JP4261657B2 - カラーフィルタの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カラーテレビ、パーソナルコンピュータ、パチンコ遊戯台等に使用されているカラー液晶ディスプレイの構成部材であるカラーフィルタ及びその製造方法に関し、特に、インクジェット方式を利用して各色の着色部を形成するカラーフィルタ及びその製造方法に関する。さらに、本発明は、該カラーフィルタを用いた液晶素子基板と、該基板を用いて構成される液晶素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータの発達、特に携帯用パーソナルコンピュータの発達に伴い、液晶ディスプレイ、特にカラー液晶ディスプレイの需要が増加する傾向にある。しかしながら、さらなる普及のためにはコストダウンが必要であり、特にコスト的に比重の重いカラーフィルタのコストダウンに対する要求が高まっている。
【0003】
従来から、カラーフィルタの要求特性を満足しつつ、上記の要求に応えるべく種々の方法が試みられているが、未だ全ての要求特性を満足する方法は確立されていない。以下にそれぞれの方法を説明する。
【0004】
第一の方法が染色法である。染色法は、先ずガラス基板上に染色用の材料である水溶性の高分子材料を形成し、これをフォトリソグラフィ工程により所望の形状にパターニングした後、得られたパターンを染色浴に浸漬して着色されたパターンを得る。これを3回繰り返すことにより、R(赤)、G(緑)、B(青)の着色層を形成する。
【0005】
第二の方法は顔料分散法であり、近年最も盛んに行なわれている。この方法は、先ず基板上に顔料を分散した感光性樹脂層を形成し、これをパターニングすることにより単色のパターンを得る。さらに、この工程を3回繰り返すことにより、R、G、Bの着色層を形成する。
【0006】
第三の方法としては電着法がある。この方法は、先ず基板上に透明電極をパターニングし、顔料、樹脂、電解液等の入った電着塗装液に浸漬して第一の色を電着する。この工程を3回繰り返してR、G、Bの着色層を形成し、最後に焼成するものである。
【0007】
第四の方法としては、熱硬化型の樹脂に顔料を分散させ、印刷を3回繰り返すことにより、R、G、Bを塗り分けた後、樹脂を熱硬化させることにより着色層を形成するものである。
【0008】
また、上記いずれの方法においても、着色層の上に保護層を形成するのが一般的である。
【0009】
これらの方法に共通している点は、R、G、Bの3色の着色層を形成するために、同一の工程を3回繰り返す必要があり、コスト高になることである。また、工程が多いほど歩留が低下するという問題を有している。さらに、電着法においては、形成可能なパターン形状が限定されるため、現状の技術ではTFT(薄膜トランジスタ)を用いたアクティブマトリクスタイプ(いわゆるTFTタイプ)には適用困難である。また、印刷法は、解像性が悪いため、ファインピッチのパターンの形成には不向きである。
【0010】
上記の製造方法の問題点を補うべく、特開昭59−75205号公報、特開昭63−235901号公報、特開平1−217302号公報等にインクジェット方式を用いたカラーフィルタの製造方法が提案されている。
【0011】
インクジェット方式を用いたカラーフィルタの製造方法においては、
(1)製造プロセスが簡略
(2)低コスト
(3)染料を用いることができるため、着色材の選択幅が広い
という長所がある。染料は顔料に比較して種類が多く、使用目的に合わせて任意の色再現が可能である。さらに、顔料を用いたカラーフィルタに比較して、染料を用いたカラーフィルタはコントラストが高いという特徴がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、染料は顔料に比較して、一般的に、
(A)耐熱性が低い
(B)水や有機溶剤に対する溶解性が高い
という短所がある。即ち、染料を用いてカラーフィルタを作製した場合に、それぞれ以下のような問題点を生じる。
【0013】
(A)着色部上にスピンコート等により保護層を形成する際に、保護層材料中に含まれる有機溶剤等により、着色部と保護層材料との界面において染料のマイグレーションを生じる場合があり、その場合には、着色部と保護層との密着性が低下する、或いは、保護層が着色してしまう等の障害が発生する可能性がある。
(B)着色部上に透明導電膜を形成する際に、高温下で酸素含有雰囲気中に曝されるため、着色部の表面層において染料が酸化してしまう場合がある。染料の酸化が発生した場合、色調が変化する、或いはコントラストが低下してしまう等の障害が発生する可能性がある。
【0014】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、インクジェット方式によるカラーフィルタにおいて、保護層や透明導電膜形成工程の影響を受けない着色部を形成することにあり、特に、染料を用いた場合の保護層の着色や密着性の低下、或いは透明導電膜形成によるコントラスト低下などを防止し、カラーフィルタ特性に優れたカラーフィルタを提供し、さらには該カラーフィルタを用いた信頼性の高い液晶素子基板及びカラー表示特性に優れた液晶素子を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、透明基板上に遮光層を形成する工程と、該遮光層上を含む透明基板上に、光照射或いは光照射と熱処理によってインク吸収性が変化する感光性樹脂組成物層を形成する工程と、該感光性樹脂組成物層をパターン露光し、遮光層の少なくとも開口部に対応する領域にインク吸収性を有する被着色部を形成し、該被着色部以外の領域に該被着色部よりもインク吸収性の低い非着色部を形成する工程と、上記被着色部にインクジェット方式により着色インクを付与して着色する工程と、着色された被着色部に光照射或いは熱処理を施して硬化させ、着色部を形成する工程と、上記着色部内の深さ方向の着色材の濃度分布が透明基板側で高くなるように、上記着色部を洗浄する工程と、を有することを特徴とする
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態の工程図である。図1において、(a)〜(g)は下記工程(a)〜(g)に対応する断面模式図である。以下、各工程について説明する。
【0020】
工程(a)
透明基板1上に開口部を有する遮光層(通常ブラックマトリクスと呼ばれる)2を形成する。本発明において用いられる透明基板1としては、一般にガラス基板が用いられるが、液晶素子用カラーフィルタとしての透明性や機械的強度等の必要特性を有するものであれば、ガラス基板に限定されるものではなく、各種プラスチック基板なども用いることができる。
【0021】
また、遮光層2は、通常0.1〜0.5μmの厚さを有し、クロム等の金属をスパッタ法或いは蒸着等により成膜し、所定の形状にパターニングして形成する。
【0022】
工程(b)
遮光層2上を含む透明基板1上に、光照射或いは光照射と熱処理によってインク吸収性が変化する感光性樹脂組成物によりインク受容層3を形成する。本発明において用いられる感光性樹脂組成物としては、光照射或いは光照射と熱処理によってインク吸収性が消失或いは減少するネガ型と、発現或いは増加するポジ型のいずれでも用いることができる。
【0023】
ネガ型の感光性樹脂組成物の具体例としては、例えば基材樹脂としては、水酸基、カルボキシル基、アルコキシ基、アミド基等の官能基を有するアクリル系樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、またはヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体或いはそれらの変性物、またはポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール等が挙げられる。さらに、これらの樹脂を光照射或いは光照射と熱処理により反応させるために架橋剤、光開始剤を用いることも可能である。具体的には、架橋剤としては、メチロール化メラミン等のメラミン誘導体が、また光開始剤としては重クロム酸塩、ビスアジド化合物、ラジカル系開始剤、カチオン系開始剤、アニオン系開始剤等が使用可能である。また、これらの感光剤を複数種混合して、或いは他の増感剤と組み合わせて使用することもできる。
【0024】
また、ポジ型の感光性樹脂組成物の具体例としては、例えばポリシラン等のジシラン結合を有するシリコーン系樹脂、またはヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、クレゾールノボラック樹脂、ポリパラヒドロキシスチレン等の水酸基含有樹脂とナフトキノンジアジド類の混合物、または前記水酸基含有樹脂の水酸基をアセチル基、トリメリルシリル基等でブロックした樹脂とカチオン系光開始剤の混合物等が使用可能である。
【0025】
上記感光性樹脂組成物は、スピンコート、ロールコート、バーコート、スプレーコート、デイップコート等の塗布方法により透明基板1上に塗布し、必要に応じてプリベークを施してインク受容層3とすれば良く、その形成方法は、特に限定されるものではない。
【0026】
工程(c)
インク受容層3をフォトマスク4を用いてパターン露光し、インク吸収性の低い(或いはない)非着色部5とインク吸収性の高い(或いは有する)被着色部6を形成する。本実施形態は、インク受容層を露光によりインク吸収性を消失するネガ型の感光性樹脂組成物で形成した場合を示す。当該工程により、遮光層2上に非着色部5を形成する。非着色部5は隣接する被着色部6間でのインクの混色を防止するために設けるものである。
【0027】
非着色部5は遮光層2上に形成され、特に、遮光層2の幅よりも狭くなるように形成することにより、後述する着色部8が遮光層2と重なる位置まで延出して形成され、白抜けが防止される。。
【0028】
工程(d)
インクジェット記録装置(不図示)を用いて、R、G、Bの各着色インク5を所定の位置の被着色部6に付与する。本発明において着色インクとしては、染料系及び顔料系のいずれでも用いることができるが、本発明は特に染料を用いた場合の問題点を解決したものであり、染料系のインクが好ましく用いられる。
【0029】
また、インクジェット用のインクの好適な媒体としては、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒であり、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用することが好ましい。
【0030】
また、その他併用し得る水溶性有機溶剤の例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、ter−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類、アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン類またはケトアルコール類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜4個の炭素を含有するアルキレングリコール類、グリセリン類、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン等が挙げられる。これらの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル、N−メチル−2−ピロリドン等が好適に用いられる。
【0031】
また、上記成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等を添加しても良い。
【0032】
また、インクは常温で液体のものに限らず、室温やそれ以下で固化するインクであって、室温で軟化するもの、もしくは液体であるもの、或いは通常のインクジェット方式ではインク自体を30℃〜70℃の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定な範囲に制御していることから、インク吐出時にインクが液状をなすものが好適に用いられる。
【0033】
さらに、インクジェット方式としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェットタイプ、或いは圧電素子を用いたピエゾジェットタイプ等が使用可能であり、着色面積及び着色パターンは任意に設定することができる。
【0034】
工程(e)
着色インク7が十分に被着色部6内に浸透した後、必要に応じて乾燥処理を施し、さらに、光照射或いは熱処理を施して着色された被着色部を硬化させ、着色部8を形成する。
【0035】
工程(f)
着色部8の表面層に存在する着色材を除去するために洗浄処理を行なう。洗浄に用いる洗浄液としては、着色材を溶解可能な液体であり、着色材として染料を用いた場合には、純水或いはアルカリ水溶液等が有効に使用可能である。さらに、洗浄方法としては、ディップ洗浄、スピン洗浄、シャワー洗浄等の洗浄方法が可能であり、特に限定されるものではない。
【0036】
当該工程によって、着色部8の表面層の着色材が洗浄除去されるため、着色部8内には深さ方向に着色材の濃度分布が発生し、透明基板1側でその濃度が高くなる。
【0037】
工程(g)
必要に応じて保護層9を形成する。保護層9としては、光硬化タイプ、熱硬化タイプ或いは光熱併用タイプの樹脂材料、蒸着、スパッタ等によって形成された無機膜等を用いることができ、カラーフィルタとした場合の透明性を有し、その後の透明導電膜形成プロセス、配向膜形成プロセス等に耐え得るものであれば使用可能である。
【0038】
本発明においては、着色部8の表面層の着色部濃度が低いため、該着色部6からの着色材のマイグレーションが低減し、保護層9を密着性良く形成することができる。また該保護層9を形成せずに、着色部8上に直接透明導電膜を形成して液晶素子を構成する場合でも、透明導電膜形成工程における酸素含有雰囲気による着色部8表面層の染料酸化による色調変化が低減される。
【0039】
本発明の液晶素子基板は、図1(f)或いは(g)に示されるカラーフィルタ上に、透明導電膜を形成してなるものである。前記したように、本発明のカラーフィルタは、着色部の表面層の着色材が洗浄除去されて濃度が低くなっているため、その上に透明導電膜を形成してなる本発明の液晶素子基板は、着色材の影響を受けにくく、保護層と着色部の密着性が高い、或いは、透明導電膜形成時の着色材の酸化による着色部の色調変化の低減した液晶素子基板である。
【0040】
次に、本発明のカラーフィルタを用いて構成した液晶素子について説明する。図2は本発明の液晶素子の一実施形態であって、アクティブマトリクス型液晶素子の一例の断面模式図である。図2において、12は共通電極、13は配向膜、20は基板、22は画素電極、23は配向膜、14は液晶層であり、図1と同じ部材には同じ符号を付した。
【0041】
カラー表示の液晶素子は、一般的にカラーフィルタ側基板(1)とTFT基板(20)とを合わせ込み、液晶化合物14を封入することにより形成される。液晶素子の一方の基板の内側に、TFT(不図示)と透明な画素電極22がマトリクス状に形成される。また、もう一方の基板1の内側には、画素電極22に対向する位置にR、G、Bの各着色部8が配列するようにカラーフィルタ層が設置され、その上に透明な共通電極12が一面に形成される。さらに、両基板の面内には配向膜13、23が形成されており、これらをラビング処理することにより液晶分子を一定方向に配列させることができる。
【0042】
基板1、20の外側にはそれぞれ偏光板(不図示)が接着され、バックライトとして一般的に蛍光灯(不図示)と散乱板(不図示)の組み合わせを用い、液晶化合物をバックライト光の透過率を変化させる光シャッターとして機能させることにより表示を行なう。
【0043】
本発明の液晶素子においては、本発明のカラーフィルタを用いて構成していれば良く、他の構成部材については、その素材や製法等、従来の液晶素子の技術を適用することが可能である。
【0044】
【実施例】
(実施例1)
ガラス基板上に厚さ0.15μmのクロムからなる遮光層(ブラックマトリクス)を形成し、その上に、下記に示す組成からなるアクリル系共重合体97重量部
メチルメタクリレート 50重量部
ヒドロキシエチルメタクリレート 30重量部
N−メチロールアクリルアミド 20重量部
及びトリフェニルスルフォニウムヘキサフルオフルオロアンチモネート3重量部を、エチルセロソルブに溶解してなる感光性樹脂組成物を膜厚2μmとなるようにスピンコートし、90℃で20分間のプリベークを行なってインク受容層を形成した。
【0045】
次いで、ブラックマトリクスの幅よりも狭いストライプ状の開口部を有するフォトマスクを介して、ブラックマトリクス上のインク受容層の一部をストライプ状にパターン露光し、さらに120℃のホットプレート上で1分間の熱処理を施し、インク受容層に被着色部と非着色部を形成した。
【0046】
インクジェット記録装置を用い、以下の組成からなるR、G、Bの各染料系インクを所定の位置の被着色部に付与した。
【0047】
(インク組成)
Rインク
C.I.アシッドオレンジ148 6重量部
C.I.アシッドレッド289 1重量部
ジエチレングリコール 30重量部
イオン交換水 63重量部
Gインク
C.I.アシッドイエロー23 3重量部
亜鉛フタロシアニンスルホアミド 3重量部
ジエチレングリコール 30重量部
イオン交換水 64重量部
Bインク
C.I.ダイレクトブルー199 6重量部
ジエチレングリコール 30重量部
イオン交換水 64重量部
【0048】
インクが十分被着色部に浸透した後、90℃で5分間のインク乾燥を行ない、さらに200℃で60分間の熱処理を行なってインク受容層全体を硬化させた。
【0049】
次に、スピン洗浄にて純水を用いて着色部の洗浄処理を行なった。図3〜図5に、洗浄処理前後の着色部における膜厚方向の染料濃度の測定結果を示す。染料濃度の測定は、SIMS(2次イオン質量分析装置)を用い、各染料分子中に含まれる金属原子の量(Rはクロム、Gは亜鉛、Bは銅)を測定し、炭素原子の量と比較することにより規格化された濃度として求めた。図3〜図5から明らかなように、R、G、Bの着色部はいずれも洗浄処理後には表面層における染料濃度が減少している。
【0050】
次に、着色部上に二液型の熱硬化型樹脂組成物(JSR社製「SS6699G」)を膜厚が1μmとなるようにスピンコートし、90℃で30分間のプリベークを行なった後、250℃で60分間の熱処理を行なって保護層を形成した。
【0051】
このようにして作製されたカラーフィルタを、顕微分光測定装置(オリンパス社製)を用いて着色部の色度測定を行なったところ、異常は観察されなかった。また、基盤目剥離試験を行なったところ、保護層の剥離は生じなかった。
【0052】
さらに、上記保護層上に、厚さ0.12μmのITO膜を形成し、液晶素子基板とした。この基板について再び顕微分光測定装置を用いて着色部の色度測定を行なったところ、異常は観察されなかった。また、基盤目剥離試験を行なったところ、保護層の剥離は生じなかった。
【0053】
(実施例2)
洗浄液として、アルカリ水溶液(pH=11)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。得られたカラーフィルタについて、実施例1と同様に顕微分光測定装置を用いて着色部の色度測定を行なったところ、異常は観察されなかった。また、基盤目剥離試験を行なったところ、保護層の剥離は生じなかった。
【0054】
(実施例3)
保護層を形成せずに着色部上に直接ITO膜を形成する以外は、実施例1と同様にして液晶素子基板を作製した。得られた液晶素子基板について、実施例1と同様に顕微分光測定装置を用いて着色部の色度測定を行なったところ、異常は観察されなかった。また、基盤目剥離試験を行なったところ、ITO膜の剥離は生じなかった。
【0055】
(比較例1)
洗浄処理を行なわない以外は、実施例1と同様にしてカラーフィルタを作製した。得られたカラーフィルタについて、実施例1と同様に顕微分光測定装置を用いて着色部の色度測定を行なったところ、染料の保護層中へのマイグレーションに起因するスペクトルの変化が観察された。また、基盤目剥離試験を行なったところ、保護層の剥離を生じた。
【0056】
(比較例2)
洗浄処理を行なわない以外は、実施例3と同様にして液晶素子基板を作製した。得られた液晶素子基板について、実施例3と同様に顕微分光測定装置を用いて着色部の色度測定を行なったところ、染料の酸化に起因するスペクトルの変化が観察された。また、基盤目剥離試験を行なったところ、ITO膜の剥離を生じた。
【0057】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明においては、カラーフィルタの着色部の表面層の着色材濃度が低減されているため、該着色部上に保護層を形成した場合でも、これらの界面における着色材のマイグレーションが防止され、保護層の密着性低下が防止される。また、保護層の着色も防止される。さらに、着色部上に透明導電膜を形成する場合でも、当該形成工程における酸素含有領域に曝される着色材が少ないため、該着色材の酸化による色調変化が抑えられ、コントラストの低下が防止される。
【0058】
よって、本発明によれば、保護層と着色部の密着性が高く、保護層の着色のない良好なカラーフィルタ、及び、色調変化がなく高コントラストな液晶素子基板が提供され、カラー表示特性に優れた信頼性の高い液晶素子が実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカラーフィルタの製造方法の一実施形態の工程図である。
【図2】本発明の液晶素子の一実施形態の断面模式図である。
【図3】本発明の実施例1におけるRの着色部の染料濃度の測定結果を示す図である。
【図4】本発明の実施例1におけるGの着色部の染料濃度の測定結果を示す図である。
【図5】本発明の実施例1におけるBの着色部の染料濃度の測定結果を示す図である。
【符号の説明】
1 透明基板
2 遮光層
3 インク受容層
4 フォトマスク
5 非着色部
6 被着色部
7 着色インク
8 着色部
9 保護層
12 共通電極
13 配向膜
14 液晶層
20 基板
22 画素電極
23 配向膜
Claims (3)
- 透明基板上に遮光層を形成する工程と、
該遮光層上を含む透明基板上に、光照射或いは光照射と熱処理によってインク吸収性が変化する感光性樹脂組成物によりインク受容層を形成する工程と、
上記インク受容層をパターン露光し、遮光層の少なくとも開口部に対応する領域にインク吸収性を有する被着色部を形成し、該被着色部以外の領域に該被着色部よりもインク吸収性の低い非着色部を形成する工程と、
上記被着色部にインクジェット方式により着色インクを付与して着色する工程と、
着色された被着色部に光照射或いは熱処理を施して硬化させ、着色部を形成する工程と、
上記着色部内の深さ方向の着色材の濃度分布が透明基板側で高くなるように、上記着色部を洗浄する工程と、
を有することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。 - 上記着色部の洗浄工程において、液体洗浄剤を用いる請求項1記載のカラーフィルタの製造方法。
- 上記着色インクが染料を含有し、上記液体洗浄剤が水である請求項2記載のカラーフィルタの製造方法。
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