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JP4210355B2 - 固形製剤組成物 - Google Patents

固形製剤組成物 Download PDF

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博文 土肥
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶解性、消化管からの吸収等に優れた固形製剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
特開平4−154765号公報には、水利尿作用を有するバソプレシン拮抗剤として有用な式(1):
【0003】
【化1】
Figure 0004210355
【0004】
で表される7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾアゼピンが開示されている。
しかし、前記化合物(1)を通常の製剤技術、例えば賦形剤などを加えて顆粒剤や錠剤などの固形製剤に調製した場合には、消化管からの吸収性が悪く、水利尿作用を十分に発揮させることができない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、前記化合物(1)の溶解性を向上させることにより消化管からの薬物の吸収が向上した固形製剤組成物を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明の非晶質な固形製剤組成物は、前記一般式(1)で表される7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾアゼピンと、2%水溶液に調製したときの20℃での粘度が3〜6cpsである水溶性ヒドロキシプロピルセルロースとを、重量比1:0.5の割合で、有機溶媒に溶解させた後、前記有機溶媒を留去し、粉末化することにより得られることを特徴とする。
【0007】
かかる非晶質な固形製剤組成物とすることで、前記化合物(1)は、溶解性が向上し、消化管からの薬物の吸収性が向上する。
【0008】
【発明の実施の形態】
前記化合物(1)は、特開平4−154765号公報に開示された合成方法によって得られる。
また前記ヒドロキシプロピルセルロスは、式(2):
【0009】
【化2】
Figure 0004210355
【0010】
〔R1 、R2 およびR3 は水素原子または基(i):
【0011】
【化3】
Figure 0004210355
【0012】
(mは1以上の整数である。)である。nは繰り返し単位を示す。〕で表され、2%水溶液に調製したときの20℃での粘度が3〜6cpsである水溶性のヒドロキシプロピルセルロースである。
本発明の非晶質な固形製剤組成物は、下記に示す方法に従い製造される。
すなわち、所定量の前記化合物(1)と前記ヒドロキシプロピルセルロースとを有機溶媒に溶解させた後、有機溶媒を常法に従って留去することにより粉末として得られる。
【0013】
前記化合物(1)とヒドロキシプロピルセルロースとの配合割合は、通常、前者に対して後者を重量比で0.5倍程度である。
有機溶媒としては、前記化合物(1)およびヒドロキシプロピルセルロースを完全に溶解し得るものである限り特に制限はなく、従来公知のものをいずれも使用でき、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素類等やこれらの混合溶媒等を例示できる。また、必要ならば水を添加しても良い。これらの有機溶媒の中でも、低級アルコール類とハロゲン化炭化水素類との混合溶媒が、溶解性および溶媒留去などの面から好ましく、具体的にはメタノールもしくはエタノールとジクロロメタンとの混合液があげられる。
【0014】
ヒドロキシプロピルセルロースとしては、前記式(2)で表される化合物であって、2%水溶液に調製したときに、20℃で、粘度が3〜6cpsの範囲にあるものが挙げられる。
有機溶媒の留去方法としては、例えばエバポレート法、噴霧乾燥法、流動層乾燥法等があげられるが、噴霧乾燥法が特に好適である。
【0015】
斯くして得られる固形製剤組成物に、必要に応じて賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤等を加え、常法の製剤化方法により、散剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤等の内服用固形製剤を調製することができる。
上記賦形剤としては、例えば乳糖、白糖、デンプン、結晶セルロース、ケイ酸などがあげられる。
【0016】
結合剤としては、例えば水、エタノール、デンプン液、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロス、ヒドロキシプロピルセルロスなどがあげられる。
崩壊剤としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシスタチナトリウムなどがあげられる。
【0017】
滑沢剤としては、例えばタルク、ステアリン酸塩などがあげられる。
薬剤の投与方法としては特に限定されないが、各種製剤形態、患者の年齢、性別、疾患の状態、その他の条件に応じて従来公知の方法のなかから適宜選択すればよい。
本発明の固形製剤組成物に含有されるべき前記化合物(1)の量としては、特に限定されず広範囲から適宜選択されるが、通常、全重量に対して約30〜80重量%、好ましくは約50〜80重量%とするのがよい。
【0018】
また投与単位形態の製剤中には、有効成分となる前記化合物(1)が約1〜60mgの範囲で含有されるのが好ましい。
本発明固形製剤組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、疾患の程度等により適宜選択されるが、通常、一日当り有効成分となる前記化合物(1)の量が、体重1kg当り0.02〜2mg程度とするのが良い。
【0019】
【実施例】
以下に、実施例比較例、および参考例をあげて本発明を詳細に説明する。
本発明の固形製剤組成物に使用する7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾアゼピン(以下、主剤という。)の溶解性、および消化管からの吸収性を調べるため、下記(a)〜(e)に示す高分子と前記主剤とを重量比1:1で含有する各粉末試料(参考例1および比較例1〜6)を調製した。
(a):ヒドロキシプロピルセルロース(水溶性)[日本曹達社製、HPC−SL]
(b):ヒドロキシプロピルメチルセルロース(水溶性)[信越化学工業社製、TC−5E]
(c):ポリビニルピロリドン(水溶性)[米国G.A.F.社製、PVP K−30]
(d):ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(pH5.5以上で溶解)[信越化学工業社製、HP−55]
(e):メタアクリル酸コポリマーL(pH6以上で溶解)[レームファーマ社製、Eudragit L100]
参考例1
主剤10gおよび高分子(a)10gを、エタノール60mlとジクロロメタン140mlとの混合溶媒に溶解させ、スプレードライ機(YAMATO社製、型式GB−21)で噴霧乾燥して、粉末を調製した。
比較例1
高分子(a)に代えて高分子(b)を用いた以外は、参考例1と同様の操作で粉末を調製した。
比較例2
高分子(a)に代えて高分子(c)を用いた以外は、参考例1と同様の操作で粉末を調製した。
比較例3
高分子(a)に代えて高分子(d)を用いた以外は、参考例1と同様の操作で粉末を調製した。
比較例4
高分子(a)に代えて高分子(e)を用いた以外は、参考例1と同様の操作で粉末を調製した。
比較例5
主剤80gを気流式微粉砕機で粉砕することにより、約2μmの平均粒子径を有する粉末を調製した。
比較例6
主剤10gをエタノル60mlとジクロロメタン140mlとの混合溶媒に溶解させ、参考例1と同様な操作で粉末を調製した。
試験例1
(溶出試験1)
上記調製した各粉末試料(参考例1および比較例1〜6)について、日本薬局方溶出試験第2法(パドル回転数:100回転/分)に従い、溶出試験を行った。溶出試験液および測定方法は以下の通りである。
【0020】
溶出試験溶液はラウリル硫酸ナトリウム(和光純薬工業社製)0.2W/V%水溶液500mlを使用した。
上記各粉末試料から、主剤50mgに対応する量の粉末をそれぞれ精密に量り、上記溶出試験溶液中に投入した。試験開始から5分、10分、15分、20分、30分後の各粉末試料における主剤の溶出率(%)を全自動溶出試験器(日本分光工業製DT−610)を用いて測定した。
【0021】
なお溶出率(%)は、主剤50mgをラウリル硫酸ナトリウム1W/V%水溶液500mlに溶解させた溶液を標準溶液とし、この標準溶液および試料溶液の波長265nmと330nmとにおける吸光度をセル長1mmの石英セルを用いて測定し、得られた吸光度差の比によって求めた。その結果を表1に示す。
【0022】
【表1】
Figure 0004210355
【0023】
表1から、主剤のみを噴霧乾燥して得られた比較例6は、比較例5に比べて主剤の溶出速度の向上が確認されたが、主剤に高分子(a)を配合し噴霧乾燥して得られた参考例1は、溶出速度がさらに速くなることが確認された。
次に、上記各粉末試料(参考例1および比較例1〜6)を用いた場合の、消化管からの薬物(主剤)の吸収性を評価するために下記の試験を行った。
試験例2
(薬物吸収試験)
検体としてSD系雄性ラット(7〜8週齢)を使用した。各粉末試料を1%ヒドロキシプロピルメチルセルロース水溶液に懸濁させ、ラットの体重1kg当たり主剤10mgに対応する量を経口ゾンデにより強制的に経口投与(n=3)した。
【0024】
投与から0.5、1、2、4、6および8時間後に軽度エテル麻酔下、ラットの大動脈から血液を採取し、得られた血液を遠心分離(3000rpm,10分間)処理を行い、血清を得た。血清中の薬物(主剤)濃度はp−ヒドロキシ安息香酸n−ヘキシルを内部標準物質として使用し、高速液体クロマトグラフィを用いて定量した。
(高速液体クロマトグラフィー装置および測定条件)
装置:東ソ製8010型システム
検出波長:265nm
プレカラム:TSK−precolumnBSA・ODS
分析カラム:VYDAC Protein Peptide C18
移動相:アセトニトリル:5mM NaSO(4:6)、1%酢酸、0.3%THF
各粉末試料における薬物動態パラメを表2に示す。
【0025】
【表2】
Figure 0004210355
【0026】
表2から、主剤にヒドロキシプロピルセルロース(a)を配合し噴霧乾燥して得られた参考例1の粉末試料は、比較例1〜6の粉末試料よりも高いCmax(最高血清中濃度)およびAUC(血清中濃度時間曲線下面積)を示し、消化管からの主剤の吸収を高める効果に優れていることが明らかになった。
表1および表2の結果から、主剤に配合する高分子としては前記ヒドロキシプロピルセルロース(a)が最も好ましいことが明らかになった。
試験例3
(溶出試験2)
主剤とヒドロキシプロピルセルロース(a)との配合割合を変えた粉末試料(実施例1、参考例2〜3)をそれぞれ調製し、それらの粉末試料について上述の試験例1と同様にして溶出試験を行った。
参考
主剤20gおよびヒドロキシプロピルセルロース(前出(a))4gをエタノール72mlとジクロロメタン168mlとの混合溶媒に溶解させ、スプレードライ機(前出)で噴霧乾燥して、粉末を調製した。
実施例
主剤20gおよびヒドロキシプロピルセルロース10gをエタノール90mlとジクロロメタン210mlとの混合溶媒に溶解させ、スプレードライ機(前出)で噴霧乾燥して、粉末を調製した。
参考
主剤10gおよびヒドロキシプロピルセルロース20gをエタノール90mlとジクロロメタン210mlとの混合溶媒に溶解させ、スプレードライ機(前出)で噴霧乾燥して、粉末を調製した。
【0027】
これらの実施例および参考例の溶出試験結果を上述の参考例1および比較例5、6の試験結果と共に、表3に示す。
【0028】
【表3】
Figure 0004210355
【0029】
表3から、比較例5、6に比べて実施例1、および参考例1〜3の粉末試料を用いた場合には、主剤の溶出率が大きく向上することが明らかになった。
とりわけ実施例1、および参考例1〜2の粉末試料のうち、主剤に対してヒドロキシプロピルセルロースを重量比で0.5倍程度配合した実施例では、溶出速度がより速くなっていることがわかる。
【0030】
【発明の効果】
本発明の固形製剤組成物は、主剤の溶解性を改善することにより消化管からの主剤の吸収性が向上したものである。
従って、本発明は水利尿作用を十分に発揮するバソプレシン拮抗剤として有用なものと考えられる。

Claims (3)

  1. 7−クロロ−5−ヒドロキシ−1−[2−メチル−4−(2−メチルベンゾイルアミノ)ベンゾイル]−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−ベンゾアゼピンと、2%水溶液に調製したときの20℃での粘度が3〜6cpsである水溶性ヒドロキシプロピルセルロースとを、重量比1:0.5の割合で、有機溶媒に溶解させた後、前記有機溶媒を留去し、粉末化することにより得られることを特徴とする、非晶質な固形製剤組成物。
  2. 前記有機溶媒が、メタノールまたはエタノールと、ジクロロメタンとの混合溶媒であることを特徴とする、請求項に記載の非晶質な固形製剤組成物。
  3. 前記有機溶媒が、噴霧乾燥により留去されることを特徴とする、請求項またはに記載の非晶質な固形製剤組成物。
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