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JP4273704B2 - 芳香族ジメチルアミンの製造法 - Google Patents

芳香族ジメチルアミンの製造法 Download PDF

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JP4273704B2
JP4273704B2 JP2002135528A JP2002135528A JP4273704B2 JP 4273704 B2 JP4273704 B2 JP 4273704B2 JP 2002135528 A JP2002135528 A JP 2002135528A JP 2002135528 A JP2002135528 A JP 2002135528A JP 4273704 B2 JP4273704 B2 JP 4273704B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ジニトリルの水素化反応により芳香族ジメチルアミンを連続的に製造する方法に関する。芳香族ジメチルアミンは、樹脂硬化剤、ナイロン、ポリウレタン、ゴム薬品、紙加工剤、繊維処理剤など幅広い工業分野で使用されている。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ジニトリルをニッケル、コバルト、白金、パラジウム、ロジウム等を含有する触媒を用い高圧化で水素化を行い、対応する芳香族ジメチルアミンを製造する方法はよく知られている。
例えば特公昭38-8719号公報にはフタロニトリルをアルコール類中で微量の苛性アルカリ剤と共にラネーニッケルやラネーコバルトを用い、オートクレーブによる回分水素化反応を行い対応するジアミンを得ることが記載されている。特開昭54-41804号公報にはフタロニトリルをアルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物またはアルコラートとラネーニッケルまたはラネーコバルト触媒の存在下、低級アルコールと環式炭化水素との混合溶媒中でオートクレーブによる回分水素化反応により対応するジアミンを得ることが記載されている。また特開平6-121929号公報にはイソフタロニトリルをRh-Co系触媒によりメタノール、アンモニア溶媒中でオートクレーブによる回分水素化反応を行い対応するジアミンを得ることが記載されている。
【0003】
また特公昭53-20969号公報にはNi-Cu-Mo系触媒によりフタロニトリルを液相下水素で接触還元することが記載されており、固定床方式による連続水素化が例示されている。特開昭56-83451号公報ではRh-Co系触媒の懸濁床方式による触媒を利用したジアミンの製造方法が提案されており触媒を連続的に再使用できることが述べられているが、再使用指数(単位触媒当りのニトリル還元量)が特定量になると反応速度が急激に減少することが記載されている。石油学会編プロセスハンドブック(1978年)にはキシリレンジアミンの工業的プロセスが記載されており、原料ニトリルは溶媒および触媒と一緒に水素化反応器に導入されスラリー下で水素化反応が行われている。
【0004】
こられの触媒を用いて連続的に芳香族ジニトリルの水素化を行うに際しては、使用に伴って次第に触媒活性が低下して未反応の芳香族ジニトリルの残存や中間体である芳香族シアノメチルアミン生成が増加して芳香族ジメチルアミン収率は低下する。触媒の活性低下に対して反応温度を上げることにより芳香族ジニトリルの残存や芳香族シアノメチルアミンの生成を抑制することができる。しかし反応温度が高いと脱アミノ反応や縮合反応等の好ましくない副反応が増加し収率が低下し、また固定床形式の反応装置においては触媒への高沸物付着に起因する触媒層の差圧が発生し、運転の継続が不可能となる。よって長期の連続運転は達成されない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上の如く芳香族ジニトリルの水素化反応により芳香族ジメチルアミンを製造する方法では種々の触媒が提案されているが、触媒活性低下のため長期の連続運転が困難である。また高収率を維持するために活性低下に伴って反応温度を上げることが行われるが、反応温度を高くすると脱アミノ反応や縮合反応等が増加して収率が低下し、また固定床形式の反応装置においては触媒への高沸物付着に起因する触媒層の差圧が発生し、運転の継続が不可能となる。
本発明の目的は芳香族ジニトリルの水素化反応により芳香族ジメチルアミンを連続的に製造するに際し、触媒を有効に活用し芳香族ジメチルアミンを工業的に有利に製造する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは以上の如き課題を有する芳香族ジメチルアミンの製造方法について鋭意検討した結果、原料の芳香族ジニトリルを特定濃度で供給しつつ、反応器出口における芳香族ジニトリルの転化率、芳香族ジメチルアミンに対する芳香族シアノメチルアミンの生成比率が特定の範囲となるように反応温度を制御することにより、芳香族ジメチルアミンを高収率に維持しつつ触媒を長期間使用できることを見出し、本発明に到達した。
【0007】
即ち本発明は、触媒の存在下、固定床灌液型反応器を用いて芳香族ジニトリルの水素化により芳香族ジメチルアミンを連続的に製造するに際し、溶媒を用いて反応器に供給する芳香族ジニトリルの濃度を1〜10wt%として供給し、高沸物付着に起因する触媒層の入口と出口の差圧が0.5 MPa 未満である様に、反応器出口における芳香族ジニトリルの転化率が95mol%以上、且つ芳香族ジメチルアミンに対する中間体である芳香族シアノメチルアミンの生成比率が0.005〜0.5mol%の範囲となるように反応温度を上げる操作により30〜180℃で制御することを特徴とする芳香族ジメチルアミンの製造法である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における芳香族ジニトリルとは芳香環にニトリル基が2個置換しているものを指す。例えばイソフタロニトリル、テレフタロニトリル、オルソフタロニトリル、ジシアノナフタレン等が挙げられる。またニトリル基の他にさらにフッ素、塩素等のハロゲン原子、メチル基、エチル基等のアルキル基、またはメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基が置換している化合物、例えば5−メチルイソフタロニトリル、4−メチルイソフタロニトリルなども使用することができる。芳香族ジニトリルの水素添加反応においては芳香環上の置換基によって反応性が変化する場合もあるが、本発明の方法においてはこれらの置換基を有するものにおいても芳香族ジメチルアミンの連続的製造が好適に可能である。
【0009】
本発明では原料の芳香族ジニトリルを、溶媒で希釈して反応器に供給する。その際、芳香族ジニトリルの濃度を1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%とする。芳香族ジニトリルの濃度を10重量%以下とすることにより、収率を高め、触媒寿命を長く保つことができる。溶媒の使用量を多くして芳香族ジニトリルの濃度を1重量%より低くした場合には、反応には支障がないが、工業的見地から経済的に不利である。溶媒としては水素化反応条件下で安定な種々の溶媒を使用することができる。具体的にはトルエン、キシレン、トリメチルベンゼン等の炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、およびメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。またこれらの溶媒から2種類以上を選択して併用してもよい。
【0010】
また溶媒の一部としてアンモニアを用いることで本発明は一層効果的となる。アンモニアの存在は芳香族ジメチルアミンの収率を高めるのに有効である。反応系に少量無機アルカリを添加することにより収率を高めることもできるが、無機アルカリを含有する廃液が排出される。この廃液は活性汚泥処理や焼却処理を行うことになるがいずれもアルカリを含むためその処理に難点がある。
【0011】
また本発明において溶媒の一部にアンモニアを用いる場合においては、反応出口成分から水素ガスを分離した後の芳香族ジメチルアミンを含有する反応液の一部も反応溶媒として使用することができる。芳香族ジニトリルの接触的水素化において芳香族ジメチルアミンが存在するとしばしば副反応の増大を招き収率が低下するが、溶媒の一部にアンモニアを用いる場合、芳香族ジメチルアミンの影響による副反応が抑制される。反応液中から芳香族ジメチルアミンとアンモニア等の溶媒とを蒸留等の手段によって分離することなく、反応液の一部をそのまま反応溶媒に使用することで溶媒回収工程の負荷が減り工業的生産において設備費・エネルギーの面で有利となる。
【0012】
水素化反応に用いられる水素は反応に関与しない不純物、例えばメタン、窒素等を含んでいても良いが、不純物濃度が高いと必要な水素分圧を確保するために反応全圧を高める必要があり工業的に不利となるため、水素濃度は50mol%以上が好ましい。
【0013】
本発明においては、固定床灌液型反応器(トリクルベッドリアクター)を用いることが好ましい。反応形式として懸濁床を採用する場合、反応溶液から触媒を分離する工程が別途必要となり、触媒スラリーを取り扱うには特殊な設備が必要となることから、設備および操作上不利となる。
【0014】
触媒としてはラネー触媒や貴金属触媒等、公知の水素化触媒を使用できるが、ニッケルやコバルトを含有する触媒が好適に用いられる。
【0015】
水素化反応の反応温度は、原料の芳香族ジニトリルにより異なるが、20〜200℃、好ましくは30〜180℃であり、反応圧力は1〜30MPa、好ましくは3〜20MPaである。
【0016】
本発明においては長期運転に伴う触媒活性の低下に対応するために反応温度を上げる操作が行われるが、芳香族ジニトリルの転化率が95mol%以上、好ましくは転化率が実質的に100mol%であり、且つ目的物の芳香族ジメチルアミンに対する中間体である芳香族シアノメチルアミンの生成比率が0.005〜0.5mol%、好ましくは0.005〜0.2mol%の範囲となるように反応温度を制御することが好ましい。このように芳香族ジニトリルの高転化率を保ちつつ、中間体である芳香族シアノメチルアミンの生成比率を特定範囲に制御することにより、目的物である芳香族ジメチルアミンを高収率で得るとともに触媒を長期間有効に使用することが可能となる。芳香族ジニトリルの転化率が95mol%未満では、生産効率が低く、工業的に不利である。芳香族ジメチルアミンに対する芳香族シアノメチルアミンの生成比率が0.005mol%未満では、生成した芳香族ジメチルアミンがさらに高沸化する副反応が増加して収率の低下・触媒寿命短縮を起こすため好ましくない。一方、芳香族ジメチルアミンに対する芳香族シアノメチルアミンの生成比率が0.5mol%を超えると、反応の進行が不完全となり十分な収率が得られない。また芳香族シアノメチルアミン(例えば原料がイソフタロニトリルの場合は3−シアノベンジルアミン)は、一般に対応する芳香族ジメチルアミン(例えば原料がイソフタロニトリルの場合はメタキシリレンジアミン)との沸点差が小さく通常の蒸留による分離が困難である。よって芳香族ジメチルアミンを効率よく生産するにあたっては、水素化反応出口における芳香族シアノメチルアミンの濃度を低く制御することが好ましく、これにより芳香族ジメチルアミンの精製が容易となる。
【0017】
【実施例】
次に実施例により本発明を更に具体的に説明する。但し本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0018】
実施例1
市販の担持ニッケル触媒の打錠成型品(ニッケル含量50wt%)を破砕し、12〜28meshに粒度を揃え、10gを管状反応管(内径10mm、充填高さ130mm)に充填した。触媒を水素還元して活性化させた後、イソフタロニトリル(IPNと称す)、メタキシレン(MXと称す)、アンモニア(NHと称す)の混合液で、組成がIPN:MX:NH=6:56:38(重量比)のものを、32g/hの速度で反応管上方から供給し、反応圧力7MPaで20Nl/hの水素ガスを圧入して、水素化反応を連続的に行った。反応開始時の反応温度は55℃とした。一定時間ごとに、得られた反応器出口液をガスクロマトグラフィーで分析し、イソフタロニトリルの転化率が約100%、中間体である3−シアノベンジルアミン(3−CBAと称す)と目的物メタキシリレンジアミン(MXDAと称する)の生成比率(3−CBA/MXDA)が0.05〜0.2mol%を維持するように制御しつつ反応温度を上昇させた。その後、触媒層の入口と出口の差圧が0.5MPaに上昇した時点で反応を打ち切った。メタキシリレンジアミンの平均収率は92mol%、反応日数は27日、反応打ち切り時の反応温度は80℃であった。
【0019】
実施例2
反応供給液組成をIPN:MX:NH=4:58:38(重量比)と設定し、イソフタロニトリルの供給速度を揃えるため反応液供給速度を47g/hとした以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。メタキシリレンジアミンの平均収率は95mol%、反応日数は44日、反応打ち切り時の反応温度は90℃であった。
【0020】
比較例1
反応供給液組成をIPN:MX:NH=12:50:38(重量比)と設定し、イソフタロニトリルの供給速度を揃えるため反応液供給速度を16g/hとした以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。メタキシリレンジアミンの平均収率は86mol%、反応日数は4日、反応打ち切り時の反応温度は100℃であった。
【0021】
比較例2
反応温度を120℃一定とした以外は実施例1と同様の方法で反応を行った。メタキシリレンジアミンの平均収率は91mol%、反応日数は12日であった。尚、12日間の運転を通じて反応器出口における3−CBA/MXDAは常に0.003以下で推移した。
【0022】
【表1】
Figure 0004273704
【0023】
【発明の効果】
以上の実施例からも明らかなように、本発明により原料の芳香族ジニトリルを特定濃度で供給しつつ、反応器出口における芳香族ジニトリルの転化率、芳香族ジメチルアミンに対するシアノベンジルアミンの生成比率を特定の範囲内とするように反応温度を制御することにより、芳香族ジメチルアミンを高収率に維持しつつ触媒を長期間使用でき、また目的物である芳香族ジメチルアミンの精製が容易となる。従って本発明により芳香族ジニトリルから芳香族ジメチルアミンを工業的に有利に製造することができるようになり、本発明の工業的意義は大きい。

Claims (4)

  1. 触媒の存在下、固定床灌液型反応器を用いて芳香族ジニトリルの水素化により芳香族ジメチルアミンを連続的に製造するに際し、溶媒を用いて反応器に供給する芳香族ジニトリルの濃度を1〜10wt%として供給し、高沸物付着に起因する触媒層の入口と出口の差圧が0.5 MPa 未満である様に、反応器出口における芳香族ジニトリルの転化率が95mol%以上、且つ芳香族ジメチルアミンに対する中間体である芳香族シアノメチルアミンの生成比率が0.005〜0.5mol%の範囲となるように反応温度を上げる操作により30〜180℃で制御することを特徴とする芳香族ジメチルアミンの製造法。
  2. アンモニアを含有する溶媒を用いる請求項1に記載の芳香族ジメチルアミンの製造法。
  3. 溶媒として反応生成液の一部を用いる請求項2に記載の芳香族ジメチルアミンの製造法。
  4. 触媒としてニッケルおよび/またはコバルト含有触媒を用いる請求項1に記載の芳香族ジメチルアミンの製造法。
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