JP4247390B2 - 微粒子分級方法及び装置 - Google Patents
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Description
回分方式は、チューブやその他の形状の処理容器を用いて、一回の運転毎の対象微粒子を分級処理する方式である。回分方式では、少量ずつの処理しか行えず、バッチ間の粒子の粒径の均一性の保証が困難であるという問題がある。
半連続方式は、連続的な運転が可能な方式である。しかし、この方式では、例えば分級装置内に蓄積された分級微粒子の回収などのために、一定時間運転後には必ず定常運転状態を破らなければならないという問題がある。
完全連続方式は、原理的には定常運転状態を無限に続けることが可能な方式である。定常運転状態の中で試料の供給及び回収を完全に行うことができる。微粒子分級においてこの方式を用いると、分級処理量が飛躍的に増大するだけでなく、分級した回収微粒子の粒径を精密に揃えることへの道が開かれる。なぜなら回分方式の場合、上記のように、たとえ一回のバッチで精密に粒径を揃えた画分が得られたとしても、別のバッチでそれと粒径を精密に揃えることは難しく、どうしても粒径が微妙にずれがちとなる。ところが、完全連続方式では、このような問題はなく、また半連続方式におけるように一定時間運転後には必ず定常運転状態を破らなければならないという問題もないからである。
次に図2は、沈降平衡法を完全連続方式で実現するための装置原理を、従来のスイングローターとの比較で示したものである。完全連続方式の装置においては、試料溶液も階段状の密度勾配もローター内に時間的に連続して供給されるが、密度勾配の上を試料成分が沈降するに伴い浮遊密度の違いにより分離される機構に関しては、完全連続方式の場合もスイングローターの場合と全く同様であることが分る。さらに、このように沈降平衡法を完全連続方式で実現するための装置構造を図3に模式的に示す(米国特許第4425112号(特許文献1)、Pittsburgh Conference, March 2000, New Orleans、 LO、 USA(非特許文献1))。
(1)遠心ローター内の分離流路にて、分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離する遠心分離方式を用いた微粒子分級方法であって、
分離流路の入口に連続密度勾配形成器を設け、この連続密度勾配形成器により、液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続密度勾配を形成させ、かつ、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行い、
前記連続密度勾配形成器は、その内部に液相が流れる流路が存在し、この流路の幅がローター動径方向に圧縮されている圧縮部を有し、この圧縮部において密度勾配材の拡散距離を短縮するとともに濃度勾配を増大させ、ローター動径方向における密度勾配材の拡散に要する時間を短縮するものであることを特徴とする微粒子分級方法。
(2)分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離するための分離流路、原材料の供給のための入口及び分級した微粒子の回収のための出口が形成された遠心ローターを有し、
この遠心ローターの入口の前に、分離流路内で液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続的密度勾配を形成させる連続的密度勾配形成器を設け、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行い、
前記連続密度勾配形成器は、その内部に液相が流れる流路が存在し、この流路の幅がローター動径方向に圧縮されている圧縮部を有し、この圧縮部において密度勾配材の拡散距離を短縮するとともに濃度勾配を増大させ、ローター動径方向における密度勾配材の拡散に要する時間を短縮するものであることを特徴とする微粒子分級装置。
(3)遠心ローター内の分離流路にて、分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離する遠心分離方式を用いた微粒子分級方法であって、
液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続密度勾配を液相の温度勾配により形成させ、かつ、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行うことを特徴とする微粒子分級方法。
(4)分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離するための分離流路、原材料の供給のための入口及び分級した微粒子の回収のための出口が形成された遠心ローターを有し、
遠心ローター上において、高熱源をローター回転軸に近い方の全周に、低熱源をローターの外周側全周に設けて、遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続的密度勾配を形成させ、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行うようにしたことを特徴とする微粒子分級装置。
(5)ヒーターによる電熱を高熱源、低温に温度調節した遠心室温度を低熱源としたことを特徴とする微粒子分級装置。
この原理は装置の種類によらず成り立つものである。
液相中では、微小な粒子の場合、当該粒子に働く遠心力と液相中を移動する際に生じる抵抗力は速やかに等しくなる。簡単のために粒子形状を球とすると、
遠心力=1/6πd3(ρp−ρl)g
抵抗力=3πdμv (ストークスの法則)
d: 粒子直径
ρp: 粒子の浮游密度
ρl: 液相の密度
g: 遠心力場の加速度
μ: 液相の粘度
v: 沈降速度
という関係がある。
ここで、両者を等しいとおき、沈降速度vについて解くと、
v=d2(ρp−ρl)g/18μ ・・・式(1)
となる。
なお、遠心力場の加速度gは、
g=rω2で与えられる。
r: ローター回転軸からの距離
ω: ローター回転の角速度
試料導入ポートと目的試料回収ポートの幅を狭く(小さいΔrと)するのは、沈降(又は浮上)距離に関する微粒子毎の差異を小さくするためである。
また、コネクタの開口部における上下方向(ローター回転軸に平行な方向)のうちのりは、連続密度勾配形成器のそれに等しいが、コネクタの開口部における横幅(ローター回転軸および流路に直角な方向の幅)は、それぞれのコネクタ開口部における流速の平均線速度の(ローター回転軸から見た)角速度が全てのコネクタの間で等しくなるように設定する。
それに対し本実施例では、図9のC近傍の状態(BとCの中間からCとDの中間まで利用できる)の液相を用いて対象微粒子を分級する。まず、A→Cの過程を促進するため、「連続密度勾配形成器」を用いて液相を動径方向に大幅圧縮することにより、密度(密度勾配材の濃度)勾配ΔC/Δrを大きくし、かつ密度勾配材の拡散距離も小さくてすむようにしている。連続密度勾配形成器の下流で動径方向の圧縮を元に戻す。この区間で試料粒子の分離が行われるが、Dから分かるように、密度勾配が直線状の区間はその長さこそ短くなるが直線状という勾配形状とその勾配値はかなり長い時間保持されることを利用する。また仮に、密度勾配の勾配値が多少減少したとしても、液相の擾乱さえ起きず、そしてその減少の程度が安定していさえすれば(時間によって変化しないということでありさえすれば)問題とはならない。以上を踏まえ、密度勾配材としては、密度勾配材としてありふれた低分子のもの(水に対しては蔗糖や塩類)を用いればよい。
本発明では、沈降速度モードを利用しているので、沈降平衡モードの場合と異なり、形成された液相密度勾配の絶対密度値は重要でない。液相の擾乱が抑止されるとともに運転中の定常状態が保たれさえすればよい。
(1)ローター上の分離流路の動径範囲r1〜r2より広い動径範囲について、ローターの全周を温調している。ローター上の位置によらず、動径値により温度が一義的に決まるようにするためである。
(2)温調のための高熱源としては、肉厚の金属環の内側に、表面を絶縁したヒーター線を全周均一に貼り付けたものを用いる。低熱源としては、低温に精密温調した(ローターの収納されている)遠心室と温度平衡にあるローターの外縁部を用いる。ローター外縁部と遠心室との間の温度平衡は、大気圧下の遠心室内におけるローターの高速回転により達成されるが念のため、ローター外縁部に小さなフィンをつけておく。そして、高熱源と低熱源の間をローターの全周において伝熱体(厚めの金属など)で連結する。伝熱体は分離流路の一方(下方)のみでよい。
(3)ヒーター線と外界との間の導通手段としては、通常のモーターと同様の回転ブラシなどでよい。
(4)試料溶液の温度を、注入される位置の液相温度にあらかじめ等しくしておくため、試料溶液導入用に、分離流路とは別の流路を動径r3に沿って設定する。図においては、伝熱体の裏側において動径r3に沿って設定された流路をしばらく通ったあと、伝熱体の中を通して動径r3の位置で分離流路に対して開口している。
(5)上記開口部は、グラジエント液相導入部より、分離流路に沿ってある程度下流に行ったところに設定する。分離流路に導入されたグラジエント液相の中では、温度が安定する(流れも安定する)までしばらくの区間において乱流が起こるからである。
(6)グラジエント液相は、その上に形成された温度勾配により密度勾配を実現するための液相であるが、純溶媒(混合溶媒を含む)でも良いし、試料の安定化などの理由により特定の溶質成分を含む溶液でも良い。
(7)試料溶液の分離流路への導入は、流路への開口部から少し勢いをもって行われるようにする。試料溶液が流路壁に張り付いてしまい、流路壁の効果を強く受ける状況を避けるためである。
(8)目的分画を回収するための試料回収ポートは、その他の分画やグラジエント液相を回収するポートより流路の上流側に設置する。流路上の擾乱により、回収画分の品質が劣化することを防ぐためである。
(9)目的分画をよりシャープなものとして回収するためには、試料液を導入する開口部の直系および試料回収ポートの幅を狭くする。
(1)遠心ローターの両端において大口径ベアリングにより遠心ローターを支持する方式とする。
(2)遠心ローター回転軸を経由せずにギアなどにより回転駆動力を遠心ローターに伝える方式とする。例えばギアを用いる場合、駆動力を伝えるギアと、それとは別にフリーのギアをローターを挟んで反対側に設置し、両者でローターを挟み込む形式とすることによりローター回転軸の安定を図る方法も考えられる。
(3)遠心ローター回転軸に沿って回転軸両端から回転シールなどにより流路を接続する。2流路用の回転シールは既にFFFなどで確立した技術であるが、それを遠心ローターの上下両端に設けることにより、外界と遠心ローターの間に合計4流路を確保出来ることになる。この合計4流路を、導入側2流路(試料溶液、グラジエント液相)と回収側2流路(目的分画、その他の分画とグラジエント液相)に割り振ることになる。
我々は普段の生活において、温度による密度変化が有機溶媒より小さい水の場合でも温度差が存在すると対流が生じうることを経験している。通常の重力の強さのもとでも、より温度の低い液相が下方に位置を変え、より温度の高い液相が上方に位置を変えようとして実際に移動するわけである。このことは逆に言うと、温度の低い液相を上方に移動させようとしたり、温度の高い液相を下方に移動させようとしても、液相自身がそのような移動には抵抗する、ということである。遠心力場という、非常に強い重力場の元では、そのような抵抗力は非常に強いものとなる。さらに、温度による密度変化が水より大きい有機溶媒を液相として用いる場合には、より小さな温度勾配でも液相擾乱に対して十分な抵抗力を得られると考えられる。
例えば、本発明では、原料導入部の途中においてフィルターを使用することができる。処理対象物の中に大きな粒子が混入していると、ローターの流路壁などにたまってしまう可能性があるので、それを避けるためには流路途中にフィルターをおくのである。フィルター設置位置は別にローター上でなくてよく、むしろずっと上流の、原料液容器から原料を採取するあたりの方がよい。フィルターの網目は処理対象となる微粒子径より大きくなければならないが、その設置目的が達成されるよう大き過ぎないものが好ましい。
また、本発明では、遠心ローターの分離流路においてクッション液相を使用することもできる。上述のように処理対象物(微粒子)の中に大きめの粒子が混入していると、ローターの外側流路壁などに貯まってしまう可能性があるのであるが、ローター内流路の一番外側に試料粒子より密度の高い液相を流すことで、大きな粒子などが外側流路壁に到達することを防止するのである。その場合、クッション液相は、連続密度勾配形成器の下流にポートを設けてそこからローター内の最外周に流し込めばよい。このポートも原料導入ポートも、その上流から流れてくる密度勾配を乱しにくい形状(流線形)とすることが好ましい。
Claims (5)
- 遠心ローター内の分離流路にて、分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離する遠心分離方式を用いた微粒子分級方法であって、
分離流路の入口に連続密度勾配形成器を設け、この連続密度勾配形成器により、液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続密度勾配を形成させ、かつ、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行い、
前記連続密度勾配形成器は、その内部に液相が流れる流路が存在し、この流路の幅がローター動径方向に圧縮されている圧縮部を有し、この圧縮部において密度勾配材の拡散距離を短縮するとともに濃度勾配を増大させ、ローター動径方向における密度勾配材の拡散に要する時間を短縮するものであることを特徴とする微粒子分級方法。 - 分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離するための分離流路、原材料の供給のための入口及び分級した微粒子の回収のための出口が形成された遠心ローターを有し、
この遠心ローターの入口の前に、分離流路内で液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続的密度勾配を形成させる連続的密度勾配形成器を設け、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行い、
前記連続密度勾配形成器は、その内部に液相が流れる流路が存在し、この流路の幅がローター動径方向に圧縮されている圧縮部を有し、この圧縮部において密度勾配材の拡散距離を短縮するとともに濃度勾配を増大させ、ローター動径方向における密度勾配材の拡散に要する時間を短縮するものであることを特徴とする微粒子分級装置。 - 遠心ローター内の分離流路にて、分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離する遠心分離方式を用いた微粒子分級方法であって、
液相の溶液密度が遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続密度勾配を液相の温度勾配により形成させ、かつ、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行うことを特徴とする微粒子分級方法。 - 分離対象とする微粒子試料を液相中において沈降速度法により分離するための分離流路、原材料の供給のための入口及び分級した微粒子の回収のための出口が形成された遠心ローターを有し、
遠心ローター上において、高熱源をローター回転軸に近い方の全周に、低熱源をローターの外周側全周に設けて、遠心ローターの動径方向において連続的に増大する連続的密度勾配を形成させ、原材料の供給及び分級した微粒子の回収を完全連続方式により行うようにしたことを特徴とする微粒子分級装置。 - ヒーターによる電熱を高熱源、低温に温度調節した遠心室温度を低熱源としたことを特徴とする請求項4に記載の微粒子分級装置。
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