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JP4100475B2 - プレキャストバルコニー構造体及びバルコニーを備えた鉄筋コンクリート造外断熱壁構造 - Google Patents

プレキャストバルコニー構造体及びバルコニーを備えた鉄筋コンクリート造外断熱壁構造 Download PDF

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本発明は、鉄筋コンクリート造外断熱建物に付設するプレキャストバルコニー構造体、及び該バルコニー構造体を片持ち支持した鉄筋コンクリート造外断熱壁構造、更には該バルコニー構造体を用いた鉄筋コンクリート造外断熱壁構造の構築方法に関するものであり、建築の技術分野に属するものである。
プレキャストバルコニーを外断熱外壁に付設する技術として、図10に示す従来例がある。
図10は、特許文献1に挙げたものであって、図10(A)は外断熱壁構造のプレキャストバルコニー付設状態の縦断面図、図10(B)はプレキャストバルコニーの付設に採用する取付け金具の斜視図である。
即ち、従来例は、図10(B)に示す如く、上半にはアンカーロッドを六角ナットで定着突出し、下半にはH形鋼の両端に端板を固定した取付け金具を溶接突設し、且つH形鋼先端の端板には貫通孔を穿設した定着プレートを、コンクリート躯体の梁部にコンクリート打設で一体化埋設して、コンクリート躯体の壁面から外方にアンカーロッド及び定着金具を突設しておく。
また、プレキャストバルコニーは、取付け用側部の上半に、貫通路及び貫通路端部から外方に開いた窪み部を形成し、取付け用側部の下半のバルコニー床部には六角ナットで定着プレートに締着したアンカーボルトをプレキャスト成型時に埋設して、アンカーボルトを取付け用側部から突出しておく。
そして、プレキャストバルコニーの付設は、図10(A)に示す如く、コンクリート躯体外面に繊維系断熱材を貼着し、断熱材外面には、通気層を介在して外装材を配置してコンクリート躯体外壁を外断熱構造とし、バルコニー取付部では、外装材を排除して、プレキャストバルコニーの取付け用側部を、断熱材面上からコンクリート躯体の梁部と位置合わせして、断熱材とバルコニー取付け用側部が通気層を保持した状態で、梁部から突出しているアンカーロッドをバルコニーの貫通路に挿通し、窪み部内でアンカーロッド先端を六角ナットで締着すると共に、バルコニーの取付け用側部から突出したアンカーボルトを、梁部側から突出したH形鋼から成る取付け金具の先端の端板から貫通孔を介して取付け金具内に挿入し、端板の内側からナットで取付け金具の端板に締着するものである。
即ち、プレキャストバルコニーは、図10(A)に示す如く、取付け用側部が通気層を介して断熱材面と対向し、コンクリート躯体の梁から突設した上側のアンカーロッドをプレキャストバルコニー内でナット締着し、プレキャストバルコニーから突出した下側のアンカーボルトを梁側の取付け金具内でナット締着したものである。
特開2002−121818号公報
図10に示す、従来の外断熱壁へのプレキャストバルコニー(PCバルコニー)の付設にあっては、コンクリート躯体外面からアンカーロッド、及び取付け金具が突出しているため、コンクリート躯体形成後の外断熱被覆工事となり、コンクリート躯体形成、外断熱被覆施工、プレキャストバルコニー取付施工の工程が長時間となって、天候にも左右される。
また、プレキャストバルコニー側のアンカーボルトは、コンクリート躯体側から突出した取付け金具の先端の端板の裏側でのナット締着となるため、断熱材内でのナット締着作業となり、断熱材の被覆作業、及びPCバルコニーのナット締着作業は、煩雑、且つ困難な作業である。
また、PCバルコニーの取付けに際し、PCバルコニーを吊下した状態での、梁側のアンカーロッドの、バルコニー側の貫通路への挿入、及びバルコニー側のアンカーボルトの、梁側の取付け金具の端板の貫通孔への挿入も、注意深い位置合せの伴う、困難な作業であり、合理的工場生産されたPCバルコニーも、建築現場での、吊上げてからボルト締着までの作業は、煩雑、且つ困難な作業であって、施工性も悪い。
また、従来の片持ち支持タイプのPCバルコニー(図10)にあっては、構造力学的に、引張り応力と圧縮応力とに対応させるために、上方のアンカーロッドと下方のアンカーボルトを採用しているが、PCバルコニーを付設する場所は、必然的に梁(逆梁)が必要となり、設計上の自由度が無い。
しかも、取付け金具としての上方のアンカーロッド及び下方の取付け金具は、断熱材とPCバルコニー当接部(バルコニー側部表面)との隙間(界面隙間)で外気(空気)に触れるため、空気→取付け金具→コンクリート躯体(梁)の熱橋が生じ、断熱材で外断熱に被覆したコンクリート躯体の外断熱効果が、PCバルコニー付設部で低減する。
本発明は、図10の外断熱PCバルコニーのこれら問題点を、解決又は改善するものであり、PCバルコニーでありながら、構築施工性が良く、しかも、熱橋の抑制出来る、外断熱建物へのバルコニーの付設構築の容易な、画期的な技術手段を提供するものである。
本発明のプレキャストバルコニー(PCバルコニー)構造体は、例えば、図1に示す如く、コンクリート外壁Wに付設固定するプレキャストバルコニー構造体20であって、付設当接用の基端面Bbと両側辺20Sと前辺20Fとを備えた鉄筋コンクリートのバルコニー床スラブSBが、基端面Bbから定間隔Bwで水平方向にZ筋1群を突出しており、各Z筋1は、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、水平上辺部1U´、中間傾斜部1S及び水平下辺部1D´から成るZトラス筋1Mで固着一体化したものであり、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを上下垂直関係を維持して、Z筋1の一半は、バルコニー床スラブSB内での固定部Z1で一体化して、固定部Z1が、Z上端筋1UとZトラス筋1Mとの固着部ZUを含み、Z筋1の他半は、コンクリート躯体CFへの付着固定用の突出部Z0であって、突出部Z0が、Zトラス筋1Mの中間傾斜部1Sを含んでいる、プレキャストバルコニー構造体である。
尚、「バルコニー」は、バルコニー、ベランダ、外廊下等、建物外壁から突出した床を備えたものの総称である。
また、Z筋1群の突出の「水平方向」の意味は、図1の如く、垂直面としての基端面Bbから直角形態に突出の意であり、Z筋1の突出部Z0の先端形態は、突出長の短寸化のために屈曲していても良い。
この場合、バルコニー床スラブSBを片持ち形態で支持するZ筋1は、Z上端筋1Uが曲げモーメントに起因する引張り力に対抗し、Z下端筋1Dが曲げモーメントに起因する圧縮力に対抗するものであり、Zトラス筋1Mは、Z上端筋1UとZ下端筋1D間に、曲げモーメントの応力中心距離を付与し、且つ、コンクリート外壁Wとの取付け部で剛構造を提供し、例えば、図3の如く、居住部床スラブSAとバルコニー床スラブSB間に存在する複合パネル2のパネル厚T1(標準:100mm)内で剛構造を提供するものであるから、Zトラス筋1Mは、実施形態(図3)の如く、傾斜部1Sがバルコニー側のZ上端筋1Uから居住部側のZ下端筋1Dに斜行する引張り力対抗形態としても、或いは、傾斜部1Sがバルコニー側のZ下端筋1Dから居住部側のZ上端筋1Uに斜行する圧縮応力対抗形態としても、バルコニー床スラブSBの曲げモーメント対抗の機能を奏する。
そして、Z筋1を構成する各Z上端筋1U、Z下端筋1D、Zトラス筋1Mの長さ、太さ、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとの上下間隔等は、Z筋1の配置間隔、バルコニー床スラブ重量等からの構造計算で決定すれば良く、Z筋1の各構成筋1U,1D,1Mは、コンクリート付着抵抗の面から、共に異形棒鋼を採用すれば良い。
また、Z筋1の突出部Z0の長さも、コンクリート付着抵抗の面から決定すれば良いが、突出部Z0の端部に定着プレートを配置すれば、突出寸法の短寸化が可能であり、水平突出部Z0の先端近傍から屈曲して短寸化しても、十分なコンクリート付着応力が発揮出来る。
そして、突出部Z0の短寸化は、バルコニー床スラブSBと居住部床スラブSAとに段差の存在する場合での適用に有効である。
従って、本発明のPCバルコニー構造体20は、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、垂直関係を維持して、曲げモーメントの応力中心距離を十分保った形態にZトラス筋1Mで一体化したZ筋1が、強固な片持ち支持を可能とするため、もはや、バルコニーBの先端側での柱等の支持構造物を不要とし、設計の自由度の高い、且つ、美観上優れたバルコニーBの提供を可能とする。
また、PCバルコニー構造体20は、工場生産で均質、且つ安全な製品として合理的に得られ、鉄筋コンクリート造外断熱建物の外壁への付設施工も、図9に示す如く、Z筋1の突出部Z0を、外壁型枠FWや居住部床スラブ型枠FA等の、コンクリート躯体CFの型枠F内に配置して、コンクリート打設によりコンクリート躯体CFを形成するだけで、PCバルコニー構造体20が、作業性良くコンクリート躯体と一体化付設出来るため、本発明のPCバルコニー構造体20は、均質、且つ、強固な片持ち支持バルコニーBの構築の画期的な合理化を可能とする。
そして、図9に示す如く、コンクリート躯体を外断熱に被覆する通気性断熱パネル2を外壁Wの外側型枠に用いても、Z筋1群の突出部Z0を、外側型枠としてのパネル2を貫通してコンクリート躯体型枠内に配置するだけで、コンクリート打設により形成された外壁Wは、パネル2で外断熱被覆された外壁からZ筋1群で強力に片持ち支持されたPCバルコニーを突設したものとなる。
この場合、図3に示す如く、Zトラス筋1Mの傾斜部1Sは、バルコニー床スラブSB側から傾斜下向して突出部Z0となり、且つ、固着部ZUがバルコニー床スラブSBと一体化しているため、該バルコニー構造体20をコンクリート外壁Wに付設固定すれば、バルコニー床スラブSBの上下厚さTBの上半部に生ずる引張り応力には、Z上端筋1Uの抗引張力とZトラス筋1Mの抗引張力が協同作用し、Z筋1がバルコニー床スラブSBの降下変位を合理的に抑制する
そして、Zトラス筋1Mの中間傾斜部1Sが突出部Z0の基部を形成するため、バルコニー構造体20は、コンクリート外壁W等の取付側で強固な剛構造支持となり、図3に示す如く、厚い断熱層2B(標準厚:75mm)を備えたパネル2(標準厚:100mm)を介在してコンクリート壁Wに付設固定しても、突出部Z0の基部に存在するZトラス筋1Mの中間傾斜部1Sが、介在パネル2内に位置し、構造力学的には、介在パネル2は、あたかも、コンクリート体に置換した剛構造体となる
従って、該バルコニー構造体20をコンクリート外壁Wに付設固定すれば、Zトラス筋1MによるZ上端筋1UとZ下端筋1D間への十分な曲げモーメント中心距離L15の付与と相俟って、バルコニー構造体20の基端面Bbでの曲げモーメントによる撓み量(標準:0.3mm以下)が極端に低減出来、バルコニー構造体20の強固な片持ち支持が可能となる
また、予め構造設計に基づいて配置されたZ筋1群は、Z上端筋1Uが引張り応力に対抗し、Z下端筋1Dが圧縮応力に対抗し、Zトラス筋1MがZ筋1に剛構造を提供するため、該PCバルコニー構造体20を採用した各鉄筋コンクリート造建物は、均質、且つ、十分な強度を備えた、強度面で安全なバルコニーを備えたものとなり、各建築物でのバルコニーの品質保証が付与出来る。
また、本発明のPCバルコニー構造体20は、Z筋1群の各突出部Z0をコンクリート躯体CF内でコンクリート打設により、コンクリート躯体CFと一体化するだけで強固なバルコニーが構築出来るため、外壁Wの外面を被覆するパネルがどのようなパネルであっても、或いは、内断熱の鉄筋コンクリート建築物であって、PCバルコニー構造体20をコンクリート外壁Wの外面に直接付設する場合にも、適用可能であり、Zトラス筋1Mで中央部が剛構造化されたZ筋1群の略半分を突出したPCバルコニー構造体は、強度面で品質保証されたバルコニー構築用品の、建築業界への合理的な提供を可能とする。
また、PCバルコニー構造体20のZ筋1は、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとが同径であって、Z上端筋1UがZ下端筋1Dより長尺であるのが好ましい。
この場合、Z上端筋1Uは、バルコニーBの強度保持上、特に重要な引張り応力を担当するため、強大なコンクリート付着力を生ずる長さが必要であり、Z下端筋1Dは、圧縮強度の強大なコンクリート内での圧縮応力を担当するため、短尺化可能であり、同径のZ上端筋1UとZ下端筋1Dとすることにより、構造設計も容易となる。
また、PCバルコニー構造体20でのZトラス筋1Mは、中間傾斜部1Sが、実質上45°傾斜であるのが好ましい。
本発明のPCバルコニー構造体20をコンクリート外壁Wに付設固定すれば、バルコニー床スラブSBに働く曲げ応力により、Z上端筋1Uには引張り応力が、Z下端筋1Dには圧縮応力が作用し、曲げ応力と圧縮応力の界面の中立面に生ずる剪断応力作用面は、理論上45°傾斜面となるため、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとの間に、曲げモーメントの応力中心距離を提供し、且つ剛構造化するZトラス筋1Mは、中間傾斜部1Sが剪断応力にも有効に対処出来、Z筋1の合理的な構造設計及び選定実施が可能となる。
また、鉄筋コンクリート建造物の外断熱壁構造の発明は、例えば図3の如く、請求項1のプレキャストバルコニー構造体20をコンクリート外壁Wに付設固定した鉄筋コンクリート建物の外壁構造であって、コンクリート外壁Wは、内面に通気用の条溝G,G´群を縦設した成形セメント板2Aと、断熱層2Bとを層着した通気性断熱パネル2で外断熱に被覆し、プレキャストバルコニー構造体20は、基端面Bbが通気性断熱パネル2の成形セメント板2Aに当接し、Z筋1群の突出部Z0が通気性断熱パネル2を貫通して、コンクリート躯体CF内で打設コンクリートにより固着一体化して片持ち支持バルコニーBとした、バルコニーBを備えた鉄筋コンクリート建造物の外断熱壁構造に関するものである。
この場合、Z筋1群の突出部Z0の通気性断熱パネル2への貫通は、図6に示す如く、成形セメント板2Aの中央の肉厚部2Dに、図5(A)の如く、上面taから矩形長孔H1を、同位置の断熱層2Bにも上面tbから矩形長孔H2を配置しておき、吊下げたバルコニー構造体を降下させてZ筋突出部Z0をパネル2の上方から矩形長孔H1,H2内に嵌入すれば、パネル2へのZ筋突出部Z0の配置は、パネル2の通気用条溝G,G´に干渉しない形態であり、且つ、パネル2の強度の大な部位でのパネル2を傷めない形態での実施となり好ましい。
また、コンクリート躯体CFは、図2に示す如く、コンクリート壁W及び居住部床スラブSAを含む鉄筋コンクリート建造物の躯体であり、Z筋突出部Z0は、コンクリート躯体形成時のコンクリート打設でコンクリート躯体内に固着一体化すれば良い。
この場合、バルコニー床スラブSBが居住部床スラブSAと段差があって、Z筋突出部Z0が居住部床スラブSA内に配置困難な場合は、居住部床スラブSAの外壁Wとの接続部の下面に、ドロップパネルを付加形成して、Z筋突出部Z0を固着一体化処理するか、Z筋突出部Z0のZ上端筋1Uの先端部及びZ下端筋1Dの先端部を屈曲してZ筋突出部Z0を短寸化し、コンクリート外壁W内で固着一体化処理すれば良い。
また、通気性断熱パネル2でのコンクリート外壁Wの外断熱被覆は、図9に示す如く、通気性断熱パネル2を外壁型枠FWの外側型枠材に兼用してコンクリート打設すれば良い。
従って、PCバルコニー構造体20は、図3に示す如く、Z筋1の中央部ZC、即ち、Z筋突出部Z0の基端部にZトラス筋1Mが存在するため、通気性断熱パネル2は、力学的に、Zトラス筋1Mによって剛構造となり、コンクリート躯体CFに強固に片持ち支持され、バルコニー床スラブSBは、基端面Bbでの曲げモーメントによる撓み量が極端に低減(標準撓み:0.3mm以下)出来て、基端面Bbの成形セメント板2A表面への、きれいな当接形態が維持出来る。
しかも、PCバルコニー構造体20は、通気性断熱パネル2の通気構造に干渉せずに外壁Wと一体化出来るため、外断熱壁構造は、一般壁部を含めた全外壁面が、下方の腰水切から上方の笠木まで、空気連通の保証された外断熱となり、熱橋作用もバルコニー床スラブSBのコンクリート→Z筋→居住部床スラブSAのコンクリート→居室のみと低減した、優れた外断熱構造でありながら、バルコニーBを片持ち支持形態で強固に付設したものとなる。
また、外断熱壁構造の発明にあっては、図3に示す如く、Z筋1のZトラス筋中間傾斜部1Sを、少なくとも、通気性断熱パネル2の断熱層2Bの厚さT3の全幅に亘って傾斜配置し、断熱層2Bに剛構造機能を付与するのが好ましい。
この場合、PCバルコニー構造体20の製造段階で、使用対象の通気性断熱パネル2の断熱層厚さT3(標準:75mm)に応じてZ筋1を組立てておけば良い。
従って、バルコニーBの支持構造は、通気性断熱パネル2の断熱層厚さT3の全厚さに亘ってZトラス筋1Mによるトラス構造が導入出来、それ自体は強度の微小な断熱層2Bが、力学上、コンクリート体に置換した剛構造となるため、PCバルコニー構造体20は、力学上、断熱層2Bの介在しない支持構造となり、基端面Bbの曲げモーメントによる撓み量(標準:0.3mm以下)が極端に低減出来、PCバルコニー構造体20の強固な片持ち支持が可能となる。
また、外断熱壁構造の発明にあっては、通気性断熱パネル2内のZ筋1を、図9(B),(C)に示す如く、耐火被覆するのが好ましい。
この場合、耐火被覆材2Eとしては、耐火性、断熱性に富み、鋏で切断出来る、例えば、カオウール(イソライト工業(株)、商品名)やフイブロック(積水化学工業(株)、商品名)をパネル2の矩形長孔H1,H2内でZ筋1の周りに被覆充填すれば良く、耐火被覆材2Eの上から発泡スチロールを現場充填発泡させても良く、或いは、Z筋1を嵌入したパネル2の矩形長孔H1,H2内に、耐火被覆材として発泡スチロールのみを現場充填発泡させても良い。
従って、Z筋1は、PCバルコニー構造体20の降下撓みに対抗する強度を常時負担しており、パネル2内では耐火被覆材2Eで保護されているため、Z筋1は、火災時の断熱層2Bの燃焼に対しても、パネル2内での加熱劣下による支持力低下が阻止出来、バルコニーBの耐火性が保証出来ると共に、耐火被覆材2Eによって、パネルを貫入した矩形長孔H1,H2部での断熱機能低下も抑制出来る。
また、外断熱壁構造の発明にあっては、Z筋1は、図2(B)の如く、通気性断熱パネル2内に位置する中間部ZCには耐火塗料1Aを塗布し、バルコニー構造体20内及びコンクリート躯体CF内に位置する部分には、錆止め塗料1Bを塗布しておくのが好ましい。
この場合、耐火塗料1Aとしては、SK耐火コート上塗剤((株)エスケー化研、商品名)を用いれば良く、錆止め塗料1Bとしては、防食、断熱性のエポキシ樹脂塗料である耐火コート下塗剤((株)エスケー化研、商品名)を用いれば良い。
従って、Z筋1は、バルコニー床スラブSB内及びコンクリート躯体CF内で、錆止め塗料1Aの塗布膜によって、防錆作用によって耐久性が向上すると共に、その断熱性によって、Z筋1は周囲のコンクリートからの熱伝達が低減化され、バルコニー床スラブSB→Z筋1→コンクリート躯体の熱橋作用が低減化出来る。
しかも、Z筋1は、中間部ZCで耐火塗膜を備えたため、パネル2の矩形長孔H1,H2内への充填耐火被覆材2Eと相俟って、耐熱、耐火性が向上し、高耐久性の外断熱鉄筋コンクリート建物にあって、付設固定したバルコニーBも、耐火性及び耐久性を備えたものとなる。
また、該外断熱壁構造の発明にあっては、外壁Wを被覆する通気性断熱パネル2の上下接続は、PCバルコニー構造体20の付設固定部を含む全域が、図8に示す如く、内面に上下方向の通気連通溝GAを有する上下の嵌入用垂直片9F,9F´を備えた十字ジョイント8,9の、成形セメント板2Aの上下端の条溝Gへの嵌入で接続するのが好ましい。
この場合、図7に示す如く、パネル2の上下接続部に横目地dx(標準:20mm)を形成する一般壁部にあっては、図8(A)の十字ジョイント8を採用すれば、箱形の水平当接部8Mが横目地dxの間隔を規定し、横目地dxには、条溝G,G´群に干渉しないように目地シーリングすれば、条溝の通気性が確保出来る。
また、PCバルコニー構造体20を付設する部位にあっては、即ち、横目地を形成しないでパネル2を上下接続する部位にあっては、図8(B)の十字ジョイント9を採用するため、上下パネルの間隔は水平当接板(標準厚さ:3mm)厚となり、該間隔を条溝G,G´群に干渉しないように閉止すれば、条溝G,G´の通気性が確保出来る。
この場合、バルコニー部用十字ジョイント9は、一般壁部用十字ジョイント8同様、図7(C)に示す如く、前後幅WMが成形セメント板2Aの条溝Gの前後幅(溝深さ)T5内に収まるため、上下の成形セメント板2Aの板状部2C間、即ち十字ジョイント9の水平当接板9Mで形成された隙間、には、水平当接板9Mより若干厚いゴム板15を延展介在させれば、成形セメント板2Aの上下端間の隙間が閉止出来て、全条溝G,G´群の腰水切から笠木までのドラフト換気が保証出来ると共に、ゴム板15が地震時の成形セメント板2Aの動きに追従対応出来るので好都合である。
本願の、バルコニーBを備えた鉄筋コンクリート造外断熱壁構造の構築方法の発明は、内面に通気用の条溝G,G´群を縦設した成形セメント板2Aの内面側に断熱層2Bを層着した通気性断熱パネル2を一般壁部に、該通気性断熱パネル2の上面から、Z筋1嵌入用の矩形長孔H1,H2を縦設したパネル2を、PCバルコニー構造体20の配置部に、それぞれ、下方のパネル2に対して、内面に上下方向の空気連通溝GAを備えた十字ジョイント8,9で接続立設して外壁Wの外側型枠F0とし、慣用の内側型枠F1とで外壁型枠FWを構築し、外壁型枠FWの上部にも慣用の居住部床スラブ型枠FAを連接構築してコンクリート躯体CFの型枠Fを形成し、次いで、基端面Bbから水平にZ筋1群を突出したプレキャストバルコニー構造体20を、基端面Bbを成形セメント板2A面に当接し、且つ、各Z筋突出部Z0を、それぞれ各パネル2の矩形長孔H1,H2に嵌入すると共に、コンクリート躯体型枠F内に延出してバルコニー型枠FBで姿勢保持し、次いで、コンクリート躯体型枠F内にコンクリート打設するものである。
この場合に使用するプレキャストバルコニー構造体20は、請求項1のPCバルコニー構造体20である。
また、通気性断熱パネル2の断熱層2Bとして、プラスチック発泡板等の非繊維系のプラスチック成形断熱材を採用すれば、通気用条溝G,G´群に干渉することなくパネル2が層着形成出来ると共に、施工時の雨水の影響が低減出来て、工期の短縮化に有利である。
また、一般壁部用パネルと、PCバルコニー構造体20の配置部用パネルとは、基本的には、パネル上端辺の矩形長孔H1,H2の有無で異なるだけであり、PCバルコニー用パネル2は、一般壁用パネル2を、必要に応じて高さAhを調整し、図5の如く、成形セメント板2Aには矩形長孔H1を、断熱層2Bには矩形長孔H2を、整合位置に形成して層着すれば良い。
そして、成形セメント板2Aの矩形長孔H1の幅は、嵌入Z筋1の最大径(Z上端筋径)よりも若干大(標準:3mm大)としておけば、地震時等の成形セメント板2Aのひび割れが防止出来ると共に、矩形長孔H1の充填物等での補修にも好都合である。
また、断熱層2Bの矩形長孔H2の幅は、Z筋突出部Z0の上方からの嵌入作業での断熱層2Bの損傷防止上及び厚い断熱層2Bへの補修材充填上、成形セメント板2Aの矩形長孔H1の幅より大とするのが好ましく、矩形長孔H2は幅が広くても、コンクリート打設前に断熱材等での断熱機能修復すれば良い。
また、一般壁部での通気性断熱パネル2の上下接続は、図8(A)に示す、箱形態の水平当接部8Mを備えた十字ジョイント8で実施すれば、上下パネル2間に水平当接部8Mの上下高さY2(標準:20mm)による横目地dx用間隔が形成出来、バルコニーB部でのパネル2の上下接続は、隙間処理の観点から横目地dxを形成しないのが好ましいため、図8(B)に示す、水平当接板9Mを備えた十字ジョイント9で実施すれば、上下パネル2間は、水平当接板9Mの厚さ(標準:3mm)の間隙となるため、隙間処理が簡便となる。
また、例えば、バルコニー床スラブSBを、居住部床スラブSAに対して段差を保った下方に配置する場合にあっては、コンクリート躯体CF用型枠Fを、居住部床スラブSAと外壁Wの連続部に慣用のドロップパネル(図示せず)を形成するように構築すれば、PCバルコニー構造体20のZ筋1群の各突出部Z0が真直状態であっても、コンクリート躯体型枠F内への配置が可能となり、PCバルコニー構造体20の強固な定着保持が可能となる。
従って、本発明にあっては、コンクリート壁Wを外断熱被覆する通気性断熱パネル2が、一般壁部はもとより、バルコニーBの壁部でも、上下パネルの接続は、上下に空気連通の保証された十字ジョイント8,9で接続されているため、コンクリート壁Wを被覆する全パネルが、外壁下端の腰水切から上端の笠木までのパネル2内のドラフト換気が達成出来るものとなる。
そして、バルコニーBの構築も、予め、工場で均質生産されたPCバルコニー構造体20を、コンクリート躯体型枠Fの構築時に、PCバルコニー構造体20のZ筋1群の突出部Z0を型枠F内に配置してコンクリート躯体CFのコンクリート打設を行うだけであるので、施工性が良い。
そして、当該階のコンクリート打設前に、バルコニー床スラブSBが形成されているので、バルコニー床スラブSBは、安全な作業床となり、手摺6の取付作業等は先行実施出来、工期の画期的短縮が可能である。
また、品質面でも、予め構造設計で強度の保証されたZ筋1群を備えた均質のPCバルコニー構造体20でバルコニーBを形成するため、該PCバルコニー構造体20を採用した建築物のバルコニーBは品質面で信頼性の高いものとなり、需要者が安心して使用出来る。
また、構築方法の発明にあっては、PCバルコニー構造体20の配置部でのパネル2の上下接続は、図8(B)に示す、水平当接板9Mを両側に突出した十字ジョイント9を用い、図7(C)に示す、水平当接板9Mの厚さより若干厚いゴム板15を上下の成形セメント板2Aの板状部2C間に延展介在させて実施するのが好ましい。
この場合、ゴム板15は、上下パネル間に弾性的に挟着されて、上下パネル間の地震時等の動きを吸収するのが好ましく、水平当接板9M(標準:3mm)より若干厚いブチルゴム板15(標準:5mm)を、下方パネル2の成形セメント板上辺taの板状部2C上に延展介在させて、上方パネル2を十字ジョイント9を介して下方パネル2上に載置すれば、ゴム板15は、上下パネル間にパネル重力によって圧縮されて、上下パネル2の成形セメント板2Aの上下端辺間を密閉し、パネル2の各条溝G,G´の上下のドラフト換気が保証出来ると共に、上下成形セメント板2A相互の地震時のひび割れ損傷も防止出来る。
また、構築方法の発明にあっては、コンクリート打設に先立って、パネル2の矩形長孔H1,H2内には耐火被覆材2Eを充填して、パネル2内のZ筋1を耐火保護するのが好ましい。
この場合、耐火被覆材2Eとしては、断熱性と耐火性を兼備した、カオウール(イソライト工業(株)、商品名)や、フイブロック(積水化学工業(株)、商品名)を使用するか、現場発泡ウレタンの充填か、或いは、カオウール被覆+現場発泡ウレタン充填で実施すれば良く、成形セメント板2Aの矩形長孔H1の幅を、Z筋1の最大径、即ち、Z上端筋1U(Z下端筋1D)の径より若干大としておけば、コンクリート躯体型枠F側からパネル2の矩形長孔H1,H2内への耐火被覆材2Eの充填作用時に、成形セメント板2Aがストッパー作用を奏するので作業性が向上し、しかもZ筋1の径と矩形長孔H1の幅との若干の隙間は、地震時の成形セメント板2Aのひび割れが抑制出来る。
また、火災時には、断熱層2Bが燃焼しても耐火被覆材2EがZ筋1の加熱劣下を抑制し、バルコニーBの火災時落下が抑制出来る。
従って、構築したバルコニーBは、耐火性の強度を備えた、安全性の高いものとなる。
本発明のPCバルコニー構造体20は、工場生産で均質製品として合理的に得られ、鉄筋コンクリート造外断熱建物への外壁への付設施工は、Z筋1の突出部Z0を外壁型枠FWや居住部床スラブ型枠FA等の、コンクリート躯体型枠F内に挿入配置して、コンクリート打設するだけで、PCバルコニー構造体20が付設バルコニーBとなるため、安全な強度を備えた、均質なバルコニーBが作業性良く構築出来る。
そして、PCバルコニー構造体20は、片持ち支持形式での構築となるため、バルコニーBの先端の柱等の支持構造物が不要となり、設計の自由度の高い、且つ、美感情優れたバルコニーBが提供出来る。
また、PCバルコニー構造体20は、予め構造設計に基づいて配置したZ筋1によって、強度の保証された、品質面でも均質物が得られるため、各施工業者は、安心して使用出来、簡単な施工での、安全なバルコニーの構築が可能となり、外断熱建物のみならず、内断熱建物への適用も可能となる。
そして、図3に示す如く、Zトラス筋1Mの傾斜部1Sは、バルコニー床スラブSB側から傾斜下向して突出部Z0となり、且つ、固着部ZUがバルコニー床スラブSBと一体化しているため、該バルコニー構造体20をコンクリート外壁Wに付設固定すれば、バルコニー床スラブSBの上下厚さTBの上半部に生ずる引張り応力には、Z上端筋1Uの抗引張力とZトラス筋1Mの抗引張力が協同作用し、Z筋1がバルコニー床スラブSBの降下変位を合理的に抑制する
そして、Zトラス筋1Mの中間傾斜部1Sが突出部Z0の基部を形成するため、バルコニー構造体20は、コンクリート外壁W等の取付側で強固な剛構造支持となり、図3に示す如く、厚い断熱層2B(標準厚:75mm)を備えたパネル2(標準厚:100mm)を介在してコンクリート壁Wに付設固定しても、突出部Z0の基部に存在するZトラス筋1Mの中間傾斜部1Sが、介在パネル2内に位置し、構造力学的には、介在パネル2は、あたかも、コンクリート体に置換した剛構造体となる
従って、該バルコニー構造体20をコンクリート外壁Wに付設固定すれば、Zトラス筋1MによるZ上端筋1UとZ下端筋1D間への十分な曲げモーメント中心距離L15の付与と相俟って、バルコニー構造体20の基端面Bbでの曲げモーメントによる撓み量(標準:0.3mm以下)が極端に低減出来、バルコニー構造体20の強固な片持ち支持が可能となる
また、本発明の外断熱壁構造にあっては、通気性断熱パネル2の層が、コンクリート外壁WとPCバルコニー構造体20との間に介在しても、Z筋1のZトラス筋1Mによって通気性断熱パネル2の層が剛構造化し、従来の慣用のコンクリート外壁と鉄筋コンクリートで一体化したバルコニーの強度と損色の無い強度のバルコニーBが得られる。
しかも、通気性断熱パネル2に対しては、Z筋突出部Z0が貫通した形態であって、通気性断熱パネル2の通気機能に何ら支障を生ずることなくPCバルコニー20が付設固定出来るため、バルコニーBの存在する部位でのコンクリート外壁Wも、一般壁部同様の均斉な、通気機能及び断熱機能が発揮出来、強力に片持ち支持されたバルコニーBを備えながら、全壁面が均斉な通気性及び断熱性を備えた外断熱壁構造となり、画期的な、バルコニーBを備えた外断熱壁構造の提供が可能となる。
〔バルコニーの形状(図2)〕
図2は、実施例で形成するバルコニーBの斜視図であって、バルコニーBは、コンクリート躯体CFの耐力壁としての壁厚TWが180mmのコンクリート壁Wの外面を、厚さT1が100mmの通気性断熱パネル2で被覆張設し、通気性断熱パネル2の外面から片持ち支持形式で突設したものである。
また、バルコニーBは、図1に示す如く、予め工場で生産した、プレキャスト鉄筋コンクリート(PC)の、バルコニー構造体20の基端面Bbから延出したZ筋1の突出部Z0を、コンクリート躯体CF側の居住部床スラブSAに、コンクリート打設による一体化固着で定着支持したものであり、Z筋1は、通気性断熱パネル2の左右幅方向の中央に、各パネル2の1枚にZ筋1の1本を配置したものである。
そして、バルコニーBは、奥行きLBが1500mm、厚さTBが180mmであって、長辺先端縁には、高さT7が50mm、幅T6が150mmのパラペットPを備え、パラペットPの上面には、慣用のアングル笠木5を配置し、底板6Aに立設した手摺柱6Bを介して手摺6を配置し、バルコニーBの表面Sfには防水層3を、バルコニー基端面Bbからの立上り部にも腰水切4まで防水層3´を張設したものである。
〔PCバルコニー構造体(図1)〕
図1(A)は、PCバルコニー構造体20の斜視図であって、図1(B)は、PCバルコニー構造体20相互の接合部の縦断面図である。
1つのPCバルコニー構造体20は、図1(A)に示す如く、奥行きLB´が1310mmで、長さSWが4000mm、床スラブSBの厚さTBが180mmであって、バルコニー床スラブSBの基端面Bbからは、間隔BWが500mmで各Z筋1が突出して突出部Z0となっている。
そして、各Z筋1は、図3(B)に示す如く、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、図3(C)に示す如く、水平上辺部1U´、45°傾斜の中間傾斜部1S、水平下辺部1D´を備えたZトラス筋1Mで溶接固定一体化したものであり、寸法は、Z上端筋1Uが全長(L10)1200mm、Z下端筋1Dが全長(L12)760mmであり、中央のパネル2の厚さ(T1)の100mmを置いて、一半のZ上端筋1Uの長さL11(550mm)及びZ下端筋1Dの長さL13(330mm)のZ1部を、PCバルコニー構造体20内に埋設一体化し、Z筋1のパネル2の厚さ100mm対応の中央部ZCを含む他半のZ0部を突出させるものである。
また、パラペットPの上面には、手摺柱6Bの鞘管6Cを挿入埋設する埋込み穴H6を適宜配置し、床スラブ表面Sfの左右には、吊上用のアンカー18を穴H18に突設したものである。
〔Z筋(図3(B)、(C)〕
図3(B)は、Z筋1の全体側面図であり、図3(C)は図3(B)の要部拡大図である。
即ち、Z筋1は、引張り応力負担用のZ上端筋1Uと、圧縮応力を負担するZ下端筋1Dとを、水平上辺部1U´、中間傾斜部1S及び水平下辺部1D´を備えた屈曲形態のZトラス筋1Mで一体化したものである。
Z筋1は、片持ち支持形式のコンクリートバルコニー床スラブSBを支持する部材であり、バルコニーBが負担する固定荷重+積載荷重によって生ずる曲げ応力(圧縮応力、引張応力)に対する抵抗は、バルコニーBから居住部床スラブSAに定着する棒鋼の径と間隔によって決まり、曲げモーメントMは、M=at×ft×jで表示される。
ここで、atは、引張鉄筋の断面積、ftは、鉄筋棒鋼の許容引張応力度、jは、曲げ材の応力中心距離である。
そして、同一の鉄筋棒鋼を採用しても、鉄筋棒鋼の応力中心距離を保持するのが重要であるため、本発明にあっては、図3(B)、(C)の如く、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとを、水平上辺部1U´と中間傾斜部1Sと水平下辺部1D´とから成るZトラス筋1Mで溶接固定し、曲げ材(Z上端筋1U+Z下端筋1D)の応力中心距離L15(Z上端筋1UとZ下端筋1Dとの軸心間距離)を確保する。
また、鉄筋棒鋼の径、長さは、適用するバルコニー床スラブSBに対する経済性と性能(変位1/400以下)から決定すれば良く、例えば、図2の奥行きLBが1500mm、厚さTBが180mmの鉄筋コンクリートバルコニーBに、500mm間隔(各パネル2に1本)にZ筋1本配置の場合、Z上端筋1U及びZ下端筋1Dは、鉄筋径22mmの採用に対して、径25mmの鉄筋を採用すれば、定着長さは、Z上端筋1Uでは50mm、Z下端筋1Dでは30mm短縮出来るが、重量は1.5kg増大し、材料コストが高くなる。
勿論、25mm径の棒鋼は、強度的に64%の余裕(径22mmは55%)が生じ、バルコニーB基端部の変位では径22mmと同じ0.3mmであるが、バルコニー先端部の変位量は2.1mm(径22mmは2.7mm)、変位は1/580(径22mmは1/450)となり、強度、変位性能は向上する。
以下、使用鉄筋棒鋼の径19mm、径22mm、径25mmで図1のバルコニーBに適用する場合を試算比較すれば次のとおりである。

径19mm 径22mm 径25mm
Z上端筋1Uの全長(mm) 1300 1200 1150
Z下端筋1Dの全長(mm) 820 760 730
重量(kg/個所) 4.8 6.0 7.5
出願時価格(円/個所) 305 381 477
強度の余裕 38% 54% 64%
バルコニー先端の変位量(mm) 3.7 2.7 2.1
居住部床スラブSAと断熱層2B
との当接部の変位量(mm) 0.3 0.3 0.2
変位 1/348 1/458 1/580
尚、Zトラス筋1Mは、全て径16mmの異形棒鋼を、且つ、同一形態で採用する。
また、Zトラス筋1Mは、中間の傾斜部1Sが、図3(C)の如く、パネル2の断熱層2Bの全幅T3(75mm)に亘って剛性を付与し、力学上、断熱層2Bに、打設コンクリートと同効の剛性機能を付与し、且つ、バルコニー床スラブSBの曲げモーメントにより生ずるZ上端筋1Uの引張り応力を負担させ、Z上端筋1UとZ下端筋1D間に応力中心距離L15を付与させるものである。
従って、本発明の実施例(図2)のZ筋1は、奥行きLBが1500mmで、床スラブSBの厚さTBが180mmの床スラブSB内に、各複合パネル1枚の1本配置、即ち、500mm間隔で配置するため、図3(B)に示す如く、Z上端筋1Uとして、長さL10が1200mmで、径22mmの異形棒鋼を、Z下端筋1Dとして、長さL12が760mmで、径22mmの異形棒鋼を、Zトラス筋1Mとして、径16mmの異形棒鋼で、中間傾斜部1Sが45°傾斜で、Z字形状の高さL14が70mm、水平上辺部1U´及び水平下辺部1D´が80mmのものを用い、Z上端筋1U及びZ下端筋1Dの長さ方向中間部に、それぞれ、水平上辺部1U´をZ上端筋1Uの下面に当接して両側から溶接して固着部ZUとし、水平下辺部1D´をZ下端筋1Dの上面に当接して両側から溶接して固着部ZDとし、Z上端筋1UとZ下端筋1Dとの応力中心距離L15を92mmとしたものである。
〔PCバルコニー構造体の製作(図4)〕
図4(A)は、PC型枠の概略斜視図であり、図4(B)はPC型枠の縦断側面図であり、図4(C)は、基端面Bb成型用鋼板19B´の要部拡大正面図であり、図4(D)は、孔閉止片の斜視図である。
即ち、PCバルコニー構造体20の型枠19は、高さを水平に調整したH形鋼に鋼板のベッド19Aを敷設し、四周に鋼板19B´を立設して側枠19Bを形成し、パラペットP部には、図4(B)の如く、外方の止枠19Eは、側枠19Bの水平の平鋼19C上に、内方の止枠19E´は、ベッド19A上に支持金具19Fを立てて支持し、また、パラペットPの反対側の基端側の側枠19Bの鋼板19B´には、図4(C)に示す如く、Z上端筋1U挿入用円孔H3、Zトラス筋1Mの水平上辺部挿入用円孔H3´、Z下端筋1D挿入用円孔H4を形成し、円孔H3´からH4に連続する長方形状孔H5を切開配置しておき、型枠19内に所定の下端配筋11B,11D、上端配筋11A,11Cを配置し、Z筋1を基端側の鋼板19B´から、円孔H3,H3´,H4、長孔H5を介して所定位置に挿入し、Z筋1を型枠19内及び型枠外で、スペーサー12A,12Bによって位置保持する。
この場合、Z上端筋1Uにあっては550mm(L11)、Z下端筋1Dにあっては330mm(L13)が基端側枠の鋼板19B´より内方に突出させれば良い。
そして、上面開放の型枠19内に、各Z筋1を適切に配置保持した後、コンクリート打設し、コンクリート硬化養生後に、型枠19を分解除去すれば良い。
尚、長孔H5には、コンクリート打設前に、図4(D)に示す如き嵌合板19Gを当接して、布テープを用いて閉止し、型枠19分解時に、布テープを外して嵌合板19Gを除去し、基端側の鋼板19B´をZ筋突出部から抜去すれば良い。
〔通気性断熱パネル(図5、図6)〕
通気性断熱パネル2としては、一般壁用の単に上下左右接続配置するだけのタイプと、PCバルコニー構造体を配置するタイプとの2種類を用意する。
そして、一般壁用パネル2もバルコニー用パネル2も、基本的には、図6に示す同一の通気構造及び断熱構造を備えたものであるが、バルコニー用パネルは図5に示す如く、パネル上面からZ筋嵌入用の矩形長孔H1,H2を開削したものである。
即ち、図5(A)は、バルコニー用パネル2の、成形セメント板2A側から見た斜視図であって、図5(B)は、図5(A)の矢印B方向(断熱層2B側)からの斜視図である。
また、図6(A)は、パネル横断面図であり、図6(B)は、図6(A)の要部拡大図、図6(C)はパネル相互の左右方向接続状態説明図である。
通気性断熱パネル2は、図6(A)に示す如く、厚さT2が25mm、幅Awが490mmの成形セメント板2Aと、厚さT3が75mm、幅Bwが500mmの発泡プラスチック系断熱層2B(JIS9511の硬質ウレタンフォーム)とを層着した、厚さT1が100mmのものであり、標準サイズは、成形セメント板2Aの幅Awが490mm、高さAhが2680mmのものである。
成形セメント板2Aは、図6(A)の如く、両側の広幅a3(45mm)の肉厚部2Dと中央の広幅a4(40mm)の肉厚部2Dを備え、そして、成形セメント板の内面には深さ13mm(T5)の通気用条溝G,G´群を備えており、両側端部の条溝G及び中央肉厚部2Dの両側の条溝Gは、パネル2を上下に連結する際の十字ジョイント8,9を嵌入するために、図6(B)に示す如く、両側縁が60°で傾斜する開口幅a1が32.2mm、底部幅GBが42.8mmの断面台形である。
また、パネル2は、並列接続して壁コンクリートの外側型枠として用いるため、壁型枠組み用のセパレータ挿入用孔hsを中央に、壁コンクリート(耐力壁W)に固着する皿ボルト挿入用孔hbを両端部に備えたものである。
また、成形セメント板2Aと断熱層2Bとの層着形態は、左右方向では、図6(A)に示す如く、通気性断熱パネル2の左右連結により、各パネル2間に10mmの縦目地dy(図6(C))が形成出来るように、断熱層2Bが、成形セメント板2Aに対して、一側では10mm(d1´)入り込み、他側では20mm(d2´)突出し、上下方向では、十字ジョイント9の3mm厚の水平当接板9Mに対処するため、断熱層2Bが成形セメント板2Aに対して、下端では20mm(d1)入り込み、上端では23mm(d2)突出している。
そして、Z筋1を貫通して、PCバルコニー構造体20を支持する通気性断熱パネル2は、成形セメント板2Aの中央の、肉厚T2(25mm)で幅a4(40mm)の幅広の肉厚部2Dに、セメント板上面taから下方へ幅30mmで高さ140mmの短形長孔H1を穿設し、パネル2の断熱層2Bには、図5(B)の如く、断熱層2B上面tbより下方へ幅40mm、高さ163mmの矩形長孔H2を穿設して、通気性断熱パネル2の上面からのZ筋1の挿入を可能としている。
〔十字ジョイント(図8(A)、(B)〕
十字ジョイントは、外壁パネルの上下を接続する部材として、従来より慣用されているが、該慣用物は、パネルの上下端の嵌入孔を介してパネル相互を上下接続するだけであって、例え、通気用条溝を備えたパネルであっても、該通気用条溝を介して慣用の十字ジョイントで上下パネルを接続すれば、該通気用条溝は、十字ジョイントで閉止されて通気機能を喪失していた。
図8(A)、(B)に示す十字ジョイント8、及び十字ジョイント9は、本発明の開発過程で案出したものであり、本発明のパネル2の上下接続に採用すれば、通気性断熱パネル2の条溝Gの通気性を保証するものである。
即ち、図8(A)の十字ジョイント8は、一般壁用の通気性断熱パネル2の上下接続に用いるものであり、図8(B)は、図5(A)に示す、バルコニーB部用の通気性断熱パネル2の上下連結に用いるものである。
十字ジョイント8は、一般肉厚3mmのプラスチック成形品であって、図8(A)に示す如く、中間から両側に突出した、横目地形成用の、側板8Sと底板B8で箱形に形成した水平当接部8Mと、各側板8Sと底板B8から成る、上部パネル2の条溝Gへの嵌入用の上方垂直片8Fと、下部パネル2の条溝Gへの嵌入用の下方垂直片8F´とを、水平当接部8Mから上下に突出した十字形状の箱形態であって、上下垂直片8F,8F´全体に亘る全高縦寸法Y1が100mm、水平当接部8Mの両端間の長さX1が75mm、箱形の深さ(奥行き)ZMが11.8mmであり、水平当接部8Mの高さ(上下幅)Y2が20mm、両側の突出長X3が20mm、上方垂直片8Fの高さY3が50mm、下方垂直片8F´の高さY4が30mmである。
そして、成形セメント板2Aの通気用条溝Gに挿入する上下垂直片8F、8F´は、断面形態が、成形セメント板2Aの条溝Gの底面に当接する側板8Sの開放側端縁から側板8Sが、条溝Gの拡開角60°に整合する傾斜角度で底板B8に傾斜する台形である。
また、上下垂直片8F,8F´の側板8Sは、上下端では、嵌入をスムーズにするためのテーパー8S´を備え、且つ、両側板8S間には、上下垂直片8F,8F´の先端部を切欠き8Cで開放して、上下に空気流を貫流させるための空気連通溝GAを形成し、水平当接部8Mの各基端を補強する仕切片8Pを、上下垂直片8F,8F´の側板8S間に配置したものである。
また、上下垂直片8F,8F´の断面寸法は、側板8Sの両側開放側端縁間を37.6mmとし、底板B8側での幅を28mmとして、成形セメント板2Aの両側端及び中央肉厚部2Dの両側の条溝Gに、寸法的にゆとりを持たせて、複合パネル2の幅(横)方向微調整移動の下に嵌入可能としたものである。
また、図8(B)に示す十字ジョイント9は、図5(B)のバルコニーB部用の通気性断熱パネル2の上下連結に用いるものであって、バルコニーB部では、上下パネル2は、横目地を形成しない形態で連結するため、十字ジョイント9は、十字ジョイント8の横目地形成用の上下厚さ(上下高さ)Y2が20mmの水平当接部8Mを、厚さ3mmの水平当接板9Mに変更したものである。
即ち、十字ジョイント9は、底板B9と両側板9Sから成る箱形本体に当接板9Mを両側にX3(20mm)突出した十字形態であって、両側板9S間には、上下端を切欠き9Cで開放した、空気流を貫流させるための切開部CAを形成している。
また、十字ジョイント9は、全高Y5が、高さY3が50mmの上方垂直片9Fと、高さY4が30mmの下方垂直片9F´と厚さY2が3mmとの、計83mmであり、十字ジョイント8より小寸である。
〔バルコニー躯体の形成(図9)〕
図9(A)は、固化した下階の居住部床スラブ、及び下階のPCバルコニー上に、耐力壁用の外壁型枠FW、居住部床スラブ型枠FA及びバルコニー型枠FBを構築し、当該階のPCバルコニー構造体20を配置した状態の縦断面図であって、図9(B),(C)は、パネルとZ筋1との関係説明図であって、(B)は矢印B視図、(C)は矢印C視図である。
外壁型枠FWは、外側の型枠兼用の通気性断熱パネル2と、内側の型枠板(型枠合板10A)とを、慣用のセパレータ10Hで間隔規定して横端太(パイプ)10F及びリブ座金10Rで型締めする。
また、居住部床スラブ型枠FAは、慣用の、パイプサポート10Dで大引ききパイプ10C及び根太パイプ10Bを介して型枠合板10A´を支持し、PCバルコニー構造体20は、床スラブSBの下面に木製角材の大引きき10C´を当接し、パイプサポート10Dを用いて支持する。
外壁型枠FWとしての通気性断熱パネル2の立設は、図6(C)に示す如く、パネル2の断熱層2B相互の、左右密接形態を確保して配置する。
そして、一般壁部のパネル、即ち、上面に矩形長孔H1,H2の存在しない通気性断熱パネル、の上下連結は、図8(A)に示す十字ジョイント8を用いて、バルコニー部分のパネル、即ち、図5(A)のパネルの上下接続は、図8(B)に示す十字ジョイント9を用いて、1枚のパネル2当り、両側端の条溝Gに十字ジョイント8又は9を嵌入実施する。
即ち、パネル1枚当り、両側端の2個所に十字ジョイントを適用実施する。
バルコニー部での十字ジョイント9によるパネル2の上下連結時には、十字ジョイント9の水平当接板9M(3mm厚)より若干厚いブチルゴム板15(標準:厚さ5mm)を、下方パネル2の成形セメント板2Aの上面taの板状部2C上に貼着し、ゴム板15を上方パネル2の成形セメント板2A下面の板状部2Cとで挟む。
また、居住部床スラブ型枠FA内に、長辺方向及び短辺方向の各下端筋を配筋し、慣用の手段で結束する。
次いで、図1(A)に示すPCバルコニー構造体20を、床スラブ表面Sfに穿設した左右のアンカー用穴H18に、埋設形態で配置したアンカー18を介して、クレーン車等を用いて慣用の手段で吊上げ、配置場所に移動し、外側型枠F0として立設配置したパネル2の挿通用孔H1,H2に、PCバルコニー構造体20の基端面Bbから延出した各Z筋1の突出部Z0を嵌入して、PCバルコニー構造体20を降下し、バルコニー型枠FBに載置し、PCバルコニー構造体20の基端面Bbをパネル2のセメント板2Aに当接配置して、居住部床スラブ型枠FA内に突出するZ筋1の突出部Z0を、慣用のスペーサー12A,12Bを用いて支持する。
尚、並列配置するPCバルコニー構造体20は、配設作業性から、図1(B)の如く、隣接PCバルコニー構造体20間に、幅ds(10mm)の接合目地dBを設けて連続する。
そして、通気性断熱パネル2の挿通用孔H1,H2内に、耐火被覆材2Eとして、カオウール(イソライト工業(株)、商品名)を充填して、Z筋1をパネル2内で耐火被覆する。
この場合、現場発泡ウレタンを挿通用孔H1,H2内に充填して断熱材としても良く、そしてパネル2の上面に布テープを張着すれば、充填作業に都合が良い。
また、成形断熱材を挿通用孔H1,H2の形状に整合させ、Z筋1のZ上端筋1U、Zトラス筋1M及びZ下端筋1Dの径、及び位置と整合させて、断熱材に孔を穿設し、幅方向中央で上下方向に切断して、Z筋1を挟着する形態で挿通用孔H1,H2に断熱材を挿入、充填しても良い。
次いで、居住部床スラブ型枠FA内に、長辺方向及び短辺方向の各上端筋を配筋し、慣用の手段で結束する。
また、Z筋1に直交する長辺方向の上端筋及び下端筋とZ筋1とを結束する。
次に、外壁型枠FW、及び居住部床スラブ型枠FA内にコンクリート打設して、コンクリート固化後に型枠を解体すれば、コンクリート外壁Wが通気性断熱パネル2で一体化被覆され、且つ、通気性断熱パネル2の成形セメント板2Aの外面に、PCバルコニー構造体20がバルコニーBとして、片持ち支持で突設された建物が得られる。
そして、各パネル2の上下連結部は、一般壁部では、図7(A)の如く、十字ジョイント8の水平当接部8Mによる20mm幅の横目地dxが存在し、バルコニーB部では、図7(B),(C)の如く、十字ジョイント9の水平当接板9Mの3mm厚の継目となる。
〔バルコニーの仕上げ(図2)〕
配置したPCバルコニー構造体20の、床スラブ表面Sfに穿設したアンカー用穴H18は、アンカー18を切断して無収縮モルタルを挿入、充填して補修し、また、PCバルコニー構造体20の連結部の接合目地dBは、図1(B)に示すように、接合目地dBの下面より上方10mmの位置まで合成樹脂製のバッカー17Bを挿入、充填して、パラペットPの外側垂直面の接合目地dBも同様に深さ10mmまでバッカー17Bを挿入、充填し、床スラブ表面Sf及びパラペット上面から無収縮モルタル17Cを注入、充填する。
無収縮モルタル17Cが固化したら、深さ10mmの接合目地dBにシーリング17Aを充填する。
該バッカー17Bは、無収縮モルタル17Cの型枠材及びシーリング17Aの受材を兼用するものである。
また、パラペットPの上面に穿設する手摺支柱6Bの埋込み穴H6には、支柱6Bを接続するための鞘管6Cを配置し、予め穴H6内に備えた鉄筋棒に溶接接合で固着して、埋込み穴H6と鞘管6Cとの隙間に無収縮モルタルを挿入、充填する。
構築したバルコニーBの床スラブコンクリート表面Sfには、慣用の合成高分子ルーフィングを載置して、歩行用シート防水層3を張設し、パネル2の成形セメント板2Aのバルコニー立上り部にも、図3(A)に示す如く、d7(250mm)の立上り防水層3´を張着立設し、笠木と同様の役目の慣用の腰水切4(タイセイ商工(株)、商品番号TA−206)を配置する。
この場合、パネル2の上下連結部は、3mmの継目幅であるため、継目部には、立ち上り防水層3´の貼着が、支障無くきれいに実施出来る。
また、幅T6が150mm、高さT7が50mmのパラペットPにも、慣用の手段で、前端上部にはアングル笠木5を、上面には底板6Aに手摺柱6Bを立設し、手摺6を形成する。
従って、本発明バルコニーBは、工場生産した、均質なプレキャストバルコニー構造体20から突出させたZ筋を、コンクリート躯体CFの型枠F内に延出配置してコンクリート打設するのみで、コンクリート躯体に一体化付設出来るため、バルコニー構築の作業性が良く、しかも、通気性及び断熱性を有するパネル2の、通気機能も、断熱機能も何ら損なうことなく付設出来、Z筋1のみをパネル2に貫通した片持ち支持形態で実施するため、バルコニーBからコンクリート躯体CFへの熱橋も、外気→バルコニー床スラブSBのコンクリート→断熱性錆止め塗料1Bを塗布したZ筋→居住部床スラブSAのコンクリート→室内空気のルートのみとなり、Z筋1もパネル1枚に1本、即ち、500mm間隔配置で達成出来たため、鉄筋コンクリートの片持ち支持タイプでありながら、熱橋作用が画期的に抑制出来たものとなる。
しかも、一般壁部も、バルコニーB付設壁部も、共に、通気性を損なうことの無い、新規な、十字ジョイント8、及び十字ジョイント9で上下連結したため、片持ち支持タイプのバルコニーBを備え、熱橋作用が抑制出来、且つ、外壁が通気性、断熱性を備えた、高品質の通気性外断熱鉄筋コンクリート造建物の提供が可能となる。
本発明PCバルコニー構造体の説明図であって、(A)は全体斜視図、(B)は接続部の縦断面図である。 本発明のバルコニーの縦断斜視図である。 本発明のバルコニーの説明図であって、(A)は縦断面図、(B)は、(A)の部分拡大図、(C)は、(B)の要部拡大図である。 本発明PCバルコニー構造体の製作説明図であって、(A)はPC型枠の概略斜視図、(B)はPC型枠組立状態の縦断側面図、(C)はPC型枠の要部拡大正面図、(D)はPC型枠に採用する嵌合板の斜視図である。 本発明に用いる通気性断熱パネルの説明図であって、(A)は成形セメント板2A側からの斜視図、(B)は断熱層2B側からの斜視図である。 本発明に用いる通気性断熱パネルの説明図であって、(A)は横断面図、(B)は(A)の要部拡大図、(C)はパネル相互の並列接続状態説明図である。 本発明のパネルの上下接続状態の断面図であって、(A)は一般壁部の縦断面、(B)はバルコニー部の縦断面、(C)は(B)の部分拡大図である。 本発明に用いる十字ジョイントの斜視図であって、(A)は一般壁部用の十字ジョイントを、(B)は、バルコニー部用の十字ジョイントを示す図である。 本発明の型枠組み説明図であって、(A)は型枠構築状態の縦断面図、(B)は(A)の矢印B視のZ筋とパネルとの関係説明図、(C)は(A)の矢印C視のZ筋とパネルとの関係説明図である。 従来例図であって、(A)はPCバルコニー取付状態縦断面図、(B)はPCバルコニー取付用の定着プレートの斜視図である。
符号の説明
1 Z筋
1A 耐火塗料
1B 錆止め塗料
1D Z下端筋
1D´ 水平下辺部
1M Zトラス筋
1S 中間傾斜部
1U Z上端筋
1U´ 水平上辺部
2 通気性断熱パネル(パネル)
2A 成形セメント板(セメント板)
2B 断熱層
2C 板状部
2D 肉厚部
2E 耐火被覆材
3,3´ 防水層
4 腰水切
5 アングル笠木
6 手摺
6A 底板
6B 手摺支柱(手摺柱、支柱)
6C 鞘管
8,9 十字ジョイント
8C,9C 切欠き
8F,9F 上方垂直片
8F´,9F´下方垂直片
8M 水平当接部
9M 水平当接板
10A,10A´ 型板(型枠板)
10B 根太
10C,10C´ 大引き
10D パイプサポート
10E 縦端太
10F 横端太
10G 桟木
10H セパレータ
10R リブ座金
11 床スラブ筋
11A,11C 上端筋
11B,11D 下端筋
11E 縦筋
11F 横筋
11G 幅上筋
12A,12B スペーサー
14 タイル
15 ゴム板(ブチルゴム板)
17A シーリング
17B バッカー
17C 無収縮モルタル
18 アンカー
19 型枠(PC型枠)
19A ベッド
19B 側枠
19B´ 鋼板
19C 平鋼
19D 振止め
19E,19E´止枠
19F 支持金具
19G 嵌合板
20 PCバルコニー構造体(バルコニー構造体)
A 居住部
B バルコニー
Bb 基端面(基端)
B8,B9 底板
CF コンクリート躯体
F コンクリート躯体型枠
F0 外側型枠
F1 内側型枠
FA 居住部床スラブ型枠
FB バルコニー型枠
FW 外壁型枠
G,G´ 通気用条溝(条溝)
GA 空気連通溝
hb 皿ボルト挿入用孔
hs セパレータ挿入用孔
H1,H2 矩形長孔(Z筋嵌入孔、挿通用孔)
SA 居住部床スラブ
SB バルコニー床スラブ
Sf,Sf´ 床スラブ表面
W 外壁(コンクリート外壁)
Z0 突出部(Z筋突出部)
Z1 固定部(Z筋固定部)
ZC 中間部(Z筋中間部)
ZD,ZU 固着部

Claims (11)

  1. コンクリート外壁(W)に付設固定するプレキャストバルコニー構造体(20)であって、付設当接用の基端面(Bb)と両側辺(20S)と前辺(20F)とを備えた鉄筋コンクリートのバルコニー床スラブ(SB)が、基端面(Bb)から定間隔(Bw)で水平方向にZ筋(1)群を突出しており、各Z筋(1)は、Z上端筋(1U)とZ下端筋(1D)とを、水平上辺部(1U´)、中間傾斜部(1S)及び水平下辺部(1D´)から成るZトラス筋(1M)で固着一体化したものであり、Z上端筋(1U)とZ下端筋(1D)とを上下垂直関係を維持して、Z筋(1)の一半は、バルコニー床スラブ(SB)内での固定部(Z1)で一体化して、固定部(Z1)が、Z上端筋(1U)とZトラス筋(1M)との固着部(ZU)を含み、Z筋(1)の他半は、コンクリート躯体(CF)への付着固定用の突出部(Z0)であって、突出部(Z0)が、Zトラス筋(1M)の中間傾斜部(1S)を含んでいる、プレキャストバルコニー構造体。
  2. Z筋(1)は、Z上端筋(1U)とZ下端筋(1D)とが同径であって、Z上端筋(1U)がZ下端筋(1D)より長尺である、請求項1のプレキャストバルコニー構造体。
  3. Zトラス筋(1M)の中間傾斜部(1S)が、実質上45°傾斜である、請求項1、又は2のバルコニー構造体。
  4. 請求項1のプレキャストバルコニー構造体(20)をコンクリート外壁(W)に付設固定した鉄筋コンクリート建物の外壁構造であって、コンクリート外壁(W)は、内面に通気用の条溝(G,G´)群を縦設した成形セメント板(2A)と、断熱層(2B)とを層着した通気性断熱パネル(2)で外断熱に被覆し、プレキャストバルコニー構造体(20)は、基端面(Bb)が通気性断熱パネル(2)の成形セメント板(2A)に当接し、Z筋(1)群の突出部(Z0)が通気性断熱パネル(2)を貫通して、コンクリート躯体(CF)内で打設コンクリートにより固着一体化して片持ち支持バルコニー(B)とした、バルコニー(B)を備えた鉄筋コンクリート建造物の外断熱壁構造。
  5. Z筋(1)のZトラス筋中間傾斜部(1S)を、少なくとも、通気性断熱パネル(2)の断熱層(2B)の厚さ(T3)の全幅に亘って傾斜配置し、断熱層(2B)に剛構造機能を付与した、請求項の外断熱壁構造。
  6. 通気性断熱パネル(2)内のZ筋(1)を耐火被覆した、請求項、又はの外断熱壁構造。
  7. Z筋(1)は、通気性断熱パネル(2)内に位置する中間部(ZC)には耐火塗料(1A)を塗布し、バルコニー構造体(20)内及びコンクリート躯体(CF)内に位置する部分には、錆止め塗料(1B)を塗布した、請求項乃至のいずれか1項の外断熱壁構造。
  8. 外壁(W)を被覆する通気性断熱パネル(2)の上下接続は、PCバルコニー構造体(20)の付設固定部を含む全域が、内面に上下方向の通気連通溝(GA)を有する上下の嵌入用垂直片(9F,9F´)を備えた十字ジョイント(8,9)の、成形セメント板(2A)の上下端の条溝(G)への嵌入で接続した、請求項乃至のいずれか1項の外断熱壁構造。
  9. 内面に通気用の条溝(G,G´)群を縦設した成形セメント板(2A)の内面側に断熱層(2B)を層着した通気性断熱パネル(2)を一般壁部に、該通気性断熱パネル(2)の上面から、Z筋(1)嵌入用の矩形長孔(H1,H2)を縦設したパネル(2)を、PCバルコニー構造体(20)の配置部に、それぞれ、下方のパネル(2)に対して、内面に上下方向の空気連通溝(GA)を備えた十字ジョイント(8,9)で接続立設して外壁(W)の外側型枠(F0)とし、慣用の内側型枠(F1)とで外壁型枠(FW)を構築し、外壁型枠(FW)の上部にも慣用の居住部床スラブ型枠(FA)を連接構築してコンクリート躯体(CF)の型枠(F)を形成し、次いで、基端面(Bb)から水平にZ筋(1)群を突出したプレキャストバルコニー構造体(20)を、基端面(Bb)を成形セメント板(2A)面に当接し、且つ、各Z筋突出部(Z0)を、それぞれ各パネル(2)の矩形長孔(H1,H2)に嵌入すると共に、コンクリート躯体型枠(F)内に延出してバルコニー型枠(FB)で姿勢保持し、次いで、コンクリート躯体型枠(F)内にコンクリート打設する、バルコニー(B)を備えた鉄筋コンクリート造外断熱壁構造の構築方法。
  10. PCバルコニー構造体(20)の配置部でのパネル(2)の上下接続は、水平当接板(9M)を両側に突出した十字ジョイント(9)を用い、水平当接板(9M)の厚さより若干厚いゴム板(15)を上下の成形セメント板(2A)の板状部(2C)間に延展介在させる、請求項の構築方法。
  11. コンクリート打設に先立って、パネル(2)の矩形長孔(H1,H2)内には耐火被覆材(2E)を充填して、パネル(2)内のZ筋(1)を耐火保護する、請求項、又は10の構築方法。
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