部を示し、金型1は可動型たる上型1aと固定型たる下型1bとから成り、上型1aを下型1bに対し型締めすることにより上型1aと下型1bとの間に所要の製品形状のキャビティ2が形成されるように構成されている。又、下型1bのキャビティ内表面2bの略中央には樹脂供給路3に連なる樹脂供給口3bを設け、図外の射出機より熱可塑性樹脂4から成る溶融樹脂が樹脂供給路3を経てキャビティ2内に射出されるように構成され、さらに、上型1aのキャビティ内表面2aの部分に皮膜原料注入路5に連なる皮膜原料注入口5aを設け、射出成形品の表面の皮膜形成に用いる皮膜原料6が図外の皮膜原料注入機より皮膜原料注入路5及び皮膜原料注入口5aを経てキャビティ2内に注入されるように構成されている。
【0009】
射出成形に際しては、先ず、図1(a)に示すように、金型1の上型1aと下型1bとを当接させて閉じると共に射出充填時の射出圧力に抗し得るように金型1を図外の型締め装置で型締めし、この状態で、図外の射出機から溶融状態の熱可塑性樹脂4を供給路3の樹脂供給口3bを経て金型1のキャビティ2内に射出充填する。そして、キャビティ2が樹脂で満たされたところで樹脂供給路3を適宜の遮断手段により遮断して射出充填工程を完了する。尚、皮膜原料注入口5aは皮膜原料の注入工程まで適宜の閉塞手段により閉塞されている。
【0010】
次に、上型1a及び下型1bの金型温度をともに低下させるが、この際、図1(b)に示すように、上型1aの温度低下を先行させ、下型1bは金型温度の下降中も常に上型1aの金型温度を上回るようにして、最終的に上型1a及び下型1bとも冷却工程時の所定の温度まで到達させる。
【0011】
このようにして、上型1aの金型温度が先に冷却工程時の所定温度まで低下したとき、冷却による樹脂4の凝固は、相対的に温度が低い上型1a側で下型1b側よりも早く進行し、このことにより、樹脂4が上型1a側で先に収縮を開始し、又、凝固した樹脂4の上型1a側の表面がその自重により沈降することと相俟って、樹脂4の上型1a側の表面と上型1aのキャビティ内表面2aとの間に、図1(c)に示すように精度良く隙間7が生じる。
【0012】
尚、本実施の形態では、射出充填工程の後の保圧工程を省略しているが、これは、保圧工程中では、樹脂4が凝固して体積減少しても、射出機側より樹脂が補充されてその体積が回復し、上記のような隙間7が生じるのを妨げられるおそれがあるからである。即ち、本実施の形態では、保圧工程での樹脂4の体積回復を避け、冷却による樹脂4の凝固の際の体積減少で隙間7を充分に確保している。
【0013】
次に、金型1を型締めしたまま、皮膜原料注入口5aを開放し、図1(d)に示す如く隙間7に皮膜原料注入路5から皮膜原料6を注入して充填する。この場合、皮膜原料6が熱硬化性樹脂を主成分とする場合には、注入時に皮膜原料6が流動性を保てるように、上型1aと下型1bとを低温に保ったまま皮膜原料6を液相状態で注入して充填した後に上型1aの温度を上昇させ、皮膜原料6を熱硬化させて皮膜を形成する。又、皮膜原料6が熱可塑性樹脂を主成分とする場合には、注入時に皮膜原料6が流動性を保てるように、下型1bを低温に保ったまま上型1aを高温にして皮膜原料6を溶融状態で注入して充填した後に上型1aの温度を低下させ、皮膜原料6を凝固させて皮膜を形成する。
【0014】
尚、皮膜原料6が熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂のいずれの場合でも、熱可塑性樹脂4から成る射出成形品の上型1a側の表面と上型1aのキャビティ内表面2aとの間に生じる隙間7に皮膜原料6が充填されるので、上型1aの温度を上昇させても、上型1aにより発生する熱が射出成形品に対して直接伝導されることはなく、この熱により射出成形品が再び溶融状態となって上記の皮膜原料6による皮膜の形成が妨げられることはない。
【0015】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、簡易な構造の金型を用いて、熱可塑性樹脂の射出成形工程中に、射出成形品の皮膜形成を行うべき表面に精度良く皮膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(d)
立て形射出成形機を用いたインモールドコート工程図
【符号の説明】
1 金型 1a 上型 1b 下型
2 キャビティ 4 熱可塑性樹脂 6 皮膜原料 7 隙間
Claims (2)
- 金型のキャビティ内の熱可塑性樹脂から成る射出成形品の表面に皮膜を形成するインモールドコート方法において、金型を型締めした状態で金型のキャビティ内に熱可塑性樹脂を射出充填した後、金型を型締めしたまま金型を構成する1対の型のうち射出成形品の皮膜を形成すべき表面側に位置する一方の型を他方の型より低温に保った状態で前記樹脂を凝固させ、前記樹脂の表面と前記一方の型のキャビティ内表面との間に生じる隙間に皮膜原料を注入することを特徴とするインモールドコート方法。
- 前記金型は上型と下型とから成り、該上型で前記一方の型を構成することを特徴とする請求項1に記載のインモールドコート方法。
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