JP4285675B2 - セメント硬化体用骨材及びセメント硬化体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、セメントコンクリ−トあるいはセメントモルタル等(以下セメント硬化体という)の劣化要因を自ら阻止すると共に損傷に対し自ら治癒せしめる機能、即ち、自癒作用を有するセメント硬化体及びセメント硬化体用骨材に関する。
【0002】
【従来の技術】
固化したセメント硬化体をそのままにしておいたり、セメント硬化体に亀裂等の欠陥が生じたまま放置しておくとセメント硬化体の表面やこの亀裂より雨水、二酸化炭素、塩分等がセメント硬化体内に浸透することでセメント硬化体が本来持っているアルカリ性が損なわれ、いわゆる中性化を起し、内部の鉄筋が錆びてしまいその結果、鉄筋が膨張しセメント硬化体を内部より破壊するといった不具合があった。この他、凍結融解、アルカリ骨材反応、化学的腐食等を引き起こしセメント硬化体の劣化を進めてしまうといった不具合もあった。
【0003】
また雨水、二酸化炭素、塩分等がセメント硬化体内に浸透するのを防止するため表面に樹脂系塗料を塗布していた。その他、セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤(以下、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤という)をセメント硬化体の表面や亀裂部に塗布し、すでに硬化したセメント硬化体内の水酸化カルシウムと反応させ水不溶性の緻密な結晶を亀裂内あるいはセメント硬化体内の微細な空隙、クラック、セメントゲル空孔等内に成長させ、亀裂や微細な空隙、クラック、セメントゲル空孔等の内部への雨水等の浸透を阻止する方法が特開平1−320284号公報、特開昭63−182245号公報並びに特開平2−22159号公報等に開示されているように公知になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記前者の樹脂系塗料を塗布する方法は、初期的には問題ないが、経年変化や外部損傷等により初期の効果を永続的に期待することは困難である。
一方、後者の特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を塗布する方法は、セメント硬化体の表面に塗布するにもかかわらず、表面に開口した亀裂のみならず表面よりかなり深部(30〜50cm)に存在する微細な空隙、クラック、セメントゲル空孔等へ析出する水酸化カルシウムと反応し、亀裂や微細な空隙、クラック、セメントゲル空孔等へ永続的に水不溶性の緻密な結晶を増殖させることが期待できる。しかし、亀裂の生じた後、その部位を探して個別に対応していたのでは膨大な工数がかかるうえ、的確な時期にこれを見つけ出すことができず重大な不具合に至ってしまう危険性があった。
また予防のためセメント硬化体の表面の全てに塗布することは効果が十分期待できるものの、経済的、納期的、立地条件等の面からその実現は極めて困難であった。
【0005】
このため生コンクリ−ト、生モルタル等のセメントに直接、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を添加して混練することで、セメントが硬化した後、亀裂や微細な空隙、クラック、セメントゲル空孔等の内部に析出した水酸化カルシウムと反応し、水不溶性の緻密な結晶を成長させ、セメント硬化体内部への雨水等の浸透を阻止しようとする試みが成された。
【0006】
しかし、この方法では特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤がセメントの水和反応を阻害し、かえってセメント硬化体の硬化強度を低下させてしまうといった大きな問題点があることが明らかとなった。
さらに前述のように、生コンクリ−ト、生モルタル等のセメントに直接、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を添加して混練すると粘性が増大し、混練に使用した大型ミキサ−の清掃作業が著しく困難になってしまう問題も生じた。
【0007】
本発明は上記の問題に鑑みて成されたもので、上記のような特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を、セメントの水和反応を阻害することなく内部に存在せしめた自癒作用のあるセメント硬化体及びこれに使用するセメント硬化体用骨材を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明におけるセメント硬化体用骨材は、(イ)微細シリカと、水ガラスと、ケイ弗化マグネシウム又は/及び、マグネシア及びシリカを含んだケイ弗化物、を含有する水溶性弗化物と、を含む、若しくは(ロ)複数のカルボキシル基を持つ有機酸又はその塩と、マグネシウムケイ酸塩を含む鉱物と、を含む、若しくは(ハ)フマル酸やマレイン酸などの不飽和2価カルボン酸と、マグネシアと、を含む、セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤が混入された硬化体であることを特徴とする。
【0009】
また本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を多孔質体より成る担体に担荷させたことを特徴とする。
また、本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤と、ポルトランドセメントとを多孔質体より成る担体に担荷させたことを特徴とする。
【0010】
さらに本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加して得られた硬化体であることを特徴とする。
【0011】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加し、これに水を加えて得られた硬化体であることを特徴とする。
【0012】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加し、これに水と砂を加えて得られた硬化体であることを特徴とする。
【0013】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加し、これに水と砂とファイバ−を加えて得られた硬化体であることを特徴とする。
【0014】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記担体が、空孔径0.01〜3mm、空孔率5〜60Vol%、圧縮強度30kg/cm2以上の多孔質体であることを特徴とする。
【0015】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記硬化体が、押圧固化された後、ポルトランドセメントの水和反応により硬化したものであることを特徴とする。
【0016】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記硬化体が、吐出用ノズルにより押出し成形された連続体を切断し固化体とした後、ポルトランドセメントの水和反応により硬化したものであることを特徴とする。
【0017】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、セメントコンクリ−トに使用されるものであって、粒径が0.5〜45mmであることを特徴とする。
【0018】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、セメントモルタルに使用されるものであって、粒径が0.5〜5mmであることを特徴とする。
【0019】
加えて本発明におけるセメント硬化体用骨材は、前記押圧固化が、面圧50kg/cm2以上あるいは線圧200kg/cm以上の圧力で成されることを特徴とする。
【0020】
また上記の目的を達成するために本発明におけるセメント硬化体は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のセメント硬化体用骨材を含むことを特徴とする。
【0021】
【作用】
本発明は上記のような解決手段を採用することにより、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を骨材内部に混入させ、該骨材とセメントとを混練するようにしたから、混練する際、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤の外部に接する面積(表面積)が極めて少なくなった。そのため、短時間で進行するセメントの水和反応を阻害することはなくなった。一方、長時間をかけて効果を徐々に、かつ永続的に発揮するセメント硬化体に対する自癒作用については、非粉体状をした表面積の小さい骨材内の特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤からある種の自癒作用物質が徐々に放出されて、主としてセメント成分の硬化後析出する水酸化カルシウムと永続的に反応するため初期の目的(水和反応の阻害、大型ミキサ−の汚染等を回避してセメント硬化体に自癒作用をもたせる)は達成できる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明で述べる「特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤」とは特開平1−320284号公報、特開昭63−182245号公報並びに特開平2−22159号公報等に開示されている即ち、必須要件として、(イ)微細シリカと、水ガラスと、ケイ弗化マグネシウム又は/及び、マグネシア及びシリカを含んだケイ弗化物、を含有する水溶性弗化物と、を含み、若しくは(ロ)複数のカルボキシル基を持つ有機酸又はその塩と、マグネシウムケイ酸塩を含む鉱物と、を含み、若しくは(ハ)フマル酸やマレイン酸などの不飽和2価カルボン酸と、マグネシアと、を含み、(イ)〜(ハ)のいずれかに必要に応じて普通ポルトランドセメントを含有するものである。そしてこれらの組成物は、セメント硬化体の防水剤・止水剤・劣化抑止剤として広く一般に市販されている物を適宜選定して使用することができる。
【0023】
なお以下の実施例においてはフマル酸、微細オリビンサンド(ケイ酸マグネシウム鉱物)、ポゾラン(微細シリカ)、普通ポルトランドセメントを含むものを試料1とし、ポゾラン(微細シリカ)、水ガラス、マグネシア、ケイ弗化物、普通ポルトランドセメントを含むものを試料2として使用した。
【0024】
本発明で述べる担体とは、表面からその内部に連通する空隙や空孔を有し、その空隙や空孔内に物質を担う事のできる固体をいう。また担荷とは担体に物質を担わせる事をいう。多孔質体よりなる担体としては、砂等の耐熱性のある粒子状無機物にホウロウ等のガラス質をバインダ−として加え、これを焼成することで得られる多孔質体や連泡性スポンジの表面にセラミックをコ−ティングした後、これを焼成して得られるスケルトン状物の他、砂等の粒子状無機物やフェノ−ル樹脂等の粒子状有機物に対しエポシキ樹脂あるいは不飽和ポリエステル樹脂をバインダ−として加え、これを硬化させることで得られる多孔質体等、水に対し容易に溶解しない多孔質体であればいずれも使用することが可能である。
【0025】
なおファイバ−を加える理由は、セメント硬化体用骨材の強度を高めるためである。生コンクリ−ト等へ本発明によるセメント硬化体用骨材を加えて混練したり、打設時にポンプ輸送した際、本発明によるセメント硬化体用骨材の崩壊を防止するうえで重要である。さらに本発明によるセメント硬化体用骨材自体の強度を高めることで硬化したセメント硬化体の強度を維持するためにも重要である。
【0026】
そして、ここで使用するファイバ−としては、ステンレス鋼、鉄等の材料を特殊な切削技術を用いて非直線状に作成した金属繊維、ポリアクリロニトリル繊維等の合成樹脂繊維、炭素繊維、ガラス繊維等を挙げることができる。
さらに、これらの繊維は、本発明によるセメント硬化体用骨材中にファイバ−ボ−ルができないように十分に分散し存在することが骨材補強の目的からして重要であり、粉体状の材料混合時予めファイバ−を十分に分散させた後、水を加え混練するのが適切である。
【0027】
【実施例1】
3号相当(粒径1000μm程度)のケイ砂100部に対し、融点650℃のホウロウ30部を加え混合した。この混合物100部に対し1次バインダ−として硬化剤を含み焼成過程で蒸発する成分を含むエチルシリケ−ト加水分解物を25部加え十分撹拌・混合した。
この混合物を成形しφ20mm×長さ20mmの1次成形体を得た。この1次成形体を600〜700℃で5時間焼成し、2次成形体を得た。
ケイ砂粒子間で空孔を形成すると共に焼成することによりエチルシリケ−ト加水分解物中の蒸発成分が蒸発して空孔を生じる。
この2次成形体の物性は、空孔径0.5〜1.5mm、空孔率約35Vol%、圧縮強度300〜350kg/cm2であった。
上記2次成形体へ、水60部に対し前記試料1を100部分散・懸濁したスラリ−を含浸せしめた。
常温・大気中にて1日間放置した後、常温・100%の湿度雰囲気で27日間養生し試験用粗骨材1を得た。
【0028】
次に試験用粗骨材1を用いて自癒作用のあるセメントコンクリ−トを作成する方法について説明する。
普通ポルトランドセメント、細骨材として土岐(岐阜県土岐市)産山砂(粒の大きさ5mm)、粗骨材として土岐産砂利(粒の大きさ5〜25mm)、混和剤としてAE減水剤、並びに水とを混合し生コンクリ−トを調製した。なお本生コンクリ−トの配合割合は、水156kg/m3、普通ポルトランドセメント274kg/m3、細骨材791kg/m3、粗骨材1052kg/m3、混和剤0.548kg/m3である。
その後、得られた生コンクリ−ト1m3に対し試験用粗骨材1を150個加え再度混練した。このようにして得られた試験用粗骨材1を含む生コンクリ−トを用い試験片を作成し、常温・100%の湿度雰囲気で28日間養生した後、円形の試料を切り出し、透水試験(アウトプット法)を行った。比較のため試験用粗骨材1のみを使用せず同様の試験片を作成し試験を行った。
【0029】
試験の結果、前者の透水係数が2.1×10−10cm/sであったのに対し、試験用粗骨材1を使用しなかった後者の透水係数は1.98×10−9cm/sもあり、明らかに試験用粗骨材1の効果が認められた。
またφ100mm×長さ200mmの試験片を作成し圧縮試験を行った。
前記試験用粗骨材1を使用した場合287kg/cm2であったのに対し、試験用粗骨材1を使用しなかった比較例では245kg/cm2であり、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を本発明による形態で加えても強度の低下は認められず、かえって強度の増加が認められた。
これらの効果を検証するため透水試験に用いた試験片と圧縮試験に用いた試験片の破面を電子顕微鏡で精査したところ、共に、試験用粗骨材1を用いた場合には、試験用粗骨材1を用いなかった場合に空隙として認められた部分に、緻密な結晶が密に存在しているのが認められた。即ち、透水試験を行った後でも水に溶解せず残存している緻密な結晶がこれらの効果に寄与していることが分かる。
【0030】
【実施例2】
土岐産の山砂を3部、試料1を1部、水を1部加えて十分混練し、試験用粗骨材2を作成するための混合材を調製した。
この粗骨材用混合材を用いφ15mm×長さ15mm程度の試験用粗骨材2を作成した。
試験用粗骨材2は、常温にて1日間放置した後、常温・100%の湿度雰囲気にて27日間養生した。
ここで山砂(砂)を添加する目的は、試験用粗骨材2を加圧(後述の実施例4に示す加圧方法)することなしに作成するに当たり、試験用粗骨材2の強度を得るのに必要なためであるが、必ずしも不可欠なものではない。
【0031】
次にこの試験用粗骨材2を用いて自癒作用のあるセメントコンクリ−トを作成する方法について説明する
普通ポルトランドセメント、細骨材として土岐産山砂(粒の大きさ5mm)、粗骨材として土岐産砂利(粒の大きさ5〜25mm)、混和剤としてAE減水剤、並びに水とを混合し生コンクリ−トを調製した。なお本生コンクリ−トの配合割合は、水156kg/m3、普通ポルトランドセメント274kg/m3、細骨材791kg/m3、粗骨材1052kg/m3、混和剤0.548kg/m3である。
その後、得られた生コンクリ−ト1m3に対し試験用粗骨材2を100個加え再度混練した。このようにして得られた試験用粗骨材2を含む生コンクリ−トを用い試験片を作成し、常温・100%の湿度雰囲気で28日間養生した後、円形の試料を切り出し、透水試験(アウトプット法)を行った。比較のため試験用粗骨材2のみを使用せず同様の試験片を作成し試験を行った。
【0032】
試験の結果、前者の透水係数が8.5×10−11cm/sであったのに対し、試験用粗骨材2を使用しなかった後者の透水係数は1.98×10−9cm/sもあり、明らかに試験用粗骨材2の効果が認められた。
またφ100mm×長さ200mmの試験片を作成し圧縮試験を行った。試験用粗骨材2を使用した場合297kg/cm2であったのに対し、試験用粗骨材2を使用しなかった比較例では245kg/cm2であり、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を本発明による形態で加えても強度の低下は認められず、かえって強度の増加が認められた。
【0033】
これらの効果を検証するため透水試験に用いた試験片と圧縮試験に用いた試験片の破面を電子顕微鏡で精査したところ、共に、試験用粗骨材2を用いた場合には、試験用粗骨材2を用いなかった場合に空隙として認められた部分に、緻密な結晶が密に存在しているのが認められた。即ち、透水試験を行った後でも水に溶解せず残存している緻密な結晶がこれらの効果に寄与していることが分かる。
【0034】
【実施例3】
ケイ砂を3部、試料2を1部、水を1部加えて十分混練し、試験用細骨材3を作成するための混合材を調製した。
この細骨材用混合材を用い粒径1.5〜2.5mm程度の試験用細骨材3を作成した。
試験用細骨材3は、常温にて1日間放置した後、常温・100%の湿度雰囲気にて27日間養生した。
【0035】
次にこの試験用細骨材3を用いて自癒作用のあるセメントモルタルを作成する方法を説明する。
普通ポルトランドセメント、細骨材として土岐産山砂(粒の大きさ5mm)並びに水とを混合し生モルタルを調製した。なお本生モルタルの配合割合は、普通ポルトランドセメント1部、細骨材3部、水0.6部である。
その後、得られた生モルタル1kgに対し試験用細骨材3を0.004kgを加え再度混練した。
このようにして得られた試験用細骨材3を含む生モルタルを用い試験片を作成し、常温・100%の湿度雰囲気で28日間養生した後、円形の試料を切り出し、透水試験(アウトプット法)を行った。比較のため試験用細骨材3のみを使用せず同様の試験片を作成し試験を行った。
【0036】
試験の結果、前者の透水係数が3.5×10−12cm/sであったのに対し、試験用細骨材3を使用しなかった後者の透水係数は5.9×10−11cm/sもあり、明らかに試験用細骨材3の効果が認められた。
またφ100mm×長さ200mmの試験片を作成し圧縮試験を行った。
試験用細骨材3を使用した場合253kg/cm2であったのに対し、試験用細骨材3を使用しなかった比較例では230kg/cm2であり、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を本発明による形態で加えても強度の低下は認められず、かえって強度の増加が認められた。
【0037】
これらの効果を検証するため透水試験に用いた試験片と圧縮試験に用いた試験片の破面を電子顕微鏡で精査したところ、共に、試験用粗骨材3を用いた場合には、試験用粗骨材3を用いなかった場合に空隙として認められた部分に、緻密な結晶が密に存在しているのが認められた。即ち、透水試験を行った後でも水に溶解せず残存している緻密な結晶がこれらの効果に寄与していることが分かる。
【0038】
【実施例4】
試料1を100部に対し水を5部加え十分撹拌して湿態状の試料を調製した。新東工業(株)製ブリケッティングマシン(型式:BGS25)を用い約18mm×13mmの大きさの圧粉体を成形した。なお、この際の線圧は概ね1000kg/cmであった。この圧粉体を常温・100%の湿度雰囲気にて28日間養生し試験用粗骨材4を得た。圧粉成形した直後の成形体の圧壊強度は3kg程度しかなく、骨材として使用し得る限界であったが、28日間養生し圧粉体中の普通ポルトランドセメントの水和反応を進行させることにより圧壊強度は20kg程度となり、骨材として十分使用に耐えうるものとなった。
【0039】
次にこの試験用粗骨材4を用いて自癒作用のあるセメントコンクリ−トを作成する方法について説明する。
普通ポルトランドセメント、細骨材として土岐産山砂(粒の大きさ5mm)、粗骨材として土岐産砂利(粒の大きさ5〜25mm)、混和剤としてAE減水剤、並びに水とを混合し生コンクリ−トを調製した。なお本生コンクリ−トの配合割合は、水156kg/m3、普通ポルトランドセメント274kg/m3、細骨材791kg/m3、粗骨材1052kg/m3、混和剤0.548kg/m3である。
その後、得られた生コンクリ−ト1m3に対し試験用粗骨材4を100個加え再度混練した。このようにして得られた試験用粗骨材4を含む生コンクリ−トを用い試験片を作成し、常温・100%の湿度雰囲気で28日間養生した後、円形の試料を切り出し、透水試験(アウトプット法)を行った。比較のため試験用粗骨材4のみを使用せず同様の試験片を作成し試験を行った。
【0040】
試験の結果、前者の透水係数が5.8×10−11cm/sであったのに対し、試験用粗骨材4を使用しなかった後者の透水係数は1.98×10−9cm/sもあり、明らかに試験用粗骨材4の効果が認められた。
またφ100mm×長さ200mmの試験片を作成し圧縮試験を行った。
試験用粗骨材4を使用した場合291kg/cm2であったのに対し、試験用粗骨材4を使用しなかった比較例では245kg/cm2であり、特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を本発明による形態で加えても強度の低下は認められず、かえって強度の増加が認められた。
【0041】
これらの効果を検証するため透水試験に用いた試験片と圧縮試験に用いた試験片の破面を電子顕微鏡で精査したところ、共に、試験用粗骨材4を用いた場合には、試験用粗骨材4を用いなかった場合に空隙として認められた部分に、緻密な結晶が密に存在しているのが認められた。即ち、透水試験を行った後でも水に溶解せず残存している緻密な結晶がこれらの効果に寄与していることが分かる。
【0042】
【実施例5】
前記実施例2で作成したのと同様にして圧縮用試験片を作成した。
加圧を行い、クラックの生じた時(破壊にいたる直前)の圧力F1を読み取り直ちに加圧を解除した。そのままの状態を保持しつつ、常温・100%の湿度雰囲気にて28日間放置した。その後、再び加圧し最高圧力F2を読み取った。
F1と比べF2が大きくなっていれば28日間放置した間に自癒作用が働いたものと考えられる。
圧縮試験を行った結果、試験用粗骨材2を使用しなかった試験片はF2/F1=0.9〜1.0であったのに対し、試験用粗骨材2を使用した試験片はF2/F1=1.2〜1.4も有り28日間放置した間に自癒作用が強く働いたものと考えられる。
【0043】
本発明において、担体の空孔径を0.01〜3mmとしたのは、これより細い空孔内へは、ある種の自癒作用物質を徐々に放出する特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤が極めて侵入しにくく、本発明の効果が期待できなくなるためであり、その上限を3mmとしたのは、これ以上の大きさの連続した空孔径となると担体の強度が極端に低下し、本発明による骨材を生コンクリ−ト又は生モルタルと混練する際、該骨材が崩壊してしまう危険が有るためである。
また空孔率を5〜60Vol%としたのは、これより空孔率が低いと前記自癒作用物質が担荷される量が少なすぎ、自癒作用が期待できないためであり、これより空孔率が高いと担体の強度が保てなくなり、前記と同様の欠点が生じるためである。
さらに圧縮強度30kg/cm2以上としたのは、これより強度が低いと前記同様、生コンクリ−ト又は生モルタルと混練する際、骨材が崩壊してしまう危険が有るためである。また、この骨材を加えたセメント硬化体の強度を維持するためにも前記圧縮強度は30kg/cm2以上必要である。
【0044】
本発明において押圧固化時の押圧力を、面圧の場合50kg/cm2以上、線圧の場合200kg/cm以上としたのは、これ以下の押圧力では後工程(押圧固化した後、ポルトランドセメントの水和反応により完全に硬化するまでの間)での取り扱い時に押圧固化体が崩壊してしまう危険性が大きく、製品の歩留まりが極端に悪くなるためである。
【0045】
また押圧固化した後、水和反応を行わせるようにしたのも、本発明による骨材が生コンクリ−ト又は生モルタルとの混練時に崩壊しない強度を得るためである。
【0046】
なお上記実施例においてはブリケッティングマシンにより圧粉成形し、得られた固化体を養生することで水和反応を進行させ硬化するようにしているが、固化体を得るにあたっては、打錠機(圧縮造粒機)を用い錠剤のように成形することも可能であるし、土練機等の吐出ノズルより連続して押出した棒状体を適当な長さに切断して得ることも可能である。これらは、いずれの方法であっても本発明による骨材を極めて早く生産できる利点がある。
【0047】
本発明において、セメントコンクリ−トに使用される骨材の粒径を0.5〜45mmとしたのは、これ以下の骨材を作成するのが困難であるうえ、これ以下の大きさの骨材を、自癒作用を発揮させるのに十分な量、生コンクリ−トへ添加すると初期の問題点であったセメント硬化体の強度低下並びに生コンクリ−トの粘度増大による大型ミキサ−の清掃困難が生じてしまうためである。また、これ以上の大きさの骨材にすると、混練時や打設時、骨材の分離を生じやすくなり、さらには打設時にポンプ輸送することが困難になったり、型枠内に入りにくくなったりするので利用範囲が限定されてしまうためである。
そして、好ましくは粒径2〜25mmの骨材を使用するのが望ましい。
【0048】
本発明においてセメントモルタルに使用される骨材の粒径を0.5〜5mmとしたのは、これ以下の骨材を作成するのが困難であるうえ、これ以下の大きさの骨材を、自癒作用を発揮させるのに十分な量、生モルタルへ添加すると初期の問題点であったセメント硬化体の強度低下並びに生モルタルの粘度増大によるミキサ−の清掃困難が生じてしまうためである。また、これ以上の大きさの骨材にすると、生モルタルを施工する際、滑らかな仕上げが困難となってしまうためである。
そして、好ましくは粒径1〜3mmの骨材を使用するのが望ましい。
【0049】
【発明の効果】
本発明は上記の説明から明らかなように、自癒作用のある特殊な反応性薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤が混入された硬化体を骨材として含むセメント硬化体にしたから、セメントの水和反応を阻害することなしにセメント硬化体へ自癒作用を付与することができる等種々の効果がある。
Claims (15)
- (イ)微細シリカと、水ガラスと、ケイ弗化マグネシウム又は/及び、マグネシア及びシリカを含んだケイ弗化物、を含有する水溶性弗化物と、を含む、若しくは(ロ)複数のカルボキシル基を持つ有機酸又はその塩と、マグネシウムケイ酸塩を含む鉱物と、を含む、若しくは(ハ)フマル酸やマレイン酸の不飽和2価カルボン酸と、マグネシアと、を含む、セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤が混入された硬化体であることを特徴とするセメント硬化体用骨材。
- 前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤を多孔質体より成る担体に担荷させたことを特徴とする請求項1記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤と、ポルトランドセメントとを多孔質体より成る担体に担荷させたことを特徴とする請求項1記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加して得られた硬化体であることを特徴とする請求項1記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加し、これに水を加えて得られた硬化体であることを特徴とする請求項1記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加し、これに水と砂を加えて得られた硬化体であることを特徴とする請求項1記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記セメント硬化体中の水酸化カルシウムと反応して水不溶性物を生成する薬剤を含む防水剤・止水剤・劣化抑止剤に、ポルトランドセメントを追加し、これに水と砂とファイバ−を加えて得られた硬化体であることを特徴とする請求項1記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記担体が、空孔径0.01〜3mm、空孔率5〜60Vol%、圧縮強度30kg/cm2以上の多孔質体であることを特徴とする請求項2または3記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記硬化体が、押圧固化された後、ポルトランドセメントの水和反応により硬化したものであることを特徴とする請求項1、4、5、6、7のいずれか1項に記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記硬化体が、吐出用ノズルにより押出し成形された連続体を切断し固化体とした後、ポルトランドセメントの水和反応により硬化したものであることを特徴とする請求項1、4、5、6、7のいずれか1項に記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記硬化体が、錠剤形状のものまたは棒状体の固化体を使用したものであることを特徴とする請求項1、4、5、6、8、9、10のいずれか1項に記載のセメント硬化体用骨材。
- セメントコンクリ−トに使用されるものであって、粒径が0.5〜45mmであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のセメント硬化体用骨材。
- セメントモルタルに使用されるものであって、粒径が0.5〜5mmであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載のセメント硬化体用骨材。
- 前記押圧固化が、面圧50kg/cm2以上あるいは線圧200kg/cm以上の圧力で成されることを特徴とする請求項9記載のセメント硬化体用骨材。
- 請求項1乃至14のいずれか1項に記載のセメント硬化体用骨材を含むことを特徴とするセメント硬化体。
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