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JP4115612B2 - 複合磁性体とその製造方法 - Google Patents

複合磁性体とその製造方法 Download PDF

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JP4115612B2
JP4115612B2 JP36886398A JP36886398A JP4115612B2 JP 4115612 B2 JP4115612 B2 JP 4115612B2 JP 36886398 A JP36886398 A JP 36886398A JP 36886398 A JP36886398 A JP 36886398A JP 4115612 B2 JP4115612 B2 JP 4115612B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、トランスコア、チョークコイル、あるいは磁気ヘッド等に用いられる複合磁性体とその製造方法、および複合磁性体に用いられるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電気・電子機器の小型化が進み、小型で高効率の磁性材料が要求されており、高周波領域で用いられるチョークコイルとして、フェライト磁芯や圧粉磁芯が知られている。これらのうち、フェライト磁芯は飽和磁束密度が小さいという欠点を有しており、一方、金属磁性粉を成形して作製される圧粉磁芯は、フェライト磁芯に比べて著しく大きい飽和磁束密度を有しており小型化の面で有利であった。
【0003】
しかし、圧粉磁芯は透磁率および電力損失についてはフェライト磁芯より優れているとはいえず、ぞのためチョークコイルやインダクターに使用すると、コア損失が大きいためにコアの温度上昇が大きくなって、小型化が難しくなるという一面があった。
【0004】
一般に、圧粉磁芯のコア損失は通常ヒステリシス損失と渦電流損失よりなり、渦電流損失は、周波数の二乗と、渦電流が流れるサイズすなわち渦電流経路長の二乗にそれぞれ比例して増大する。これを抑制するために磁性粉末表面を電気絶縁性樹脂等で覆い、これにより渦電流の発生を抑制していた。
【0005】
一方、ヒステリシス損失については、圧粉磁芯の成形が通常5ton/cm2以上の成形圧力で行われるために磁性材料として歪みが増大するとともに透磁率も劣化し、ヒステリシス損失が増大する傾向がある。この傾向を回避するために歪みを解放する手段として、例えば特開平6−342714号公報、特開平8−37107号公報、特開平9−125108号公報に記載されているような成形後の熱処理が行われていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のFe−Al−Si系合金粉末を用いた圧粉磁芯は、温度とともにコア損失が増大するという欠点を有していた。すなわち、コア損失の温度係数が室温付近で正であると、実使用時にトランスあるいはチョークコイル等がコア損失により発熱する。そのために温度が上昇し、この温度上昇によるコア損失が増大して発熱が大きくなり、これを繰り返すことによって熱暴走を引き起こすという課題があった。このような現象を防止するため、実際に使用する場合には、圧粉磁芯が、80℃〜100℃付近の温度でコア損失が極小となるような温度特性を持つことが極めて重要なポイントであった。
【0007】
一般にFe−Al−Si合金は、図2および図3に示すように、結晶磁気異方性定数K≒0、磁歪定数λ≒0の特性を有する組成、すなわち9.6%Si、5.5%Al、残りがFeである組成の近傍で急峻な透磁率のピークを示す。この範囲の組成を通常センダストと呼んでいる。従来からFe−Al−Si系合金粉末を用いた複合磁性材料が各種提案されており、例えば前述の特開平6−342714号公報、特開平8−37107号公報、特開平9−125108号公報にもこの種技術が提案されている。しかしながら、いずれの提案もコア損失と温度特性との記述については何等言及されていない。
【0008】
コア損失の温度特性は、ヒステリシス損失の挙動、つまり透磁率の温度特性により決定される。従来のフェライトは透磁率がある温度において極大を示し、この温度において損失も極小になる。これは、結晶磁気異方性定数Kがこの温度において零になり、この温度において磁壁移動が最も容易になる。このため、ヒステリシス損失が減少すると考えられている。
【0009】
一方、Fe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いた圧粉磁芯は、図1に示す従来例のように、室温以上でコア損失が単調に増加するため、特に大出力のトランス等に用いることが困難とされてきた。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、低コア損失で発熱が少なく、かつ高い透磁率を有する複合磁性体とその製造方法、およびこの複合磁性体に用いることができる磁性合金粉末を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の複合磁性体は、磁歪定数λの符号が室温で正であり、組成が重量%で5.0%≦Al≦6.5%、8.2%≦Si≦9.2%、残りFeからなるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を、電気絶縁性結着剤と混合して圧縮成形後、500℃以上900℃以下の温度で熱処理することによって、磁歪定数λの符号が室温で正とし、室温でのコア損失の温度係数が負であり、コア損失が最小となる極小温度が80℃以上である複合磁性体である。この構成により、高周波数領域において低コア損失である特性を有し、かつ高い透磁率を有する複合磁性体を得ることができる。
【0013】
本発明者達は、研究の結果、Fe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いた複合磁性材料の場合、従来から言われているような結晶磁気異方性定数Kがコア損失の温度特性を支配する主要因ではなく、今まで注目されていなかった磁歪定数λが支配的であり、さらに磁歪定数λの符号が室温(約20〜30℃付近)で正の時にコア損失の温度係数が負の傾斜を持つことを見い出した。そして、特に重量%で4.5%≦Al≦8.5%、7.5%≦Si≦9.5%、残りがFeを主成分とするFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いた場合、透磁率が高くて低コア損失で、かつ優れた温度特性が得られ、より好ましくは重量%で5.0%≦Al≦6.5%、8.2%≦Si≦9.2%、残りがFeを主成分とするFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いることにより、さらに優れた効果が得られることを見い出した。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の複合磁性体は、磁歪定数λの符号が室温で正となるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いることにより、室温におけるコア損失の温度係数を負にした複合磁性体である。本発明の複合磁性体は、コア損失の温度係数を負にすることができるため、高周波領域でも低コア損失で透磁率の高い優れた磁気特性を得ることができる。なお、本発明の複合磁性体は、コア損失が最小となる極小温度が、80℃以上であることが好ましい。
【0015】
本発明の複合磁性体は、Fe−Al−Si系軟磁性合金粉末である主成分と、絶縁性結着剤の熱処理後の残存物あるいは含浸用樹脂あるいは空孔等からなる絶縁物成分とから構成されるもので、磁気特性の観点から、軟磁性合金粉末の含有量は体積%で70〜99%の範囲にあることが好ましい。また、この軟磁性合金粉末の組成は、重量%で4.5%≦Al≦8.5%、7.5%≦Si≦9.5%、残りがFeであることが好ましい。なお、この軟磁性合金粉末は、磁気特性に悪影響を及ぼさない程度の少量の不純物や添加物を含んでいてもよい。また、この複合磁性体は、主成分であるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末の上に、他の磁性粉末が混合されていてもよい。
【0016】
この軟磁性合金粉末は、ガスアトマイズ法または水アトマイズ法または合金化後の粉砕により得られる粉末であることが好ましい。また粉末形状は、球状、偏平状、多角形状のいずれであってもよい。粉末の平均粒径は1〜100μmの範囲にあることが好ましく、特に1〜50μmの範囲にあることがより好ましい。平均粒径が1μm未満になると、成形密度が小さくなるため、透磁率が低下して望ましくない。この軟磁性合金粉末は、厚み5nm以上の酸化膜で被覆されていることが好ましい。この被膜により、絶縁性が向上し、渦電流損失がより低減される。
【0017】
本発明の複合磁性体の製造方法は、磁歪定数λの符号が室温で正となるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を、電気絶縁性結着剤と混合し圧縮成形後、500℃以上900℃以下の温度で熱処理することを特徴とする。この複合磁性体の製造方法によれば、圧縮成形後の熱処理により渦電流損失の低減およびヒステリシス損失の低減を図ることができ、より安定した優れた磁気特性を有する複合磁性体を得ることができる。
【0018】
本発明の製造方法における絶縁性結着剤は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニール樹脂、ブチラール樹脂、有機シリコーン樹脂のうちの少なくとも1つであることが好ましい。なお、500℃以上900℃以下の温度で熱処理するため、結着剤成分の磁性合金粉末への拡散が少ないものがより好ましい。熱処理雰囲気は、空気中でも可能であるが、金属の酸化を防ぐ意味から非酸化雰囲気で行うことが望ましい。
【0019】
熱処理後、絶縁性含浸剤で含浸することが好ましい。これは、500℃以上の温度で熱処理すると樹脂等の結着剤は分解するために複合磁性体の機械的強度は低下する。このため、熱処理後絶縁性含浸剤で含浸することでコア強度の向上、金属磁性体の防錆、表面高抵抗化等を図ることができる。また、真空含浸することにより内部に含浸剤が入り込むので、より好ましい。
【0020】
本発明のFe−Al−Si系軟磁性合金粉末は、組成が重量%で、4.5%≦Al≦8.5%、7.5%≦Si≦9.5%、残りをFeとするものであり、酸素量が1000ppm以上8000ppm以下であり、かつ磁歪定数λの符号が室温で正であるものが好ましい。この軟磁性合金粉末を用いることにより、コア損失の温度係数を負にすることができるため、高周波領域でも低コア損失でより透磁率の高い優れた磁気特性を得ることができる。なお、酸素量が1000ppm以上の場合、渦電流損失がより低減する。これは金属磁性粉末の抵抗値が、酸素含有量と共に上昇するために渦電流損失が低減したと考えられる。一方、酸素量が8000ppmを超えると、ヒステリシス損失が増加するため、全体のコア損失が大きくなる。
【0021】
以下に、本発明の具体例を説明する。
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1における複合磁性体について説明する。
【0022】
本実施の形態におけるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を、(表1)に示す最終組成になるように、水アトマイズ法により作製した。粉体の酸素量はすべて2000ppm〜3000ppmであった。このFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を平均粒径50μmになるように、ふるいにより分級し、その金属磁性粉100重量部に対し絶縁性結着剤としてブチラール樹脂2重量部を加え、混合した。その混合粉を一軸プレス機により、成形圧力10ton/cm2で、外径25mm、内径15mm、厚み約10mmのトロイダル形状の成形体を形成した。その後、N2中、690℃の温度で熱処理した後、シリコーン樹脂で含浸して試料を作成した。
【0023】
透磁率の測定はLCRメーターを用いて周波数10kHzで、またコア損失の測定は交流B−Hカーブ測定機を用いて、測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tでそれぞれ20℃〜120℃まで20℃毎に温度特性も含めて行った。極小損失温度における特性を(表1)に示す。ただし、極小損失温度が120℃以上、あるいは20℃以下の場合、それぞれ120℃、20℃でのコア損失、透磁率を示している。本実施の形態における高調波歪み対策アクティブフィルタ用チョークコイルの場合、(表1)に示すように測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tにおいてコア損失1000kW/m3以下、透磁率50以上および極小損失温度は80℃以上という満足すべき特性を得ることができた。
【0024】
(表1)に示す結果より明らかなように、重量で4.5%≦Al≦8.5%、7.5%≦Si≦9.5%、残りがFeを主成分とするFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いることにより、高透磁率でコア損失を低く、かつ優れた温度特性を備えることができる。より好ましくは、重量で5.0%≦Al≦6.5%、8.2%≦Si≦9.2%、残りがFeを主成分とするFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いることにより、さらに優れた効果を得ることができる。
【0025】
【表1】
Figure 0004115612
【0026】
(実施の形態2)
次に、本発明の実施の形態2について説明する。
【0027】
最終組成においてAlが6.0wt%、Siが9.0wt%、残りの主成分をFeとする軟磁性合金粉末をインゴット粉砕法で作製した。粉体の酸素量はすべて1000ppm〜2000ppmであり、(表2)に示す平均粒径になるように、ふるいあるいは空気分級法により分級し、その金属磁性粉100重量部に対し絶縁性結着剤として有機シリコーン樹脂5重量部を加え、混合した。その混合粉を一軸プレスにて、成形圧力7ton/cm2で、外径25mm、内径15mm、厚み約10mmのトロイダル形状の成形体を形成した。その後、N2中において720℃で熱処理した後、エポキシ樹脂で含浸して試料を作成した。
【0028】
透磁率の測定はLCRメーターを用いて周波数10kHzで、また、コア損失の測定は交流B−Hカーブ測定機を用いて測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tでそれぞれ20℃〜120℃まで20℃毎に温度特性も含めて行い、極小損失温度における特性を(表2)に示した。ただし、極小損失温度が≧120℃、あるいは≦20℃の場合、それぞれ120℃、20℃でのコア損失、透磁率を示している。本実施の形態における高調波歪み対策アクティブフィルタ用チョークコイルの場合、(表2)に示すように測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tにおいてコア損失1000kW/m3以下、透磁率50以上および極小損失温度は80℃以上という満足すべき特性を得ることができた。
【0029】
(表2)に示す結果より明らかなように、磁性粉末の平均粒径を1μm以上100μm以下とすることによりコア損失を低くすることができ、好ましくは平均粒径を1μm以上50μm以下とすることによりさらにコア損失を低減することができる。
【0030】
【表2】
Figure 0004115612
【0031】
(実施の形態3)
次に、本発明の実施の形態3について説明する。
【0032】
最終組成においてAlが5.8wt%、Siが8.6wt%、残りの主成分をFeとする軟磁性合金を用いて水アトマイズ法により平均粒径30μmの粉体を作成した。その金属磁性粉100重量部に対し絶縁性結着剤としてブチラール樹脂1重量部とスペーシング制御材として平均粒径1μmのTiO2を0.5重量部添加し、混合した。その混合粉を脱気混合し粉砕して得られた粒径500μm以下の造粒粉を一軸プレス機により、成形圧力12ton/cm2で外径25mm、内径15mm、厚み約10mmのトロイダル形状の成形体を形成した。そして450℃の温度で空気中で脱バインダー後、N2中において730℃で熱処理し、さらに、エポキシ樹脂で含浸して試料を作成した。
【0033】
透磁率の測定はLCRメーターを用いて周波数10kHzで、また、コア損失の測定は交流B−Hカーブ測定機を用いて測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tでそれぞれ20℃〜120℃まで20℃毎に温度特性も含めて行い、極小損失温度における特性を(表3)に示した。ただし、極小損失温度が≧120℃、あるいは≦20℃の場合、それぞれ120℃、20℃でのコア損失、透磁率を示している。本実施の形態における高調波歪み対策アクティブフィルタ用チョークコイルの場合、(表3)に示すように測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tにおいてコア損失1000kW/m3以下、透磁率50以上および極小損失温度は80℃以上という満足すべき特性を得ることができた。
【0034】
【表3】
Figure 0004115612
【0035】
(表3)に示す結果より明らかなように、酸素量を1000ppm以上、8000ppm以下とすることにより、高い透磁率と低いコア損失を得ることができる。
【0036】
(実施の形態4)
次に、本発明の実施の形態4について説明する。
【0037】
本実施の形態におけるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を(表4)に示す最終組成になるように、ガスアトマイズ法により作製した。このFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を平均粒径60μmになるように、ふるいにより分級し、その金属磁性粉100重量部に対し絶縁性結着剤としてブチラール樹脂2重量部を加えて混合した。その混合粉を一軸プレスにより、成形圧力7ton/cm2で外径25mm、内径15mm、厚み約10mmのトロイダル形状の成形体を形成した。そして、N2中において710℃の温度で熱処理した後、シリコーン樹脂で含浸して試料を作成した。
【0038】
透磁率の測定はLCRメーターを用いて周波数10kHzで、またコア損失の測定は交流B−Hカーブ測定機を用いて測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tでそれぞれ20℃〜120℃まで20℃毎に温度特性も含めて行い、極小損失温度における特性を(表4)に示した。ただし、極小損失温度が120℃以上、あるいは20℃以下の場合、それぞれ120℃、20℃でのコア損失、透磁率を示している。本実施の形態における高調波歪み対策アクティブフィルタ用チョークコイルの場合、(表4)に示すように測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tにおいてコア損失1000kW/m3以下、透磁率50以上および極小損失温度は80℃以上という満足すべき特性を得ることができた。
【0039】
(表4)に示す結果より明らかなように、重量%で、4.5%≦Al≦8.5%、7.5%≦Si≦9.5%、残りをFeを主成分とするFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いた場合、高透磁率で低コア損失で、かつ優れた温度特性を有し、より好ましくは、重量で5.0%≦Al≦6.5%、8.2%≦Si≦9.2%、残りがFeを主成分とするFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いることによりさらに優れた効果を得ることができる。
【0040】
【表4】
Figure 0004115612
【0041】
(実施の形態5)
次に、本発明の実施の形態5について説明する。
【0042】
最終組成においてAlが6.0wt%、Siが9.0wt%、残りの主成分をFeとする軟磁性合金粉末をガスアトマイズ法により作製し、(表5)に示す平均粒径になるように、ふるいにより分級し、その金属磁性粉100重量部に対し絶縁性結着剤として有機シリコーン樹脂3重量部を加えて混合した。その混合粉を一軸プレスにより、成形圧力9ton/cm2で外径25mm、内径15mm、厚み約10mmのトロイダル形状の成形体を形成した。そしてN2中において730℃の温度で熱処理した後、エポキシ樹脂で含浸して試料を作成した。
【0043】
透磁率の測定はLCRメーターを用いて周波数10kHzで、またコア損失の測定は交流B−Hカーブ測定機を用いて測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tでそれぞれ20℃〜120℃まで20℃毎に温度特性も含めて行い、極小損失温度における特性を(表5)に示した。ただし、極小損失温度が≧120℃、あるいは≦20℃の場合、それぞれ120℃、20℃でのコア損失、透磁率を示している。本実施の形態における高調波歪み対策アクティブフィルタ用チョークコイルの場合、(表5)に示すように測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tにおいてコア損失1000kW/m3以下、透磁率50以上および極小損失温度は80℃以上という満足すべき特性を得ることができた。
【0044】
(表5)に示す結果より明らかなように、磁性粉末の平均粒径を100μm以下とすることによりコア損失を低くすることができ、好ましくは平均粒径を50μm以下とすることによりさらにコア損失を低減することができる。
【0045】
【表5】
Figure 0004115612
【0046】
(実施の形態6)
次に、本発明の実施の形態6について説明する。
【0047】
最終組成においてAlが5.8wt%、Siが8.6wt%、残りの主成分をFeとする軟磁性合金を用いて、ガスアトマイズ法により平均粒径40μmの粉体を作成した。その金属磁性粉100重量部に対して絶縁性結着剤としてブチラール樹脂1重量部とスペーシング制御材として平均粒径1μmのMgOを1重量部添加し、混合した。その混合粉を脱気混合し、粉砕して得られた粒径500μm以下の造粒粉を一軸プレスにより、成形圧力10ton/cm2で、外径25mm、内径15mm、厚み約10mmのトロイダル形状の成形体を形成した。そして450℃の温度で空気中で脱バインダー後、N2中において(表6)に示す熱処理条件で熱処理した。その後エポキシ樹脂で含浸して試料を作成した。
【0048】
透磁率の測定はLCRメーターを用いて周波数10kHzで、またコア損失の測定は交流B−Hカーブ測定機を用いて測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tでそれぞれ20℃〜120℃まで20℃毎に温度特性も含めて行い、極小損失温度における特性を(表6)に示した。ただし、極小損失温度が≧120℃、あるいは≦20℃の場合、それぞれ120℃、20℃でのコア損失、透磁率を示している。本実施の形態における高調波歪み対策アクティブフィルタ用チョークコイルの場合、(表6)に示すように測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tにおいてコア損失1000kW/m3以下、透磁率50以上および極小損失温度は80℃以上という満足すべき特性を得ることができた。
【0049】
【表6】
Figure 0004115612
【0050】
(表6)に示す結果より明らかなように、熱処理温度を500℃以上900℃以下とすることによりコア損失を低くすることができ、好ましくは熱処理温度を650℃〜800℃とすることによりさらにコア損失を低減することができる。
【0051】
(実施の形態7)
次に、本発明の実施の形態7について説明する。
【0052】
最終組成においてAlが7.5wt%、Siが8.5wt%、残りの主成分をFeとする軟磁性合金粉末と、比較例として従来のセンダスト組成であるAlが5.4wt%、Siが9.6wt%、残りの主成分をFeとする軟磁性合金粉末をそれぞれガスアトマイズ法により作製し、それぞれの合金粉末の平均粒径が40μmになるように、ふるいにより分級し、その金属磁性粉100重量部に対し絶縁性結着剤として有機シリコーン樹脂4重量部を加えて混合した。その混合粉を一軸プレスにより、成形圧力10ton/cm2で外径25mm、内径15mm、厚み約10mmのトロイダル形状の成形体を形成した。そして、N2中において720℃の温度で熱処理した後、エポキシ樹脂で含浸して試料を作成した。
【0053】
図1に測定周波数50kHz、測定磁束密度0.1Tにおけるコア損失の温度特性を示す。この特性図より明らかなように、本実施の形態における軟磁性合金粉末は室温(20〜30℃付近)でコア損失が負の傾斜を持ち、極小損失温度が少なくとも80℃以上であるのに対し、比較例はコア損失が室温で正の傾斜を持ち極小損失温度も少なくとも25℃以下であるために高温で熱暴走する恐れがあることが分かる。
【0054】
(実施の形態8)
次に、本発明の実施の形態8について説明する。
【0055】
本実施の形態におけるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を(表7)に示す最終組成になるように、水アトマイズ法により作製した。このFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を平均粒径50μmになるように、ふるいにより分級し、その金属磁性粉100重量部に対して絶縁性結着剤としてブチラール樹脂1.5重量部を加えて混合した。その混合粉を一軸プレスにより、成形圧力10ton/cm2でE字型形状とI字型形状を有する成形体を形成した。その後、N2中において700℃の温度で熱処理した後、エポキシ樹脂で含浸して試料を作成した。 この試料をノート型パソコンに使用されているDC/DCコンバータのチョークコイル・PCC(Power-Choke-Coil)として用いて周波数200kHzで評価した。そのときの温度上昇の結果を(表7)に示す。
【0056】
(表7)より明らかなように、重量で4.5%≦Al≦8.5%、7.5%≦Si≦9.5%、残りをFeを主成分とするFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を用いた場合、温度上昇を30℃以下に抑制することができる。
【0057】
【表7】
Figure 0004115612
【0058】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、高周波領域において低コア損失で透磁率の高い優れた磁気特性を有する複合磁性材料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のコア損失の温度特性を、従来例と比較して示す図
【図2】Fe−Al−Si系合金における最大透磁率μmのFe、SiおよびAl濃度依存性を示す特性図
【図3】センダスト中心組成域での初透磁率μiのFe、SiおよびAl濃度依存性を示す特性図

Claims (4)

  1. 磁歪定数λの符号が室温で正であり、組成が重量%で5.0%≦Al≦6.5%、8.2%≦Si≦9.2%、残りFeからなるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を、
    電気絶縁性結着剤と混合して圧縮成形後、
    500℃以上900℃以下の温度で熱処理することによって、
    磁歪定数λの符号が室温で正とし、室温でのコア損失の温度係数が負であり、コア損失が最小となる極小温度が80℃以上であることを特徴とする複合磁性体。
  2. 磁歪定数λの符号が室温で正であり、組成が重量%で5.0%≦Al≦6.5%、8.2%≦Si≦9.2%、残りFeからなるFe−Al−Si系軟磁性合金粉末を、
    電気絶縁性結着剤と混合して圧縮成形後、
    500℃以上900℃以下の温度で熱処理することによって、
    磁歪定数λの符号を室温で正とし、室温でのコア損失の温度係数を負とし、コア損失が最小となる極小温度を80℃以上とすることを特徴とする複合磁性体の製造方法。
  3. 前記軟磁性合金粉末の平均粒径が1μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項記載の複合磁性体の製造方法。
  4. 前記電気絶縁性結着剤が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニール樹脂、ブチラール樹脂、有機シリコーン樹脂のうち少なくとも1つからなることを特徴とする請求項記載の複合磁性体の製造方法。
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