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JP4285338B2 - スターリングエンジン - Google Patents

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Description

本発明は、スターリングエンジンに関し、特に、スターリングエンジンの出力を制御可能なスターリングエンジンに関する。
近年、乗用車やバス、トラック等の車両に搭載される内燃機関の排熱や工場排熱を回収する外燃機関として、理論熱効率に優れたスターリングエンジンが注目されてきている。
特開昭64−342号公報(特許文献1)には、作動空間とクランクケースとを連通する連通管と蓄圧タンクから構成されるスターリングエンジンの出力制御装置が開示されている。
特開昭64−342号公報
スターリングエンジンの出力を制御することが望まれている。特に、スターリングエンジンの出力制御がより簡易な方法で行えることが望まれている。
本発明の目的は、出力を制御可能なスターリングエンジンを提供することである。
本発明のスターリングエンジンは、低温側シリンダの作動空間である圧縮空間と、高温側シリンダの作動空間である膨張空間とを、作動ガスが往復する2ピストン形のスターリングエンジンであって、低温側シリンダのパワーピストンが下死点側に位置するときに圧縮空間とクランクケース(41)内とを連通させて、クランクケース(41)内から圧縮空間に向かう方向にのみ作動ガスを流す圧縮空間側の通路(71)と、圧縮空間側の通路(71)に設けられた開閉弁(72)と、膨張空間とクランクケース(41)内とを連通させる膨張空間側の通路(75)と、膨張空間側の通路(75)に設けられた開閉弁(76)と、膨張空間側の通路(75)に設けられ、膨張空間からクランクケース(41)内に向かう作動ガスの流れのみを許すチェック弁(77)と、を有し、スターリングエンジンの出力を低下させる場合、圧縮空間側の開閉弁(72)は閉じた状態とし、且つ膨張空間側の開閉弁(76)は開いた状態とされ、スターリングエンジンの出力を増大させる場合、膨張空間側の開閉弁(76)は閉じた状態とし、且つ圧縮空間側の開閉弁(72)を開いた状態とされることを特徴としている。
本発明のスターリングエンジンによれば、出力を制御可能である。
以下、本発明のスターリングエンジンの一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
本実施形態のスターリングエンジンは、スターリングエンジンの作動空間とクランクケースとを連通する連通管と、連通管を開閉する開閉手段と、開閉手段を開閉制御する開閉制御手段と、圧力制御手段とを備え、圧力制御手段は、作動空間の圧力がクランクケースの圧力よりも高いときに連通管を開くことで作動空間の平均圧力を低下させるとともに、作動空間の圧力がクランクケースの圧力よりも低いときに連通管を開くことで作動空間の平均圧力を上昇させるものである。本実施形態では、エンジンポンピング作用を有効に活用することで、出力制御を行う。
本実施形態において、スターリングエンジンの出力制御を行うための構成については、図1を用いて後述することとし、ここではまず、図8を参照して、本実施形態のスターリングエンジンの基本構成について説明する。
図8は、本実施形態のスターリングエンジンの基本構成を示す正面図である。図8に示すように、本実施形態のスターリングエンジンは、α型(2ピストン形)のスターリングエンジン10であり、二つのパワーピストン20、30を備えている。二つのパワーピストン20、30は、直列並行に配置されている。低温側パワーピストン30のピストン31は、図10に示すように、高温側パワーピストン20のピストン21に対して、クランク角で90°程度遅れて動くように位相差がつけられている。
高温側パワーピストン20のシリンダ(以下高温側シリンダという)22の上部の空間(膨張空間)には、加熱器47によって加熱された作動流体が流入する。低温側パワーピストン30のシリンダ(以下低温側シリンダという)32の上部の空間(圧縮空間)には、冷却器45によって冷却された作動流体が流入する。
再生器(再生熱交換器)46は、膨張空間と圧縮空間を作動流体が往復する際に熱を蓄える。即ち、膨張空間から圧縮空間へと作動流体が流れる時には、再生器46は、作動流体より熱を受け取り、圧縮空間から膨張空間へと作動流体が流れる時には、蓄えられた熱を作動流体に渡す。
2つのピストン21、31の往復動に伴い、作動ガスの往復流動が生じて高温側シリンダ22の膨張空間と低温側シリンダ32の圧縮空間にある作動流体の割合が変化するとともに、全内容積も変わるため、圧力の変動が生じる。2つのピストン21、31がそれぞれ同位置にある場合の圧力を比較すると、膨張ピストン21についてはその上昇時より下降時の方がかなり高く、圧縮ピストン31については逆に低くなる。このため、膨張ピストン21は外部に対し大きな正の仕事(膨張仕事)を行い、圧縮ピストン31は外部から仕事(圧縮仕事)を受ける必要がある。膨張仕事は、一部が圧縮仕事に使われ、残りが駆動軸40を介して出力として取り出される。
本実施形態のスターリングエンジン10は、図9に示すように、車両において主エンジン(ガソリンエンジン、内燃機関)200と共に用いられてハイブリッドシステムを構成する。即ち、スターリングエンジン10は、主エンジン200の排気ガスを熱源として用いた排気熱回収装置である。スターリングエンジン10の加熱器47が車両の主エンジン200の排気管100の内部に配置され、排気ガスから回収した熱エネルギーにより作動流体が加熱されてスターリングエンジン10が作動する。
本実施形態のスターリングエンジン10は、排気管100の内部にその加熱器47が収容されるというように車両内の限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増す。そのために、スターリングエンジン10では、2つのシリンダ22、32をV字形ではなく、直列並行に配置した構成を採用している。
加熱器47が排気管100の内部に配置されるに際しては、排気管100の内部において相対的に高温の排気ガスが流れる排気ガスの上流側(主エンジン200に近い側)100aに、加熱器47の高温側シリンダ22側が位置し、相対的に低温の排気ガスが流れる下流側(主エンジン200から遠い側)100bに加熱器47の低温側シリンダ32側が位置するように配置される。加熱器47の高温側シリンダ22側をより多く加熱するためである。
高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32のそれぞれは、円筒状に形成されており、基準体である基板42に支持されている。本実施形態においては、この基板42が、スターリングエンジン10の各構成要素の位置基準となる。このように構成されることで、スターリングエンジン10の各構成要素の相対的位置精度が確保される。また、この基板42は、スターリングエンジン10が排熱回収対象である排気管(排気通路)100等に取り付けられるときの基準として用いられることができる。
排気管100のフランジ100fに対して、断熱材(スペーサ、図示せず)を介して、基板42が固定されている。基板42には、高温側シリンダ22の側面(外周面)22cに設けられたフランジ22fが固定されている。また、基板42には、再生器46の側面(外周面)46cに設けられたフランジ46fが固定されている。
排気管100とスターリングエンジン10とは、基板42を介して取り付けられる。このとき、基板42と、高温側シリンダ22において加熱器47が接続される側の端面(頂部22bの上面)、及び低温側シリンダ32において冷却器45が接続される側の端面(頂面32a)とが実質的に平行になるように、スターリングエンジン10が基板42に取り付けられる。あるいは、基板42とクランクシャフト61(又は駆動軸40)の回転軸とが平行になるように、もしくは排気管100の中心軸とクランクシャフト61の回転軸とが平行になるように、スターリングエンジン10が基板42に取り付けられる。これにより、既存の排気管100に大幅な設計変更を加えることなく、容易に排気管100にスターリングエンジン10を取り付けることができる。その結果、排熱回収対象である車両の内燃機関本体の性能や搭載性、騒音等の機能を損なうことなくスターリングエンジン10を排気管100に搭載することができる。また、同一仕様のスターリングエンジン10を異なる排気管に取り付ける場合でも、加熱器47の仕様を変更するだけで対応できるので、汎用性を向上させることができる。
スターリングエンジン10は、車両の床下に配された排気管100に隣接するスペースに、横置き、即ち、車両の床面(図示せず)に対して、高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32のそれぞれの軸線方向が概ね平行になるように配置され、2つのピストン21、31は、水平方向に往復動される。本実施形態では、説明の便宜上、2つのピストン21、31の上死点側を上方向、下死点側を下方向であるとして説明する。
作動流体は、その平均圧力(後述するPmean)が高い程、冷却器45や加熱器47による同じ温度差に対しての圧力差が大きくなるので高い出力が得られる。そのため、上記のように、高温側シリンダ22、低温側シリンダ32の作動空間内の作動流体は高圧に保持されている。
ピストン21,31は、円柱状に形成されている。ピストン21、31の外周面とシリンダ22、32の内周面との間には、それぞれ数十μmの微小クリアランスが設けられており、そのクリアランスには、スターリングエンジン10の作動流体(空気)が介在している。ピストン21,31は、それぞれシリンダ22、32に対して空気軸受48により非接触の状態で支持されている。したがって、ピストン21,31の周囲には、ピストンリングは設けられておらず、また、一般にピストンリングと共に使用される潤滑油も使用されていない。但し、シリンダ22、32の内周面には、固定潤滑材が付されている。空気軸受48の作動流体の摺動抵抗は元々極めて低いが、更に低減するために、固定潤滑材が付されている。上記のように、空気軸受48は、作動流体(気体)により膨張空間、圧縮空間それぞれの気密を保ち、リングレスかつオイルレスでクリアランスシールを行う。
加熱器47は、複数の伝熱管(管群)47tを有し、それらの複数の伝熱管47tが概ねU字形の形状に形成されてなるものである。各伝熱管47tの第1端部47taが高温側シリンダ22の上部(頂部)(頂面22a側の端面)22bに接続されている。各伝熱管47tの第2端部47tbが再生器46の上部(加熱器47側の端面)46aに接続されている。上記のように、加熱器47が概ねU字形に形成されている理由については後述する。
再生器46は、蓄熱材(マトリックス、図示せず)と、そのマトリックスが収容される再生器ハウジング46hとを備えている。再生器ハウジング46hには、高圧の作動流体が入るため、再生器ハウジング46hは、耐圧容器である。再生器46では、マトリックスとして、積層された金網が用いられている。
再生器46には、上述した機能から、以下の条件が要求される。即ち、伝熱性能と蓄熱容量が高く、流動抵抗(流動損失、圧力損失)が小さいことのほか、作動流体の流れ方向の熱伝導率が小さく、温度勾配を大きくとれることが要求される。その金網の材料は、ステンレス鋼であることができる。積層された各金網のメッシュを通過するときに、その金網に作動流体の熱が蓄熱される。
加熱器47において高温側シリンダ22との接続部分(横断面形状)は、高温側シリンダ22の上部(加熱器47との接続部分)の開口形状(真円)と同じ形状・大きさとされている。同様に、加熱器47において再生器46との接続部分は、再生器46の上面と同じ形状・大きさとされている。即ち、加熱器47、再生器46の断面形状は、高温側シリンダ22及び低温側シリンダ32の開口形状と同じ形状・大きさに形成されている。この構成により、作動流体の流路抵抗(流通抵抗)が低減される。
クランクシャフト61は、クランクケース41に対して、ベアリング(軸受)で回転自在に支持されている。本実施形態では、カウンタウェイト90が、スターリングエンジン10全体の上下方向の大きさに与える影響を最小限に抑えるべく、スターリングエンジン10全体の上下方向の大きさに影響を与えることなくスペースを確保可能な高温側シリンダ22側にカウンタウェイト90が設けられている。
次に、上記のように、加熱器47が概ねU字形(カーブ形状)に形成される理由について説明する。
スターリングエンジン10の熱源は、上記のように車両の主エンジン200の排気ガスであり、スターリングエンジンに専用に用意された熱源ではない。そのため、それほど高い熱量が得られるわけではなく、排気ガスの例えば約800℃程度の熱量でスターリングエンジン10が作動する必要がある。そのために、スターリングエンジン10の加熱器47は排気管100内の排ガスから効率的に受熱する必要がある。
加熱器47、再生器46、冷却器45からなる熱交換器の体積は、出力に直接的には関与しない無効容積となっており、熱交換器の体積が増えると、スターリングエンジン10の出力が減少する。一方で、熱交換器の体積をコンパクトにすると、その分、熱交換が困難となり受熱量が減少し、スターリングエンジン10の出力が減少する。これらのことから、無効容積の減少と受熱量の増加とを両立させるためには、熱交換器の効率を上げる必要がある。そのために、加熱器47は効率的に受熱する必要がある。
排気管100内の排ガスから効率的に受熱し、かつ効率的に熱交換するためには、加熱器47の全てを過不足なく排気管100内に収容するとともに、排気ガスから受熱しないように冷却器45を排気管100の外に出す構成が必要である。このことから、排気管100においてスターリングエンジン10が取り付けられるフランジ100fを基準にすると、少なくとも冷却器45の高さ分だけ低温側シリンダ32の取付位置は、高温側シリンダ22よりも低い位置となる。即ち、低温側シリンダ32の上部に形成される圧縮空間の位置は、高温側シリンダ22の上部に形成される膨張空間の位置よりも低い位置となり、圧縮ピストン31の上死点は、膨張ピストン21の上死点の位置よりも低い位置となる。
本実施形態では、圧縮ピストン31と膨張ピストン21の上死点の位置を変えるために、各ピストンピン60a、60bとそれぞれのピストン31、21との間を、長さの異なる延長部(ピストン支柱部)64b、64aで連結している。膨張ピストン21の上死点の位置の方が圧縮ピストン31の上死点の位置よりも高い分だけ、膨張ピストン21に連結される延長部64aは、圧縮ピストン31に連結される延長部64bよりも長さが長い。
本実施形態では、膨張ピストン21自体と圧縮ピストン31自体の高さ(各ピストン21,31の上面と各ピストン21,31における延長部64a、64bとの連結点21c、31cとの間の距離)は同じになるように構成されていることから、長さの異なる延長部64a、64bを用いて各ピストン21,31の上死点の位置を変えている。この構成に代えて、膨張ピストン側と圧縮ピストン側とで延長部自体の長さは同じにし、膨張ピストン自体と圧縮ピストン自体の高さを変えるようにして構成することで、膨張ピストンと圧縮ピストンの上死点の位置を変える構成を採ることもできる。このように、膨張ピストン自体の上下方向の長さを圧縮ピストン自体に比べて大きくする技術的意義について次に説明する。
スターリングエンジン10の効率の低下を抑制するため、高温側パワーピストン20における膨張空間以外の空間及び低温側のパワーピストン30における圧縮空間以外の空間、即ち、高温側パワーピストン20及び低温側のパワーピストン30のそれぞれにおけるクランクシャフト61の周辺の空間は、常温に保たれる必要がある。そのため、膨張空間の高温の作動流体がクランクシャフト61の高温側パワーピストン20側の周辺の空間に流入したり、圧縮空間の低温の作動流体がクランクシャフト61の低温側のパワーピストン30側の周辺の空間に流入することがないように、高温側シリンダ22と膨張ピストン21とのシール及び低温側シリンダ32と圧縮ピストン31とのシールが確実に行われる必要がある(後述のように、そのシールには空気軸受48が使用されている)。
一方で、上記のように、膨張空間を高温にすべく、高温側シリンダ22の頂部22b及び側面22cの上部は、排気管100の内部に収容されるため、高温側シリンダ22の上部及び膨張ピストン21の上部が熱膨張する。高温側シリンダ22及び膨張ピストン21のそれぞれの上部の熱膨張する部分では、シールが確実に行えないおそれがある。このことから、上記のように、膨張ピストン21及び高温側シリンダ22の上下方向の長さを長く設定し、これにより、膨張ピストン21の上下方向に温度勾配を持たせて、熱膨張の影響を受けない部分(膨張ピストン21の下部)にてシールが確実に行えるようにすることができる。また、高温側シリンダ22と膨張ピストン21との間は、膨張ピストン21の下部(熱膨張の影響を受けない部分)にてシールされるので、そのシール部の移動距離を十分に確保して膨張空間を十分に圧縮するために、高温側シリンダ22の上下方向の長さが長く設定されることができる。
熱源の種類を問わず、その熱源から効率的に受熱し、かつ効率的に熱交換するためには、加熱器は、熱エネルギーを受熱するための伝熱面積がなるべく大きく、かつ冷却器が受熱しない場所に配置可能であるという意味において、上記実施形態の構成が望ましい。
特に、排熱を利用する場合には熱エネルギーは管を介して排ガスとして供給される場合が殆どであることとも相俟って、例えば管の内部のように受熱可能な領域が限定されている場合に、伝熱面積が極力大きく、かつ冷却器が受熱しない場所に配置される構成としては、上述したスターリングエンジン10の構成が優れている。以下に、スターリングエンジン10の構成の技術的意義について更に述べる。
無効容積部分(冷却器、再生器、加熱器)が小さい方が良いことは前述の通りであるが、無効容積部分に湾曲した形状を有している場合、湾曲部の数が多いと流路抵抗が大きくなり、また湾曲部の曲率が小さいと流路抵抗は大きくなる。即ち、作動流体の圧力損失を考慮すると、湾曲部の数は単一であり曲率は大きい方が良い。この点に関し、加熱器47は概ねU字形であり、湾曲形状となっているが、湾曲部の数は1つである。また、冷却器45は、スターリングエンジン10の小型化(上下寸法の短縮)のために、湾曲部を有した構成とされており、上記のような特徴を有する構成とされている。
また、図8に示すように、上記実施形態の無効容積部分の曲率に関しては、直列並行に配置された2つのシリンダ22、32の上部同士を連結し、かつ排気管100の内部において作動流体の流動抵抗の増大を抑制すべく概ね同一面上に設定された高温側シリンダ22の頂部22b及び再生器46の上面46aと、排気管100の上部内面との間の上下方向の高さと、加熱器47の端部47ta、47tbと中央部47cの最上部との間の高さが概ね同じ高さhになる構成に合わせて、その曲率(カーブ形状)が設定されている。排気管100の内部のような限定された空間内で排気ガスのような流体の熱源との接触面積を大きく確保するためには、上記のようなカーブ形状が望ましい。
以上の観点からすると、無効容積部分のうち加熱器は、その全体が排気管の内部のような熱源からの熱を受ける限定された空間(受熱空間)内に収容されるとともに、その受熱空間内で、熱源からの伝熱面積を最大限に確保可能でかつ流路抵抗が最小となるように、例えばU字形やJ字形のようなカーブ形状に構成されるのがよい。
再生器46は、作動流体の流路抵抗を最小限にしつつ配置するために、低温側シリンダ32の延在方向(軸線方向)に沿って(同一軸線上に)直線状に構成される。このように、加熱器47の第2端部47tbに連結される再生器46は、低温側シリンダ32の延在方向に沿って設けられる。加熱器47の第1端部47taは、高温側シリンダ22の上部に隙間無く接続される。これらのことから、少なくとも加熱器47の第1端部47ta及び第2端部47tb側には、それぞれ高温側シリンダ22、低温側シリンダ32の延在方向に沿う部分を有し、加熱器47の中央部47cは、上述したようなカーブ形状を有する場合が多いことになる。
上述した技術的理由から、加熱器47は、直列並行に配置された2つのシリンダ22,32間で、途中で方向変換(ターン)する形状に構成されている。加熱器47は、直列並行に配置された2つのシリンダ22,32間を連結する曲線部分とを有している。
次に、ピストン・シリンダのシール構造及びピストン・クランク部の機構について説明する。
上記のように、スターリングエンジン10の熱源が車両の内燃機関の排気ガスであることから、得られる熱量に制約があり、その得られる熱量の範囲でスターリングエンジン10を作動させる必要がある。そこで、本実施形態では、スターリングエンジン10の内部フリクションを可能な限り低減させることとしている。本実施形態では、スターリングエンジンの内部フリクションのうち最も摩擦損失が大きいピストンリングによる摩擦損失を無くすため、ピストンリングを使用せずに、その代わりに、シリンダ22、32とピストン21、31との間には、それぞれ空気軸受(エアベアリング)48が設けられる。
空気軸受48は、摺動抵抗が極めて小さいため、スターリングエンジン10の内部フリクションを大幅に低減させることができる。空気軸受48を用いても、シリンダ22、32とピストン21、31との間の気密は確保されるため、高圧の作動流体が膨張・収縮の際に漏れるという問題は生じない。
空気軸受48は、シリンダ22、32とピストン21、31の間の微小なクリアランスで発生する空気の圧力(分布)を利用して,ピストン21、31が空中に浮いた形となる軸受である。本実施形態の空気軸受48では、シリンダ22、32とピストン21、31との間の直径クリアランスは数十μmである。空中に物体を浮上させる空気軸受を実現するには、機構的に空気圧が強くなる部分(圧力勾配)ができるようにする他に、後述するように高圧の空気を吹きつけるものでもよい。
本実施形態では、高圧の空気を吹き付けるタイプの空気軸受ではなく、医療用ガラス製注射器のシリンダとピストンの間で用いられている空気軸受と同じ構成の空気軸受が用いられる。
また、空気軸受48を使用することで、ピストンリングで用いる潤滑油が不要となるので、潤滑油によりスターリングエンジン10の熱交換器(再生器46,加熱器47)が劣化するという問題が発生しない。なお、本実施形態では、ピストンリングにおける摺動抵抗と潤滑油の問題が解消されれば足りるので、流体軸受のうち油を使用する油軸受を除いた、気体軸受であれば空気軸受48に限られることなく適用することができる。
本実施形態のピストン21、31とシリンダ22、32との間には、静圧空気軸受を用いることも可能である。静圧空気軸受とは、加圧流体を噴出させ、発生した静圧によって物体(本実施形態ではピストン21、31)を浮上させるものである。また、静圧空気軸受に代えて、動圧空気軸受を用いることも可能である。
空気軸受48を用いて、ピストン21、31をシリンダ22、32内で往復運動させる際には、直線運動精度を空気軸受48の直径クリアランス未満にしなくてはならない。また、空気軸受48の負荷能力が小さいため、ピストン21、31のサイドフォースを実質的にゼロにしなくてはならない。即ち、空気軸受48は、シリンダ22、32の直径方向(横方向,スラスト方向)の力に耐える能力(耐圧能力)が低いため、シリンダ22、32の軸線に対するピストン21、31の直線運動精度が高い必要がある。特に、本実施形態で採用する、微小クリアランスの空気圧を用いて浮上させて支持するタイプの空気軸受48は、高圧の空気を吹き付けるタイプに比べても、スラスト方向の力に対する耐圧能力が低いため、その分だけ高いピストンの直線運動精度が要求される。
上記の理由から、本実施形態では、ピストン・クランク部にグラスホッパの機構(近似直線リンク)50を採用する。グラスホッパの機構50は、他の直線近似機構(例えばワットの機構)に比べて、同じ直線運動精度を得るために必要な機構のサイズが小さくて済むため、装置全体がコンパクトになるという効果が得られる。特に、本実施形態のスターリングエンジン10は、自動車の排気管の内部にその加熱器47が収容されるというように限られたスペースに設置されるため、装置全体がコンパクトである方が設置の自由度が増す。また、グラスホッパの機構50は、同じ直線運動精度を得るために必要な機構の重量が他の機構よりも軽量で済むため、燃費の点で有利である。さらに、グラスホッパの機構50は、機構の構成が比較的簡単であるため、構成(製造・組み立て)し易い。
図11は、スターリングエンジン10のピストン・クランク機構の概略構成を示している。本実施形態において、ピストン・クランク機構は、高温側パワーピストン20側と低温側パワーピストン30側とで共通の構成を採用しているため、以下では、低温側パワーピストン30側についてのみ説明し、高温側パワーピストン20側についての説明は省略する。
図11及び図8に示すように、圧縮ピストン31の往復運動は、コネクティングロッド109(65a、65b)によって駆動軸40に伝達され、ここで、回転運動に変換される。コネクティングロッド109は、図11に示す近似直線機構50によって支持されており、低温側シリンダ32を直線状に往復運動させる。このように、コネクティングロッド109を近似直線機構50によって支持することにより、圧縮ピストン31のサイドフォースFがほとんどゼロになるので、負荷能力の小さい空気軸受48によって十分に圧縮ピストン31を支持することができる。
次に、スターリングエンジン10の作動空間の作動流体の加圧方法、及びクランクケース41の加圧方法について説明する。
スターリングエンジン10の作動空間の作動流体の平均作動ガス圧Pmeanが高く保持されることで、高出力が得られる点については上述の通りである。また、本実施形態のスターリングエンジン10では、クランクケース41の圧力が、スターリングエンジン10の筒内の平均作動ガス圧Pmeanまで加圧される構成を前提としている。スターリングエンジン10の筒内の平均作動ガス圧Pmeanまで、クランクケース41の圧力を加圧するのは、スターリングエンジン10の構成部品(例えばピストン)の強度として、高い強度を要求しない設計にするためである。
即ち、クランクケース41の圧力がスターリングエンジン10の筒内の平均作動ガス圧Pmeanであれば、スターリングエンジン10の筒内圧とクランクケース41の内圧との差圧は、最大時でも、筒内圧の最大値(又は最小値)と平均作動ガス圧Pmeanとの差圧に抑えることができる。このようにスターリングエンジン10の筒内圧とクランクケース41の圧力との差圧を小さく抑えることで、スターリングエンジン10の構成部品の強度を低く抑えることができる。構成部品の強度を低く抑えることで、構成部品の軽量化を図ることができる。
本実施形態のスターリングエンジン10では、通常の運転が開始される前に、スターリングエンジン10の筒内の平均作動ガス圧Pmeanまで、クランクケース41が加圧される。
次に、図1から図6を参照して、スターリングエンジン10の出力制御方法について説明する。
スターリングエンジン10の出力制御に際しては、まず、スターリングエンジン10の作動空間の作動流体の1サイクルの平均圧力(上記平均作動ガス圧Pmean)と、クランクケース41の圧力が同じになるように、スターリングエンジン10の作動空間及びクランクケース41を加圧する。そこで、以下では、まず、図12から図16を参照して、スターリングエンジン10の作動空間及びクランクケース41の加圧方法について説明する。
ここでは、まず上記平均作動ガス圧Pmeanについて図10を参照して説明する。
図10は、高温側ピストン21の頂面位置と低温側ピストン31の頂面位置の変化を示している。上述したように、低温側ピストン31は、高温側ピストン21に対して、クランク角で90°遅れて動くように位相差がつけられている。図10において、高温側ピストン21の波形と、低温側ピストン31の波形の合成波Wが筒内圧(図4の筒内圧P)を示している。図10において、符号Pmeanは、筒内圧の平均値である上記平均作動ガス圧を示している。
図13は、本実施形態によりスターリングエンジン10のクランクケース41が加圧される前の初期状態を示している。図13のグラフは、上記合成波Wを示しており、縦軸は筒内圧の圧力を示し、横軸はクランク角を示している。図13に示すように、クランクケース41が加圧される前は、クランクケース41の圧力Pc(=上記平均作動ガス圧Pmean)は、大気圧Poと等しくなっている。
ここでは、以下に述べるように、スターリングエンジン10の作動流体の圧力(筒内圧P)の変化を利用して、クランクケース41の圧力Pcを加圧する。通常一般に、筒内圧Pは、図10の符号Wに示すように、平均作動ガス圧Pmeanよりも低い領域(膨張行程の後半から圧縮行程の前半まで)と、平均作動ガス圧Pmeanよりも高い領域(圧縮行程の後半から膨張行程の前半まで)を繰り返す。本実施形態では、この筒内圧Pの変動を利用して、平均作動ガス圧Pmeanとともに、クランクケース41の圧力Pcを加圧する。
上記において、筒内圧Pが平均作動ガス圧Pmeanよりも低い領域とは、作動流体の圧力(作動ガス圧)の1サイクルを考えたときに、作動ガス圧が、その1サイクルの作動ガス圧の平均値Pmeanよりも低い状態を意味しており、また、筒内圧Pが平均作動ガス圧Pmeanよりも高い領域とは、作動ガス圧が、その1サイクルの作動ガス圧の平均値Pmeanよりも高い状態を意味している(以下同様)。
図12は、スターリングエンジン10の作動空間及びクランクケース41の加圧のための概略構成を示す図である。図12において、図8と同じ構成については、同じ符号を付してその詳細な説明を省略する。
図12に示すように、低温側シリンダ32において、ピストン31の下死点近傍に対応する位置には、通路171が、低温側シリンダ32の圧縮空間(筒内)に連通するように設けられている。通路171には、フィルタ172が設けられている。通路171は、スターリングエンジン10の外部から筒内に大気圧Poの流体(作動流体)が流れるための通路である。通路171は、外部から筒内に向かう方向のみに流体を流す(圧力を伝える)構成とされている。
フィルタ172は、不純物が、スターリングエンジン10の外部から通路171を介して、筒内に進入することを抑制する機能を有している。上記のように、通路171は、高温側シリンダ22に対して設けられているのではなく、低温側シリンダ32に接続されている。低温側シリンダ32の圧縮空間の作動流体は、高温側シリンダ22の膨張空間の作動流体と比べて、スターリングエンジン10の外部の常温の外気との温度差が小さいことに基づき、外気が筒内に入り込む際の熱損失を相対的に低減させるために、通路171は、低温側シリンダ32に接続されている。
図13に示すように、筒内圧Pが大気圧Poよりも低く(負圧に)なるとき(膨張行程の後半から圧縮行程の前半まで)に、大気圧Poの流体(外気)が通路171を介して筒内に入り、スターリングエンジン10の圧縮行程(特に圧縮行程の後半以降)によって圧縮される。その圧縮行程にて加圧された圧力(流体)は、シリンダ32、22とピストン31、21との間のクリアランスCLを介して、クランクケース41に伝わる。これにより、クランクケース41が加圧される。
この動作が繰り返されることにより、図14に示すように、平均作動ガス圧Pmean(=クランクケース41の圧力Pc)が大気圧Poよりも高くなるとともに、平均作動ガス圧Pmean=クランクケース41の圧力Pcとなる。このように、平均作動ガス圧Pmeanが高められた状態でスターリングエンジン10が運転されることにより、スターリングエンジン10から高出力が得られる。
なお、上記において、図12の構成に代えて、図15に示す構成が採用されることができる。図15の構成例では、通路171にチェック弁173が追加されている。チェック弁173は、通路171の先端部171a側の圧力の方が基端部171b側の圧力よりも高いときのみ、開く構成とされている。このことから、通路171は、外部から筒内に向かう方向のみに圧力(作動流体)を伝える構成とされている。また、スターリングエンジン10の筒内とクランクケース41とをつなぐ通路181が設けられている。
図15の構成例の動作は、上記図12の構成例と原則として同様である。上記図12の構成例では、シリンダ32、22とピストン31、21との間の微小なクリアランスCLのシール圧が高いと、圧縮行程にて加圧された圧力(流体)がクリアランスCLを介してクランクケース41に伝わり難い(ないしは、伝わるのに時間がかかる)ことがあるが、図15の構成例では、通路181を介してクランクケース41に伝わるため、そのようなことがない。
また、上記図12の構成例に代えて、図16の構成例が採用されることができる。上記図12又は図15の構成例は、大気圧Poを用いてクランクケース41の圧力Pcを加圧するものであった。これに対し、図16の構成例では、例えば加圧ポンプのような加圧源に代表される補機を用いて、クランクケース41の圧力Pcを加圧するものである。
図16では、通路171に対して分岐するように分岐通路175が接続され、分岐通路175には、加圧ポンプ191と、加圧ポンプ191よりも下流側に設けられたタンク192が設けられている。タンク192は、加圧ポンプ191などにより昇圧された流体を貯めておくためのものである。図16の構成例では、筒内圧Pがタンク192の圧力よりも低圧であるときに、通路171を介して、外部圧(タンク192の圧力、更に、筒内圧Pが大気圧Poよりも低ければ大気圧Poについても)が筒内に導入される。その筒内に導入された圧力は、スターリングエンジン10の圧縮行程によって更に加圧される。その圧縮行程にて加圧された圧力(流体)は、シリンダ32、22とピストン31、21との間のクリアランスCLを介して、クランクケース41に伝わる。これにより、平均作動ガス圧Pmean=クランクケース41の圧力Pcとなる。
図16の構成例によれば、クランクケース41の加圧に際して、加圧ポンプ191により発生させた圧力のみがクランクケース41に作用するのではなく、加圧ポンプ191により発生させた圧力が、スターリングエンジン10の圧縮行程にて更に加圧されてなる圧力がクランクケース41に作用する。これにより、加圧ポンプ191の動力の省力化又は設備規模の小型化が実現される。
図1は、スターリングエンジン10の出力制御のための概略構成図である(図1では、図8及び図12の高温側シリンダ22と低温側シリンダ32の位置関係が左右反対に描かれている)。なお、図1では、スターリングエンジン10の出力制御のための構成のみが描かれ、図12に示した、スターリングエンジン10の作動空間及びクランクケース41の加圧のための構成は図示が省略されている。
図1に示すように、低温側シリンダ32において、ピストン31の下死点側に対応する位置には、通路71の一端部が、低温側シリンダ32の圧縮空間(筒内、作動空間)に連通するように設けられている。通路71の他端部は、クランクケース41の内部に連通するように設けられている。通路71には、弁72が設けられている。通路71は、クランクケース41の内部から筒内にクランクケース41の内部の流体(作動流体)が流れるための通路である。通路71は、クランクケース41の内部から筒内に向かう方向のみに流体を流す(圧力を伝える)構成とされている(例えば、その構成として、通路71にチェック弁が設けられることができる)。
上記のように、通路71は、高温側シリンダ22に対して設けられているのではなく、低温側シリンダ32に接続されている。低温側シリンダ32の圧縮空間の作動流体は、高温側シリンダ22の膨張空間の作動流体と比べて、クランクケース41の内部の常温の流体との温度差が小さいことに基づき、クランクケース41の内部の流体が筒内に入り込む際の熱損失を相対的に低減させるために、通路71は、低温側シリンダ32に接続されている。
図2は、通路71の上記一端部と、低温側シリンダ32との接続構造を示している。図2の左側の図に示すように、低温側シリンダ32において通路71が取り付けられた位置よりもピストン31の頂面が上方に位置する場合には、ピストン31の側周部によって通路71の上記一端部が塞がれて、通路71と作動空間(圧縮空間)とは連通しない。これにより、クランクケース41の内部の圧力(流体)が通路71を介して作動空間に伝わる(流れる)ことは無い。一方、図2の右側の図に示すように、低温側シリンダ32において通路71が取り付けられた位置よりもピストン31の頂面が下方に位置する場合には、通路71と作動空間とが連通し、これにより、クランクケース41の内部の圧力が通路71を介して作動空間に伝わる。通路71の上記一端部の低温側シリンダ32に対する取り付け位置は、筒内圧Pがクランクケース41の圧力Pcよりも低い状態となるピストン31の位置にて通路71が連通し、筒内圧Pがクランクケース41の圧力Pcよりも高い状態となるピストン31の位置にて通路71がピストン31にて塞がれるような位置とすることが望ましい。
図1に示すように、高温側シリンダ22において、ピストン21の上死点側に対応する位置には、通路75の一端部が、高温側シリンダ22の膨張空間(筒内、作動空間)に連通するように設けられている。通路75の他端部は、クランクケース41の内部に連通するように設けられている。通路75には、弁76及びチェック弁77が設けられている。通路75は、筒内からクランクケース41の内部に筒内の流体(作動流体)が流れるための通路である。通路75は、チェック弁77の動作により、筒内からクランクケース41の内部に向かう方向のみに流体を流す(圧力を伝える)構成とされている。通路75の上記一端部と、高温側シリンダ22との接続構造については、図2と同様の構成を採用可能である。
次に、スターリングエンジン10の出力制御の動作について説明する。
以下に述べる出力制御の動作が行われる前には、上記図12から図16を参照して説明したように、スターリングエンジン10の作動空間及びクランクケース41の加圧が行われて、クランクケース41の圧力Pcが平均作動ガス圧Pmeanと同じ圧力である状態とされている。
図3は、スターリングエンジン10の出力制御に関連する、弁72及び弁76の開閉動作を示している。以下、通常時の動作、出力ダウン時の動作、及び出力アップ時の動作について、(1)〜(3)の項目に分けて説明する。なお、作動空間(筒内)の作動流体の容積と、クランクケース41の容積を比較すると、作動流体の容積≪クランクケース41の容積の関係になる。
(1)通常時の動作
図3に示すように、通常時(出力アップ又は出力ダウンの制御をしない時)には、弁72及び弁76の両方が閉じた状態とされる。この場合には、作動空間とクランクケース41との間で圧力(流体)の伝達は生じないため、図4に示すように、クランクケース41の圧力Pc=平均作動ガス圧Pmeanを中心として、筒内圧Pが変動する。即ち、図4は、スターリングサイクルにおける通常時の筒内圧Pの変化を示している。
(2)出力ダウン制御時の動作
図3に示すように、出力ダウン制御時には、弁72は閉じた状態とし、弁76は開いた状態とされる。これにより、図4のサイクルにおいて、筒内圧Pが平均作動ガス圧Pmean(=クランクケース41の圧力Pc)よりも大きいときには、通路75を介して、作動空間の圧力がクランクケース41に伝達される。その結果、作動空間の圧力が下がり、図5に示すように、上記通常時(上記通常時は、図4に示すように、平均作動ガス圧Pmean=クランクケース41の圧力Pc)よりも平均作動ガス圧Pmeanが下がるため、スターリングエンジン10の出力が低下する。なお、図5において、クランクケース41の圧力Pcは、図4のクランクケース41の圧力Pcの値と同じである。
(3)出力アップ制御時の動作
図3に示すように、出力アップ制御時には、弁72は開いた状態とし、弁76は閉じた状態とされる。これにより、図4のサイクルにおいて、筒内圧Pが平均作動ガス圧Pmean(=クランクケース41の圧力Pc)未満であるとき(図2の右側に示すように、ピストン31が下がっているとき)には、通路71を介して、クランクケース41の圧力が作動空間に伝達される。その結果、作動空間の圧力が上がり、図6に示すように、上記通常時(上記通常時は、図4に示すように、平均作動ガス圧Pmean=クランクケース41の圧力Pc)よりも平均作動ガス圧Pmeanが上がるため、スターリングエンジン10の出力が上昇する。出力アップ制御時には、図6に示すように、筒内圧Pの下限値がクランクケース41の圧力Pcと同じ値となる。なお、図6において、クランクケース41の圧力Pcは、図4及び図5のクランクケース41の圧力Pcの値と同じである。
上記において、スターリングエンジン10の出力制御は、例えば、主エンジン200の出力との関係に基づいて、行われることができる。
(第2実施形態)
次に、図7を参照して、第2実施形態について説明する。
第2実施形態において、上記第1実施形態と共通する部分についての説明は省略し、第2実施形態の特徴部分のみを説明する。
図7は、第2実施形態に係るスターリングエンジン10の出力制御に関する概略構成図である。
図7に示すように、低温側シリンダ32には、通路80の一端部が、低温側シリンダ32の圧縮空間(筒内、作動空間)に連通するように設けられている。通路80の他端部は、クランクケース41の内部に連通するように設けられている。通路80の中間部は、通路81と通路85の2つに分岐している。
通路81には、弁82及びチェック弁83が設けられている。通路81は、クランクケース41の内部から筒内にクランクケース41の内部の流体(作動流体)が流れるための通路である。通路81は、チェック弁83の動作により、クランクケース41の内部から筒内に向かう方向のみに流体を流す(圧力を伝える)構成とされている。
上記のように、通路81(通路80)は、高温側シリンダ22に対して設けられているのではなく、低温側シリンダ32に接続されている。低温側シリンダ32の圧縮空間の作動流体は、高温側シリンダ22の膨張空間の作動流体と比べて、クランクケース41の内部の常温の流体との温度差が小さいことに基づき、クランクケース41の内部の流体が筒内に入り込む際の熱損失を相対的に低減させるために、通路81(通路80)は、低温側シリンダ32に接続されている。
通路85には、弁86及びチェック弁87が設けられている。通路85は、筒内からクランクケース41の内部に筒内の流体(作動流体)が流れるための通路である。通路85は、チェック弁87の動作により、筒内からクランクケース41の内部に向かう方向のみに流体を流す(圧力を伝える)構成とされている。
次に、第2実施形態におけるスターリングエンジン10の出力制御に関連する動作について説明する。
(1)通常時の動作
通常時(出力アップ又は出力ダウンの制御をしない時)には、弁82及び弁86の両方が閉じた状態とされる。この場合には、作動空間とクランクケース41との間で圧力(流体)の伝達は生じないため、図4に示すように、クランクケース41の圧力Pc=平均作動ガス圧Pmeanを中心として、筒内圧Pが変動する。
(2)出力ダウン制御時の動作
出力ダウン制御時には、弁82は閉じた状態とし、弁86は開いた状態とされる。これにより、図4のサイクルにおいて、筒内圧Pが平均作動ガス圧Pmean(=クランクケース41の圧力Pc)よりも大きいときには、通路85を介して、作動空間の圧力がクランクケース41に伝達される。その結果、作動空間の圧力が下がり、図5に示すように、上記通常時(上記通常時は、図4に示すように、平均作動ガス圧Pmean=クランクケース41の圧力Pc)よりも平均作動ガス圧Pmeanが下がるため、スターリングエンジン10の出力が低下する。
(3)出力アップ制御時の動作
出力アップ制御時には、弁82は開いた状態とし、弁86は閉じた状態とされる。これにより、図4のサイクルにおいて、筒内圧Pが平均作動ガス圧Pmean(=クランクケース41の圧力Pc)未満であるときには、通路81を介して、クランクケース41の圧力が作動空間に伝達される。その結果、作動空間の圧力が上がり、図6に示すように、上記通常時(上記通常時は、図4に示すように、平均作動ガス圧Pmean=クランクケース41の圧力Pc)よりも平均作動ガス圧Pmeanが上がるため、スターリングエンジン10の出力が上昇する。出力アップ制御時には、図6に示すように、筒内圧Pの下限値がクランクケース41の圧力Pcと同じ値となる。
なお、上記第1及び第2実施形態では、クランクケース41の圧力Pcは、平均作動ガス圧Pmeanと同じ圧力まで加圧された後に、スターリングエンジン10の出力制御が行われるとして説明した。ここで、スターリングエンジン10の出力制御に際して、クランクケース41の圧力Pcの圧力は、必ずしも平均作動ガス圧Pmeanと同じ値に設定されている必要はない。クランクケース41の圧力Pcの圧力は、筒内圧Pの1サイクルにおいて筒内圧Pの上限値と下限値との間の値であることができる。
即ち、上記1実施形態を例にとり説明すると、クランクケース41の圧力Pcが所定の圧力に加圧されている状態で、弁72を閉じて弁76を開けた状態にすれば、筒内圧Pの1サイクルにおいて、筒内圧Pが上記所定圧のクランクケース41の圧力Pcよりも高いときに、通路75を介して作動空間の圧力がクランクケース41に伝達される。その結果、作動空間の圧力が下がり、弁76を開く前の状態よりも平均作動ガス圧Pmeanが下がるため、スターリングエンジン10の出力が低下する。反対に、弁76を閉じて弁72を開けた状態にすれば、筒内圧Pの1サイクルにおいて、筒内圧Pがクランクケース41の圧力Pcよりも低いときに、通路71を介してクランクケース41の圧力が作動空間に伝達される。その結果、作動空間の圧力が上がり、弁72を開く前の状態よりも平均作動ガス圧Pmeanが上がるため、スターリングエンジン10の出力が上昇する。
以上に述べたように、上記各実施形態によれば、以下の項目が開示される。
(1)スターリングエンジン10において、クランクケース41の内圧Pcとスターリングエンジン10の筒内圧Pとの差圧を利用して、スターリングエンジン10の出力を制御すること。
(2)スターリングエンジン10の平均作動ガス圧Pmeanを制御してスターリングエンジン10の出力を制御すること。平均作動ガス圧Pmeanの制御は、スターリングエンジン10の運転の実行中に(スターリングエンジン10の運転を止めることなく)行えること。
(3)スターリングエンジン10の出力アップ制御及び出力ダウン制御のいずれをも行えること。
(4)所定の圧力でクランクケース41の圧力Pcが加圧されたスターリングエンジン10において、筒内圧Pがクランクケース41の圧力Pcよりも低いときに、クランクケース41の圧力Pcを筒内へ導き、筒内の平均作動ガス圧Pmeanを上昇させて、スターリングエンジン10の出力を増加させること。
(5)所定の圧力でクランクケース41の圧力Pcが加圧されたスターリングエンジン10において、筒内圧Pがクランクケース41の圧力Pcよりも高いときに、筒内圧Pをクランクケース41へ導き、筒内の平均作動ガス圧Pmeanを低下させて、スターリングエンジン10の出力を低下させること。
(6)スターリングエンジン10の筒内(作動空間)とクランクケース41の内部との間のガス移動(圧力移動)は、[1]クランクケース41→筒内、[2]筒内→クランクケース41の一方通行の流路で行い、各流路に弁を設け、弁の開閉によって出力の制御を行うこと。
(7)上記(6)において、上記流路の開閉は、ピストン(ピストン位置)によって行うこと。
(8)上記(4)又は(6)において、クランクケース41→筒内へのガスの移動が行われる流路は、熱損失低減のため、低温側シリンダ側に接続すること(クランクケース41内の温度が低いため)。
以上に述べた実施形態では、スターリングエンジン10は、車両の内燃機関の排ガスを熱源とすべく排気管100に取り付けた構成について説明した。但し、本発明のスターリングエンジンは、車両の内燃機関の排気管に取り付けられる形式のものに限定されるものではない。
本発明のスターリングエンジンの第1実施形態の概略構成の一部を示す正(断)面図である。 図1の一部を拡大して示す図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態において、出力制御と弁の開閉状態を説明するための図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態において、通常時におけるクランクケースの圧力と筒内圧の関係を示すグラフである。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態において、出力ダウン制御時におけるクランクケースの圧力と筒内圧の関係を示すグラフである。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態において、出力アップ制御時におけるクランクケースの圧力と筒内圧の関係を示すグラフである。 本発明のスターリングエンジンの第2実施形態の概略構成の一部を示す正(断)面図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態の基本構成を示す正(断)面図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態と内燃機関の取り付け状態を示す上面図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態の筒内圧を説明するグラフである。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態において、適用される直線近似機構を説明するための説明図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態の概略構成の他の一部を示す正(断)面図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態において、クランクケースが加圧される前の筒内圧を示すグラフである。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態において、クランクケースが加圧された後の筒内圧を示すグラフである。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態の他の一部の他の構成例の概略構成を示す正(断)面図である。 本発明のスターリングエンジンの第1実施形態の他の一部の更に他の構成例の概略構成を示す正(断)面図である。
符号の説明
10 スターリングエンジン
20 高温側パワーピストン
21 膨張ピストン
22 高温側シリンダ
22a 高温側シリンダの上面
30 低温側パワーピストン
31 圧縮ピストン
32 低温側シリンダ
40 駆動軸
41 クランクケース
45 冷却器
46 再生器
47 加熱器
47ta 第1端部
47tb 第2端部
50 近似直線機構
61 クランクシャフト
64a、64b 延長部
65a、65b コネクティングロッド
71 通路
72 弁
75 通路
76 弁
77 チェック弁
80 通路
81 通路
82 弁
83 チェック弁
85 通路
86 弁
87 チェック弁
90 カウンタウェイト(バランスウェイト)
100 排気管
109 コネクティングロッド
171 通路
172 フィルタ
173 チェック弁
175 分岐通路
191 加圧ポンプ
192 タンク
200 主エンジン
CL クリアランス
Pc クランクケースの内圧
Pmean 平均作動ガス圧
Po 大気圧

Claims (1)

  1. 低温側シリンダの作動空間である圧縮空間と、高温側シリンダの作動空間である膨張空間とを、作動ガスが往復する2ピストン形のスターリングエンジンであって、
    低温側シリンダのパワーピストンが下死点側に位置するときに圧縮空間とクランクケース(41)内とを連通させて、クランクケース(41)内から圧縮空間に向かう方向にのみ作動ガスを流す圧縮空間側の通路(71)と、
    圧縮空間側の通路(71)に設けられた圧縮空間側の開閉弁(72)と、
    膨張空間とクランクケース(41)内とを連通させる膨張空間側の通路(75)と、
    膨張空間側の通路(75)に設けられた膨張空間側の開閉弁(76)と、
    膨張空間側の通路(75)に設けられ、膨張空間からクランクケース(41)内に向かう作動ガスの流れのみを許すチェック弁(77)と、
    を有し、
    スターリングエンジンの出力を低下させる場合、圧縮空間側の開閉弁(72)は閉じた状態とし、且つ膨張空間側の開閉弁(76)は開いた状態とされ、
    スターリングエンジンの出力を増大させる場合、膨張空間側の開閉弁(76)は閉じた状態とし、且つ圧縮空間側の開閉弁(72)は開いた状態とされる
    ことを特徴とするスターリングエンジン。
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