JP4291897B2 - 歯科用補綴物の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、コンピュータ制御による自動計測及びこの計測情報に基づく自動加工を行う装置に関し、CAD/CAM装置に代表される自動計測及び自動加工手段を用いることにより、精密な歯科補綴物、その他の歯科材に同一、類似あるいは対応した加工物を計測並びに製造する歯科補綴物製造方法及び歯科補綴物製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
CAD/CAM装置やNC工作機械などで、塊状物を切削又は研削加工を行う場合、粗加工の工程と仕上げ加工の工程がある。前者は、ある大きさの塊状物を目的とする形状の近似までを粗く加工する。その時は、太い切削又は研削工具を使用して行う。後者は、粗加工後のものを目的の形状までを加工する。以上の工程を行う場合の加工方法は、塊状物の上面から順に、下方に向かって切削又は研削工具で掘り込む形で加工を行ってきた。この方法は、エンドミルやダイヤモンドバーなどの切削又は研削工具の先端のみを集中的に使用してきた。
一般的なNC工作機械やCAD/CAM装置の場合、被計測物と被加工物は別々に設置されるか、計測装置と加工装置が分かれて行っている。
歯科補綴物を作製する場合、支台歯を印象し、支台歯石膏模型を作製する。その上に、ワックスにより、歯科補綴物の形状を作り上げ、鋳造により金属などに置き換えていた。この間、人手や工数が掛かり、品質にばらつきがあるものであった。
NC工作機械にて歯科補綴物(特にクラウン)を製作することが、実用化に向けて研究や開発されつつある。その歯科補綴物の作製の工程は、ワックスや樹脂にて歯科補綴物モデルを作り、それを忠実に形状の計測を行い、NC工作機械にて切削又は研削加工を経て仕上げている。またインレーのみではあるが、窩洞形成を行った歯をカメラにて撮影し、グレースケールにて3次元形状データを作成し、切削加工するシステムが存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の方法では、四角や円筒状の塊状物を切削又は研削する際、塊状物の上面から順に、下方に向かって切削又は研削工具を掘り込む形で行ってきたため、エンドミルやダイヤモンドバーなどの切削又は研削工具の先端のみを使用し、工具の損傷が激しかった。そのため工具の寿命も短いものとなっていた。さらに、先端以外に付いている刃やダイヤモンド砥石などが使用されず、無駄になっていた。
また、彫り込む量も工具の一点に集中して行っているため、加工時間を要していた。
被計測物と被加工物が別々に設置されることにより、被計測物の位置を正確に再現しなければ、被加工物と計測したデータがずれるという問題があった。特に3次元形状を再現する際、被計測物と被加工物を回転することがあり、回転したことの位置合わせの問題も加わり、更に複雑化していた。それを無くす為に、被計測物の位置を正確に測定し、被加工物を設置することを余儀なくされており、時間と労力が費やされていた。また、計測と加工を同じワークエリアにて行う場合、加工による汚れが計測に影響与える場合が有った。
歯科分野において、歯科補綴物の製作にあたり、殆ど人手を要し、機械化が遅れていた。近年ようやく、歯科用CAD/CAM装置が開発し始められている。しかし、機械加工を施すにあたり、上記の方法の応用であるため時間やランニングコストが非常に掛かるという問題点がある。また、3次元形状計測モデルをワックスや樹脂にて精度良く作製しなければならない。つまり、3次元形状計測モデルが悪ければ、良くない歯科補綴物になる。特に、マージンラインが合っており、適合の良い歯科補綴物を製作するのは、歯科用CAD/CAM装置や鋳造法にても高度な技術を要し、労力や時間もかかっている。さらに、安定した品質供給も課題であった。グレースケールの場合は、カメラの精度や解像度が、歯科補綴物の精度に耐えうるものではない状況である。以上のことにより歯科分野の機械化の普及が遅れている要因にもなっている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エンドミルやダイヤモンドバーなどの切削又は研削工具の先端以外に、円筒部(側面部)の刃やダイヤモンド砥石などを有効に使用することを可能とした。
【0005】
その方法として、
はじめにXY平面上にて、塊状物の外側から切削又は研削工具を近づけ、工具の円筒部分(工具の側面部)で輪郭までの粗加工を施す。
次に塊状物をX軸で90゜回転し、XZ平面上を同じように輪郭の粗加工をする。
仕上げ加工も同じように加工をする。
しかしながら目的とする形状によっては、XY平面の仕上げ加工をし、X軸で180゜反転し同じように仕上げ加工をする場合もある。
【0006】
この方法は、加工形状をXY平面上に投影した外形は、全て切削又は研削工具の円筒部で加工が可能となる。さらにX軸で90゜回転しXZ平面上も同じように可能となれば、形状によっては、その工程だけで目的とするものが得られる。 また、この方法で粗加工を終えた塊状物に対し、最終目的の形状に沿った仕上げ加工を施すとすれば、工具先端部は仕上げの段階で主に使用されることとなり、粗加工と仕上げ加工で工具を交換することなく、連続して加工が可能となる。 計測と加工のワークエリアを分けることで、きれいなエリアにて計測を行うことができる。また、被計測物と被加工物の位置合わせに関しては、それらを同一軸上に設置することで解決できる。特に問題であるそれらの回転軸精度も同一軸上に存在することにより同じ事が言える。
【0007】
切削や研削などの3次元形状データの作成に関しては、歯科の印象から製作する支台歯石膏模型を利用して行う。
現行歯科技工士が行っているように、支台歯石膏模型の必要な部位を抜取り、その部位の支台歯石膏模型のマージンラインが見易いように、そのラインの下の歯肉側をZ軸方向上オーバーハングするようにトリミングする。
トリミングした支台歯石膏模型に、最大豊隆部から咬合面にかけて、隣在歯や対合歯の大きさや形状に合わせてワックスや即時重合樹脂などで3次元形状計測モデルを作製する。
【0008】
最大豊隆部からマージンラインにかけては、その豊隆部でオーバーハングするように適当に作製するか、又は作製しない。その後、支台歯石膏模型と支台歯石膏模型付計測モデルを3次元形状計測機器にて計測する。
計測で得られたデータのオーバーハング部分は、データ上削除する。データの削除仕方は、マージンラインや最大豊隆部ラインがZ軸方向の二次元輪郭をデータ処理し、それらのライン以下のデータを削除する方法、又はX軸、Y軸方向の移動量の無いZ軸方向に移動したデータのみを削除する方法がある。支台歯石膏模型の計測で得られ、マージンラインのデータ処理したデータを雄雌及びミラー変換し、クラウンなどの歯科補綴物の内面形状データとした。
その際、内面形状データは、セメント部分を考慮して法線方向にオフセットする場合がある。
そのデータと最大豊隆部ラインのデータ処理したデータを用意し、マージンラインから最大豊隆部の部分を面張りし、一つの歯科補綴物の3次元形状データにした。
即時重合樹脂などを使用し、口腔内で3次元形状計測モデルを作製したもので、上記と同じように、3次元形状データを取得及び処理し、内面形状データを利用して歯科補綴物を作製することもでき、より好ましい3次元形状計測モデルである。この場合、口腔内で作製した3次元形状計測モデルを、ある程度患者に咬ませることにより、理想の咬合面形状になる。そのため、患者の違和感のない歯科補綴物を提供できる。
【0009】
また、3次元形状計測モデルの作製を省く方法も可能である。予め一般的な3次元形状モデルのデータベースを用意して、コンピュータ上にて処理を行い、上記の方法で得られた内面形状データとを利用して、一つの歯科補綴物の3次元形状データにして行う方法である。
更に当分野において口腔内若しくは模型上で接触点や運動路、豊隆など最低限必要な情報を含むワックスや樹脂の塊状物を製作、計測し、予め用意された歯形形状のデータベースを計測した3次元データに適合するように変形した形状を加工して入れ込む方法も提示する。
歯科補綴物のコーピングの場合は、上記のトリミングした支台歯石膏模型のみで行う。トリミングした支台歯石膏模型を3次元形状計測機器で計測を行い、マージンライン以下のオーバーハング部分をデータ処理をする。そのデータを上記と同じように内面形状データとする。また、そのデータをマージンラインからある高さから上の部分を抽出し、法線方向にある量をオフセットする。そのデータとマージンラインまでを面張りし、外面形状データとする。それらの内外面形状データは、コーピングの形状データとなる。また義歯床なども、このコーピングと同様に加工データを作ることができる。
【0010】
塊状物の材質は、セラミックス、金属、合成樹脂、木材及びその他3次元加工工作機にて、3次元加工が施せる材質のものであり、加工可能であれば特に限定されない。
工具は、エンドミル、ダイヤモンドバー、砥石及びその他塊状物即ち被加工物を加工可能であれば特に限定されるものではない。加工平面も同様である。
また例えば、同一軸上とは直交座標軸、円筒座標軸、球面座標軸及びある関数式により、それらの座標軸が同一あるものであれば特に限定されない。また、支台歯模型、被加工物及び被計測物の材質、被計測物の作製方法、3次元形状の計測又は取得方法、加工方法やデータのオフセット方法及び量、オーバーハング方向も特に限定されない。
【0011】
【作用】
工具(切削又は研削工具)の円筒部分(工具の側面部)を使用し、塊状物を加工することにより、塊状物にあたる工具の面積が増える。そのことにより、加工時間が短縮され、且つ工具の寿命が延びる。また、粗加工と仕上げ加工の工具を分けて使用していたが、粗加工を工具の側面部、仕上げ加工を工具の先端部と分けられことにより、粗加工と仕上げ加工で工具を交換することなく、加工が施せる。
計測エリアと加工エリアを分け、被計測物と被加工物を同一軸上に設置することにより、加工の汚れによる計測の影響がなくなり、位置合わせが簡便になる。
支台歯の適合が良く、且つマージンラインが一致した歯科補綴物が、人の技術に依存せず、簡便に短時間で作製することができる。
【0012】
【実施例1】
本発明の一実施例を図1に示し詳細に説明する。
本発明として使用する切削加工装置は、金型などを加工する機械として用いられているNC工作機械を基本としている。 図1で示す本体3は、3次元形状計測エリア4と3次元加工エリア5に分かれている。3次元形状計測エリア4には、接触素子8が付いた3次元形状計測用プローブ6が設置されている。3次元形状計測用プローブ6はX、Y、Z軸テーブル上に乗っており、3次元的に移動を可能とした。各々の軸の動力にエンコーダー付ACサーボモーターを使用した。3次元加工エリア5には、スピンドルモーター7及びこのモーターと接続する研削加工工具19が設置されている。3次元形状計測エリア4と同様に、スピンドルモーター7も3次元的に移動を可能とした。動作の制御に関しては、この本体3にCRT1を含むパソコン2を接続して行った。更に、冷却や加工屑の被加工物からの排除の目的で、注水ノズル32を設け、3次元加工エリア5に防水加工を施した。3次元形状計測エリア4の被計測物である計測モデル11を把持し回転可能に取り付ける治具10と3次元加工エリア5の被加工物15を把持し回転可能に取り付ける治具9は、内部でつながっており、各々の軸の動力に使用しているエンコーダー付ACサーボモーターで治具9、10を回転できるようにした。計測したデータをそのまま加工した場合、計測モデル11とはミラー反転した形状に加工される。そのため一度計測したデータを汎用のパソコン本体2と汎用パソコンのCRT1の組み合わせによりX軸とY軸をミラー反転する処理をして、NC工作機械にデータを送って加工をする。
13は、3次元形状計測データを汎用パソコンに送るケーブルであり、14は、NC工作機械と同様の構成を有する3次元加工エリアを制御するためにデータを送るケーブルである。
【0013】
歯科治療に使用する石膏模型上で即時重合レジンにてクラウンモデル11を作製し、接着剤にて計測の位置決めができるようにした計測モデル用リブ12に付け、上記の装置に設置した。その歯科補綴物のクラウンモデル11を3次元形状計測用プローブ6にて、形状の計測を行い、計測データとしてパソコン2で処理を行った。また、パソコン2で計測データを研削加工データに処理した。研削加工データとは、ある塊状物からある目的の形状の近似まで加工する粗加工データと粗加工から目的の形状まで加工する仕上げ加工の2つである。クラウンを研削加工するため、実際に歯科補綴物用として使用されているポーセレンを角柱ブロックに成形し準備した。そのポーセレン角柱ブロック15を3次元形状計測の計測モデル11と同じように装置に設置した。研削加工方法は、パソコン2で用意した研削加工データを本体3に流して行う。研削加工工程は、粗加工と仕上げ加工とに分ける。粗加工の加工工具としてφ2mm、仕上げ加工にはφ1mmのダイヤモンドバー工具を用いる。
【0014】
粗加工は本発明の加工方法にて行う。
図2、図4、図5は、切削加工するブロックを上面から見た図であり、図3は、側面から見た図である。ブロックに付された番号は、異なる場合があるが同一のものである。
図2は、XY平面粗取り(クラウンモデル)、図4は、XZ平面粗取り(クラウンモデル)、図5は、支台歯面(内側面)の粗取りした状態の一例をそれぞれ示す。
図2において図1で示すXY平面上にクラウンモデル11の近似形状をポーセレン角柱ブロック15上に投影したXY平面上に投影されたクラウンモデル17の外形(点線で示す。)までを、φ2mmのダイヤモンドバー工具で示される研削加工工具19の側面で研削加工を行った。18は、クラウンモデルXY平面上輪郭加工での研削加工工具の移動軌跡であって、切削状態を線上に輪郭で示したものである。軌跡18の1の軌跡が1回の切削を示し、外側から内側へ順に複数回の切削で経時的に切削が推移する状態を示すものである。
軌跡の間隔及びその軌跡で示される切削の回数は、切削の前段階で、測定データと切削用ブロックの大きさの比較で決定されるものであり、
多量に削る場合は、間隔を広げ、少ない部分は、間隔を少なくする様に設定されながらブロックの周囲を、略一巡しながら、往復して切削動作が行われる。
尚、軌跡は、図示するように、途中で終了する事無く、往復するように一巡する動作が好ましいが、これに限らず、途中で、停止し、戻るものであってもよい。これは、モデルとブロックの比較に於いて、差の値が、各部位で、大差があり、一巡する必要が無い場合に好適となるのである。
軌跡と軌跡の間は、上述の制御により、0.01mm〜2mmの範囲が好ましいものであるが、材質、例えば、多孔質材であれば気孔率、形状等の状態に応じ適宜選択される。
その後、図1で示す外形17まで切削が施されたポーセレン角柱ブロック側面22を、図4に示すように、X軸中心に90゜回転した。回転量は、90°ごとに回転する事が好ましいが、加工具との加工面の接触性が良好であれば、限定されるものではなく、適宜回転量は調整される。
XZ平面上にクラウンモデル23の近似形状を投影した外形(点線で示す。)までを、図1で示したように複数回の切削を行いながら、形成した。24が、XZ平面上輪郭加工での研削加工工具の軌跡を示す。
図1で示すものと同様、外側から内側へ切削し、軌跡間の距離は好ましくは、0.01mm〜2mmであるが、上述と同様適宜選択される。
以上の研削加工によるXZ平面粗取り後、X軸中心に90゜回転した。
図5に回転後の状態を示す。図5は、支台歯面を示す。20は、クラウンモデル輪郭加工後のポーセレン角柱ブロックである。
クラウンモデル11の支台歯面側(内側面)を等高線21上に研削加工を行い粗加工が完了した。
一つの等高線21が、一回の切削により形成され、その間隔は好ましくは、0.01mm〜2mmで、その間隔は限定されることなく、材質、例えば、多孔質材であれば気孔率、形状等の状態に応じ適宜選択される。
輪郭を形成する等高線の間隔が大きければ、表面は、荒くなり、小さければ、細かくなる事から、細かい方が好ましいが、細かくした場合は、輪郭加工回数が多くなり切削時間が長くなる事から、1mm位の間隔が好ましい。
φ2mmのダイヤモンドバー工具をφ1mmのダイヤモンドバーに取り替え、ポーセレンクラウンの支台歯面側(内側面)の仕上げを一般的な方法で行った。近似形状から目的とする形状までの一層を研削加工し、その後被切削物(ポーセレン角柱ブロック)をX軸中心に180゜反転し、クラウンの咬合面を仕上げ研削加工した。仕上がったクラウンを装置より取り外し、リブの部分を人の手により切除し、手研磨を行い完成とした。
【0015】
通常の上面から順に下方に向かって、ダイヤモンドバー工具を落としていく粗加工方法で行った場合、約4時間を費やしていた。また、1本のダイヤモンドバー工具で2〜3本の粗加工しか行えなかった。本発明の様に加工具の加工面を有効に使用することにより粗加工方法で行った場合、約1時間で完了した。また、1本のダイヤモンドバー工具で4〜5本研削加工ができた。
従来は、計測のたびにワークエリアをきれいに掃除を行っていたが、図1で示すように、計測エリア4と加工エリア5を分けたことにより、計測ごとに掃除する必要がなくなった。また、被計測物と被加工物を同軸上に乗せ、それぞれに治具に差し込む治具差込用リブ16の量を調節するための治具差込用リブ16の位置決めストッパー33により、位置決めが確実行うことができ、クラウンモデルの3次元形状を再現できた。
尚、目的とする形状までを輪郭状の軌跡に合わせて、加工工具の側面で行う事で有れば、例示に限るものではない。
【0016】
【実施例2】
実施例1で使用した装置にて、ポーセレン角柱ブロックから歯科補綴物のインレーを研削加工を行った。それを図6、7及び8(a)(b)に示す。
ポーセレン角柱ブロック25には、治具差込用リブ16と治具差込用リブ16の位置決めストッパー33が接続している。
図6は、XY平面粗取り(インレーモデル)した状態の一例を示し、図7は、図6の輪郭加工する際の研削加工工具31の側面がポーセレン角柱ブロック25と接触した状態を示す図、 図8(a)は、XZ平面粗取り(インレーモデル)の図であり、図8(b)は、図8(a)をX軸中心に90°逆回転させた状態を示す図である。
歯科治療に使用する石膏模型上で即時重合レジンにてインレーモデルを作製し、実施例1と同様に研削加工データの準備をした。
ポーセレン角柱ブロック25の粗加工と仕上げ加工の両方で使用することのできるφ3mmとφ1mmのダイヤモンド砥石のついたダイヤモンドバー工具である粗加工と仕上げ加工共用の研削加工工具31を設置した。XY平面上にインレーモデル26の近似形状を投影した外形までを、ダイヤモンドバー工具よりなる研削加工工具31のφ3mmの太い部分の円筒部(側面部)で輪郭加工を行った。
本実施例の輪郭加工における研削加工工具31の軌跡であって、インレーモデルXY平面上輪郭加工での研削加工工具の軌跡27の軌跡の間隔は、0.01mm〜3mmが好ましく、材質、例えば、多孔質材であれば気孔率、形状等に応じ、この範囲に限らず適宜選択される。
図8で示す様にインレーモデル輪郭加工後のポーセレン角柱ブロック28を、X軸中心に90゜回転した。角柱ブロック28のXZ平面上にインレーモデル29の近似形状を投影した外形(点線で示す)までを、同じように研削加工を行った。
図8の30がXZ平面上に投影した外形に対し、更にこのXZ平面を回転させて、輪郭加工の為の研削加工工具の軌跡である。当該軌跡30の間隔は、0.01mm〜3mmであって、材質、例えば、多孔質材であれば気孔率、形状等適宜選択される。
【0017】
次に仕上げ加工に移る前に、粗加工したポーセレン角柱ブロックを粗加工前のXY平面上になるように、X軸中心に90゜逆回転した。この状態を図8(b)に示す。
一般的な仕上げ加工と同様に、近似形状から目的とする形状までの一層を研削加工した。
その後、被切削物(ポーセレン角柱ブロック)をX軸中心に180゜反転し、インレーの裏側を仕上げ研削加工した。この時の仕上げ加工に用いたのは、ダイヤモンドバー工具31のφ1mmの細い部分を使用して加工を行った。 仕上がったインレーを装置より取り外し、リブの部分を人の手により切除し、手研磨を行い完成とした。
【0018】
このインレーを加工する場合、φ1mmのダイヤモンドバー工具のみで上記と同じように加工することができる。しかし、粗加工用のφ3mmと仕上げ加工用のφ1mmを併せ持つこのダイヤモンドバー工具31を使用すれば、粗加工時に量多く研削加工ができるため、約半分の時間で研削加工ができた。また、本発明の方法で行うと粗加工から仕上げ加工までを連続して行うことができる。
尚、目的とする形状までをその輪郭に合わせて、加工工具の側面で行い、1本の加工工具にて加工すれば、例示に限るものではない。
【0019】
【実施例3】
実施例1の装置を使用して、支台歯石膏模型の形状と未完全な咬合面ワックスモデルの形状より、歯科補綴物のクラウンを作製した。
模型の形成
患者の口腔内より印象を採得し、支台歯石膏模型を起こした。図9に示すようにマージンライン36より下の歯肉部分をトリミング35した支台歯石膏模型34を用意した。
図10は、トリミングした支台歯石膏模型に、隣在歯や対合歯に合わせてワックスモデル37を作製したものである。その際、通常のワックスアップでは、重要とされているマージンラインと適合に注意してクラウン形状を作製するが、本発明の場合は最大豊隆部38より下側がオーバーハングになっていれば、どのような状態でもかまわない。
【0020】
模型の表面測定
図11は、ワックスモデル37の3次元形状計測を示したもので、ワックスアップした咬合面側の3次元形状計測を示した図である。
ワックスモデル37を乗せた支台歯石膏模型34を固定アダプター40に設置し、図1の装置の計測エリア4の取付け治具10に固定アダプター40のリブ41をくわえさせ固定した。
図1で示す接触素子8をワックスモデル37の表面を計測したデータ39を走らせ、表面39のX、Y及びZの座標点を取得した。ワックスモデル37の最大豊隆部(ライン)38より下側の形状は、オーバーハングになっているので取得されず、最大豊隆部(ライン)38の輪郭を下方に延ばした形状として取得している。その際、接触素子8が固定アダプター40に当たらないようにパソコン2で設定し、接触素子8のZ軸方向の下限ライン43に接触素子8が降りてくるとXY平面方向に逃げるようにした。
その後ワックスモデル37を外し、支台歯石膏模型34の表面を計測したデータ42の形状を同じように計測した。それを図12に示す。図12は、トリミングした支台歯石膏模型の3次元形状計測を示した図である。この場合も、マージンライン36より下側がトリミングした部分35であり、オーバーハング状態、即ち、マージンラインの突出により、トリミング部分に計測プローブ8が接触されずデータが得られない状態、になっている。
そのため、ワックスモデル37の表面39と同じように支台歯石膏模型34の表面42形状データとなる。その表面形状42データを図13に示す。
図13は、図12の3次元形状計測したデータのマージンラインより下を削除した状態を示している。
【0021】
計測データの加工
それぞれの形状を計測したデータから3次元形状データを作成する。図14には、支台歯石膏模型の形状計測したデータの処理の仕方であって、図13で示すデータをオフセット及び雄雌変換して内面加工データに処理した図である。支台歯石膏模型34のマージンライン36をより下側のオーバーハングした形状データは、X及びY軸方向の移動量が無く、Z軸方向の移動したデータである。
そして、X、Y及びZ軸方向が移動しているデータと先程のX及びY軸方向の移動量が無く、Z軸方向の移動したデータの境界線がマージンライン36となり、その境界線即ちマージンライン36よりZ軸下方のデータを削除する。残ったデータが支台歯の形状データとなるわけである。
【0022】
その後、境界線即ちマージンライン36よりある高さのライン46の部分から上側のデータを法線方向に50μmオフセットし、ライン46から下側のデータをライン46から36にいくに従い、オフセット量を少なくしてライン36につないでデータ45を用意した。
【0023】
このとき、ある高さとはマージンライン36から1.0mmとした。さらに、オフセット面張りデータ45を雄雌変換し、クラウンの内面形状データとした。 オフセットした目的は、クラウンがスムーズにセットしやすいようにし、またそれがクラウンを合着するセメント層の空間のためでもある。また加工工具の逃げも考慮するものである。さらに、クラウン外面加工データ処理も前述同様にを行う。
このオフセット値は、接着剤の量、セットのしやすさ等の量で決定され、好ましくは 20μm〜100μmの範囲が好適であり、又、オフセット値とマージンラインに基づいて得られる曲線は、スプライン曲線、ベジェ曲線等の滑らかな曲線で決定される事が好ましいがこれに限るものではない。
ワックスモデル37の表面形状データ39を図15に示す。図15は、図11で示す3次元形状計測したデータの最大豊隆部ラインより下を削除した状態を示している。
最大豊隆部38よりZ軸下方のデータがオーバーハングした不必要な3次元形状データ58であり、これを削除した。データの削除の仕方は前述と同様である。
残った咬合面形状データ47と内面形状データ49を合成した。内面形状データ49は、支台歯形状データを雌雄変換して形成した。合成にあたり、咬合面形状データ47と内面形状データ49の位置合わせは、支台歯石膏模型34の設置位置を基準とした。その後、最大豊隆部38からマージンライン36まで面データに基づいて面を張りデータ48を形成し、一つのクラウン形状データ50とした。 面データは、その間に制御点を計算することで作った。
マージンライン36と最大豊隆部38を境界曲線にとり、それらとその間にある制御点を利用して曲面を生成する方法としては、ベジェ曲線、スプライン曲線を利用したもの等があり、これらを利用して曲面データを計算した。
研削加工時の被加工物を把持するためのリブ形状データ51をクラウン形状データ50に合成した。
それを図16、17に示す。
図16は、マージンラインから最大豊隆部ラインまでの面張りした状態を示し、図17は、クラウン形状データに加工用リブデータを合成した状態を示している。
【0024】
クラウン形状データ50から、実施例1と同様にポーセレン角柱ブロックからダイヤモンドバー工具にて研削加工を行い、歯科補綴物のクラウンを作製した。従来から高度の技術を要するマージンラインの一致や内面の適合が良好に行えた。またワックスモデルも従来よりもラフに作製しても、歯科補綴物の精度に関係しない方法でもある。
【0025】
この実施例では、支台歯石膏模型からワックスモデルを作製した。しかし、支台歯模型があれば、患者の口腔内にて作製したモデルデータや既存の咬合面データを変形や変換など行ったデータから基づいて、一つのクラウン形状データとしてもかまわない。マージンラインや最大豊隆部などの境界線は、予めXY平面上に最大面積の輪郭を計測し、それを形状計測したデータに照らし合わせて、オーバーハングの部分を削除する方法でも抽出することができる。歯科補綴物のクラウンを例示したが、連結冠も同様に行うことができる。ブリッジの場合は、ポンティック(ダミー)のデータを準備し、変形や変換などをすることにより対応可能である。また、支台歯模型、被加工物及び被計測物の材質、3次元形状計測方法、加工方法やデータのオフセット方法及び量、オーバーハング方向は例示に限るものではない。
【0026】
【実施例4】
実施例1の装置を使用して、支台歯石膏模型からコーピング(フレーム)を作製した。患者の口腔内より印象を採得し、支台歯石膏模型を起こした。図9に示すようにマージンライン36より下の歯肉部分をトリミング35した支台歯石膏模型34を用意した。
実施例3と同様に支台歯石膏模型の形状を計測した(図12)。その後、オーバーハング部分のデータを削除し、支台歯形状データ44とした。
さらに同じように、境界線即ちマージンライン36より1.0mm高さのライン46の部分から下側のデータを削除し、法線方向に50μmオフセットしたデータとマージンライン36までを面張りしたデータ45を用意した。オフセット面張りデータ45を雄雌及びミラー変換し、コーピングの内面形状データ52とした。コーピングの外面形状データ53は、支台歯形状データ44のマージンライン36より0.6mm高さのラインの部分から下側のデータを削除し、法線方向に0.5mmオフセットし、マージンライン36までを面張りしたデータである。コーピング内外面形状データを作成した状態を図18に示す。図19は、コーピングの内面形状データ52と外面形状データ53を合成し、一つのコーピング形状データ54にし、加工用リブデータ55を加えたものである。
このデータを基にして、実施例1の装置で通常のチタン切削加工を行った。できあがったチタンコーピング56からリブの部分を切除した状態を図20に示す。このチタンコーピング56に陶材57を焼き付け完成とした。
【0027】
連結冠やブリッジのフレーム、さらに義歯床も同様の方法で行うことができる。支台歯模型及び被加工物の材質、3次元形状計測方法、加工方法やデータのオフセット方法及び量、オーバーハング方向は例示に限るものではない。
【0028】
【発明の効果】
本発明においては、ある目的の形状までを加工する場合、加工時間の短縮、加工工具の寿命の延長及び工数の削減を可能とした。また、歯科分野において精度の要求される歯科補綴物の内面適合やマージンラインの一致などが、簡便に行うことができるようになった。
このことによって、特に歯科の分野において、機械化の普及の著しい促進につながるものとした。そのことにより、歯科技工の熟練を不必要にし、歯科補綴物製作に掛かる工数、人手の省力を可能とし、品質の良い歯科補綴物の供給につながることを可能にした。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例を示す図。
【図2】 本発明の他の実施例を示す図。
【図3】 本発明の実施例を説明するための図。
【図4】 本発明の実施例を説明するための図。
【図5】 本発明の実施例を説明するための図。
【図6】 本発明の実施例を説明するための図。
【図7】 本発明の実施例を説明するための図。
【図8】 本発明の実施例を説明するための図。
【図9】 本発明の実施例を説明するための図。
【図10】 本発明の実施例を説明するための図。
【図11】 本発明の実施例を説明するための図。
【図12】 本発明の実施例を説明するための図。
【図13】 本発明の実施例を説明するための図。
【図14】 本発明の実施例を説明するための図。
【図15】 本発明の実施例を説明するための図。
【図16】 本発明の他の実施例を示す図。
【図17】 本発明の実施例を説明するための図。
【図18】 本発明の実施例を説明するための図。
【図19】 本発明の実施例を説明するための図。
【図20】 本発明の実施例を説明するための図。
【符号の説明】
1 汎用パソコンのCRT
2 汎用パソコン本体
3 本体
4 3次元形状計測エリア
5 3次元加工エリア
6 3次元形状計測用プローブ
7 スピンドルモーター
8 接触素子
9 被加工物を把持する治具(回転可能)
10 被計測物を把持する治具(回転可能)
11 歯科補綴物のクラウンモデル
12 位置決めストッパー付計測用リブ
13 3次元形状計測データを汎用パソコンに送るケーブル
14 NC工作機械を制御するためにデータを送るケーブル
15 ポーセレン角柱ブロック
Claims (3)
- 歯科補綴物模型(11)の表面形状を3次元計測エリア(4)で計測して3次元形状データ化し、当該データに基づいて、加工用ブロック(15)を3次元加工エリア(5)で円筒状のエンドミル又はダイヤモンドバーで構成される研削加工工具(19)で加工して歯科用補綴物を製造する歯科用補綴物の製造方法において、
前記3次元形状データを平面上に投影した外形(17)の輪郭形状に沿った形状を備えながら、外形(17)の周囲に形成された前記研削加工工具(19)が移動する複数の軌跡(18)を示すデータに従って、前記研削加工工具(19)の側面で前記加工用ブロック(15)を、外側の軌跡(18)から内側へ研削して外形(17)の輪郭形状を形成する粗加工を行うステップ、前記粗加工後、前記研削加工工具(19)の先端部を用いて仕上げ加工を行うステップを有する歯科用補綴物の製造方法。 - 前記3次元形状データは、前記歯科補綴物模型(11)の表面形状データと、リブの形状データで構成された請求項1に記載の歯科用補綴物の製造方法。
- 前記加工用ブロック(15)を研削する際の研削加工工具(9)の移動時の軌跡(18)の間隔が、0.01mm〜2mmである請求項1に記載の歯科用補綴物の製造方法。
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