JP4267159B2 - 画像処理方法および装置並びに記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、画像信号に対して所定の周波数成分を強調するなどの処理を行なうための画像処理方法および装置並びに画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、本出願人により、非鮮鋭マスク画像信号(以下、ボケ画像信号という)を用いて周波数強調処理あるいはダイナミックレンジ圧縮処理などを行って放射線画像の診断性能を向上させる数々の画像処理方法および装置が提案されている(特開昭55-163472号、同55-87953号、特開平3-222577号、特開平10-75395号、同10-171983号など)。例えば周波数強調処理は、原画像信号Sorgからボケ画像信号Susを引いたものに強調係数βを乗じたものを、原画像信号Sorgに加算することにより、原画像信号の所定の空間周波数成分を強調するものである。これを式で表すと下記の式(1)のようになる。
Sproc=Sorg+β×(Sorg−Sus) …(1)
(Sproc:周波数強調処理された信号、Sorg:原画像信号、Sus:ボケ画像信号、β:強調係数)
【0003】
また、特開平10-75395号には、原画像信号に加算する加算信号の周波数応答特性を調整することにより、周波数強調処理された信号に対してアーチファクトが発生することを防止する方法が提案されている。この方法とは、まず鮮鋭度の異なる、すなわち周波数応答特性の異なる複数のボケ画像信号を作成し、そのボケ画像信号および原画像信号の中の2つの信号の差分をとることにより、原画像信号の、ある限られた周波数帯域の周波数成分を表す複数の帯域制限画像信号(バンドパス信号)を作成し、さらにその帯域制限画像信号をそれぞれ異なる変換関数によって所望の大きさとなるように変換してから、その複数の抑制された帯域制限画像信号を積算することにより上記加算信号を作成するものである。この処理は例えば下記の式(2)により表すことができる。
(但し、Sproc:高周波成分が強調された画像信号
Sorg :原画像信号
Susk(k=1〜N):ボケ画像信号
fk(k=1〜N):各帯域制限画像信号を変換する変換関数
β(Sorg):原画像信号に基づいて定められる強調係数)
【0004】
これらの周波数強調処理においては、帯域制限画像信号を変換する変換関数のパラメータを変更することによって原画像信号に加算する加算信号の周波数応答特性を調整することができる。このため、各変換関数の定義次第で、アーチファクトの発生防止など所望の周波数応答特性を有する処理済画像信号を得ることができる。
【0005】
さらに、特開平 10-171983号には、周波数強調処理とダイナミックレンジ圧縮処理とを同時に施す場合において、処理が施された信号に対してアーチファクトが発生することを防止する方法が提案されている。この方法とは、上記特開平10-75395号に記載されたように、複数の帯域制限画像信号を作成し、この帯域制限画像信号に基づいて原画像信号の高周波成分に関する信号(高周波成分信号)および低周波成分に関する信号(低周波成分信号)を得、原画像信号にこれらの高周波成分に関する信号および低周波成分に関する信号を加算することにより周波数強調処理を施すとともにダイナミックレンジ圧縮処理を施すようにしたものである。この処理は例えば下記の式(3)により表すことができる。
(但し、Sproc:処理済画像信号
Sorg:原画像信号
Susk(k=1〜N):ボケ画像信号
fuk(k=1〜N):高周波成分信号を得るために使用する変換関数
fdk(k=1〜N):低周波成分信号を得るために使用する変換関数
β(Sorg):原画像信号に基づいて定められる強調係数
D(Sorg−Fdrc):低周波成分信号に基づいて定められるダイナミックレンジ圧縮用の信号(DはSorg−Fdrcを変換する関数))
【0006】
一方、上述した周波数強調処理などに用いられるボケ画像信号は、原画像信号の画素に対して所定間隔毎に所定のフィルタリング処理を施すことによって画素を間引きし、その後間引きした数分の画素を所定の補間方法によって補間することにより作成される。このフィルタリング処理としては、ローパスフィルタにより原画像信号の高周波成分を取り除くような処理、具体的にはフィルタ内の画素値の平均値や、荷重平均値を求めるといった処理が行われている。上記特開平10-75395号などにおいてボケ画像信号を得るために行われるフィルタリング処理では、原画像信号に対してフィルタリング処理を施して得られた画素数の少ない信号に対してさらにこのフィルタリング処理を施して、フィルタリングの各段階で得られた画素数の少ない画像信号をそれぞれ原画像信号と同じ画素数となるように補間することにより、複数の異なるボケ画像信号を作成している。
【0007】
ボケ画像信号は、上記のように原画像信号に基づいて作成されるものであるが、この原画像信号は、読取装置により原画像信号を所定の読取密度で読取って所定の画素密度を有する画像を再現可能なデジタル信号としたものである。一般に、デジタル化された画像信号を例えばプリント出力として再生する場合、画素密度によって決定されるある周波数(ナイキスト周波数)以下の周波数成分は正しく再生されることが知られている。すなわち、読取密度すなわち画素密度は再生時に必要となる画質レベルを考慮して決定されるため、必ずしも一定であるとは限らない。
【0008】
例えば、放射線画像読取再生システムでは、蓄積性蛍光体シートに記録された人体の放射線画像をレーザビーム走査によりデジタル画像信号として読取っているが、読取密度すなわち画素密度は蓄積性蛍光体シートの大きさによって異なったり、ユーザの設定により任意の値に変更することができるものである。
【0009】
ここで、読み取りの際の画素密度(読取密度)すなわちナイキスト周波数が異なり、該信号に基づいて得られる画像の解像度がそれぞれ異なる画像信号に対し、同一のローパスフィルタによるフィルタリング処理、および同一の補間方法による補間処理を施した場合、得られる帯域制限画像信号の周波数特性、具体的には帯域制限画像信号の周波数帯域は画素密度によって異なることとなる。これにより、例えば1つの原画像を2種類の読取密度で読み取って2種類の画素密度を有する原画像信号を得た場合、同じボケ画像信号を用いて帯域制限画像信号を得て周波数強調処理あるいはダイナミックレンジ圧縮処理を行っても、強調される周波数帯域あるいは圧縮される周波数帯域は2種類の原画像信号でそれぞれ異なってしまうという問題が生じる。
【0010】
このため、原画像信号の画素密度に関する情報を得、その情報に基づいて複数のフィルタ係数リストからフィルタ係数を選択し、選択されたフィルタ係数のフィルタによって原画像信号に対してフィルタリング処理を行ってボケ画像信号を得るようにした方法が提案されている(特開平10-63837号)。ここで例えば読取密度が5本/mmと6.7本/mmの原画像信号に対して同一のローパスフィルタによりフィルタリング処理を施すことにより得られる帯域制限画像信号はその周波数帯域が異なるものとなるが、この方法によれば各原画像信号に対してそれぞれ異なるローパスフィルタによりフィルタリング処理を施すことにより、各原画像信号から得られる帯域制限画像信号の周波数帯域を略一致させることができる。したがって、画素密度に拘わらず同じ周波数特性のボケ画像信号を作成することができ、これにより同じ周波数特性の帯域制限画像信号を作成し、所望の処理、例えば上述したような周波数強調処理やダイナミックレンジ圧縮処理などを、常に同じように行なうことができることとなる。
【0011】
一方、原画像信号を圧縮する(データ数を少なくする)形式としては、JPEG、GIF、TIFFなど種々の形式が存在するが、近年画像信号を解像度毎に階層的に分解し、各階層毎のデータ(階層データ)を符号化して圧縮する形式が提案されている。この圧縮形式は、具体的には原画像信号をウェーブレット変換などにより原画像の1/2n倍の解像度を有する複数の解像度毎の階層画像信号に分解し、この分解された各解像度毎の階層画像信号を階層順に符号化して1つのファイルとして圧縮するものである。
【0012】
この圧縮方式は以下のような特徴を有する。
(1)従来のJPEGで用いられているDCT方式のように、画像信号をブロック毎に処理していないため、ブロック歪みのようなアーチファクトが生じない。
(2)画像信号が階層的に符号化されているため、画像信号の転送の際に必要な解像度の情報のみを転送すればよく、効率的な画像転送が可能となる。
(3)画像信号が多重解像度あるいは多重分解能に分解されているため、周波数強調処理など種々の画像処理を比較的簡単に行なうことができる。
(4)多重解像度解析による空間と周波数との同時分解が可能であり、符号化効率に大きく影響を与える低周波数領域に対しては広い範囲で直交変換を行ない、高周波領域に対しては狭い範囲で直交変換が可能となるため、画像中のエッジ周辺部に量子化ノイズが発生しても、その空間的広がりを抑えることができる。このため、ノイズが知覚されにくい。
【0013】
また、イーストマンコダック社が提案するFlashPixファイルのように、1つのファイル内に複数の性質の異なるデータを記憶することができるファイル形式が提案されているが、このようなFlashPix規格のファイルにも、多重解像度に分解された階層画像信号を保管することも可能である。
【0014】
このように、原画像信号を多重解像度に分解することにより、原画像の1/2n 倍の解像度を有する複数の画像を表す階層画像信号から原画像信号を構成することができる。そして、このような多重解像度に分解された信号を用いて圧縮された画像は、その用途によって原画像と同じ解像度レベルで復元して使用されたり、あるいは途中の解像度レベルで復元して使用されたりする。例えば、プリンタのように高画質の画像を再生する必要がある場合には、最高解像度までの画像を表す階層画像信号に基づいて画像を復元することにより原画像と同一解像度を有する高画質の画像を再現可能な画像信号を得ることができる。また、CRTのようにプリンタほど高解像度の画像を再現する必要がない場合には、原画像よりも低解像度の画像を表す階層画像信号に基づいて画像信号を復元し、さらに必要であれば拡大、縮小することにより、原画像よりは解像度が低いもののCRTの解像度に適した画像を再生することができる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、多重解像度に分解された信号を用いて圧縮された画像を、原画像と同じ解像度レベルで復元しないで途中の解像度レベルで復元して使用する場合、復元された画像の解像度は、原画像の解像度に対して1/2n 倍の関係を有するものの、上記特開平10-63837号に記載のような、予め想定されている読取密度に応じた解像度とは異なるため、上記特開平10-63837号に記載の方法を用いることは困難であり、原画像信号について設定されるべき変換関数を用いて所望の変換処理を行なうこととなる。この場合、原画像信号と原画像信号よりも低い解像度の画像を表す階層画像信号とでは周波数応答特性が異なるため、上述した周波数強調処理を多重解像度に分解された画像信号における原画像よりも低解像度の画像を表す画像信号に施す場合に、原画像の解像度に対応する変換関数を低解像度の画像に適用したのでは、原画像信号に対して周波数強調処理を施した場合と異なる周波数応答特性を有する画像となるおそれがある。一方この場合においても、上記特開平10-63837号に記載の方法を適用するべく、各レベルの解像度に応じた変換関数を用意し、解像度に応じて変換関数を選択して周波数強調処理を施すことが考えられる。しかしながら、各解像度に応じて変換関数を用意したのでは、変換関数の数が膨大なものとなり、変換関数の管理が非常に煩わしいものとなる。これは原画像信号を多重解像度に分解した画像信号に対して周波数強調処理を施す場合のみならず、原画像よりも低い解像度を有する画像を再生するに際して周波数強調処理を施す場合にも生じる問題である。
【0016】
また、原画像と同じ解像度レベルまで至らない途中の解像度レベルで復元することに限らず、原画像と同じ解像度レベルで復元した原画像と同サイズの画像を拡大し、この拡大により得た画像に対して原画像について設定されるべき変換関数を用いて強調処理などを施す場合においても同様の問題を生じる。例えばCRT上で画像を見て画像の一部分を詳細に読影する場合には、画像の該当する部分を拡大して表示したりあるいはフィルム出力することもある。この場合、同じ変換関数を用いて処理しているにも拘わらず、拡大画像の空間解像度がアップしているために、拡大後に強調処理などを施した画像の画質と、原画像サイズで通常通り強調処理などを施した画像の画質とが異なり、読影に影響をおよぼすことがある。
【0017】
さらに、上述したような周波数強調処理などを行なう画像処理装置においては、放射線画像読取再生システムにおいて得られた、予め定められた読取密度(解像度の一指標)で読み取られた原画像信号のみならず、入力モダリティの種類などに応じて読取密度が異なる画像を表す原画像信号が入力される、つまり入力画像の解像度が多様化することもある。このような場合に予め定められた解像度(以下基準解像度とする)に対応する変換関数により、基準解像度とは異なる解像度の画像を表す画像信号に対して上述した周波数強調処理などを施すと、得られる画像が、基準解像度の画像を表す画像信号に対して処理を施した場合と異なる周波数応答特性を有するものとなるおそれがある。この場合、解像度に応じて変換関数を用意し、解像度に応じた変換関数を選択して周波数強調処理などを施すことにより、処理を施す画像の解像度に拘わらず同一の周波数応答特性を有する画像を再現可能な処理済画像信号を得ることができる。しかしながら、解像度に応じて変換関数を用意したのでは、変換関数の数が膨大なものとなり、変換関数の管理が非常に煩わしいものとなる。
【0018】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、処理する画像の解像度に拘わらず、周波数強調処理などを常に同じように行なうことができる画像処理方法および装置並びに画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体を提供することを目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明による第1の画像処理方法は、入力された画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成し、該各帯域制限画像信号に対応して設定された複数の変換関数に基づいて変換処理を施して変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて、入力された画像信号に対して所定の処理を施して処理済画像信号を得る画像処理方法において、
基準解像度を有する基準解像度画像について変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を用意し、基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が入力されたとき、基準変換関数に対応する各帯域制限画像信号の周波数帯域が処理用画像についての各帯域制限画像信号の周波数帯域に最も近くなるように基準変換関数を相対移動させ、この移動させた基準変換関数を処理用画像についての変換関数として設定することを特徴とするものである。
【0020】
なお「解像度」という言葉は、一般的には非常に広い意味を有し、例えば鮮鋭度を意味するものとして使用されたり、画像(あるいは画像信号)の画素密度を意味するものとして使用されたりする場合もあるが、本願発明において用いられる解像度は鮮鋭度に関するものを意味するものとする。また、画像(あるいは画像信号)の総画素数を意味するものとして画像サイズという言葉を用いる。ここで「鮮鋭度に関するものを意味する」とは、例えば画素密度を増減(この場合画像サイズも増減する)して鮮鋭度を増減したり、あるいは画素密度を同じに維持しつつ再生する(できる)周波数範囲を拡大・縮小したり信号のレスポンスを変更して鮮鋭度を増減することのいずれをも含む意味である。したがって、例えば、基準解像度画像を画素間引きを用いたフィルタリング処理などによって低解像度画像にしたときには、画素密度が低下されており、低解像度画像は基準解像度画像よりも画像サイズが小さくなる。一方、前記画素間引きを用いたフィルタリング処理によって得た低解像度画像を補間拡大して得た鮮鋭度の低いボケ画像は、画素密度が基準解像度画像と同じで、画像サイズも同じものである。換言すれば、前記画素間引きを用いたフィルタリング処理によって得た低解像度画像は基準解像度画像よりも解像度の低い(小さい)画像であると共に画像サイズが小さい画像である一方、ボケ画像は基準解像度画像よりも解像度の低い(小さい)画像であると共に画像サイズが同じ画像である。
【0021】
上記において「各帯域制限画像信号に対応して設定された複数の変換関数」は、各帯域制限画像信号が6つの周波数帯域からなるものである場合は、各周波数帯域に対応して6つの変換関数となる。
【0022】
なお、本発明においては、基準変換関数としては、線形関数、非線型関数、定数など種々の態様のものを用いることができる(後述する第2の方法においても同様)。
【0023】
また、「所定の処理」としては、例えば、上記式(2)に示すような原画像信号に含まれる特定の周波数成分を強調する周波数強調処理や、上記式(3)に示すような原画像の最高濃度と最低濃度との差すなわちダイナミックレンジを狭めるように高濃度域もしくは低濃度域あるいは高濃度域および低濃度域の双方のコントラストを下げるダイナミックレンジ圧縮処理などが挙げられる(後述する第2の方法においても同様)。
【0024】
本発明による第1の画像処理方法において、「基準変換関数を相対移動」させて処理用画像についての変換関数を設定するに際しては、基準変換関数と帯域制限画像信号の組数、並びに基準解像度画像についての帯域制限画像信号と処理用画像についての帯域制限画像信号の共通する周波数範囲の数に基づいて、前記相対移動を行なうのが望ましく、具体的には、以下のようにするとよい。すなわち、処理用画像についての変換関数と該変換関数に対応する各帯域制限画像信号の組数を、処理用画像の解像度が基準解像度の2−(p+1)倍から2−p倍(pは正の整数)の範囲内にあるときにはp個だけ減少させ、処理用画像の解像度が基準解像度の2q−1 倍から2q 倍(qは正の整数)の範囲内にあるときにはq個だけ増加させるとよい。なお、第2の解像度が第1の解像度の2−1倍から1倍(上記においてq,pが0の場合に相当)の範囲内にあるときには前記組数を増減させない。
【0025】
ここで処理用画像の解像度が基準解像度の2−(p+1)倍から2−p倍の範囲内にあるときにp個だけ減少させるのは、解像度の関係が上述のような状態にあるときには、各帯域制限画像信号のうちの共通する周波数範囲の数がp個分だけ減少するため、処理用画像について強調処理など行なう際には、各帯域制限画像信号のうちの、基準解像度画像についての強調処理には使用されない低周波側の周波数帯域に対応するp個分の基準変換関数を用いる必要がなくなる(むしろ、用いると不具合を生じる虞れがある)からである。
【0026】
一方、処理用画像の解像度が基準解像度の2q−1 倍から2q 倍の範囲内にあるときには、帯域制限画像信号としては、基準解像度画像についての強調処理には使用される低周波側の周波数帯域成分が不足するため、単に基準変換関数を相対移動させるだけでは低周波側の変換関数に用いるべき帯域制限画像信号が存在せず、画質に影響を与える低周波側の特性を基準解像度画像についての強調処理などによる特性と同じにできないため、処理用画像について強調処理など行なう際には帯域制限画像信号の数をq個だけ増やす必要があるからである。そして、この場合、基準変換関数を相対移動させただけでは、処理用画像についての変換関数の数が生成される帯域制限画像信号の数よりも少なくなるので、生成される帯域制限画像信号のうち、基準解像度画像についての強調処理には使用されない高周波側の周波数帯域に対応する変換関数(不足する分)を新たに定義するのが望ましく、結果的に、処理用画像についての変換関数と該変換関数に対応する各帯域制限画像信号の組数を、q個だけ増加させることになる。
【0027】
また、上記第1の画像処理方法においては、処理用画像の解像度が基準解像度よりも低い場合は、複数の変換関数のうち処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、前記変換処理を行なう変換関数として設定することもできる。
【0028】
ここで、「処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数」とは、例えば処理用画像の解像度が基準解像度の1/2k 倍である場合には、各周波数帯域毎の変換関数のうちk個分低周波数帯域側の変換関数のことをいう。例えば基準解像度画像を表す画像信号に対して6つの変換関数f1 〜f6 (f1 が最高周波数帯域に対応)があり、処理用画像の解像度が基準解像度の1/2である場合には、最高周波数帯域に対応する変換関数以外の5つの変換関数f2 〜f6 のことをいう。そして処理用画像を表す画像信号から得られる6つの帯域制限画像信号のうちの、最も低周波側のものを除く5つの帯域制限画像信号を5つの変換関数により変換して変換画像信号が得られることとなる。
【0029】
また、上記第1の画像処理方法において、基準解像度画像の画像サイズとは異なる画像サイズの出力画像を得る際には、出力画像の画像サイズに近く(好ましくは最も近く)なるように基準解像度画像の画像サイズを22k(kは整数)倍した変倍画像を処理用画像として変換処理および所定の処理を施し、その後、処理済画像信号が表す画像サイズが22k倍の画像に対して、出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍処理を施す、すなわち前記所定の処理が施された処理済画像信号に対して変倍処理を施して変倍処理済画像信号を得ることが望ましい。
【0030】
「変倍画像を処理用画像として変換処理および所定の処理を施す」とは、変倍画像を表す変倍画像信号を前記処理用画像を表す画像信号として入力し、この入力された画像信号(変倍画像信号)から各帯域制限画像信号を作成し、設定された変換関数に基づいて変換処理を施し、さらに所定の処理を施すことを意味する。
【0031】
「画像サイズが22k倍」とは、主走査方向および副走査方向に画素密度をそれぞれ2k 倍することによって画像サイズを22k倍とすることを意味する。なお、kは整数、すなわちゼロ、あるいは正負いずれかの整数であり、基準解像度画像の画像サイズを22k倍するとは、変倍画像を、拡大(k>0)あるいは縮小(k<0)することだけでなく、基準解像度画像の画像サイズそのまま(k=0)とすることも含む意味である。
【0032】
また、「出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍処理を施す」場合においても、「変倍」は、画像サイズを、拡大(変倍率>1)あるいは縮小(変倍率<1)することだけでなく、画像サイズをそのまま(変倍率=1)とすることを含む。例えば、出力画像の画像サイズが基準解像度画像の画像サイズの22kであるときには、前記所定の処理を施して得られた処理済画像信号が表す画像の画像サイズそのものが出力画像の画像サイズと同じになるので、「出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍処理を施す」に際しては、変倍率を1倍にすればよく、実際には処理済画像信号をそのまま変倍処理済画像信号とすればよい(つまり変倍処理を行なわなくてもよい)。
【0033】
本発明による第2の画像処理方法は、入力された画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成し、該各帯域制限画像信号に対応して設定された複数の変換関数に基づいて変換処理を施して変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて、入力された画像信号に対して所定の処理を施して処理済画像信号を得る画像処理方法において、
基準解像度を有する基準解像度画像について前記変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を用意し、基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が入力されたとき、処理用画像の解像度と基準解像度の違いに基づいて、処理用画像についての処理済画像信号のレスポンスが、基準解像度画像についての処理済画像信号のレスポンスと略同じになるように基準変換関数を補正(新たな関数を算出)し、この補正により得た関数を処理用画像についての変換関数として設定することを特徴とするものである。
【0034】
「処理用画像の解像度と基準解像度の違いに基づいて、処理用画像についての処理済画像信号のレスポンスが、基準解像度画像についての処理済画像信号のレスポンスと略同じになるように基準変換関数を補正」するに際しては、例えば、基準解像度画像を表す画像信号および処理用画像を表す画像信号から得られる、それぞれの各帯域制限画像信号、所望の周波数応答特性、および各画像それぞれに設定されるべき変換関数のパラメータの関係式を、各帯域制限画像信号と周波数応答特性を既知の値とし、変換関数のパラメータを変数とする連立方程式として解くことによりパラメータを求めるなどの方法を用いることができる。あるいは、処理用画像についての変換関数および処理用画像を表す画像信号から得られる複数の画像信号の周波数帯域から、内挿、外挿などの演算を行なうことにより算出する方法であってもよい。
【0035】
上記第2の画像処理方法においては、基準変換関数の補正(新たな関数の算出)を、入力された処理用画像を表す画像信号を処理して得た処理済画像信号により表される画像の特性が、処理用画像の解像度に応じたナイキスト周波数の少なくとも1/5以下の周波数範囲において、基準解像度画像を表す画像信号を処理して得た処理済画像信号により表される画像の特性とほぼ一致するように行なうことが望ましい。
【0036】
さらに、本発明による第1および第2の画像処理方法においては、処理用画像の解像度に関する解像度情報を取得し、該解像度情報に基づいて、処理用画像についての変換関数を設定することが好ましい。
【0037】
なお、解像度情報を取得するに際しては、ユーザ(オペレータ)がキーボードから数値として入力してもよいし、操作画面に数種類の解像度情報を表示してユーザに選択させるといった形態でもよいし、あるいは処理用画像を表す画像信号に解像度情報を添付しておき、処理用画像を表す画像信号を処理する際に解像度情報を自動的に取得するようにしてもよく、解像度情報を取得することができれば、どのような形態であってもよい。
【0038】
なお、「解像度情報」は、画像(あるいは画像信号)の鮮鋭度に関する情報である限りどのようなものを用いてもよく、例えば蓄積性蛍光体シートに記録された放射線画像を読み取る際の読取密度(例えばdpiや本/mm)のみならず、例えば画像信号を得る際のサンプリング周波数であってもよい。
【0039】
なお、本発明における各帯域制限画像信号は、それぞれが、入力された処理用画像を表す画像信号(原画像信号)の所定の周波数帯域成分を表すものである限りどのような方法を用いて生成してもよく、例えば、原画像信号をウェーブレット変換やラプラシアンピラミッドなどの手法により多重解像度展開して作成することができる。
【0040】
また、この帯域制限画像信号は、入力された画像信号に基づいて互いに周波数応答特性が異なる複数のボケ画像信号を作成し、該複数のボケ画像信号および入力された画像信号に基づいて作成することもできる。なお、上述したように原画像信号を多重解像度展開した場合には、各解像度毎の画像を表す階層画像信号を低解像度画像信号とし、低解像度画像信号を補間拡大することによりボケ画像信号を作成することもできる。
【0041】
ここで「ボケ画像信号」とは、入力された処理用画像を表す画像信号(原画像信号)と画素数は同じであるが原画像信号よりも鮮鋭度(解像度)が低い画像を表す画像信号である。ボケ画像信号は、まず原画像信号の画素に対して所定間隔毎に所定のフィルタリング処理、線形補間処理、あるいは単純に画素数を減少させる処理などを施すことによって画素を間引きし、そのようにして得た画像信号に対して同様のフィルタリング処理を繰り返してさらに画素数を少なくして解像度が原画像(処理用画像)の1/2n 倍となる低解像度画像を表す低解像度画像信号を複数作成し、そのそれぞれに対して所定の補間方法により原画像と画素数が同じになるように補間処理を施すことにより作成する。ここで、フィルタリング処理や補間は入力された処理用画像の解像度(例えば画素密度)に基づいて定められたフィルタ係数を有するフィルタにより行われるものであり、その具体的手法については、例えば上述した特開平10-63837号に記載されている方法など、一般に広く使用されている種々の方法を用いることができる。
【0042】
この場合、「帯域制限画像信号」は、例えば隣接する周波数帯域のボケ画像信号同士で差分を求めて作成してもよいし、原画像信号と各ボケ画像信号の差分を求めて作成してもよい。あるいは原画像信号とボケ画像信号の他の組み合わせで差分を求めて作成することもできる。なお、変換画像信号の作成、および周波数強調処理やダイナミックレンジ圧縮処理は例えば上記(2)式や(3)式で表すことができる。
【0043】
本発明による第1の画像処理装置は、上記第1の画像処理方法を実施する装置、すなわち、入力された画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成する画像信号作成手段と、該各帯域制限画像信号に対応する複数の変換関数を設定し、設定した変換関数に基づいて変換処理を施して変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて、前記入力された画像信号に対して所定の処理を施して処理済画像信号を得る変換処理手段とを備えた画像処理装置であって、
変換処理手段を、基準解像度を有する基準解像度画像について変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を保持すると共に、基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が画像信号作成手段に入力されたとき、基準変換関数に対応する各帯域制限画像信号の周波数帯域が処理用画像についての各帯域制限画像信号の周波数帯域に最も近くなるように基準変換関数を相対移動させ、この相対移動させた基準変換関数を処理用画像についての変換関数として設定するものとしたことを特徴とするものである。
【0044】
上記第1の画像処理装置においては、変換処理手段を、処理用画像についての変換関数と該変換関数に対応する各帯域制限画像信号の組数を、処理用画像の解像度が基準解像度の2−(p+1)倍から2−p倍(pは正の整数)の範囲内にあるときにはp個だけ減少させ、処理用画像の解像度が基準解像度の2q−1 倍から2q 倍(qは正の整数)の範囲内にあるときにはq個だけ増加させるものとすることが望ましい。
【0045】
また上記第1の画像処理装置においては、変換処理手段を、処理用画像の解像度が基準解像度よりも低い場合は、複数の変換関数のうち処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、変換処理を行なう変換関数として設定するものとすることもできる。
【0046】
さらに、本発明による第1の画像処理装置においては、基準解像度画像の画像サイズとは異なる画像サイズの出力画像を得ることができるように、さらに、該出力画像の画像サイズに近い基準解像度画像の22k(kは整数)倍となる第1の倍率と、該第1の倍率で変倍された画像を該画像の画像サイズが前記出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍するための第2の倍率とを算出する倍率算出手段と、第1の倍率により基準解像度画像を変倍処理して処理用画像を得る第1の変倍処理手段と、変倍処理を行なって得た処理用画像を表す画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成し、複数の変換関数のうち処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、変換処理を行なう変換関数として設定して該変換処理を行なって変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて前記処理済画像信号を得るよう画像信号作成手段および変換処理手段を制御する制御手段と、該処理済画像信号を第2の倍率によりさらに変倍処理して出力画像を表す変倍処理済画像信号を得る第2の変倍処理手段とを備えたものとするとよい。
【0047】
なお、倍率算出手段と第1の変倍処理手段で、出力画像の画像サイズに最も近い、基準解像度画像の画像サイズを22k倍した変倍画像を得、この変倍画像を処理用画像とする手段が構成される。また第2の変倍処理手段は、処理済画像信号が表す22k倍の画像に対して出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍処理を施す手段として機能するものである。
【0048】
本発明による第2の画像処理装置は、上記第2の画像処理方法を実施する装置、すなわち、入力された画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成する画像信号作成手段と、該各帯域制限画像信号に対応する複数の変換関数を設定し、設定した変換関数に基づいて変換処理を施して変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて、前記入力された画像信号に対して所定の処理を施して処理済画像信号を得る変換処理手段とを備えた画像処理装置であって、
変換処理手段を、基準解像度を有する基準解像度画像について変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を保持すると共に、基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が画像信号作成手段に入力されたとき、処理用画像の解像度と基準解像度の違いに基づいて、処理用画像についての処理済画像信号のレスポンスが、基準解像度画像についての処理済画像信号のレスポンスと略同じになるように基準変換関数を補正し、この補正により得た関数を処理用画像についての変換関数として設定するものとしたことを特徴とするものである。
【0049】
本発明による第2の画像処理装置においては、変換処理手段を、処理用画像を表す画像信号を処理して得た処理済画像信号により表される画像の特性が、該処理用画像の解像度に応じたナイキスト周波数の少なくとも1/5以下の周波数範囲において、基準解像度画像を表す画像信号を処理して得た処理済画像信号により表される画像の特性とほぼ一致するように、基準変換関数の補正を行なうものとすることが望ましい。
【0050】
本発明による上記第1および第2の画像処理装置においては、処理用画像の解像度に関する情報を取得する解像度情報取得手段をさらに備えたものとすると共に、変換処理手段を、該解像度情報取得手段により取得された情報に基づいて、処理用画像についての変換関数を設定するものとするのが望ましい。
【0051】
また、本発明による上記第1および第2の画像処理装置における基準変換関数は非線形関数であってもよい。
【0052】
さらに、本発明による上記第1および第2の画像処理装置における所定の処理は、周波数強調処理あるいはダイナミックレンジ圧縮処理であってもよい。
【0053】
なお、本発明による画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして、コンピュータ読取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。
【0054】
【発明の効果】
本発明による第1の画像処理方法および装置によれば、基準解像度を有する基準解像度画像について変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を用意し、基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が入力されたとき、基準変換関数に対応する各帯域制限画像信号の周波数帯域が処理用画像についての各帯域制限画像信号の周波数帯域に最も近くなるように基準変換関数を相対移動させ、この移動させた基準変換関数を処理用画像についての変換関数として設定しているので、基準解像度画像を表す入力画像信号(基準解像度画像信号)および処理用画像を表す入力画像信号(処理用画像信号)のそれぞれから得られる各帯域制限画像信号のうちの、同じか若しくは近傍の周波数範囲を示す帯域制限画像信号に対して、ほぼ同様の度合いで強調処理などが施されるように、処理用画像についての変換関数を設定することができる。したがって、処理用画像について所定の処理を施して得た処理済画像信号を再生することにより得られる出力画像においては、基準解像度画像(を表す画像信号)と略同じ周波数範囲である限り、その周波数応答特性を基準解像度画像信号から得られた処理済画像信号を再生することにより得られる出力画像の周波数応答特性と略一致させる、つまり、画像の解像度に影響されることなく、ほぼ同様の周波数応答特性を有する画像を再現可能な処理済画像信号を得ることができる。
【0055】
また、処理用画像についての変換関数と該変換関数に対応する各帯域制限画像信号の組数を、処理用画像の解像度が基準解像度の2−(p+1)倍から2−p倍(pは正の整数)の範囲内にあるときにはp個だけ減少させ、処理用画像の解像度が基準解像度の2q−1 倍から2q 倍(qは正の整数)の範囲内にあるときにはq個だけ増加させたり、さらには処理用画像の解像度が基準解像度よりも低い場合は、複数の変換関数のうち処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、変換処理を行なう変換関数として設定するようにすれば、処理用画像についての変換関数として、基準解像度画像について用いる基準変換関数と同一の変換関数を用いることができ、解像度毎に変換関数を用意する必要が無くなり、これにより本発明を適用したシステムの構成を簡易なものとすることができ、また変換関数の管理の煩わしさをなくすことができる。
【0056】
ここで、基準解像度よりも低い解像度を有する処理用画像に対して周波数強調処理を施す場合に、基準解像度画像についての基準変換関数のうち処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、変換処理を行なう変換関数として設定するということは、基準解像度画像信号から処理済画像信号を得る際に用いられる各周波数帯域毎の所定変換関数を処理用画像信号の周波数帯域に対応させ、対応させた変換関数により処理用画像信号から得られる互いに帯域制限特性が異なる複数の画像信号の変換を行なうようにすることである。処理用画像の解像度が基準解像度の1/2n 倍である場合には、処理用画像信号から得られる各帯域制限画像信号のピーク周波数は基準解像度画像信号から得られる各帯域制限画像信号のピーク周波数と一致する部分を有するため、基準解像度画像に適用する基準変換関数を処理用画像信号から得られる複数の画像信号の周波数帯域に対応させて変換処理を行なうことにより、処理用画像信号から得られる変換画像信号の周波数応答特性を基準解像度画像信号から得られる変換画像信号の周波数応答特性と同一のものとすることができる。このため、処理用画像信号から得られる処理済画像信号を再生することにより得られる画像においては、その周波数応答特性を基準解像度画像信号から得られた処理済画像信号を再生することにより得られる画像の周波数応答特性と略一致させることができ、これにより解像度に影響されない一定の周波数応答特性を有する画像を再現可能な処理済画像信号を得ることができる。
【0057】
さらに、本発明による第1の画像処理方法および装置において、基準解像度画像の画像サイズとは異なる画像サイズの出力画像を得る際に、出力画像の画像サイズに近くなるように基準解像度画像の画像サイズを22k倍した変倍画像を処理用画像として変換処理および所定の処理を施すと、第1の倍率は処理用画像の解像度を基準解像度の2k 倍とするものともなり、上述のように、処理用画像信号から得られる各帯域制限画像信号のピーク周波数は基準解像度画像信号から得られる各帯域制限画像信号のピーク周波数と一致する部分を有することとなる。したがって、基準解像度画像に適用する基準変換関数を処理用画像信号から得られる各帯域制限画像信号の周波数帯域に対応させて変換処理を行なうことにより、処理用画像信号から得られる変換画像信号の周波数応答特性を基準解像度画像信号から得られる変換画像信号の周波数応答特性と略同一のものとすることができる。このため、処理用画像信号から得られる処理済画像信号が表す画像サイズが22k倍の画像に対して、所望とする出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍処理を施すことにより得られる変倍処理済画像信号を再生して得た画像においては、その周波数応答特性を基準解像度画像信号から得られた処理済画像信号を再生することにより得られる画像の周波数応答特性と略一致させることができ、これにより解像度に影響されない一定の周波数応答特性を有する画像を再現可能な変倍処理済画像信号を得ることができる。
【0058】
また、出力画像の画像サイズを基準解像度画像の画像サイズよりも小さくする場合において、前記第1の倍率が22k(kは負の整数)倍となるときには、前記処理用画像が基準解像度画像の画素数よりも少ない縮小画像となり、この縮小画像について強調処理などの所定の処理を施すことができるので、該所定の処理のための演算時間を短縮することができる。
【0059】
また、本発明の第2の画像処理方法および装置によれば、基準解像度を有する基準解像度画像について前記変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を用意し、基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が入力されたとき、処理用画像の解像度と基準解像度の違いに基づいて、処理用画像についての処理済画像信号のレスポンスが、基準解像度画像についての処理済画像信号のレスポンスと略同じになるように基準変換関数を補正し、この補正により得た関数を処理用画像についての変換関数として設定しているので、処理用画像信号から得られる処理済画像信号においてはその周波数応答特性を基準変換関数を用いて基準解像度画像信号を処理した場合に得られる処理済画像信号の周波数応答特性と略同一のものとすることができ、これにより得られる処理済画像信号を再生することにより得られる画像においては、その周波数応答特性を解像度に拘わらず略一定のものとすることができる。したがって、解像度に影響されない一定の周波数応答特性を有する画像を再現可能な処理済画像信号を得ることができる。
【0060】
また、基準変換関数を補正しているので、基準変換関数に基づいて処理用画像信号に対して変換処理を行なう場合の変換関数を算出することができ、解像度毎に複数の変換関数を用意する必要が無くなり、これにより変換関数の管理の煩わしさをなくすことができる。
【0061】
また、処理用画像信号を処理して得た処理済画像信号により表される画像の特性が、処理用画像の解像度に応じたナイキスト周波数の少なくとも1/5以下の周波数範囲において、基準解像度画像信号を処理して得た処理済画像信号により表される画像の特性とほぼ一致するように前記基準変換関数の補正を行なうと、画質に影響を与える度合いの大きい比較的低周波領域における周波数応答特性を、基準解像度画像信号を処理した場合に得られる周波数応答特性と略同一のものとすることができる。
【0062】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、本実施形態においては、蓄積性蛍光体シートに記録された人体の放射線画像を読取って得た画像信号に対して、その画像が診断に適した画像となるように、ボケ画像信号を使用して周波数強調処理を施すものであり、処理された画像信号は主としてフィルムに記録され、診断に用いられる。
【0063】
図1は本発明の第1の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図である。画像処理装置1は、読取装置などにおいて得られ、後述するように原画像信号Sorg を多重解像度空間に変換して符号化することにより得られた原画像信号Sorg′ からボケ画像信号を作成するボケ画像信号作成手段2と、特定の周波数を強調するための周波数強調処理を行って中間処理済画像信号Sproc′を得る周波数強調処理手段3とを有する。
【0064】
さらに、この画像処理装置1は、パラメータ設定手段4と拡大率入力手段5と拡大縮小手段6とを備える。パラメータ設定手段4は、周波数強調処理手段3が変換処理に使用する変換関数を設定する手段であり、拡大率入力手段5から入力された拡大率に関する情報Mに基づいて変換関数を設定する。拡大率入力手段5は原画像信号Sorg の拡大率情報Mを得るための手段であり、ユーザが拡大率をキーボードから数値として入力してもよく、操作画面に数種類の拡大率を表示してユーザに選択させるといった形態でもよい。拡大縮小手段6は周波数強調処理手段3において得られた中間処理済画像信号Sproc′を拡大率情報Mに基づいて拡大縮小して最終的な処理済画像信号Sprocを得るものである。
【0065】
原画像信号Sorg は以下のようにして多重解像度空間に変換されて符号化される。まず図2(a)に示すように、原画像信号Sorg がウェーブレット変換されて複数の解像度毎の4つのデータLL1、HL0、LH0およびHH0に分解される。ここで、データLL1は原画像の縦横を1/2に縮小した画像を表し、データHL0、LH0およびHH0はそれぞれ縦エッジ、横エッジおよび斜めエッジ成分の画像を表すものとなる。そして、4つのデータLL1、HL0、LH0およびHH0を逆ウェーブレット変換することにより原画像信号Sorgが得られる。次に、図2(b)に示すようにデータLL1をさらにウェーブレット変換して4つのデータLL2、HL1、LH1およびHH1を得る。ここで、データLL2はデータLL1の縦横をさらに1/2に縮小した画像を表すものとなり、データHL1、LH1およびHH1はそれぞれデータLL1の縦エッジ、横エッジおよび斜めエッジ成分の画像を表すものとなる。そしてこれら4つのデータLL2、HL1、LH1およびHH1を逆ウェーブレット変換することにより原画像の1/2の解像度の画像を表す低解像度画像信号が得られる。さらに、ウェーブレット変換を行なう毎に得られるデータLLに対してウェーブレット変換を所望とする回数繰り返して、複数の解像度毎のデータを得る。その後、図2(c)に示すように、各解像度毎のデータを符号化して原画像信号Sorg′ を得る。
【0066】
なお、原画像信号Sorg′ において所望とする解像度までのデータのみを復号化し、かつ逆ウェーブレット変換を施すことにより、原画像の1/2k (k:所望とする解像度)倍の解像度且つ画像サイズが1/22k倍の画像を表す低解像度画像信号BBk を復元することができる。この機能をなす手段として、ボケ画像信号作成手段2には、後述する第2の実施形態において説明する復号化手段30(図17参照)を複数段設けた構成と同じもの、および復元した所望とする解像度の低解像度画像信号BBk をフィルタリング処理手段10に入力する切替手段が設けられている(いずれも図1においては不図示)。なお、図17に示すような複数の復号化手段30を設けた構成とは異なり、データLLK+1,HLK,LHKおよびHHkを逆ウェーブレット変換して直ちに原画像の1/2k 倍の解像度の画像を表す低解像度画像信号BBk を復元する構成とすることもできる。
【0067】
次に、ボケ画像信号の作成処理について詳細に説明する。図3は第1の実施形態におけるボケ画像信号作成手段の構成を示す概略ブロック図である。
【0068】
図3に示すように、第1の実施形態におけるボケ画像信号作成手段2は、まずフィルタリング処理手段10に入力される原画像信号Sorg として原画像信号Sorg′を復元することにより得られた任意の解像度レベルの画像信号を使用し、フィルタリング処理手段10により、この原画像信号Sorg に対し、原画像信号Sorg が表す原画像の画素のx方向およびy方向に対してフィルタリング処理を施して低解像度画像信号B1 を作成し、次にこの低解像度画像信号B1 に対して同様のフィルタリング処理を施してこの低解像度画像信号B1 よりもさらに解像度が低い低解像度画像信号B2 を作成し、以降順次同様のフィルタリング処理を重ねていくものである。そして、補間処理手段11により、このフィルタリング処理の各段において得られる低解像度画像信号Bk に対して、それぞれ補間拡大処理を施して、鮮鋭度の異なる複数のボケ画像信号Sus1 〜SusN (以下Susk ( k=1〜N)で代表させる)を得るものである。
【0069】
本実施形態においては、上記フィルタリング処理のフィルタとして、1次元ガウス分布に略対応したフィルタを使用する。すなわちフィルタのフィルタ係数を、ガウス信号に関する下記の式(4)にしたがって定める。
【数1】
【0070】
これは、ガウス信号は周波数空間および実空間の双方において局在性がよいためであり、例えば上記(4)式においてσ=1とした場合の5×1の1次元フィルタは図4に示すようなものとなる。
【0071】
フィルタリング処理は、図5に示すように、原画像信号Sorg に対して、あるいは低解像度画像信号Bk に対して1画素おきに行なう。このような1画素おきのフィルタリング処理をx方向、y方向に行なうことにより、低解像度画像信号B1 の画素数は原画像の1/4となり、フィルタリング処理により得られる低解像度画像信号に対して繰り返しこのフィルタリング処理を施すことにより、得られるn個の低解像度画像信号Bk (k=1〜n)は、それぞれ、画素数が原画像信号Sorg の1/22Kの画像信号となる。
【0072】
次に、このようにして得られた低解像度画像信号Bk に対して施される補間拡大処理について説明する。補間演算の方法としては、Bスプラインによる方法など種々の方法が挙げられるが、本実施形態においては、補間演算についてガウス信号を用いるものとする。具体的には、下記の式(5)において、σ=2k−1 と近似したものを用いる。
【数2】
【0073】
低解像度画像信号B1 を補間する際には、k=1であるためσ=1となる。この場合、補間処理を行なうためのフィルタは、図6に示すように5×1の1次元フィルタとなる。この補間処理は、まず低解像度画像信号B1 に対して1画素おきに値が0の画素を1つずつ補間することにより低解像度画像信号B1 を原画像と同一のサイズに拡大し、次に、この補間された低解像度画像信号B1 に対して上述した図6に示す1次元フィルタによりフィルタリング処理を施すことにより行われる。
【0074】
同様に、この補間拡大処理を全ての低解像度画像信号Bk に対して行なう。低解像度画像信号Bk を補間する際には、上記式(5)に基づいて、3×2k −1の長さのフィルタを作成し、画像信号Bk の各画素の間に値が0の画素を2k −1個ずつ補間することにより、原画像と同一サイズに拡大し、この値が0の画素が補間された画像信号Bk に対して3×2k −1の長さのフィルタにより、フィルタリング処理を施すことにより補間拡大する。
【0075】
次に、上記のようにして作成されたボケ画像信号Susk を用いて行われる周波数強調処理について説明する。図7は周波数強調処理を行なう装置の構成をボケ画像信号作成手段2とともに示す概略ブロック図である。図7に示すように、原画像信号Sorg と、フィルタリング処理手段10および補間処理手段11により作成されたボケ画像信号Susk について、減算器21によりそれらの信号の差分が求められ、原画像信号Sorg の限られた周波数帯域の成分である帯域制限画像信号(Sorg-Sus1、Sus1-Sus2など)が作成される。
【0076】
一方、画像処理装置1に設けられているパラメータ設定手段4は、基準解像度を有する基準解像度画像について変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数f1〜fNを不図示のメモリに保持している。そして、フィルタリング処理手段10に入力される原画像信号Sorg として、基準解像度画像信号が入力されたときには、保持している基準変換関数f1〜fNを各帯域制限画像信号に応じて設定する。
【0077】
そして、フィルタリング処理手段10に基準解像度画像信号が入力されたときには、各帯域制限画像信号が変換器22においてそれぞれ異なる変換関数f1〜fNにより所望の大きさとなるように変換され、さらに下記の式(2′)にしたがって、その複数の変換された帯域制限画像信号(本発明の変換画像信号)が演算器23において積算されて周波数強調処理に必要な信号(積算信号)Fusm が得られ、さらに信号Fusm に所定の係数が乗じられた後原画像信号Sorg と加算されて、処理済画像信号Sproc′が生成される。これにより所望とする周波数成分を目的に応じた度合いで強調した処理済画像信号Sproc′を得ることができる。
Sproc′=Sorg +β(Sorg )×Fusm (Sorg,Sus1,Sus2,…SusN)
(但し、Sproc′:高周波成分が強調された画像信号
Sorg :原画像信号
Susk(k=1〜N):ボケ画像信号
fk(k=1〜N):各帯域制限画像信号を変換する変換関数
β(Sorg) :原画像信号に基づいて定められる強調係数
【0078】
以上、処理済画像信号Sproc′の作成について説明したが、次に、第1の実施形態が解決しようとする問題点およびその解決手段について例を示して説明する。上述したように原画像と同一解像度の画像(原画像と同一の画像であっても異なる画像であってもよい)を表す処理済画像信号Sproc′を得る場合には、帯域制限画像信号の周波数帯域に応じた変換関数fk を用いて周波数強調処理を行えばよいが、原画像よりも低解像度の画像(原画像と同一の画像であっても異なる画像であってもよい)を表す処理済画像信号を得る場合に、その解像度に応じた変換関数を用意する必要があるため、変換関数の管理が非常に煩わしいものとなる。ここで、原画像信号Sorg を6つの周波数帯域に分離して周波数強調処理を行なう場合は、帯域制限画像信号の周波数特性は6つのピークを有するものとなる。
【0079】
そして、例えば、基準解像度としての10本/mmの読取密度で読み取られた基準解像度画像を表す原画像信号Sorg (以下10本/mmの解像度を有する原画像信号ともいう;他の読取密度においても同様)から帯域制限画像信号を得る場合、原画像信号Sorg のナイキスト周波数は5cycle/mmであり、図8に示すように、最高周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数がこのナイキスト周波数5cycle/mmとなり、最高周波数帯域の次の周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数はナイキスト周波数の1/5の値を有する1.0cycle/mmとなり、以下低周波数帯域となるにつれて、0.5cycle/mm、0.25cycle/mm、0.12cycle/mm、0.06cycle/mmのようにピーク周波数は前段のピーク周波数の1/2となる。また、基準解像度画像の1/2の解像度の画像(読取密度を5本/mmとしてもよいし、基準解像度画像を間引きなどにより低解像度化してもよい)を表す画像信号を原画像信号Sorg としたときにおける、帯域制限画像信号のピーク周波数は、図9に示すように2.5cycle/mm、0.5cycle/mm、0.25cycle/mm、0.125cycle/mmおよび0.06cycle/mmとなる。
【0080】
以下基準解像度画像の1/4、1/8、1/16の解像度の画像を表す画像信号を原画像信号Sorg としたときにおける、帯域制限画像信号のピーク周波数は、図10から図12に示すようになる。つまり、帯域制限画像信号のうち最高周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数は解像度レベルに応じたナイキスト周波数となり、最高周波数帯域の次の周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数はナイキスト周波数の1/5となり、以下低周波数帯域となるにつれて、前段のピーク周波数の1/2となる。
【0081】
次に、基準解像度画像の画像サイズとは異なる画像サイズ(以下所望画像サイズともいう)の出力画像を得る場合について説明する。
【0082】
例えば、基準解像度画像よりも小さい所望画像サイズの画像を表す処理済画像信号を得る場合には、本発明に係る処理用画像を表す画像信号、すなわちフィルタリング処理手段10に入力する原画像信号Sorg として所望画像サイズに最も近い、基準解像度画像の画像サイズを22k(kは負の整数)倍した変倍画像である低解像度画像を表す画像信号を使用する。以下、この画像サイズを22k倍した低解像度画像の解像度を所定解像度といい、この低解像度画像を表す画像信号を基準低解像度画像信号ともいう。
【0083】
そして、この基準低解像度画像信号から低解像度ボケ画像信号を得、この低解像度ボケ画像信号に基づいて低解像度帯域制限画像信号を作成し、さらに低解像度帯域制限画像信号に対して帯域制限画像信号の周波数帯域に対応した変換関数により変換画像信号を得て、中間処理済画像信号Sproc′を得、さらに中間処理済画像信号Sproc′を拡大率情報Mに基づいて拡大または縮小して所望画像サイズの画像を表す処理済画像信号Sprocを得る。
【0084】
より具体的な態様として、基準解像度画像の1/4の画像サイズで且つ1/2解像度の画像(1/22 縮小画像)を表す処理済画像信号Sprocを得る場合を図13のフローチャートを参照して説明する。なお、ここでは原画像信号Sorg においては図8に示すように帯域制限画像信号は6つの周波数帯域からなるものとする。
【0085】
まず、拡大率入力手段5からユーザが所望とする前記所望画像サイズに対応する拡大率(所望拡大率とする)を入力する(ステップS1)。これにより拡大率入力手段5から拡大率情報Mがボケ画像信号作成手段2、パラメータ設定手段4および拡大縮小手段6に入力される。ボケ画像信号作成手段2においては、拡大率情報Mに基づいて、所望拡大率に最も近い画像サイズが22k(kは負の整数)倍の画像を表す低解像度画像信号BBk を復号化手段30(図17参照)により復元してフィルタリング処理手段10に入力するとともに(ステップS2)、低解像度ボケ画像信号Susk を作成する(ステップS3)。なお、低解像度画像信号BBk が原画像信号Sorg に対応する基準低解像度画像信号となる。また、本実施形態においては、基準解像度画像の1/4の画像サイズに対応する拡大率情報Mが入力されることになるので、画像サイズが1/4倍の画像を表す低解像度画像信号BB1 を復元する。
【0086】
ここで、フィルタリング処理手段10に原画像信号Sorg として基準解像度画像信号が入力された場合に得られる6つのボケ画像信号(原画像信号含む)Sorg 〜Sus6 と、所定解像度(所望画像サイズ)に近い、1/2解像度画像(1/22 縮小画像)を表す低解像度画像信号BB1 から得られる低解像度ボケ画像信号Sorg 〜Sus5 との対応関係を、各ボケ画像信号の周波数範囲が同じものが同列となるように図14に示す。なお、図14には、1/4解像度画像(1/42 縮小画像)〜1/16解像度画像(1/162 縮小画像)までの原画像信号Sorg およびボケ画像信号Susk の対応関係も示す。図14に示すように、基準解像度画像におけるボケ画像信号Sus1 が、例えば1/2解像度画像における低解像度ボケ画像信号Sorg に対応し、以下順次図中右側に相対移動している。
【0087】
次に、低解像度ボケ画像信号Susk に基づいて低解像度帯域制限画像信号が作成される(ステップS4)。基準解像度画像信号から得られる6つの帯域制限画像信号と、各解像度画像を表す低解像度画像信号BBk から得られる低解像度帯域制限画像信号との対応関係を、各帯域制限画像信号の周波数範囲が同じものが同列となるように図15に示す。なお、フィルタリング処理手段10に低解像度画像信号BBk が入力された場合において生成される低解像度帯域制限画像信号のうちの0.03cycle/mm以下の低周波数帯域のものは、基準解像度画像についての強調処理には使用されない周波数範囲の信号であるため、強調処理には使用しないようにする。図14〜図16における1/2〜1/16解像度画像について、右側を途中までしか示していないのはこのためである。
【0088】
一方、パラメータ設定手段4においては各低解像度帯域制限画像信号に対して施す変換処理の変換関数fk の設定が行われる(ステップS5)。ここで、基準解像度画像信号から得られる6つの帯域制限画像信号に対しては上述したように変換関数f1〜f6が用いられるが、1/2解像度画像を表す低解像度画像信号BB1 から得られる低解像度帯域制限画像信号に対しては、設定する変換関数に対応する低解像度帯域制限画像信号のピーク波長が、それぞれ基準解像度画像信号から得られる各帯域制限画像信号の波長と同じになるように基準変換関数f1〜f6をシフト(相対移動)させる。
【0089】
各解像度画像における変換関数の対応関係を図16に示す。例えば、図8、図9、および図14から判るように、例えば基準解像度画像における帯域制限画像信号Sus1−Sus2のピーク波長が、1/2解像度画像における低解像度帯域制限画像信号Sorg−Sus1のピーク波長と同じになり、以下順次図15中右側に相対移動している。したがって、図16に示すように、処理用画像としての低解像度画像の解像度が基準解像度の1/2k 倍となると、低解像度画像についての変換関数fN は基準変換関数f1〜f6のうちのk個分低周波数帯域側のものが用いられることとなる。したがって、基準解像度画像に対して周波数強調処理を施す場合の上記式(2′)における積算信号Fusm を式(6)に示すと、1/2解像度画像に対して周波数強調処理を施す場合の積算信号Fusm は式(7)に示すものとなる。
【0090】
そして、このようにして低解像度帯域制限画像信号から低解像度変換画像信号が作成されて(ステップS6)低解像度積算信号Fusm が得られると、上記式(2′)に示すように、強調係数β(Sorg) が低解像度積算信号Fusm に乗算され、さらに原画像信号Sorg (ここでは基準低解像度画像信号)に加算されて中間処理済画像信号Sproc′が作成される(ステップS7)。この中間処理済画像信号Sproc′は、基準解像度画像の1/4の画像サイズで且つ1/2解像度の画像(1/22 縮小画像)を表すことになる。なお、式(2′)におけるβ(Sorg) は基準低解像度画像信号に基づいて設定されることになる。
【0091】
そしてこのようにして得られた中間処理済画像信号Sproc′は拡大縮小手段6に入力される。拡大縮小手段6においては、拡大率入力手段5から入力された拡大率情報Mに基づいて、所望拡大率の画像を再現可能なように中間処理済画像信号Sproc′を拡大または縮小して最終的な処理済画像信号Sprocを得る(ステップS8)。ここで、本実施形態においては、拡大率入力手段5から入力された拡大率情報Mは1/4の画像サイズに対応するため、拡大縮小手段6においては1/22 縮小画像(1/2解像度画像)を表す中間処理済画像信号Sproc′を何ら拡大、縮小することなく最終的な処理済画像信号Sprocとする。
【0092】
このように、本実施形態においては、基準解像度画像よりも画像サイズが小さい画像を表す処理済画像信号を得る、あるいは基準解像度画像よりも低解像度の画像を表す処理済画像信号を得る際に、基準解像度画像に対して周波数強調処理を行なうときに使用する基準変換関数を、基準解像度画像についての各帯域制限画像信号の周波数帯域が処理用画像についての各帯域制限画像信号の周波数帯域に最も近くなるように基準変換関数を相対移動させ、この相対移動させた基準変換関数を処理用画像についての変換関数として設定して変換画像信号を求めた後に周波数強調処理を施すようにしたので、得られる処理済画像信号を再生することにより得られる画像においては、その周波数応答特性を基準解像度画像に基づく処理済画像信号Sprocを再生することにより得られる画像の周波数応答特性と略一致させることができ、これにより解像度に影響されない一定の周波数応答特性を有する画像を再現可能な処理済画像信号Sprocを得ることができる。
【0093】
また、基準解像度画像に対して周波数強調処理を行なう際に使用する変換関数と同一の変換関数を用いているため、解像度毎に変換関数を用意する必要が無くなり、これにより本発明を適用したシステムの構成を簡易なものとすることができ、また変換関数の管理の煩わしさをなくすことができる。
【0094】
なお、画素数(画像サイズ)に拘わらず、基準解像度画像よりも低解像度の画像を表す処理済画像信号を得る場合においても、基準変換関数f1〜f6を同様にシフトさせるとよく、得られる効果も略同じである。ただし、拡大縮小手段6における処理では、鮮鋭度を向上させることができないので、最終的に得られる画像は、画像サイズが所望画像サイズになるものの、完全に所望解像度に復元できないこともある。
【0095】
さらに、出力画像の画像サイズを基準解像度画像の画像サイズよりも小さくする場合において、フィルタリング処理手段10に入力される画像の大きさが基準解像度画像の22k(kは負の整数)倍となるときには、処理用画像が基準解像度画像の画素数よりも少ない縮小画像となり、この縮小画像について強調処理などの所定の処理を施すことができるので、該所定の処理のための演算時間を短縮することができる。
【0096】
なお、上記第1の実施形態においては、基準解像度画像信号あるいは基準低解像度画像信号からフィルタリングおよび補間拡大によりボケ画像信号を求め、基準解像度画像信号およびボケ画像信号から帯域制限画像信号を作成しているが、これに限定されるものではなく、例えば基準解像度画像信号あるいは基準低解像度画像信号をウェーブレット変換やラプラシアンピラミッドなどの手法により多重解像度に変換し、変換された各解像度毎の画像信号を帯域制限画像信号としてもよい。
【0097】
また、上記第1の実施形態においては、多重解像度に変換されて符号化された原画像信号Sorg′ に基づいて所定解像度の画像を復元した後に周波数強調処理を施しているが、これに限定されるものではなく、何ら符号化されない画像信号、あるいはこの符号化されない画像信号とは異なる解像度の画像信号に対して周波数強調処理を施してもよい。
【0098】
次いで、本発明の第2の実施形態について説明する。上記第1の実施形態においては、原画像信号Sorg を多重解像度空間に変換して符号化した原画像信号Sorg′を所望画像サイズに最も近い、1/2k 解像度の画像(1/22k縮小画像)を表す低解像度画像信号BBk まで復元し、この復元された低解像度画像信号BBk をフィルタリングおよび補間拡大を順次繰り返して複数のボケ画像信号を作成していたが、第2の実施形態においては、最低解像度(最小画像サイズ)から所望画像サイズに最も近い、1/2k 解像度の画像(1/22k縮小画像)までの各解像度レベル(各画像サイズ)の低解像度画像信号BBk をそれぞれ補間拡大して複数のボケ画像信号を作成するものである。なお、第2の実施形態においては、ボケ画像信号作成手段2における処理が異なるのみであって、他の構成については第1の実施形態と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0099】
ここで、第2の実施形態におけるボケ画像信号の作成処理について説明する。図17は第2の実施形態におけるボケ画像信号作成手段2の構成を示す概略ブロック図である。図17に示すように、まず復号化手段30により原画像信号Sorg′ における最低解像度の画像を表すデータを復号化および逆ウェーブレット変換して原画像の1/2n 倍の解像度の画像を表す低解像度画像信号BBn を作成し、次にこの低解像度画像信号BBn を用いて原画像の1/2n−1 倍の解像度の画像を表す低解像度画像信号BBn−1 を作成し、以降順次復号化および逆ウェーブレット変換を行なって原画像の1/2k (k=1〜n)倍の解像度を表す低解像度画像信号BBk および最高解像度の画像すなわち原画像(基準解像度画像)を表す原画像信号Sorg を作成する。なお、低解像度画像信号BBk は原画像信号Sorg をウェーブレット変換することにより得られるデータLLkに対応するものとなる。そして、補間処理手段31により、この復号化処理の各段において得られる低解像度画像信号BBk に対して、それぞれ上記第1の実施形態と同様の補間拡大処理を施して、鮮鋭度の異なる複数のボケ画像信号Sus1 〜SusN (以下Susk(k=1〜N)で代表させる)を得る。
【0100】
次に、このボケ画像信号Susk から帯域制限画像信号を得る。そして、上記式(2′)に示すように周波数強調処理を施して処理済画像信号Sproc′を得る。
【0101】
ここで、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様にして基準解像度画像よりも小さい所望画像サイズの画像(基準解像度よりも低い所定解像度の画像と同じ意味)を表す処理済画像信号Sprocを得る場合について説明する。なお、第2の実施形態においても第1の実施形態と同様に生成される帯域制限画像信号の周波数帯域は6つであり、所望画像サイズが基準解像度画像の1/4サイズであるとする。
【0102】
まず、拡大率入力手段5からユーザが所望拡大率を入力する。これにより拡大率入力手段5から拡大率情報Mがボケ画像信号作成手段2、パラメータ設定手段4および拡大縮小手段6に入力される。ボケ画像信号作成手段2においては、拡大率情報Mに基づいて、最低解像度から所望拡大率に最も近い画像サイズが22k(kは負の整数)倍までの各画像サイズ(各解像度)の画像を表す低解像度画像信号BBk を復元するとともに、低解像度ボケ画像信号Susk を作成する。なお、低解像度画像信号BBk が原画像信号Sorg に対応する基準低解像度画像信号となる。また、本実施形態においては、基準解像度画像の1/4の画像サイズに対応する拡大率情報Mが入力されることになるので、画像サイズが1/4倍の画像を表す低解像度画像信号BBn 〜BB1 を復元する。
【0103】
ここで、生成される6つのボケ画像信号(原画像信号含む)Sorg 〜Sus6 と、所定解像度(所望画像サイズ)に最も近い、1/2解像度画像(1/22 縮小画像)を表す低解像度画像信号BB1 から得られる低解像度ボケ画像信号Sorg 〜Sus5 との対応関係、および基準解像度画像信号から得られる帯域制限画像信号と各解像度画像を表す低解像度画像信号BBk から得られる帯域制限画像信号の関係は、上記図14および図15に示すものとなる。また、パラメータ設定手段4においては各低解像度帯域制限画像信号に対して施す変換処理の変換関数の設定が第1の実施形態と同様に行われ、解像度が1/2k となると変換関数fN は、上記式(6)および式(7)に示すように、基準変換関数f1 〜f6 のうちのk個分低周波数帯域側のものが用いられることとなる。
【0104】
そして、このようにして低解像度帯域制限画像信号から低解像度変換画像信号が作成されて低解像度積算信号が得られると、強調係数β(Sorg) が積算信号に乗算され、さらに所定解像度の画像に対応する原画像信号Sorg (基準低解像度画像信号)に加算されて中間処理済画像信号Sproc′が得られる。
【0105】
そしてこのようにして得られた中間処理済画像信号Sproc′は拡大縮小手段6に入力される。拡大縮小手段6においては、拡大率入力手段5から入力された拡大率情報Mに基づいて、所望拡大率の画像を再現可能なように中間処理済画像信号Sproc′を拡大または縮小して最終的な処理済画像信号Sprocを得る。ここで、第2の実施形態においても、拡大率入力手段5から入力された拡大率情報Mは1/4の画像サイズに対応するため、拡大縮小手段6においては1/22 縮小画像(1/2解像度画像)を表す中間処理済画像信号Sproc′を何ら拡大、縮小することなく最終的な処理済画像信号Sprocとする。
【0106】
このように、第2の実施形態においても、基準解像度画像よりも画像サイズが小さい画像を表す処理済画像信号を得る際に、基準解像度画像に対して周波数強調処理を行なう際に使用する基準変換関数を所望画像サイズ(所定解像度)に応じてシフト(相対移動)して帯域制限画像信号の変換を行なうようにしたため、得られる処理済画像信号を再生することにより得られる画像においては、その周波数応答特性を基準解像度画像に基づく処理済画像信号Sprocを再生することにより得られる画像の周波数応答特性と略一致させることができ、これにより解像度に影響されない一定の周波数応答特性を有する画像を再現可能な処理済画像信号Sprocを得ることができる。
【0107】
なお、上記第1および第2の実施形態においては、1/2縮小画像を得る場合について説明しているが、例えば1/32 縮小画像(1/3解像度画像)を得る場合には、ボケ画像信号作成手段2および周波数強調処理手段3において、1/32 縮小画像に最も近い1/42 縮小画像(1/4解像度画像)を表す低解像度画像信号に基づいて周波数強調処理が行われて中間処理済画像信号Sproc′が得られる。そして、この中間処理済画像信号Sproc′を拡大縮小手段6において、(4/3)2 倍に拡大して最終的な処理済画像信号Sprocが得られることとなる。なお、所望画像サイズが基準解像度画像の1/22k倍の場合には、拡大縮小手段6を省略することができるため、装置の構成を簡易なものとすることができる。
【0108】
また、上記第1および第2の実施形態においては、式(2′)に基づいて帯域制限画像信号を変換関数fk により変換して変換画像信号を作成しているが、下記の式(8)に示すように、変換関数fk に代えて強調係数αk を用いて帯域制限画像信号を強調して変換画像信号を得てもよい。この場合、基準解像度画像用に設定される強調係数α1〜α6を、上記変換関数fk をシフトさせたと同じように所望画像サイズ(所定解像度)に応じてシフトして強調処理が行われることとなる。
【0109】
上記各実施形態は所望画像サイズ(所定解像度)が基準解像度画像よりも小さい場合についてのものであるが、逆に、所望画像サイズ(所定解像度)が基準解像度画像よりも大きい場合についても、上記各実施形態と略同様の方法を用いることができる。以下、この場合について説明する。
【0110】
医療診断などにおいて、CRT上で画像を見て画像の一部分を詳細に読影する場合には、画像の該当する部分を拡大して表示したりあるいはフィルム出力することがある。この場合、従来の態様では、拡大処理した画像信号に対して基準解像度画像に対する変換関数を用いて処理して強調処理を施すことになる。一方、拡大処理に際しては、補間処理を施して22n倍拡大画像(nは正の整数)を得る態様と、多重解像度信号として、予め拡大画像用に用意された2n 倍解像度レベルの信号を用いる態様とが考えられる。ここで、拡大画像を表す画像信号の周波数帯域は、前者の場合には画素数は22n倍になるものの最大でも基準解像度画像の周波数帯域と同じであり、後者の場合には2n 倍解像度レベルの信号を用いている分だけ拡がる。
【0111】
これに対して、帯域制限画像信号の生成過程、変換処理、および強調処理としては、入力される画像信号の態様に拘わらず同じ処理がなされ、拡大処理に際して補間処理を施すか2n 倍解像度レベルの信号を用いるかに拘わらず、画像サイズと帯域制限画像信号との間には、図15から推測されるように、処理対象となる帯域制限画像信号と変換関数の組数が増えるため基準解像度に存在しない変換関数を定義する必要が生じる。
【0112】
一方、拡大画像における各帯域制限画像信号が担持する周波数成分は、拡大処理に際して2n 倍解像度レベルの信号を用いた場合には、図18に示す同列部分が同じ周波数範囲となり、各帯域制限画像信号のピーク波長は、例えば、基準解像度画像におけるSorg−Sus1が、2倍解像度画像(22 倍拡大画像)におけるSus1 −Sus2 、4倍解像度画像(42 倍拡大画像)におけるSus2 −Sus3 と同じになる。そして、2倍解像度画像におけるSorg−Sus1、4倍解像度画像におけるSorg −Sus1 およびSus1 −Sus2 が、基準解像度画像に存在しない高周波成分(高周波帯域制限画像信号)となる。そこで、拡大画像用に用意された2n 倍解像度レベルの信号を用いて強調処理を行なうに際しては、図19に示すように、基準解像度画像と同じ周波数成分に対しては基準解像度画像についてのものと同じ変換関数が用いられるようにすると共に、基準解像度画像に存在しない高周波成分に対応する変換関数として、基準解像度画像の最高周波数帯域で用いた変換関数f1 をそのまま利用することとする。これにより、拡大画像を担持する処理済画像信号Sprocの応答を、視覚的に影響が大きな低周波側から基準解像度画像の最高周波数(ナイキスト周波数)までに亘って、基準解像度画像と略同じにすることができるとと共に、基準解像度画像に存在しない高周波成分についても、変換関数f1 を用いることで、基準解像度画像についてのものとある程度の対応関係をもつ強調処理を施すことができる。
【0113】
他方、補間処理を施して22n倍拡大画像を得、この拡大画像を表す画像信号を用いて強調処理を行なう場合には、拡大画像における各帯域制限画像信号のピーク波長は、例えば基準解像度画像におけるSorg−Sus1が22 倍拡大画像におけるSus1 −Sus2 、42 倍拡大画像におけるSus2 −Sus3 と同じになる。そして、22 倍拡大画像におけるSorg−Sus1、42 倍拡大画像におけるSorg −Sus1 およびSus1 −Sus2 が基準解像度画像の最高周波数(ナイキスト周波数)と同じになる。そこで、補間処理を施して得た22n倍拡大画像を用いて強調処理などを行う場合には、基準解像度画像と同じ周波数成分に対しては基準解像度画像と同じ変換関数が用いられるように、図19と同様の変換関数を用いる。つまり、22 倍拡大画像におけるSus1 −Sus2 、42 倍拡大画像におけるSus2 −Sus3 、および22 倍拡大画像におけるSorg−Sus1、42 倍拡大画像におけるSorg −Sus1 、Sus1 −Sus2 に対して変換関数f1 を用いる。これにより、拡大画像を担持する処理済画像信号Sprocの応答を、視覚的に影響が大きな低周波側から基準解像度画像の最高周波数まで(本例では略全帯域となる)に亘って、基準解像度画像と略同じにすることができる。
【0114】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図20は本発明の第3の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図である。この図20において、第1の実施形態の要素と同等の要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する。
【0115】
第3の実施形態に係る画像処理装置1は、読取装置などにおいて得られた任意の解像度を有する原画像信号Sorg からボケ画像信号を作成するボケ画像信号作成手段2と、上述した式(2)に基づいて特定の周波数を強調するための周波数強調処理を行って処理済画像信号Sprocを得る、第1の実施形態にかかる周波数強調処理手段3と同じ機能をなす変換処理手段3とを有する。さらに、この第3の実施形態にかかる画像処理装置1は、変換関数算出手段40と解像度情報入力手段50とを備える。変換関数算出手段40は、変換処理手段3が変換処理に使用する変換関数を算出する手段であり、後述するように解像度情報入力手段50から入力される解像度情報に基づいて、基準解像度を有する基準解像度画像信号(以下基準原画像信号とする)Sorg0 に対して周波数強調処理を施す際に使用する変換関数を用いて、入力された画像信号が表す画像の解像度に応じた変換関数を算出するものである。解像度情報入力手段50は原画像信号Sorg の解像度情報Mを得るための手段である。解像度情報入力手段50による入力は、ユーザがキーボードから数値として入力してもよいし、操作画面に数種類の密度を表示してユーザに選択させるといった形態でもよい。あるいは読取装置側で、解像度情報Mを原画像信号Sorgに添付しておき、画像処理装置1が入力された画像信号毎に添付された解像度情報Mを認識するようにしてもよく、変換関数算出手段40が解像度を認識することができれば、どのような形態であってもよい。
【0116】
なお、第3の実施形態の変換器22において用いられる変換関数f1〜fNは定数とする。ここで、第1の実施形態の図8に示すように、10本/mmの読取密度で読み取られた原画像信号Sorg から得られる各帯域制限画像信号に対して設定される変換関数は下記の表1に示すような値を有するものとする。
【表1】
【0117】
次に、第3の実施形態が解決しようとする問題点およびその解決手段について例を示して説明する。上述したように原画像信号Sorgの所望とする周波数成分を強調するためには、帯域制限画像信号の周波数帯域に応じた変換関数fkを用いて周波数強調処理を行えばよい。しかしながら、10本/mmの解像度を有する原画像信号Sorgに対して周波数強調処理を行なう際に使用する変換関数を、300dpiの解像度を有する原画像信号Sorgに対して適用した場合、10本/mmの解像度を有する原画像信号Sorgから得られる処理済画像信号Sprocと300dpiの解像度を有する原画像信号Sorgから得られる処理済画像信号Sprocとにおいて、得られる画像の周波数応答特性が図21に示すように異なるものとなってしまう。
【0118】
したがって、第3の実施形態においては、例えば10本/mmの解像度を有する原画像信号Sorgを基準原画像信号Sorg0とし、基準原画像信号Sorg0に対して周波数強調処理を施す際に使用する基準変換関数を用いて、300dpiの原画像信号Sorgに対して周波数強調処理を施す際に使用する変換関数を算出するようにしたものである。以下、変換関数の算出について説明する。
【0119】
図22は300dpi解像度の原画像信号Sorgから得られる帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す図である。図22に示すように、300dpi解像度の原画像信号Sorgのナイキスト周波数は5.9cycle/mmであり、最高周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数がこのナイキスト周波数となる。そして、最高周波数帯域の次の周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数はナイキスト周波数の1/5の値である1.18cycle/mmとなり、以下低周波数帯域となるにつれて、0.59cycle/mm、0.30cycle/mm、0.15cycle/mm、0.07cycle/mmのようにピーク周波数は前段の周波数帯域の1/2の関係となっている。この関係は図7に示した基準原画像信号Sorg0の帯域制限画像信号の周波数応答特性の関係と一致するものであり、この関係は、低解像度画像信号を作成する際のフィルタを変更しない限り原画像信号Sorgの解像度に拘わらず成立するものである。
【0120】
したがって、基準原画像信号Sorg0から得られる帯域制限画像信号のピーク周波数、300dpi解像度の原画像信号Sorgから得られる帯域制限画像信号のピーク周波数および基準変換関数に基づいて、内挿あるいは外挿の線形補間を行なうことにより、下記の表2に示すように300dpi画像に対する変換関数を求めることができる。具体的には、ピーク周波数が1.18cycle/mmとなる帯域制限画像信号に対応する変換関数は、表1における5cycle/mmおよび1cycle/mmの変換関数の値から、ピーク周波数と変換関数の値との関係を下記の式(6)により求め、この式(9)に300dpi解像度のピーク周波数の値を代入してそのピーク周波数における変換関数の値を求める。そして、この線形補間を全ピーク周波数に対して行ない、各帯域制限画像信号に対応する変換関数を求める。なお、ここでは線形補間により求めているが、これに限定されるものではない。
【表2】
fx=1/40×C+0.875 (9)
但し、fx:求めるべき変換関数の値
C:ピーク周波数
【0121】
そしてこのようにして求められた変換関数により変換処理手段3において、変換処理(周波数強調処理)が行われて処理済画像信号Sprocが得られる。ここで、上述したようにして求められた変換関数により処理が施された処理済画像信号Sprocと基準原画像信号Sorg0に対して基準変換関数により処理を施すことにより得られた処理済画像信号Sproc0とにおける周波数応答特性の関係を図23に示す。図23に示すように、第1の実施形態によれば処理を施す原画像信号の解像度に拘わらず略同一の周波数応答特性を有する処理済画像信号Sprocが得られることが分かる。
【0122】
次いで、第3の実施形態の動作について説明する。図24は本実施形態の動作を示すフローチャートである。まず、読取装置などから原画像信号Sorgが画像処理装置1に入力される(ステップS1)。原画像信号Sorgはボケ画像信号作成手段2に入力されてここでボケ画像信号Suskが作成される(ステップS2)。一方、解像度情報入力手段50には、原画像信号Sorgの解像度情報Mが入力され(ステップS3)、入力された解像度情報Mに基づいて変換関数算出手段40において上述したように解像度に応じた変換関数が算出される(ステップS4)。なお、ステップS1,2の処理よりもステップS3,4の処理を先に行ってもよいが、これらの処理を並列して行なうことにより演算時間を短縮することができる。変換処理手段3においては、ボケ画像信号Suskに基づいて帯域制限画像信号が作成され、さらに変換関数算出手段40において算出された変換関数に基づいて上記式(2)に示す周波数強調処理が行われ処理済画像信号Sprocが得られる(ステップS5)。
【0123】
この周波数強調処理は、ボケ画像信号を用いて強調のために原画像信号に加算する加算信号を作成するものであり、周波数強調処理を行なうことによってアーチファクトが発生しないようにするために、この加算信号を構成する各周波数帯域の信号がそれぞれ所望の信号となるよう、周波数帯域毎に異なる変換処理を施すものである。所望の信号を作成するためには、原画像信号Sorgの解像度に拘わらず所望の周波数応答特性を有する信号となることが好ましい。第3の実施形態によれば、解像度に拘わらず処理済画像信号Sprocの周波数応答特性が略同一のものとなるように変換関数を算出するようにしたため、原画像の解像度に拘わらず略同一の周波数応答特性を有する処理済画像信号Sprocを得ることができる。
【0124】
また、基準変換関数に基づいて解像度毎に変換関数を算出しているため、解像度毎に複数の変換関数を用意する必要が無くなり、これにより変換関数の管理の煩わしさをなくすことができる。
【0125】
なお、上記第3の実施形態においては、基準変換関数を10本/mmの解像度に対応する1組のみ用いて任意の解像度に対応する変換関数を算出しているが、例えば利用頻度が高い数種類の基準解像度に対応する変換関数を基準変換関数として用意し、処理を施す画像の解像度が上記数種類の基準解像度のいずれに近い値を有するか否かを判断し、解像度が近い方の基準変換関数を用いて処理を施す画像の解像度に対応した変換関数を求めてもよい。例えば、2種類の基準解像度およびこれらに対応する変換関数を第1および第2の基準解像度、第1および第2の基準変換関数とし、さらに第1および第2の基準変換関数の使用範囲を図25(a)に示すように設定した場合において、処理を施す原画像信号により表される画像の解像度が図中矢印Aの部分である場合には第1の基準変換関数を使用し、矢印Bの部分である場合には第2の基準変換関数を使用する。また、第1および第2の基準変換関数の使用範囲を図25(b)に示すように設定した場合において、処理を施す原画像信号により表される画像の解像度が図中矢印Cの部分である場合には第1の基準変換関数を使用し、矢印Dの部分である場合には第2の基準変換関数を使用してもよい。
【0126】
また、上記第3の実施形態においては変換関数を定数としているが、所定の傾きを有する非線形関数を用いてもよい。以下、変換関数を非線形関数とした場合における解像度に応じた変換関数の算出について第4の実施形態として説明する。第4の実施形態においては、変換関数fkとして下記の式(10)に示す非線形関数が用いられる。
f(Sin)=Sout=Sin×Y×(exp(X/Sin)-1)/(exp(X/Sin)+1) …(10)
【0127】
式(10)において、Sinは入力信号、Soutは出力信号、Xは非線形の程度すなわち抑制条件を決定するパラメータ、Yは関数全体の傾きすなわち周波数応答特性をコントロールするパラメータである。そして、パラメータX,Yを調整することにより帯域制限画像信号の周波数応答特性を変更することができる。第4の実施形態においては、パラメータX,Yとして、下記の表3に示すものを用いる。なお、表3においては、10本/mm、6.7本/mmおよび5本/mmの画素密度を有する原画像信号に対するパラメータを示すものであり、上の行ほど高周波帯域の帯域制限画像信号に対するパラメータとなっている。ここで、ナイキスト周波数が低くなるほど非線形処理に使用する帯域制限画像信号の数は図26に示すように少なくなる。例えば10本/mmの解像度の場合には6つの帯域制限画像信号を用いるが6.7本/mmおよび5本/mmの解像度の場合には5つの帯域制限画像信号のみが用いられる。これは、6.7本/mmおよび5本/mmの画素密度において0.03cycle/mmにピークを有する低周波数帯域に対しては、10本/mmに相当する低周波数帯域が存在しないためである。また、ここでも基準原画像信号の解像度を10本/mmとし、表3に示すパラメータX,Yの組からなる変換関数を基準変換関数とする。また、処理が施される原画像信号により表される画像の解像度を200dpiとする。
【表3】
【0128】
図27は200dpi解像度の原画像信号Sorgから得られる帯域制限画像信号の周波数応答特性を概略的に示す図である。図27に示すように、200dpi解像度の原画像信号Sorgのナイキスト周波数は約4.0(厳密には3.937)cycle/mmであり、最高周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数がこのナイキスト周波数となる。そして、最高周波数帯域の次の周波数帯域の帯域制限画像信号のピーク周波数はナイキスト周波数の1/5の値である0.8cycle/mmとなり、以下低周波数帯域となるにつれて、0.4cycle/mm、0.2cycle/mm、0.1cycle/mm、0.05cycle/mmのようにピーク周波数は前段の周波数帯域の1/2の関係となっている。この関係は図8に示した10本/mmの解像度を有する基準原画像信号Sorg0の帯域制限画像信号の周波数応答特性の関係と一致するものであり、この関係は、低解像度画像信号を作成する際のフィルタを変更しない限り原画像信号Sorgの解像度に拘わらず成立するものである。このような周波数応答特性を有する200dpi画像を表す原画像信号Sorgに対して基準変換関数により処理を施すことにより得られる処理済画像信号Sprocと基準原画像信号Sorg0に対して基準変換関数により処理を施すことにより得られる処理済画像信号Sproc0との周波数応答特性を図28に示す。図28に示すように処理済画像信号Sprocは処理済画像信号Sproc0と比較して低周波数帯域が強調された画像となってしまう。
【0129】
このため、上記第3の実施形態と同様にして、処理を施す原画像信号の解像度に応じて基準変換関数から処理に用いる変換関数を算出する。以下変換関数の算出について説明する。第4の実施形態においては、基準原画像信号から得られる帯域制限画像信号のピーク周波数、変換関数のパラメータ(ここでは表3におけるYの値)および処理を施す200dpi画像を表す原画像信号Sorgから得られる帯域制限画像信号のピーク周波数が予め分かっており、さらには求める変換関数の数が6個であることも分かっている。そこで、まず下記の式(12)により基準原画像信号の帯域制限画像信号の周波数応答特性、200dpi解像度の原画像信号に基づく帯域制限画像信号のピーク周波数、および基準変換関数のパラメータYから200dpi解像度の原画像信号Sorgに基づく帯域制限画像信号のピーク周波数に対応する周波数でのレスポンスを求める。
但し、R1〜R6 : ピーク周波数におけるレスポンス(200dpi画像)
X1[F1]〜X6[F6]:基準原画像信号に基づいて作成された帯域制限画像信号のF1〜F6の周波数におけるレスポンス
Y1〜Y6 : 基準変換関数のパラメータ
【0130】
そしてこのようにしてレスポンスR1〜R2が求められると下記の連立方程式(13)を解くことにより、200dpi解像度画像に対応する変換関数のパラメータA1〜A6を求める。
但し、R1〜R6 : 上記式(12)により求めたレスポンス
Z1[F1]〜Z6[F6]:200dpi解像度の原画像信号に基づいて作成された帯域制限画像信号のF1〜F6の周波数におけるレスポンス
A1〜A6 : 変換関数のパラメータ
【0131】
このようにして求められた変換関数を用いて上記第3の実施形態と同様にして200dpi解像度の画像信号に対して周波数強調処理を施すことにより、解像度に拘わらず処理済画像信号Sprocの周波数応答特性が略同一のものとすることができ、これにより原画像の解像度に拘わらず略同一の周波数応答特性を有する処理済画像信号Sprocを得ることができる。
【0132】
ここで、上記式(13)におけるZ1[F1]〜Z6[F6]の算出方法について説明する。10本/mmの解像度を有する基準原画像信号Sorg0の帯域制限画像信号は上記図8に示す特性を有するものとなる。図8に示す特性において実線で示す最高周波数帯域の特性は、図4に示す1次元フィルタのフィルタ係数をフーリエ変換した結果と、図6に示す1次元フィルタのフィルタ係数をフーリエ変換した結果とを乗算することによりボケ画像信号の周波数応答特性を得、さらにこの周波数応答特性を基準原画像信号Sorg0の周波数応答特性(全周波数帯域に亘って1の値を有する)から減算することにより求められる。さらに低周波数帯域の特性については、その周波数帯域に対応する低解像度画像信号を求めるフィルタのフィルタ係数およびボケ画像信号を求めるフィルタ係数に基づいて上記と同様にしてボケ画像信号の周波数応答特性を得、これを1つ高周波数帯域のボケ画像信号の周波数応答特性から減算することにより求められる。
【0133】
ここで、基準原画像信号Sorg0の最高周波数帯域の帯域制限画像信号のレスポンスをX1[Fi](Fi:周波数)なる関数で表し、周波数を2048によりサンプリングした場合の帯域制限画像信号のレスポンスをX1[i]なる関数とすると、Fiとiとの関係は、
i=2047×Fi/fnq (14)
但し、fnq:ナイキスト周波数
0≦i≦2047
となる。また、この対応関係を図29に示す。なお、iは関数X1[i]をテーブルとして扱った場合におけるアドレスとなる。このようにして帯域制限画像信号の全周波数帯域におけるレスポンスを関数X1[i]〜X6[i]として求め、これらの関数X1[i]〜X6[i]をテーブルとして扱うことにより、上記式(12)および式(13)におけるX1[F1]〜X6[F6]の値を式(14)を用いて容易に求めることができる。
【0134】
このようにして求められた全周波数帯域のレスポンスの関数X1[i]〜X6[i]に基づいてレスポンスZ1[F1]〜Z6[F6]を求める。なお、ここでは関数X1[i]から任意の周波数FiにおけるレスポンスZ1[Fi]を求める場合について説明する。レスポンスZ1[Fi]は200dpi解像度の原画像信号に基づいて作成された帯域制限画像信号のうち最高周波数帯域の帯域制限画像信号の周波数Fiにおけるレスポンスである。200dpi解像度の原画像信号のナイキスト周波数は4cycle/mmであり、レスポンスZ1[Fi]の周波数を2048によりサンプリングした場合のレスポンスをZ1[i]なる関数で表すものとすると、周波数Fiとiとの関係はX1[i]と同様に式(14)に示すものとなる。関数X1[i]と関数Z1[i]の関係を図30に示す。概念的には関数X1[i]と関数Z1[i]とはナイキスト周波数が異なる別の関数であるが、関数X1[i]を用いてレスポンスZ1[Fi]を近似的に求めることができる。例えば、2cycle/mmのレスポンスZ1[Fi]を求める場合は、上記式(14)により、
i=2047×2/4=1024
となるため、関数X1[i]におけるアドレスが1024となる所の値を求め、それを2cycle/mmにおけるレスポンスZ1[Fi]として求める。
【0135】
このように、関数X1[i]〜X6[i]をテーブルとして持ち、周波数強調処理を行なう原画像信号のナイキスト周波数および上記式(14)に基づいてアドレスiを求めることにより、関数X1[i]〜X6[i]のテーブルを参照して近似的にレスポンスZ1[F1]〜Z6[F6]を求めることができる。
【0136】
なお、300dpi解像度の画像を表す原画像信号Sorgに対して周波数強調処理を施す場合には、上記式(12)により基準原画像信号の帯域制限画像信号の周波数応答特性、300dpi解像度画像信号に基づく帯域制限画像信号のピーク周波数、および基準変換関数のパラメータYから300dpi解像度の原画像信号に基づく帯域制限画像信号のピーク周波数に対応する周波数でのレスポンスを求める。そして、上記式(13)により変換関数のパラメータを求めることができる。なお、300dpi解像度においてはナイキスト周波数は5.9cycle/mmであって基準原画像信号Sorg0のナイキスト周波数5cycle/mmを越えるものとなる。ここで、上記式(12)におけるX1[F1]〜X6[F6]は、0〜5cycle/mmの範囲に対する関数値と考えているため、5.9cycle/mmに対応する値がなく、式(12)におけるR1を求めることができない。したがって、300dpi解像度の画像においては、ピーク周波数として基準原画像信号から得られる帯域制限画像信号のピーク周波数を用いる。
【0137】
また、100dpi解像度の画像を表す原画像信号Sorgに対して周波数強調処理を施す場合について下記に説明する。100dpi解像度のナイキスト周波数は約2.0cycle/mm(厳密には1.97cycle/mm)であるため、帯域制限画像信号の数は5つとなる。したがって、上記式(12)、(13)は下記の式(15)、(16)に示すように変更され、これにより変換関数の5つのパラメータが求められることとなる。
但し、R1〜R5 : ピーク周波数におけるレスポンス(100dpi画像)
X1[F1]〜X6[F5]:原画像信号に基づいて作成された帯域制限画像信号のF1〜F5の周波数におけるレスポンス
Y1〜Y6 : 基準変換関数のパラメータ
但し、R1〜R5 :上記式(15)により求めたレスポンス
Z1[F1]〜Z5[F5]:100dpi解像度の原画像信号に基づいて作成された帯域制限画像信号のF1〜F5の周波数におけるレスポンス
A1〜A5 : 変換関数のパラメータ
【0138】
なお、上記第4および第4の実施形態においては、変換処理として上記式(2)に示す周波数強調処理を行っているが、周波数強調処理とダイナミックレンジ圧縮処理とを同時に行なう処理であってもよい。以下この処理を行なう装置について第5の実施形態として説明する。
【0139】
図31は、本発明の第5の実施形態による変換処理の一例としての周波数強調処理およびダイナミックレンジ圧縮処理を行なう装置の構成をボケ画像信号作成手段2とともに示す概略ブロック図である。図31に示すように、原画像信号Sorgと、フィルタリング処理手段10および補間処理手段11により作成されたボケ画像信号Suskについて、減算器21によりそれらの信号の差分が求められ、原画像信号の限られた周波数帯域の成分である帯域制限画像信号(Sorg-Sus1、Sus1-Sus2など)が作成される。このようにして求められた帯域制限画像信号は、図31に示すように第1の変換手段3aおよび第2の変換手段3bにそれぞれ入力され、各変換手段の変換器22a,22bにより処理される。
【0140】
第1の変換手段3aの変換器22aによる変換は、上述したように原画像信号Sorgの解像度に応じて算出された変換関数を使用して行なう。具体的には、例えば図32、図33に示される変換関数、あるいはこれらを組み合わせた関数を基準変換関数とし、原画像信号Sorgの解像度に拘わらず処理済画像信号Sprocの周波数応答特性が略同一のものとなるように、基準となる変換関数に基づいて解像度に応じた変換関数を算出し、算出された変換関数を使用して行なう。
【0141】
ここで、図32に示す変換関数は、振幅の大きな帯域制限画像信号を抑制するような変換を行なうものであり、周波数帯域の高い帯域制限画像信号の抑制の度合いを、周波数帯域の低い帯域制限画像信号よりも強くするものであるが、これは実際の放射線画像のエッジに含まれている高周波成分が、低周波成分に比べてその振幅が小さいということを考慮したものである。実際の放射線画像においては、かなり急峻なエッジでさえも正確な階段状にはなっておらず、高周波成分になるほどその振幅が小さくなっていることが多い。このため、各周波数成分の振幅に合わせて、周波数の高い帯域制限画像信号ほど小さい振幅から抑制を行なうことが望ましく、本関数によりそれを実現することができる。
【0142】
また図33の関数は、帯域制限画像信号を、帯域制限画像信号の絶対値に基づいて決まる、その絶対値以下の値となるように変換を行なうもので、この関数が低周波帯域を処理する関数であるほど、帯域制限画像信号の絶対値が0近傍の所定の範囲内の値である帯域制限画像信号を変換した際に得られる変換画像信号の絶対値が小さい値であることを特徴とするものである。言い換えれば、これらの関数はそれぞれ、原点を通り、関数の傾きがその関数により処理される値に拘わらず1以下であり、その関数の0近傍における傾きが、低周波帯域を処理する関数であるほど小さいことを特徴とするものである。これらの関数は、変換画像信号を積算して得られる信号を、原画像信号Sorgに加えた場合、原画像信号Sorgと加算された信号とのつなぎ目、すなわち信号の立ち上がりをより自然なものとするという効果がある。
【0143】
同様に、第2の変換手段3bの変換器22bによる変換は、例えば図34に示される関数、前述の図33の関数、あるいは図34と図33の関数を組み合わせたものを使用して行なう。上記各変換手段3a,3bにより出力された変換画像信号は、それぞれ演算器23a,23bに入力される。ここで演算器23aは周波数強調処理に必要な信号を作成するための演算を行ない、演算器23bはダイナミックレンジ圧縮処理に必要な信号を作成するための演算を行なうものである。
【0144】
演算器23aは、上述した第3の実施形態と同様の周波数強調処理を行なうものである。この演算器23aにおいては次のような処理が行われる。まず、上述したように第1の変換手段3aにより変換された帯域制限画像信号は積算される。そしてこの積算信号が求められると、さらに原画像信号Sorg の値に応じた強調度βが乗じられる。
【0145】
一方、演算器23bは、ダイナミックレンジ圧縮処理を行なうものである。この演算器23bにおいては次のような処理が行われる。まず、上述したように第2の変換手段3bにより変換された帯域制限画像信号は積算される。そして求められた積算信号は原画像信号Sorgから減じられる。さらにその減算により作成された差分信号が変換関数により変換され、ダイナミックレンジ圧縮係数が得られる。
【0146】
演算器23a,23bにより求められた信号は、それぞれ加算手段28により原画像信号Sorgに加算され処理済画像信号Sprocが得られる。
【0147】
以上の処理は、従来技術で述べたと同様の下記の式(3)により表される。
(但し、Sproc:処理済画像信号
Sorg :原画像信号
Susk(k=1〜N):ボケ画像信号
fuk(k=1〜N):第1の変換処理に使用する変換関数
fdk(k=1〜N):第2の変換処理に使用する変換関数
β(Sorg):原画像信号に基づいて定められる強調係数
D(Sorg−Fdrc):低周波成分信号に基づいて定められるダイナミックレンジ圧縮係数(DはSorg−Fdrcを変換する関数))
【0148】
ここで、図31に示す第5の実施形態においては、周波数強調処理に使用する信号とダイナミックレンジ圧縮処理に使用する信号をそれぞれ原画像信号Sorgに基づいて作成して最後に加算を行なうものであるが、原画像信号Sorgに対して周波数強調処理あるいはダイナミックレンジ圧縮処理のいずれか一方の処理を先に行ない、その結果得られた信号に対して他の一方の処理を行なうようにする場合も含むものとする。但し、一般に放射線画像の低濃度部は撮影時の撮影線量が少ない部分であるためノイズが比較的多く含まれている。これに対し、周波数強調処理では高濃度部ほど強調の度合いが高くなる濃度依存の強調処理を行っているため、原画像信号に対して直接周波数強調処理を行えばこの低濃度部は強調されず、ノイズが強調されることがない。一方、例えば原画像信号に対しダイナミックレンジ圧縮処理を施してから周波数強調処理を行なうと、低濃度部はダイナミックレンジ圧縮処理により濃度が高められることになる。つまり、強調処理においてその部分が強調されることとなり、同時にその部分に含まれるノイズが強調されてしまうことになる。したがって、望ましくは図31に示す第5の実施形態のように原画像信号Sorgに基づいて各信号を作成するのがよい。また処理時間の短縮という意味でも、2つの処理は並列に行なうことが望ましい。
【0149】
このように、ダイナミックレンジ圧縮処理を行なう場合においても、原画像信号Sorgの解像度に応じて処理済画像信号Sprocの周波数応答特性が略同一のものとなるように変換関数を算出することにより、原画像信号Sorgの解像度に拘わらず略同一の周波数応答特性を有する処理済画像信号Sprocを得ることができる。
【0150】
なお、上記第3の実施形態において述べたと同様に、第4および第5の実施形態においても、10本/mmの解像度に対応する1組の基準変換関数を用いるのみならず、表3右側に示すように、利用頻度が高い数種類の基準解像度に対応する変換関数を基準変換関数の組として用意し、基本解像度以外の所定解像度の画像を原画像とする場合には、この処理を施す原画像の所定解像度が上記数種類の基準解像度のいずれに近い値を有するか否かを判断して解像度が近い方を選択するなど、前記組から最適な組を選択し、選択した基準変換関数の組と基本解像度および所定解像度情報を用いて処理を施す画像の解像度に対応した変換関数を算出し、算出した変換関数を用いて変換処理を行なうようにしてもよい。このとき、複数の基本解像度から処理対象に適切な基本解像度を選択する方法としては、特開平10-63838号に記載の方法を用いたり、試行錯誤により設定してもよいし、あるいは、以下のような方法を用いることもできる。
【0151】
まず、上記表3に示すような基本解像度(a,b,c;a<b<c:cが最高解像度、上記例では、a=5,b=6.7 ,c=10)の定義パラメータのテーブルを用意しておき、処理対象となる原画像解像度Rsが基本解像度(a,b,c;a<b<c:cが最高解像度)と異なる場合には、基本解像度a,b,cの内、最も近い基本解像度の定義パラメータを以下のルールにしたがって選択する。
Rs>b+(c−b)/2のとき、c用のパラメータ
b+(c−b)/2≧Rs>a+(b−a)/2のとき、b用のパラメータ
b+(c−b)/2≧Rsのときa用のパラメータ
この方法を用いると、変換関数の定義パラメータの決定を簡単に行なうことができる。
【0152】
また、このように、基本解像度が複数存在し且つ各基本解像度用パラメータがそれぞれ存在するシステムとする場合には、それらの中から1つの基本解像度と基本解像度パラメータを選択し、選択した基本解像度とパラメータおよび処理対象となる画像の解像度情報を処理対象となる画像に関連付けて保存するとよい。これにより、画像をフィルムやモニターに再出力するとき、前回出力した画像のに対応する定義パラメータなどを記憶装置から読み出し、この読み出した定義パラメータを使用して処理済画像信号procを生成して、前回出力した画像と同等画質の画像を得ることができる。また、定義パラメータを決定する処理を省略できるので、短時間で画像が出力される。
【0153】
なお、上記第3および第4の実施形態において示した周波数強調処理、あるいは第5の実施形態において示したダイナミックレンジ圧縮処理を行なうに際しては、所定解像度画像信号を処理して得た処理済画像信号により表される画像の特性が、所定解像度を規定するナイキスト周波数の1/5(より好ましくは1/2)以下の周波数において、原画像信号(上記例では基準原画像信号Sorg0 など)を処理して得た処理済画像信号Sprocにより表される画像の特性と略一致するように変換関数を算出するのが好ましい。以下、この点について、強調特性と処理済画像信号が表す画像のレスポンスの関係を示した図35を参照して説明する。
【0154】
例えば、基本解像度として、5本/mm,6.7 本/mm,10本/mmが存在し、各々に対してそれぞれ変換関数群が定義されているシステムの場合において、例えば処理対象となる画像の解像度が4本/mmである場合には、最も近い基本解像度は5本/mmとなるので、5本/mm用の変換関数群を用いて、上述したようにして4本/mm用の変換関数群を計算することになる。
【0155】
ここで、各帯域制限画像信号を得る際には画像信号を1/2単位で縮小しているため、4本/mm用の画像信号における、各帯域制限画像信号のうちの最高周波数帯域信号の特性幅(例えばレスポンス0.8以上の略平坦部分)は、少なくとも1.0cycle/mm〜2.0cycle/mm位となり、各帯域制限画像信号のゲインを変換関数で制御するような変換処理を行なう場合において、例えば1.0 cycle/mm近傍の特性を基本解像度特性に一致させようとすれば2.0 cycle/mm近傍のレスポンスを持ち上げることができず2.0 cycle/mm近傍では基本解像度特性と一致しなくなり、逆に2.0 cycle/mm近傍の特性を基本解像度特性に一致させようとすれば、1.0 cycle/mm近傍のレスポンスも持ち上がるため1.0 cycle/mm近傍では基本解像度特性と一致しなくなるというように、1.0cycle/mm〜2.0cycle/mmの間のレスポンスを微調整することが難しい(できない)。
【0156】
したがって、基本解像度5本/mm用の変換関数群として、図35(A)に示すように、比較的低周波側から比較的高周波側に亘って強調するような特性となる変換関数群(パラメータ)の設定となっている場合において、4本/mm用の変換関数群を計算する際には、最高周波数帯域信号を除く低周波側の帯域信号に対する変換関数として、最高周波数帯域信号に対する変換関数によって1.0 cycle/mm近傍が持ち上がる分を補正するような値にすることができ、計算された変換関数群に基づく処理済画像信号Sprocのレスポンスを、図35(B)に示すように、1.0cycle/mm〜2.0cycle/mm近傍においても、基本解像度特性と略一致させることができる。
【0157】
しかしながら、基本解像度5本/mm用の変換関数群として、図35(C)に示すように、比較的高周波成分のみを強調するなどナイキスト周波数に近い周波数帯域で急激な特性変化を持つような特性となる変換関数群の設定となっている場合には、上述のように1.0cycle/mm〜2.0cycle/mmの間のレスポンスを微調整することが難しいという問題があるため、処理済画像信号Sprocの全周波数帯域に亘ってレスポンスを基本解像度特性と一致させるということはできない。この場合、図35(D)に示すように、視覚的に影響が大きな(画質に影響を与える度合いの大きい)低周波側のレスポンスを重視し、例えばナイキスト周波数(本例では2.0 cycle/mm)の1/5以下の周波数において、処理済画像信号Sprocのレスポンスが基本解像度特性と一致するようにするのが好ましい。また、ナイキスト周波数の1/2以下の低周波帯域成分を重視して基本解像度特性に合わせるようにすれば、よりよい結果となる。
【0158】
また、上記第3から第5の実施形態においては、入力される原画像信号Sorgの解像度に応じて変換関数を算出しているが、入力する原画像信号Sorgのレスポンスに関する特性情報に基づいて変換関数を補正してもよい。すなわち、原画像信号Sorgを取得するための装置としては、蓄積性蛍光体シートから放射線画像を読み取る装置の他、半導体センサなどもあり、得られる原画像信号Sorgのレスポンスが装置に応じて異なるものである。このため、装置に応じた原画像信号Sorgのレスポンスに関する特性情報に基づいて変換関数を補正することにより、原画像信号Sorgを取得する装置に拘わらず、一定の周波数応答特性を有する処理済画像信号Sprocを得ることができる。例えば、ある装置において得られる原画像信号Sorgの2cycle/mmにおけるレスポンスが基準となるレスポンスから40%劣っているような場合には、その旨を特性情報として本発明による画像処理装置に入力し、画像処理装置においては2cycle/mmのレスポンスが基準レスポンスとなるように変換関数を補正し、補正された変換関数により処理済画像信号Sprocを得る。
【0159】
さらに、上記第4および第5の実施形態においては、変換関数を非線形関数として帯域制限画像信号に対して変換処理を施しているが、非線形関数に限定されるものではなく、変換関数を線形関数や定数としてもよい。
【0160】
また、上記第3から第5の実施形態においては、原画像信号からフィルタリングおよび補間拡大によりボケ画像信号を求め、原画像信号およびボケ画像信号から帯域制限画像信号を作成しているが、これに限定されるものではなく、例えば原画像信号をウェーブレット変換やラプラシアンピラミッドなどの手法により多重解像度に変換し、変換された各解像度毎の画像信号からボケ画像信号を作成して帯域制限画像信号を作成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図
【図2】原画像信号をウェーブレット変換して階層毎に符号化する状態を示す図
【図3】第1の実施形態におけるボケ画像信号作成手段の構成を示す概略ブロック図
【図4】フィルタリング処理に使用されるフィルタの一例を示す図
【図5】低解像度画像信号作成処理の詳細を示す図
【図6】補間拡大処理に使用されるフィルタの一例を示す図
【図7】周波数強調処理装置の一例を示す図
【図8】帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す図(基準解像度)
【図9】帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す図(1/2解像度)
【図10】帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す図(1/4解像度)
【図11】帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す図(1/8解像度)
【図12】帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す図(1/16解像度)
【図13】第1の実施形態の動作を示すフローチャート
【図14】基準解像度画像から得られる6つのボケ画像信号と、最低解像度から所定解像度に最も近い周波数帯域までの低解像度画像から得られる低解像度ボケ画像信号との対応関係を示す図
【図15】基準解像度画像から得られる6つの帯域制限画像信号と、各解像度画像に基づく原画像信号および低解像度ボケ画像信号から得られる低解像度帯域制限画像信号との対応関係を示す図
【図16】基準解像度画像と各解像度画像とにおける変換関数の対応関係を示す図
【図17】第2の実施形態におけるボケ画像信号作成手段の構成を示す概略ブロック図
【図18】基準解像度の画像と拡大画像における、各帯域制限画像信号の対応関係を示す図
【図19】基準解像度の画像と拡大画像における、各変換関数の対応関係を示す図
【図20】本発明の第3の実施形態による画像処理装置の構成を示す概略ブロック図
【図21】処理済画像信号の周波数応答特性を示す図
【図22】帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す図(300dpi)
【図23】第3の実施形態により得られた処理済画像信号の周波数応答特性を示す図
【図24】第3の実施形態の処理を示すフローチャート
【図25】変換関数の選択状態を示す図
【図26】解像度に応じた帯域制限画像信号の数を示す図
【図27】帯域制限画像信号の周波数応答特性を示す概略図(200dpi)
【図28】処理済画像信号の周波数応答特性を示す図
【図29】レスポンスX1[F1]と関数X1[i]との対応関係を示す図
【図30】関数X1[i]と関数Z1[i]との関係を示す図
【図31】ダイナミックレンジ圧縮処理装置の一例を示す図
【図32】第1の変換手段における変換関数の一例を表す図
【図33】第1の変換手段における変換関数の他の例を表す図
【図34】第2の変換手段における変換関数の一例を表す図
【図35】強調特性と処理済画像信号が表す画像のレスポンスの関係を示す図
【符号の説明】
1 画像処理装置
2 ボケ画像信号作成手段
3 周波数強調処理手段、変換処理手段
4 パラメータ設定手段
5 拡大率入力手段
6 拡大縮小手段
10 フィルタリング処理手段
11,31 補間処理手段
21 減算器
22 変換器
23 演算器
30 復号化手段
40 変換関数算出手段
50 解像度情報入力手段
Claims (27)
- 入力された画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成し、該各帯域制限画像信号に対応して設定された複数の変換関数に基づいて変換処理を施して変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて、前記入力された画像信号に対して所定の処理を施して処理済画像信号を得る画像処理方法において、
基準解像度を有する基準解像度画像について前記変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての前記各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を用意し、
前記基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が入力されたとき、前記基準解像度画像についての前記各帯域制限画像信号の周波数帯域が前記処理用画像についての前記各帯域制限画像信号の周波数帯域に最も近くなるように前記基準変換関数を相対移動させ、この相対移動させた基準変換関数を前記処理用画像についての変換関数として設定することを特徴とする画像処理方法。 - 前記処理用画像についての変換関数と該変換関数に対応する前記各帯域制限画像信号の組数を、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度の2−(p+1)倍から2−p倍(pは正の整数)の範囲内にあるときにはp個だけ減少させ、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度の2q−1 倍から2q 倍(qは正の整数)の範囲内にあるときにはq個だけ増加させることを特徴とする請求項1記載の画像処理方法。
- 前記処理用画像の解像度が前記基準解像度よりも低い場合は、前記複数の変換関数のうち前記処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、前記変換処理を行なう変換関数として設定することを特徴とする請求項1または2記載の画像処理方法。
- 前記基準解像度画像の画像サイズとは異なる画像サイズの出力画像を得る際には、
前記出力画像の画像サイズに近い、前記基準解像度画像の画像サイズを22k(kは整数)倍した変倍画像を得、該変倍画像を前記処理用画像として前記変換処理および前記所定の処理を施し、
その後、前記処理済画像信号が表す前記22k倍の変倍画像に対して、前記出力画像の画像サイズと等しくなるようにさらに変倍処理を施すことを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の画像処理方法。 - 前記処理用画像の解像度に関する情報を取得し、該情報に基づいて、前記処理用画像についての変換関数を設定することを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の画像処理方法。
- 前記入力された画像信号に基づいて互いに周波数応答特性が異なる複数のボケ画像信号を作成し、該複数のボケ画像信号および前記入力された画像信号に基づいて前記帯域制限画像信号を作成することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の画像処理方法。
- 前記基準変換関数は、非線形関数であることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の画像処理方法。
- 前記所定の処理は、周波数強調処理であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の画像処理方法。
- 前記所定の処理は、ダイナミックレンジ圧縮処理であることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の画像処理方法。
- 入力された画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成する画像信号作成手段と、該各帯域制限画像信号に対応する複数の変換関数を設定し、設定した変換関数に基づいて変換処理を施して変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて、前記入力された画像信号に対して所定の処理を施して処理済画像信号を得る変換処理手段とを備えた画像処理装置において、
前記変換処理手段が、基準解像度を有する基準解像度画像について前記変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての前記各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を保持すると共に、前記基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が前記画像信号作成手段に入力されたとき、前記基準変換関数に対応する前記各帯域制限画像信号の周波数帯域が前記処理用画像についての前記各帯域制限画像信号の周波数帯域に最も近くなるように前記基準変換関数を相対移動させ、この相対移動させた基準変換関数を前記処理用画像についての変換関数として設定するものであることを特徴とする画像処理装置。 - 前記変換処理手段が、前記処理用画像についての変換関数と該変換関数に対応する前記各帯域制限画像信号の組数を、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度の2−(p+1)倍から2−p倍(pは正の整数)の範囲内にあるときにはp個だけ減少させ、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度の2q−1 倍から2q 倍(qは正の整数)の範囲内にあるときにはq個だけ増加させるものであることを特徴とする請求項10記載の画像処理装置。
- 前記変換処理手段が、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度よりも低い場合は、前記複数の変換関数のうち前記処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、前記変換処理を行なう変換関数として設定するものであることを特徴とする請求項10または11記載の画像処理装置。
- 前記基準解像度画像の画像サイズとは異なる大きさの出力画像の画像サイズに近い前記基準解像度画像の22k(kは整数)倍となる第1の倍率と、該第1の倍率で変倍された画像を該画像の画像サイズが前記出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍するための第2の倍率とを算出する倍率算出手段と、
前記第1の倍率により前記基準解像度画像を変倍処理して前記処理用画像を得る第1の変倍処理手段と、
前記変倍処理を行なって得た処理用画像を表す画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成し、前記複数の変換関数のうち前記処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、前記変換処理を行なう変換関数として設定して該変換処理を行なって変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて前記処理済画像信号を得るよう前記画像信号作成手段および前記変換処理手段を制御する制御手段と、
該処理済画像信号を前記第2の倍率によりさらに変倍処理して前記出力画像を表す変倍処理済画像信号を得る第2の変倍処理手段とを備えたことを特徴とする画像処理装置。 - 前記処理用画像の解像度に関する情報を取得する解像度情報取得手段をさらに備え、前記変換処理手段は、該解像度情報取得手段により取得された情報に基づいて、前記処理用画像についての変換関数を設定するものであることを特徴とする請求項10から13いずれか1項記載の画像処理装置。
- 前記画像信号作成手段は、前記入力された画像信号に基づいて互いに周波数応答特性が異なる複数のボケ画像信号を作成し、該複数のボケ画像信号および前記入力された画像信号に基づいて前記帯域制限画像信号を作成するものであることを特徴とする請求項10から14いずれか1項記載の画像処理装置。
- 前記基準変換関数は、非線形関数であることを特徴とする請求項10から15いずれか1項記載の画像処理装置。
- 前記所定の処理は、周波数強調処理であることを特徴とする請求項10から16いずれか1項記載の画像処理装置。
- 前記所定の処理は、ダイナミックレンジ圧縮処理であることを特徴とする請求項10から16いずれか1項記載の画像処理装置。
- 入力された画像信号から互いに異なる帯域制限特性を有する複数の帯域制限画像信号を作成する手順と、該各帯域制限画像信号に対応して設定された複数の変換関数に基づいて変換処理を施して変換画像信号を得、該変換画像信号に基づいて、前記入力された画像信号に対して所定の処理を施して処理済画像信号を得る手順とを有する画像処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体において、
基準解像度を有する基準解像度画像について前記変換処理を行なう際に用いられる、該基準解像度画像についての前記各帯域制限画像信号に対応する基準変換関数を用意する手順と、
前記基準解像度とは異なる解像度を有する処理用画像を表す画像信号が入力されたとき、前記基準解像度画像についての前記各帯域制限画像信号の周波数帯域が前記処理用画像についての前記各帯域制限画像信号の周波数帯域に最も近くなるように前記基準変換関数を相対移動させ、この相対移動させた基準変換関数を前記処理用画像についての変換関数として設定する手順を有することを特徴とするコンピュータ読取り可能な記録媒体。 - 前記変換関数を設定する手順は、前記処理用画像についての変換関数と該変換関数に対応する前記各帯域制限画像信号の組数を、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度の2−(p+1)倍から2−p倍(pは正の整数)の範囲内にあるときにはp個だけ減少させ、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度の2q−1 倍から2q 倍(qは正の整数)の範囲内にあるときにはq個だけ増加させる手順であることを特徴とする請求項19記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
- 前記変換関数を設定する手順は、前記処理用画像の解像度が前記基準解像度よりも低い場合は、前記複数の変換関数のうち前記処理用画像の解像度以下の周波数帯域に対応する変換関数を、前記変換処理を行なう変換関数として設定する手順であることを特徴とする請求項19または20記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
- 前記帯域制限画像信号を作成する手順は、前記基準解像度画像の画像サイズとは異なる大きさの出力画像の画像サイズに近い前記基準解像度画像の22k(kは整数)倍となる第1の倍率と、該第1の倍率で変倍された画像を該画像の画像サイズが前記出力画像の画像サイズと等しくなるように変倍するための第2の倍率とを算出する手順と、
前記第1の倍率により前記基準解像度画像を変倍処理して変倍画像を得、該変倍画像を前記処理用画像として前記変換処理および前記所定の処理を施させる手順と、
前記処理済画像信号を前記第2の倍率によりさらに変倍処理して前記出力画像を表す変倍処理済画像信号を得る手順とをさらに有することを特徴とする請求項19から21いずれか1項記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。 - 前記処理用画像の解像度に関する情報を取得する手順をさらに有し、前記変換関数を設定する手順が、該情報に基づいて、前記処理用画像についての変換関数を設定する手順であることを特徴とする請求項19から22いずれか1項記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
- 前記複数の画像信号を作成する手順は、前記入力された画像信号に基づいて互いに周波数応答特性が異なる複数のボケ画像信号を作成し、該複数のボケ画像信号および前記入力された画像信号に基づいて前記帯域制限画像信号を作成する手順であることを特徴とする請求項19から23いずれか1項記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
- 前記基準変換関数は、非線形関数であることを特徴とする請求項19から24いずれか1項記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
- 前記所定の処理は、周波数強調処理であることを特徴とする請求項19から25いずれか1項記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
- 前記所定の処理は、ダイナミックレンジ圧縮処理であることを特徴とする請求項19から25いずれか1項記載のコンピュータ読取り可能な記録媒体。
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