JP4241909B2 - 弁の軸方向の動きによって作動する開閉部を有する弁付きコネクタ - Google Patents
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Description
技術分野
本発明は、弁の軸方向の動きによって作動する一体型開閉システム持つ弁付きコネクタに関する。弁付きコネクタは、特に心臓血管用カテーテル(catheter)または導入鞘(introducer sheath)の止血弁として、心臓血管用カテーテルおよび外科用器具の分野で多く利用される。さらに、この弁付きコネクタは、食道や尿道のような他の体内管で用いられるカテーテルおよび外科用器具とともに使用することも可能である。
【0002】
発明の背景
カテーテル法による処理および多くの外科的処理の過程において、1つのカテーテルまたは器具をある通路または内腔を通して別のカテーテルまたは器具に挿入することが頻繁に必要となる。二つのカテーテルまたは器具間にある環状の間隙からの漏血または他の流体の損失を防ぐため、外側カテーテルまたは器具の基端部に止血弁または他のシール装置を使用するのが通常である。内側カテーテルまたは器具は止血弁を経て挿入され、その止血弁は内側カテーテルまたは器具の周囲に流体密封シールを形成する。止血弁は、導入鞘の場合に代表されるように外側カテーテルまたは器具と一体化されることがあり、或いは、誘導カテーテルおよび多くの他の心臓血管用カテーテルに代表されるように外側カテーテルまたは器具に取り付け可能な別体のコネクタに設けられることもある。このような弁付きコネクタに共通の形状は、その基端部に止血弁または他のシール装置を含む主管と、治療若しくは診断上の流体の注入若しくは吸引または血圧測定を可能にする側管とを有するY型形状である。
【0003】
脆弱なまたは極度に柔軟なカテーテルまたは器具をそのような止血弁またはシール装置に挿入するときに1つの問題が生じる。脆弱なカテーテルまたは器具は、止血弁またはシール装置を通る際に変形または損傷することがある。さらに、多くの公知の弁付きコネクタおよび結合器具は、挿入時にカテーテルまたは器具の挿入阻害、屈曲または損傷を起こすことがある内部段差または空洞、急激な傾斜および側方通路のようなカテーテルまたは器具の通路にとっての別の障害をも含んでいる。この問題は、極度に柔軟な若しくは脆弱な極細誘導ワイヤ若しくは極細カテーテルを使用する際、または、例えば膨張カテーテルのバルーンに取り付けられたステント(stent)のような摩擦若しくは縮れによって取り付けおよび保持された組立体を使用する際に特に懸念される。
【0004】
既存の弁付きコネクタの止血弁またはシール装置は、二種に分類することができる。
【0005】
ここでタイプ1と称する一般的な種類は、通常状態において開いており、ネジ付きキャップを用いて円筒またはドーナツ型のシール部材を圧縮することで閉めることが可能である能動弁を含んでいる。図1および2に示されているように、ネジ付きキャップを締め付けるかまたは緩めることによって、導入されたカテーテルの直径に応じた開閉部の調整が行われる。たとえシステム内に器具が導入されていない場合でも、完全に閉鎖させることが可能である。
【0006】
このシステムの長所は、弁の開放時に、カテーテルおよび器具の挿入のための開放通路を弁が提供するということである。このシステムの短所は、圧縮シール機構の原理に関わるものである。つまり、導入されたカテーテルが移動できるようにするにはネジ付きキャップを緩めなければならず、その結果、血液の漏出が誘発される。同時にシール口を再度閉鎖するためには、ネジ付きキャップを締め付けなければならない。これら不可欠な操作は、カテーテル処理をしている内科医にとって非常に面倒なものである。挿入されたカテーテルを、弁を緩めないまま動作させると、脆弱なカテーテルまたは器具はすぐに損傷してしまう。さらに、ネジ付きキャップを過度に締め付けると、弁を通して導入されたカテーテルまたは器具の損傷を引き起こす。
【0007】
タイプ2と称するもう一方のタイプは、図3および4に示されているように、その弾性と切断または鋳造された形状とのために、手動による調整も必要なくシールを維持しつつカテーテルの通路を確保することを可能とする、通常状態において閉じている受動弁または止血弁を含んでいる。この場合、シール部材は受動的かつ連続的であり、弁の柔軟性および低摩擦抵抗のためにカテーテルを移動させることが可能となる。しかしながら、タイプ2のシステムの主な問題は、極細誘導ワイヤおよび極細カテーテルのような細くかつ脆弱な器具、または、例えば膨張カテーテルのバルーンに取り付けられたステントのような摩擦若しくは縮れによって取り付けおよび保持された組立体を導入する際に生じる。つまり、この場合は、弁を横断して押し込まれる小型で硬い誘導管を利用しなければならず、これによって、弁を通じて脆弱な器具を導入することが可能になる。この管はその後除去され、弁は器具の基部の周りをシールする。もちろん、誘導管は導入されたカテーテル基部と同軸の位置に残存するので、手術者にとっての障害となり得る。この問題を回避するための予見できる1つの解決法は、スリット分離式誘導管を使用することである。しかしながら、このようなスリット分離式誘導管は非常に脆弱であり、しかも弁を横断することおよび挿入された器具を保護することが効果的にできない。
【0008】
この問題に対する別の解決策は、誘導管をコネクタ装置と一体化することである。この解決策は米国特許5195980号に示されている。この特許では、管状突出部を持つ結合器具が弁付きコネクタの基端部に摺動可能に取り付けられている。その結合器具を弁付きコネクタの末端方向に摺動させることによって、管状突出部が弁を貫通し、流体または器具の通路となるように弁を開く。しかしながら、この解決策は二つの別の問題を有している。第一に、追加された結合器具および管状突出部は不必要に弁付きコネクタを長いものとし、その結果、全ての挿入されたカテーテルおよび器具を同様にさらに長くする必要が生じる。第二に、これらのコネクタの形状は、挿入時にカテーテルまたは器具の挿入阻害、屈曲または損傷を起こすことがあり、かつ、血流停滞箇所および血栓箇所を発生させる可能性のある内部段差または空洞をコネクタ内に形成する。
【0009】
発明の開示
したがって、本発明の主な目的は、通常状態において閉じた止血弁であるタイプ2の受動的シールの利点と、極度に柔軟なまたは脆弱なカテーテルおよび器具を安全に導入するための開放通路を提供するというタイプ1の利点とを併せ持つ弁付きコネクタを提供することによって、従来の技術における技術的な問題点を解決することである。
【0010】
さらに本発明の目的の1つは、特に別体の器具または外部部品を使用することなく、手術者による単純な操作によって止血弁を開閉するための一体型閉鎖システムを有する弁付きコネクタを提供することにより、従来技術におけるもう1つの技術的問題点を解決することである。
【0011】
本発明によって、いわば容易かつ低コストに、しかも産業界と医療界の両分野において使用可能に、これらの技術的問題点を同時に解決することができる。
【0012】
これらの目的に従い、本発明は、主管、末端部、及び、前記主管から外へ突出した管状部分が設けられた基端部を有する、末梢部にあるコネクタ本体と、通路を有する弁要素を含み、前記コネクタ本体の前記基端部において軸方向に移動可能に取り付けられた、基部にある弁本体とを備えており、前記弁本体は、前記コネクタ本体の前記管状部分が前記弁要素の前記通路と無関係である閉鎖位置から、前記管状部分の基端部が前記弁要素に当接させられて前記弁要素の少なくとも一部を開放させる開放位置まで移動可能である弁付きコネクタという形態を取っている。
【0013】
好ましくは、前記コネクタは、単に軸方向へ摺動させることで止血弁を開閉させることができる一体型閉鎖システムを持つ、通常状態において閉じた受動的止血弁を有している。また、好ましくは、弁付きコネクタ装置の本体は、主管と、主管から分岐した側管とを持つY型形状をしている。主管の基端部に摺動可能に接続された弁本体には、止血弁が収められている。止血弁は、コネクタ本体の主管基端部から突出した円筒形突出部が止血弁の中央開口部を貫くようにY型形状コネクタ本体の末端方向に弁本体を摺動させることによって開けられ、これによって、誘導ワイヤ、カテーテルまたは他の器具を挿入するため開放通路が形成される。
【0014】
この弁付きコネクタの構造により、挿入時にカテーテル若しくは器具の挿入阻害、屈曲若しくは損傷を起こしたり、または、血流停滞箇所および血栓箇所を発生させることのあるコネクタ内の全ての内部段差および空洞が排除される。さらに、上記閉鎖システムの構造では、コネクタ本体を付加的に長くする必要がない。
【0015】
本発明の他の目的、特徴および利点は、図面を参酌して作成された以下の説明を考慮することによって明確となるであろう。
【0016】
発明の詳細な説明
図1は、ここでタイプ1と称する公知の従来技術による弁付きコネクタ100を示している。タイプ1の弁付きコネクタは、圧縮式結合器具、そして時にはトーフィ・ボースト結合器具(Touhy-Borst fitting)として幅広く知られている。コネクタ100の弁要素は、中央を通る開放通路104を有する円筒またはドーナツ型のエラストマー性シール部材102である。弁要素102は、図1に示されているように休止位置において通常は開いており、そのため、シール部材102中央の開放通路104を通して副次的器具120を導入することが可能となっている。開放通路104により、極細誘導ワイヤおよび極細カテーテルのような脆弱な器具を導入することができるが、開放位置の時に弁付きコネクタ100を通して逆流漏血してしまうことがある。加えるに、市販されているタイプ1の弁付きコネクタの多くは、特に副次的器具120の末端部に湾曲加工が施されている場合、副次的器具120が弁付きコネクタ100を貫通することを困難にしてしまう内部段差または微小な傷をコネクタ100の本体106に含む。さらに、副次的器具が血管ステントのような摩擦によって副次的器具の外側に取り付けられた第3次器具を含む場合、第3次器具がコネクタ100の本体106の内部段差または端部に接触することによって移動または遊離することがある。
【0017】
図2は、図1の従来技術によるタイプ1の弁付きコネクタを示しており、弁付きコネクタ100を通して導入された副次的器具120の周りをシールする閉じた位置の弁要素102を示している。弁付きコネクタ100は、中央に開放通路110を有するネジ付きキャップ108を持つ。ネジ付きキャップ108は、エラストマー性シール部材102が軸方向に圧縮されるようコネクタ100の本体106方向に締め付けられ、その結果シール部材102中央部の通路104が閉じる。つまり、ネジ付きキャップ108は、カテーテル、誘導ワイヤまたは他の器具の周りにおいてエラストマー性シール部材102が閉じるように締め付けることができ、また、副次的器具が挿入されない場合でも弁要素102を完全に閉じてしまうこともできる。特に副次的器具120が脆弱な極細カテーテルの場合において、副次的器具120を破損しない効果的なシールを形成するよう、最善の注意を払ってネジ付きキャップ108を調節しなければならない。一般的に、弁102の内側にある副次的器具120が軸方向に動作できるよう、ネジ付きキャップ108を緩めておかなければならないが、それにより血液の逆流が引き起こされる可能性がある。ネジ付きキャップ108を緩めないまま副次的器具120を動かしてしまうと、特に脆弱な若しくは極端に柔軟なカテーテルまたは器具を用いる場合、副次的器具120が容易に破損してしまう。
【0018】
タイプ1の弁付きコネクタ100は、弁要素102の動的シール機構がエラストマー性シール部材102を開閉する際のネジ付きキャップ108による煩雑な回転動作を必要とするというもう1つの短所を有する。ネジ付きキャップを通して副次的器具120を挿入する場合および局部が不可避的に血液で覆い隠された場合、ネジ付きキャップ108の回転動作はさらに複雑なものとなる。
【0019】
図3は、ここでタイプ2と称するもう1つの公知の従来技術による弁付きコネクタ200を示している。タイプ2の弁付きコネクタは、受動弁または止血弁として広く知られている。コネクタ200の弁要素は、副次的器具を導入するための中央通路204を有するエラストマー性シール部材202である。公知であるタイプ2の弁付きコネクタ200において、エラストマー性シール部材202は、自己シールタイプの中央通路204を形成する選択されたパターンでそれぞれ孔が開けられまたはスリットが設けられた1、2または3つの積層されたエラストマー性シール要素を通常含んでいる。図3に示されているように、弁要素202は休止位置にあるときには通常状態において閉じているので、中央通路204に器具が挿入されていないときおよび副次的器具が中央通路204に挿入されているときに、弁要素202は漏血を防ぐように受動的なシールを形成する。弁要素202は通常状態において閉じているため、中央通路204を通して脆弱なまたは極端に柔軟な副次的器具を損傷することなく導入することが非常に困難となる。この困難さは、副次的器具の末端部に湾曲加工が施されている場合、または、摩擦によって副次的器具の外側に取り付けられた血管ステントのような第3次器具がある場合にさらに悪化する。
【0020】
この困難な問題を克服するために、弁付きコネクタ200を通して副次的器具220を導入するための別体の誘導管230が使用されることがある。図4は、副次的器具220を導入すべく中央通路204を開放するために弁要素202に別体の誘導管230が挿入された、図3の従来技術によるタイプ2の弁付きコネクタ200を示している。誘導管230は、中央管232を有し、さらに漏斗状の基端部234を持っていてもよい。副次的器具220は誘導管230の中央管232に挿入され、その後誘導管230は弁付きコネクタ200から取り外される。これは脆弱なまたは極端に柔軟な副次的器具の導入を容易にする一方で、副次的器具220の基部であって器具220の扱いの障害となる場所および器具220の有効使用長さを低減させる場所に誘導管230が残存するという短所がある。この問題を克服するため、弁付きコネクタ200に導入した後で副次的装置220から取り外せるようなスリット分離式誘導管が使用される場合がある。しかしながら、このようなスリット分離式誘導管は幾分か脆弱であってエラストマー性シール部材202を突破するのが困難であり、また、副次的器具220をシール部材202の中央通路204に導入する際に十分に保護することができないことがある。
【0021】
図5は、本発明に従って作成された弁付きコネクタ装置300の第1の実施の形態を示している。弁付きコネクタ装置300は様々な可能な物理的形状のいずれか1つを取ることが可能である。例えば、弁付きコネクタ装置300は、カテーテル、誘導カテーテル、導入鞘または外科用排管のような他の器具の基端部と一体化されることがある。代替的に、弁付きコネクタ装置300は、カテーテル、誘導カテーテル、導入鞘または外科用排管のような他の器具に取り付け可能な別体の部品であってもよい。図5に示す本発明の特に好ましい実施の形態において、弁付きコネクタ装置300は、主管304と主管304から分岐した側管306とを持つY型形状のコネクタ本体302を有するものとして構成されている。好ましくは、主管304の内径は、Y型形状コネクタ本体302の全体において、深い段差、剥き出しの端部または急激な傾斜のない滑らかで連続的なものである。好ましくは、Y型形状コネクタ本体302は、カテーテル、誘導カテーテル、導入鞘または外科用排管のような他の器具を弁付きコネクタ装置300を取り付けるために、主管304の末端部分に回転可能な雄のルアー型固定器具のような取り付け機構308を有している。主管304の基端部は、ドーナツ形のOリング334または他の摺動シール部材が収容された環状の溝328が設けられた円筒形の隆起すなわちボス326を有している。薄肉で円筒形の突出部330が、円筒形のボス326から基端部方向に突出している。側管306の基端部は、注入器または連結管のような他の装置を取り付けるために雌のルアー型固定連結器具のような第2の取り付け機構310を有することが好ましい。好ましくは、Y型形状コネクタ本体302は、ポリカーボネイト、ポリメチルメタクリレイト、ポリスチレンなどのような硬くて透明な医療用プラスチック性材料の射出成形物である。
【0022】
Y型形状コネクタ本体302の主管304の基端部には、弁本体312が取り付けられている。弁本体312は、主管304の基端部にある円筒形ボス326にぴったりと摺動できる内径332を有し、また弁本体312は、Y型形状コネクタに対して軸方向に可動である。ドーナツ形Oリング334は、弁本体312と円筒形ボス326との間に摺動シールを形成する。弁本体312の内径332末端部にある内側の隆起336は円筒形ボス326に引っかかり、弁本体312の基端部方向への軸方向移動を制限する移動止めとしての役割を果たす。弁本体312内には、中央通路320、322を有する止血弁314が取り付けられている。環状の弁キャップ324は、弁本体312の内部に止血弁314を保持している。弁キャップ324は、摩擦、引っかかり、ネジ、接着剤、または、超音波溶接を例とする溶接によって弁本体312に取り付けられてよい。
【0023】
弁付きコネクタ装置300の止血弁314には、公知の受動的止血弁の構造をいずれも利用することができる。例として、図5は、中央通路320の基端部に設けられた第1の円盤型弁要素316と、中央通路322の末端部に設けられた第2の円盤型第2の弁要素318とを含む止血弁314を示している。一つの典型的な実施の形態では、中央通路320の基端部が第1の円盤型弁要素316を通る円形の孔により画定され、中央通路322の末端部が第2の円盤型弁要素318を通るY型スリットにより画定されて前記円形の孔と位置合わせされる。別の典型的な実施の形態では、中央通路320の基端部が第1弁要素316を貫く第1の直線状スリットで画定され、中央通路322の末端部が第2の弁要素318を貫通する第2の直線状スリットで画定されて第1の直線状スリットと直角に位置合わせされる。スリットまたは穿孔の形状に関わらず、第1の弁要素316および第2の弁要素318は、シリコン、ラテックス、ポリウレタンまたは射出成形可能な熱可塑性エラストマーのようなエラストマー性物質からなることが好ましい。任意的に、止血弁314の中央通路320、322での摩擦を低減するために、弁要素316、318にシリコンオイルのような生体適応性を有する少量の潤滑油を塗布してもよい。代替的には、低摩擦性被覆剤または自己潤滑性物質が弁要素316、318に使用されてもよい。さらに、止血弁314の中央通路320、322を開けるために必要なしきい値力を低下させるために、第1の弁要素316の基端部側および/または第2の弁要素318の末端部側に浅い円錐形の凹み338、340が形成されてもよい。
【0024】
図5に示されているように弁付きコネクタ装置300が通常状態で閉鎖された休止位置にあるとき、弁本体312はY型形状コネクタ本体302に対して最も基端部側にある。薄肉の円筒形突出部330の基端部は、円筒形突出部330と第2の弁要素318との相互接触部がシールされるようなわずかな圧縮力で第2の弁要素318の末端部側を押圧している。止血弁314の中央通路320、322を開放するためには、図6で示されているように、弁本体302がY型形状コネクタ本体302に対して末端方向に移動させられる。好ましくは、Y型形状コネクタ本体302の円筒形ボス326上で弁本体312を移動させることが単純な軸方向の摺動によって実現される。代替的には、弁本体312を円筒形ボス326とネジ接合させて、弁本体312を回転させることでY型形状コネクタ本体302に対して軸方向に移動できるようにしてよく、このときネジ山の間隔を広くとることが望ましい。弁本体312を末端方向に動作させると、薄肉の円筒形突出部330は、止血弁314の末端部側から基端部側へと中央通路320、322を貫く。このようにして止血弁314の中央通路320、322が開放されると、弁付きコネクタ装置300を通して容易に副次的器具350が導入される。いったん副次的器具350が弁付きコネクタ装置300に導入されると、止血弁314を閉じるためにY型形状コネクタ本体302に対して基端部方向に弁本体312が移動させられ、副次的器具350の基端部の周囲がシールされる。
【0025】
導入された副次的器具の寸法が小さい場合、弁要素が完全に開口するのに対応する変位よりも短い距離だけ弁本体を動作させてよい。この場合、管状部分の端部は、弁要素を部分的に開放するように弁要素に当接する。
【0026】
止血弁314を開閉する動作が非常に迅速かつ単純であるため、中央通路320、322が開放している短時間における止血弁を通しての血液の逆流漏血はほとんど生じることがない。また、止血弁314は受動的にシールを施すので、副次的器具350を操作するために止血弁314を再度開くまたは緩める必要がなく、そのために逆流漏血の起こる可能性がさらに低下する。止血弁314の受動シールのもう1つの長所は、より丈夫な器具およびカテーテルを挿入するとき並びに器具およびカテーテル(たとえより脆弱な器具およびカテーテルであっても)を取り外す際に、標準的な受動的シール止血弁として弁付きコネクタ装置300を扱うことが可能なことである。例えば外部に取り付けられたステントを有するステントデリバリーカテーテルのような、閉じた止血弁314から引き抜くのに耐えることのできない脆弱な器具またはカテーテルを除去するとき、単にY型形状コネクタ本体302に対して末端方向に弁本体312を押すことにより、中央通路320、322が再開放される。
【0027】
図7は、本発明に従って作成された弁付きコネクタ装置400の第2の実施の形態を示している。上述した実施の形態と同様に、弁付きコネクタ装置400は、カテーテル、誘導カテーテル、導入鞘または外科用排管と共に使用される別体または一体化された部品を含み、様々な可能な物理的形状のいずれ1つを取ることが可能である。本発明における特に好ましい実施の形態が図7に示されており、主管404と主管404から分岐した側管406とを持つY型形状のコネクタ本体402を備えている。主管404の内径は、Y型形状コネクタ本体402の全体において、深い段差、剥き出しの端部または急激な傾斜のない滑らかで連続的なことが好ましい。Y型形状コネクタ本体402は、主管404の末端部に接続された回転可能な雄のルアー型固定器具のような第1の取り付け機構408、およびカテーテル、誘導カテーテル、導入鞘、外科用排管、注入器または連結管のような他の器具を取り付けるために側管406の基端部に接続された雌のルアー型固定器具のような第2の取り付け機構410を有している。主管404の基端部は、円筒形の隆起すなわちボス426と、円筒形ボス426から基端部方向に突出している薄肉の円筒形突出部430とを有する。Y型形状コネクタ本体402は、ポリカーボネイト、ポリメチルメタクリレイト、ポリスチレンなどの硬くて透明な医療用プラスチック性材料の射出成形物であることが好ましい。
【0028】
Y型形状コネクタ本体402の主管404の基端部には、弁本体412が取り付けられている。弁本体412は、主管404の基端部にある円筒形ボス426にぴったりと摺動できる内径432を有し、また弁本体412はY型形状コネクタに関して軸方向に可動である。弁本体412の内径432末端部にある内側の隆起436は、円筒形ボス426に引っかかり、弁本体412の基端部方向への軸方向動作を制限する移動止めとしての役割を果たす。弁本体412内には、中央通路420を有する止血弁414が取り付けられている。環状の弁キャップ424は、弁本体412の内部に止血弁414を保持している。弁キャップ424は、摩擦、引っかかり、ネジ、接着剤、または、超音波溶接を例とする溶接によって弁本体412に取り付けられてよい。
【0029】
この実施の形態における弁付きコネクタ装置400の止血弁414は、シリコン、ラテックス、ポリウレタンまたは射出成形可能な熱可塑性エラストマーのようなエラストマー性物質を射出成形した単一部材からなる弁要素416を有している。この単一部材からなる弁要素416は、中央通路420と軸方向に位置合わせされた中央開口418が設けられたほぼ円筒形の外形を有している。中央開口418は、Y型形状コネクタ本体402の薄肉の円筒形突出部430との接触面に摺動流体密封シールが形成されるように円筒形突出部430と摺動締り嵌めをする。上述の実施の形態と同様に、弁要素416の中央通路420は、末端部側のY型スリットと位置合わせされた基端部側の円形の孔、末端部側の第2の直線状スリットに対して直角に位置合わせされた基端部側の第1の直線状スリット、または、他の公知の止血弁構造により画定されてよい。スリット若しくは孔は弁要素416に鋳造されてもよいし、または、射出成形後に弁要素416に切り込みを入れることによって形成されてもよい。任意的に、止血弁414の中央通路420での摩擦を低減するために、弁要素416にシリコンオイルのような生体適応性を有する少量の潤滑油を塗布してもよい。代替的には、低摩擦性被覆剤または自己潤滑性物質が弁要素416に使用されてもよい。さらに、止血弁414の中央通路420を開けるために必要なしきい値力を低下させるために、弁要素416の基端部側および/または末端部側に浅い円錐形の凹み438が形成されてもよい。
【0030】
図7に示されているように弁付きコネクタ装置400が通常状態において閉鎖された休止位置にあるとき、弁本体412はY型形状コネクタ本体402に対して最も基端部側にある。薄肉の円筒形突出部430の基端部は、弁要素416の中央開口418の内側に摺動流体密封シールを形成する。止血弁414の中央通路420を開放するためには、図8で示されているように、好ましくは単純な軸方向の摺動動作によって、弁本体412がY型形状コネクタ本体402に対して末端方向に移動させられる。弁本体412を末端方向に動作させると、薄肉の円筒形突出部430は、止血弁414の末端部側から基端部へと中央通路420を貫く。このようにして止血弁414の中央通路420が開放されると、弁付きコネクタ装置400を通して容易に副次的器具450が導入される。いったん副次的器具450が弁付きコネクタ装置400に導入されると、止血弁414を閉じるためにY型形状コネクタ本体402に対して基端部方向に弁本体412が移動させられ、副次的器具450の基端部の周囲がシールされる。副次的器具450を抜き去る場合、止血弁414は、Y型形状コネクタ本体402に対して末端部方向に弁本体412を押すことによって容易に再開放される。
【0031】
上述した実施の形態と同様に、止血弁414を開閉する動作が非常に迅速かつ単純であるため、中央通路420が開放している短時間における止血弁414を通しての血液の逆流漏血はほとんど生じることがない。止血弁414は受動的にシールを施すので、止血弁414を再度開くまたは緩める必要なく、副次的器具450を操作することができるようになる。また、より丈夫な器具およびカテーテルを挿入するときに、標準的な受動的シール止血弁として止血弁414を扱うことが可能なことである。
【0032】
以上、典型的な実施の形態および本発明を実施するためのベストモードに関して本発明を説明したが、当業者にとっては、本発明の趣旨および観点から外れることなく、多くの修正、改良並びに様々な具体化、適用および変形のサブコンビネーションを本発明に施すことができることは明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】 通常状態において開いた弁を有する従来技術によるタイプ1の弁付きコネクタを示しており、副次的器具を導入するための開放位置にある弁が示されている。
【図2】 図1の従来技術によるタイプ1の弁付きコネクタを示しており、閉鎖位置にある弁が示されている。
【図3】 通常状態において閉じた弁を有する従来技術によるタイプ2の弁付きコネクタを示しており、閉鎖された休止位置にある弁が示されている。
【図4】 図3の従来技術によるタイプ2の弁付きコネクタを示しており、副次的器具を導入すべく弁を開けるために弁を通して挿入された別体の誘導管が示されている。
【図5】 本発明に従って作成された弁付きコネクタ装置の第1の実施の形態を示しており、通常状態の閉じた位置にある弁が示されている。
【図6】 図5の弁付きコネクタ装置を示しており、副次的器具を導入すべく弁が開くように作動した装置が示されている。
【図7】 本発明に従って作成された弁付きコネクタ装置の第2の実施の形態を示しており、通常状態の閉じた位置にある弁が示されている。
【図8】 図7の弁付きコネクタ装置を示しており、副次的器具を導入すべく弁が開くように作動した装置が示されている。
Claims (11)
- 主管、末端部、及び、前記主管から外へ突出した管状部分が設けられた基端部を有する、末梢部にあるコネクタ本体と、
通路を有する弁要素を含み、前記コネクタ本体の前記基端部において軸方向に移動可能に取り付けられた、基部にある弁本体とを備えており、
前記弁本体は、前記コネクタ本体の前記管状部分が前記弁要素の前記通路と無関係である閉鎖位置から、前記管状部分の基端部が前記弁要素に当接させられて前記弁要素の少なくとも一部を開放させる開放位置まで移動可能である弁付きコネクタ。 - 前記弁本体が開放位置にあるとき、前記コネクタ本体の前記管状部分が前記弁要素の前記通路を通って突出する請求項1の弁付きコネクタ。
- 前記閉鎖位置から前記開放位置まで移動するとき、前記コネクタ本体から突出した前記管状部分が、末端部側から基端部側へと前記弁要素を貫く請求項1および2のいずれか1項の弁付きコネクタ。
- 前記コネクタ本体が主管と主管から分岐した側管とを持つY型形状であり、前記弁本体が前記主管の基端部に位置しており、前記コネクタ本体が前記主管の末端部に第1の取り付け手段を、そして前記側管の基端部に第2の取り付け手段を有する請求項1〜3のいずれか1項の弁付きコネクタ。
- 前記第1の取り付け手段が雄のルアー型固定コネクタを備えており、かつ、前記第2の取り付け手段が雌のルアー型固定コネクタを備えている請求項4の弁付きコネクタ。
- 前記弁本体が前記閉鎖位置にあるとき、前記弁要素の前記通路が閉じて流体密封シールを形成する請求項1〜5のいずれか1項の弁付きコネクタ。
- 前記弁本体が前記開放位置にあるとき、前記コネクタ本体に挿入される副次的器具を導入するための障害物がない連続した管を前記コネクタ本体が提供する請求項1〜6のいずれか1項の弁付きコネクタ。
- 前記弁本体が前記閉鎖位置にあるとき、前記弁要素の前記通路が閉じて前記通路に挿入される副次的器具の周囲に流体密封シールを形成する請求項1〜7のいずれか1項の弁付きコネクタ。
- 前記弁本体と前記コネクタ本体との間に摺動シールをさらに備えている請求項1〜8のいずれか1項の弁付きコネクタ。
- 前記弁要素と前記コネクタ本体から突出する前記管状部分との間に摺動シールをさらに備えている請求項1〜9のいずれか1項の弁付きコネクタ。
- 前記弁要素がエラストマー性物質からなる請求項1〜10のいずれか1項の弁付きコネクタ。
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