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JP4108405B2 - 光触媒積層体 - Google Patents

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JP4108405B2
JP4108405B2 JP2002224410A JP2002224410A JP4108405B2 JP 4108405 B2 JP4108405 B2 JP 4108405B2 JP 2002224410 A JP2002224410 A JP 2002224410A JP 2002224410 A JP2002224410 A JP 2002224410A JP 4108405 B2 JP4108405 B2 JP 4108405B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光触媒積層体に関する。さらに詳しくは、本発明は、有機−無機複合傾斜膜を介して、有機基材上に光触媒活性膜が設けられた積層体において、上記傾斜膜表面に、ドライプロセスにより金属酸化物膜を形成させることにより、該傾斜膜の経時による亀裂発生を抑制し、耐久性を向上させた光触媒積層体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光触媒活性材料(以下、単に光触媒と称すことがある。)は、そのバンドギャップ以上のエネルギーの光を照射すると、励起されて伝導帯に電子が生じ、かつ価電子帯に正孔が生じる。そして、生成した電子は表面酸素を還元してスーパーオキサイドアニオン(・O -)を生成させると共に、正孔は表面水酸基を酸化して水酸ラジカル(・OH)を生成し、これらの反応性活性酸素種が強い酸化分解機能を発揮し、光触媒の表面に付着している有機物質を高効率で分解することが知られている。
このような光触媒の機能を応用して、例えば脱臭、防汚、抗菌、殺菌、さらには廃水中や廃ガス中の環境汚染上の問題となっている各種物質の分解・除去などが検討されている。
【0003】
また、光触媒のもう1つの機能として、該光触媒が光励起されると、例えば国際特許公開96/29375号公報に開示されているように、光触媒表面は、水との接触角が10度以下となる超親水化を発現することも知られている。このような光触媒の超親水化機能を応用して、例えば高速道路の防音壁やトンネル内照明、街路灯などに対する自動車の排ガスに含まれるススなどによる汚染防止用に、あるいは自動車のボディーコートやサイドミラー用フィルム、防曇性、セルフクリーニング性窓ガラス用などに光触媒を用いることが検討されている。
【0004】
このような光触媒としては、これまで種々の半導体的特性を有する化合物、例えば二酸化チタン、酸化鉄、酸化タングステン、酸化亜鉛などの金属酸化物、硫化カドミウムや硫化亜鉛などの金属硫化物などが知られているが、これらの中で、二酸化チタン、特にアナターゼ型二酸化チタンは実用的な光触媒として有用である。この二酸化チタンは、太陽光などの日常光に含まれる紫外線領域の特定波長の光を吸収することによって優れた光触媒活性を示す。
【0005】
光触媒からなる層をプラスチックなどの有機基材上に設ける場合、光触媒を直接コーティングすると、光触媒作用により該有機基材が短時間で劣化するのを免れないという問題が生じる。したがって、例えばプラスチックフィルム上に光触媒層を有する光触媒フィルムにおいては、光触媒作用による基材フィルムの劣化を防止するためと、基材フィルムに対する密着性を向上させるために、通常中間層が設けられている。この中間層としては、一般にシリコーン樹脂やアクリル変性シリコーン樹脂などからなる厚さ数μm程度のものが用いられている。
【0006】
しかしながら、このような光触媒フィルムにおいては、1〜3年程度で劣化し、フィルムの干渉により透明性が低下したり、防汚性などが低下するという問題が生じる。この劣化の原因としては、前記中間層が有機置換基を有することから、この有機成分が光触媒作用により分解し、その結果中間層にクラックが発生したり、光触媒層と中間層、あるいは中間層と基材フィルムとの界面で浮きや部分的剥離などが生じ、干渉が発生するものと思われる。また、この光触媒フィルムは、中間層が数μm程度と厚いために、フィルムそのもののたわみや屈曲によって、部分的な界面剥離や欠落が生じやすく、干渉が発生しやすいという問題もある。
【0007】
一方、本発明者らは、先に、新規な機能性材料として種々の用途、例えば塗膜や、有機材料と無機または金属材料との接着剤、有機基材と光触媒塗膜との間に設けられ、有機基材の劣化を防止する中間膜や、有機基材と無機系または金属系材料層との密着性を向上させる中間膜などの用途に有用な、厚さ方向に組成が連続的に変化する有機−無機複合傾斜材料を提案した(特開2000−336281号公報)。
【0008】
この有機−無機複合傾斜材料は、有機高分子化合物と金属系化合物との化学結合物を含有する有機−無機複合材料であって、該金属系化合物の含有率が材料の厚み方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有し、上記の各種用途に有用な機能性材料である。
【0009】
有機基材上に、前記の有機−無機複合傾斜材料からなる膜(有機−無機複合傾斜膜)を介して光触媒活性材料からなる膜(光触媒活性膜)を設けた場合、層間密着性に優れると共に、光触媒活性膜による有機基材の劣化を抑制し、良好な耐久性を有する光触媒体が得られる。
【0010】
しかしながら、有機基材上に形成された有機−無機複合傾斜膜は、厳しい環境下に長期間放置した際に、亀裂が発生する場合がある。例えば、上記有機−無機複合傾斜膜をサンシャインウエザーメーターなどの促進耐候試験下に曝すと、該傾斜膜に亀裂の起点が生じたのち、経時的にその亀裂が成長することがある。有機−無機複合傾斜膜の無機部は、通常ゾル−ゲル法により作製されるが、亀裂は、このゾル−ゲル膜の経時的な縮合進行に伴う面収縮により発生するものと考えられる。
【0011】
有機基材上に形成された有機−無機複合傾斜膜上に光触媒活性膜を設けて光触媒体を作製した場合、該有機−無機複合傾斜膜に発生した亀裂は、光触媒活性種に対するバリア性を低下させるばかりでなく、該亀裂は同時期にあるいは追随して光触媒活性膜にまで達するため、可視光線を散乱させて、フィルムの透明性を損なう(寿命を早める)原因となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、有機−無機複合傾斜膜を介して、有機基材上に光触媒活性膜が設けられた積層体において、上記傾斜膜の経時による亀裂発生を抑制して、耐久性を向上させた光触媒積層体を提供することを目的とするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、有機−無機複合傾斜膜の経時による亀裂の発生を抑制するために鋭意研究を重ねた結果、該傾斜膜上に、スパッタリングなどのドライプロセスにより金属酸化物膜を形成させることにより、該傾斜膜の経時による亀裂の発生が抑制され、光触媒活性種に対するバリア性が高められることから、高耐久性の光触媒積層体が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は
【0015】
)(A)有機基材と、その片面に順次設けられた(B)有機−無機複合傾斜膜、(C)金属酸化物膜および(D)光触媒活性膜を有する積層体からなり、
前記(B)有機−無機複合傾斜膜として、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ両者の含有比率が深さ方向に連続的に変化すると共に、実質上、有機基材と当接している面が有機高分子化合物成分のみであって、金属酸化物膜との界面が金属酸化物系化合物成分のみからなる傾斜膜を用い、
かつ前記(C)金属酸化物膜がドライプロセスにより形成されたものであることを特徴とする光触媒積層体、
【0016】
)(D)光触媒活性膜がウェットプロセスにより形成されたものである上記()項に記載の光触媒積層体、
)(C)金属酸化物膜がスパッタリングにより形成されたものである上記(1)または(2)項に記載の光触媒積層体、
)(C)金属酸化物膜の厚さが3〜350nmである上記(1)ないし()項のいずれか1項に記載の光触媒積層体、
)光触媒活性膜が酸化チタンを含む膜である上記(1)ないし()項のいずれか1項に記載の光触媒積層体、
【0017】
)(B)有機−無機複合傾斜膜が、(a)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基を有する有機高分子化合物と共に、(b)加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物を加水分解処理してなるコーティング剤を、(a)成分換算量で0.5〜3.0g/100m2になるように塗布して形成されたものである上記(1)ないし()項のいずれか1項に記載の光触媒積層体、および
)(A)有機基材がフィルム状である上記(1)ないし()項のいずれか1項に記載の光触媒積層体、
を提供するものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の光触媒積層体における(A)有機基材としては、例えばポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリスチレンやABS樹脂などのスチレン系樹脂、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、6−ナイロンや6,6−ナイロンなどのポリアミド系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂、ポリフッ化ビニリデン、フッ化エチレン−プロピレン共重合体、フッ化エチレン−エチレン共重合体などのフッ素系樹脂などからなる基材を挙げることができる。これらの樹脂は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
これらの有機基材は、その上に設けられる有機−無機複合傾斜膜との密着性をさらに向上させるために、所望により、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法は基材の種類に応じて適宜選ばれる。
なお、本発明における有機基材は、有機系材料以外の材料、例えば金属系材料、ガラスやセラミックス系材料、その他各種無機系または金属系材料からなる基材の表面に、有機系塗膜を有するものも包含する。
【0020】
本発明においては、(A)有機基材として、特にフィルム状のものが好適である。有機基材として、プラスチックフィルムを使用する場合には、該フィルムとしては、光触媒積層体の耐久性の面から、例えば(1)耐候性樹脂からなるフィルム、(2)耐候剤を練り込んだフィルムおよび(3)有機−無機複合傾斜膜側の表面のみもしくは両面に紫外線遮蔽層を有するフィルムなどが好ましく用いられる。
【0021】
上記プラスチックフィルムの中で、(1)の耐候性樹脂からなるフィルムとしては、例えばポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、セルロースアセテートなどのセルロース系樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂フィルムなどが好ましく挙げられる。
【0022】
また(2)の耐候剤を練り込んだフィルムにおいて、該耐候剤としては、紫外線吸収剤および/または光安定剤を用いることができる。ここで、紫外線吸収剤は、高エネルギーをもつ紫外線を吸収し、低エネルギーに転換してラジカルの発生を抑え、プラスチックフィルムの劣化を防止する機能を有するものであり、一方、光安定剤は紫外線によって生じたラジカルと結合して連鎖反応を阻止してプラスチックフィルムの劣化を防止する機能を有するものである。
【0023】
さらに、前記(3)の表面に紫外線遮蔽層を有するプラスチックフィルムにおいて、該紫外線遮蔽層は、適当なバインダーと、それに含まれる紫外線遮蔽材料とからなる層であって、単層構造であってもよいし、二層以上の積層構造を有していてもよい。上記紫外線遮蔽材料としては、紫外線吸収剤および紫外線散乱剤の中から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの紫外線遮蔽材料を含む層を設けることにより、紫外線が効果的に遮断され、基材フィルムの紫外線による劣化が抑制される。上記紫外線散乱剤とは、紫外線を散乱させることによって、紫外線遮断効果をもたらす材料のことであり、主に金属酸化物粉末などの無機系材料が用いられる。
【0024】
本発明の光触媒積層体においては、前記有機基材の片面に、まず(B)有機−無機複合傾斜膜を設ける。
上記有機−無機複合傾斜膜は、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ両者の含有比率が深さ方向に連続的に変化する成分傾斜構造を有するものである。このような複合傾斜膜は、(a)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基(以下、加水分解性金属含有基と称すことがある。)を有する有機高分子化合物と共に、(b)加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物を加水分解処理してなるコーティング剤を用いて形成させることができる。
【0025】
前記(a)成分の加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物は、例えば(イ)加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と、(ロ)金属を含まないエチレン性不飽和単量体を共重合させることにより、得ることができる。
【0026】
上記(a)(イ)成分である加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体としては、一般式(I)
【0027】
【化1】
Figure 0004108405
【0028】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Aはアルキレン基、好ましくは炭素数1〜4のアルキレン基、Rは加水分解性基または非加水分解性基であるが、その中の少なくとも1つは加水分解により、(b)成分と化学結合しうる加水分解性基であることが必要であり、また、Rが複数の場合には、各Rはたがいに同一であってもよいし、異なっていてもよく、Mはケイ素、チタン、ジルコニウム、インジウム、スズ、アルミニウムなどの金属原子、kは金属原子Mの価数である。)
で表される基を挙げることができる。
【0029】
上記一般式(I)において、Rのうちの加水分解により(b)成分と化学結合しうる加水分解性基としては、例えばアルコキシル基、イソシアネート基、塩素原子などのハロゲン原子、オキシハロゲン基、アセチルアセトネート基、水酸基などが挙げられ、一方、(b)成分と化学結合しない非加水分解性基としては、例えば低級アルキル基などが好ましく挙げられる。
【0030】
一般式(I)における−M k−1で表される金属含有基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリ−n−プロポキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、トリ−n−ブトキシシリル基、トリイソブトキシシリル基、トリ−sec−ブトキシシリル基、トリ−tert−ブトキシシリル基、トリクロロシリル基、ジメチルメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ジメチルクロロシリル基、メチルジクロロシリル基、トリイソシアナトシリル基、メチルジイソシアナトシリル基など、トリメトキシチタニウム基、トリエトキシチタニウム基、トリ−n−プロポキシチタニウム基、トリイソプロポキシチタニウム基、トリ−n−ブトキシチタニウム基、トリイソブトキシチタニウム基、トリ−sec−ブトキシチタニウム基、トリ−tert−ブトキシチタニウム基、トリクロロチタニウム基、さらには、トリメトキシジルコニウム基、トリエトキシジルコニウム基、トリ−n−プロポキシジルコニウム基、トリイソプロポキシジルコニウム基、トリ−n−ブトキシジルコニウム基、トリイソブトキシジルコニウム基、トリ−sec−ブトキシジルコニウム基、トリ−tert−ブトキシジルコニウム基、トリクロロジルコニウム基、またさらには、ジメトキシアルミニウム基、ジエトキシアルミニウム基、ジ−n−プロポキシアルミニウム基、ジイソプロポキシアルミニウム基、ジ−n−ブトキシアルミニウム基、ジイソブトキシアルミニウム基、ジ−sec−ブトキシアルミニウム基、ジ−tert−ブトキシアルミニウム基、ジクロロアルミニウム基などが挙げられる。
この(イ)成分のエチレン性不飽和単量体は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
一方、上記(ロ)成分である金属を含まないエチレン性不飽和単量体としては、例えば一般式(II)
【0032】
【化2】
Figure 0004108405
【0033】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Xは一価の有機基である。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、好ましくは一般式(II−a)
【0034】
【化3】
Figure 0004108405
【0035】
(式中、Rは前記と同じであり、Rは炭化水素基を示す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体、あるいは上記一般式(II−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と、必要に応じて添加される密着性向上剤としての一般式(II−b)
【0036】
【化4】
Figure 0004108405
【0037】
(式中、Rは水素原子またはメチル基、Rはエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基を示す。)
で表されるエチレン性不飽和単量体との混合物を挙げることができる。
【0038】
上記一般式(II−a)で表されるエチレン性不飽和単量体において、Rで示される炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。炭素数1〜10のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、および各種のブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。炭素数3〜10のシクロアルキル基の例としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロオクチル基などが、炭素数6〜10のアリール基の例としては、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、メチルナフチル基などが、炭素数7〜10のアラルキル基の例としては、ベンジル基、メチルベンジル基、フェネチチル基、ナフチルメチル基などが挙げられる。
【0039】
この一般式(II−a)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
前記一般式(II−b)で表されるエチレン性不飽和単量体において、Rで示されるエポキシ基、ハロゲン原子若しくはエーテル結合を有する炭化水素基としては、炭素数1〜10の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基を好ましく挙げることができる。上記置換基のハロゲン原子としては、塩素原子および臭素原子がよい。上記炭化水素基の具体例としては、前述の一般式(II−a)におけるRの説明において例示した基と同じものを挙げることができる。
【0041】
前記一般式(II−b)で表されるエチレン性不飽和単量体の例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3−グリシドキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−クロロエチル(メタ)アクリレート、2−ブロモエチル(メタ)アクリレートなどを好ましく挙げることができる。
【0042】
また、前記一般式(II)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、これら以外にもスチレン、α−メチルスチレン、α−アセトキシスチレン、m−、o−またはp−ブロモスチレン、m−、o−またはp−クロロスチレン、m−、o−またはp−ビニルフェノール、1−または2−ビニルナフタレンなど、さらにはエチレン性不飽和基を有する重合性高分子用安定剤、例えばエチレン性不飽和基を有する、酸化防止剤、紫外線吸収剤および光安定剤なども用いることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
また、一般式(II−a)で表されるエチレン性不飽和単量体と一般式(II−b)で表されるエチレン性不飽和単量体とを併用する場合は、前者のエチレン性不飽和単量体に対し、後者のエチレン性不飽和単量体を1〜100モル%の割合で用いるのが好ましい。
【0044】
前記(イ)成分の加水分解性金属含有基を有するエチレン性不飽和単量体と(ロ)成分の金属を含まないエチレン性不飽和単量体とを、ラジカル重合開始剤の存在下、ラジカル共重合させることにより、(a)成分である加水分解性金属含有基を有する有機高分子化合物が得られる。
【0045】
一方、(b)成分の加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物(加水分解性金属含有化合物)としては、一般式(III)
【0046】
m−n …(III)
(式中のRは非加水分解性基、Rは加水分解性基、Mは金属原子を示し、mは金属原子Mの価数であり、nは0<n≦mの関係を満たす整数である。)で表される化合物又はその縮合オリゴマーが用いられる。
【0047】
上記一般式(III)において、Rが複数ある場合は、複数のRは同一であっても異なっていてもよく、Rが複数ある場合、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Rで示される非加水分解性基としては、例えばアルキル基、アリール基、アルケニル基などが好ましく挙げられ、Rで示される加水分解性基としては、例えば水酸基、アルコキシル基、イソシアネート基、塩素原子などのハロゲン原子、オキシハロゲン基、アセチルアセトネート基などが挙げられる。また、Mで示される金属原子としては、例えばケイ素、チタン、ジルコニウム、インジウム、スズ、アルミニウムなどが挙げられる。
【0048】
この一般式(III)で表される化合物又はその縮合オリゴマーとしては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシランなど、並びにこれらに対応するテトラアルコキシチタンおよびテトラアルコキシジルコニウム、さらにはトリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリイソブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウムなどの金属アルコキシド、あるいは金属アルコキシドオリゴマー、例えば市販品のアルコキシシランオリゴマーである「メチルシリケート51」、「エチルシリケート40」(いずれもコルコート社製商品名)、「MS−51」、「MS−56」(いずれも三菱化学社製商品名)など、さらにはテトライソシアナトシラン、メチルトリイソシアナトシラン、テトラクロロシラン、メチルトリクロロシランなどが挙げられるが、この(b)成分としては、金属のアルコキシドが好適である。
本発明においては、この加水分解性金属含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
本発明においては、アルコール、ケトン、エーテルなどの適当な極性溶剤中において、前記(a)成分の有機高分子化合物および(b)成分である少なくとも1種の加水分解性金属含有化合物からなる混合物を塩酸、硫酸、硝酸などの酸、あるいは固体酸としてのカチオン交換樹脂を用い、通常0〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度にて加水分解処理し、固体酸を用いた場合には、それを除去したのち、さらに、所望により溶剤を留去または添加し、塗布するのに適した粘度に調節して塗工液からなるコーティング剤を調製する。温度が低すぎる場合は加水分解が進まず、高すぎる場合は逆に加水分解・重合反応が速く進みすぎ、制御が困難となり、その結果得られる傾斜塗膜の傾斜性が低下するおそれがある。
【0050】
無機成分は、その種類によっては塗工液調製後も、加水分解、重縮合が徐々に進行して塗布条件が変動する場合があるので、塗工液に不溶の固体の脱水剤、例えば無水硫酸マグネシウムなどを添加することにより、ポットライフの低下を防止することができる。この場合、塗工液は、該脱水剤を除去してから、塗布に用いる。
【0051】
次に、このようにして得られた塗工液からなるコーティング剤を、有機基材の片面に乾燥後の平均厚みが、通常40〜100nmの範囲になるように、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などの公知の手段により塗膜を形成し、公知の乾燥処理、例えば40〜150℃程度の温度で加熱乾燥処理することにより、所望の有機−無機複合傾斜膜が形成される。
【0052】
この複合傾斜膜の平均厚みが40nm未満では中間膜としての機能が充分に発揮されず、耐久性の光触媒積層体が得られにくいし、100nmを超えると基材がフィルムの場合、たわみや屈曲によってクラックなどが発生するおそれがある。
前記有機−無機複合傾斜膜は、例えば前記コーティング剤を、(a)成分換算量で0.5〜3.0g/100mによるように塗布することにより、形成させることができる。
【0053】
このようにして形成された有機−無機複合傾斜膜においては、表面層は、複合膜中の金属酸化物系化合物成分の含有率はほぼ100%であって、深さ方向(基材方向)に逐次減少していき、基材近傍ではほぼ0%となる。すなわち、該有機−無機複合傾斜膜は、実質上、有機基材に当接している面が有機高分子化合物成分のみからなり、もう一方の開放系面が金属酸化物系化合物成分のみからなっている。
【0054】
このような傾斜構造の確認は、例えば傾斜膜表面にスパッタリングを施して膜を削っていき、経時的に膜表面の炭素原子と金属原子の含有率を、X線光電子分光法などにより測定することによって、行うことができる。
【0055】
この複合傾斜膜における金属成分の含有量としては特に制限はないが、金属酸化物換算で、通常5〜98重量%、好ましくは20〜98重量%、特に好ましくは50〜90重量%の範囲である。有機高分子化合物の重合度や分子量としては、製膜化しうるものであればよく特に制限されず、高分子化合物の種類や所望の傾斜膜物性などに応じて適宜選定すればよい。
【0056】
本発明の光触媒積層体においては、このようにして形成された有機−無機複合傾斜膜上に、(C)金属酸化物膜がドライプロセスにより形成される。このように、傾斜膜上にドライプロセスにて金属酸化物膜を形成することにより、該傾斜膜における亀裂発生を抑制することができる。そのメカニズムについては、必ずしも明確ではないが、極めて緻密性の高い金属酸化物膜が有機−無機複合傾斜膜と強固に密着することにより、該傾斜膜の無機部で起こる経時的な縮合進行に伴う面方向および深さ方向への収縮のうち、特に面方向への収縮を防止することに起因するものと考えられる。
【0057】
ドライプロセスによる金属酸化物膜の形成方法としては、緻密性の高い金属酸化物膜が、傾斜膜上に強固に密着性よく形成し得る方法であればよく、特に制限されず、例えばプラズマなどを用いる化学気相蒸着法(CVD)法、および真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティングなどの物理気相蒸着(PVD)法のいずれも用いることができるが、本発明においては、PVD法が好ましく、特にスパッタリングによる金属酸化物膜の形成が、傾斜膜の亀裂発生を抑制する効果の点から、好適である。
【0058】
このドライプロセスにより形成される金属酸化物膜としては、例えばケイ素酸化物、アルミニウム酸化物、マグネシウム酸化物、インジウム酸化物、スズ酸化物などあるいはこれらの複合金属酸化物、さらには酸化チタン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTi)、チタン酸ナトリウム(NaTi13)、二酸化ジルコニウム、α−Fe、酸化タングステン、KNb17、RbNb17、KRbNb17などの光触媒活性材料からなる膜を挙げることができる。
【0059】
スパッタリングにより、前記金属酸化物膜を形成させる場合、ターゲットとしては、1種以上の金属単体、1種以上の金属単体と1種以上の金属酸化物との混合物、または1種以上の金属酸化物を用いることができる。このスパッタリングにおいて、ターゲットとして1種以上の金属単体又は1種以上の金属単体と1種以上の金属酸化物との混合物を用いる場合には、アルゴンガスなどの不活性ガスと酸素ガスとの存在下で実施される。また、ターゲットとして金属酸化物を用いる場合には、アルゴンガスなどの不活性ガスのみの存在下で実施してもよいが、形成される金属酸化物膜が酸素欠乏状態になりやすいので、アルゴンガスなどの不活性ガスと酸素ガスの存在下で実施することが好ましい。
【0060】
有機−無機複合傾斜膜上に形成される前記金属酸化物膜の厚さは、通常3〜350nm、好ましくは10〜200nm、より好ましくは10〜100nmの範囲で選定される。この厚さが3nm未満では傾斜膜の亀裂発生抑制効果およびその上に光触媒活性膜が設けられる場合には、光触媒活性種に対するバリア性が不十分である。一方、350nmを超えると、有機基材がフィルム状である場合、可撓性の低下を引き起こすおそれがある上、金属酸化物膜の形成に長時間を要し、生産性の面からも好ましくない。
【0061】
また、有機−無機複合傾斜膜を介さず、有機基材上に直接、ドライプロセスにより金属酸化物膜を形成させた場合、基材との膨張率差が大きくなるため、応力を緩和することができず、また密着性も乏しいことから、例えば促進耐候試験を実施した場合に、経時的に塗膜に亀裂が発生し、一部剥離が生じたりするなどの好ましくない事態を招来する。
【0062】
本発明の光触媒積層体においては、有機−無機複合傾斜膜上に、ドライプロセスにより形成された金属酸化物膜が、光触媒活性能を有しない場合、あるいは光触媒活性能を有していても、不十分である場合には、該金属酸化物膜上に、(D)光触媒活性膜を設ける。
【0063】
一方、該金属酸化物膜が、前述の光触媒活性材料からなる光触媒活性膜であって、十分な光触媒活性能を有する場合には、その上に(D)光触媒活性膜を設ける必要はなく、そのまま、光触媒積層体として供することができる。
【0064】
有機−無機複合傾斜膜自体は、もともと光触媒活性種に対するバリア性を有しているので、金属酸化物膜自体が光触媒活性膜であっても、なんら問題はなく、この場合でも、有機−無機複合傾斜膜の亀裂発生が抑制され、結果として高耐久性光触媒積層体が得られる。
【0065】
このように、金属酸化物膜が、光触媒活性膜である場合、該金属酸化物膜としては、実用的な面から、酸化チタンを含む膜、特にアナターゼ型酸化チタンを含む膜が好ましい。また、親水性能を向上させる目的で、該酸化チタン膜に、シリカなどを含ませることができる。
【0066】
さらに、該光触媒活性膜には、光触媒活性を促進させる目的で、所望により従来公知の光触媒促進剤を含有させることができる。この光触媒促進剤としては、例えば白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族金属が好ましく挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。この光触媒促進剤の添加量は、光触媒活性の点から、通常、光触媒活性材料と光触媒促進剤との合計重量に基づき、1〜20重量%の範囲で選ばれる。
【0067】
一方、金属酸化物膜上に(D)光触媒活性膜を形成させる場合には、該光触媒活性膜を構成する光触媒活性材料として、例えば酸化チタン、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸バリウム(BaTi)、チタン酸ナトリウム(NaTi13)、二酸化ジルコニウム、α−Fe、酸化タングステン、KNb17、RbNb17、KRbNb17、硫化カドミウム、硫化亜鉛などを用いることができる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、酸化チタン、特にアナターゼ型酸化チタンは実用的な光触媒活性材料として有用である。この酸化チタンは、太陽光などの日常光に含まれる紫外線領域の特定波長の光を吸収することによって優れた光触媒活性を示す。
該(D)層の光触媒活性膜には、光触媒活性を促進させる目的で、上記光触媒活性材料と共に、所望により前述の光触媒促進剤を含有させることができる。
【0068】
金属酸化物膜上に、光触媒活性膜を形成させる方法としては特に制限はなく、様々な方法を用いることができるが、例えば真空蒸着法、スパッタリング法などのPVD法や材料をガス燃焼炎を使用して溶融し、微粒子状にして金属酸化物膜上に吹き付け、を形成させる金属溶射法などのドライプロセス、塗工液を用いるウェットプロセスなどを好ましく挙げることができる。これらの方法の中で、ウェットプロセスが、操作性や性能などの点から好ましい。
ドライプロセスとしては、装置や操作が簡単である点から、特にスパッタリング法が好適である。
【0069】
一方、塗工液を用いる方法においては、適当な溶媒中に、光触媒活性材料および必要に応じて用いられる光触媒促進剤や無機系バインダーなどの微粒子を含む分散液からなる塗工液を調製し、この塗工液を金属酸化物膜上に、公知の方法、例えばディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などにより塗布し、自然乾燥または加熱乾燥することにより、光触媒活性膜を形成させる方法などを用いることができる。また、光触媒促進剤を用いる場合、例えば光触媒活性材料および所望により用いられる無機系バインダーなどの微粒子を含む塗工液を金属酸化物膜上に塗布し、光触媒活性材料の塗膜を形成させたのち、溶存酸素が除去された光触媒促進剤の金属イオンを含む水溶液に、前記の金属酸化物膜上に光触媒活性材料の塗膜が形成された有機基材を浸漬し、光を照射して、該金属イオンを塗膜面に沈積させる光デポジション法により、光触媒活性材料の塗膜上に光触媒促進剤層を設けることによって、光触媒活性膜を形成させることもできる。
【0070】
前記塗工液の調製において必要により用いられる無機系バインダーとしては、バインダーとしての機能を発揮し得るものであればよく、特に制限されず、従来公知のもの、例えばケイ素、アルミニウム、チタニウム、ジルコニウム、マグネシウム、ニオビウム、タングステン、スズ、タンタルなどの金属の酸化物や水酸化物、あるいは上記金属の中から選ばれた2種以上の金属の複合酸化物や複合水酸化物などを挙げることができる。この無機系バインダーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、該塗工液には、光触媒活性膜形成用の塗工液に使用される従来公知の他の添加成分、例えばシリコーン樹脂や変性シリコーン樹脂、シランカップリング剤などを含有させることができる。
【0071】
本発明の光触媒積層体においては、(D)層である光触媒活性膜の厚みは、通常10nm〜1μmの範囲で選定される。この厚みが10nm未満では光触媒機能が十分に発揮されないし、1μmを超えると厚みの割には光触媒機能の向上効果が認められず、むしろクラックが生じたり、基材としてフィルムを用いる場合には、屈曲性が低下する原因となる。好ましい厚みは30nm〜0.5μmであり、特に40nm〜0.1μmの範囲が好ましい。
【0072】
本発明の光触媒積層体としては、有機基材としてプラスチックフィルムを用いてなる光触媒フィルムが好ましく、この光触媒フィルムにおいては、プラスチックフィルムの光触媒活性膜とは反対側の面に、必要により粘着剤層を設けることができる。これにより、本発明の光触媒フィルムを、被着体に容易に貼付することが可能となる。
【0073】
上記粘着剤層を構成する粘着剤としては特に制限はなく、従来公知の様々な粘着剤の中から、状況に応じて適宜選択して用いることができるが、耐候性などの点から、特にアクリル系、ウレタン系及びシリコーン系粘着剤が好適である。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。この粘着剤層には、必要に応じ、前述の紫外線吸収剤や光安定剤などの耐候剤を含有させることができる。
【0074】
また、該光触媒フィルムにおいては、所望により、前記粘着剤層の上に剥離シートを設けることができる。該剥離シートとしては、例えばグラシン紙、コート紙、ラミネート紙などの紙及び各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。このように剥離シートを設けた場合には、使用する際に該剥離シートを剥がし、粘着剤層面が被着体に接するようにして貼付すればよい。
【0075】
本発明の光触媒積層体は、有機−無機複合傾斜膜を介して、有機基材上に光触媒活性膜が設けられた積層体であって、上記傾斜膜表面に、ドライプロセスにより金属酸化物膜を形成させることにより、該傾斜膜の経時による亀裂発生を抑制することができ、極めて耐久性に優れている。
【0076】
【実施例】
次に、本発明を、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、複合傾斜膜の傾斜性、スパッタ膜付きフィルムの屈曲性および光触媒フィルムの耐久性は、以下に示す方法に従って評価した。
【0077】
(1)複合傾斜膜の傾斜性
XPS装置「PHI−5600」[アルバック・ファイ(株)製]を用い、アルゴンスパッタリング(4kV)を3分間隔で施して膜を削り、膜表面の炭素原子と金属原子の含有率を、X線光電子分光法により測定し、傾斜性を調べた。
(2)スパッタ膜付きフィルムの屈曲性
直径Rが異なるステンレス鋼製ロッドに、4cm幅のフィルムを塗膜を外側にして180°屈曲させて曲げ試験を行い、屈曲部を表面形状観察顕微鏡にて2500倍で観察し、線状の亀裂などが観察されない最小のRを求めることにより、評価した。
【0078】
(3)光触媒フィルムの耐久性
JIS K7350に準じたカーボンアーク式サンシャインウエザーメーター試験法[試験機:スガ試験機(株)製のサンシャインウエザーメーター「S300」]により、促進耐候試験(光源:225W/m、サイクル:照射102分間、照射+降雨18分間の2時間1サイクル、ブラックパネル温度:63±3℃、相対湿度:55±5%)を行い、キーエンス(株)製、表面形状測定顕微鏡「VF−7500」による表面状態観察、および日本電色(株)製、ヘイズメーター「NDH2000」を用い、JIS K7361に準拠してヘイズ値を測定し、耐久性を評価した。
【0079】
実施例1
チタンテトライソプロポキシド125mlをエチルセロソルブ168mlに溶解した溶液に、濃硝酸16.3ml、水8.2mlとエチルセロソルブ168mlの混合溶液を攪拌しながらゆっくり滴下し、その後、30℃で4時間ゾルゲル反応させ、無機成分溶液(a)を作成した。
【0080】
メチルメタクリレート10.9gおよびγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン1.36gの混合溶液に、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.1gを溶解させた後、攪拌しながら75℃で3時間攪拌させて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の重量平均分子量が約7万の共重合体(A)を得た。この共重合体10gをメチルイソブチルケトン1000mlに溶解させ、10g/Lの有機成分溶液(b)を得た。
【0081】
次に、メチルイソブチルケトン1000mlに有機成分溶液(b)250mlを溶解し、エチルセロソルブ835mlに無機成分溶液(a)415mlを溶解し、その後、両者を混合して有機−無機複合傾斜膜塗工液(c)を得た。
【0082】
その後、この塗工液(c)をワイヤー線径0.075mmのマイヤーバーにて、55μm厚みのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東レ(株)製、ルミラー50TP60)上にバーコートし、溶剤を揮発させて厚み70nmの有機−無機複合傾斜膜を形成させた。
該塗膜のXPS測定結果を図1に示す。この図より、傾斜性を有する塗膜であることが確認された。
【0083】
該有機−無機複合傾斜膜上に、独FEP(Fraunhofer Institut Elektronenstrahl-und Plasmatechnik)社製、デュアルマグトロンスパッタリング装置(LBA−200)にて、金属シリコンをターゲットとして、出力3kW、チャンバー内圧力0.34Pa下、アルゴンガスと酸素ガスをそれぞれ130cm/min及び19.4cm/minで導入しながら34nm/minの造膜速度でスパッタリングした。得られたシリカスパッタ膜の厚みは30nmであった。
このシリカスパッタ膜付き有機−無機複合傾斜膜塗工フィルムの曲げ試験の結果、4Rの屈曲性を有していた。
【0084】
次にこのシリカスパッタ膜上に石原産業(株)製、光触媒コーティング剤「ST−K211」をワイヤー線径0.1mmのマイヤーバーにてバーコートし、溶剤を揮発させて45nmの光触媒活性膜を形成させた。
【0085】
このようにして作製した光触媒フィルムについて、カーボンアーク式サンシャインウエザーメーター(以下、SWMと略記)にて促進耐候試験を行ない、2400時間経過後の表面状態を観察したところ、亀裂や剥離は一切観察されず、またヘイズ値2.09%と高い透明性を有していた。これらの結果を表1に示す。
【0086】
実施例2〜4
実施例1において、シリカスパッタ膜の厚みを100nm(実施例2)、300nm(実施例3)および5nm(実施例4)に変更した以外は、実施例1と同様にして光触媒フィルムを作製した。各特性の評価結果を表1に示す。
【0087】
比較例1
実施例1において、有機−無機複合傾斜膜上にシリカスパッタ膜を形成させなかったこと以外は、実施例1と同様にして光触媒フィルムを作製した。特性の評価結果を表1に示す。
【0088】
比較例2
実施例1において、有機−無機複合傾斜膜を形成させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、スパッタ膜付きフィルムを作製し、さらに光触媒フィルムを作製した。各特性の評価結果を表1に示す。
【0089】
【表1】
Figure 0004108405
【0090】
表1から明らかなように、実施例1〜3は、SWMによる2400時間促進耐候試験後の表面状態において、亀裂や剥離は一切観察されず、またヘイズ値は2%台であり、高い透明性を有していた。しかし、実施例3はシリカスパッタ膜の厚みが300nmと厚いため、スパッタフィルムの屈曲性は8Rと大きい。
【0091】
実施例4は、シリカスパッタ膜の厚みが5nmと薄いため、SWM2400時間経過後の表面状態において、僅かに微小な亀裂が認められ、またヘイズ値も3.30%と若干高かった。
【0092】
比較例1は、シリカスパッタ膜を形成させなかったため、SWM2400時間経過後の表面状態において、微小な亀裂が生じ、かつヘイズ値も、実施例4に比べて高い。
【0093】
比較例2は、有機−無機複合傾斜膜を形成させなかったため、SWM2400時間経過後の表面状態において、塗膜一面に亀裂が観察され、一部は剥離していた。また、表面形状観察顕微鏡にて、塗膜の剥離部分と残存部分との段差測定を行なったところその段差はおおよそ70nmであり、つまり剥離界面はスパッタ膜とPETフィルム間であることが分かった。またヘイズ値は5.69%と透明性を損ねていた。
【0094】
実施例5
実施例1において、スパッタリングのターゲットを金属チタンに変更し、100nmのチタニアスパッタ膜を形成し、かつ該スパッタ膜上に光触媒活性膜を形成させなかったこと以外は、実施例1と同様にしてチタニアスパッタ膜付き有機−無機複合傾斜膜塗工フィルムを作製した。
【0095】
該フィルムにメチレンブルーを塗布し、ピーク波長が352nmであるブラックライト蛍光ランプにて紫外線を照射したところ、メチレンブルーの退色が確認された。すなわち、該チタニアスパッタ膜の光触媒活性が認められた。
このチタニアスパッタ膜付き有機−無機複合傾斜膜塗工フィルムの曲げ試験を行ったところ、4Rの屈曲性を有していた。また、SWMによる促進耐候試験を実施し、2400時間経過後の表面状態を観察したところ亀裂や剥離は観察されなかった。ヘイズ値は2.90%と高い透明性を有していた。
【0096】
【発明の効果】
本発明によれば、有機−無機複合傾斜膜を介して、有機基材上に光触媒活性膜が設けられた積層体において、上記傾斜膜表面に、ドライプロセスにより金属酸化物膜を形成させることにより、該傾斜膜の経時による亀裂の発生が抑制され、光触媒活性種に対するバリア性が高められることから、高耐久性の光触媒積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で形成された有機−無機複合傾斜膜におけるスパッタリング時間と炭素原子およびチタン原子の含有率との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. (A)有機基材と、その片面に順次設けられた(B)有機−無機複合傾斜膜、(C)金属酸化物膜および(D)光触媒活性膜を有する積層体からなり、
    前記(B)有機−無機複合傾斜膜として、有機高分子化合物と金属酸化物系化合物とが化学的に結合した複合体を含み、かつ両者の含有比率が深さ方向に連続的に変化すると共に、実質上、有機基材と当接している面が有機高分子化合物成分のみであって、金属酸化物膜との界面が金属酸化物系化合物成分のみからなる傾斜膜を用い、
    かつ前記(C)金属酸化物膜がドライプロセスにより形成されたものであることを特徴とする光触媒積層体。
  2. (D)光触媒活性膜がウェットプロセスにより形成されたものである請求項に記載の光触媒積層体。
  3. (C)金属酸化物膜がスパッタリングにより形成されたものである請求項1または2に記載の光触媒積層体。
  4. (C)金属酸化物膜の厚さが3〜350nmである請求項1ないしのいずれか1項に記載の光触媒積層体。
  5. 光触媒活性膜が酸化チタンを含む膜である請求項1ないしのいずれか1項に記載の光触媒積層体。
  6. (B)有機−無機複合傾斜膜が、(a)分子中に加水分解により金属酸化物と結合し得る金属含有基を有する有機高分子化合物と共に、(b)加水分解により金属酸化物を形成し得る金属含有化合物を加水分解処理してなるコーティング剤を、(a)成分換算量で0.5〜3.0g/100m2になるように塗布して形成されたものである請求項1ないしのいずれか1項に記載の光触媒積層体。
  7. (A)有機基材がフィルム状である請求項1ないしのいずれか1項に記載の光触媒積層体。
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