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JP4205893B2 - プレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 - Google Patents

プレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 Download PDF

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JP4205893B2 JP2002149166A JP2002149166A JP4205893B2 JP 4205893 B2 JP4205893 B2 JP 4205893B2 JP 2002149166 A JP2002149166 A JP 2002149166A JP 2002149166 A JP2002149166 A JP 2002149166A JP 4205893 B2 JP4205893 B2 JP 4205893B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主としてプレス加工される自動車足廻り部品等を対象とし、1.0 〜6.0mm 程度の板厚で、良好な穴拡げ性を有し、打抜き加工において亀裂が発生することのないプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車などに使用される高強度熱延鋼板にはプレス成形性に優れていることが要求されるが、これらの特性を向上させる手段として、例えば鋼組織を、フェライト・マルテンサイト組織、ベイナイト主体組織、フェライト主体組織、或いはフェライト・ベイナイト組織とする方法や、鋼中のS を低減し、Ca、REM により硫化物の形態を制御する方法などがある。
【0003】
更に特許第3233743号公報には、Cに対するTiの量を規定して穴拡げ性を改善する方法が開示されている。このようにTi添加によりプレス成形性を改善することはできるが、Ti添加の高強度熱延鋼板をブランク形状に切断(打抜き加工)を行う際、端面の荒れが発生し易く、この荒れが板厚に対して垂直方向の割れへと進展することも多い。従って、今日の自動車におけるような更なる部品の軽量化、形状の複雑化に十分対応できるだけの特性を備えていなかった。このため従来の高強度熱延鋼板は、足廻り部品等のように高いプレス成形性と打抜き加工性とが要求される用途に対して十分満足できるものではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記した従来の問題点を解決するためになされたものであって、高強度化に伴うプレス成形性及び打抜き加工性の劣化を防ぎ、プレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法を提供するためになされたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板は、質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.01 〜2.0 %、Mn:0.5〜3.0%、P ≦0.03%、S ≦0.009 %、N ≦0.010 %、Al:0.002〜0.70%、Ti:0.03 〜0.40%を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる組成の鋼を、
熱延仕上げ温度を Ar 変態点〜 950 ℃として熱間圧延し、引き続き 20 /sec 以上の冷却速度で 650 800 ℃まで冷却したうえ、 2 15 秒空冷し、さらに、 20 /sec 以上の冷却速度 420 600 ℃に冷却して巻き取ることによって製造された高強度熱延鋼板であって、
下記(1) 式で計算される非固定炭素を0.0150%未満としたうえ、(2) 式で求められる未析出炭素を0.0050%以上残留させた、フェライトが80%以上のフェライト・ベイナイト組織からなることを特徴とするプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。なお、式中TSは高強度熱延鋼板の圧延ままの強度(N/mm) であり、 ATSは高強度熱延鋼板に600℃に1hr加熱する時効処理を施した時の強度(N/mm) である。
非固定炭素= C-Ti/4+N/1.17 ・・・(1)
未析出炭素=(ATS-TS)/7400 ・・・(2)
【0006】
なお、上記した発明において、高強度熱延鋼板がNbを0.01〜0.10%含有し、固定炭素が下記(3) 式で計算される請求項1に記載のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
非固定炭素= C-Ti/4+N/1.17-Nb/7.75 ・・・(3)
また、上記した発明において、高強度熱延鋼板が、Ca:O.OOO5 〜0.0100%及びREM:O.OOO5〜0.0100%の何れか一方、又は双方を含有するものとすることができ、また、Mo: 0.01〜0.5 %、V:0.01〜0.2 %、Zr: 0.01〜0.2 %、Cr: 0.01〜2.0 %、Cu:0.2〜2.0 %、Ni:0.1〜1.5 %のうちの一種又は2種以上を含有することができるし、高強度熱延鋼板は、強度を780N/mm以上とするのが望ましい。
【0007】
また、本発明のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法は、上記したようなプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法であって、前記組成の鋼を、熱延仕上げ温度をAr変態点〜950 ℃として熱間圧延し、引き続き20℃/sec以上の冷却速度で650 〜800 ℃まで冷却したうえ、2 〜15秒空冷し、さらに、20℃/sec以上の冷却速度で420 〜600 ℃に冷却して巻き取って、鋼組織をフェライトが80%以上のフェライト・ベイナイト組織とすることを特徴とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、TiやNbによって固定されない計算上の非固定炭素を0.0150%未満としたうえに、熱間圧延により製造した高強度熱延鋼板に0.0050%以上の炭素を固溶状態の未析出炭素として残して、この未析出炭素により粒界を強化することによって、プレス成形性を良好に保持したまま打抜き加工性を改善できることを知見し、上記課題を解決したものである。
【0009】
本発明において高強度熱延鋼板中のC は 0.01 〜0.15%とする。 Cは炭化物を析出して強度を確保するに必要な元素であって0.01%未満では所望の強度を確保することが困難になる。一方、0.15%を超えると延性の低下が大きくなって打抜き加工性が劣ることになるからである。
【0010】
Siは脱酸剤として有益な元素であり、また有害な炭化物の生成を抑え組織をフェライト主体で残部ベイナイトの複合組織とするに重要であって、さらにSiの添加により強度を高めてプレス成形性、延性を良好なものとすることができる。このような作用を得るためには0.01%以上の添加が必要である。しかし、添加量が増加すると化成処理性が低下するほか点溶接性も劣化するため2.0 %を上限とする。なお、Siの範囲を0.9 〜1.2 %とするのがプレス成形性と延性を効果的に兼ね備えたものとすることができて望ましい。
【0011】
Mnは強度の確保に必要な元素であり、このためには0.5 %以上の添加を必要とする。しかし、3.0 %を超えて多量に添加するとミクロ偏析、マクロ偏析が起こりやすくなり、プレス成形性を劣化させる。なお、Mnを1.0 〜1.5 %添加するのが高い強度を確保してプレス成形性を良好なものとすることができるので望ましい。
【0012】
P はフェライトに固溶してその延性を低下させるので、その含有量は0.03%以下とする。また、S はMnS を形成して破壊の起点として作用し著しくプレス成形性、打抜き加工性を低下させるので0.009%以下とする。また、N はTiと窒化物を形成してC と結合できるTiの量を減少させ、強度確保が困難となるので、0.010 %以下とする。
【0013】
Alは脱酸剤として有効であり、またSiと同様に組織をフェライト主体で残部ベイナイトの複合組織とするに有効な元素であるが、脱酸剤として用いる場合には0.002 %以上の添加を必要とする。一方、0.70%を超えると鋼の清浄性が低下することになる。従って、Alの範囲は0.002 〜0.70%とする。
【0014】
Tiは結晶粒を微細化するとともに微細なTiC を析出させて強度を確保するに有効な元素である。この目的のためには0.03〜0.40%添加することが必要である。Tiが0.03%未満では強度を確保することが困難であり、Tiが0.40%を超えるとTi系炭化物が多量発生しすぎて延性が低下し、更に打抜き加工性が劣化するからである。
【0015】
NbはTiと同様に結晶粒を微細化するとともに、NbC などの微細な炭化物を析出させて強度を確保するに有益な元素である。このためにはNbを 0.01 〜0.10%添加するのが望ましい。Nbが0.01%未満では強度を十分高めることができず、Nbが0.10%を超えると析出物が多量生成しすぎて延性が低下し打抜き加工性が劣化するからである。
【0016】
本発明においては、下記(1) 式で計算される非固定炭素の量を0.0150%未満とする必要がある。
非固定炭素= C-Ti/4+N/1.17 ・・・(1)
上記式中の右辺は C-12/48×(Ti-48N/14) を簡略化したものであって、Tiと結合しない計算上の非固定炭素の量である。この計算上の非固定炭素が0.0150%以上である場合には非固定炭素が多量に鋼中に残ることになって、熱間圧延によりフェライト・ベイナイト組織を有する熱延鋼板を製造した場合にベイナイトの硬度が高くなり、このベイナイトとフェライトとの界面より亀裂が発生し易くなってプレス成形性、特に穴拡げ性を劣化させることになる。従って、非固定炭素の量は0.0150%未満とする必要がある。なお、鋼がNbを含有する場合にはC はTiのみならずNbとも炭化物を形成することとなるので、非固定炭素は下記(3) 式で計算するものとする。
非固定炭素=C-Ti/4+N/1.17-Nb/7.75 ・・・(3)
【0017】
また、Ca、REM(希土類元素) は硫化物系介在物の形態を制御しプレス成形性の向上に有効な元素である。この形態制御効果を有効ならしめるためにはCa、REMの何れか一方、又は双方を0.0005%以上の添加するのが望ましい。一方、多量の添加は硫化物系介在物の粗大化を招き、清浄度を悪化させて打抜き加工性を低下させるので、上限を0.0100%とするのが望ましい。
【0018】
本発明においては、合金元素として、Mo: 0.01〜0.5 %、V:0.01〜0.2 %、Zr: 0.01〜0.2 %、Cr: 0.01〜2.0 %、Cu:0.2〜2.0 %、Ni:0.1〜1.5 %のうちの一種又は2種以上を鋼に添加することができる。ここで、Moは鋼の焼入れ性を高めて熱延鋼板を高強度化するのに有効な元素であって、この効果を発揮するためには 0.01 %以上の添加を必要とする。しかし、0.5 %を超えて添加しても効果は飽和するうえ、Moは高価な元素であるので製造コストが高騰する。従って、Moの量は0.01〜0.5 %とするのが望ましい。
【0019】
Crも焼入れ性向上元素であって、この効果を発揮するためには0.01%以上の添加を必要とする。しかし、2.0 %越えて添加しても効果は飽和するのみならずコスト高を招くので、Cr量は0.01〜2.0 %とするのが望ましい。
【0020】
また、Niも焼入れ性向上元素であって、この効果を発揮するためには0.1 %以上の添加を必要とする。しかし、1.5 %超添加しても効果は飽和するのみならずコスト高を招くので、Niの範囲は0.1 〜1.5 %とするのが望ましい。
【0021】
CuもNiと同様に鋼の焼入れ性を高めて熱延鋼板を高強度化するのに有効であるが、この効果を発揮するためには0.2 %以上の添加を必要とする。しかし、2.0%を越えて添加しても効果は飽和するのみならず、熱間延性を低下させて表面疵の発生が顕著になる。従って、Cuの範囲は0.2 〜2.0 %とするのが望ましい。
【0022】
V はNbと同じく微細な炭化物を析出して熱延鋼板の強度を高めるに有効であって、この効果を発揮するためには0.01%以上の添加を必要とする。しかし、0.2%を越えて添加しても効果は飽和するので、V の範囲は0.01〜0.2 %とするのが望ましい。
【0023】
また、ZrはTiと同じく微細な炭化物を析出して熱延鋼板の強度を高めるに有効であって、この効果を発揮するためには0.01%以上の添加を必要とする。しかし、0.2 %を越えて添加しても効果は飽和するので、Zrの範囲は0.01〜0.2 %とするのが望ましい。
【0024】
優れたプレス成形性と打抜き加工性とを兼ね備えた高強度熱延鋼板を得るには、Ti或いはNbと結合していない固溶状態の未析出炭素が0.0050%以上残留するように圧延条件を精密に制御して圧延する必要がある。未析出炭素が0.0050%未満では高強度熱延鋼板中に残留する固溶炭素量が少なくなって、結晶粒界を十分強化することができず、鋼板を打ち抜いた時に、鋼板が2枚の層状に剥離されるような不具合が発生し易くなる。従って、高強度熱延鋼板を打抜き加工性に優れたものとするには、未析出炭素は0.0050%以上確保する必要がある。なお、未析出炭素の量が0.0150%を超えるとフェライトの強化が不十分となってプレス成形性が劣化することになるので、未析出炭素の量は0.0150%以下とするのが望ましい。
【0025】
上記した未析出炭素は下記(2) 式を用いて求める。
未析出炭素=(ATS-TS)/7400 ・・・(2)
なお、式中TSは高強度熱延鋼板の圧延ままの強度(N/mm) であり、 ATSは高強度熱延鋼板に時効処理を施した後の強度(N/mm) である。即ち、高強度熱延鋼板の圧延ままの強度TSを求める一方、圧延ままの高強度熱延鋼板に、例えば600 ℃で1hr 加熱する時効処理を行う。この時効処理によってTi或いはNbと未だ結合していなかった未析出炭素が析出して強度を高める。従って、高強度熱延鋼板の時効処理後の強度ATS を求めて、ATS からTSを引き算することにより、未析出炭素が析出したことによる強度の増加分を計算することができるので、これを一定の係数で割ることによって未析出炭素の量を求めることができる。なお、上記した時効処理は過時効を起こすことなく未析出炭素を十分析出させることのできる条件であればよく、例えば550〜600℃に30min〜1.5hr加熱してもよく、従って、本発明は時効処理の条件によって何ら限定されるものではない。
【0026】
また、高強度熱延鋼板における鋼組織はフェライトが80%以上のフェライト・ベイナイト組織とするのが望ましい。鋼組織をフェライトが80%以上のフェライト・ベイナイト組織とすることにより良好な穴拡げ性と延性を有する高強度熱延鋼板を得ることができる。ベイナイトの量を20%以下とするのは、ベイナイトの量がこれより多くなると延性の低下が大きくなるからである。
【0027】
以上のような高強度熱延鋼板を熱間圧延により製造するに際して、仕上げ圧延終了温度は、Ar変態点以上とする。仕上げ圧延終了温度が、Ar変態点未満とした時には、フェライトの過剰な生成を抑えることができずプレス成形性が劣化する。また、TiC 乃至はNbC などの炭化物の析出が多くなって未析出炭素を0.0050%以上確保することが難しくなる。しかし、仕上げ圧延終了温度が950 ℃を超えて高くなると組織の粗大化による強度及び延性の低下を招くことになる。従って、仕上げ圧延終了温度はAr変態点〜 950℃とする必要がある。
【0028】
また、圧延終了直後に鋼板を急速冷却することは高いプレス成形性を得るために重要なことであって、その冷却速度は20℃/sec以上を必要とする。冷却速度が20℃/sec未満では炭化物の析出が促進されて未析出炭素を0.0050%以上確保することが難しくなるからである。
【0029】
鋼板の急速冷却を一旦停止して空冷を施すことはフェライトを析出してその占有率を増加させ、延性を向上させるために必要なことである。しかしながら、空冷開始温度が 650℃未満ではプレス成形性に有害なパーライトが早期より発生する。一方、空冷開始温度が 800℃を超える場合にはフェライトの生成が遅く空冷の効果が得にくいばかりでなく、炭化物の析出が進んで未析出炭素を0.0050%以上確保することが難しくなる。従って、空冷開始温度は 650〜800 ℃とする。また、空冷時間が2 秒未満ではフェライトを十分生成させることはできない。一方、空冷時間が15秒を超えると炭化物の析出が進んで未析出炭素を0.0050%以上確保することが難しくなるばかりでなく、その後の冷却速度、巻取温度の制御に負荷がかかることとなる。従って、空冷時間は2 〜15秒とする。
【0030】
空冷後は再度鋼板を急速に冷却するが、その冷却速度はやはり20℃/sec以上を必要とする。20℃/sec未満では有害なパーライトが生成し易くなるからである。そして、この急冷の停止温度、即ち巻取温度は350 〜600 ℃とする。巻取温度が350 ℃未満では穴拡げ性に有害な硬質のマルテンサイトが発生するためであり、一方、600 ℃を超えるとプレス成形に有害なパーライト、セメンタイトが生成し易くなるからである。
【0031】
以上のような化学成分と圧延条件の組み合わせにより、強度が780N/mm以上であってプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板を製造することができる。なお、本発明の高強度熱延鋼板の表面に表面処理(例えば亜鉛メッキ等)が施されていても本発明の効果を有し、本発明の技術的範囲に属するものである。
【0032】
【実施例】
表1に示す化学成分組成を有する鋼を転炉溶製して、連続鋳造によりスラブとし、同じく表2、表3に示す圧延条件にて圧延、冷却し、板厚2.6 〜3.2mm の高強度熱延鋼板を製造した。
【0033】
【表1】
Figure 0004205893
【0034】
【表2】
Figure 0004205893
【0035】
【表3】
Figure 0004205893
【0036】
このようにして得られた熱延鋼板について、組織観察、JIS5号試験片による圧延まま材の引張試験、600 ℃、1 時間加熱した時効処理材の引張り試験、プレス成形性を評価するための穴拡げ試験、及び打抜き試験を行なった。鋼組織はナイタールで腐食後、光学顕微鏡にて観察した。穴拡げ試験は初期穴径(d0:10mm) の打抜き穴を60°円錐ポンチにて押し拡げ、クラックが板厚を貫通した時点での穴径(d)から穴拡げ値(λ値)=(d-d0)/d0×100 を求めて評価した。打抜き試験においては、12mmφのポンチを用いて、クリアランス20%の条件で各3個の打抜きを行い(全長113mm)、破断面において板厚方向と垂直に発生する割れの長さを測定した。このうち2mm を超える割れの長さを合計した時、全円周に対して40%を超えるものを×、これ以下のものを○と判定した。これらの結果を表2、表3に併せて示す。
【0037】
表1に示す鋼のうち、鋼aはMnが本発明の範囲より高く、鋼bはC 、Nb、Ti
が本発明の範囲より高く、鋼cはS が本発明の範囲より高く、鋼dは非固定炭素量が本発明の範囲より高いものであって、これら以外の鋼は全て本発明の範囲内の化学成分組成と非固定炭素を有するものである。
【0038】
表2、表3に示した試験結果において、試験No.6、7、19、22のものは、熱間圧延における空冷開始温度、空冷時間、巻取温度の何れかが本発明の範囲を外れており、未析出炭素が0.0050%未満と少ないために、打抜き加工性が不良であった。また、鋼a、b、cを圧延した試験No.43、44、45のものは、上記したように化学成分が本発明の範囲を外れているために、伸び、穴拡げ値の何れか、又は双方が低いものとなった。また、鋼dを圧延した試験No.46のものは、非固定炭素量が本発明の範囲より高く、ベイナイトの硬度が高くなって穴拡げ値が低いものであった。上記した以外の試験No.1〜5、8〜18、20〜21、23〜42のものは、化学成分、非固溶炭素量、熱間圧延条件の何れもが本発明の範囲内であって、鋼は80%以上のフェライトとベイナイトとからなるフェライト・ベイナイト組織であって、未析出炭素も0.0050%以上残留されていた。この結果、これらの高強度熱延鋼板は、十分高い強度と伸びを有し、良好な穴拡げ性と打抜き加工性とを兼ね添えたものであることが確認された。
【0039】
【発明の効果】
以上に詳述したように、本発明の高強度熱延鋼板は、C:0.01〜0.15%、Si:0.01 〜2.0 %、Mn:0.5〜3.0 %、P ≦0.03%、S ≦0.009 %、N ≦0.010 %、Al:0.002〜0.70%、Ti:0.03 〜0.40%を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる高強度熱延鋼板であって、非固定炭素を0.0150%未満とすることによりプレス成形性を向上させることができ、さらに、未析出炭素を0.0050%以上残留させることにより結晶粒界を強化して打抜き加工性を向上させることができる。また、上記した高強度熱延鋼板がNbを0.01〜0.10%含有し、非固定炭素を0.0150%未満としたうえ、未析出炭素を0.0050%以上残留させることによっても、優れたプレス成形性と打抜き加工性を兼ね備えたものとすることができる。また、上記したような高強度熱延鋼板が、Ca:O.OOO5 〜0.0100%及びREM:O.OOO5〜0.0100%の何れか一方、又は双方を含有することによって硫化物の形態を制御してプレス成形性と打抜き加工性とを向上させることができる。また、高強度熱延鋼板が、Mo: 0.01〜0.5 %、V:0.01〜0.2 %、Zr: 0.01〜0.2 %、Cr: 0.01〜2.0 %、Cu:0.2〜2.0 %、Ni:0.1〜1.5 %のうちの一種又は2種以上を含有することによっても、鋼組織及び炭化物の析出量を最適にしてプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板を得ることができる。また、鋼組織を、フェライトを主体とするフェライト・ベイナイト組織とすることにより、強度が780N/mm以上であるプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板を得ることができる。従って、本発明の高強度熱延鋼板は、車体の軽量化、部品の一体成形化、加工工程の合理化が可能であって、燃費の向上、製造コストの低減を図ることができる。また、本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、上記したような高強度熱延鋼板を製造するに際し、前記組成の鋼を、熱延仕上げ温度をAr変態点〜950 ℃として熱間圧延し、引き続き20℃/sec以上の冷却速度で650 〜800 ℃まで冷却したうえ、2 〜15秒空冷し、さらに、20℃/sec以上の冷却速度で350 〜600 ℃に冷却して巻き取ることによって、未析出炭素を0.0050%以上残留させて過剰な炭化物の析出を抑え、且つ鋼組織を最適なフェライト・ベイナイト組織とすることができる。従って、本発明の高強度熱延鋼板の製造方法は、プレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板を経済的に提供することができるものとして工業的価値大なものである。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:0.01 〜2.0 %、Mn:0.5〜3.0%、P ≦0.03%、S ≦0.009 %、N ≦0.010 %、Al:0.002〜0.70%、Ti:0.03 〜0.40%を含有し、残部鉄及び不可避的不純物からなる組成の鋼を、
    熱延仕上げ温度を Ar 変態点〜 950 ℃として熱間圧延し、引き続き 20 /sec 以上の冷却速度で 650 800 ℃まで冷却したうえ、 2 15 秒空冷し、さらに、 20 /sec 以上の冷却速度 420 600 ℃に冷却して巻き取ることによって製造された高強度熱延鋼板であって、
    下記(1) 式で計算される非固定炭素を0.0150%未満としたうえ、(2) 式で求められる未析出炭素を0.0050%以上残留させた、フェライトが80%以上のフェライト・ベイナイト組織からなることを特徴とするプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。 なお、式中TSは高強度熱延鋼板の圧延ままの強度(N/mm) であり、 ATSは高強度熱延鋼板に600℃に1hr加熱する時効処理を施した時の強度(N/mm) である。
    非固定炭素= C-Ti/4+N/1.17 ・・・(1)
    未析出炭素=(ATS-TS)/7400 ・・・(2)
  2. 高強度熱延鋼板がNbを0.01〜0.10%含有し、固定炭素が下記(3) 式で計算される請求項1に記載のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
    非固定炭素= C-Ti/4+N/1.17-Nb/7.75 ・・・(3)
  3. Ca:O.OOO5 〜0.0100%及びREM:O.OOO5〜0.0100%の何れか一方、又は双方を含有する請求項1又は2に記載のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
  4. Mo: 0.01〜0.5 %、V:0.01〜0.2 %、Zr: 0.01〜0.2 %、Cr:0.01〜2.0 %、Cu:0.2〜2.0 %、Ni:0.1〜1.5 %のうちの一種又は2種以上を含有する請求項1〜3の何れかに記載のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
  5. 度が780N/mm以上である請求項1〜4の何れかに記載のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板。
  6. 請求項1〜5の何れかに記載のプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法であって、前記組成の鋼を、熱延仕上げ温度をAr変態点〜950 ℃として熱間圧延し、引き続き20℃/sec以上の冷却速度で650 〜800 ℃まで冷却したうえ、2 〜15秒空冷し、さらに、20℃/sec以上の冷却速度で420 〜600 ℃に冷却して巻き取って、鋼組織をフェライトが80%以上のフェライト・ベイナイト組織とすることを特徴とするプレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板の製造方法。
JP2002149166A 2002-05-23 2002-05-23 プレス成形性と打抜き加工性に優れた高強度熱延鋼板及びその製造方法 Expired - Fee Related JP4205893B2 (ja)

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