しかしながら、上記特許文献1によれば、吸着コアおよび熱交換器は、フィンとチューブとからなる一般的な熱交換器で構成されており、それぞれがチューブに流通する熱媒体とフィンを介して熱交換しているため吸着コアおよび熱交換器が大型となる。さらに、吸着剤と冷媒とを熱交換するために吸着コアおよび熱交換器を筐体内に収容していることで吸着器本体がどうしても大型となる問題がある。
また、上記吸着コアおよび熱交換器に、例えば、熱容量の小さいアルミニウム材を用いると、筐体内に封入された冷媒、例えば、水とアルミニウムとの反応で水素ガスを発生してしまうため、これを防止するための特殊な表面処理がアルミニウム材に必要となることで製造コストが高い問題がある。
そこで、本発明の目的は、上記点を鑑みたものであり、フィンを設けずに内部に充填される吸着剤もしくは冷媒と外部を流通する熱媒体とが熱交換可能な熱交換部材を形成させることで、小型で製造コストの低減が図れることが可能な吸着式冷凍機用吸着器を提供することにある。
上記、目的を達成するために、請求項1ないし請求項25に記載の技術的手段を採用する。すなわち、請求項1に記載の発明では、吸着剤が気相冷媒を吸着する作用を利用して冷媒を蒸発させて、その蒸発潜熱により冷凍能力を発揮する吸着式冷凍機用吸着器において、内部に吸着剤を充填させて吸・脱着層を形成する第1熱交換部材(220)と、内部に冷媒を封入させて凝縮・蒸発面層を形成する第2熱交換部材(230)とを有し、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)は、吸着剤および冷媒が各々外部の熱媒体と熱交換すべく伝熱面積を増大させるための外部に突き出した複数の突出部(220a、230a)を形成して対向結合されることを特徴としている。
請求項1に記載の発明によれば、複数の突出部(220a、230a)の内部で吸着剤が冷媒を吸着・脱着できるとともに、複数の突出部(220a、230a)の外部に熱媒体を流通させることで吸着剤もしくは冷媒と熱媒体とが熱交換可能である。これにより、従来のフィンとチューブとからなる一般的な熱交換器よりも小型にすることが可能となる。しかも、外部に突き出した突出部(220a、230a)が吸着剤もしくは冷媒と熱媒体との伝熱面であるため、チューブおよびフィンなどの部品点数が低減されて製造コストが低減できる。
請求項2に記載の発明では、第1熱交換部材(220)側の突出部(220a)は、内部に充填される吸着剤の吸着作用における吸着効率、吸着速度、吸着剤の充填効率、もしくは突出部(220a)の側面側に掛かるひずみ量に基づいて、突き出し高さ(H)と、隣り合わせとなる突出部(220a)とのピッチ(P)とを求めて最適形状に形成されることを特徴としている。
請求項2に記載の発明によれば、内部に吸着剤が充填される第1熱交換部材(220)側の突出部(220a)の最適形状を吸着効率、吸着速度、充填効率、もしくは突出部(220a)に掛かるひずみ量に基づいて求めることが可能となった。これにより、突き出し高さ(H)とピッチ(P)とで必要吸着能力に応じた突出部(220a)の最適形状を形成できることで第1熱交換部材(220)の小型化が図れる。
請求項3に記載の発明では、突出部(220a)は、その突出部(220a)の外側と隣り合わせとなる突出部(220a)の外側との間に形成される隙間幅よりも突出部(220a)の内側幅のほうが大きく形成されることを特徴としている。
請求項3に記載の発明によれば、具体的には、隙間幅を狭くするほど熱伝達率の向上ができる。従って、内側幅を変化させることなく隙間幅を内側幅よりも小さく形成することにより、吸着剤の充填効率が向上できる。これにより、第1熱交換部材(220)の小型化が図れる。
請求項4に記載の発明では、突出部(220a)は、突き出し高さ(H)が好ましくは0.5mm以上、12mm以下であるとともに、隣り合わせとなる突出部(220a)とのピッチ(P)が好ましくは0.7mm以上、4mm以下であることを特徴としている。請求項4に記載の発明によれば、より具体的には、突き出し高さ(H)は高くなるほど吸着効率は悪化する。これは水蒸気の抵抗が大となるためである。
しかも、吸着能力は吸着効率に比例して、切換時間に反比例の関係であるため、突き出し高さ(H)が低くなるほど吸着速度が向上して切換時間が短縮できることで吸着能力の向上ができる。従って、最大が12mm以下であることにより、必要吸着剤量の低減および第1熱交換部材(220)の小型化が図れる。
さらに、突出部(220a)の内部は略真空状態で保たれているため、高すぎるとひずみ量が大きくなって突出部(220a)の側面側が湾曲して内部を閉塞させるため最大突き出し高さ(H)として12mm以下が望ましい。ただし、このときの12mmは、突出部(220a)の内部に吸着剤が充填されているときであり、吸着剤がないときは10mm以下が望ましい。
また、ピッチ(P)は、小さいほど吸着速度を向上できる。ただし、小さくするほど突出部(220a)の伝熱面の占める割合が増加するため、吸着剤の充填効率が低下するので、最小を0.7mm以上とすることにより所定の吸着効率を確保することができる。
請求項5に記載の発明では、第2熱交換部材(230)側の突出部(230a)は、内部に封入される冷媒の蒸発作用および凝縮作用における熱交換効率、もしくは突出部(230a)の側面側に掛かるひずみ量に基づいて、突き出し高さ(H)と、隣り合わせとなる突出部(230a)とのピッチ(P)とを求めて最適形状に形成されることを特徴としている。
請求項5に記載の発明によれば、内部に冷媒を封入する第2熱交換部材(230)側の突出部(230a)の最適形状を、熱交換効率もしくは突出部(230a)に掛かるひずみ量に基づいて求めることが可能となった。これにより、突き出し高さ(H)とピッチ(P)とで必要吸着能力に応じた突出部(230a)の最適形状を形成できることで第2熱交換部材(230)の小型化が図れる。
請求項6に記載の発明では、突出部(230a)は、第1熱交換部材(220)側の突出部(220a)のピッチ(P)と同じか、好ましくはより小さく形成されることを特徴としている。
請求項6に記載の発明によれば、第2熱交換部材(230)側のピッチ(P)を好ましくは小さく形成することで、第2熱交換部材(230)側の伝熱面積が増加することで蒸発作用および凝縮作用における熱交換効率を向上させることができる。これにより、第2熱交換部材(230)の小型化が図れる。
請求項7に記載の発明では、突出部(230a)は、第1熱交換部材(220)側の突出部(220a)の突き出し高さ(H)と同じか、好ましくはより低く形成されることを特徴としている。請求項7に記載の発明によれば、冷媒が封入される第2熱交換部材(230)側は、熱交換効率を向上するために突き出し高さ(H)を高くしたいが、突出部(230a)の側面側に掛かるひずみ量により限界がある。
ただし、この突出部(230a)にリブを形成すればこの限りではなく突き出し高さ(H)を、例えば10mmまでは可能となる。従って、10mmを超えなければ、両突出部(220a、230a)は同じ突き出し高さ(H)にでき、吸着側の熱交換効率と蒸発、凝縮の熱交換効率の向上ができる。
ところが、第1熱交換部材(220)側は、内部に吸着剤が充填されるため、第2熱交換部材(230)側よりも突き出し高さ(H)を高くしても最大ひずみ量を確保できる。従って、第1熱交換部材(220)側に吸着剤の充填量を多くすることができることで第1熱交換部材(220)の小型化が図れる。
請求項8に記載の発明では、第2熱交換部材(230)は、第1熱交換部材(220)よりも板厚を同じにするか、好ましくはより厚くするように形成されることを特徴としている。請求項8に記載の発明によれば、好ましくは板厚を厚くすることにより突き出し高さ(H)を高くすることができるので第2熱交換部材(230)側の熱交換効率を向上することができる。これにより、第2熱交換部材(230)の小型化が図れる。
請求項9に記載の発明では、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)は、熱伝導率の大きく、かつ板厚が0.3mm以下の金属材料からなることを特徴としている。請求項9に記載の発明によれば、熱容量を小さくすることができることで吸着能力の向上が図れる。
請求項10に記載の発明では、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)は、銅材料もしくは銅材料を含む合金材料から形成されることを特徴としている。請求項10に記載の発明によれば、例えば、熱容量の小さいアルミニウム材では水素ガスの発生を防止するために特殊な表面処理を施していたが、銅材料であればその必要がないので製造コストの低減が図れる。
請求項11に記載の発明では、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)は、突出部(220a、230a)が好ましくは互いにクロスとなるように対向結合されるか、より好ましくは互いに直交となるように対向結合されることを特徴としている。
請求項11に記載の発明によれば、突出部(220a、230a)の内部に封入された冷媒の蒸発、凝縮時における分布を均等とすることができる。さらに、第1熱交換部材(220)と第2熱交換部材(230)とを対向結合させたときに同一方向よりも強度の向上が図れる。
請求項12に記載の発明では、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)は、両者をろう付け、もしくは溶接による金属接合で結合されることを特徴としている。請求項12に記載の発明によれば、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)の内部を確実に気密状態にすることができる。
請求項13に記載の発明では、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)は、それぞれの外部に熱媒体を流通する第1、第2扁平チューブ(250b、260b)が配設され、第1、第2扁平チューブ(250b、260b)は、吸着剤と冷媒との熱交換が可能となるように、第1熱交換部材(220)もしくは第2熱交換部材(230)の外部と熱媒体とを熱交換するように構成されることを特徴としている。
請求項13に記載の発明によれば、第1、第2扁平チューブ(250b、260b)を介することで吸着剤もしくは冷媒と熱媒体との熱交換効率が若干低下するが、吸着剤もしくは冷媒との伝熱面に接触させることで吸着能力の向上が図れる。
請求項14に記載の発明では、第1熱交換部材(220)および第2熱交換部材(230)には、それぞれの外部を覆う第1、第2筐体(250、260)が設けられ、第1筐体(250)および第2筐体(260)は、吸着剤もしくは冷媒との熱交換が可能となるようにそれぞれの熱媒体を流通させて、第1熱交換部材(220)もしくは第2熱交換部材(230)の外部と熱媒体とを熱交換するように構成されることを特徴としている。
請求項14に記載の発明によれば、突出部(220a、230a)の内部と外部とが直接熱交換ができるため熱交換効率の向上が図れる。これにより、小型の吸着器として構成することが可能となる。
請求項15に記載の発明では、第1筐体(250)および第2筐体(260)は、その内側に第1熱交換部材(220)もしくは第2熱交換部材(230)のそれぞれの外部を覆って対向結合されることを特徴としている。
請求項15に記載の発明によれば、第1、第2筐体(250、260)が第1熱交換部材(220)もしく第2熱交換部材(230)に対して簡素な構造で吸着器として構成できるため従来よりも大幅な製造コストの低減が図れる。
請求項16に記載の発明では、第1筐体(250)および第2筐体(260)には、それぞれの突出部(220a、230a)の先端側に向けて熱媒体を流通させるように流入口(250a、260a)を形成したことを特徴としている。
請求項16に記載の発明によれば、末端側に形成される突出部(220a、230a)の根元側は、相手側の第1熱交換部材(220)もしくは第2熱交換部材(230)と結合するために、例えば、つぶし加工などで平滑面になるように成形していることで、隣り合う突出部(220a、230a)の外部との隙間がつぶれやすいため先端側に向けて熱媒体を流通させるようにすることにより熱交換効率の向上が図れる。
請求項17に記載の発明では、第1筐体(250)および第2筐体(260)は、樹脂材料から形成され、対向結合された後に、少なくとも二つ以上の複数個積層されることを特徴としている。請求項17に記載の発明によれば、小型の吸着器が構成できるとともに、熱伝導率の小さい樹脂材料で形成すれば積層による熱損失がない。
請求項18に記載の発明では、第1熱交換部材(220)と第2熱交換部材(230)との間には、熱伝導率の小さい金属材料からなるメッシュ状の区画部材(240)が設けられることを特徴としている。
請求項18に記載の発明によれば、突出部(220a、230a)内に封入された冷媒が吸着によって蒸発するときに、上方の吸着剤に向けて水飛び現象が発生するが、区画部材(240)により水飛びを防止することができる。これにより、吸着剤の吸着能力の低下を防止することができる。さらに、熱伝導率の小さい金属材料とすることにより、第1熱交換部材(220)と第2熱交換部材(230)との断熱が図れる。
請求項19に記載の発明では、区画部材(240)は、ステンレス材料から形成されることを特徴としている。請求項19に記載の発明によれば、具体的には、ステンレス材料で形成することにより、飛び出した冷媒が吸着剤に付着することで吸着能力が低下することを防止することができるので吸着能力の向上が図れるとともに耐腐食性にも優れる。
請求項20に記載の発明では、第1熱交換部材(220)は、その内部に充填される吸着剤の内側に第2熱交換部材(230)側の内部と連通する通風路(220c)が形成されることを特徴としている。
請求項20に記載の発明によれば、突き出し高さ(H)が高くなると冷媒の水蒸気抵抗が増加することで吸着剤の吸着速度が低下するが、通風路(220c)が形成されることにより吸着効率の向上が図れる。これにより、吸着剤の必要充填量を低減できるため製造コストの低減が図れる。
請求項21に記載の発明では、第2熱交換部材(230)は、その内部に封入される冷媒を吸い込んで保持する保持部材(230c)が設けられることを特徴としている。請求項21に記載の発明によれば、保持部材(230c)がないときは、吸着式冷凍機の設置を吸着器が水平方向に設置するように施工指導してきたが、保持部材(230c)が設けられることにより、冷媒の液面が傾くことがないため水平設置の施工上の注意点を省略することができる。
請求項22に記載の発明では、第1熱交換部材(220)と第2熱交換部材(230)との間には、所定の板厚(α)からなり、第1熱交換部材(220)と第2熱交換部材(230)とを連通する連通孔(242a)およびその連通孔(242a)に対して直交方向に形成された空洞(242b)を有する断熱部材(242)が設けられることを特徴としている。
請求項22に記載の発明によれば、所定の板厚αを有することで熱伝導率が小さいことで、上述したメッシュ状の区画部材(240)よりも熱移動のロスが低減できる。また、第1熱交換部材(220)と第2熱交換部材(230)とが傾いたときに、第2熱交換部材(230)の見掛けの高さが断熱部材(242)の板厚(α)が加わることで許容傾斜角度θを大きくすることができる。
請求項23に記載の発明では、断熱部材(242)は、セラミックス材もしくはガラス材のいずれかで形成していることを特徴としている。請求項23に記載の発明によれば、これらの材料は一般的な樹脂材料に比べて、真空状態の雰囲気内で用いられることで材料からの溶出ガスを発生させない材料として好適である。
請求項24に記載の発明では、連通孔(242a)は、少なくとも複数個形成していることを特徴としている。請求項24に記載の発明によれば、第2熱交換部材(230)内の水蒸気(冷媒)の移動が抵抗なく移動させることができる。
請求項25に記載の発明では、空洞(242b)は、少なくとも一つまたは二つ以上形成されるとともに、その開口端が冷媒を封入する注入口(244)に接続されることを特徴としている。請求項25に記載の発明によれば、内部に冷媒を封入する充填作業における真空引きするときに、注入口(244)により短時間で所定の真空度を得ることができる。
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態の具体的手段との対応関係を示すものである。
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態における吸着式冷凍機用吸着器を図1ないし図5に基づいて説明する。図1は本発明の吸着式冷凍機用吸着器(以下、吸着器と称する)を車両用空調装置用吸着式冷凍機に適用したものであり、その吸着式冷凍機の全体構成を示す模式図であり、図2および図3は吸着器200の全体構成を示す模式図である。
本実施形態の吸着式冷凍機は、図1に示すように、100は車両走行用の水冷エンジン(水冷式内燃機関)であり、200は本実施形態による吸着器であって、同じものが2個設けられており、一方が吸着作用を行なうときに他方が脱離作用を行なう。そして、吸着作用が終了したときに一方が脱離作用を行ない他方が吸着作用を行なうようになっている。
400は、室内に吹き出す空気の通路を構成する空調ケースであり、この空調ケース400の空気流れ上流側には、空調ケース400内に空気を流通させる遠心式送風機(以下、送風機と称する。)410が設けられている。420は空調ケース400内を流通する空気を冷却する室内熱交換器であり、この室内熱交換器は、熱媒体を介して吸着器200から冷凍能力を得ている。なお、本実施形態では、熱媒体として水にエチレングリコール系の不凍液を混合した流体(エンジン100の冷却水と同じもの)を採用している。
500は吸着器200から流出する熱媒体と室外空気とを熱交換し、熱媒体を冷却する室外熱交換器であり、510、520は熱媒体の循環経路を切り換える切換弁であり、これら切換弁510、520、熱媒体を循環させるポンプ(図示せず。)、および送風機410は、電子制御装置(図示せず)によりその作動が制御されている。
ところで、本実施形態の吸着器200は、図1ないし図3に示すように、内部に吸着剤221を充填させて吸・脱着層を形成する第1熱交換部材220と、内部に冷媒を封入させて凝縮・蒸発面層を形成する第2熱交換部材230と、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230との間に設けられる区画部材240と、第1熱交換部材220の外部を覆う第1筐体250と、第2熱交換部材220の外部を覆う第2筐体260とから構成されている。
第1熱交換部材220および第2熱交換部材230は、金属材料からなる板材に、外部に突き出した複数の突出部220a、230aを形成させたものであり、その金属材料の中で熱伝導率の大きい銅材、もしくは銅を含む合金材料から形成している。しかも、その板厚は、熱容量を小さくするために、例えば、0.3mm程度以下にしたものが望ましい。
突出部220a、230aは、長手方向に対して矩形状の溝部となっており、詳しくは後述するが、第1熱交換部材220の突出部220aの内部に充填される吸着剤221の吸着能力、および第2熱交換部材230の突出部230aの内部に封入される冷媒の蒸発能力、凝縮能力に基づいて、所定の突き出し高さH、所定のピッチPに基づいて形成されている。
なお、突き出し高さHは、図2に示すように、突出部220a、230aの山部と谷部との高低差を称し、ピッチPは、隣り合う突出部220a、230aとの山部(または、谷部)間との距離を称している。そして、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230の外周には、平滑面からなる鍔部220b、230bが形成されており、上記突出部220a、230aを対向するように鍔部220b、230bを組み合わせて、突出部220a、230aの内部が略真空状態を保つように結合されるものである。
さらに、第1熱交換部材220の突出部220aの内部には、所定量の吸着剤221(本実施形態では、例えば、シリカゲル)が接着固定により充填されている。また、第2熱交換部材230の突出部230aの内部には、所定量の冷媒(本実施形態では、水)が封入されている。なお、本実施形態では、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230を銅材、もしくは銅を含む合金材料から形成したが、これに限らず、これらの他にアルミニウムもしくはアルミニウムを含む合金材料でも良い。
ただし、アルミニウム系の材料では、封入された冷媒、例えば、水とアルミニウムとの反応で水素ガスを発生してしまうため、これを防止するための特殊な表面処理(例えば、ガラス皮膜)が必要である。
そして、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230との間に設けられる区画部材240は、熱伝導率の小さい金属材料(本実施形態では、ステンレス材料)からなるメッシュ状に形成された仕切り板であり、突出部230aの内部に封入される冷媒が蒸発作用のときに発する水飛びを、上方の吸着剤221に直接あたることのないようにしたものである。
ところで、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230は、区画部材240を挟み込んで、突出部220a、230aの内部が略真空状態を保つように、例えば、溶接、ろう付けなどの金属接合により鍔部220b、230bを結合している。なお、吸着剤221は結合する前に突出部220aの内部に接着固定されるが、冷媒は第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とが結合した後に、図示しない注入口より複数の突出部230a内部に所定量封入されるようにしている。
次に、第1筐体250と第2筐体260は、それぞれが第1熱交換部材220もしくは第2熱交換部材230の外部を覆うように形成されたウォータジャケットであって、図2に示すように、第1筐体250側には隣り合わせとなる突出部220aの外部との隙間に熱媒体Aが循環するように形成され、第2筐体260側には隣り合わせとなる突出部220bの外部との隙間に熱媒体Bが循環するように形成されている。
より具体的には、第1筐体250および第2筐体260は、樹脂材料からなる成形品であり、図4(a)および図4(b)に示すように、それぞれの突出部220a、230aの先端側に向けて熱媒体A、Bを流通させるように流入口250a、260aを形成して、上述した隙間にそれぞれの熱媒体A、Bが循環されるように形成している。
そして、それぞれの第1筐体250および第2筐体260は、図3(b)に示すように、その内側に結合された第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを挟み込んで、第1熱交換部材220側に第1筐体250を結合し、第2熱交換部材230側に第2筐体260を結合している。
これにより、それぞれの突出部220a、230aの外部にそれぞれの熱媒体A、Bが流通される。なお、第1筐体250および第2筐体260は、溶着、接着もしくはゴムなどの気密部材などにより、第1熱交換部材220もしくは第2熱交換部材230に結合される。
なお、本実施形態では、図3(b)に示すように、吸着器200を単数で構成したが、これに限らず、二つ以上の複数個を積層させて吸着器200構成しても良い。具体的には、図5(a)および図5(b)に示すように、3個の吸着器200を積層したものであり、これによれば、蒸発能力もしくは吸着能力に応じた小型化が図れる吸着器200が形成できる。
以上の構成による吸着器200は、内部に充填される吸着剤221の吸着能力が効率的に発揮するために外部に突き出した複数の突出部220aを第1熱交換部材220に形成するとともに、その突出部220aの外部に熱媒体Aを循環するように第1筐体250を形成したものである。つまり、吸着作用における伝熱面積である突出部220aを増大させて吸着能力を向上させることで吸着器200の小型化を図ることが可能である。
そこで、発明者らの研究により、吸着剤の吸着能力、吸着速度、充填効率、もしくは突出部220aの側面側に掛かるひずみ量に基づいて、突出部220aの突き出し高さHとそのピッチPを求めて最適形状を見出したので図6ないし図9に基づいて説明する。
図6は突出部220aの内部に充填される吸着剤221の充填厚さと吸着能力との関係を示す特性図であり、図7は隣り合わせとなる突出部220aとのピッチPと吸着能力との関係を示す特性図である。また、図8は突き出し高さHと吸着器200の必要個数との関係を示す特性図であり、図9は突き出し高さHとひずみ量との関係を示す特性図である。
まず、図6に示すように、左上に示すのが計算モデルであり、突出部220aの内部に吸着剤221が充填され、その突出部220aの外部に熱媒体Aを流通させている。図中に示すδが吸着剤221の充填厚さである。そして、この計算モデルからピッチPを固定して、充填厚さδをパラメータとして、吸着効率と切替時間との関係を算出した特性であり、ここでは、充填厚さδが厚くなると吸着効率が低下している。これは、充填厚さδが厚くなるほど、蒸発された冷媒の水蒸気の抵抗が大きくなることで吸着効率が低下する。
さらに、吸着能力は、吸着効率に比例し切替時間に反比例の関係となるので、この充填厚さδが厚くなると切替時間も長くなる。なお、この切替時間は吸着剤221の吸着速度を示すものであり、例えば吸着速度が速くなれば切替時間が短縮されることになる。因みに、本特性においては、ピッチPが2.5mmで切替時間が140secのときに、吸着効率を0.7以上確保するためには、充填厚さδが8mm以下にする必要がある。
従って、充填厚さδ、言い換えれば、突出部220aの突き出し高さHを低くするほど、吸着速度が向上し切替時間も短縮されて吸着能力が向上することとなる。これにより、吸着剤221の必要充填量が低減できるとともに、吸着器200本体の小型化が図れる。
一方、ピッチPは、図7に示すように、計算モデルから充填厚さδおよび第1熱交換部材220の板厚を固定して伝熱距離(ピッチP)と吸着効率との関係を算出した特性であり、この特性によれば、伝熱距離(ピッチP)が小さいほど吸着効率を高めることができる。ただし、実用上伝熱距離(ピッチP)を小さくするほど突出部220aの占める容積が増大し、単位長さあたりの吸着剤221の充填量が低下することで吸着効率が低下する。
これを示したのが図中に破線で示す特性であり吸着効率においてピーク値が存在することを見出した。従って、吸着効率が0.7以上を達成可能なピッチPは0.7mm以上、4mm以下が望ましい。
ところで、上述したように、突き出し高さHを低くすれば吸着速度が向上して吸着能力が向上することができるが、単位面積あたりの吸着剤充填量、つまり充填効率が小さくなるため所定の吸着能力を達成すべく必要充填量を充填すると吸着器200の必要床面積が増加してくる。そこで、仮に必要床面積を固定すると、上述したように吸着器200の台数を増加するようになる(図5参照)。
そこで、図8に示すように、吸着器200の必要床面積を固定して、吸着器200の必要台数と突き出し高さHとの関係を算出した特性であり、これによれば、突き出し高さHを高くするほど必要台数を低減できる。なお、ここでは、条件として、水蒸気の抵抗のない理想値と水蒸気の抵抗ありの実用値とにおける必要台数と突き出し高さHとの関係を算出して比較した。このときの差が吸着剤221の必要充填量の増加分であることを見出した。
ところで、突き出し高さHは、高くするほど外部からの外圧(熱媒体の循環水圧力+真空)により突出部200aの側面側がひずみにより湾曲して突出部200aの内部が閉塞されるため最大高さの制約が伴う。これを求めた特性が図9であり、第1熱交換部材220の板厚とリブの有無をパラメータとして、突き出し高さHとひずみ量との関係を算出した特性である。
なお、ここでは、突出部200aの内部に吸着剤221を充填させないときの特性である。また、図中に示す0.3および0.4の数値はリブを形成したときのリブ高さである。これによれば、突き出し高さHが10mmまでは突出部200aの側面側にリブを設ければひずみ量を問題なきレベルまで抑えることが可能である。
ただし、第1熱交換部材220の板厚を増加させて厚くするとリブを設けることはなくなるが、板厚を増加させると熱容量が増加するここと製造コストの増加を招く問題があるため、熱容量を小さくするようにしたほうが望ましい。なお、図9で求めた最大突き出し高さHである10mmは、突出部200aの内部に吸着剤を充填しないときの条件であるので吸着剤を充填されたときは、突き出し高さHが12mm以下とすることが望ましい。
これのことより、最適形状の突出部220aの突き出し高さHを0.5mm以上、12mm以下、ピッチPを0.7mm以上、4mm以下とすることにした。これによれば、吸着効率、吸着速度、充填効率、もしくはひずみ量が最良となるため吸着能力の向上が図れることで小型化できるとともに、吸着剤221の必要充填量の低減も図れる。
次に、第2熱交換部材230側の突出部230aの最適形状についても上述と同じように計算モデルを用いて求めることが可能である。ただし、第2熱交換部材230側では、内部に封入される冷媒の蒸発作用、凝縮作用における熱交換効率、もしくは上述したひずみ量に基づいて突出部230aの突き出し高さHとそのピッチPを求めて最適形状とするものである。なお、本実施形態では、突出部220aの突き出し高さHを0.5mm以上、10mm以下、ピッチPを0.7mm以上、4mm以下として、第1熱交換部材220とは突き出し高さH―の最大を10mm以下とすることにした。
次に、以上の構成による吸着式冷凍機の作動について説明する。まず、図1に示すように、ポンプ(図示せず)および送風機410を作動させて熱媒体および空気を流通させるとともに、切換弁510、520を作動させて、第1吸着器200(以下、左側の吸着器を称する)側の第1筐体250と室外熱交換器500の間、第2吸着器200(以下、右側の吸着器を称する)側の第2筐体260と室外熱交換器500との間、エンジン100と第2吸着器200側の第1筐体250との間、並びに第1吸着器200側の第2筐体260と室内熱交換器420との間で熱媒体を循環させる。以下、このような状態を第1状態と呼ぶ。
このとき、第1吸着器200側の第2筐体260には、室内に吹き出す空気により加熱された熱媒体が循環するので、第2熱交換部材230内の液相冷媒を蒸発させるとともに、この液相冷媒の蒸発時の蒸発潜熱により第2熱交換部材230にて冷却された熱媒体により室内に吹き出す空気が冷却される。
これと同時に、第1吸着器200側の第1熱交換部材220では、蒸発した気相冷媒を吸着して蒸発を促進する。なお、吸着剤221は、気相冷媒を吸着する際に熱(凝縮熱)を発生するとともに、吸着剤221の温度が上昇すると、水分の吸着能力が低下するため、室外熱交換器500と第1筐体250との間で熱媒体を循環させて吸着剤221の温度上昇を抑制する。なお、以下、このような状態にある第1吸着器200のことを、蒸発・吸着状態にある吸着器と呼ぶ。
一方、第2吸着器200側の第1筐体250には、エンジン100の冷却水が流入するため、第1熱交換部材220に接着された吸着剤221が加熱され、吸着していた水分を放出(脱離)する。このとき、第2吸着器200側の第2筐体260には、室外熱交換器500にて冷却された熱媒体が流通しているので、脱離した気相冷媒(水蒸気)は、第2熱交換部材230にて冷却されて凝縮する。なお、以下、このような状態にある第2吸着器200のことを、凝縮・脱離状態にある吸着器と呼ぶ。
このように、第1状態では、第1吸着器200側においては、冷媒の蒸発及びその蒸発した気相冷媒の吸着が行われ、一方、第2吸着器200側においては、吸着していた水分の脱離、及びその蒸発した気相冷媒の冷却凝縮が行われる。従って、第1吸着器200側の第2熱交換部材230は液相冷媒を蒸発させる蒸発器として機能し、第2吸着器300側の第2熱交換部材230は気相冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。
次に、第1状態での運転が所定時間経過したときには、図10に示すように、切換弁510、520を作動させて第2吸着器200側の第1筐体250と室外熱交換器500の間、第1吸着器200側の第2筐体260と室外熱交換器500との間、エンジン100と第1吸着器200側の第1筐体250との間、並びに第2吸着器200側の第2筐体260と室内熱交換器420との間で熱媒体を循環させる。以下、このような状態を第2状態と呼ぶ。
このとき、第2吸着器200側の第2筐体260には、室内に吹き出す空気により加熱された熱媒体が循環するので、第2熱交換部材230内の液相冷媒を蒸発させるとともに、この液相冷媒の蒸発時の蒸発潜熱により第2熱交換部材230にて冷却された熱媒体により室内に吹き出す空気が冷却される。
これと同時に、第2吸着器200側の第1熱交換部材220では、蒸発した気相冷媒を吸着して第1熱交換部材220内の圧力が上昇することを抑制するとともに、室外熱交換器500と第1筐体250との間で熱媒体を循環させて吸着剤221の温度上昇を抑制する。
一方、第1吸着器200側の第1筐体250には、エンジン100の冷却水が流入するため、第1状態にて第1熱交換部材220に接着された吸着剤221が加熱され、吸着していた水分を放出(脱離)する。このとき、第1吸着器200側の第2筐体260には、室外熱交換器500にて冷却された熱媒体が流通しているので、脱離した気相冷媒(水蒸気)は、第2熱交換部材230にて冷却されて凝縮する。
このように、第2状態では、第2吸着器200側においては、冷媒の蒸発及びその蒸発した気相冷媒の吸着が行われ、一方、第1吸着器200側においては、吸着していた水分の脱離、及びその蒸発した気相冷媒の冷却凝縮が行われる。従って、第2吸着器200側の第2熱交換部材230は液相冷媒を蒸発させる蒸発器として機能し、第1吸着器200側の第2熱交換部材230は気相冷媒を凝縮させる凝縮器として機能する。
そして、所定時間が経過したときには、再び第1状態とする。このように、第1状態と第2状態とを所定時間毎に繰り返しながら、吸着式冷凍機を連続的に稼働させる。なお、上記所定時間は、第1熱交換部材220の吸着剤221の水分吸着能力に基づいて選定されるものである。
以上の第1実施形態における吸着式冷凍機用吸着器によれば、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230は、吸着剤221および冷媒が各々外部の熱媒体と熱交換すべく伝熱面積を増大させるための外部に突き出した複数の突出部220a、230aを形成して対向結合されることにより、突出部220a、230aの内部で吸着剤221が冷媒を吸着・脱着できるとともに、突出部220a、230aの外部に熱媒体を流通させることで吸着剤221もしくは冷媒と熱媒体とが熱交換可能である。
これにより、従来のフィンとチューブとからなる一般的な熱交換器よりも小型にすることが可能となる。しかも、外部に突き出した突出部220a、230aが内部の吸着剤221もしくは冷媒と熱媒体との直接の伝熱面であるため、チューブおよびフィンなどの部品点数が低減されて製造コストが低減できる。
また、内部に吸着剤が充填される第1熱交換部材220側の突出部220aの最適形状を吸着効率、吸着速度、充填効率、もしくは突出部220aに掛かるひずみ量に基づいて求めることが可能となった。
これにより、突き出し高さHとピッチPとで必要吸着能力に応じた突出部220aの最適形状を形成できることで第1熱交換部材220の小型化が図れる。より具体的には、突き出し高さHが好ましくは0.5mm以上、10mm以下であるとともに、隣り合わせとなる突出部220aとのピッチPが好ましくは0.7mm以上、4mm以下としたことにより、突き出し高さHは高くなるほど冷媒の水蒸気の抵抗が大となることで吸着効率は悪化する。
さらに、吸着能力は吸着効率に比例して、切替時間に反比例の関係であるため、突き出し高さHが低くなるほど吸着速度が向上して切換時間が短縮できることで吸着能力の向上ができる。従って、最大が10mm以下であることにより、必要吸着剤量の低減および第1熱交換部材220の小型化が図れる。
しかも、突出部220aの内部は略真空状態で保たれているため、高すぎるとひずみ量が大きくなって突出部220aの側面側が湾曲して内部を閉塞させるため最大突き出し高さHとして10mm以下が望ましい。また、ピッチPは、小さいほど吸着速度を向上できる。ただし、小さくするほど突出部220aの伝熱面の占める割合が増加するため、吸着剤の充填効率が低下するので、最小を0.7mm以上とすることにより所定の吸着効率を確保することができる。
また、第2熱交換部材230側の突出部230aは、内部に封入される冷媒の蒸発作用および凝縮作用における熱交換効率、もしくは突出部230aの側面側に掛かるひずみ量に基づいて、突き出し高さHと、隣り合わせとなる突出部230aとのピッチPとを求めて最適形状に形成されることにより、これにより、突き出し高さHとピッチPとで必要吸着能力に応じた突出部230aの最適形状を形成できることで第2熱交換部材230の小型化が図れる。
また、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230は、熱伝導率の大きく、かつ板厚が0.3mm以下の金属材料から形成されることにより、熱容量を小さくすることができることで吸着能力の向上が図れる。より具体的には、その金属材料の中で銅材料もしくは銅材料を含む合金材料から形成されることにより、例えば、熱容量の小さいアルミニウム材では水素ガスの発生を防止するために特殊な表面処理を施していたが、銅材料であればその必要がないので製造コストの低減が図れる。
さらに、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とは、両者をろう付け、もしくは溶接による金属接合で結合されることより、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230の内部を確実に気密状態にすることができる。
また、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230との間には、熱伝導率の小さい金属材料からなるメッシュ状の区画部材240が設けられることにより、突出部220a、230a内に封入された冷媒が吸着によって蒸発するときに、上方の吸着剤221に向けて水飛び現象が発生するが、区画部材240により水飛びを防止することができる。
これにより、吸着剤221の吸着能力の低下を防止することができる。さらに、その金属材料をステンレス材料から形成されることより第1熱交換部材220と第2熱交換部材230との断熱が図れるとともに、飛び出した冷媒が吸着剤221に付着して吸着能力の低下を防止することができるので吸着能力の向上が図れるとともに耐腐食性にも優れる。
また、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230には、それぞれの外部を覆う第1、第2筐体250、260が設けられ、その第1筐体250および第2筐体260は、吸着剤221もしくは冷媒との熱交換が可能となるようにそれぞれの熱媒体を流通させて、第1熱交換部材220もしくは第2熱交換部材230の外部と熱媒体とを熱交換するように構成されることにより、突出部220a、230aの内部と外部とが直接熱交換ができるため熱交換効率の向上が図れる。これにより、小型の吸着器200として構成することが可能となる。
また、第1筐体250および第2筐体260は、その内側に第1熱交換部材220もしくは第2熱交換部材230のそれぞれの外部を覆って対向結合されることにより、第1、第2筐体250、260が第1熱交換部材220もしく第2熱交換部材230に対して簡素な構造で吸着器として構成できるため従来よりも大幅な製造コストの低減が図れる。
さらに、第1筐体250および第2筐体260には、それぞれの突出部220a、230aの先端側に向けて熱媒体を流通させるように流入口250a、260aを形成したことにより、末端側に形成される突出部220a、230aの根元側は、相手側の第1熱交換部材220もしくは第2熱交換部材230と結合するために、例えば、つぶし加工などで平滑面になるように成形していることで、隣り合う突出部220a、230aの外部との隙間がつぶれやすいため先端側に向けて熱媒体を流通させるようにすることにより熱交換効率の向上が図れる。
また、第1筐体250および第2筐体260は、樹脂材料から形成され、対向結合された後に、少なくとも二つ以上の複数個積層されることにより、小型の吸着器200が構成できるとともに、熱伝導率の小さい樹脂材料で形成すれば積層による熱損失がない。
(第2実施形態)
以上の第1実施形態では、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230の突出部220a、230aを同一の突き出し高さHとピッチPとで形成してそれぞれを対向結合させたが、これに限らず、第1熱交換部材220側の突出部220aと第2熱交換部材230側の突出部230aとを異なる突き出し高さH、もしくはピッチPにしても良い。
具体的には、図11ないし図14に基づいて説明する。図11はピッチPを第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを異なるように形成したものであり、つまり、第2熱交換部材230側のピッチP2を第1熱交換部材220側のピッチP1よりも小さく形成したものである。これによれば、第2熱交換部材230側の伝熱面積が増加することで蒸発作用および凝縮作用における熱交換効率を向上させることができる。これにより、第1実施形態よりもより第2熱交換部材230の小型化が図れる。
次に、図12に示すように、突き出し高さHを第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを異なるように形成したものである。具体的には、第2熱交換部材230側の突き出し高さH2を第1熱交換部材220側の突き出し高さH1よりも低く形成したものである。これによれば、冷媒が封入される第2熱交換部材230側は、熱交換効率を向上するために突き出し高さHを高くしたいが、突出部230aの側面側に掛かるひずみ量により限界がある。
ただし、突出部230aにリブを形成すればこの限りではなく突き出し高さHを、例えば10mmまでは可能となる。従って、10mmを超えなければ、両突出部220a、230aは同じ突き出し高さ(H)にでき、吸着側の熱交換効率と蒸発、凝縮の熱交換効率の向上ができる。
ところが、第1熱交換部材220側は、内部に吸着剤が充填されるため、第2熱交換部材230側よりも突き出し高さHを高くしても最大ひずみ量を確保できるので第2熱交換部材220側よりもたかくすることができる。従って、第1熱交換部材220側に吸着剤の充填量を多くすることができることで第1熱交換部材220の小型化が図れる。
次に、図13(a)および図13(b)に示すように、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230の突出部220a、230aが互いに直交となるように対向結合させても良い。これによれば、突出部220a、230aの内部に封入された冷媒の蒸発、凝縮時における分布を均等とすることができる。しかも、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを対向結合させたときに第1実施形態および本実施形態の同一方向に組み合わせた場合よりも強度の向上が図れる。
なお、以上の実施形態では、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230の板厚を、例えば、0.3mm以下として同一のものを組み合わせたが、これに限らず、第2熱交換部材230の板厚は、第1熱交換部材220よりも板厚を厚くするように形成させても良い。これによれば、板厚を厚くすることにより突き出し高さHを高くすることができるので第2熱交換部材230側の熱交換効率を向上することができる。これにより、第2熱交換部材230の小型化が図れる。
(第3実施形態)
本実施形態では、以上の第1、第2実施形態よりも、さらに第1熱交換部材220側の吸着能力を向上させた一例であり、図14および図15に基づいて説明する。具体的には、図14に示すように、第1熱交換部材220側の突出部220aは、その突出部220aの外側と隣り合わせとなる突出部220aの外側との間に形成される隙間幅W2よりも突出部220aの内側幅W1のほうが大きく形成させたものである。
これによれば、隙間幅を狭くするほど熱伝達率の向上ができる。従って、内側幅を変化させることなく隙間幅W2を内側幅W1よりも小さく形成することにより、単位面積あたりの突出部220aの数が多くなることで吸着剤の充填効率が向上できる。これにより、第1熱交換部材220の小型化が図れる。
次に、図15に示すように、第1熱交換部材220は、その内部に充填される吸着剤221の内側に第2熱交換部材230側の内部と連通する通風路220cを形成させると良い。これによれば、突き出し高さHが高くなると冷媒の水蒸気抵抗が増加することで吸着剤の吸着速度が低下するが、通風路220cが形成されることにより、吸着効率の向上が図れる。これにより、吸着剤の必要充填量を低減できるため製造コストの低減が図れる。
(第4実施形態)
以上の実施形態では、突出部220a、230aの形状を長手方向に対して矩形状の溝部で形成させたが、これに限らず、横断面の形状が略楕円状からなる突出部220a、230aを縦列および横列に複数個形成しても良い。
さらに、以上の実施形態では、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを別体で形成して対向結合するように構成したが、これに限らず、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを一体に形成して対向結合するように構成しても良い。
具体的には、図16に示すように、図中左側に第1熱交換部材220と図中右側に第2熱交換部材230とを一体に構成するとともに、それぞれの突出部220a、230aを横断面の形状が略楕円状で形成し、かつ縦列および横列に複数個、左右対称となるように形成したものである。そして、左右の第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを図中に示す矢印の方向に組み合わせることで対向させることができるようになっている。
ところで、突出部220a、230aの縦断面の形状は、以上の実施形態と同様の形状である。以上の構成によれば、単位面積あたりの突出部220a、230aの伝熱面積を増加することが可能となる。なお、本実施形態では、突出部220a、230aの横断面の形状を略楕円状に形成したが、この形状には限らない。
(第5実施形態)
以上の実施形態では、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230との間に、熱伝導率の小さいステンレス材料からなるメッシュ状の区画部材240を配設したが、これに限らず、所定の板厚からなる断熱部材242を配設させても良い。本実施形態では、メッシュ状の区画部材240よりも熱移動のロスの低減と、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230との内部に冷媒を封入する注入口244の配設のしやすさとを図っている。
具体的には、図17および図18に示すように、メッシュ状の区画部材240の代わりに所定の板厚αを有する断熱部材242を配設するとともに、その断熱部材242には、第1熱交換部材220と第2熱交換部材230とを連通する連通孔242aおよびその連通孔242aに対して直交方向に形成された空洞242bを形成している。
また、上下方向に貫通する連通孔242aはn個以上複数個形成され、水平方向に貫通する空洞242bは、少なくとも外径φ相当の空洞が一つ形成されている。そして、その空洞242bの開口端に冷媒を封入する注入口244が差し込まれるように形成している。
そして、この断熱部材242は、セラミックス材もしくはガラス材から形成している。これは、真空状態が保たれる突出部220a、230a内部にて、樹脂材料のように材料からの溶出ガスが発生しない断熱材としている。
以上の構成による本実施形態の断熱部材242を設けることにより、注入口244が空洞242bに設けられることで、内部に冷媒を封入する充填作業における真空引きするときに、短時間で所定の真空度を得ることができる。また、複数個の連通孔242aにより第2熱交換部材230内の水蒸気(冷媒)の移動が抵抗なく移動させることができる。さらに、断熱部材242がセラミックス材もしくはガラス材からなり、所定の板厚αを有することで、熱伝導率が小さいことで熱移動のロスが低減できる。
また、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230が傾いたときに、図19に示すように、第2熱交換部材230の見掛けの高さhが(h+α)となって、許容傾斜角度θを大きくすることができる。
ところで、以上の第5実施形態では、断熱部材242に形成する空洞242bを水平方向に一つ形成したが、これに限らず、図20(a)に示すように二つ形成しても良い。また、図20(b)に示すように二つ以上形成しても良い。さらに、図20(c)および図20(d)に示すように、これらの空洞242bの断面形状が三角状、楕円状、もしくはこれ以外に矩形状に形成しても良い。
(他の実施形態)
以上の実施形態では、突出部220a、230aの外部を覆う第1、第2筐体250、260が設けられ、その第1筐体250および第2筐体260は、吸着剤221もしくは冷媒との熱交換が可能となるようにそれぞれの熱媒体を流通させて、第1熱交換部材220もしくは第2熱交換部材230の外部と熱媒体とを熱交換するように構成したが、これに限らず、図21に示すように、第1熱交換部材220および第2熱交換部材230は、突出部220a、230aの外部に熱媒体を流通する第1、第2扁平チューブ250b、260bが配設され、この第1、第2扁平チューブ250b、260bは、吸着剤と冷媒との熱交換が可能となるように、第1熱交換部材220もしくは第2熱交換部材230の外部と熱媒体とを熱交換するように構成しても良い。
これによれば、第1、第2扁平チューブ250b、260bを介することで吸着剤221もしくは冷媒と熱媒体との熱交換効率が若干低下するが、吸着剤221もしくは冷媒との伝熱面に接触させることで吸着能力の向上が図れる。
また、以上の実施形態では、第2熱交換部材230側の突出部230aの内部に所定量の冷媒を封入したが、車両に搭載される吸着式冷凍機においては、車両が傾くと、吸着器200も傾くときがある。突出部230aの内部に封入された冷媒の液面が傾くことで、上方に充填された吸着剤221に直接液相冷媒をあてることになって吸着能力の低下を招くことがある。さらに、車両以外に設置される吸着式冷凍機では、吸着器200が水平方向に設置するように施工指導してきた。
本実施形態では、これを防止するために、図22に示すように、第2熱交換部材230側の突出部230aの内部に封入される冷媒を吸い込んで保持する保持部材230cを設けたものである。これによれば、冷媒の液面が傾くことがないため水平設置の施工上の注意点を省略することができるとともに、例えば、図に示すように、吸着器200を90°傾けて設置しても良い。これにより、設置の自由度が向上する
また、以上の実施形態では、本発明を車両用空調装置用吸着式冷凍機に適用したが、これに限定せず、家庭用や業務用の吸着式冷凍機に適用させても良い。