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JP4117881B2 - 追記型光記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、追記型(WORM:Write Once Read Many)光記録媒体に係り、特に青色レーザ波長領域でも高密度の記録が可能な追記型光記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
超高密度の記録が可能となる青色レーザの開発は急速に進んでおり、それに対応した追記型光記録媒体の開発が行われている。
従来の追記型光記録媒体では、有機材料からなる記録層にレーザ光を照射し、主に有機材料の分解・変質による屈折率変化を生じさせることで記録ピットを形成させており、記録層に用いられる有機材料の光学定数や分解挙動が、良好な記録ピットを形成させるための重要な要素となっている。
従って、記録層に用いる有機材料としては、青色レーザ波長に対する光学的性質や分解挙動の適切な材料を選択する必要がある。即ち、未記録時の反射率を高め、またレーザの照射によって有機材料が分解し大きな屈折率変化が生じるようにするため(これによって大きな変調度が得られる)、記録再生波長は大きな吸収帯の長波長側の裾に位置するように選択される。
何故ならば、有機材料の大きな吸収帯の長波長側の裾は、適度な吸収係数を有し且つ大きな屈折率が得られる波長領域となるためである。
【0003】
しかしながら、青色レーザ波長に対する光学的性質が従来並みの値を有する有機材料は未だ見出されていない。これは、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料を得るためには、分子骨格を小さくするか又は共役系を短くする必要があるが、そうすると吸収係数の低下、即ち屈折率の低下を招くためである。
つまり、青色レーザ波長近傍に吸収帯を持つ有機材料は多数存在し、吸収係数を制御することは可能となるが、大きな屈折率を持たないため、大きな変調度を得ることができなくなる。
また、従来の追記型光記録媒体では、有機材料の分解・変質による屈折率変化と共に、基板変形によっても記録が行われており、基板は図28〔市販のDVD−Rに記録を行った部分の基板面をAFM(アトミックフォースマイクロスコープ、Atomic force microscope)により観察した図〕に示すように、基板とは反対側(反射層側)に変形する。
【0004】
青色レーザ対応の有機材料としては、例えば、特許文献1〜5に記載がある。しかし、これらの公報では、実施例を見ても溶液と薄膜のスペクトルを測定しているのみで、記録再生に関する記載はない。
特許文献6〜8では、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は488nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な記録ピットが形成できた旨の記載があるのみである。
特許文献9では、実施例に記録の記載があるものの、記録波長は430nmであり、また記録条件や記録密度に関する記載はなく、良好な変調度が得られた旨の記載があるのみである。
特許文献10〜19では、実施例に記録波長430nm、NA0.65での記録例があるが、最短ピットが0.4μmという低記録密度条件(DVDと同等の記録密度)である。
特許文献20では、記録再生波長は405〜408nmであるが、記録密度に関する具体的な記載がなく、14T−EFM信号の記録という低記録密度条件である。
【0005】
また、従来のCD、DVD系光記録媒体と異なる層構成及び記録方法に関して、以下のような技術が公開されている。
特許文献21には、基板/可飽和吸収色素含有層/反射層という層構成で、可飽和吸収色素の消衰係数(本発明でいう吸収係数)の変化により記録を行う技術が開示されている。
特許文献22には、基板/金属蒸着層/光吸収層/保護シ−トという層構成で、光吸収層によって発生した熱によって、金属蒸着層を変色又は変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献23には、基板/誘電体層/光吸収体を含む記録層/反射層という層構成で、記録層の膜厚を変えることにより溝部の深さを変えて記録を行う技術が開示されている。
この技術は、記録層の膜厚を変化させるという点で本発明と一見類似しているが(本発明は記録層の膜厚変化に主眼を置いたものではないが、結果的にそうなる場合がある)、記録層の膜厚変化は基板の記録層側への変形により行われるため、本発明の変形形態と全く異なる。
【0006】
特許文献24には、基板/光吸収体を含む記録層/金属反射層という層構成で、記録層の膜厚を10〜30%変化させることにより記録を行う技術が開示されている。
この技術も、記録層の膜厚を変化させるという点で本発明と一見類似しているが(本発明は記録層の膜厚変化に主眼を置いたものでないが、結果的にそうなる場合がある)、記録層の膜厚変化は基板の記録層側への変形により行われるため、本発明の変形形態と全く異なる。
また、この技術では、記録層の膜厚変化の誘発は、色素又は高分子と色素の混合体からなる記録層自身の光吸収能により行われるが、本発明で光吸収の役割を担うのは、記録層とは別に設けられた光吸収層又は光吸収機能を有する下引層、上引層である。
更に、上記4つの技術では、記録層中の色素は光吸収機能が必要となるため、主吸収帯が記録再生波長近傍に存在しなければならず、色素の選択に大きな制限が加わるが、本発明では、色素(有機材料)の主吸収帯が記録再生波長に対し十分長波長側に位置するだけで良いため、色素(有機材料)の選択の自由度が大きいというメリットがある。
【0007】
特許文献25には、基板/有機色素を含有する記録層/金属反射層/保護層という層構成で、基板の溝幅を未記録部に対して20〜40%広くすることにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献26には、基板/中間層/金属薄膜という層構成で、金属薄膜が変形しバブルを形成することにより記録を行う技術が開示されている。
特許文献27には、基板/光吸収層/記録補助層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献28には、基板/光吸収層/多孔質な記録補助層/光反射層、或いは、基板/多孔質な記録補助層/光吸収層/光反射層という層構成で、記録補助層を凹状に変形させると共に、記録補助層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
上記光反射層を凹状に変形させる2つの技術は、層構成の点で本発明と類似するが、記録補助層が高分子から構成されており、記録補助層の変形は高分子の軟化により生じるため、再生劣化や保存安定性に問題がある。
これに対して本発明における変形は、主に有機材料の状態変化(特に、分解・爆発)により生じるため、再生劣化が抑制され、保存安定性が十分確保できる。
また、これらの技術と本発明で用いる光吸収層とでは材料が異なる。
【0008】
特許文献29には、基板/多孔質な光吸収層/光反射層という層構成で、光吸収層を凹状に変形させると共に、光吸収層の変形に沿って光反射層を凹状に変形させることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献30には、基板/有機色素を含む記録層/記録補助層という層構成で、記録補助層と有機色素が相溶して、有機色素の吸収スペクトルを短波長側へシフトさせることで記録を行う技術が開示されている。
特許文献31には、基板上に反射層と記録層の機能を有する複合機能層、保護層を順次形成した層構成で、基板と複合機能層がバンプを形成することで記録を行う技術が開示されている。なお、複合機能層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。
【0009】
特許文献32には、基板上に金属薄膜層、変形可能な緩衝層、反射層、保護層を順次形成した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚を薄くさせることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金との規定がある。また、緩衝層としては、変形し易く適当な流動性を持つ樹脂が用いられ、変形を促進させるために色素を含有させても良いとの記載がある。
特許文献33には、基板上に金属薄膜層、緩衝層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属薄膜層を変形させ、同時にこの変形部での緩衝層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。
なお、金属薄膜層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、緩衝層は色素と有機高分子の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
特許文献34には、基板上に金属記録層、バッファ層、反射層を順次積層した層構成で、基板と金属記録層を変形させ、同時にこの変形部でのバッファ層膜厚と光学定数とを変化させることで記録を行う技術が開示されている。なお、金属記録層としては、ニッケル、クロム、チタン等の金属、又はそれらの合金が好ましいとの記載がある。また、バッファ層は色素と樹脂の混合物からなり、記録再生波長近傍に大きな吸収帯を有する色素が用いられる。
【0010】
上記3つの技術では、記録層と光吸収機能を有する層を分離した構成とする点で本発明と類似するが、記録層(上記3つの技術では、緩衝層、又はバッファ層と呼ばれる)が高分子と色素の混合体から構成される点、及び基板上の金属層が基板とは反対方向へ変形する点が大きく異なる〔この金属層が有機材料層側(反射層側)に変形する様子は、例えば、非特許文献1にも詳しい記載がある〕。
即ち、金属層の光吸収によって金属層が基板とは反対方向に変形し、この変形が高分子の軟化に助けられ、記録層の膜厚が変化することで記録が行われる。
これに対し本発明では、例えば、基板上に設けられた下引層を、有機材料の状態変化(特に、分解・爆発)により基板側へ変形させることで記録が行われる。
また、上記3つの技術では、記録層中の色素に光吸収機能が必要となるため、色素の主吸収帯が記録再生波長近傍に存在しなければならず、色素の選択に大きな制限が加わるが、本発明では、主吸収帯が記録再生波長に対し十分長波長側に位置するだけで良いため、色素(有機材料)の選択の自由度が大きいというメリットがある。
また、上記3つの技術の光吸収機能を有する層と本発明で用いる光吸収層では材料が異なる。
【0011】
特許文献35〜36には、基板/光吸収層/反射層という層構成で、従来のCD−RやDVD−Rの記録原理に関する規定がされている。
これらの特許では、基板が光吸収層(有機材料層)とは反対方向に凹むことで記録が行われる様子が図面に示されており、これは本発明の記録原理と類似するように見えるが、該特許明細書には、このような状態の記録をどのようにして達成するかについて全く記載されておらず、その実施例においても、このような変形は一切観察されていない(むしろ、全て基板は光吸収層側へ変形していると明示されている)。
実際、本発明者はCD−RやDVD−Rに対し記録条件を変えて記録を行ったが、何れの場合も図28のように基板が光吸収層側へ変形してしまうことを確認した。このように、本発明者の知見によれば、光吸収層と反対側に変形させることは従来技術の範囲で容易に実現できるような事項ではない。
更に、上記特許には、後述する本発明のように、記録層に要求される記録機能と光吸収機能を分離するため光吸収層と有機材料層の2層構造とする点について記載も示唆もされておらず、当然ながら光吸収層中の色素に光吸収機能が必要となる。そのため色素の主吸収帯が記録再生波長近傍に存在しなければならず、色素の選択に大きな制限が加わることになる。これに対し本発明では、色素(有機材料)の主吸収帯が記録再生波長に対し十分長波長側に位置するだけで良いため、色素の選択の自由度が非常に大きいというメリットがある。
【0012】
以上のように、上記諸々の従来技術は、青色レーザ波長領域での光記録媒体の実現を狙ったものではなく、青色レーザ波長領域で有効となる層構成や記録方法ではない。
特に現在実用化されている青色半導体レーザの発振波長の中心である405nm近傍においては、従来の追記型光記録媒体の記録層に要求される光学定数と同程度の光学定数を有する有機材料が殆んど存在しない。また、405nm近傍で記録条件を明確にし、DVDよりも高記録密度で記録された例はない。
更に、上記従来技術における実施例の多くは、従来のディスク構成(図1参照)での実験であり、また、従来のディスク構成と異なる構成も提案されてはいるが、そこに用いられる色素は従来と同じ光学特性と機能が要求されており、青色レーザ波長領域で、有機材料からなる追記型光記録媒体を容易に実現できる層構成や記録原理、記録方式についての有効な提案はない。
【0013】
また、従来の有機材料を用いた追記型光記録媒体では、変調度と反射率の確保の点から、記録再生波長に対し大きな屈折率と比較的小さな吸収係数(0.05〜0.07程度)を持つ有機材料しか使用することができない。
即ち、有機材料は記録光に対して十分な吸収能を持たないため、有機材料の膜厚を薄膜化することが不可能であり、従って、深い溝を持った基板を使用する必要があった(有機材料は通常スピンコート法によって形成されるため、有機材料を深い溝に埋めて厚膜化していた)。そのため、深い溝を有する基板の形成が非常に難しくなり、光記録媒体としての品質を低下させる要因になっていた。
更に、従来の有機材料を用いた追記型光記録媒体では、記録再生波長近傍に有機材料の主吸収帯が存在するため、有機材料の光学定数の波長依存性が大きくなり(波長によって光学定数が大きく変動する)、レーザの個体差や環境温度の変化等による記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等が大きく変化するという問題があった。
【0014】
【特許文献1】
特開2001−181524号公報
【特許文献2】
特開2001−158865号公報
【特許文献3】
特開2000−343824号公報
【特許文献4】
特開2000−343825号公報
【特許文献5】
特開2000−335110号公報
【特許文献6】
特開平11−221964号公報
【特許文献7】
特開平11−334206号公報
【特許文献8】
特開2000−43423号公報
【特許文献9】
特開平11−58955号公報
【特許文献10】
特開2001−39034号公報
【特許文献11】
特開2000−149320号公報
【特許文献12】
特開2000−113504号公報
【特許文献13】
特開2000−108513号公報
【特許文献14】
特開2000−222772号公報
【特許文献15】
特開2000−218940号公報
【特許文献16】
特開2000−222771号公報
【特許文献17】
特開2000−158818号公報
【特許文献18】
特開2000−280621号公報
【特許文献19】
特開2000−280620号公報
【特許文献20】
特開2001−146074号公報
【特許文献21】
特開平7−304258号公報
【特許文献22】
特開平8−83439号公報
【特許文献23】
特開平8−138245号公報
【特許文献24】
特開平8−297838号公報
【特許文献25】
特開平9−198714号公報
【特許文献26】
特許第2506374号公報
【特許文献27】
特許第2591939号公報
【特許文献28】
特許第2591940号公報
【特許文献29】
特許第2591941号公報
【特許文献30】
特許第2982925号公報
【特許文献31】
特開平9−265660号公報
【特許文献32】
特開平10−134415号公報
【特許文献33】
特開平11−306591号公報
【特許文献34】
特開平10−124926号公報
【特許文献35】
特許第2710040号公報
【特許文献36】
特許第2840643号公報
【非特許文献1】
Jpn.J.Appl.Phys.Vol.37(1998)pp.2089−2093「New Recordable Optical Discs with Metal Thin Film and Organic Film on Polycarbonate」
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決し、次のような特性を有する光記録媒体の実現を目的とする。
(a) 青色レーザ波長領域(350〜500nm程度)、特に405nm近傍の波長領域であっても記録再生が容易に行える、有機材料層を有する高密度記録可能な追記型光記録媒体。
(b) 転写性のよい浅溝基板でも記録再生が容易に行える、有機材料層を有する追記型光記録媒体。
(c) 記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等の変化が少ない追記型光記録媒体。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、基本的に、従来の記録機能と光吸収機能を有するいわゆる記録層(有機材料層)から、記録機能を有する層(有機材料層)と光吸収機能を有する層(光吸収層)とに分離した2層構成を採用する。また、記録による有機材料層の屈折率変化を利用した従来の記録原理に対し、有機材料の状態変化を利用し、記録再生波長が350〜500nm程度の青色レーザ波長領域であっても、該状態変化により有機材料層の吸収係数を増加させて記録を行うことができる記録原理、及び/又は、この状態変化の作用力によって有機材料層と隣接する層を、有機材料層から遠ざかる方向に変形させて記録を行う記録原理を採用する。
また、上記有機材料層の吸収係数を増加させて記録を行う記録原理に、上記有機材料の状態変化による、光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状の変化を組み合わせても良い。
【0017】
即ち、上記課題は、次の1)〜47)の発明によって解決される。
1) 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化による記録再生波長での吸収係数の増加により、及び/又は、該状態変化の作用力による、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層の、有機材料層から遠ざかる方向への変形により、記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
2) 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化による記録再生波長での吸収係数の増加、及び、該状態変化による光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状の変化により記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
3) 記録再生波長が350〜500nmであることを特徴とする1)又は2)記載の追記型光記録媒体。
4) 基板上に、光吸収層、有機材料層、反射層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
5) 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
6) 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
7) 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
8) 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
9) 基板上に、反射層、有機材料層、光吸収層、記録再生波長に対し透明なカバー層がこの順に形成されていることを特徴とする1)〜3)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
10) 光吸収層がセラミックス、半金属、金属、又はそれらの混合物からなることを特徴とする1)〜9)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
11) 光吸収層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする10)記載の追記型光記録媒体。
【0018】
12) 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
13) 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
14) 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層が基板とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
15) 下引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする12)〜14)の何れかに記載の追記型光記録媒体
16) 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n1>n2>n3であることを特徴とする13)〜15)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
17) 上引層が有機材料層よりも屈折率の小さな金属からなることを特徴とする13)〜16)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0019】
18) 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)とをこの順序で形成し、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層が基板とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
19) 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)とをこの順序で形成し、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって基板が有機材料層とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
20) 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層が基板とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
21) 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
22) 上引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする18)〜21)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
23) 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n1>n2、かつn3>n2であることを特徴とする20)〜22)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
24) 下引層の主成分がZnS・SiO又はSiOからなることを特徴とする20)〜23)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0020】
25) 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
26) 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
27) 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層がカバ−層側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
28) 下引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする25)〜27)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
29) 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n1>n2、かつn3>n2であることを特徴とする26)〜28)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
30) 上引層の主成分がZnS・SiO又はSiOからなることを特徴とする26)〜29)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
31) 上引層がカバー層に対して接着性を持つ材料であることを特徴とする26)〜30)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0021】
32) 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層がカバ−層側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
33) 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって基板が有機材料層とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
34) 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層がカバ−層側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
35) 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
36) 上引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする32)〜35)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
37) 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n3>n2>n1であることを特徴とする34)〜36)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
38) 下引層が有機材料層よりも屈折率の小さな金属からなることを特徴とする34)〜37)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
39) 有機材料層が、記録再生波長に対する光吸収機能が光吸収層若しくは光吸収機能を有する下引層又は上引層よりも小さい有機材料からなることを特徴とする1)〜38)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
40) 記録再生波長が350〜500nmであることを特徴とする39)記載の追記型光記録媒体。
41) 有機材料層が、未記録時の主吸収帯が記録再生波長に対して長波長側に存在する有機材料からなることを特徴とする1)〜40)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
42) 有機材料層が色素からなることを特徴とする1)〜41)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
【0022】
43) 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体に対し、レーザ光を照射して光吸収層を発熱させ、この熱により有機材料の状態変化を誘発し、該状態変化により、有機材料層の記録再生波長での吸収係数を増加させて、及び/又は、該状態変化の作用力により、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層を、有機材料層から遠ざかる方向へ変形させて記録を行なうことを特徴とする追記型光記録媒体の記録方法。
44) 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体に対し、レーザ光を照射して光吸収層を発熱させ、この熱により有機材料の状態変化を誘発し、該状態変化により、有機材料層の記録再生波長での吸収係数を増加させると共に光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状を変化させて記録を行なうことを特徴とする追記型光記録媒体の記録方法。
45) 光吸収層に隣接する層が、基板、カバー層、有機材料層の何れかであることを特徴とする44)記載の追記型光記録媒体の記録方法。
46) 記録再生波長が350〜500nmであることを特徴とする43)〜45)の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。
47) 有機材料層の未記録時の主吸収帯よりも短波長側に相当する波長のレーザ光を用いて記録を行うことを特徴とする43)〜46)の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。
【0023】
以下、上記本発明の特徴・利点について詳細に述べる。
(1) 本発明の層構成と、有機材料の条件について
従来の追記型光記録媒体では、有機材料の分解・変質によって記録再生波長における吸収係数を低下させ、これによる大きな屈折率変化を利用して変調度を発生させていた(図8参照。横軸の下の矢印は記録再生波長を示す)。
これに対し、本発明の追記型光記録媒体では、従来、光吸収機能による熱発生層であり且つ分解・変質に起因した屈折率(複素屈折率の実部)変化による記録層として機能していた有機材料層から、光吸収機能による熱発生層の機能を分離させ、有機材料層とは別の光吸収層を設けた点に特徴がある。
そして、光吸収層又は光吸収層としての機能を有する下引層や上引層で発生する熱によって有機材料に状態変化を起させ、この状態変化により350〜500nm程度の青色レーザ波長領域での有機材料層の吸収係数を増加させて記録を行うか、及び/又は、この状態変化に伴う作用力によって、下引層、上引層、基板などに変形部を形成させて記録を行う。更に、上記有機材料層の吸収係数の増加と、有機材料の状態変化による光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状の変化とを組み合わせて記録を行うこともできる。
【0024】
このようにして記録を行う結果、本発明では、基本的に有機材料の記録再生波長における複素屈折率実部の変化を利用する必要がなくなるため(勿論、記録によって複素屈折率実部が変化しても構わない)、また有機材料層は記録再生波長に対して光吸収能を有する必要がなくなり、光学定数に関する従来のような厳しい制限が不要になるという顕著な効果を奏する。
上記界面形状の変化を組み合わせる記録手段について説明すると、有機材料層の吸収係数の増加により記録を行う場合において、記録層の薄膜化や状態変化の不十分さにより変調度が低下することがあり、これを補うため、光吸収層に隣接する層(例えば、基板、カバー層、有機材料層)と光吸収層との界面形状の変化を併用することができる。そして界面形状が変化すると回折効果が変わり、十分な変調度を得ることができる。
但し、界面形状の変化によって十分な変調度を発生させるためには、光吸収層と隣接しレーザ光の入射方向からみて光吸収層よりも手前側に存在する層と光吸収層との屈折率を大きく異なる(通常0.5以上)ようにすることが好ましい。何故ならば、光吸収層に隣接する層と光吸収層との屈折率が同程度であると、変形した界面は光学的には区別できなくなるためである。
【0025】
本発明で言う「有機材料の状態変化」とは、溶融、昇華、分解、爆発、構造変化等を指し、「有機材料の状態変化に伴う作用力」とは、上記変化に伴う有機材料層の隣接層への圧力のことを指す。
「有機材料の状態変化」の中では「分解、爆発」が重要であり、「有機材料の状態変化に伴う作用力」としては「有機材料の分解、爆発による圧力」を利用することが好ましい例として挙げられるが、この場合、有機材料に唯一要求されるのは、熱による分解特性(分解温度、爆発性、明確な分解閾値の存在、分解スピ−ド、分解量等)が優れていることである。
従って、記録再生が青色レーザ波長領域で行われる場合であっても、有機材料として、赤色レーザ波長領域に大きな吸収帯を有し青色レーザ波長領域に大きな吸収帯を持たず、かつ分解特性の優れた材料、例えばCD−RやDVD−R用の色素を用いることができる。
【0026】
また、従来は、波長制御のために、複雑な置換基や合成上困難性の高い色素を記録層として用いる必要があったが、本発明の有機材料層ではそのような複雑な波長制御は不必要なため、コストの安い有機材料を選択することが可能となる。
更に、本発明において光吸収機能による熱発生層となる光吸収層、下引層又は上引層には、屈折率が正常分散性を示す材料を用いることができるため、また有機材料層には、大きな吸収帯が記録再生波長よりも十分離れて存在する色素などの有機材料を用いることができるため(大きな吸収帯近傍では屈折率が異常分散性を示し、屈折率が波長によって大きく異なるという性質を示すが、大きな吸収帯から十分離れた波長領域では屈折率は正常分散性を示し、屈折率は波長に対し緩やかな変化を示す)、レーザの個体差や、環境温度の変化等による記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等が大きく変化するという従来の問題を大幅に解消することができる。
【0027】
なお、本発明の通常の態様では、有機材料層の有機材料の主吸収帯と記録再生波長の関係を「記録再生波長に対して有機材料の主吸収帯が長波長側に存在する」ように設定するが、これに限定される訳ではなく、有機材料の主吸収帯と記録再生波長の関係は任意に設定することが可能である。
但し、本発明の実施に際しては、光吸収層が存在することから、反射率を高めるため、有機材料の主吸収帯と記録再生波長を遠ざけることが好ましい。この場合、記録再生波長に対して有機材料の主吸収帯が長波長側に存在しても、逆に短波長側に存在してもよい。
上記の説明から分るように、本発明は、赤色領域から青色領域まで、更には青色領域以下も含む広い範囲の記録再生波長に対しても適用することが可能であり、用いられる記録再生波長に合わせて、後述するような公知の有機材料(特に色素)の中から上記条件を満たす材料を適宜選択することにより目的とする光記録媒体を得ることができる。
【0028】
(2) 本発明で用いる各層の光学条件について
前述したように光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状の変化を記録に用いる場合には、界面形状の変化による変調度を十分大きくするため、光吸収層に接する層と光吸収層の屈折率差を大きくする(通常0.5以上)ことが望ましい。
また、有機材料層から遠ざかる方向への変形により記録を行う場合には、反射率の向上と、記録再生信号の品質向上のために、記録層を、記録層と屈折率差のある層に隣接させることが有利である。
後者の場合、具体的には、基板/下引層/有機材料層、基板/有機材料層/上引層、基板/下引層/有機材料層/上引層、基板/下引層/有機材料層/カバ−層、基板/有機材料層/上引層/カバ−層、基板/下引層/有機材料層/上引層/カバ−層というように、記録層を記録層と屈折率差のある下引層又は上引層に隣接させる構造とする。なお、上引層又は下引層の屈折率が記録層の屈折率よりも高い場合は、屈折率差が0.5以上あることが好ましく、上引層又は下引層の屈折率が記録層の屈折率よりも低い場合は、屈折率差が0.4以上あることが好ましい。
この多層化による各層の膜厚、光学定数の調整によって、反射率や変調度を最適化することができるようになる。
ところで従来は、基板/色素層/反射層という層構成であり、色素の大きな吸収帯の長波長側の裾に記録再生波長を合わせていた。そのため、色素は記録再生波長において大きな屈折率(例えば2.5以上)を有し、色素層を挟む層である基板と金属反射層との屈折率差が大きくなるような状況にあった。
【0029】
しかし、青色レーザ波長領域では、色素等の有機材料の屈折率は低下し、かつ、基板の屈折率は上昇するという現象が生ずる(有機材料層と反射層の屈折率差は、青色レーザ波長領域でも十分ある)。
そこで、本発明の好ましい実施形態の一例では、反射率の向上と記録再生信号の品質向上のために、従来の色素に比べて色素層の屈折率を低く設定し、色素層(有機材料層)を挟み込む二つの層(下引層と上引層)のうち、一方の層を色素層(有機材料層)よりも屈折率の大きな光吸収機能を有する層とし、他方を色素層(有機材料層)よりも屈折率の大きな透明層(記録再生波長に対し吸収係数が小さい層)、又は色素層(有機材料層)よりも屈折率の小さな金属層とした。
従来の色素に比べて色素層の屈折率を低くするためには、例えば未記録時の主吸収帯が記録再生波長に対して長波長側に存在し、記録再生波長に対して吸収機能を殆んど有しないか極めて小さい有機材料を選択すればよく、その結果、有機材料層は従来と異なり、もはや十分な光吸収機能がなくなるため、光吸収機能を下引層又は上引層に持たせることになる。
【0030】
(3) 本発明で用いる記録原理について
上記有機材料層の吸収係数の増加による記録原理を、図9〜図11を参照しつつ説明する。
図9に示すような未記録状態の吸収スペクトルを有する有機材料を選択し、この有機材料を状態変化(特に分解、爆発)させると、分解により有機材料を構成していた分子や分子団の吸収が発生する。この吸収は、通常、分解、爆発前の有機材料の吸収よりも短波長であるため、元の有機材料の大きな吸収帯よりも短波長側での吸収係数が増加する(記録状態の吸収スペクトル参照)。この短波長側の吸収波長の変化の大きい範囲と記録再生波長(例えば図の矢印の位置)とを合わせれば、記録後の記録再生波長における吸収係数を増加させることができるので、これによって変調度を発生させることが可能となる。
【0031】
上記の記録原理についてもう少し詳しく説明すると、本発明で用いる有機材料は、小さな分子や分子団が結合して、或いは、錯体や会合体等を形成して大きな共役系を形成した有機材料であって、分子や分子団が持っていた固有の吸収波長(図10の吸収スペクトルA、Bに相当)よりも長波長側に大きな吸収帯を持ち、個々の分子や分子団が持っていた固有の吸収帯が消滅、又は減衰した吸収スペクトルを持つ(図11の吸収スペクトルCに相当)。
このような有機材料に対し、図11で示すようなλ1を記録再生波長として選択すると、未記録時はλ1での吸収が少なかった状態から、分解、爆発などによって、大きな分子を形成していた分子や分子団が持つ固有の吸収が増加し(図10参照)、λ1での吸収も増加し、吸収係数の変化による記録部が形成できる。従って、ただ小さな分子や分子団が結合しているだけであって、共役系の広がりが形成されないような分子は、図11のような状態、即ち、分子や分子団が持っていた固有の吸収帯が消滅又は減衰し、新たに大きな鋭い吸収帯が形成されるような状態が実現されないため、記録前後での吸収係数の変化が大きくならず、記録ピットを形成することができない。
【0032】
更に、上記の吸収係数の増加による記録原理と組み合わせる、界面形状の変化による記録原理について説明する。
光を吸収した光吸収層が昇温して放出する熱により、光吸収層に隣接する層(基板やカバー層など)と光吸収層との界面形状を変化させることも設計上は可能である。
この界面形状の変化によって形成された記録ピットは、未記録部と大きく異なる回折効果の変化を生むため、再生レーザを照射することで検出することが可能である。しかし、界面形状の変化のみでは、記録密度が非常に高くなった場合に短マークの振幅が十分発生しないこともある。これは、光吸収層との界面形状の変化を誘発する基板やカバー層などの変形は、昇温条件のみならず、冷却条件にも左右されるため、記録ピット間の熱干渉によって記録マークの形成状態が大きく影響を受けるため、或いは変形による記録では異なる記録極性成分が発生し易いため、互いの記録極性が相殺する場合があるからである。
従って、記録密度が非常に高くなった場合には、昇温条件の影響は受けるが、冷却条件に左右されず、かつ単一の記録極性が発生する前記有機材料の状態変化による記録原理を単独で採用するか、又はこの記録原理を主にし、界面形状の変化による記録原理を組み合わせることが好ましい。
【0033】
但し、このような二つの記録原理を組み合わせる場合には、界面形状の変化による変調度の極性〔ここではHigh to Low(ハイ・トゥー・ロー)記録か、或いはLow to High(ロー・トゥー・ハイ)記録かを変調度の極性と呼ぶことにする〕は、有機材料層の状態変化による変調度の極性と同一にすることが好ましい。
何故ならば、有機材料層の状態変化による吸収係数の増加では、記録層の屈折率や膜厚が大きく変化しない限り、変調度の極性はHigh to Lowとなるが、界面形状の変化では、その変形形状によって変調度の極性が変化する場合があるためである。
【0034】
次に、有機材料層と隣接する層を、有機材料層から遠ざかる方向に変形させて記録を行う記録原理について説明する。
従来の有機材料を用いた追記型光記録媒体の場合、基板上に有機材料層、反射層を順次積層した構造であり、基板側からのレーザ光照射では、有機材料層の中央部近傍が最も高温になる。つまり、従来型の追記型光記録媒体では、有機材料が分解・爆発しても、その圧力は十分隣接層に伝わらない。
そのため、有機材料が分解温度に達するまでにある程度の時間がかかること、有機材料が分解するまでにある程度の時間がかかることなども加わり、有機材料層から基板へ熱が伝達され、基板は有機材料層側へ大きく変形する。
この基板が有機材料層側(反射層側)に変形する様子は、例えば、Jpn.J.Appl.Phys.Vol.31(1992)pp.484−493「Recording Mechanism of Overcoated Metallized Dye Layers on Polycarbonate Substrates」等に記載されている。
【0035】
これに対し本発明では、例えば光記録媒体の構造が、基板/下引層(光吸収層)/有機材料層/上引層(反射層)であり、記録再生波長に対してほぼ透明な有機材料を有機材料層に用いたため、下引層(光吸収層)の界面近傍の有機材料が最も高温になり易く、有機材料の分解・爆発による圧力を効率よく利用することが可能となるのである(有機材料の分解・爆発の圧力によって下引層を容易に変形させることができる)。
また、後述するが、有機材料層から光吸収機能を除くことができるため、本発明では有機材料層の薄膜化が実現できる。その結果、光吸収機能が下引層にある場合であっても、有機材料の分解・爆発による圧力を上引層にも十分伝達させることができる。
なお、上記の説明は、下引層が光吸収層である本発明の一構成例について行ったが、上引層が光吸収層である他の発明の場合も、基本的な原理は同じである。
【0036】
また、従来の追記型光記録媒体では、有機材料層が記録層と光吸収層の機能を兼用していたため、記録再生波長に対して大きな屈折率nと比較的小さな吸収係数kを有することが有機材料の必須条件であり、そのため有機材料を分解させる温度まで到達させるには、比較的厚い膜厚が必要となっていた(また相変化型の光記録媒体に対し基板の溝深さが非常に深くなっていた)。
しかし、本発明の記録媒体では、光吸収機能と記録機能を分離したため、有機材料層の膜厚は従来に比べて薄くすることが可能となる。
この有機材料層の薄膜化が可能となったことにより、有機材料層の隣接層を、有機材料の分解・爆発の圧力によって一層変形させ易くなるのである。
また、有機材料層の薄膜化が可能となったことにより、転写性(成形性)に優れた溝深さの浅い基板を使用することが可能となり、光記録媒体の信号品質が大幅に向上すると共に、従来に比べて基板を容易かつ安価に製造(成形)できる。また、上記記録原理によるため、再生時に基板の溝形状の影響を受け難く、基板形状のばらつきに対する許容度が大きくなり、従来に比べて基板の製造を容易且つ安価に行うことができる。
なお、従来の文献では光吸収層を色々な意味で用いており、光吸収機能及び熱発生機能を分担する層といわゆる記録機能を分担する層を分けたような層構成の媒体も散見されるが、上記本発明のような記録原理を採用するための光吸収層を設けた追記型光記録媒体に関する文献は、本発明者の知る限り皆無である。
【0037】
以下、添付した図面に基づき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
本発明の追記型光記録媒体は、基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有することを特徴とする。
各構成要素について具体的に説明すると、基板の素材としては、熱的、機械的に優れた特性を有し、基板側から(基板を通して)記録再生が行われる場合には光透過特性にも優れたものであれば、特別な制限はない。
具体例としては、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、非晶質ポリオレフィン、セルロースアセテート、ポリエチレンテレフタレートなどが挙げられるが、ポリカーボネートや非晶質ポリオレフィンが好ましい。
基板の厚さは用途により異なり、特に制限はない。
【0038】
光を吸収し熱を発生させる光吸収層又は光吸収層として機能する下引層や上引層には、比較的熱伝導率の低い材料が適している。比較的低い熱伝導率の材料を選択する理由は、効率よく(低記録パワーで)有機材料を状態変化させるためであり、また、界面の変形を伴う場合には、効率よく(低記録パワーで)各層の界面を変形させるためである。
なお、ここで言う比較的熱伝導率が低いとは、記録によって局所的に有機材料を状態変化させるだけの温度に達するような熱伝導率であることを意味する。
以上の点から、光吸収層又は光吸収層として機能する下引層や上引層には、SiC等のセラミックス、Si等の半金属、Ge等の金属、又はそれらの混合物を用いることが好ましい。
また、有機材料の状態変化を低記録パワーで生じさせるために、また、界面の変形を伴う場合には、効率よく(低記録パワーで)各層の界面を変形させるために、光吸収層として、記録波長に対する吸収係数がある程度大きい材料を用いることが好ましい。
【0039】
上記光吸収層の材料となるセラミックスとしては、Al、MgO、BeO、ZrO、UO、ThOなどの単純酸化物系の酸化物;SiO、2MgO・SiO、MgO・SiO、CaO・SiO、ZrO・SiO、3Al・2SiO、2MgO・2Al・5SiO、LiO・Al・4SiOなどのケイ酸塩系の酸化物;AlTiO、MgAl、Ca10(PO(OH)、BaTiO、LiNbO、PZT〔Pb(Zr,Ti)O〕、PLZT〔(Pb,La)(Zr,Ti)O〕、フェライトなどの複酸化物系の酸化物;Si、Si6−ZAl8−Z、AlN、BN、TiNなどの窒化物系の非酸化物;SiC、BC、TiC、WCなどの炭化物系の非酸化物;LaB、TiB、ZrBなどのホウ化物系の非酸化物;CdS、MoSなどの硫化物系の非酸化物;MoSiなどのケイ化物系の非酸化物;アモルファス炭素、黒鉛、ダイヤモンド等の炭素系の非酸化物などを用いることができる。
また、金属としては、Au、Al、Ag、Cu、Pd、Pt、Ti、Ta、Cr、Ni、Fe、及びこれらの合金を用いることができる。
光吸収層の厚さは20〜500Åが望ましい。
また、有機材料の状態変化に誘発された有機材料層と光吸収層(下引層又は上引層)界面の変形による変調度を十分発生させるためには、光吸収層(下引層又は上引層)と有機材料層の屈折率を大きく異なるようにする(光吸収層の屈折率が有機材料層の屈折率よりも高い場合は屈折率差0.5以上、光吸収層の屈折率が有機材料層の屈折率よりも低い場合は屈折率差0.4以上とする)ことが好ましい。
【0040】
有機材料層に用いられる有機材料としては、いわゆる色素が好ましい。また、下引層や上引層を十分変形させるためには、昇華性又は分解・爆発性が高い色素、或いは昇華性又は分解・爆発性の高い置換基が導入された色素が好ましい。
また、高い分解・爆発性を確保するには、分子骨格が大きい有機材料が好ましい。更に、構造変化によって体積変化を起こす色素も用いることができる。
本発明では、反射率を確保するために、有機材料の主吸収帯と記録再生波長を十分遠ざけることが好ましい。
記録再生波長が赤色領域にある場合は、有機材料の主吸収帯に対して記録再生波長は短波長側にあっても、長波長側にあってもよい。
一方、記録再生波長が青色領域以下にある場合は、有機材料の主吸収帯に対して記録再生波長を長波長側に設定することは、有機材料の分子骨格を小さくしなければいけない(共役系を短くする)ことを意味し、これは分解・爆発性の低下を招く恐れがあり、また溶解性の低下や結晶性の向上によって薄膜の形成が困難になる可能性があるため好ましくない。
【0041】
従って、十分な分解・爆発性を確保し、かつ良質な薄膜を形成させるために、記録再生波長が青色レーザ波長領域にある場合は、その主吸収帯が記録再生波長よりも長波長側に存在するような有機材料を選択することが好ましい。
上記の要件を満足する色素としては、ポリメチン系、ナフタロシアニン系、フタロシアニン系、スクアリリウム系、クロコニウム系、ピリリウム系、ナフトキノン系、アントラキノン(インダンスレン)系、キサンテン系、トリフェニルメタン系、アズレン系、テトラヒドロコリン系、フェナンスレン系、トリフェノチアジン系の各色素、及び金属錯体化合物などが挙げられる。
特にポリメチン色素では、メチン鎖の長さとメチン鎖に結合する複素環の種類によって、主吸収帯の波長(最大吸収波長)が近赤外域から紫外域へと変化するため(「感光色素」、速水正明監修、産業図書等を参照)、本発明では、色素の主吸収帯における最大吸収波長が記録再生波長よりも長波長となるようにメチン鎖の長さとメチン鎖に結合する複素環の種類を選択することが好ましい。
【0042】
上記のように、メチン鎖に結合する複素環の種類によって最大吸収波長が変化するため一概には言えないが、例えば代表的なポリメチン色素である下記〔化1〕のシアニン色素の場合、一般的にはnは1以上であることが好ましい(但しこれに限定されるものではい)。
【化1】
Figure 0004117881
また、前記の色素は単独で用いても2種以上の組合で用いてもよい。
更に上記色素中に特性改良の目的で、安定剤(遷移金属錯体等)、紫外線吸収剤、分散剤、難燃剤、潤滑剤、帯電防止剤、界面活性剤、可塑剤などを添加しても良い。
色素層の形成は、蒸着、スパッタリング、CVD、溶剤塗布などの通常の手段によって行なうことができる。塗布法を用いる場合には、上記染料などを有機溶剤に溶解して、スプレー、ローラーコーティング、ディッピング、スピンコーティングなどの慣用のコーティング法で行なうことができる。
【0043】
用いられる有機溶剤としては、一般にメタノール、エタノール、イソプロパノールなどアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類;酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類;クロロホルム、塩化メチレン、ジクロルエタン、四塩化炭素、トリクロルエタンなどの脂肪族ハロゲン化炭素類;ベンゼン、キシレン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼンなどの芳香族類;メトキシエタノール、エトキシエタノールなどのセロソルブ類;ヘキサン、ペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素類などが挙げられる。
色素層の膜厚は、100Å〜10μm、好ましくは100〜2000Åが適当である。
【0044】
光吸収層として機能しない下引層又は上引層としては(下引層又は上引層の一方が光吸収層として機能する場合の、他方の下引層又は上引層を指す)、金属又はセラミックスが好ましい。
この金属又はセラミックスは、反射率の向上又は記録再生特性の向上を図るために、有機材料層との屈折率差のある材料を用いることが好ましい。
有機材料層を2つの層(下引層と上引層)で挟む構造であって、入射レーザ光に対し手前側の層に光吸収能がある場合(図16や図19)には、反射率の向上又は記録再生特性の向上を図るために、入射レーザ光に対し奥側の層は金属であることが好ましい。
逆に、有機材料層を2つの層(下引層と上引層)で挟む構造であって、入射レーザ光に対し奥側の層に光吸収能がある場合(図17や図20)には、反射率の向上又は記録再生特性の向上を図るために、入射レーザ光に対し手前側の層は、記録再生波長に対し吸収係数が小さな(0.02以下程度)セラミックスであることが好ましい。
上記金属としては、Au、Al、Cu、Cr、Ag、Ti及びこれらの合金からなる群より選択される金属が好ましく、上記記録再生波長(ここでは青色領域近傍)に対し吸収係数が小さなセラミックスとしては、前述したセラミックスやZnS・SiO等が好ましい。
これらの材料は、一般に真空蒸着又はスパッタリング法により50〜5000Å、好ましくは50〜3000Åの厚さで形成される。
【0045】
反射層は、記録または再生時に高反射率を得るためのものであり、簡単に変形しないように、熱伝導率が大きく、反射率が大きい金属、例えばAu、Al、Cu、Cr、Ag、Ti及びこれらの合金からなる群より選択される金属で形成することが好ましい。
膜厚は50〜5000Å、好ましくは100〜3000Åとする。
反射層の形成には、一般に真空蒸着又はスパッタリング法が用いられる。
【0046】
カバー層は、高密度化を図るため高NAのレンズを用いる場合に必要となる。
例えば高NA化すると、再生光が透過する部分の厚さを薄くする必要がある。これは、高NA化に伴い、光学ピックアップの光軸に対してディスク面が垂直からズレる角度(いわゆるチルト角、光源の波長の逆数と対物レンズの開口数の積の2乗に比例する)により発生する収差の許容量が小さくなるためであり、このチルト角が基板の厚さによる収差の影響を受け易いためである。
従って基板の厚さを薄くしてチルト角に対する収差の影響をなるべく小さくするようにしている。
そこで、例えば基板上に凹凸を形成して記録層とし、その上に反射膜を設け、更にこの上に、光を透過する薄膜である光透過性のカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体や、基板上に反射膜を設け、その上に記録膜を形成して記録層とし、更にこの上に光透過性を有するカバー層を設けるようにし、カバー層側から再生光を照射して記録層の情報を再生するような光記録媒体が提案されている。
このようにすれば、カバー層を薄型化していくことで対物レンズの高NA化に対応可能である。つまり、薄いカバー層を設け、このカバー層側から記録再生することで、更なる高記録密度化を図ることができる。
なお、このようなカバー層は、ポリカーボネートシートや紫外線硬化型樹脂により形成するのが一般的である。
【0047】
続いて、有機材料層の吸収係数を増加させて記録を行う場合、及び光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状を変化させて記録を行う場合の態様について、図2〜図7を参照しつつ説明する。なお、図2〜図7では基板に溝が形成されているが、カバー層側に溝が形成されていても構わない。
図2及び図3は、本発明の追記型光記録媒体の層構成の一例を示すものであり、図2の媒体は基板上に光吸収層、有機材料層、反射層が順次設けられた構造を、図3の媒体は、基板上に光吸収層、有機材料層が順次設けられた構造を有する。
これらの構造では、クロスト−クの増加をもたらす光吸収層の変形が大きくなるのを防止するため、光吸収層として、できるだけ高硬度の材料を用いるか、又は変形を起こし難い膜厚を選定することが好ましい(これは、変形を抑制することを意図するものではなく、変形領域の拡大を抑制することを意図するものである)。
また、これらの構造では、基板側からのレーザ光照射により光吸収層が発熱し、この熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させることで記録が行なわれるか、或いは、基板側からのレーザ光照射により光吸収層が発熱し、例えば、この熱によって基板と光吸収層との界面形状を変化させ(この界面形状の変化は基板の変形、光吸収層の変形又は有機材料層の体積変化により誘発される)、かつ光吸収層の熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させることで記録が行なわれる。
なお、基板と光吸収層との界面形状の変化による変調度を十分大きくするためには、基板と光吸収層の屈折率差を大きくするとよい。
【0048】
図4は、他の例を示すものであり、基板上に有機材料層、光吸収層が順次設けられた構造を有する。この構造でも、クロスト−クの増加をもたらす光吸収層の変形が大きくなるのを防止するため、光吸収層として、できるだけ高硬度の材料を用いるか、又は変形を起こし難い膜厚を選定することが好ましい(これは変形を抑制することを意図するものではなく、変形領域の拡大を抑制することを意図するものである)。
この構造における記録原理は、図2、図3の場合と同様であり、例えば光吸収層の発熱による光吸収層と有機材料層の界面形状変化を利用することができる。
なお、光吸収層と有機材料層の界面形状の変化による変調度を十分大きくするためには、光吸収層と有機材料層の屈折率差を大きくするとよい。
【0049】
図5は、更に他の例を示すものであり、基板上に有機材料層、光吸収層、カバー層が順次設けられた構造を有する。この構造でも、クロスト−クの増加をもたらす光吸収層の変形が大きくなるのを防止するため、光吸収層として、できるだけ高硬度の材料を用いるか、又は変形を起こし難い膜厚を選定することが好ましい(これは、変形を抑制することを意図するものではなく、変形領域の拡大を抑制することを意図するものである)。
この構造では、カバー層側からのレーザ光照射により光吸収層が発熱し、この熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させることで記録が行なわれるか、或いは、カバー層側からのレーザ光照射により光吸収層が発熱し、この熱によって、例えばカバー層と光吸収層との界面形状を変化させ(この界面形状を変化は、基板の変形、カバー層の変形、光吸収層の変形又は有機材料層の体積変化により誘発される)、かつ光吸収層の熱によって有機材料の状態変化を誘発させ、記録再生波長での吸収係数を増加させることで記録が行なわれる。
なお、カバー層と光吸収層との界面形状の変化による変調度を十分大きくするためには、カバー層と光吸収層の屈折率差を大きくするとよい。
【0050】
図6は、更に他の例を示すものであり、基板上に反射層、有機材料層、光吸収層、カバー層が順次設けられた構造を有する。この構造では、クロスト−クの増加をもたらす光吸収層の変形が大きくなるのを防止するため、光吸収層として、できるだけ高硬度の材料を用いるか、又は変形を起こし難い膜厚を選定することが好ましい(これは、変形を抑制することを意図するものではなく、変形領域の拡大を抑制することを意図するものである)。
この構造における記録原理は、図5の場合と同様であり、界面形状の変化の態様に反射層の変形をも加えることができる。
なお、カバー層と光吸収層との界面形状の変化による変調度を十分大きくするためには、カバー層と光吸収層の屈折率差を大きくするとよい。
【0051】
図7は、更に他の例を示すものであり、基板上に光吸収層、有機材料層、カバー層が順次設けられた構造を有する。この構造では、クロスト−クの増加をもたらす光吸収層の変形が大きくなるのを防止するため、光吸収層として、できるだけ高硬度の材料を用いるか、又は変形を起こし難い膜厚を選定することが好ましい(これは、変形を抑制することを意図するものではなく、変形領域の拡大を抑制することを意図するものである)。
この構造における記録原理は、図5の場合と同様であり、例えば、光吸収層の発熱による基板と光吸収層との界面形状変化を利用することができる。
なお、基板と光吸収層との界面形状の変化による変調度を十分大きくするためには、基板と光吸収層の屈折率差を大きくするとよい。
但し、本発明で利用できる変形界面(変形位置)は、上記図2〜図7の説明に挙げられた変形界面に限定されるものではなく、任意の界面の変形を用いることができる。
【0052】
次に、有機材料層と隣接する層を、有機材料層から遠ざかる方向に変形させて記録を行う場合の態様について、図13〜図20を参照しつつ説明する。なお、図13〜図20は、本発明の実施の態様に係る層構成の一例を示すものであって、本発明はこれらの層構成に限られるものではない。
波長350〜500nmのレーザ光を5〜15mW程度のパワーで光記録媒体に照射すると、光吸収層(光吸収機能を有する下引層又は上引層)が光を吸収し昇温して熱を放出する。
この熱は、特に光吸収層近傍の有機材料に伝達されて有機材料の状態変化(例えば分解・爆発)を誘発し、この状態変化の作用力(例えば分解・爆発による圧力)によって、光吸収層は有機材料層側とは反対方向に変形させられる。この変形によって形成された記録ピットは、再生レーザ光を照射することにより明瞭に検出することができる。
或いは、光吸収層で発生した熱は、有機材料に伝達されて有機材料の状態変化(例えば分解・爆発)を誘発するが、本発明の追記型光記録媒体では有機材料層の膜厚を薄膜化することが可能であるため、状態変化の作用力(例えば分解・爆発による圧力)によって、光吸収層とは有機材料層を挟んで反対側の層を変形させることもできる。この変形によって形成された記録ピットも、再生レーザ光を照射することにより明瞭に検出することができる。
【0053】
以下、図13〜図20に示した各記録媒体の機能について説明する。
図13〜図20は、350〜500nm程度の青色レーザ波長対応の追記型光記録媒体を実現する層構成の一例を示すものである。
図13では、基板上に少なくとも下引層、有機材料層が順次設けられている。
この構造では、レーザ光照射により光吸収能を有する下引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって下引層を有機材料層から遠ざかる方向へ変形させることで記録が行われる。
図14では、基板上に少なくとも有機材料層、上引層が順次設けられている。
この構造では、レーザ光照射により光吸収能を有する上引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって基板を有機材料層から遠ざかる方向へ変形させることで記録が行われる。
図15では、基板上に下引層、有機材料層、上引層が順次設けられている。
この構造では、通常、記録再生が基板側から行われる。また、この構造では、基板側からのレーザ光照射により光吸収能を有する下引層又は上引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって下引層又は上引層を有機材料層から遠ざかる方向へ変形させることで記録が行われる(図21〜図23参照。なお、図21〜図23では、基板やカバー層等は省略してある)。
なお、反射率の向上、及び記録再生信号の品質向上を図るため、有機材料層との屈折率差がある下引層と上引層で有機材料層を挟み込む構造とする。
【0054】
図16は、図15の層構成の具体例を示す図であり、基板上に光吸収層として機能する下引層(例えばSiC)、有機材料層、上引層(例えばAg)が順次設けられた構造を有する。
この構造では、通常、記録再生が基板側から行われる。また、この構造では、基板側からのレーザ光照射により光吸収能を有する下引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって下引層を基板側へ変形させることで記録が行われる(図21、図23参照)。
或いは、基板側からのレーザ光照射により光吸収能を有する下引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって上引層を基板とは反対側へ変形させることで記録が行われる(図22、図23参照)。
なお、反射率の向上及び記録再生信号の品質向上を図るため、有機材料層との屈折率差がある下引層と上引層で有機材料層を挟み込む構造とする。
【0055】
図17は、図15の層構成の、他の具体例を示す図であり、基板上に下引層(例えばZnS・SiO)、有機材料層、光吸収層として機能する上引層(例えばSiC)が順次設けられた構造を有する。
この構造では、通常、記録再生が基板側から行われる。また、この構造では、基板側からのレーザ光照射により光吸収能を有する上引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって上引層を基板とは反対側へ変形させることで記録が行われる(図22、図23参照)。
或いは、基板側からのレーザ光照射により光吸収能を有する上引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって下引層を基板側へ変形させることで記録が行われる(図21、図23参照)。
なお、反射率の向上、記録再生信号の品質向上を図るため、有機材料層との屈折率差がある下引層と上引層で挟み込む構造とする。
【0056】
図18では、基板上に下引層、有機材料層、上引層、カバー層が順次設けられた構造を有する。
この構造では、通常、記録再生が高NA(例えば0.85)を有するレンズによってカバー層側から行われる。また、この構造では、カバー層側からのレーザ光照射により光吸収能を有する下引層又は上引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって下引層又は上引層を有機材料層から遠ざかる方向へ変形させることで記録が行われる(図21〜23参照)。
なお、反射率の向上、及び記録再生信号の品質向上を図るため、有機材料層との屈折率差がある下引層と上引層で有機材料層を挟み込む構造とする。
【0057】
図19は、図18の層構成の具体例を示す図であり、基板上に下引層(例えばAg)、有機材料層、光吸収層として機能する上引層(例えばSiC)、カバー層が順次設けられた構造を有する。
この構造では、通常、記録再生が高NA(例えば0.85)を有するレンズによってカバー層側から行われる。また、この構造では、カバー層側からのレーザ光照射により光吸収能を有する上引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって上引層をカバー層側へ変形させることで記録が行われる(図22、図23参照)。
或いは、カバー層側からのレーザ光照射により光吸収能を有する上引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって下引層を基板側へ変形させることで記録が行われる(図21、図23参照)。
なお、反射率の向上、及び記録再生信号の品質向上を図るため、有機材料層との屈折率差がある下引層と上引層で有機材料層を挟み込む構造とする。
【0058】
図20は、図18の層構成の別の具体例を示す図であり、基板上に光吸収層として機能する下引層(例えばSiC)、有機材料層、上引層(例えばZnS・SiO)、カバー層が順次設けられた構造を有する。
この構造では、通常、記録再生が高NA(例えば0.85)を有するレンズによってカバー層側から行われる。また、この構造では、カバー層側からのレーザ光照射により光吸収能を有する下引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって下引層を基板側へ変形させることで記録が行われる(図21、図23参照)。
或いは、カバー層側からのレーザ光照射により光吸収能を有する下引層が発熱し、この熱によって有機材料の分解・爆発を誘発させ、その圧力によって上引層をカバー層側へ変形させることで記録が行われる(図22、図23参照)。
なお、反射率の向上、及び記録再生信号の品質向上を図るため、有機材料層との屈折率差がある下引層と上引層で有機材料層を挟み込む構造とする。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0060】
実施例1
案内溝(溝深さ50nm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法により膜厚10nmのSiC層(光吸収層)を設け、その上に下記〔化2〕で示される色素からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し、更にその上にスパッタ法で膜厚150nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成した。
なお、レーザ光波長405nmにおける〔化2〕の複素屈折率は、1.485−i0.069であり、従来の追記型光記録媒体に用いる有機材料に要求される複素屈折率に対し著しく劣ったものである(例えばDVD−Rに用いられている色素の記録再生波長近傍での複素屈折率は、2.5−i0.10程度である)。
【化2】
Figure 0004117881
【0061】
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、以下の条件で、8−16変調信号の記録を行った。
<記録条件>
記録線密度:1T=0.0917(μm)
記録線速度:6.0(m/s)
記録ストラテジ:Basic strategy(基本ストラテジ)
top−Tmp=1.40−0.75(T)
記録パワー:11.0(mW)
記録パターン:3T、4T、5T、8T、14Tの単一周期信号
その結果は、下記〔表1〕に示す通りで、記録再生波長での吸収係数の増加、及び有機材料層とSiC層との界面の変形による記録が行われ、短マーク、長マーク共に、変調度が十分大きく、非常に明瞭な信号が得られた。
【0062】
【表1】
Figure 0004117881
【0063】
比較例1
案内溝(溝深さ150nm)を有するポリカーボネート基板上に下記〔化3〕で示される色素からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し(平均膜厚100nm)、更にその上に、スパッタ法により、膜厚150nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成した(従来の層構成を青色領域でも適用した例)。
なお、レーザ光波長405nmにおける〔化3〕の複素屈折率は、2.285−i0.069であり、従来の追記型光記録媒体に用いる有機材料に要求される複素屈折率に対し、比較的近い複素屈折率を有する(例えばDVD−Rに用いられている色素の、記録再生波長近傍での複素屈折率は、2.5−i0.10程度である)。
【化3】
Figure 0004117881
【0064】
上記光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、以下の条件で、8−16変調信号の記録を行った。
<記録条件>
記録線密度:1T=0.0917(μm)
記録線速度:6.0(m/s)
記録ストラテジ:Basic strategy(基本ストラテジ)
top−Tmp=1.40−0.75(T)
記録パワー:12.0(mW)
記録パターン:3T、4T、5T、8T、14Tの単一周期信号
その結果、下記〔表1〕に示す通り、長マークでは、実施例1よりはやや劣るものの、比較的大きな変調度が得られたが、短マークでは、実施例1と異なり、十分な信号が得られず(振幅の小さい信号しか得られず)、またマーク長に拘わらずノイズの多い信号しか得られなかった。また、ジッタ(σ/Tw)の測定が不可能であった。
【0065】
更に、案内溝(溝深さ150nm)を有するポリカーボネート基板に代えて、実施例1と同様に、案内溝(溝深さ50nm)を有するポリカーボネート基板上に〔化3〕で示される色素からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し(平均膜厚50nm)、更にその上に、スパッタ法により、膜厚150nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成し、上記と同様の記録条件で記録を行ったが、全く記録できなかった。
【0066】
以上の実施例1と比較例1から、本発明の光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の有機材料からなる追記型光記録媒体の実現に対し非常に有効であることが確認できた。
また、本発明の光記録媒体の層構成と記録原理が、青色レーザ波長対応の高変調度が確保できる追記型光記録媒体の実現に対し非常に有効であることが確認できた。
【0067】
実施例2
案内溝(溝深さ50nm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法により膜厚10nmのSiC層(光吸収層)を設け、その上に前記〔化2〕で示される色素からなる有機材料層をスピンコート法によって形成し、更にその上にスパッタ法で膜厚150nmのAg反射層を設けて光記録媒体を作成した。
この光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置DDU−1000(波長:405nm、NA:0.65)を用いて、以下の条件で、8−16変調信号の記録を行った。
<記録条件>
記録線密度:1T=0.0917(μm)
記録線速度:6.0(m/s)
記録ストラテジ:Basic strategy(基本ストラテジ)
top−Tmp=1.40−0.75(T)
その結果、記録パワー7.8(mW)で、有機材料層から遠ざかる方向への変形による記録が行われ、図24のような非常に明瞭なアイパターンを得ることができた。また、ジッタ(σ/Tw)は9.8(%)であった。
更に、上記光記録媒体のSiC面をAFMにより観察した結果、図25に示すように、SiC面は基板側に凹んでいることが確認できた。
【0068】
一方、案内溝(溝深さ50nm)を有するポリカーボネート基板上に、スパッタ法によって膜厚10nmのSiC層を設けただけのサンプルに対して記録を行ったところ、図26に示すように、記録パワーによらず、光吸収層であるSiCが基板とは反対方向に変形していることが確認され、図25のSiCの変形が本発明の記録原理に基づくことが実証された。
また、従来、有機材料を用いた光記録媒体では、有機材料層で熱を発生させる必要があったため、有機材料層を薄膜化できず、深い溝(例えば150〜180nm)を必要としていたが、本発明の記録原理によって、有機材料の薄膜化が可能となるため、50nmという非常に浅い溝を有する基板を適用できることが確かめられた。
更に、前記比較例1の光記録媒体の基板面をAFMにより観察した結果、図27に示すように、従来の光記録媒体と同様、基板面は有機材料層側(反射層側)に変形していた。
【0069】
実施例3
〔化2〕で示される色素を〔化4〕で示されるシアニン色素に変えた点以外は実施例2と同様にして光記録媒体を作成し、同様の記録条件で記録を行った。
その結果、記録パワー7.5mWで、有機材料層から遠ざかる方向への変形による記録が行われ、ジッタ(σ/Tw)は9.9%であった。
更に、上記光記録媒体のSiC面をAFMにより観察した結果、実施例2と同様に、SiC面は基板側に凹んでいることが確認できた。
また、上記記録された光記録媒体と未記録の光記録媒体のAg反射層を剥がし、色素をエタノ−ルで溶かしてスペクトルの違いを測定し、未記録時に対する記録後の吸光度の増加比(=記録後の吸光度/未記録時の吸光度)を測定した(測定波長は405nm)。
その結果、表2に示すように記録によって記録再生波長での吸収係数が1.35倍となっていることが確認できた。
【化4】
Figure 0004117881
【0070】
実施例4〜14
〔化4〕で示される色素を下記〔化5〕〜〔化6〕で示されるシアニン色素、下記〔化7〕〜〔化15〕で示されるスチリル色素に変えた点以外は実施例3と同様にして光記録媒体を作成し、同様の記録条件で記録を行った。
その結果、表2に纏めて示すように、本発明の記録原理に基づき、良好な記録ができることが確認できた。
【0071】
【化5】
Figure 0004117881
【化6】
Figure 0004117881
【0072】
【化7】
Figure 0004117881
【化8】
Figure 0004117881
【化9】
Figure 0004117881
【0073】
【化10】
Figure 0004117881
【化11】
Figure 0004117881
【化12】
Figure 0004117881
【0074】
【化13】
Figure 0004117881
【化14】
Figure 0004117881
【化15】
Figure 0004117881
【0075】
【表2】
Figure 0004117881
【0076】
実施例15
ポリカーボネート基板上に、前記〔化2〕で示される色素からなる記録層、膜厚150nmのAg反射層を順次積層した従来型の光記録媒体(DVD−R)と、ポリカーボネート基板上に、膜厚10nmのSiC層(光吸収層)、前記〔化2〕で示される色素からなる記録層、膜厚150nmのAg反射層を順次積層した光記録媒体について、各光記録媒体の反射率:Rと吸収率:A(透過率をTとした場合、A=1−T−R)を計算した。なお、〔化2〕で示される色素は、DVD−Rに対応した色素である。
図29は、本発明の記録媒体における青色レーザ波長領域での反射率を計算した結果であり(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)、図30は、従来型の光記録媒体(DVD−R)における赤色レーザ波長領域での反射率を計算した結果である(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)。
図31は、本発明の記録媒体における青色レーザ波長領域での吸収率を計算した結果であり(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)、図32は、従来型の光記録媒体(DVD−R)における赤色レーザ波長領域での吸収率を計算した結果である(横軸は記録再生波長、縦軸は記録層の厚さである)。
その結果、本発明の光記録媒体は、反射率と吸収率の等高線が波長軸(横軸)に対して平行に広がっており、反射率と吸収率が波長変動によって大きく変化しないことが確かめられた。
一方、従来型の光記録媒体(DVD−R)では、反射率と吸収率の等高線が波長軸(横軸)に対して傾いて広がっており、反射率と吸収率が波長変動によって大きく変化することが確かめられた。
以上説明したように、本発明の光記録媒体の層構成によれば、反射率と吸収率が波長変動によって大きく変化しないため、記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等の変化が少ない追記型光記録媒体を実現できることが確認できた。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、青色レーザ波長対応で高密度化を図ることが可能な有機材料層を有する追記型光記録媒体、転写性のよい浅溝基板が利用可能な有機材料層を有する追記型光記録媒体、記録再生波長の変動に対し、記録感度、変調度、ジッタ、エラー率といったような記録特性や、反射率等の変化が少ない追記型光記録媒体を容易かつ安価に提供できる。
また、カバー層を有する層構造の場合には、基板よりも非常に薄いカバー層を用いることにより、記録再生を高NA(例えば0.85)レンズを用いて行なうことが出来るので、一層高密度記録が可能な追記型光記録媒体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の光記録媒体の層構成を説明するための図である。
【図2】本発明の光記録媒体の層構成例を説明するための図である。
【図3】本発明の光記録媒体の、他の層構成例を説明するための図である。
【図4】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例を説明するための図である。
【図5】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例を説明するための図である。
【図6】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例を説明するための図である。
【図7】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例を説明するための図である。
【図8】従来の光記録媒体の記録原理を説明するための図である。
【図9】本発明の光記録媒体の記録原理を説明するための図である。
【図10】本発明の光記録媒体に用いる有機材料層の特性を説明するための図である。
【図11】本発明の光記録媒体に用いる有機材料層の特性を説明するための図である。
【図12】〔化1〕と〔化2〕からなる色素混合体の吸収係数(複素屈折率の虚部)を示す図である。
【図13】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例を説明するための図である。
【図14】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例を説明するための図である。
【図15】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例(基板側からの記録再生)を説明するための図である。
【図16】図4の層構成の具体例を説明するための図である。
【図17】図4の層構成の、他の具体例を説明するための図である。
【図18】本発明の光記録媒体の、更に他の層構成例(カバー層側からの記録再生)を説明するための図である。
【図19】図7の層構成の具体例を説明するための図である。
【図20】図7の層構成の、他の具体例を説明するための図である。
【図21】本発明の光記録媒体の記録原理の一例を説明するための図である。
【図22】本発明の光記録媒体の記録原理の、他の例を説明するための図である。
【図23】本発明の光記録媒体の記録原理の、更に他の例を説明するための図である。
【図24】実施例の光記録媒体に対し、6.0(m/s)で記録を行った時のアイパタ−ンを示す図である。
【図25】実施例の光記録媒体に対し、下引層の変形をAFMにより観察した図である。
【図26】基板上に下引層を設けただけの光記録媒体に対し、下引層の変形をAFMにより観察した図である。
【図27】比較例1の光記録媒体に対し、基板の変形をAFMにより観察した図である。
【図28】市販のDVD−Rに対し、基板の変形をAFMにより観察した図である。
【図29】本発明の光記録媒体において、反射率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【図30】従来型の光記録媒体(DVD−R)において、反射率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【図31】本発明の光記録媒体において、吸収率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【図32】従来型の光記録媒体(DVD−R)において、吸収率の波長依存性を計算した結果を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
2 下引層
3 有機材料層
4 上引層
5 カバー層
6 光吸収層
7 反射層

Claims (47)

  1. 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化による記録再生波長での吸収係数の増加により、及び/又は、該状態変化の作用力による、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層の、有機材料層から遠ざかる方向への変形により、記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  2. 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体において、レーザ光の照射による光吸収層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化による記録再生波長での吸収係数の増加、及び、該状態変化による光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状の変化により記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  3. 記録再生波長が350〜500nmであることを特徴とする請求項1又は2記載の追記型光記録媒体。
  4. 基板上に、光吸収層、有機材料層、反射層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  5. 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  6. 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  7. 基板上に、有機材料層と光吸収層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  8. 基板上に、光吸収層と有機材料層がこの順に形成され、更にその上に、記録再生波長に対し透明なカバー層が形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  9. 基板上に、反射層、有機材料層、光吸収層、記録再生波長に対し透明なカバー層がこの順に形成されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  10. 光吸収層がセラミックス、半金属、金属、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  11. 光吸収層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項10記載の追記型光記録媒体。
  12. 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  13. 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  14. 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層が基板とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  15. 下引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項12〜14の何れかに記載の追記型光記録媒体
  16. 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n1>n2>n3であることを特徴とする請求項13〜15の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  17. 上引層が有機材料層よりも屈折率の小さな金属からなることを特徴とする請求項13〜16の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  18. 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)とをこの順序で形成し、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層が基板とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  19. 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)とをこの順序で形成し、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって基板が有機材料層とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  20. 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層が基板とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  21. 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)がこの順序で形成され、記録再生が基板側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  22. 上引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項18〜21の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  23. 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n1>n2、かつn3>n2であることを特徴とする請求項20〜22の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  24. 下引層の主成分がZnS・SiO又はSiOからなることを特徴とする請求項20〜23の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  25. 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  26. 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  27. 基板上に、少なくとも光吸収機能を有する下引層(光吸収層)、有機材料層、上引層、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による下引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層がカバ−層側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  28. 下引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項25〜27の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  29. 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n1>n2、かつn3>n2であることを特徴とする請求項26〜28の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  30. 上引層の主成分がZnS・SiO又はSiOからなることを特徴とする請求項26〜29の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  31. 上引層がカバー層に対して接着性を持つ材料であることを特徴とする請求項26〜30の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  32. 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層がカバ−層側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  33. 基板上に、少なくとも有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって基板が有機材料層とは反対側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  34. 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって上引層がカバ−層側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  35. 基板上に、少なくとも下引層、有機材料層、光吸収機能を有する上引層(光吸収層)、カバ−層がこの順序で形成され、記録再生がカバ−層側から行われる光記録媒体において、レーザ光の照射による上引層の発熱によって有機材料層に状態変化を生じ、該状態変化の作用力によって下引層が基板側に変形して記録が行われることを特徴とする追記型光記録媒体。
  36. 上引層がSiC、Si、Ge、又はそれらの混合物からなることを特徴とする請求項32〜35の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  37. 下引層の屈折率をn1、有機材料層の屈折率をn2、上引層の屈折率をn3とした場合に、n3>n2>n1であることを特徴とする請求項34〜36の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  38. 下引層が有機材料層よりも屈折率の小さな金属からなることを特徴とする請求項34〜37の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  39. 有機材料層が、記録再生波長に対する光吸収機能が光吸収層若しくは光吸収機能を有する下引層又は上引層よりも小さい有機材料からなることを特徴とする請求項1〜38の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  40. 記録再生波長が350〜500nmであることを特徴とする請求項39記載の追記型光記録媒体。
  41. 有機材料層が、未記録時の主吸収帯が記録再生波長に対して長波長側に存在する有機材料からなることを特徴とする請求項1〜40の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  42. 有機材料層が色素からなることを特徴とする請求項1〜41の何れかに記載の追記型光記録媒体。
  43. 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体に対し、レーザ光を照射して光吸収層を発熱させ、この熱により有機材料の状態変化を誘発し、該状態変化により、有機材料層の記録再生波長での吸収係数を増加させて、及び/又は、該状態変化の作用力により、有機材料層と隣接する少なくとも一方の層を、有機材料層から遠ざかる方向へ変形させて記録を行なうことを特徴とする追記型光記録媒体の記録方法。
  44. 基板上に、少なくとも光吸収層と有機材料層を有する光記録媒体に対し、レーザ光を照射して光吸収層を発熱させ、この熱により有機材料の状態変化を誘発し、該状態変化により、有機材料層の記録再生波長での吸収係数を増加させると共に光吸収層に隣接する層と光吸収層との界面形状を変化させて記録を行なうことを特徴とする追記型光記録媒体の記録方法。
  45. 光吸収層に隣接する層が、基板、カバー層、有機材料層の何れかであることを特徴とする請求項44記載の追記型光記録媒体の記録方法。
  46. 記録再生波長が350〜500nmであることを特徴とする請求項43〜45の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。
  47. 有機材料層の未記録時の主吸収帯よりも短波長側に相当する波長のレーザ光を用いて記録を行うことを特徴とする請求項43〜46の何れかに記載の追記型光記録媒体の記録方法。
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