JP4119104B2 - ヒータ付プッシャ、電子部品ハンドリング装置および電子部品の温度制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ICデバイスなどの電子部品を試験するための装置において電子部品の温度制御を行うことのできるプッシャ、そのようなプッシャを備えた電子部品ハンドリング装置、および電子部品の温度制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ICデバイス等の電子部品の製造課程においては、最終的に製造された電子部品を試験する試験装置が必要となる。このような試験装置の一種として、常温よりも高い温度条件(熱ストレス条件)で、複数のICデバイスを一度に試験するための装置が知られている。
【0003】
上記試験装置においては、テストヘッドの上部にテストチャンバを形成し、テストチャンバ内をエアにより所定の設定温度に制御しながら、同様に所定の設定温度にプレヒートした複数のICデバイスを保持するテストトレイをテストヘッド上のソケットに搬送し、そこで、プッシャによりICデバイスをソケットに押圧して接続し、試験を行う。このような熱ストレス下の試験により、ICデバイスは試験され、少なくとも良品と不良品とに分けられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記テストチャンバにおいては、熱は外壁やソケットから逃げていくため、テストチャンバの中心付近に待機しているプッシャの温度は設定温度よりも高く、ソケットの温度は設定温度よりも低くなる。この状態で、所定の設定温度にプレヒートしたICデバイスをプッシャによりソケットに押し付けると、ICデバイスは、設定温度よりも高い温度になっているプッシャの影響を受けて最初は温度が上昇し、次いで設定温度よりも低い温度になっているソケットの影響を受けて温度が低下する。また、ICデバイスが動作時(試験時)に自己発熱するものである場合には、試験時にICデバイスの温度が設定温度よりも過度に高くなってしまうことがある。
【0005】
このようにICデバイスの温度が設定温度から大きく外れてしまうと、ICデバイスの正確な試験を行うことができない。例えば、設定温度よりも過度に低い温度でICデバイスの試験を行った場合には、不良品を良品と判断することとなり、設定温度よりも過度に高い温度でICデバイスの試験を行った場合には、良品を不良品と判断して歩留りが悪くなる。
【0006】
ICデバイスの温度制御を行うために、ヒートシンクとしてのプッシャとICデバイスとの間にヒータを介在させる構造が開示されている(米国特許第5,821,505号、同第5,844,208号、同第5,864,176号)。このような構造においてヒートシンクによる冷却効果を発揮させるためには、ICデバイスとヒートシンクとの間の熱抵抗、すなわちICデバイス−ヒータ間、ヒータ−ヒートシンク間の熱抵抗を小さくしなくてはならないが、そのようにすると、ICデバイスをヒータで加熱したときにヒートシンクも加熱されることとなり、いざICデバイスを冷却しようとしてもヒートシンクが温まっているため、ICデバイスを効果的に冷却することができない。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、電子部品が目的とする試験の設定温度付近になるよう温度制御を行うことのできるプッシャ、電子部品ハンドリング装置および温度制御方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係るヒータ付プッシャは、電子部品ハンドリング装置において被試験電子部品の端子をテストヘッドのコンタクト部に押し付けるためのプッシャであって、被試験電子部品を押圧するプッシャ本体と、前記プッシャ本体に設けられた吸放熱体と、被試験電子部品を加熱するヒータと、前記プッシャ本体と前記ヒータとの間に設けられた断熱材とを備え、前記プッシャ本体の被試験電子部品側の一端には凹部が形成されており、前記ヒータは、前記凹部に収容されるように設けられており、もって、前記プッシャ本体と、前記ヒータとは、それぞれ被試験電子部品と直接接触し得ることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
上記ヒータは、プッシャ本体の下面に面一で露出するようにプッシャ本体の下部に設けられていてもよいし、このような構成においてプッシャ下端に伝熱板(プッシャ本体の一部)が設けられていてもよい。この場合における伝熱板は、厚み方向には熱が伝わり易く、面方向には熱が伝わり難いように、薄板または熱伝導異方性の材料からなるのが好ましい。
【0010】
また、本発明に係る電子部品ハンドリング装置は、電子部品の試験を行うために、被試験電子部品の端子をテストヘッドのコンタクト部に押し付けることのできる電子部品ハンドリング装置であって、前記ヒータ付プッシャ(請求項1)を備えたことを特徴とする(請求項2)。
【0011】
さらに、本発明に係る電子部品の温度制御方法は、電子部品ハンドリング装置において被試験電子部品を試験する際に当該電子部品を温度制御する方法であって、前記ヒータ付プッシャ(請求項1)を使用し、被試験電子部品の冷却は、前記ヒータ付プッシャの吸放熱体を冷却することにより行い、被試験電子部品の加熱は、前記ヒータ付プッシャのヒータによって行うことを特徴とする(請求項3)。
【0012】
【作用】
本発明においては、プッシャの温度が所定の設定温度よりも高くなった場合には、プッシャ本体に設けられた吸放熱体がプッシャの熱を吸収し放出(吸放熱)するため、プッシャに押し付けられる被試験電子部品の温度が設定温度よりも過度に高くなることを防止することができる。また、テストヘッドのコンタクト部が所定の設定温度よりも低い場合には、ヒータを発熱させることにより、ヒータに接触している被試験電子部品を加熱し、設定温度に近づけることができる。さらに、被試験電子部品が自己発熱により設定温度よりも高い温度になった場合、被試験電子部品の熱は、プッシャ本体から吸放熱体に伝わり、吸放熱体から放熱される。ここで、吸放熱体とヒータとの間には、断熱材が設けられており、ヒータの熱によって吸放熱体が温まることが防止されているため、吸放熱体から効果的に放熱することができる。すなわち、被試験電子部品が自己発熱により設定温度よりも高い温度になった場合であっても、被試験電子部品の過剰な温度上昇を防止し、被試験電子部品を設定温度付近の温度に制御することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係る電子部品ハンドリング装置(以下「ハンドラ」という。)を含むICデバイス試験装置の全体側面図、図2は図1に示すハンドラの斜視図、図3は被試験ICデバイスの取り廻し方法を示すトレイのフローチャート図、図4は同ハンドラのICストッカの構造を示す斜視図、図5は同ハンドラで用いられるカスタマトレイを示す斜視図、図6は同ハンドラのテストチャンバ内の要部断面図、図7は同ハンドラで用いられるテストトレイを示す一部分解斜視図、図8は同ハンドラにおけるソケット付近の構造を示す分解斜視図、図9は同ハンドラにおけるプッシャ(下降した状態)付近の断面図である。
【0015】
まず、本発明の実施形態に係るハンドラを備えたICデバイス試験装置の全体構成について説明する。図1に示すように、ICデバイス試験装置10は、ハンドラ1と、テストヘッド5と、試験用メイン装置6とを有する。ハンドラ1は、試験すべきICデバイス(電子部品の一例)をテストヘッド5に設けたソケットに順次搬送し、試験が終了したICデバイスをテスト結果に従って分類して所定のトレイに格納する動作を実行する。
【0016】
テストヘッド5に設けたソケットは、ケーブル7を通じて試験用メイン装置6に電気的に接続してあり、ソケットに脱着可能に装着されたICデバイスを、ケーブル7を通じて試験用メイン装置6に接続し、試験用メイン装置6からの試験用電気信号によりICデバイスをテストする。
【0017】
ハンドラ1の下部には、主としてハンドラ1を制御する制御装置が内蔵してあるが、一部に空間部分8が設けてある。この空間部分8に、テストヘッド5が交換自在に配置してあり、ハンドラ1に形成した貫通孔を通してICデバイスをテストヘッド5上のソケットに装着することが可能になっている。
【0018】
このハンドラ1は、試験すべき電子部品としてのICデバイスを、常温よりも高い温度状態(高温)または低い温度状態(低温)で試験するための装置であり、ハンドラ1は、図2および図3に示すように、恒温槽101とテストチャンバ102と除熱槽103とで構成されるチャンバ100を有する。図1に示すテストヘッド5の上部は、図6に示すようにテストチャンバ102の内部に挿入され、そこでICデバイス2の試験が行われるようになっている。
【0019】
なお、図3は本実施形態のハンドラにおける試験用ICデバイスの取り廻し方法を理解するための図であって、実際には上下方向に並んで配置されている部材を平面的に示した部分もある。したがって、その機械的(三次元的)構造は、主として図2を参照して理解することができる。
【0020】
図2および図3に示すように、本実施形態のハンドラ1は、これから試験を行うICデバイスを格納し、また試験済のICデバイスを分類して格納するIC格納部200と、IC格納部200から送られる被試験ICデバイスをチャンバ部100に送り込むローダ部300と、テストヘッドを含むチャンバ部100と、チャンバ部100で試験が行われた試験済のICを取り出して分類するアンローダ部400とから構成されている。ハンドラ1の内部では、ICデバイスは、テストトレイに収納されて搬送される。
【0021】
ハンドラ1にセットされる前のICデバイスは、図5に示すカスタマトレイKST内に多数収納してあり、その状態で、図2および図3に示すハンドラ1のIC収納部200へ供給され、そして、カスタマトレイKSTから、ハンドラ1内で搬送されるテストトレイTST(図7参照)にICデバイス2が載せ替えられる。ハンドラ1の内部では、図3に示すように、ICデバイスは、テストトレイTSTに載せられた状態で移動し、高温または低温の温度ストレスが与えられ、適切に動作するかどうか試験(検査)され、当該試験結果に応じて分類される。以下、ハンドラ1の内部について、個別に詳細に説明する。
【0022】
第1に、IC格納部200に関連する部分について説明する。
図2に示すように、IC格納部200には、試験前のICデバイスを格納する試験前ICストッカ201と、試験の結果に応じて分類されたICデバイスを格納する試験済ICストッカ202とが設けてある。
【0023】
これらの試験前ICストッカ201および試験済ICストッカ202は、図4に示すように、枠状のトレイ支持枠203と、このトレイ支持枠203の下部から侵入して上部に向かって昇降可能とするエレベータ204とを具備している。トレイ支持枠203には、カスタマトレイKSTが複数積み重ねられて支持され、この積み重ねられたカスタマトレイKSTのみがエレベータ204によって上下に移動される。なお、本実施形態におけるカスタマトレイKSTは、図5に示すように、10行×6列のICデバイス収納部を有するものとなっている。
【0024】
図2に示す試験前ICストッカ201には、これから試験が行われるICデバイスが収納されたカスタマトレイKSTが積層されて保持してある。また、試験済ICストッカ202には、試験を終えて分類されたICデバイスが収納されたカスタマトレイKSTが積層されて保持してある。
【0025】
なお、これら試験前ICストッカ201と試験済ICストッカ202とは、略同じ構造にしてあるので、試験前ICストッカ201の部分を、試験済ICストッカ202として使用することや、その逆も可能である。したがって、試験前ICストッカ201の数と試験済ICストッカ202の数とは、必要に応じて容易に変更することができる。
【0026】
図2および図3に示すように、本実施形態では、試験前ストッカ201として、2個のストッカSTK−Bが設けてある。ストッカSTK−Bの隣には、試験済ICストッカ202として、アンローダ部400へ送られる空ストッカSTK−Eを2個設けてある。また、その隣には、試験済ICストッカ202として、8個のストッカSTK−1,STK−2,…,STK−8を設けてあり、試験結果に応じて最大8つの分類に仕分けして格納できるように構成してある。つまり、良品と不良品の別の外に、良品の中でも動作速度が高速のもの、中速のもの、低速のもの、あるいは不良の中でも再試験が必要なもの等に仕分けできるようになっている。
【0027】
第2に、ローダ部300に関連する部分について説明する。
図4に示す試験前ICストッカ201のトレイ支持枠203に格納してあるカスタマトレイKSTは、図2に示すように、IC格納部200と装置基板105との間に設けられたトレイ移送アーム205によってローダ部300の窓部306に装置基板105の下側から運ばれる。そして、このローダ部300において、カスタマトレイKSTに積み込まれた被試験ICデバイスを、X−Y搬送装置304によって一旦プリサイサ(preciser)305に移送し、ここで被試験ICデバイスの相互の位置を修正したのち、さらにこのプリサイサ305に移送された被試験ICデバイスを再びX−Y搬送装置304を用いて、ローダ部300に停止しているテストトレイTSTに積み替える。
【0028】
カスタマトレイKSTからテストトレイTSTへ被試験ICデバイスを積み替えるX−Y搬送装置304は、図2に示すように、装置基板105の上部に架設された2本のレール301と、この2本のレール301によってテストトレイTSTとカスタマトレイKSTとの間を往復する(この方向をY方向とする)ことができる可動アーム302と、この可動アーム302によって支持され、可動アーム302に沿ってX方向に移動できる可動ヘッド303とを備えている。
【0029】
このX−Y搬送装置304の可動ヘッド303には、吸着ヘッドが下向に装着されており、この吸着ヘッドが空気を吸引しながら移動することで、カスタマトレイKSTから被試験ICデバイスを吸着し、その被試験ICデバイスをテストトレイTSTに積み替える。こうした吸着ヘッドは、可動ヘッド303に対して例えば8本程度装着されており、一度に8個の被試験ICデバイスをテストトレイTSTに積み替えることができる。
【0030】
第3に、チャンバ100に関連する部分について説明する。
上述したテストトレイTSTは、ローダ部300で被試験ICデバイスが積み込まれたのちチャンバ100に送り込まれ、当該テストトレイTSTに搭載された状態で各被試験ICデバイスがテストされる。
【0031】
図2および図3に示すように、チャンバ100は、テストトレイTSTに積み込まれた被試験ICデバイスに目的とする高温または低温の熱ストレスを与える恒温槽101と、この恒温槽101で熱ストレスが与えられた状態にある被試験ICデバイスがテストヘッド上のソケットに装着されるテストチャンバ102と、テストチャンバ102で試験された被試験ICデバイスから、与えられた熱ストレスを除去する除熱槽103とで構成されている。
【0032】
除熱槽103では、恒温槽101で高温を印加した場合は、被試験ICデバイスを送風により冷却して室温に戻し、また恒温槽101で低温を印加した場合は、被試験ICデバイスを温風またはヒータ等で加熱して結露が生じない程度の温度まで戻す。そして、この除熱された被試験ICデバイスをアンローダ部400に搬出する。
【0033】
図2に示すように、チャンバ100の恒温槽101および除熱槽103は、テストチャンバ102より上方に突出するように配置されている。また、恒温槽101には、図3に概念的に示すように、垂直搬送装置が設けられており、テストチャンバ102が空くまでの間、複数枚のテストトレイTSTがこの垂直搬送装置に支持されながら待機する。主として、この待機中において、被試験ICデバイスに高温または低温の熱ストレスが印加される。
【0034】
図6に示すように、テストチャンバ102には、その中央下部にテストヘッド5が配置され、テストヘッド5の上にテストトレイTSTが運ばれる。そこでは、図7に示すテストトレイTSTにより保持された全てのICデバイス2を順次テストヘッド5に電気的に接触させ、テストトレイTST内の全てのICデバイス2について試験を行う。一方、試験が終了したテストトレイTSTは、除熱槽103で除熱され、ICデバイス2の温度を室温に戻したのち、図2および図3に示すアンローダ部400に排出される。
【0035】
また、図2に示すように、恒温槽101と除熱槽103の上部には、装置基板105からテストトレイTSTを送り込むための入口用開口部と、装置基板105へテストトレイTSTを送り出すための出口用開口部とがそれぞれ形成してある。装置基板105には、これら開口部からテストトレイTSTを出し入れするためのテストトレイ搬送装置108が装着してある。これら搬送装置108は、例えば回転ローラなどで構成してある。この装置基板105上に設けられたテストトレイ搬送装置108によって、除熱槽103から排出されたテストトレイTSTは、アンローダ部400に搬送される。
【0036】
図7は本実施形態で用いられるテストトレイTSTの構造を示す分解斜視図である。このテストトレイTSTは、矩形フレーム12を有し、そのフレーム12に複数の桟(さん)13が平行かつ等間隔に設けてある。これら桟13の両側と、これら桟13と平行なフレーム12の辺12aの内側とには、それぞれ複数の取付け片14が長手方向に等間隔に突出して形成してある。これら桟13の間、および桟13と辺12aとの間に設けられた複数の取付け片14の内の向かい合う2つの取付け片14によって、各インサート収納部15が構成されている。
【0037】
各インサート収納部15には、それぞれ1個のインサート16が収納されるようになっており、このインサート16はファスナ17を用いて2つの取付け片14にフローティング状態で取り付けられている。本実施形態において、インサート16は、1つのテストトレイTSTに4×16個取り付けられるようになっている。すなわち、本実施形態におけるテストトレイTSTは、4行×16列のICデバイス収納部を有するものとなっている。このインサート16に被試験ICデバイス2を収納することで、テストトレイTSTに被試験ICデバイス2が積み込まれることになる。
【0038】
本実施形態のインサート16においては、図7および図8に示すように、被試験ICデバイス2を収納する矩形凹状のIC収納部19が中央部に形成されている。また、インサート16の両端中央部には、プッシャ30のガイドピン32が挿入されるガイド孔20が形成されており、インサート16の両端角部には、テストトレイTSTの取付け片14への取付け用孔21が形成されている。
【0039】
図8に示すように、テストヘッド5の上には、ソケットボード50が配置してあり、その上に接続端子であるプローブピン44を有するソケット40が固定してある。プローブピン44は、ICデバイス2の接続端子に対応する数およびピッチで設けられており、図外のスプリングによって上方向にバネ付勢されている。
【0040】
また、図8および図9に示すように、ソケットボード50の上には、ソケット40に設けられているプローブピン44が露出するように、ソケットガイド41が固定されている。ソケットガイド41の両側には、プッシャ30に形成してある2つのガイドピン32が挿入されて、これら2つのガイドピン32との間で位置決めを行うためのガイドブッシュ411が設けられている。
【0041】
図6および図8に示すように、テストヘッド5の上側には、ソケット40の数に対応してプッシャ30が設けてある。プッシャ30は、図8および図9に示すように、後述するアダプタ62のロッド621に固定されるプッシャベース33を有している。このプッシャベース33の下側中央には、被試験ICデバイス2を押し付けるための押圧子31が下方に向かって設けられており、プッシャベース33の下側両端部には、インサート16のガイド孔20およびソケットガイド41のガイドブッシュ411に挿入されるガイドピン32が設けられている。また、押圧子31とガイドピン32との間には、プッシャ30がZ軸駆動装置70にて下降移動する際に、ソケットガイド41のストッパ面412に当接して下限を規定することのできるストッパピン34が設けられている。
【0042】
図6および図9に示すように、プッシャ30の押圧子31の下部には、押圧子31の下面に面一で露出するようにヒータ311が設けられており、このヒータ311と押圧子31との間には断熱材312が設けられている。
【0043】
ヒータ311の種類は、被試験ICデバイス2を所定の試験温度に制御できるものであれば、特に限定されることはない。このヒータ311は、図示しない制御装置からの出力信号により発熱温度または発熱のON/OFFが制御される。
【0044】
断熱材312としては、プッシャ30の押圧子31とヒータ311との間の熱抵抗を、ヒータ311と被試験ICデバイス2との間の熱抵抗よりも大きく、好ましくは3〜4倍以上にすることができるものであれば、特に限定されることはない。このような断熱材312の材料としては、例えば、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂等の樹脂中にガラス繊維を積層したもの、あるいはシリコーンゴム等のゴム系材料などを用いることができる。
【0045】
一方、プッシャベース33の上側には、ヒートシンク35(本発明の吸放熱体に相当する。)が設けられている。このヒートシンク35は、複数の放熱フィンから構成され、例えばアルミニウム、銅、それらの合金、あるいはカーボン系材料等の熱伝導性に優れた材料からなる。同様に、プッシャベース33および押圧子31も、例えばアルミニウム、銅、鉄、それらの合金(ステンレススチールを含む)等の熱伝導性に優れた金属からなり、テスト中における被試験ICデバイス2の熱を、被試験ICデバイス2に接触している押圧子31からプッシャベース33を介してヒートシンク35に伝え、ヒートシンク35から周囲に放熱できるようになっている。なお、ヒートシンク35は、放熱フィンではなく、ヒートパイプで構成されていてもよい。
【0046】
図9に示すように、アダプタ62には、ロッド621(2本)が下方に向かって設けられており、このロッド621によってプッシャ30のプッシャベース33を支持固定する。図6に示すように、各アダプタ62はマッチプレート60に弾性保持してあり、マッチプレート60は、テストヘッド5の上部に位置するように、かつプッシャ30とソケット40との間にテストトレイTSTが挿入可能となるように装着してある。このマッチプレート60に保持されたプッシャ30は、テストヘッド5またはZ軸駆動装置70の駆動プレート(駆動体)72に対して、Z軸方向に移動自在である。なお、テストトレイTSTは、図6において紙面に垂直方向(X軸)から、プッシャ30とソケット40との間に搬送されてくる。チャンバ100内部でのテストトレイTSTの搬送手段としては、搬送用ローラなどが用いられる。テストトレイTSTの搬送移動に際しては、Z軸駆動装置70の駆動プレートは、Z軸方向に沿って上昇しており、プッシャ30とソケット40との間には、テストトレイTSTが挿入される十分な隙間が形成してある。
【0047】
図6に示すように、駆動プレート72の下面には、押圧部74が固定してあり、マッチプレート60に保持してあるアダプタ62の上面を押圧可能にしてある。駆動プレート72には駆動軸78が固定してあり、駆動軸78にはモータ等の駆動源(図示せず)が連結してあり、駆動軸78をZ軸方向に沿って上下移動させ、アダプタ62を押圧可能となっている。
【0048】
なお、マッチプレート60は、試験すべきICデバイス2の形状や、テストヘッド5のソケット数(同時に測定するICデバイス2の数)などに合わせて、アダプタ62およびプッシャ30とともに、交換自在な構造になっている。このようにマッチプレート60を交換自在にしておくことにより、Z軸駆動装置70を汎用のものとすることができる。
【0049】
本実施形態では、上述したように構成されたチャンバ100において、図6に示すように、テストチャンバ102を構成する密閉されたケーシング80の内部に、温度調節用送風装置90が装着してある。温度調節用送風装置90は、ファン92と、熱交換部94とを有し、ファン92によりケーシング内部の空気を吸い込み、熱交換部94を通してケーシング80の内部に吐き出して循環させることで、ケーシング80の内部を、所定の温度条件(高温または低温)にする。
【0050】
温度調節用送風装置90の熱交換部94は、ケーシング内部を高温にする場合には、加熱媒体が流通する放熱用熱交換器または電熱ヒータなどで構成され、ケーシング内部を、たとえば室温〜160℃程度の高温に維持するために十分な熱量を提供することが可能になっている。また、ケーシング内部を低温にする場合には、熱交換部94は、液体窒素などの冷媒が循環する吸熱用熱交換器などで構成され、ケーシング内部を、たとえば−60℃〜室温程度の低温に維持するために十分な熱量を吸熱することが可能になっている。ケーシング80の内部温度は、たとえば温度センサ82により検出され、ケーシング80の内部が所定温度に維持されるように、ファン92の風量および熱交換部94の熱量などが制御される。
【0051】
温度調節用送風装置90の熱交換部94を通して発生した温風または冷風(エア)は、ケーシング80の上部をY軸方向に沿って流れ、装置90と反対側のケーシング側壁に沿って下降し、マッチプレート60とテストヘッド5との間の隙間を通して、装置90へと戻り、ケーシング内部を循環するようになっている。
【0052】
第4に、アンローダ部400に関連する部分について説明する。
図2および図3に示すアンローダ部400にも、ローダ部300に設けられたX−Y搬送装置304と同一構造のX−Y搬送装置404,404が設けられ、このX−Y搬送装置404,404によって、アンローダ部400に運び出されたテストトレイTSTから試験済のICデバイスがカスタマトレイKSTに積み替えられる。
【0053】
図2に示すように、アンローダ部400の装置基板105には、当該アンローダ部400へ運ばれたカスタマトレイKSTが装置基板105の上面に臨むように配置される一対の窓部406,406が二対開設してある。
【0054】
それぞれの窓部406の下側には、カスタマトレイKSTを昇降させるためのエレベータ204が設けられており(図4参照)、ここでは試験済の被試験ICデバイスが積み替えられて満杯になったカスタマトレイKSTを載せて下降し、この満杯トレイをトレイ移送アーム205に受け渡す。
【0055】
次に、以上説明したICデバイス試験装置10において、ICデバイス2の温度制御を行いつつ、当該ICデバイス2を試験する方法について述べる。
【0056】
ICデバイス2は、図7に示すテストトレイTSTに搭載された状態、より詳細には個々のICデバイス2は、同図のインサート16のIC収容部19に落とし込まれた状態で、恒温槽101にて所定の設定温度に加熱された後、テストチャンバ102内に搬送されてくる。
【0057】
ICデバイス2を搭載したテストトレイTSTがテストヘッド5上で停止すると、Z軸駆動装置が駆動し、駆動プレート72に固定された押圧部74が、アダプタ62のロッド621を介してプッシャ30のプッシャベース33を押圧する。そうすると、プッシャ30の押圧子31は、ICデバイス2のパッケージ本体をソケット40側に押し付け、その結果、ICデバイス2の接続端子がソケット40のプローブピン44に接続される。
【0058】
なお、プッシャ30の下降移動は、プッシャ30のストッパピン34がソケットガイド41のストッパ面412に当接することで制限され、したがって、ICデバイス2を破壊しない適切な圧力をもって、プッシャ30はICデバイス2をソケット40に押し付けることができる。
【0059】
この状態で、試験用メイン装置6からテストヘッド5のプローブピン44を介して被試験ICデバイス2に対して試験用電気信号を送信し試験を行う。このとき、テストチャンバ102の中心付近に待機していたプッシャ30の温度が、所定の設定温度よりも高くなった場合には、プッシャ30に設けられたヒートシンク35がプッシャ30の熱を吸収し放出(吸放熱)するため、プッシャ30に押し付けられる被試験ICデバイス2の温度が設定温度よりも過度に高くなることを防止することができる。
【0060】
また、テストチャンバ102内の熱を逃がしやすいソケット40が、所定の設定温度よりも低い場合には、ヒータ311を発熱させることにより、ヒータ311に接触している被試験ICデバイス2を加熱し、設定温度に近づけることができる。
【0061】
次いで、被試験ICデバイス2が自己発熱により設定温度よりも高い温度になった場合、被試験ICデバイス2の熱は、プッシャ30の押圧子31からプッシャベース33を介してヒートシンク35に伝わり、ヒートシンク35から放熱される。ここで、ヒートシンク35とヒータ311との間には、断熱材312が設けられており、ヒータ311の熱によってヒートシンク35が温まることが防止されているため、ヒートシンク35から効果的に放熱することができる。このようにして、被試験ICデバイス2が自己発熱により設定温度よりも高い温度になった場合であっても、被試験ICデバイス2の過剰な温度上昇を防止し、被試験ICデバイス2を設定温度付近の温度に制御することができる。
【0062】
なお、ヒータ311の温度制御(ON/OFF)は、テストパターンに従って温度変化する被試験ICデバイス2に合わせて行えばよく、ヒートシンク35からの放熱の程度は、テストチャンバ102内を循環させるエアの温度、風量等によって制御することができる。
【0063】
上記実施形態に係るハンドラ1を備えたICデバイス試験装置10において、被試験ICデバイス2、ヒータ311およびヒートシンク35の温度変化をシミュレーションしてみる。被試験ICデバイス2が0Wから2Wに発熱したときのシミュレーションのグラフを図10に、被試験ICデバイス2が2Wの発熱状態から0Wになったときのシミュレーションのグラフを図11に示す。なお、本シミュレーションにおいて試験の設定温度は25℃であり、テストチャンバ102内を循環させるエアの温度は12℃であるものとする。
【0064】
〔ICデバイス:0W→2W〕
図10に示すように、約26℃であったICデバイス2の温度は、ICデバイス2の発熱時(150秒の時点)に約30℃まで上昇し、その約5秒後に約29℃に下降して、その温度が略維持される。ヒータ311は、約37.5℃のONの状態から、ICデバイス2の発熱時(150秒の時点)に合わせてOFFにされ、約26.5℃まで温度が下がる。ヒートシンク35は、約16℃の状態が略維持される。
【0065】
〔ICデバイス:2W→0W〕
図11に示すように、約30℃であったICデバイス2の温度は、ICデバイス2が0Wになった時(150秒の時点)に約25.5℃まで下降し、その約5秒後に約26℃に上昇して、その温度が略維持される。ヒータ311は、約27℃のOFFの状態から、ICデバイス2が0Wになった時(150秒の時点)に合わせてONにされ、約37℃まで温度が上昇する。ヒートシンク35の温度は、約17℃から約16.5℃まで徐々に下がる。
【0066】
これに対する比較として、図12に示すように、プッシャ30の押圧子31の下端全面にヒータ311を取り付けた場合における被試験ICデバイス2、ヒータ311およびヒートシンク35の温度変化をシミュレーションしてみる。被試験ICデバイス2が0Wから2Wに発熱したときのシミュレーションのグラフを図13に、被試験ICデバイス2が2Wの発熱状態から0Wになったときのシミュレーションのグラフを図14に示す。なお、本シミュレーションにおいて試験の設定温度は25℃であり、テストチャンバ102内を循環させるエアの温度は13℃であるものとする。
【0067】
〔ICデバイス:0W→2W〕
図13に示すように、約26℃であったICデバイス2の温度は、ICデバイス2の発熱時(150秒の時点)に約33℃まで上昇し、その後約32.5℃まで徐々に下がる。ヒータ311は、約26℃のONの状態から、ICデバイス2の発熱時(150秒の時点)に合わせてOFFにされ、一旦約22℃まで温度が下降した後、約23.5℃に上昇し、そして約23℃まで徐々に下がる。ヒートシンク35の温度は、約20.5℃から約20℃まで徐々に下がる。
【0068】
〔ICデバイス:2W→0W〕
図14に示すように、約30.5℃であったICデバイス2の温度は、ICデバイス2が0Wになった時(150秒の時点)に約22.5℃まで下降し、その後約23℃まで徐々に上昇する。ヒータ311は、約20.5℃のOFFの状態から、ICデバイス2が0Wになった時(150秒の時点)に合わせてONにされ、一旦約24℃まで温度が上昇した後、約22.5℃に下降し、そして約23℃まで徐々に上昇する。ヒートシンク35の温度は、約17.5℃から約18℃まで徐々に上昇する。
【0069】
このように、比較の実施形態においては、被試験ICデバイス2の温度変化が設定温度からプラス側に約8℃、マイナス側に約2.5℃あるのに対し、本発明に係る実施形態によれば、被試験ICデバイス2の温度変化を設定温度からプラス側に約5℃に抑えることができるため、ICデバイス2の正確な試験を行うことができ、製品歩留りの向上を図ることもできる。
【0070】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0071】
例えば、マッチプレート60に貫通孔を設け、テストチャンバ102内を循環させるエアを当該貫通孔に通し、このようなZ軸方向のエアによってヒートシンク35の温度制御を行ってもよい。また、ヒートシンク35の放熱フィンは、テストチャンバ102内を循環させるエアが流れやすいように、上記実施形態の状態から設置方向が90°変えられていてもよいし、上下方向に積層されるような形態になっていてもよい。さらに、プッシャ30の押圧子31の下端には、厚み方向には熱が伝わり易く、面方向には熱が伝わり難い伝熱板(金属、樹脂、カーボン系材料等からなる)が設けられていてもよい。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、電子部品が目的とする試験の設定温度付近になるよう温度制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るハンドラを含むICデバイス試験装置の全体側面図である。
【図2】図1に示すハンドラの斜視図である。
【図3】被試験ICデバイスの取り廻し方法を示すトレイのフローチャート図である。
【図4】同ハンドラのICストッカの構造を示す斜視図である。
【図5】同ハンドラで用いられるカスタマトレイを示す斜視図である。
【図6】同ハンドラのテストチャンバ内の要部断面図である。
【図7】同ハンドラで用いられるテストトレイを示す一部分解斜視図である。
【図8】同ハンドラのテストヘッドにおけるソケット付近の構造を示す分解斜視図である。
【図9】同ハンドラにおけるプッシャ(下降した状態)付近の断面図である。
【図10】同ハンドラにおいて、被試験ICデバイスが0Wから2Wに発熱したときのシミュレーションのグラフである。
【図11】同ハンドラにおいて、被試験ICデバイス2が2Wの発熱状態から0Wになったときのシミュレーションのグラフである。
【図12】比較としてのハンドラにおけるプッシャ(下降した状態)付近の断面図である。
【図13】同ハンドラにおいて、被試験ICデバイスが0Wから2Wに発熱したときのシミュレーションのグラフである。
【図14】同ハンドラにおいて、被試験ICデバイス2が2Wの発熱状態から0Wになったときのシミュレーションのグラフである。
【符号の説明】
1…ハンドラ(電子部品ハンドリング装置)
2…ICデバイス(電子部品)
5…テストヘッド
10…ICデバイス試験装置
30…プッシャ
31…押圧子
311…ヒータ
312…断熱材
33…プッシャベース
35…ヒートシンク(吸放熱体)
40…ソケット(コンタクト部)
Claims (3)
- 電子部品ハンドリング装置において被試験電子部品の端子をテストヘッドのコンタクト部に押し付けるためのプッシャであって、
被試験電子部品を押圧するプッシャ本体と、
前記プッシャ本体に設けられた吸放熱体と、
被試験電子部品を加熱するヒータと、
前記プッシャ本体と前記ヒータとの間に設けられた断熱材とを備え、
前記プッシャ本体の被試験電子部品側の一端には凹部が形成されており、前記ヒータは、前記凹部に収容されるように設けられており、もって、前記プッシャ本体と、前記ヒータとは、それぞれ被試験電子部品と直接接触し得る
ことを特徴とするヒータ付プッシャ。 - 電子部品の試験を行うために、被試験電子部品の端子をテストヘッドのコンタクト部に押し付けることのできる電子部品ハンドリング装置であって、前記請求項1に記載のヒータ付プッシャを備えたことを特徴とする電子部品ハンドリング装置。
- 電子部品ハンドリング装置において被試験電子部品を試験する際に当該電子部品を温度制御する方法であって、
請求項1に記載のヒータ付プッシャを使用し、
被試験電子部品の冷却は、前記ヒータ付プッシャの吸放熱体を冷却することにより行い、
被試験電子部品の加熱は、前記ヒータ付プッシャのヒータによって行う
ことを特徴とする電子部品の温度制御方法。
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