JP4219223B2 - シート材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、液の引き込み性が高く、液を素早く吸収できる多層シート材料に関する。本発明のシート材料は例えば生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の表面シートや吸収体として特に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
本出願人は先に、第1層とこれに隣接する第2層とを有し、第1層と第2層とが所定パターンの接合部によって部分的に接合されており、該接合部間で第1層が三次元的立体形状をなし、第2層がエラストマー的挙動を示す材料で構成されており、シート全体がエラストマー的挙動を示すと共に通気性を有する立体シート材料を提案した(特許文献1参照)。この立体シート材料は、平面方向へ伸張させたときの回復性及び厚み方向へ圧縮させたときの回復性が高く、使い捨て吸収性物品の構成材料や、対人・対物用のワイパーとして好適に使用される。しかし、伸張回復性及び圧縮回復性に対する要求はますます高くなっている。
【0003】
連続フィラメントの束である下層に、連続フィラメントの束である上層が重ねられて、接合線で部分的に融着されてシート化された吸収性物品の表面シートが知られている(特許文献2参照)。この表面シートにおいては、上層よりも下層の親水度および密度を高くすることで、液透過性を良くし且つ液の逆戻りを防止している。密度を高くするための手段として、連続フィラメントの捲縮数に差をつけている。しかし、構成繊維が連続フィラメントであることから、シートの嵩を高めることが容易でなく、シートはソフト感に欠けたものとなってしまう。
【0004】
少なくとも一層の親水性繊維ウエブと、少なくとも一層の熱捲縮性の疎水性繊維ウエブとからなる積層体を得る工程と、連続した平面部と、間欠的かつ独立して分布する多数の凸部および/または凹部と、多数の微細排水孔とを備えた支持体表面上において、前記積層体に微細孔ノズルから高圧水を噴射し、前記両ウエブの繊維を交絡させるとともに再配列して前記積層体の面方向に繊維の分布密度にむらを有する不織布を得る工程と、前記不織布を脱水および/または乾燥したのち、熱処理して前記合成繊維を捲縮させる工程とからなる方法によって製造され、少なくとも片面に多数の起伏を有している不織布製ワイパーも知られている(特許文献3参照)。このワイパーでは2つの繊維ウエブがそれらの全面で接合されていることから、起伏を高くすることが容易ではない。また起伏による柄(デザイン)の自由度を大きくすることが容易でない。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−187228号公報
【特許文献2】
特開2002−65738号公報
【特許文献3】
特開平8−60509号公報
【0006】
従って本発明は、液体の引き込み性が高く、液体を素早く吸収できる嵩高でソフト感のあるシート材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、立体捲縮した繊維を含む第1繊維層と、該繊維と同種又は異種の立体捲縮した繊維を含む第2繊維層とが積層されてなり、
第2繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いが、第1繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高く、第2繊維層の見掛け密度が第1繊維層の見掛け密度よりも高くなっているシート材料を提供することにより前記目的を達成したものである。
【0008】
また本発明は、液透過性の表面層、液不透過性の防漏層及び両層間に介在された液保持性の吸収層を備えた吸収性物品において、
前記表面層又は吸収層として、立体捲縮した繊維を含む第1繊維層と、該繊維と同種又は異種の立体捲縮した繊維を含む第2繊維層とが積層されてなり、
第2繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いが、第1繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高く、第2繊維層の見掛け密度が第1繊維層の見掛け密度よりも高くなっているシート材料を用い、
前記シート材料は、前記第2繊維層が前記防漏層側を向くように配置されている吸収性物品を提供するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には本発明のシート材料の一実施形態の斜視図が示されており、図2には図1におけるII−II線断面図が示されている。
【0010】
図1に示すシート材料10は、第1繊維層1及びこれに隣接する第2繊維層2を備えている多層構造の不織布からなる。第1繊維層1は、繊維の集合体から構成されている。一方、第2繊維層2は、第1繊維層1を構成する繊維と異なる種類及び/又は配合の繊維の集合体から構成されている。第1繊維層1と第2繊維層2とは、多数の接合部3によって部分的に接合されている。逆に言えば、第1繊維層1と第2繊維層2とはそれらの全面において接合されていない。しかし、接合されていない領域においても両繊維層は接触している。本実施形態においては、接合部3は小円形で離散的に不連続に形成されており、全体として菱形格子状の配置パターンを形成している。接合部3は圧密化されており、シート材料10における他の部分に比して厚みが小さく且つ密度が大きくなっている。
【0011】
接合部3は、第1繊維層1と第2繊維層2とが熱融着されて形成されたものである。この接合部3によって両繊維層は厚さ方向に一体化されている。本実施形態における接合部3は円形のものであるが、接合部3の形状は、楕円形、三角形若しくは矩形又はこれらの組み合わせ等であってもよい。また接合部を連続した形状、例えば直線や曲線などの線状に形成してもよい。
【0012】
シート材料10は、接合部3の間において第1繊維層1が突出して多数の凸部4を形成している。本実施形態においては、シート材料10が、菱形格子状の配列パターンからなる接合部3によって取り囲まれて形成された閉じた領域を多数有しており、この閉じた領域において第1繊維層1は、図2に示すように突出して凸部4を形成している。本実施形態における凸部4は、ドーム状の形状をなしている。その内部は第1繊維層1を構成する繊維で満たされている。接合部3は、凸部4に対して相対的に凹部となっている。一方、第2繊維層2においては、接合部3間はほぼ平坦面を保っているか、若干突出している(図2参照)。シート材料10全体として見ると、その第2繊維層2側が平坦ないし若干突出しており、且つ第1繊維層1側に多数の凹凸部を有している構造となっている。
【0013】
第1繊維層1及び第2繊維層2は何れも立体捲縮した繊維を主たる構成繊維として含んでいる。立体捲縮した繊維としては、捲縮が発現した潜在捲縮性繊維のステープルファイバーや、機械捲縮加工された繊維のステープルファイバーが挙げられる。特に、凸部4の圧縮回復性や第1繊維層1の伸張回復性が高い点から、立体捲縮した繊維は、捲縮が発現した潜在捲縮性繊維のステープルファイバーからなることが好ましい。ステープルファイバーを用いることで、連続フィラメントを用いた場合に比べてシート材料10の嵩を高めやすく、ソフト感が発現しやすい。この観点から繊維長は2〜150mm、特に5〜100mm程度であることが好適である。捲縮が発現した潜在捲縮性繊維はコイル状の捲縮状態となっている。潜在捲縮性繊維としてはその繊度が1〜7dtex程度であることが好適である。潜在捲縮性繊維は、例えば収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料を成分とする偏心芯鞘型複合繊維又はサイド・バイ・サイド型複合繊維からなる。その例としては、特開平9−296325号公報や特許2759331号公報に記載のものが挙げられる。収縮率の異なる2種類の熱可塑性ポリマー材料の例としては、例えばエチレン−プロピレンランダム共重合体(EP)とポリプロピレン(PP)との組み合わせが、シート材料10の柔らかさの点で好適である。
【0014】
シート材料10においては、第2繊維層2に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いが、第1繊維層1に含まれる立体捲縮した繊維の度合いよりも高くなっており、それによって第2繊維層2の見掛け密度が第1繊維層1の見掛け密度よりも高くなっている。その結果、シート材料10の厚み方向に関してシートの見掛け密度に勾配が生じる。この勾配によって第1繊維層1から第2繊維層に向かって液を引き込む力が生じ、第1繊維層1に液が排泄されると素早く吸収される。これによって第1繊維層1の表面に液が残りにくくなる。液を引き込む力は、特にシート材料に力が加わった場合に、具体的にはシート材料に伸びやヨレなどの力が加わった場合に一層高くなる。
【0015】
第2繊維層2の見掛け密度ρ2と第1繊維層1の見掛け密度ρ1とは、ρ2/ρ1=1.1以上、特に1.1〜5、とりわけ1.3〜5であることが液を引き込む力が十分に発現する点から好ましい。各層の見掛け密度は、第1繊維層1においてはρ1=4〜40kg/m3、特に8〜25kg/m3であることが好ましく、第2繊維層2においてはρ2=20〜200kg/m3、特に25〜80kg/m3であることが好ましい。またシート材料10全体の見掛け密度ρは8〜80kg/m3、特に10〜50kg/m3であることが、シート材料10に嵩高感を付与し、また圧縮変形性、ひいては柔軟性やソフト感を高くする点から好ましい。
【0016】
各層及びシート材料10全体の見掛け密度は、坪量を0.49cN/cm2加圧下で測定された厚みで除して算出する。加圧下における厚みは圧縮変化率測定方法(KES法)を用いて測定する。測定装置としては、カトーテック株式会社製のKES FB3-AUTO-A 自動化圧縮試験装置を用いる。0.49cN/cm2圧力下での厚みは以下の方法で測定することもできる。先ず、測定台上に、この測定片よりも小さなサイズ(直径5.6cmの円板、12.4g)のプレートを載置する。この状態でのプレートの上面の位置を測定の基準点Aとする。次にプレートを取り除き、測定台上に測定片(10cm×10cm)を載置し、その上にプレートを再び載置する。この状態でのプレート上面の位置をBとする。AとBの差から立体シート材料10の厚みを求める。測定機器にはレーザー変位計〔(株)キーエンス製、CCDレーザ変位センサ LK−080〕を用いるが、ダイヤルゲージ式の厚み計を用いてもよい。但し厚み計を用いる場合は測定機器の測定力とプレートの重さを、0.49cN/cm2圧力下に調節する。
【0017】
本実施形態のシート材料10においては、第1繊維層1及び第2繊維層2の何れにも立体捲縮した繊維が含まれているので、これらの層は何れも平面方向へ伸長させたときの回復性が高いものとなるという利点も生じる。その結果シート材料10全体としても、これを平面方向へ伸長させたときの回復性が高くなる。従って、シート材料10を例えば吸収性物品の構成部材として用いた場合に、着用者の動作に対する追従性が良好となり、吸収性物品のフィット性が向上し、液漏れが効果的に防止される。またシート材料10を例えばワイパーとして用いた場合に、対象面の凹凸に対する追従性が良好になる。
【0018】
第1繊維層1及び第2繊維層2の何れにも立体捲縮した繊維が含まれていることの別の利点としては、シート材料10を圧縮したときの回復性やクッション感が高くなることが挙げられる。前述した通り、凸部4は主として第1繊維層1から構成されているから、第1繊維層1は立体捲縮した繊維を含んでいるということは、凸部4が立体捲縮した繊維を含んでいることを意味する。凸部4が立体捲縮した繊維を含んでいることによって、凸部4を圧縮したときの回復性やクッション感が高くなる。その結果シート材料全体としての回復性やクッション感も高くなる。また、シート材料10に液体が含浸されたときの凸部4のへたりが小さくなる。従ってシート材料10を使い捨て吸収性物品の構成材料や、対人・対物用の湿式ワイパーとして好適に使用できる。更に、立体捲縮した繊維はその捲縮部位に繊維状のダストを挟んで保持することが可能であるから、シート材料10をワイパーとして用いた場合に、繊維状のダストの捕集性が高くなる。また凸部4間の凹部においてはパン粉などの比較的大きなダストが保持され易いので、この点からも立体シート材料10をワイパーとして用いることが好適である。
【0019】
本発明において、第2繊維層2に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いが、第1繊維層1に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高いとは、第2繊維層2に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮数が、第1繊維層1に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮数よりも多いこと、及び/又は第2繊維層2に含まれる立体捲縮した繊維のコイル径が、第1繊維層1に含まれる立体捲縮した繊維のコイル径よりも小さいことを意味する。捲縮数はJIS L1015に準じて測定される。コイル径は繊維の電子顕微鏡写真から測定される。
【0020】
第2繊維層2に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いを、第1繊維層1に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高くするためには種々の方法を用いることができる。例えば立体捲縮した繊維として、捲縮が発現した潜在捲縮性繊維が含まれている場合には次の方法を用いることができる。なお、以下の説明において単に潜在捲縮性繊維というときには、文脈に応じ捲縮が発現した潜在捲縮性繊維及び捲縮が発現する前の潜在捲縮性繊維の何れかを意味する。
【0021】
(1)第1繊維層1及び第2繊維層2において異種の潜在捲縮性繊維が用いられる場合、各層に含まれている潜在捲縮性繊維が捲縮する前の状態において、該潜在捲縮性繊維を同条件下で捲縮させた場合、第2繊維層2に含まれている潜在捲縮性繊維として、第1繊維層1に含まれている潜在捲縮性繊維よりも捲縮が起こりやすいものを用いる。具体的には、第2繊維層2に含まれている潜在捲縮性繊維として、捲縮発現温度が第1繊維層1に含まれている潜在捲縮性繊維よりも低いものを用いる。或いは、捲縮発現温度は同じであるものの、捲縮数が多くなるように及び/又はコイル径が小さくなるように捲縮するものを、第2繊維層2に含まれている潜在捲縮性繊維として用いる。捲縮数が多くなるように及び/又はコイル径が小さくなるように捲縮させるためには、例えば偏心芯鞘型複合繊維の偏心の程度を大きくしたり、芯成分と鞘成分との比率を調整すればよい。
【0022】
(2)第1繊維層1及び第2繊維層2において同種の潜在捲縮性繊維が用いられている場合には、第1繊維層1に含まれている潜在捲縮性繊維が捲縮することを妨げる繊維を第1繊維層1に含ませる。具体的には、(イ)第1繊維層1が潜在捲縮性繊維及び捲縮・収縮を起こさない通常繊維を含む一方第2繊維層2が潜在捲縮性繊維のみからなることで、第1繊維層1に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮が、第2繊維層2に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮よりも妨げられる。また(ロ)第1繊維層1及び第2繊維層2の何れもに潜在捲縮性繊維及び捲縮・収縮を起こさない通常繊維を含ませ、且つ第2繊維層2における通常繊維の配合割合を、第1繊維層1における通常繊維の配合割合よりも低くする。この場合にも、第1繊維層1に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮が、第2繊維層2に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮よりも妨げられる。
【0023】
第1繊維層1又は第2繊維層2に、潜在捲縮性繊維の捲縮を妨げる通常繊維が含まれる場合、該通常繊維としては、例えば潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度では実質的に熱収縮しない繊維が挙げられる。具体的には、熱収縮性を有するが潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度では実質的に熱収縮しない繊維や、熱収縮性を実質的に有さない繊維が挙げられる。特に熱融着性繊維を用いることが好ましい。これによって潜在捲縮性繊維の捲縮の程度が調整されることに加え、凸部4の表面強度が高まり、毛羽立ちが効果的に防止される。第1繊維層1に含まれる通常繊維の配合割合は、10〜90重量%、特に30〜70重量%であることが凸部4の表面強度の向上の点から好ましい。第2繊維層2に含まれる通常繊維の割合は第1繊維層よりも低く0〜50重量%、特に0〜30重量%であることが好ましい。
【0024】
本実施形態のシート材料10においては、第2繊維層2の親水性の方が、第1繊維層1の親水性よりも高くなっている。このことと、先に述べた密度勾配とによって本実施形態のシート材料10では、第1繊維層1から第2繊維層に向かって液を引き込む力が一層強く生じ、第1繊維層1に液が排泄されると一層素早く吸収されるようになる。第1繊維層1及び第2繊維層2の親水性の大小は例えば以下の方法で測定される表面液流れ長さの大小で判定することができる。表面液流れ長さが小さい場合は親水性が大きく、表面液流れ長さが大きい場合は親水性が小さい。
【0025】
〔表面液流れ長さの測定方法〕
測定は20℃・65%RHの温湿度環境で行う。シート材料、ナプキン等はこの環境に12時間以上静置し、前記温湿度に対して十分に平衡状態に達するようにする。
(1)測定試料の調製
花王株式会社製の生理用ナプキンであるロリエさらさらクッションウイングなし(薬事販売名:ロリエNr)から表面シートのみを取り除く。その代わりにシート材料をナプキンに巻き付け、防漏層側で固定する。この場合、第1繊維層の表面液流れ長さを測定するのであれば第1繊維層を表面に向ける。第2繊維層の表面液流れ長さを測定するのであれば第2繊維層を表面に向ける。
(2)表面液流れ長さの測定
アクリル板で斜面の試験台を設ける。アクリル板の傾斜角度は適宜設定する(例えば45度)。角度は角度計で測定し、斜度誤差を±1度にする。また、傾斜方向と直交する方向ではアクリル板を水平にする。次いでアクリル板上に測定試料を載置する。測定試料の表面を定規等で二三度軽く押さえ、シート材料の浮きをなくす。この状態下に、マイクロチューブポンプを用いてシート材料にモデル血液1gを10秒間で滴下する。このとき、滴下用チューブの先端が測定試料における滴下位置から10mm上方になるようにする。測定試料における滴下位置は、測定試料の下端部から上側へ150mm寄りの位置で且つ測定試料の幅方向中央部とする。モデル血液としては0.1g/lの食用赤色2号で着色されたイオン交換水を用いた。モデル血液によってシート材料が最初に濡れた位置から、モデル血液がシート材料に最初に吸収された位置までの距離を測定し、その値を表面液流れ長さとする。測定は5回行いその平均値を求める。5回の測定のうち、1回でもモデル血液が吸収されず測定試料の下端部に達してしまった場合には、そのシート材料の表面液流れ長さは150mmとする。またモデル血液1gを滴下し終えた時点でモデル血液がシート材料の表面を全く流れずすべて吸収されて表面液流れ長さの測定が不可能な場合は、モデル血液が広がらなくなった時点でのシート材料の濡れ部分の上端から下端までの距離を測定し、その値を表面液流れ長さとする。
【0026】
第2繊維層2の親水性を第1繊維層1の親水性よりも高くするためには、例えば第1繊維層1を疎水性繊維を主体として構成し、一方第2繊維層2を親水性繊維を主体として構成すればよい。第1繊維層1及び第2繊維層2が何れも疎水性繊維から構成される場合には、第2繊維層2の構成繊維にのみ親水化油剤を付与したり、或いは、両繊維層の構成繊維の何れにも親水化油剤を付与し、その場合に第2繊維層2の構成繊維に付与する親水化油剤として、第1繊維層1の構成繊維に付与する親水化油剤よりも親水化度の高いものを用いればよい。親水化油剤は繊維の表面に塗布してもよく、或いは繊維に練り込んでもよい。親水化油剤を繊維の表面に塗布する場合には、原料繊維に塗布してもよく、或いは原料繊維から繊維集合体を形成した後に塗布してもよい。
【0027】
シート材料10の厚みは、その具体的な用途にもよるが、0.7〜13mm、特に1.3〜10mmであることが、嵩高性および圧縮変形性の点から好ましい。各層に厚みに関しては、第1繊維層1の厚みは0.5〜10mm、特に1〜8mmであることが好ましく、第2繊維層2の厚みは0.2〜3mm、特に0.3〜2mmであることが好ましい。厚みは、見掛け密度の測定方法に関して先に説明した方法で同様の方法に従い0.49cN/cm2加圧下で測定される。
【0028】
シート材料10に十分な圧縮変形性および嵩高感を発現させる観点から、シート材料10はその坪量が15〜200g/m2、特に25〜150g/m2であることが好ましい。同様の観点から、第1繊維層1の坪量は5〜120g/m2、特に10〜100g/m2であることが好ましく、第2繊維層2の坪量は10〜150g/m2、特に15〜100g/m2であることが好ましい。坪量は、シート材料10を50mm×50mm以上の大きさに裁断して測定片を採取し、この測定片の重量を最小表示1mgの電子天秤を用いて測定し坪量に換算することで求める。
【0029】
次に本実施形態のシート材料10の好ましい製造方法について説明する。シート材料10は、潜在捲縮性繊維を含む第1繊維集合体と、該潜在捲縮繊維と同種又は異種の潜在捲縮繊維を含む第2繊維集合体とを積層し、両繊維集合体を部分的に熱融着させて積層体となし、次いで該積層体を熱処理して各繊維集合体に含まれる前記潜在捲縮性繊維を捲縮させて各繊維集合体をその面内方向に熱収縮させ第1繊維集合体及び第2繊維集合体からそれぞれ第1繊維層及び第2繊維層を形成することで得られる。そして、その熱収縮に際して第2繊維集合体の面積収縮率を第1繊維集合体の面積収縮率よりも大きくすることで、第1繊維層を突出させて凸部4を形成する。
【0030】
各繊維集合体は好適にはカード機を用いて製造されたカードウエブからなる。両繊維集合体を部分的に熱融着させて積層体を得るには、例えば超音波エンボス加工や熱エンボス加工が用いられる。積層体の熱処理の温度は、各繊維集合体に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度以上とする。熱処理には例えば熱風の吹き付け(エアスルー加工)や赤外線の照射などが用いられる。各繊維集合体の面積収縮率は、収縮前の基準面積をS0とし、基準面積の収縮後の面積をS1とすると、以下の式で表される。
面積収縮率(%)=(S0−S1)/S0×100
【0031】
第2繊維集合体の面積収縮率を第1繊維集合体の面積収縮率よりも大きくするためには、例えば次の(a)〜(d)の方法が挙げられる。また、この(a)〜(d)の方法を採用することで、第2繊維層2に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いを、第1繊維層1に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高くすることができる。
【0032】
(a)第1繊維集合体に、前記積層体の熱処理の温度では実質的に熱収縮しない繊維(以下、非熱収縮繊維ともいう)を含有させておく。一方、第2繊維集合体には非熱収縮繊維を含有させず、第2繊維集合体を潜在捲縮性繊維のみから構成する。第1繊維集合体に非熱収縮繊維が含有されていることで、第1繊維集合体に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮が妨げられる。従って、前記積層体の熱処理時に、第1繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度が、第2繊維繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度に比べて相対的に低くなる。その結果、第2繊維集合体の面積収縮率が第1繊維集合体の面積収縮率よりも大きくなる。
【0033】
(b)第1繊維集合体及び第2繊維集合体のそれぞれに非熱収縮繊維を含有させておき、第1繊維集合体における非熱収縮繊維の配合割合を、第2繊維集合体における非熱収縮繊維の配合割合よりも高くする。この場合には、各繊維集合体においては、それに含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮が妨げられる。その妨げの程度は、非熱収縮繊維の含有割合が高い第1繊維集合体の方が大きい。従って、前記積層体の熱処理時に、第1繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度が、第2繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度に比べて相対的に低くなる。その結果、第2繊維集合体の面積収縮率が第1繊維集合体の面積収縮率よりも大きくなる。
【0034】
(c)第1繊維集合体と第2繊維集合体をと積層するに先立ち、第1繊維集合体にのみ予め熱エンボス加工を施しておく。これによって、第1繊維集合体に含まれている潜在捲縮性繊維の動きが、エンボス加工によって形成された融着点によって制限される。従って、前記積層体の熱処理時に、第1繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度が、第2繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度に比べて相対的に低くなる。その結果、第2繊維集合体の面積収縮率が第1繊維集合体の面積収縮率よりも大きくなる。
【0035】
(d)第1繊維集合体に含まれる潜在捲縮性繊維としてその捲縮開始温度が、第2繊維集合体に含まれる潜在捲縮性繊維の捲縮開始温度よりも高いものを用いる。捲縮開始温度が高い繊維と、該繊維よりも捲縮開始温度が低い繊維とでは、同温度で熱処理する場合、捲縮開始温度が高い繊維の方が捲縮が起こりづらい。従って、前記積層体の熱処理時に、第1繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度が、第2繊維集合体における潜在捲縮性繊維の捲縮の程度に比べて相対的に低くなる。その結果、第2繊維集合体の面積収縮率が第1繊維集合体の面積収縮率よりも大きくなる。
【0036】
以上の(a)〜(d)の方法においては、(a)の方法を(c)及び/又は(d)の方法と組み合わせることができる。また(b)の方法を(c)及び/又は(d)の方法と組み合わせることもできる。
【0037】
このようにして得られたシート材料10は、第1繊維層1から第2繊維層2へ向けて密度勾配が生じているので、該シート材料10を例えば液透過性の表面層、液不透過性の防漏層及び両層間に介在された液保持性の吸収層を備えた吸収性物品の表面層(表面シート)として用い且つ第1繊維層1の側の面を肌対向面とし、第2繊維層2を防漏層側を向くように配置した場合、第1繊維層1に排泄された液が素早く吸収される。また第1繊維層1の表面に液が残りにくくなる。第1繊維層1に凸部4が設けられている場合は、肌への接触面積が少なく、またクッション性もあるため、装着感の良好な吸収性物品が得られる。吸収性物品の吸収体として用い、第2繊維層2を防漏層側を向くように配置した場合も、表面シートから移行された液を第1繊維層1が素早く吸収し第2繊維層2へ移動するため、吸収性の高い吸収性物品を提供することが可能となる。
【0038】
またシート材料10をワイパーとして用いた場合、凸部4に立体捲縮した繊維を含むので、細かい繊維状のダストの捕集性に優れ、また凸部4間の凹部によってパン粉などの比較的大きなダストも捕集することができる。更に、平面方向に伸張させたときの回復性及び厚み方向へ圧縮させたときの回復性が高いので、清掃対象面への追従性が高く清掃効率が向上する。その上、清掃具への装着性も向上する。しかも、第2繊維層2にも立体捲縮した繊維が含まれていることから、目的に応じて第2繊維層2の側も清掃に供することができる。つまり両面タイプのワイパーとして用いることができる。
【0039】
またシート材料10は、凸部4に立体捲縮した繊維を含むのでその剛性が高く、その結果液体で濡れた場合でも凸状のドーム構造を確実に維持できる。従ってシート材料10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合、体液の透過あるいは吸収後に凸部4のドーム構造を維持できるので、肌への不快感、ムレ、カブレを防止することができる。また水性洗浄剤を含浸させたウエットワイパーとなした場合でも清掃性が低下することがない。
【0040】
本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態においては、第1繊維層1に含まれる立体捲縮した繊維はそのすべてが、第2繊維層2に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも低かったが、これに代えて、第2繊維層の見掛け密度が第1繊維層の見掛け密度よりも高くなる限度において第1繊維層1に、第2繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いと同程度に或いはそれ以上に立体捲縮した繊維を少量含ませてもよい。
【0041】
また前記実施形態のシート材料は多数の凸部を有する立体シートであったが、これに代えて凸部を有さない平坦なシート材料となしてもよい。そのようなシート材料は例えば、立体捲縮した繊維を含む第1繊維層と、該繊維と同種又は異種の立体捲縮した繊維を含む第2繊維層とを予め別個に作製しておき、両層をホットメルト粘着剤等の接着剤を用いて接合することで得られる。
【0042】
【発明の効果】
本発明のシート材料は、液体の引き込み性が高く、液体を素早く吸収できる嵩高でソフト感のあるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の立体シート材料の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1におけるII−II線断面図である。
【符号の説明】
1 第1繊維層
2 第2繊維層
3 熱融着部
4 凸部
10 シート材料
Claims (7)
- 立体捲縮した繊維を含む第1繊維層と、該繊維と同種又は異種の立体捲縮した繊維を含む第2繊維層とが積層されてなり、
第1繊維層及び第2繊維層何れにも、立体捲縮した前記繊維として、捲縮が発現した潜在捲縮性繊維のステープルファイバーが含まれており、
第2繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いが、第1繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高く、第2繊維層の見掛け密度が第1繊維層の見掛け密度よりも高くなっており、
第2繊維層の親水度が第1繊維層の親水度よりも高くなっているシート材料。 - 第1繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維と第2繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維とは異種のものであり、
各層に含まれている前記潜在捲縮性繊維が捲縮する前の状態において、該潜在捲縮性繊維を同条件下で捲縮させた場合、第1繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維よりも第2繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維の方が捲縮が起こりやすいものである請求項1記載のシート材料。 - 第1繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維と第2繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維とは同種のものであり、
第1繊維層が前記潜在捲縮性繊維及び捲縮・収縮を起こさない通常繊維を含む一方第2繊維層が前記潜在捲縮性繊維のみからなるか、又は前記潜在捲縮性繊維及び捲縮・収縮を起こさない通常繊維を含み、
第2繊維層が前記潜在捲縮性繊維及び前記通常繊維を含む場合、第2繊維層における該通常繊維の配合割合が、第1繊維層における前記通常繊維の配合割合よりも低くなっている請求項1記載のシート材料。 - 両繊維層が多数の接合部において部分的に接合されて厚さ方向に一体化されており、各接合部の間において第1繊維層が突出して多数の凸部を形成している請求項1〜3の何れかに記載のシート材料。
- 第1繊維層及び第2繊維層が何れも疎水性繊維から構成されており、第2繊維層の構成繊維にのみ親水化油剤が付与されているか、又は両繊維層の構成繊維の何れにも親水化油剤を付与し、第2繊維層の構成繊維に付与する親水化油剤として、第1繊維層の構成繊維に付与する親水化油剤よりも親水化度の高いものが用いられている請求項1記載のシート材料。
- 液透過性の表面層、液不透過性の防漏層及び両層間に介在された液保持性の吸収層を備えた吸収性物品において、
前記表面層又は吸収層として、立体捲縮した繊維を含む第1繊維層と、該繊維と同種又は異種の立体捲縮した繊維を含む第2繊維層とが積層されてなり、
第1繊維層及び第2繊維層何れにも、立体捲縮した前記繊維として、捲縮が発現した潜在捲縮性繊維のステープルファイバーが含まれており、
第2繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いが、第1繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高く、第2繊維層の見掛け密度が第1繊維層の見掛け密度よりも高くなっており、
第2繊維層の親水度が第1繊維層の親水度よりも高くなっているシート材料を用い、
前記シート材料は、前記第2繊維層が前記防漏層側を向くように配置されている吸収性物品。 - 液透過性の表面層、液不透過性の防漏層及び両層間に介在された液保持性の吸収層を備えた吸収性物品において、
前記表面層又は吸収層として、立体捲縮した繊維を含む第1繊維層と、該繊維と異種の立体捲縮した繊維を含む第2繊維層とが積層されてなり、
第1繊維層及び第2繊維層何れにも、立体捲縮した前記繊維として、捲縮が発現した潜在捲縮性繊維のステープルファイバーが含まれており、
各層に含まれている前記潜在捲縮性繊維が捲縮する前の状態において、該潜在捲縮性繊 維を同条件下で捲縮させた場合、第1繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維よりも第2繊維層に含まれている前記潜在捲縮性繊維の方が捲縮が起こりやすいものであり、
第2繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いが、第1繊維層に含まれる立体捲縮した繊維の捲縮の度合いよりも高く、第2繊維層の見掛け密度が第1繊維層の見掛け密度よりも高くなっているシート材料を用い、
前記シート材料は、前記第2繊維層が前記防漏層側を向くように配置されている吸収性物品。
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