JP4254926B2 - 衝撃吸収柵 - Google Patents
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Description
この衝撃吸収柵は所定の間隔で設けた複数の支柱aの間に亘って複数の水平ロープ材bを張設すると共に、金網等の網状物cを張り巡らし、これらの複数の水平ロープ材bと網状物cとにより落石fを受け止めるためのネットを構成している。
また、水平ロープ材bの間隔を一定に保持するための間隔保持材gが支柱a間に数箇所設けられている。
さらに、この種の柵のエネルギーの吸収性能を高める方法として、水平ロープ材bに緩衝機能を有する水平面内でループ部を形成する方法や、緩衝機能付きの各種の緩衝装置を支柱aや水平ロープ材bに設ける方法が提案されている。
(1)従来の衝撃吸収柵はネットdを構成する水平ロープ材bの間が間隔保持部材gで連結され、落石fの衝突時に水平ロープ材bの間隔が一定に保持される。このため、落石fがネットdに衝突すると、横断面はネットdが尻すぼみ形状となり、延長方向には鼓状となって、受撃前のネットdの高さh1と比べて受撃後の高さh2が小さくなる。すなわち、落石fの衝突によりネットdの有効高さh3が減少する。
そのため一度落石fを受け止めると、その後に発生した落石fがネットdの上部を飛び越えたり、或いはネットdの下部と地面との間にできた隙間をくぐり抜けたりする危険性がある。
(2)従来の衝撃吸収柵の水平ロープ材bは、間隔保持材gで間隔が一定に保たれており、落石fが衝突した場合にネットdが十分に伸長することができなかった。このため、ネットdによるエネルギー吸収を十分に期待することができなかった。また、間隔保持材gに過大な張力が作用して破断すると落石fが通過する危険もあった。
(3)エネルギーの吸収性能を増大させる方法のひとつとして、水平ロープ材bの撓み変形量を大きくする方法があるが、この方法では、水平ロープ材bの撓み変形量eを大きくすると、道路や鉄道等の建築限界を侵す危険性がある。
(4)従来の衝撃吸収柵は、落石が支柱間の中央または支柱に衝突する場合に対して設計されている。支柱近くのネット面に落石が衝突した場合には、撓み量が制限されるため大きい衝撃力が発生し、ワイヤロープが容易に破断する。
(5)従来の衝撃吸収柵の設計においては、全長が30m程度以上の水平ロープ材bを使用し、落石エネルギーの大部分を、水平ロープ材bの弾性変形によるエネルギー吸収に依存している。そのため水平ロープ材bの長さ(衝撃吸収柵の長さ)が短い現場の場合には、従来の設計手法をそのまま適用できないので設計が非常に難しくなる。
(1)落石の衝突による有効高さh3の減少を抑制できること。
(2)高強度のネットを使用して、ネットのエネルギー吸収分担率を向上できること。
(3)ロープ材の撓み量を抑制しつつ、エネルギーの吸収性能の向上を図ること。
(4)衝撃吸収柵の設計が容易であること。
(5)コストの大幅削減が可能なこと。
第2の発明は、所定の間隔を隔てて立設した支柱間にネットを横架した衝撃吸収柵であって、前記ネットは隣り合う支柱の間に、支柱の途中を除いた各支柱の上下部の何れか片方または両方に設けた係留部にスライド可能に係留して掛け渡した、支柱の間隔の二倍を超える長さのループ材と、支柱の片側に該支柱と交差して配置した補助ロープ材とを具備し、隣り合う支柱の間に略台形のループを形成するように、隣り合うループ材とループ材の間を前記補助ロープ材で連結したことを特徴とする、衝撃吸収柵を提供するものである。
第3の発明は、前記した前記した第1または第2の発明において、ループ材に緩衝装置を介装したことを特徴とする、衝撃吸収柵を提供するものである。
第4の発明は、前記した第1乃至第3発明の何れか1つにおいて、補助ロープ材に緩衝装置を介装したことを特徴とする、衝撃吸収柵を提供するものである。
第5の発明は、前記した第1乃至第3発明の何れか1つにおいて、ループ材と補助ロープの交差部に緩衝装置を設けたことを特徴とする、衝撃吸収柵を提供するものである。
(1)従来の衝撃吸収柵と比べて、落石衝突時のネットの有効高さの減少を大幅に抑止できる。これにより、衝撃吸収柵の設計高さを小さくでき、経済的な衝撃吸収柵を提供できる。
(2)従来の衝撃吸収柵と比べて、ループ材の撓み変形量を低減できるので、道路際等のような撓み変形量に制限がある現場への設置に好適である。
(3)ネットのエネルギー吸収分担率の向上可能である。
(4)落石がネット面のいかなる位置に衝突した場合でも、エネルギーの吸収効果が大きく、設計落石エネルギー以上の衝撃エネルギーの吸収が可能である。
(5)ループ材の撓み変形量を抑制しつつ、エネルギーの吸収性能の向上を図ることができる。
(6)隣り合う支柱の間にループ材を掛け渡すだけであるから、柵の構成部品も少なく、また柵の構築も簡単に済むため、コストの大幅削減が可能となる。
(7)補助ロープ材とループ材を組み合わせて略台形に形成したループ材の斜辺が、ループ材の長辺に引っ張り力を発生させて、上部ではネットを引き上げ、また、下部ではネットを引き下げるので、ネットの有効高さの減少抑制効果を増強することができる。
[構成]
<1>衝撃吸収柵の概要
図1,2図に示すように本発明に係る衝撃吸収柵は、少なくとも二本の支柱10,10と、支柱10,10間に横架したネットにより構成する。
ネットは支柱10,10間に横架した少なくとも一組以上のループ材20により構成するが、本例では複数組のループ材20と、金網等の網状物30と、補助ロープ材40とによりネットを構成する場合について説明する。
ループ材20は隣り合う支柱10,10の間に、各支柱10の少なくとも一箇所ずつスライド可能に係留されている。支柱10と交差して配置した補助ロープ材40はループ材20と、このループ材20と隣接するスパンの他のループ材20の間を連結している。
衝撃吸収柵の端末部は図示しないが、補助ロープ材40の一端を端末の支柱20か、網状物40に固定される。
網状物30は後述するように、ループ材20と補助ロープ材40と同様に、支柱10の谷側に設ける。
間隔保持材は原則として使用しない。使用する場合でも、間隔を一定に保つことなく、間隔保持材の張力が増大するとともに摩擦を伴って(必ずしも摩擦がなくてもよい。)間隔が広がり、ある一定の間隔に達すると間隔がそれ以上増大しないようにロックされる間隔保持材(例えば特許公開2002−356815公報に記載の間隔保持材)は使用可能である。
以降に主要な構成部材について詳述する。
斜面又は斜面の裾部に所定の間隔を隔てて立設する支柱10は、例えば、鋼管内に各種の抵抗材を配置してコンクリートを充填したものや、コンクリート柱、鋼管、H鋼等が採用可能である。また支柱10の下部は地面やコンクリート基礎に傾倒不能に支持させるか、或いはヒンジ機構を介して傾倒可能に支持する。
尚、図示しないが支柱10の上部と斜面側との間を結ぶ控ロープを斜めに接続し、控ロープの端部又は中間に緩衝具を介在させることが望ましい。
支柱10の上下部に係留部11を形成したのは、衝撃吸収柵の上下部に二つのループ材を配置したからである。
要はループ材20のループと当接する係留面が滑らかであればよい。
隣り合う支柱10,10の上部間と下部間には、二組のループ材20,20がスライド可能に係留されている。各ループ材20は各支柱10に対して少なくとも一箇所係留している。ループ材20は隣り合う支柱10,10の上部間または下部間のいずれか一方のみでもよい。
ループ材20は、隣り合う支柱10,10の間隔の二倍を越える長さを有するロープで形成したループ体で、補助ロープ40と組み合わせて、隣り合う支柱10,10の間のネット面内に配置される。
また本例ではループ材20を構成するロープ21の部位を特定する方法を、相対向して水平に位置する一対のロープ21を長辺21a、短辺21bと呼び、斜めに位置する一対のロープ21を斜辺21c,21cと呼んで説明する。
緩衝装置22はロープ21の一部にある値以上の張力が生じたときに摺動してエネルギーを吸収するための装置で、摩擦抵抗式や変形抵抗式等の公知の各種の緩衝装置を適用できる。
またロープ21の緩衝装置22から延び出た部分は余長部24,24として形成され、この余長部24,24の設定長によりループ材20の撓み変形量が決まる。必要に応じて、ロープ21の終端に抜出し防止用のストッパ23を設ける。
尚、ループ材20を構成する部品のうち、緩衝装置22とストッパ23は省略される場合がある。
補助ロープ材40はあるループ材20と、このループ材20と隣接する他のループ材20の間の連結距離を越えた長さを有するワイヤロープ等のロープ材で、支柱10の上下部の間の位置で各支柱10と交差させて配置する。
補助ロープ材40は支柱10の斜面の谷側(下流側または道路側)に配置して、受撃時に支柱10に当接しないようにする。
補助ロープ材40は隣り合うループ材20とループ材20の間を連結し、支柱10の横方向(衝撃吸収柵の延長方向)に向けて連続ロープを形成するために機能するだけでなく、隣り合う支柱10,10の間にループ材20に略台形の形状を付与するために機能する。
尚、衝撃吸収柵の端末部においては、補助ロープ材40の一端を端末の支柱10に固定する。
所定の間隔を隔てて支柱10を立設し、隣り合う各支柱10,10の上下部の係留部11間に、二組のループ材20,20を夫々係留する。
水平に配置した各補助ロープ材40の両端部近くを、ループ材20の短辺21bと、このループ材20と隣接する他のループ材20の短辺21bとに重合させ、この重合部をクリップ等の拘束具41、または公知の緩衝装置で固定して、隣り合う支柱10,10の上半と下半に、略逆台形と台形の二組のループ材20,20を設ける。
またこれらのループ材20と補助ロープ材40によるネット形状を維持するため、コイル材等を用いて網状物30に取り付けておく。
ネットを構成する各ループ材20、補助ロープ材40、網状物30は特に緊張して設置する必要はないが、大きな弛みがでない程度に設置する。
要は、隣り合う支柱10,10の間のネットを取り付けるにあたり、ネットの上下部を夫々支柱10,10の上下部に係留して取り付けてあればよい。
そのため、補助ロープ材40は支柱10の斜面の谷側(下流側または道路側)に配置して、受撃時に支柱10と当接させないようにすることが望ましい。
また、補助ロープ40を用いずにループ材20は網状物30等のネット面に固定されていてもよい。
つぎに図3〜5を基に衝撃吸収柵によるエネルギーの吸収作用について説明する。
本発明に係る衝撃吸収柵は、隣り合う支柱10,10の係留部11に掛け渡したループ材20が、ループの全長に亘って力の伝達が可能であり、また補助ロープ材40とループ材20の短辺21bとの間も力の伝達が可能に構成されている。
そのため、図3に示すように落石fがネットの一部、例えばループ材20の短辺21bに衝突すると、この衝撃は支柱10の係留部21を通じてロープ材21のループの全体に亘って均等な張力tとして作用する。補助ロープ材40の一部に落石等が衝突した場合も同様に、ロープ材21のループ全体に均等な張力tとして作用する。
ロープ21に作用する張力tが緩衝装置22の摺動抵抗を超えると、ロープ21と緩衝装置22の間で摺動が起き、このときの摩擦抵抗により衝撃が吸収される。
落石等が直接衝突した部位のロープ材(例えばループ材20の短辺21bまたは補助ロープ40)には張力tが発生して谷側に撓んで変形するが、ループ材20の落石等と直接衝突しない部位(例えば長辺21a)にも張力tが作用することから、隣り合う支柱10,10の係留部11,11の間で直線になろうと緊張される。
そのため、図4に小さな矢印で表示したように、ネットの上部(長辺21a側)は引き上げられ、またネットの下部(長辺21a側)は引き下げられる。すなわち、ネットの一部に落石fが衝突しても、ネットの上部と下部は高さ方向の変位が制限される。
したがって、ネットが一度落石を受け止めた後に落石が発生しても、落石がネットの上部を飛び越えたり、或いはネットと地面との間をくぐり抜けたりすることを確実に防止することができる。
また、スパンのネット全域でネットが変形するため、ネットによる大きいエネルギー吸収効果が期待できる。
そのため支柱10の近くの部分に落石が衝突した時においても、ネットの中間部が支柱10と当接せずに変形可能であるため、発生する衝撃力が小さく、ネットに局所的な応力が集中しない。
まず、本発明に係る衝撃吸収柵と従来の衝撃吸収柵の受撃時におけるネットの撓み変形量について比較する。比較条件は、共に両支柱10,10の間隔が等しく、同じ大きさの衝撃を作用させた。
そのため、本発明に係る衝撃吸収柵のループ材20のループ部の撓み変形量Δy1は、従来の衝撃吸収柵の水平ロープ材の撓み変形量Δy2のほぼ半分程度で済み、ネット全体の撓み変形は小さくなる。
このようにロープ材の摺動量が同じであっても、本発明に係る衝撃吸収柵は、ループ材20の一部に作用した衝撃をループの形成範囲において均等に分散できるため、ネットの張出量を小さく抑制しつつ、高いエネルギーの吸収性能を発揮できる。
本発明に係る衝撃吸収柵は、道路際等の既設構造物に接近して設置する場合に有利である。
以降に他の実施の形態について説明するが、その説明に際し、前記した実施の形態と同一の部位は同一の符号を付してその詳しい説明を省略する。
本例は隣り合う支柱10,10の間に、支柱10の間隔の二倍を超える長さのループ材20を、各支柱10に設けた係留部11にスライド可能にループ材20を係留すると共に、離間させたループ材20の両端部近くを、公知の緩衝装置22,22、またはクリップ等の拘束具を介して補助ロープ材40で連結したものである。
本例の場合、補助ロープ材40は支柱10の間隔の二倍以上の長さのものを使用する。
また図7に示すように、補助ロープ材40に緩衝装置43を介装してもよい。
本例のように構成すると、ネットの一部に作用した衝撃を補助ロープ材40に介装した緩衝装置43で吸収できるので、衝撃吸収柵全体のエネルギー吸収性能が向上する。
図8は前記した発明の他の実施の形態1,2の応用例を示すもので、隣り合う支柱10,10の上下部に設けた合計四つの係留部21を支点として係留させたループ長の異なる複数のループ材20と、複数の補助ロープ材40とを組み合わせて衝撃吸収柵を構成した場合を示す。
衝撃吸収柵の上半に設けた逆台形を呈する複数のループ材20の長辺21aは、図面では一本に表記しているが、実際には複数本が重さなりあっている。
衝撃吸収柵の下半に設けた台形を呈する複数のループ材20の長辺21aの場合も同様である。
これは支柱10に近い位置に衝撃が作用して、補助ロープ材40だけ受け止めることができないときに、縦受力ロープ60が補助ロープ材40と協働して衝撃を受け止めることができるといった利点がある。
20・・・ループ材
21・・・ロープ
22・・・緩衝装置
23・・・ストッパ
24・・・余長部
30・・・網状物
40・・・補助ロープ材
Claims (5)
- 所定の間隔を隔てて立設した支柱間にネットを横架した衝撃吸収柵であって、
前記ネットは隣り合う支柱の間に、各支柱に設けた少なくとも一箇所の係留部にスライド可能に係留して掛け渡した、支柱の間隔の二倍を超える長さのループ材と、
支柱の片側に該支柱と交差して配置した補助ロープ材とを具備し、
ループ材と補助ロープ材の相互間で荷重を伝達できるように、隣り合うループ材とループ材の間を前記補助ロープ材で連結して隣り合う支柱の間に略台形の連続ループを形成したことを特徴とする、
衝撃吸収柵。 - 所定の間隔を隔てて立設した支柱間にネットを横架した衝撃吸収柵であって、
前記ネットは隣り合う支柱の間に、支柱の途中を除いた各支柱の上下部の何れか片方または両方に設けた係留部にスライド可能に係留して掛け渡した、支柱の間隔の二倍を超える長さのループ材と、
支柱の片側に該支柱と交差して配置した補助ロープ材とを具備し、
隣り合う支柱の間に略台形のループを形成するように、隣り合うループ材とループ材の間を前記補助ロープ材で連結したことを特徴とする、
衝撃吸収柵。 - 請求項1または請求項2において、ループ材に緩衝装置を介装したことを特徴とする、衝撃吸収柵。
- 請求項1乃至請求項3の何れか1項において、補助ロープ材に緩衝装置を介装したことを特徴とする、衝撃吸収柵。
- 請求項1乃至請求項4の何れか1項において、ループ材と補助ロープの交差部に緩衝装置を設けたことを特徴とする、衝撃吸収柵。
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