JP4249318B2 - 射出成形同時絵付用シート及び絵付け成形品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特にポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物にも密着良くラミネートできる射出成形同時絵付用シートに関する。また、該シートを樹脂成形物表面にラミネートした絵付け成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、樹脂成形物の表面を絵付した絵付け成形品が各種用途で使用されている。例えば、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に開示の射出成形同時絵付方法等では、射出成形同時絵付用シートを射出成形の雌雄両型間に配置した後、溶融樹脂をキャビティ内に射出充填することで、樹脂成形物の成形と同時にその表面に射出成形同時絵付用シートを接着積層して、該シートで絵付された絵付け成形品を得る方法を開示している。
【0003】
ところで、従来、射出成形同時絵付方法にて、樹脂成形物に使用する射出成形樹脂としては、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が多かった。この為、射出成形同時絵付方法にて樹脂成形物表面に積層する為に用いるラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートについても、これらの射出成形樹脂に接着が良い仕様のものが一般的であった。
【0004】
そして、得られる絵付け成形品に塗装感や表面艶等の意匠性を付与して高級感を出すとともに十分な耐擦傷性、耐候性等の表面物性も得る為には、(1)最表面層とする樹脂シートとして、透明性に優れたポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透明なアクリル樹脂シートを使用して、その裏側(樹脂成形物側となる側)に装飾層等を印刷形成した構成としていた(特公昭50−19132号公報等参照)。(2)また、このままでは、樹脂成形物の色が透けて見え易いのを防いだり、射出成形型で真空成形する際の成形性を調整したりする等の為に、上記装飾層の裏側に、更に着色隠蔽層として着色されたABS樹脂シートを積層した構成の射出成形同時絵付用シート等も使用されてきた。(3)また、安価の樹脂シートである等の点で、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂シートの裏側に装飾層を印刷等で形成した構成の射出成形同時絵付用シート等も使用されて来た(特公昭50−19132号公報等参照)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが最近は、射出成形樹脂としてポリプロピレン等の安価なポリオレフィン系樹脂の使用が望まれる事が多い。しかし、例えば上記(1)〜(3)の如き構成の射出成形同時絵付用シートでは、いずれもポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物に対して満足すべき密着性でラミネートできるものではなかった。その上、(1)の構成の射出成形同時絵付用シートでは、アクリル樹脂シート自体が、ポリオレフィン系樹脂シートや可塑化塩化ビニル樹脂シートに比べて、常温において硬く、又通常使用する厚みが0.1〜0.2mmであるために、樹脂シートとしての腰(形状保持性)が無いと同時に割れ易く、装飾層の印刷時や射出成形同時絵付時等に於いてシートのハンドリングが難しいとい問題があった。また、(2)の構成の射出成形同時絵付用シートでは、(1)の構成よりもシートのハンドリング適性は向上するが、その反面、裏面のABS樹脂シートがポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物と密着し難かった。また、(3)の構成の射出成形同時絵付用シートでは、アクリル樹脂シートに比べて、シートのハンドリング適性とポリオレフィン系樹脂成形物との密着性はともに向上するが、その反面、最表面層となるポリオレフィン系樹脂シートが耐候性、耐擦傷性、透明性に劣った。
【0006】
そこで、本発明の課題は、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、得られる絵付け成形品に十分な透明性及び表面物性を付与できる上、射出成形樹脂としてし、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を用いても密着良く樹脂成形物に積層できる様なシートとする事である。また、この様な射出成形同時絵付用シートを積層した、透明性及び表面物性が付与された絵付け成形品を提供する事である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の射出成形同時絵付用シートの第1の発明では、図1(C)に例示する射出成形同時絵付用シートSの如く、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、最表面層となる透明なアクリル樹脂シート1に、少なくとも、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物を主成分とする装飾層2Aと、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とするプライマー層3Aと、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aとが、この順に積層されてなる構成とした。
【0008】
また、本発明の射出成形同時絵付用シートの第2の発明では、図1(D)に例示する射出成形同時絵付用シートSの如く、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、最表面層となる透明なアクリル樹脂シート1に、少なくとも、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層2と、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とする第二のプライマー層3Bと、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aとが、この順に積層されてなる構成とした。
【0009】
また、本発明の射出成形同時絵付用シートの第3の発明では、図2(A)及び(B)に例示する射出成形同時絵付用シートSの如く、図1(C)又は図1(D)の第1又は第2の発明の射出成形同時絵付用シートSの分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aの裏面に、更に、分子中に極性官能基の無いポリプロピレン又はポリエチレンシート5Bを積層してなる構成とした。なお、図2(A)では5A、5B両層は間に接着層を介せず直接熱融着させた場合を図示し、図2(B)では5A、5B両層は間に第三のプライマー層3Cを介して積層した場合を図示している。これらにおいて、積層されたポリプロピレン又はポリエチレンシート5A及び5Bの2層が2層構成のポリプロピレン又はポリエチレンシート5と見做せる。
【0010】
また、本発明の射出成形同時絵付用シートの第4の発明では、図1(A)に例示する射出成形同時絵付用シートSの如く、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、最表面層となる透明なアクリル樹脂シート1に、少なくとも、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層2と、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3と、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5とが、この順に積層されてなり、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5が分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートである構成とした。
【0011】
また、本発明の射出成形同時絵付用シートの参考形態では、図1(B)に例示する射出成形同時絵付用シートSの如く、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、最表面層となる透明なアクリル樹脂シート1に、少なくとも、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層2と、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3と、塩素化ポリプロピレンを主成分とする接着剤層4と、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5とが、この順に積層されてなり、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5が分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートである構成とした。
【0012】
更に、前記分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートは、エチレン又はプロピレンの単量体とアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸とを共重合して重合体分子中にカルボキシル基を付与、或いは一旦、酢酸ビニルと共重合した後、鹸化して重合体分子中に水酸基を付与したものとできる。また、前記共重合の形態がグラフト共重合であるものとできる。
なお、本第4の発明及び参考形態に於けるポリエチレンシート5の場合は、分子中に極性官能基を有するポリプロピレンシート5A、分子中に極性官能基の無いポリプロピレンシート5B、或いはこれら5A及び5B等による積層体、のいずれから構成されていても良い。
【0013】
この様に、ラミネ−ト後に最表面層とする層に透明なアクリル樹脂シートを採用し、一方、樹脂成形物に接する最裏面層としてはポリプロピレン又はポリエチレンシートを採用し、装飾層はこれらの間に設け、そして、該装飾層を密着良く積層する為に、装飾層とポリプロピレン又はポリエチレンシート間にプライマー層を設け、また更に、参考形態では接着剤層を、第2の発明では第二のプライマー層を、(第一の)プライマー層とポリプロピレン又はポリエチレンシート間に設けた層構成とした上で、これら装飾層、プライマー層、或いは更に接着剤層の各々に特定材料を採用して組み合わせる事で、得られる絵付け成形品に優れた透明性及び表面物性を付与できる上、特にポリオレフィン系樹脂の樹脂成形物に密着良くラミネートでき、しかも射出成形同時絵付用シートの層内の密着性も良好にできる。
【0014】
また、本第1の発明では、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aは分子中に極性官能基を有するものとした為に、易接着性が有り、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体と言う比較的汎用性且つ安価で、しかも2液硬化型ウレタン樹脂と異なり、経時的に硬化反応が進ま無い樹脂を、ポリプロピレン又はポリエチレンシートに接するプライマー層に採用できる。
【0015】
また、本第2の発明の如く、上記第1の発明と同様にポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aは分子中に極性官能基を有するものとするが、装飾層2のバインダーの樹脂の主成分が、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物の場合の他に、アクリルウレタン樹脂を主成分とする場合も含む形態では、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とするプライマー層を第二のプライマー層3Bとして、この第二のプライマー層と装飾層との間に(第一の)プライマー層としてウレタン樹脂からなるプライマー層3を設けることで、層間密着性はより一層良くなる。この様な2層のプライマー層からなる構成に於いては、予め、ポリプロピレン又はポリエチレンシートへ第1のプライマー塗工(第二のプライマー層3Bを形成)をした中間製品とアクリル樹脂シートに装飾層を印刷した中間製品とを別個に作り溜めして在庫しておき、必要な時に必要な量だけ両中間製品を第2のプライマー(プライマー層3を形成)を用いてドライラミネート工程で積層して製造出来る為、中間製品の在庫管理が容易となる。また、第2のプライマーはドライラミネ−ト工程中のみ未硬化状態であれば良い為、経時硬化性は有るが接着力の強力な2液硬化型ウレタン樹脂を利用することに支障は無い。
【0016】
また、本第3の発明の如く、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aと、分子中に極性官能基の無いポリプロピレン又はポリエチレンシート5Bとからなるポリプロピレン又はポリエチレンシート5とすることで、射出成形同時絵付用シートの裏面側はポリオレフィン系樹脂の樹脂成形物と熱融着される為、極性官能基が無く安価なポリプロピレン又はポリエチレンシート5Bでも十分に接着性能を発揮し、しかも、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5の全層を分子中に極性官能基の有るものにする場合に価格が高くなり過ぎて不都合となるのを防止できる。
【0017】
また、本発明の絵付け成形品は、上記いずれかの射出成形同時絵付用シートが、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物の表面に積層されてなる構成とした。この様にすることで、ポリオレフィン系樹脂の樹脂成形物に対してでも、優れた透明性、表面物性、及び密着性を有する成形品にできる。
なお、上記ポリオレフィン系樹脂がエチレンプロピレンゴムを含有するものとできる。また、ポリオレフィン系樹脂がエチレンプロピレンゴムを該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1〜40重量部含有するものとできる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、図1及び図2は、本発明の射出成形同時絵付用シートの各種形態例を例示する断面図、図3は本発明の射出成形同時絵付用シートの用途である射出成形同時絵付方法を説明する概念図、図4は本発明の射出成形同時絵付用シートを用いて得られる、本発明の絵付け成形品を例示する断面図である。
【0019】
〔射出成形同時絵付用シート〕
先ず、図1(A)に例示の一形態で、本発明の射出成形同時絵付用シートを説明すれば、本発明の射出成形同時絵付用シートSは、最表面層は透明なアクリル樹脂シート1からなり、最裏面層はポリプロピレン又はポリエチレンシート5からなり、そして装飾層2をこれら層間に有し、更に装飾層2とポリプロピレン又はポリエチレンシート5間にプライマー層3を有する構成を基本的な層構成とする。そしてのこの様な層構成に対して、各層の構成材料を、図1(A)の形態では、(最表面層及び最裏面層に上記特定材料を採用した上で)装飾層2、プライマー層3に次の様な特定材料を採用して層間の密着性を良好にする。すなわち、装飾層2はそのバインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする層とし、プライマー層3はウレタン樹脂を主成分とする層とする。
【0020】
そして、本発明の射出成形同時絵付用シートは、図1(A)に示す形態以外に、図1(B)〜(D)及び図2に示す如き構成がある。
【0021】
以下、更に各層について詳述する。
【0022】
(アクリル樹脂シート)
アクリル樹脂シート1はアクリル樹脂からなる透明な樹脂シートである。アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味〕を単体又は2種以上の混合物として用いる。アクリル樹脂シートに良好な耐擦傷性を付与する為に、滑剤として炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤等の滑剤を添加すると好ましい。但し、滑剤を添加し過ぎると射出成形同時絵付時に型内でシートが滑って、シワ、歪み等を生じ易くなる。その為、滑剤はアクリル樹脂シート表面の動摩擦係数が0.2〜0.9になる様に添加すると良い。添加量でいうと0.1〜0.5重量%程度である。なお、アクリル樹脂シートは単層の他、2層以上の積層体の樹脂シートとして用いても良い。また、透明とは通常は無着色透明だが、必要に応じ適宜公知の着色剤の添加によって着色透明としても良い。最表面層としてアクリル樹脂シートを使用し、装飾層をその下層とする事で、アクリル樹脂シートによる優れた透明性によって塗装感や表面艶等の高級感溢れる意匠性を付与出来る事になる。また、ポリオレフィン系樹脂シート等にくらべて、耐候性及び耐擦傷性等の表面物性も良好にできる。なお、アクリル樹脂シートの厚みは特に制限は無いが、射出成形同時絵付用シート全体としての強度を、このアクリル樹脂シートで持たせる必要は無く、また厚すぎると射出成形同時絵付用シートの腰が強くなり過ぎてハンドリングが悪くなるので、付与する透明感、塗装感等の表面特性に応じて、通常は20〜200μm程度とする。
【0023】
(装飾層)
装飾層2、2Aは、印刷等で例えば絵柄等を表現した層である。装飾層2、2Aは、そのバインダーの樹脂の主成分に特定の樹脂を使用する。すなわち、第4、参考形態、第2の発明、及び第2の発明に対する第3の発明の各発明に於ける装飾層2〔図1(A)、(B)、(D)及び図2(B)参照〕は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物、或いはアクリルウレタン樹脂を、バインダーの樹脂の主成分として構成する。また、第1及び第1の発明に対する第3の発明に於ける装飾層2A〔図1(C)及び図2(A)参照〕は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物でバインダーの樹脂の主成分を構成する。この様な特定樹脂を使用する事で、それぞれの発明の射出成形同時絵付用シートに於いて、装飾層が接するアクリル樹脂シートと(該装飾層のバインダーの樹脂に対応した特定樹脂を使用する)プライマー層との密着性が良好となる。なお、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物の組み合わせは、アクリル樹脂はアクリル樹脂シートとの密着性向上に寄与し、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は印刷適性や成形適性向上に寄与する。また、アクリルウレタン樹脂はその単体でそれら適性を満足させる事ができる。
【0024】
上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、必要に応じ、更にマレイン酸、フマル酸等のカルボン酸を共重合させたものでも良い。
【0025】
上記アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂、或いは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリオール等のアクリル樹脂を、単体又は2種以上混合して使用する。なお、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートの意味である。塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合比は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体/アクリル樹脂=1/9〜9/1(重量比)程度である。
【0026】
上記アクリルウレタン樹脂としては、2液硬化型のアクリルウレタン樹脂、或いは熱可塑性のアクリルウレタン樹脂等を使用すれば良い。
【0027】
例えば、2液硬化型のアクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。アクリルポリオールとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、オクチル(メタ)アクリレート−エチルヘキシル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等を単体又は2種以上混合して使用する。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート、或いはまた、上記各種イソシアネートの付加体、又は多量体を用いる事もできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。また、熱可塑性のアクリルウレタン樹脂は、例えば2価のアクリルポリオールと2価のイソシアネートとをウレタン結合させて得られる様な、線状高分子からなる。
【0028】
なお、装飾層のバインダーの樹脂としては、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜、主成分とする樹脂以外のその他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性や2液硬化型等の(アクリルウレタン樹脂以外の)ウレタン樹脂(装飾層2Aの場合)等の樹脂を併用しても良い。
【0029】
装飾層2、2Aとしては、バインダーの樹脂を上記特定樹脂から構成する他は、基本的には特に制限は無い。装飾層2、2Aは、通常は印刷インキ又は塗料で、公知の印刷又は塗工法(塗工法は全ベタ柄のとき)により形成する。通常、装飾2、2Aは、アクリル樹脂シート1に対して形成する。そして、装飾層が形成されたアクリル樹脂シートを、間にプライマー層或いは更に接着剤層を介して、ポリプロピレン又はポリエチレンシートと、ドライラミネーション法等の公知の積層法で積層すれば、本発明の射出成形同時絵付用シートが得られる。また、上記印刷インキ(或いは塗料)に用いる着色剤は公知の染料や顔料で良く、例えばチタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、コバルトブルー等の無機顔料、アニリンブラック、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン等の有機顔料、アルミニウム箔粉等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢(パール)顔料、その他染料等を用いる。装飾層の絵柄は、木目、石目、布目、砂目、皮絞模様、幾何学模様、文字、記号、全面ベタ等と任意である。
【0030】
なお、装飾層としては、木目柄等による装飾目的の層の他に、銀粉等の導電性粉末をバインダー中に分散させた、導電性層等の機能層でも良い。
【0031】
(プライマー層)
プライマー層3、3A、3B及び3Cは、層間に介在し層間密着性を向上させる。プライマー層3、3A及び3Bは、その主成分を特定の樹脂で構成する。該樹脂には、第4、参考形態、第2の発明、及び第2の発明に対する第3の発明のプライマー層3〔図1(A)、(B)及び(D)、図2(B)参照〕ではウレタン樹脂を使用し、第1の発明及び第1の発明に対する第3の発明に於けるプライマー層3A〔図1(C)及び図2(A)参照〕では塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を使用する。また、必要に応じ適宜設けるプライマー層3Cは、その主成分の樹脂は適宜な樹脂とすれば良いが、ウレタン樹脂は好ましい樹脂である。
【0032】
また、第2の発明、及び該第2の発明に対する第3の発明の射出成形同時絵付用シートSでは、装飾層2とポリプロピレン又はポリエチレンシート5間のプライマー層3及び第二のプライマー層3Bでは、プライマー層3にはウレタン樹脂を使用し、プライマー層3Bには塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を使用する。そして、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5は、第二のプライマー層3B側に分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aを用いる。特に、第2の発明に対する第3の発明の場合は、ポリプロピレン又はポリエチレンシートは、前記ポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aに加えて、更に、樹脂成形物側に分子中に極性官能基を持た無いポリプロピレン又はポリエチレンシート5Bを積層した2層構成とする。更に図2(B)の形態の場合は、これら層間に第三のプライマー層3Cを有し、該第三のプライマー層3Cは、好ましくはその主成分をウレタン樹脂で構成する。
【0033】
この様に、それぞれに於いて、プライマー層3、3A、3B(或いは更に3Cも)の各々に上記特定樹脂を該層の主成分として採用することで、それぞれに於いて層間密着性を向上させる事が出来ることになる。
【0034】
すなわち、第4の発明として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層2と、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5との層間密着性向上には〔図1(A)〕には、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3が好ましい結果を与える。
【0035】
また、参考形態として、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層2と、塩素化ポリプロピレンを主成分とする接着剤層4と、の層間密着性向上(特に耐熱試験後の層間密着性)には〔図1(B)〕には、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3が好ましい結果を与える。
【0036】
また、第1の発明、或いは該第1の発明に対する第3の発明として、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物を主成分とする装飾層2Aと、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aとの層間密着性向上には〔図1(C)及び図2(A)〕には、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とするプライマー層3Aが好ましい結果を与える。
【0037】
なお、第2の発明、及び該第2の発明に対する第3の発明として、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層2と、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aとの層間密着性向上には〔図1(D)及び図2(B)〕には、異なる樹脂材料からなるプライマー層3及び3Bの2層構成とて、装飾層2側のプライマー層3はウレタン樹脂を主成分として、他方の側のプライマー層3Bは塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とすると、好ましい結果を与える。
【0038】
また、第3の発明の如く、2層構成のポリプロピレン又はポリエチレンシート5に於いては、その層間密着性向上に図2(B)の如く該層間に第三のプライマー層3Cを介在させても良い。この場合、該第三のプライマー層3Cはウレタン樹脂を主成分とすると、好ましい結果を与える。
【0039】
上記プライマー層に使用する上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20重量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、必要に応じ、更にマレイン酸、フマル酸等のカルボン酸を共重合させたものでも良い。
【0040】
また、上記プライマー層に使用する上記ウレタン樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、1液湿気硬化型ウレタン樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂等を使用すれば良い。
【0041】
例えば、2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート、或いはまた、上記各種イソシアネートの付加体、又は多量体を用いる事もできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。
【0042】
1液湿気硬化型ウレタン樹脂は、分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを必須成分とする組成物である。前記プレポリマーは、通常は分子両末端に各々イソシアネート基を1個以上有するポリイソシアネートプレポリマーであり、常温で固体の熱可塑性樹脂の状態にあるものである。イソシアネート基同士が空気中の水分により反応して鎖延長反応を起こして、その結果、分子鎖中に尿素結合を有する反応物を生じて、この尿素結合に更に分子末端のイソシアネート基が反応して、ビウレット結合を起こして分岐し、架橋反応を起こす。分子末端にイソシアネート基を有するプレポリマーの分子鎖の骨格構造は任意であるが、具体的には、ウレタン結合を有するポリウレタン骨格、エステル結合を有するポリエステル骨格、ポリブタジエン骨格等である。適宜これら1種又は2種以上の骨格構造を採用する。なお、分子鎖中にウレタン結合がある場合は、このウレタン結合とも末端イソシアネート基が反して、アロファネート結合を生じて、このアロファネート結合によっても架橋反応を起こす。
【0043】
熱可塑性ウレタン樹脂は、2価のポリオールと2価のイソシアネートとをウレタン結合させて得られる線状高分子からなる。
【0044】
なお、プライマー層は、上述の如き特定樹脂を用いたインキ又は塗液で、公知の印刷法又は塗工法で形成すれば良い。
【0045】
(接着剤層)
接着剤層4〔図1(B)参照〕は、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3とポリプロピレン又はポリエチレンシート5間に介在して、これら接着させる層である。この接着剤層は、塩素化ポリプロピレンを主成分として構成する。上記特定材料からなるプライマー層3とポリプロピレン又はポリエチレンシート5間の層間密着力向上には、塩素化ポリプロピレンを主成分として使用することで、好ましい結果を得ることができる。なお、接着剤層は、上記特定樹脂を用いたインキ又は塗液で、公知の印刷法又は塗工法で形成すれば良い。接着剤層の厚みは特に制限はないが、例えば5〜20μm程度である。
【0046】
(ポリプロピレン又はポリエチレンシート)
ポリプロピレン又はポリエチレンシート5としては、第1、第2、第3の発明の場合のプライマー層側には分子中に極性官能基を有するポリプロピレンシート又はポリエチレンシート5Aを使用する。第3の発明の場合には該ポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aに加えて、更に、樹脂成形物側には、分子中に極性官能基の無いポリプロピレン又はポリエチレンシート5Bを使用する。なお、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5は極性官能基の有無はいずれでも良いが、第4、参考形態の場合には、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートを用いる。射出成形同時絵付用シートの最裏面層として、ポリプロピレン或いはポリエチレンからなる樹脂シートを使用することで、射出成形同時絵付用シートを、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物に密着良くラミネ−トできる様になる。ポリエチレン、ポリプロピレンのどちらを使用するかは、射出成形同時絵付用シートを積層する樹脂によって選択する。積層する樹脂が、ポリプロピレン系の場合はポリプロピレンシートを使用し、ポリエチレン系の場合はポリエチレンシートが好ましい。また、射出成形同時絵付用シート全体としての必要な厚みは、高価なアクリル樹脂シートよりは、このポリプロピレン又はポリエチレンシートで出すのが、低コストとなり、また、撓りやすくハンドリングも容易で、且つ成形性の点でも好ましい。また、ポリプロピレン又はポリエチレンシートの分子中に極性官能基を付与する為には、エチレン又はプロピレンの単量体とアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸とを共重合して重合体分子中にカルボキシル基を付与したり、或いは一旦、酢酸ビニルと共重合した後、鹸化して重合体分子中に水酸基を付与したりすれば良い。これら共重合成分は通常5〜25mol%程度とする。また、共重合の形態としては通常グラフト共重合であるが、その他の共重合形態でも良い。
【0047】
樹脂シートとするポリエチレン或いはポリプロピレンには、成形性等を適度なものとする為に、必要に応じ適宜、ゴム成分、体質顔料、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤等を添加したものでもよい。例えば、ゴム成分としては、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、或いはアタクチックポリプロピレン等である。また、エチレン、プロピレンのモノマー以外に、他のポリオレフィンモノマーを共重合させたものでも良い。他のポリオレフィンモノマーとしては、例えば、α−オレフィンとしてブテン、ペンテン、ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン等がある。また、体質顔料としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、カオリナイト等の粒径0.1〜10μm程度の粒子が用いられる。難燃剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が用いられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等が用いられる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等が用いられる。
【0048】
ポリプロピレン又はポリエチレンシートは、延伸シート、未延伸シートのいずれでも良いが、射出成形同時絵付時にシートが伸ばされる様に積層され、成形性が望まれる場合には、未延伸シートの方が好ましい。ポリプロピレン又はポリエチレンシートは、Tダイ押し出し法等の公知の成膜法によって既にシートとした物を使用しても良いが、アクリル樹脂シートに装飾層、プライマー層等を形成した積層シートに対して、Tダイ押し出し法等によってシートとして成膜と同時に積層しても良い。なお、前者の場合は、ドライラミネーション等の公知の積層法で積層すれば良い。なお、ポリプロピレン又はポリエチレンシートの厚みは、用途等によるが、50〜500μm程度とする。また、該厚みは、射出成形同時絵付用シート全体の総厚が300μm以上となる様するのが、ハンドリングの容易さ等の点で好ましい。これらの為に、該厚みは、通常はアクリル樹脂シートの厚みよりも厚くする。
【0049】
また、ポリプロピレン又はポリエチレンシートには、必要に応じ適宜、着色剤を添加しても良い。着色剤を添加して着色隠蔽性を付与することで、射出成形同時絵付用シートを積層する樹脂の色を隠蔽し且つ装飾層の下地色を整える事ができる。着色剤には、前述装飾層のところで述べた如き、公知の着色剤を使用すれば良い。
【0050】
なお、ポリプロピレン又はポリエチレンシートは、2層等の複層構成としても良い。第3の発明の形態例である図2(A)及び(B)、或いは図2(C)に示す射出成形同時絵付用シートSがその形態例である。2層とする場合、図2(A)の如く直接2層を熱融着で積層しても良いが、層間に図2(B)の如くプライマー層(同図では第三のプライマー層3C)を介して積層しても良い。なお、図2(C)の断面図で例示する射出成形同時絵付用シートSは、第4の発明として図1(A)に示した構成に対して、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5を、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5A及び5Bの2層構成としたものである。すなわち、最表面層となる透明なアクリル樹脂シート1に、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層2と、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3と、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5とが、この順に積層され、該ポリプロピレン又はポリエチレンシート5がウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3と接する側に分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aを配置してプライマー層3との密着を確保し、樹脂成形物と接する側に分子中に極性官能基の無いポリプロピレン又はポリエチレンシート5Bを配置して射出成形同時絵付けに必要なポリプロピレン又はポリエチレンシート5の総厚を確保しつつ価格の上昇も最低限に抑えてなる構成である。この様に、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5を2層構成とする場合、プライマー層がウレタン樹脂を主成分とするプライマー層3の場合でも、該プライマー層3側に分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aを配置した2層構成のポリプロピレン又はポリエチレンシート5としても良い。なお、間にプライマー層を介在させずに2層等と複層構成とするには、例えば、Tダイによる共押し出し法によって成膜と同時に積層すれば良い。
【0051】
この様に、ポリプロピレン又はポリエチレンシート5を2層構成とすることで、例えば、樹脂成形物側のポリプロピレン又はポリエチレンシート5Bは着色隠蔽層として専ら着色隠蔽付与、成形性、及び射出成形同時絵付けの為に必要な厚さを確保した層として使用し、プライマー層側(表側)のポリプロピレン又はポリエチレンシート5Aは、着色剤等を添加せず、専らプライマー層との密着を確保した層として使用する事が出来、コストを最小限にして且つ複数の要求物性を満たすことができる。そして、上記隠蔽性によって、射出成形樹脂の色に左右されずに、絵付けによる色調表現を安定化できる。
【0052】
なお、ポリプロピレン又はポリエチレンシートは、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物との密着性を良くする為に射出成形同時絵付用シートの裏側の層に採用するものであるが、ポリオレフィン系樹脂のなかでも特にポリプロピレン又はポリエチレンシートを採用することで、入手容易性、汎用性、低コスト等の利点も得られる。但し、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物との密着性の点では、その他のポリオレフィン系樹脂からなる樹脂シートで層5、5A、或いは5Bを構成しても、上記利点は得にくいが、相応の効果は得られる。その他のポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリブテン、ポリメチルペンテン等の公知の樹脂が挙げられる。
【0053】
〔射出成形同時絵付方法〕
ここで、上述した本発明の射出成形同時絵付用シートの使用用途である、射出成形同時絵付方法について、一応説明しておく。ここでの射出成形同時絵付方法は、ラミネ−ト形態となり、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載されるように、射出成形同時絵付用シートを、一対の型の間に配置した後、両型を型締めし、両型で形成されるキャビティ内に流動状態の樹脂を射出し充填して固化させて、樹脂成型物の成形と同時にその表面に射出成形同時絵付用シートを積層して、樹脂成形物を絵付けする方法である。
【0054】
なお、射出成形同時絵付方法としては、従来公知の各種形態をとり得る。例えば、射出成形同時絵付用シートの予備成形を行う形態、或いは行わない形態。また、射出成形同時絵付用シートの予熱を行う形態、行わない形態。なお、予備成形時には通常は射出成形同時絵付用シートは予熱する。
【0055】
なお、もちろんの事だが、射出成形同時絵付用シートの絞りが大きい場合は、予備成形を行うのが好ましい。一方、射出成形同時絵付用シートの絞りが少ない場合は、射出される流動状態の樹脂の樹脂圧で該シートを成形しても良い。この際、絞りが浅ければ、予備成形無しで樹脂射出と同時に型内に充填される流動状態の樹脂の樹脂圧で射出成形同時絵付用シートを成形しても良い。また、樹脂圧で射出成形同時絵付用シートを成形する場合でも、該シートは予熱せずに射出樹脂の熱を利用しても良い。また、射出成形同時絵付用シートの予備成形は、通常は、射出成形型を真空成形型と兼用して行うが、型間に該シートを供給する前に、型外部で別の真空成形型で該シートを真空成形する様な予備成形でも良い。また、予備成形は、射出成形型を真空成形型と兼用して行う形態が効率的で且つ精度良く積層できる点で好ましい。なお、本発明に於いて真空成形とは真空圧空成形も包含する。
【0056】
ところで、図3は射出成形同時絵付方法を或る一形態で説明する概念図である。図3に示す形態では、型締めする前に、射出成形同時絵付用シートを型間で加熱し軟化させて射出成形型で真空成形により予備成形した後に、型締めして樹脂を射出する形態である。そこで次に、図3を用いて、射出成形同時絵付方法を更に説明する。
【0057】
先ず、図3(A)の如く、射出成形型としては、射出ノズルと連通する湯道(ランナー)及び湯口(ゲート)を有する型Maと、キャビティ面に吸引孔41を有し転写箔の予備成形型を兼用する型Mbの一対の成形型を用いる。これらの型は鉄等の金属、或いはセラミックスからなる。型開き状態に於いて両型Ma、Mb間に射出成形同時絵付用シートSを供給し、型Mbに射出成形同時絵付用シートSを枠状のシートクランプ42で押圧する等して固定する。この際、射出成形同時絵付用シートのポリプロピレン又はポリエチレンシート側は、図面右側の射出樹脂側となる様にする事はもちろんである。次いで、適宜、両型間に挿入したヒータ(図示略)で射出成形同時絵付用シートを加熱軟化させる。加熱は例えば非接触の輻射加熱とするが、接触による伝導加熱でも良い。そして、吸引孔から吸引して真空成形して、射出成形同時絵付用シートを型Mbのキャビティ面に沿わせ予備成形する。なお、真空成形は圧空も併用する真空圧空成形でも良く、これも包含する。次いで、ヒータを両型間から退避させ、図2(B)の如く両型を型締めし、両型で形成さるキャビティに加熱熔融状態等の流動状態の樹脂を充填する。そして、射出成形同時絵付用シートの不要部分がある場合は、それを適宜トリミングすれば、図4の断面図で概念的に示す如き本発明の絵付け成形品Pが得られる。
【0058】
〔射出成形樹脂〕
なお、射出成形同時絵付方法に於いて、射出成形して樹脂成形物とする樹脂としては、基本的には、射出成形同時絵付方法に於ける従来公知のものが使用でき特に制限はなく、製品の要求物性やコスト等に応じて選定される。但し、本発明の射出成形同時絵付用シートは、ポリオレフィン系樹脂に対して密着が良い様に構成されているので、ポリオレフィン系樹脂が好適である。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン系樹脂、或いは各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。
【0059】
なお、本発明の射出成形同時絵付用シートはこれらポリオレフィン系樹脂と密着性が良い様に構成してあるが、その密着性をより向上させる必要がある場合には、これらポリオレフィン系樹脂に、エチレンプロピレンゴムを添加すると良い。エチレンプロピレンゴムはエチレン−プロピレン共重合体からなるゴム(EPR)であり、非晶質のランダム共重合体である。また、エチレンプロピレンゴムとしては純粋なエチレン−プロピレン共重合体の他に、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)も使用できる。エチレンプロピレンゴムはポリオレフィン樹脂100重量部に対し1〜40重量部の範囲で添加するのが、密着性向上、剛性維持の点から好ましい。
【0060】
なお、射出成形樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述装飾層で述べた如き公知の着色剤を使用できる。また、射出成形樹脂には、必要に応じて適宜、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機物粉末、ガラス繊維等の充填剤、安定剤、滑剤等の公知の各種添加剤を含有させる。
【0061】
〔絵付け成形品〕
本発明の絵付け成形品は、図4の断面図で概念的に示す絵付け成形品Pの如く、前述本発明の射出成形同時絵付用シートSがポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物6の表面に積層した構成の成形品である。もちろん、射出成形同時絵付用シートSは、そのポリプロピレン又はポリエチレンシートが樹脂成形物と接する様に積層されている。樹脂成形物6は、ポリオレフィン系樹脂である。ポリオレフィン系樹脂は、前記射出成形樹脂で説明した如き樹脂である。樹脂成形物6の表面に射出成形同時絵付用シートSを積層するには、前述した射出成形同時絵付方法によれば良い。本発明の絵付け成形品では、射出成形同時絵付用シートと樹脂成形物との密着性に優れ、また表面の透明性も良好な成形品となる。
【0062】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に詳述する。
【0063】
〔参考例1〕
図1(B)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。無着色のポリメチルメタクリレート(PMMA)シート(厚さ0.125mm)を透明なアクリル樹脂シート1として、その片面に、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との1対1重量比混合物で、弁柄を主成分とする着色剤を使用した着色インキを印刷して木目柄の装飾層2を形成し、更にアクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を主成分とするプライマーインキを全面に印刷してプライマー層3を厚さ2μmに形成して、印刷シートとした。次に予め、弁柄、カーボンブラック、黄鉛、及びチタン白を主成分とする着色剤の添加で黄褐色に着色され不透明なポリプロピレンシート5(厚さ0.3mm)の片面に塩素化ポリプロピレンを主成分とする接着剤を塗工して厚さ4μmの接着剤層4を形成した上で、該接着剤層4と上記印刷シートの未硬化状態のプライマー層3とが接する様にして、ポリプロピレンシート5を上記印刷シートにドライラミネーション法によって積層して、本発明の射出成形同時絵付用シートSを得た。
【0064】
そして、図3の概念図に示した様な射出成形同時絵付方法によって、射出成形樹脂として、エチレン−プロピレン共重合体ゴムを10重量%添加したポリプロピレン樹脂を使用して、上記射出成形同時絵付用シートを樹脂成形物の表面に積層して、図4に示す如き、射出成形同時絵付用シートSが樹脂成形物6に積層された本発明の絵付け成形品Pを得た。なお、射出成形同時絵付は、真空吸引孔を有する雌型とゲートを有する雄型との一対の型からなる射出成形型の間に、ポリプロピレンシート側が雄型側を向く様にして射出成形同時絵付用シートを挿入し、射出成形同時絵付用シートを雌型のパーティング面にシートクランプで固定して、赤外線輻射方式の熱盤で該シートを加熱・軟化させて、軟化した該シートを雌型のキャビティ面に真空成形して沿わせ、而る後に雌雄両型を型締めし、両型で形成されるキャビティ内に、上記ポリオレフィン系樹脂の熔融樹脂を射出充填し冷却固化させた。そして、型開きし、射出成形同時絵付用シートが樹脂成形物の表面に積層した絵付け成形品を得た。
【0065】
〔参考例2〕
図1(A)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。参考例1と同じアクリル樹脂シート1(厚さ0.125mm)の片面に、参考例1と同じ内容の装飾層2を形成して、先ず印刷シートとした。次に、参考例1と同じポリプロピレンシート5(但し、厚さは0.2mm)の片面に、アクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を主成分とするプライマーインキでプライマー層3を全面に印刷形成した上で、該プライマー層3と上記印刷シートの装飾層2とが接する様にして、ポリプロピレンシート5を上記印刷シートにドライラミネーション法によって積層して、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0066】
〔参考例3〕
図1(A)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。参考例2に於いて、装飾層2のバインダーの樹脂をアクリルウレタン樹脂に変更した他は、参考例2と同様にして、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0067】
〔実施例1 :第1の発明〕
図1(C)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。参考例1と同じアクリル樹脂シート1(厚さ0.125mm)の片面に、参考例1と同じ内容の装飾層2を装飾層2Aとして形成して、先ず印刷シートとした。次に、参考例1のポリプロピレンシート5に対して、厚さを0.2mmに変更し、マレイン酸のグラフト共重合により分子中にカルボキシル基を導入したポリプロピレンシート5Aを用い、該シートの片面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体からなるプライマーインキでプライマー層3Aを全面に印刷形成した上で、該プライマー層3Aと上記印刷シートの装飾層2Aとが接する様にして、ポリプロピレンシート5Aを上記印刷シートにドライラミネーション法によって積層して、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0068】
〔実施例2 :第1の発明〕
図1(C)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。実施例1に於いて、ポリプロピレンシート5Aを樹脂のみ異なるポリエチレンシート(マレイン酸のグラフト共重合により分子中にカルボキシル基を導入したもの)5Aに変更した他は、実施例1と同様にして、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0069】
〔実施例3 :第2の発明〕
図1(D)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。参考例1と同じアクリル樹脂シート(厚さ0.125mm)1の片面に、参考例1と同じ内容の装飾層2を形成して、先ず印刷シートとした。一方、マレイン酸のグラフト共重合により分子中にカルボキシル基を導入した無着色透明なポリエチレンシート(厚さ0.08mm)5Aの表側とする面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とするプライマーインキによるプライマー層3B、アクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を主成分とするプライマーインキによるプライマー層3を、この順に全面に印刷形成した上で、プライマー層3と上記印刷シートの装飾層2とが接する様にして、ポリエチレンシート5Aを上記印刷シートにドライラミネーション法によって積層して、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0070】
〔実施例4 :第2の発明〕
図1(D)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。実施例3に於いて、装飾層2のバインダーの樹脂をアクリルウレタン樹脂に変更した他は、実施例3と同様にして、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0071】
〔実施例5 :第3の発明〕
図2(B)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。参考例1と同じアクリル樹脂シート(厚さ0.125mm)1の片面に、参考例1と同じ内容の装飾層2を形成して、先ず印刷シートとした。一方、ポリエチレンシート5としては、マレイン酸のグラフト共重合により分子中にカルボキシル基を導入した無着色透明なポリエチレンシート(厚さ0.08mm)5Aと、(参考例1と同様の)着色剤で着色した不透明なポリエチレンシート(厚さ0.3mm)5Bとを、アクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を主成分とするプライマーインキによるプライマー層3Cを間に介して、ドライラミネーション法によって積層したものを用意した。そして、上記2層構成のポリエチレンシート5の薄い方のポリエチレンシート5Aの面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とするプライマーインキによるプライマー層3B、アクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を主成分とするプライマーインキによるプライマー層3を、この順に全面に印刷形成した上で、プライマー層3と上記印刷シートの装飾層2とが接する様にして、ポリエチレンシート5を上記印刷シートにドライラミネーション法によって積層して、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0072】
〔実施例6 :第3の発明〕
図2(B)の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。実施例5に於いて、装飾層2のバインダーの樹脂をアクリルウレタン樹脂に変更した他は、実施例5と同様にして、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0073】
〔実施例7 :第4の発明〕
参考例1と同じアクリル樹脂シート(厚さ0.125mm)の片面に、参考例1と同じ内容の装飾層を形成して、先ず印刷シートとした。一方、2層構成のポリプロピレンシートとして、マレイン酸のグラフト共重合により分子中にカルボキシル基を導入した無着色透明なポリエチレンシート(厚さ0.08mm)5Aと、(参考例1と同様の)着色剤で着色した不透明なポリエチレンシート(厚さ0.3mm)5Bとを、アクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を主成分とするプライマーインキによるプライマー層を間に介して、ドライラミネーション法によって積層したものを用意した。そして、上記2層構成のポリプロピレンシートの薄い方のポリプロピレンシートの面に、アクリルポリオールと1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートとからなる2液硬化型ウレタン樹脂を主成分とするプライマーインキによるプライマー層3を全面に印刷形成した上で、プライマー層と上記印刷シートの装飾層2とが接する様にして、ポリプロピレンシートを上記印刷シートにドライラミネーション法によって積層して、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0074】
〔実施例8 :第4の発明〕
実施例7に於いて、装飾層2のバインダーの樹脂をアクリルウレタン樹脂に変更した他は、実施例7と同様にして、本発明の射出成形同時絵付用シートを得た。そして更に、参考例1と同様にして本発明の絵付け成形品を得た。
【0075】
〔評価結果〕
上記いずれの実施例においても、射出成形同時絵付用シートの雌雄両型間への挿入、その後の真空成形も容易であり、該シートに、皺、破れを生じず、また、次の各種性能評価結果も全て良好であった。また、絵付け成形品は木目柄で絵付けされ、且つ透明性も良好で、高級感溢れる意匠感を有する成形品となった。
【0076】
〔性能評価試験〕
成形性:樹脂成形物の絵付け面の表面凹凸に射出成形同時絵付用シートが十分に追従し成形されているか否かを、目視で確認して、十分に絵付け面の凹凸に追従しているものは良好、不十分なものは不良とした。
密着性:碁盤目テストとして、絵付け成形品表面(射出成形同時絵付用シート面)に、2mm間隔で碁盤目状に縦横に切り込みを入れて、縦横で10×10個の合計100個の枡目を作った後、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製、「セロテープ」(登録商標)24mm幅、産業用)を25℃に於いて貼着した後、勢い良く剥がして、射出成形同時絵付用シートがテープと共に剥がれるか否かで評価した。枡目の剥がれが1個も無いものを良好、枡目の剥がれ有りのものを不良とした。
耐熱性:絵付け成形品を70℃のオーブン中に500時間入れた後、取り出して室温まで冷却後、外観の異常の有無を目視で評価し、異常無きものを良好、異常有るものを不良とした。
耐湿性:絵付け成形品を50℃、95%RHの恒温恒湿槽中に500時間入れた後、取り出して室温まで冷却後、外観の異常の有無を目視で評価し、異常無きものを良好、異常有るものを不良とした。
耐温水性:絵付け成形品を40℃の温水中に24時間入れた後、取り出して表面水分を拭き取り室温まで冷却後、外観の異常の有無を目視で評価し、異常無きものを良好、異常有るものを不良とした。
【0077】
【発明の効果】
(1)本発明の射出成形同時絵付用シートによれば、得られる絵付け成形品に優れた透明性を付与できる上、特にポリオレフィン系樹脂等に密着良くラミネートでき、射出成形同時絵付用シートの層内の密着性も良好にできる。その結果、従来、ポリオレフィン系樹脂の成形品では、その困難性から表面化粧無しの射出成形したままの生材による意匠であった物が、射出成形同時絵付けよる高意匠化の展開を図ることができるようになった。また、ポリプロピレン又はポリエチレンシートが2層構成の形態では、射出成形同時絵付けに必要な総厚を確保し、全体の価格も最小限に抑えた上で、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物との良好な接着性と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のプライマー層との密着性も共に確保でき、ポリプロピレン又はポリエチレンシートの加工と、アクリル樹脂シートの加工とが別個にオフラインでの加工が可能となる。
(2)本発明の絵付け成形品によれば、ポリオレフィン系樹脂の樹脂成形物に対してでも、優れた透明性及び密着性を有する成形品にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出成形同時絵付用シートの形態例を例示する断面図。
【図2】本発明の射出成形同時絵付用シートの別の形態例を例示する断面図。
【図3】射出成形同時絵付方法の一例を説明する概念図。
【図4】本発明の絵付け成形品を例示する断面図。
【符号の説明】
1 アクリル樹脂シート
2、2A 装飾層
3、3A、3B、3C プライマー層
4 接着剤層
5、5A、5B ポリプロピレン又はポリエチレンシート
6 樹脂成形物
41 吸引孔
42 シートクランプ
Ma 射出成形型(雄型)
Mb 射出成形型(雌型)
P 絵付け成形品
S 射出成形同時絵付用シート
Claims (9)
- ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、最表面層となる透明なアクリル樹脂シートに、少なくとも、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物を主成分とする装飾層と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とするプライマー層と、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートとが、この順に積層されてなる、射出成形同時絵付用シート。
- ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、最表面層となる透明なアクリル樹脂シートに、少なくとも、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層と、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層と、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を主成分とする第二のプライマー層と、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートとが、この順に積層されてなる、射出成形同時絵付用シート。
- 分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートの裏面に、更に、分子中に極性官能基の無いポリプロピレン又はポリエチレンシートを積層してなる、請求項1又は2記載の射出成形同時絵付用シート。
- ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、最表面層となる透明なアクリル樹脂シートに、少なくとも、バインダーの樹脂が塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物又はアクリルウレタン樹脂を主成分とする装飾層と、ウレタン樹脂を主成分とするプライマー層と、分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートとが、この順に積層されてなる、射出成形同時絵付用シート。
- 分子中に極性官能基を有するポリプロピレン又はポリエチレンシートが、エチレン又はプロピレンの単量体とアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸とを共重合して重合体分子中にカルボキシル基を付与、或いは一旦、酢酸ビニルと共重合した後、鹸化して重合体分子中に水酸基を付与したものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形同時絵付用シート。
- 上記共重合の形態がグラフト共重合である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の射出成形同時絵付用シート。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の射出成形同時絵付用シートが、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物の表面に積層されてなる、絵付け成形品。
- ポリオレフィン系樹脂がエチレンプロピレンゴムを含有する、請求項7記載の絵付け成形品。
- ポリオレフィン系樹脂がエチレンプロピレンゴムを該ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して1〜40重量部含有する、請求項8記載の絵付け成形品。
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