JP4100922B2 - 帯電防止塗布液及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は帯電防止塗布液に関する。この帯電防止塗布液は、タイル等の外装材や内装材等の建材、電気製品、家具、自動車等の機械製品等の表面の帯電を防止し、建材等の表面の防汚性を高めるために用いて好適である。
【0002】
【従来の技術】
従来、シラン系水性エマルジョンからなる塗布液が知られている(特開平9−3443号公報)。この塗布液は、住宅用の建材等の表面に塗布されることにより撥水性のある撥水層を形成し、その撥水層により建材等の表面の防汚効果を発揮することができる。
【0003】
また、酸性コロイド状シリカと、アミン化合物と、無機充填材と、水及び/又は親水性有機溶剤とを主成分とする塗布液も知られている(特開平10−158585号公報)。同様に、水分散性シリカと水性ポリウレタンとを含む塗布液も知られている(特開平9−40888号公報)。これらの塗布液は、同様に建材等の表面に塗布されることにより耐候性のある耐候性塗膜を形成し、その耐候性塗膜により建材等の表面の防汚効果を発揮することができる。
【0004】
さらに、酸化チタン等の光触媒を含む水性の塗布液も知られている(特開2000−239565号公報)。この塗布液は、同様に建材等の表面に塗布されることにより受光によって汚れ成分を分解可能な光触媒層を形成し、その光触媒層により建材等の表面の防汚効果を発揮することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来の塗布液では、撥水層、耐候性塗膜又は光触媒層の帯電まで考慮されておらず、帯電によって汚れが付着する場合の防汚効果が充分でないおそれがあることが判明した。また、上記酸性コロイド状シリカ等を主成分とする塗布液では、セメントモルタル、金属等を侵食しやすく、塗布できる対象が限定されてしまうとともに、製造コストの低廉化に限界がある。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、帯電によって汚れが付着する場合の防汚効果を有し、多種類の対象に塗布でき、かつ安価に製造可能な帯電防止塗布液を提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行い、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の帯電防止塗布液は、揮発性溶媒と、該揮発性溶媒中に分散された無機微粒子とを有し、該無機微粒子は、コロイダルシリカと、(Mg2+ 1-XAl3+ X(OH)2)X+(CO3 2- X/2・mH2O)X-(Xは0より大きく0.33以下、mは0より大きな数)で示されるハイドロタルサイト類とを少なくとも有し、全体100質量%中、該ハイドロタルサイト類が0.00067〜0.00084質量%の範囲であり、該コロイダルシリカが2.0〜5.5質量%の範囲であり、該無機微粒子の微粒子径は5〜30nmであることを特徴とする。
【0009】
本発明の帯電防止塗布液では、揮発性溶媒中に無機微粒子が分散されているため、対象物の表面に塗布した後、単に放置すれば、その塗布液から揮発性溶媒が揮発し、その対象物の表面に無機微粒子を含む帯電防止層を形成することができる。ここで、無機微粒子の表面には水酸基が存在することにより、無機微粒子同士が揮発性溶媒の揮発とともに脱水して硬化反応が進行することから、この帯電防止層は緻密で強固なものとなっている。無機微粒子は、その粒径が小さいために単位質量あたりの水酸基の数が多く、特にその効果が大きい。
【0010】
そして、帯電防止層では、無機微粒子の表面の水酸基が空気中の極性の大きな分子である水分子と水素結合し、それらの表面に水分子が吸着する。この吸着した水分子によって帯電防止層は電気抵抗が小さくなり、表面に存在しようとする電荷を逃がし、ひいては帯電を防止することができる。このため、例え表面に電荷をもつ塵や埃等の微粒子が帯電防止層に接近したとしても、クーロン力によって帯電防止層に強固に付着することはない。また、重力等の影響でそれらの微粒子が帯電防止層に付着したとしても、容易にそれらの微粒子を拭き取ることができる。したがって、本発明の帯電防止塗布液によれば、帯電によって汚れが付着する場合の防汚効果を発揮することができる。
【0012】
また、本発明の帯電防止塗布液は、揮発性溶媒中に無機微粒子が分散されているにすぎず、多種類の対象に塗布が可能であるとともに、安価に製造可能である。
【0014】
本発明の帯電防止塗布液を塗布する対象物としては、特に限定はないが、例えば建築用装飾材、住宅外装材、外壁リフォーム材、住宅内壁材、住宅内壁リフォーム材、天井材、屋根材、屋根下地材、屋根リフォーム材、雨どい、建築用部材(水きり、破風、軒天)、物干し、住宅エクステリア商品(デッキ、テラス、バルコニー、バルコニー笠木、手摺、ベランダ壁・床材)、住宅エクステリアファニチャー、住宅外構(フェンス、ブロック代替)、プレハブ用壁材、植木鉢等ガーデンファニチャー、看板、標識、ガードレール、浴室壁材、浴槽、浴室床材、浴室カウンター、アクセサリー、トイレ床材、システムトイレ壁材、台所シンク、キッチンバック、レンジ回りホーロー代替、便器、洗面器等の衛生陶器、金具、サッシ、止め具、ドアのぶ、扉材、オーディオ製品、家電製品(特に、ブラウン管、液晶ディスプレイ等を備えた製品)、パソコン、TVアンテナ、パラボラアンテナ、蛍光灯台座・反射板、アウトドア商品(テント、テーブル、イス)、人工観葉植物、ホワイトボード、屋外用ごみ箱、公園ベンチ等に利用することができる。
【0015】
揮発性溶媒としては、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類等の親水性有機溶媒や石油エーテル類、芳香族炭化水素等の非親水性有機溶媒である揮発性有機溶媒の他、水を採用することができる。水が揮発性溶媒中に含まれておれば、帯電防止層にその水が残留し、無機微粒子の表面の水酸基がその水分子と水素結合して帯電を防止することも考えられる。この意味で、本発明の帯電防止塗布液中には、揮発性溶媒中に水を有することが好ましいと考えられる。
【0016】
また、水を揮発性溶媒に含む場合、揮発性のある有機溶媒としては、アルコール類等の親水性有機溶媒を採用することが好ましいと考えられる。こうであれば、無機微粒子の分散性がよく、ひいては品質の安定性を確保しやすい。また、例え対象物の表面が撥水性であったとしても、親水性有機溶媒はそれに対する濡れ性がよいため、はじかれることなく均一に塗布しやすい。
【0017】
特に、親水性有機溶媒としてはアルコール類が好ましい。製造コスト、作業性、安全性等に優れるからである。アルコール類の種類については特に限定はないが、所望の揮発速度、所望の粘度となるようメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等から選択したり、これらを混合したりすることができる。
【0018】
また、本発明の帯電防止塗布液では、複数の揮発性溶媒を混合して用いてその混合比を変えたり、揮発性溶媒の種類を変えたりすることにより、帯電防止層の形成速度をコントロールすることができる。これにより、対象物の防汚効果の発揮、帯電防止層の耐久性、製造コスト等を使用者の要望に応じてバランスさせることができる。製造のしやすさを考慮し、予め一部の無機微粒子を揮発性溶媒の一部に分散させておくこともできる。揮発性溶媒の量が少ない帯電防止塗布液を製造し、これを実際の施工現場で揮発性溶媒によって希釈して用いることもできる。
【0019】
発明者らの試験結果によれば、本発明の帯電防止塗布液では、無機微粒子は、コロイダルシリカ、ハイドロタルサイト類の他に、アルミナ、マグネシア等の無機微粒子を加えることもできる。これらの無機微粒子も表面に多くの水酸基を有しているため、上記効果を発揮することができると考えられる。なお、アルミナ及びマグネシアは水酸物の形態をなしているものでもよい。
【0020】
また、無機微粒子は、コロシダルシリカと、(Mg 2+ 1-X Al 3+ X (OH) 2 ) X+ (CO 3 2- X/2 ・mH 2 O) X- (Xは0より大きく0.33以下、mは0より大きな数)で示されるハイドロタルサイト類とを少なくとも有する。発明者らの試験結果によれば、無機微粒子としてハイドロタルサイト類を有する場合、帯電防止性及び耐酸性、耐アルカリ性、耐沸騰水性等の耐候性に優れた帯電防止層が形成される。ハイドロタルサイト類の中でも(Mg2+ 1-XAl3+ X(OH)2)X+(CO3 2- X/2・mH2O)X-が特に帯電防止性及び耐候性に優れた帯電防止層が形成される。
【0021】
また、発明者らの試験結果によれば、本発明の帯電防止塗布液では、無機微粒子の微粒子径は5〜30nmであることが好ましい。こうであれば、帯電防止塗布液を対象物の表面に塗布する際、無機微粒子が沈降することなく、均一に懸濁させておくことができ、作業性に優れ、ひいては帯電防止層の品質を安定させることができる。また、単位質量あたりの表面積も大きくなるため、表面に存在する水酸基の数も多くなり、単位質量あたりの水分子の吸着量が増大して帯電防止の効果が大きくなると考えられる。
【0022】
本発明の帯電防止塗布液では、酸化チタン等の光触媒を含む水性の塗布液のように、光が照射されることによって活性酸素が発生し、有機物を分解するということはない。このため、対象物が有機物の場合であっても、その対象物と帯電防止塗布液とを離反する下塗りを必要としない。このため、この帯電防止塗布液を採用すれば、対象物に防汚処理をするに際し、工程数の削減と、処理コストの低減とを実現することができる。但し、酸化チタン等の光触媒を無機微粒子とすることもできる。
【0023】
また、壁面に複数枚のタイルを施工し、各タイル間に目地部を形成したタイル壁において、その目地部がセメントモルタル等により親水性を有することに起因してカビを生じやすい場合、タイル壁全体に撥水剤を塗布してその目地部のカビの発生を防止することがなされ得る。こうして撥水剤を塗布した後のタイル壁は、撥水剤で形成された撥水層を表面に有し、その撥水層が帯電することにより汚れを付着しやすい。このため、撥水剤を塗布した後のタイル壁を対象物とし、本発明の帯電防止塗布液をそのタイル壁に塗布すれば、その撥水層の帯電による汚れを防止することができる。
【0024】
この際、撥水性を得るために撥水剤を一般的な対象物に塗布すると、その上から本発明の帯電防止塗布液を塗布しても、通常、それははじかれ、塗布が困難となる。しかし、本発明の帯電防止塗布液をタイル壁に塗布する場合、対象物のシラノール基と反応して対象物の表面を疎水性に改質する撥水剤を用いるのであれば、目地部は撥水してそれが困難であるが、各タイルの表面にはそれを塗布することが可能となる。これは、そのような撥水剤をタイル壁に塗布した場合、目地部をなすセメントモルタルはシラノール基の密度が大きいのに対し、各タイルの表面はシラノール基の密度が小さいことから、各タイルの表面では充分に撥水効果が発揮されていない間に本発明の帯電防止塗布液が存在し得るからである。
【0025】
また、本発明の帯電防止塗布液は界面活性剤を有することが好ましい。こうであれば、上記のような撥水性の基材表面に対しても、はじかれることなく均一に帯電防止塗布液を塗布することが可能となる。
【0026】
本発明の帯電防止塗布液は、以下のようにして製造することができる。すなわち、本発明の製造方法は、揮発性溶媒に(Mg2+ 1-XAl3+ X(OH)2)X+(CO3 2- X/2・mH2O)X-(Xは0より大きく0.33以下、mは0より大きな数)で示されるハイドロタルサイト類を少なくとも分散させてハイドロタルサイト分散液とする分散工程と、該ハイドロタルサイト分散液中にコロイダルシリカを混合し、全体100質量%中、該ハイドロタルサイト類が0.00067〜0.00084質量%の範囲であり、該コロイダルシリカが2.0〜5.5質量%の範囲とされ、該無機微粒子の微粒子径が5〜30nmである帯電防止塗布液を得る混合工程とを備えていることを特徴とする。この製造方法によれば、本発明の帯電防止塗布液を容易に製造することができる。こうして製造された帯電防止塗布液は、帯電によって汚れが付着する場合の防汚効果を有し、多種類の対象に塗布でき、かつ安価に製造可能である。
【0027】
発明者の試験結果によれば、混合工程において、全体100質量%中、ハイドロタルサイト類は0.00067〜0.00084質量%の範囲であり、コロイダルシリカは2.0〜5.5質量%の範囲である帯電防止塗布液を得ることが好ましい。特に、全体100質量%中、ハイドロタルサイト類が0.00069〜0.00079質量%の範囲であり、コロイダルシリカが3.1〜5.1質量%の範囲である帯電防止塗布液を得ることが好ましい。
【0028】
こうして得られた帯電防止塗布液は、(Mg 2+ 1-X Al 3+ X (OH) 2 ) X+ (CO 3 2- X/2 ・mH 2 O) X- (Xは0より大きく0.33以下、mは0より大きな数)で示されるハイドロタルサイト類を揮発性溶媒中に少なくとも分散させたハイドロタルサイト分散液と、コロイダルシリカとを有し、全体100質量%中、ハイドロタルサイト類が0.00067〜0.00084質量%の範囲であり、コロイダルシリカが2.0〜5.5質量%の範囲である。
【0029】
ハイドロタルサイト類は(Mg2+ 1-XAl3+ X(OH)2)X+(CO3 2- X/2・mH2O)X-である。さらに、揮発性溶媒は親水性有機溶媒と水とからなることが好ましく、分散工程又は混合工程において界面活性剤を混合することも好ましい。こうして得られた帯電防止塗布液は、上記効果を奏することができる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施例1〜5を参考例1及び比較例1〜6とともに説明する。
【0031】
(参考例1)
<帯電防止塗布液の調合割合(質量%)>
非晶質シリカ 1.35%
アルミニウム−マグネシウム複合酸化物 0.09%
水−エチルアルコール混合液 98.56%
【0032】
ここで、非晶質シリカは日産化学工業(株)製の平均径10nmのものであり、アルミニウム−マグネシウム複合酸化物はシーアイ化成(株)製の平均径30nmのものである。また、水−エチルアルコール混合液はエチルアルコールを12質量%含むものである。
【0033】
そして、対象物として釉薬層をもつ焼成後のタイルを用意し、このタイルの表面を清水によって洗浄した後、乾燥し、上記調合割合の帯電防止塗布液を刷毛によって15g/m2(湿式質量)塗布し、室温において7日間放置したものを参考例1の試料とした。
【0034】
この際、参考例1では、無機微粒子として平均粒径10nmの非晶質シリカと平均粒径30nmのアルミニウム−マグネシウム複合酸化物とを用いているため、帯電防止塗布液をタイルに塗布する際、無機微粒子が沈降することなく均一に懸濁させておくことができた。また、参考例1の試料では、水とエチルアルコールとを混合してなる揮発性溶媒中に非晶質シリカとアルミニウム−マグネシウム複合酸化物とが分散されているため、塗布後、単に放置するだけでエチルアルコールが揮発するとともに水がほとんど揮発し、非晶質シリカとアルミニウム−マグネシウム複合酸化物とからなる帯電防止層を形成することができた。
【0035】
(比較例1)
上記と同種のタイルを清水によって洗浄した後、乾燥したものを比較例1の試料とした。
【0036】
(比較例2)
上記と同種のタイルを清水によって洗浄した後、乾燥し、高級アルキルアルコキシシランモノマの水性液((株)東亜合成製、商品名「アクアプルーフ」)を刷毛によって15g/m2(湿式質量)塗布し、室温において7日間乾燥したものを比較例2の試料とした。
【0037】
(評価)
上記参考例1、比較例1及び2の試料に対し、JIS L−1094の摩擦帯電放電曲線測定法に準じた測定法を行った。測定装置は「モンロー・エレクトロニクス社(米国ニューヨーク)製の静電表面電位計モデル244」である。プローブと試料間との距離は2mmとし、試料表面をアクリル布で20回摩擦した後、直ちに測定を行った。試験の温度は20°Cであり、湿度は40%の場合と60%の場合とである。結果を図1〜3に示す。
【0038】
参考例の試料では、図1に示すように、測定開始時点から表面電位が3mVであり、極僅かしか帯電していないことがわかる。このため、例え表面に電荷を有する塵や埃等の微粒子が帯電防止層に接近したとしても、クーロン力によって帯電防止層に強固に付着することはなく、例え重力等の影響でそれらの微粒子が帯電防止層に付着したとしても、容易に拭き取ることができることがわかる。
【0039】
一方、比較例1の試料では、図2に示すように、湿度40%では測定開始時点において約−320mVの表面電位を示し、その後時間の経過とともに0mVに漸近していく結果となった。このことから、比較例1の試料では、帯電が生じていることがわかる。
【0040】
なお、湿度60%の条件では、測定開始直後の電位は約−80mVであり、湿度が40%の場合よりも帯電の程度が低い。また、その後急速に0mVに漸近する。これらのことから、比較例1の試料では、湿度が低いほど帯電が起こりやすいことがわかる。
【0041】
また、比較例2の試料では、図3に示すように、湿度40%では比較例1の場合とほぼ同様の結果となることから、ほぼ同様に帯電が生じていることがわかる。一方、湿度60%の条件では、測定開始直後の電位は約−160mVで比較例1の場合よりも帯電が大きく、その後の帯電が減衰する速度も比較例1より遅い結果となった。このことから、湿度が低い場合においては、比較例2の試料は比較例1の試料よりも帯電が起こりやすいことが分かる。この原因は、比較例2の試料の場合、高級アルキルアルコキシシランモノマによる処理によって、タイルの表面の水酸基がなくなり、水分子の吸着がされにくくなるためであると考えられる。
【0042】
(実施例1〜5)
以下の各工程により実施例1〜5の帯電防止塗布液を調製する。
【0043】
<分散工程>
(Mg2+ 1-XAl3+ X(OH)2)X+(CO3 2- X/2・mH2O)X-(以下、「ハイドロタルサイト」という。)0.025gを1リットルの蒸留水に加えて攪拌し、ハイドロタルサイト原液とする。一方、コロイダルシリカ原液を用意する。コロイダルシリカ原液は、イソプロピルアルコールと蒸留水との混合溶媒中にコロイダルシリカ(シーアイ化成(株)製 商品名「SIPA」)を2.5質量%の割合で分散させたものである。そして、ハイドロタルサイト原液にコロイダルシリカ原液を20mL加えて攪拌し、ハイドロタルサイトとコロイダルシリカとが分散したハイドロタルサイト分散液を得る。
【0044】
<混合工程>
次に、ハイドロタルサイト分散液100質量部に対し、コロイダルシリカ(シーアイ化成(株)製 商品名「SIPA」)を20質量%の割合で分散させたコロイダルシリカ分散液を30〜100質量部、水150質量部、エチルアルコール20質量部を加えて攪拌する。こうして表1に示す実施例1〜5の帯電防止塗布液を得る。
【0045】
【表1】
【0046】
また、こうして得られた実施例1〜5の帯電防止塗布液について、揮発性溶媒100質量部に対する無機微粒子の質量部数、ハイドロタルサイトの質量%及びコロイダルシリカの質量%を表2に示す。
【0047】
【表2】
【0048】
そして、対象物として釉薬層をもつ焼成後のタイルを用意し、上記実施例1〜5の帯電防止塗布液を参考例1の場合と同様の方法によって塗布し、これを実施例1〜5の試料とした。
【0049】
この際、実施例1〜5の帯電防止塗布液では、水とイソプロピルアルコールとエチルアルコールとを混合してなる揮発性溶媒中にハイドロタルサイトとコロイダルシリカとが分散されているため、塗布後、単に放置するだけでイソプロピルアルコールとエチルアルコールとが揮発するとともに水がほとんど揮発し、ハイドロタルサイトとコロイダルシリカとからなる帯電防止層を形成することができた。
【0050】
(比較例3)
比較例3では、混合工程においてハイドロタルサイト分散液100質量部に対し、水150質量部及びエチルアルコール20質量部を加えて攪拌した。なお、コロイダルシリカ分散液は加えていない。他の条件は実施例1〜5と同様である。こうして、比較例3の混合溶液を調製した。この比較例3の混合溶液を用い、同様の塗布方法により比較例3の試料とした。
【0051】
(比較例4)
比較例4では、混合工程においてハイドロタルサイト分散液100質量部に対し、上記コロイダルシリカ分散液120質量部、水150質量部及びエチルアルコール20質量部を加えて攪拌した。他の条件は実施例1〜5と同様である。こうして、比較例4の混合溶液を調製した。この比較例4の混合溶液を用い、同様の塗布方法により比較例4の試料とした。
【0052】
(比較例5)
比較例5では、混合工程において、コロイダルシリカ分散液の替わりに、分散液を70質量部加えた。ここで、分散液は、イソプロピルアルコールと蒸留水との混合溶媒中に(日産化学(株)製 商品名「PC−500」)を20質量%の割合で分散させたものである。他の条件は実施例1〜5と同様である。こうして、比較例5の混合溶液を調製した。この比較例5の混合溶液を用い、同様の塗布方法により比較例5の試料とした。
【0053】
(比較例6)
比較例6では、混合工程において、コロイダリシリカ分散液の替わりに、アルミナゾル分散液を70質量部加えた。ここで、アルミナゾル分散液は、イソプロピルアルコールと蒸留水との混合溶媒中にアルミナゾル(日産化学(株)製 商品名「アルミナゾル200」)を20質量%の割合で分散させたものである。他の条件は実施例1〜5と同様である。こうして、比較例6の混合溶液を調製した。この比較例6の混合溶液を用い、同様の塗布方法により比較例6の試料とした。
【0054】
(評価)
以下のように、上記実施例1〜5及び比較例3〜6の試料に対し、帯電防止性試験及び耐候性試験(耐煮沸試験、耐酸性試験、耐アルカリ性試験)を行った。また、上記実施例1〜5の帯電防止塗布液及び比較例3〜6の混合溶液を用い、防汚性試験を行った。
【0055】
<帯電防止性試験>
実施例1〜5及び比較例3、4の各試料に対し、参考例1と同様の方法により摩擦帯電放電曲線を測定した。帯電防止性の評価は、放電時間の短い順に◎、○、△及び×の4段階で行なった。
【0056】
<耐煮沸試験>
実施例1〜5及び比較例3〜6の各試料を沸騰水中に8時間浸漬した後、各試料を引き上げて評価を行った。評価は、目視による表面観察により、耐煮沸性が優れている順に◎、○、△及び×の4段階で行なった。
【0057】
<耐酸性試験>
実施例1〜5及び比較例3〜6の各試料を5質量%の硫酸水溶液中に24時間浸漬した後、各試料を引き上げ、水洗してから評価を行った。評価は、目視による表面観察により、耐酸性が優れている順に◎、○、△及び×の4段階で行なった。
【0058】
<耐アルカリ性試験>
実施例1〜5及び比較例3〜6の各試料を水酸化カルシウムの飽和水溶液中に24時間浸漬した後、試料を引き上げ、水洗してから評価を行った。評価は、目視による表面観察により、耐アルカリ性が優れている順に◎、○、△及び×の4段階で行なった。
【0059】
<防汚性試験>
釉薬層をもつ焼成後のタイル複数枚を壁面に施工し、各タイル間にシリコーンシーリング剤(セメダイン(株)製)を充填して目地部を形成したタイル壁を調製する。このタイル壁の表面を清水によって洗浄した後、乾燥し、上記実施例1〜5の帯電防止塗布液及び比較例3〜6の混合溶液を刷毛によって15g/m2(湿式質量)塗布する。こうして得られた壁面を愛知県知多市内の屋外に曝露し、180日間放置した後、タイル壁の汚れ具合を評価した。評価は、目視による表面観察により、防汚性が優れている順に◎、○、△及び×の4段階で行なった。
【0060】
上記のように行った帯電防止性試験、耐煮沸試験、耐酸性試験、耐アルカリ性試験及び防汚性試験の結果を表3に示す。
【0061】
【表3】
【0062】
表3から、水とアルコールとの混合溶媒100質量部に対して無機微粒子の質量部が2.0質量部以上含まれている実施例1〜5の試料では、全ての評価において×はなく、△の評価も2個以下と少なく、帯電し難いとともに優れた耐候性を有することが分かる。これに対して、無機微粒子が0.018質量部しか含まれていない比較例3の試料では、△の評価が3個となり、帯電しやすく、耐アルカリ性及び防汚性に劣っていることが分かる。
【0063】
また、ハイドロタルサイトの質量%が0.00067〜0.00084の範囲であり、コロイダルシリカの質量%が2.0〜5.5の範囲である実施例1〜5の試料では、全ての評価において×はなく、△の評価も2個以下と少なく、帯電し難いとともに優れた耐候性を有することが分かる。特に、ハイドロタルサイトの質量%が0.00069〜0.00079の範囲であり、コロイダルシリカの質量%が3.1〜5.1の範囲である実施例2〜4の試料については、全ての評価で○以上となり、帯電し難いとともに、耐候性に優れていることが分かる。これに対し、それらの範囲から外れている比較例3〜比較例6では、△と×の評価の総計が3個以上となり、特に耐候性について劣っていることが分かる。
【0064】
さらに、帯電防止性試験の評価と防汚性試験の評価とは密接な相関関係があり、帯電防止性に優れる実施例1〜5の試料は、防汚性においても優れていることが分かる。このことから、実施例1〜5の帯電防止塗布液によってタイル等に帯電防止層を形成することにより、クーロン力による汚れの強固な吸着を防止できることが分かる。
【0065】
また、実施例1〜5の帯電防止塗布液は、親水性有機溶媒としてエチルアルコール及びイソプロピルアルコールを含むため、無機微粒子の分散性がよく、ひいては品質の安定性を確保しやすい。また、例え対象物の表面が撥水性であったとしても、はじかれることなく均一に塗布しやすい。
【0066】
さらに、実施例1〜5の帯電防止塗布液を製造する場合、分散工程又は混合工程において、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の界面活性剤を加えることもできる。こうすることにより、フッ素系塗料やアクリル系塗料を塗布した基材、ステンレスカーブミラーのように鏡面仕上げをした基材のように、撥水性の高い基材に対しても、さらに容易に帯電防止塗布液を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1の試料による摩擦帯電放電曲線である。
【図2】比較例1の試料による摩擦帯電放電曲線である。
【図3】比較例2の試料による摩擦帯電放電曲線である。
Claims (4)
- 揮発性溶媒と、該揮発性溶媒中に分散された無機微粒子とを有し、
該無機微粒子は、コロイダルシリカと、
(Mg2+ 1-XAl3+ X(OH)2)X+(CO3 2- X/2・mH2O)X-(Xは0より大きく0.33以下、mは0より大きな数)で示されるハイドロタルサイト類とを少なくとも有し、
全体100質量%中、該ハイドロタルサイト類が0.00067〜0.00084質量%の範囲であり、該コロイダルシリカが2.0〜5.5質量%の範囲であり、
該無機微粒子の微粒子径は5〜30nmであることを特徴とする帯電防止塗布液。 - 全体100質量%中、ハイドロタルサイト類が0.00069〜0.00079質量%の範囲であり、該コロイダルシリカが3.1〜5.1質量%の範囲であることを特徴とする請求項1記載の帯電防止塗布液。
- 揮発性溶媒に(Mg2+ 1-XAl3+ X(OH)2)X+(CO3 2- X/2・mH2O)X-(Xは0より大きく0.33以下、mは0より大きな数)で示されるハイドロタルサイト類を少なくとも分散させてハイドロタルサイト分散液とする分散工程と、
該ハイドロタルサイト分散液中にコロイダルシリカを混合し、全体100質量%中、該ハイドロタルサイト類が0.00067〜0.00084質量%の範囲であり、該コロイダルシリカが2.0〜5.5質量%の範囲であり、該無機微粒子の微粒子径は5〜30nmである帯電防止塗布液を得る混合工程とを備えていることを特徴とする帯電防止塗布液の製造方法。 - 混合工程によって、全体100質量%中、ハイドロタルサイト類が0.00069〜0.00079質量%の範囲であり、コロイダルシリカが3.1〜5.1質量%の範囲である帯電防止塗布液を得ることを特徴とする請求項3記載の帯電防止塗布液の製造方法。
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