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JP3711519B2 - 鉄筋コンクリート外断熱建物に於けるバルコニー - Google Patents

鉄筋コンクリート外断熱建物に於けるバルコニー Download PDF

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JP3711519B2
JP3711519B2 JP2002312458A JP2002312458A JP3711519B2 JP 3711519 B2 JP3711519 B2 JP 3711519B2 JP 2002312458 A JP2002312458 A JP 2002312458A JP 2002312458 A JP2002312458 A JP 2002312458A JP 3711519 B2 JP3711519 B2 JP 3711519B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄筋コンクリート造外断熱建物のバルコニー、庇、外廊下など、建物の外壁より突出した床部に関するもの(以下、本明細書中ではバルコニーと総称する)であり、より詳しくは、鉄筋コンクリート外断熱建築物の外壁面に、熱橋を最小限に抑制して付設したバルコニーに関するものであり、建築の技術分野に属するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート造外断熱建物は、コンクリート躯体の外側を断熱層で被覆するため、太陽日射の躯体への熱応力が微少となってコンクリート躯体のクラック発生を抑制すること、コンクリート躯体が空気に接触しないためにコンクリートの中性化を抑制して建物の耐久性が向上すること、更には、建物内の温度環境の変化が小さくて熱損失が少なく、居住者の快適環境を維持すると共に、結露が少なくてカビ、ダニの発生が抑制出来て健康面にも優れているため、省エネルギーの高性能建物として評価されている。
【0003】
しかし、建物より突出するバルコニー、外廊下などのコンクリート床スラブがコンクリート躯体への熱橋(ヒートブリッジ)となり易く、外部の熱環境の建物内部への伝達(熱橋)を抑制する必要があり、従来より、バルコニーコンクリート床スラブからコンクリート躯体内部への熱橋抑制手段としては、(イ)バルコニー床スラブの付設部近傍の建物内部に特別の断熱被覆を付加する手段、(ロ)バルコニー床スラブ全周面を断熱被覆する手段、(ハ)セメント板のバルコニー床支持梁とコンクリート躯体梁との継梁に熱伝導率の低いステンレス鋼を用いる方法等が提案され、実施されている。
【0004】
即ち、従来例(イ)は、図11(A)に示す如く、断熱層を外面に備えた外断熱耐力壁を貫通した形態のコンクリートのバルコニー床スラブを内部床スラブ及びコンクリート壁から一体的に突出形成し、バルコニー床スラブの設置部近傍のコンクリート躯体内部に、即ち、耐力壁内面には厚さ30mmで、内部(居住部)床スラブの表裏面に、厚さ15mmで各長さ450mm以上の現場発泡の硬質ウレタンフォームを吹付けて断熱補強し、バルコニー床スラブからの熱橋を抑制し、該断熱補強材で発生する段差30mm(壁内面では断熱補強材厚30mm、床面では断熱補強材厚15mm+保護モルタル厚15mm、計30mm)を平坦にするため、壁面にあっては、木組み、や軽量鉄骨間仕切材などの下地材を施工して石膏ボード等の仕上材で壁面段差を隠蔽し、床面にあっては、断熱材上面に保護用モルタル層を付加し、モルタル層と面一に、内部床スラブ上にコンクリートの増打ちしている。
【0005】
また、従来例(ロ)は、図11(B)に示す如く、コンクリート躯体と一体にコンクリート打設形成したバルコニー床スラブの下面及び前端面に断熱層と外装材の一体化した複合パネルを張設し、バルコニー床スラブの上面には、断熱層を配置し、断熱層上に防水層を張設し、防水層上に保護モルタルか保護コンクリートを配置している。
【0006】
また、従来例(ハ)は、図11(C)に示す如く、主として鉄骨鉄筋コンクリート造に適用しているものであって、バルコニーは鉄筋コンクリート造ではなく、コンクリート梁の内部に配置したH形鋼の鋼製鉄骨梁に適宜長さのスンレス製H形鋼の継梁をボルトで固着し、継梁からH形鋼の鋼製鉄骨梁を接続してバルコニーの構造体を形成し、該構造体上にコンクリート板の床材を載置し、バルコニー側の鉄骨梁と居住部(内部)の鉄骨梁間を熱伝導率の低いステンレス鋼で接続して、バルコニー側から内部への熱橋を抑制している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来例(イ)の手段にあっては、コンクリート躯体内部(居住部)の壁面及び床スラブ表面一部に断熱材を付加するため、コンクリートの打放し仕上げには適応出来ない。
そして、付加断熱材によって生ずる段差(30mm)の平坦化処理には工数を要し、作業が煩雑である。
【0008】
また、従来例(ロ)の手段にあっては、バルコニーの床スラブ表面を全て断熱層で被覆するため、バルコニーからコンクリート躯体内部への熱橋の防止には有効であるが、バルコニー下方の壁とバルコニー下面の断熱層の連結、バルコニー下面の断熱層とバルコニー先端部の断熱層の連結、バルコニー先端部とバルコニー床スラブ上面の断熱層の連結等、断熱層の接続部に空隙を生じないように断熱層を連結する作業が煩雑、且つ困難な作業であり、建築コスト増を招く。
更に、バルコニーに重量物、或いは椅子等の尖った物の載置使用を可能とするためには、防水層上に、更に保護モルタルや保護コンクリートの付設が必要となり、床スラブ厚さ及び使用鉄筋量の増加により、建築コスト増を招く。
【0009】
また、従来例(ハ)の手段にあっては、鉄筋コンクリート造の建物と鉄骨造のバルコニーとの異種の構造体の組合せとなるため作業性が良くない。
また、鉄骨造のバルコニーは、鉄骨梁にロックウール吹付け等の耐火被覆を施す必要があり、鉄骨梁を隠蔽するための幕板や軸天井を配置するため、建築コスト増となる。
また、継梁の存在により、型枠や断熱層の切欠が生じて作業性が良くない。
しかも、熱橋防止面でも、熱伝導率が、鉄は71.8kcal/mh℃、ステンレス鋼は12.9kcal/mh℃、コンクリートは1.4kcal/mh℃であるため、バルコニー鉄骨梁→ステンレス継梁→居住部鉄骨梁の熱伝達での熱橋(ヒートブリッジ)防止効果は小さい。
【0010】
従来例(イ)、(ロ)の如く、本発明は、上述の如き、各従来例の問題点を改善又は解決するものであり、鉄筋コンクリート造建物に付設作業性の良い鉄筋コンクリート造バルコニーを、より合理的に構築出来る手段を提供するものであって、コンクリート躯体外面の外断熱用の断熱層で鉄筋コンクリートバルコニーを完全に遮断し、外断熱断熱層を貫通する支持鋼棒群をバルコニー床スラブのコンクリート中から居住部床スラブコンクリート中に差し渡すことにより、作業性が容易で、建築費コストを低減し、且つバルコニー側からコンクリート躯体への熱伝導をバルコニーコンクリート中からコンクリート躯体内への差し渡された適数の支持鋼棒のみとして熱橋作用を抑制した、新規且つ画期的なバルコニーを提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段、及び作用】
本発明のバルコニーは、例えば図1に示す如く、断熱層1bでコンクリート層の外面を熱的に被覆したコンクリート躯体CRの外側に、鉄筋コンクリート造のバルコニー床スラブS1を突出付設して支持鋼棒2群のみによって支持した構造であって、バルコニー床スラブS1は、形成時のコンクリート打設によって基端Bbを断熱層1bと当接一体化して、断熱層1bによって建物のコンクリート躯体CRと熱的に遮断し、支持鋼棒2群は、断熱層1bの貫通孔H1を通って建物のコンクリート躯体CR内部からバルコニー床スラブS1内部を貫通支持し、且つ、バルコニー床スラブS1には支持鋼棒2群によってコンクリート躯体CRへの圧縮応力Fを付与すると共に、各支持鋼棒2先端を熱的に被覆保護した、鉄筋コンクリート造外断熱建物に於けるバルコニーである。
【0012】
尚、「バルコニー」は、バルコニー、ベランダ、張出し廊下等、建物の外周に突出した床を備えたものを意味する。
また、支持鋼棒2先端の「熱的に被覆保護」の意は、熱良導体の支持鋼棒2への外気からの直接的熱伝達を阻止するための被覆保護であって、熱不良導体材による被覆保護を意味し、典型的には、床スラブS1と同じコンクリートによる被覆保護である。
この場合、各支持鋼棒2の端部は、個別の凹部、又はバルコニーBの端部の連通凹部内で被覆処理すれば良い。
また、支持鋼棒2の材質は、プレストレストコンクリート用のPC鋼棒であり、コンクリート躯体CR側でのコンクリートとの必要接着強度を発揮させるために異形PC鋼棒(JISG3109)が好適である。
また、支持鋼棒のサイズ、配置本数は使用支持鋼棒とバルコニーの形状に基づいた強度計算により決定する。
【0013】
従って、本発明バルコニーにあっては、バルコニーBの床スラブS1が、居住部Rの床スラブS2及びコンクリート壁Wと断熱層1bで分離されており、且つ、支持鋼棒2が存在する部位でのバルコニー基端Bbと断熱層1bとは、バルコニー床スラブS1の形成時のコンクリート打設によって当接一体化し、各支持鋼棒2は外気との接触が遮断されているため、各支持鋼棒への外気熱の直接伝達が完全に阻止されて、バルコニーB側から居住部R側への熱橋作用は、バルコニーコンクリート→支持鋼棒→居住部コンクリートのみとなる。
そして、支持鋼棒2として用いた使用鋼棒の合計断面積は、従来のバルコニーのコンクリートと居住部コンクリートとの一体化タイプ(図11(A)、(B))でのバルコニーB側と居住部R側とを連結している全鉄筋の合計断面積と近似するため、本発明のバルコニーB側からコンクリート躯体CRへの熱橋作用は、コンクリートの連続を遮断した分(全伝導熱量の1/2強)だけ抑制出来、従って、本発明バルコニーBの熱橋作用は、従来の図11(A)、(B)各タイプの鉄筋コンクリート造バルコニーの1/2以下に軽減出来る。
しかも、バルコニー床スラブS1は、支持鋼棒2群の引張り作用によって圧縮応力Fの付与されたプレストレストコンクリートのスラブであるため、床スラブS1上への荷重に対しても負担力が十分であり、基端Bbでの一端支持形態ではあるが、バルコニーとしての十分な強度、及び耐久性を発揮する。
【0014】
また、本発明バルコニーは、バルコニーBも鉄筋コンクリート造であって外壁W,Awの外側に突出付設した構造ではあるが、バルコニーB側とコンクリート躯体側とは別々に独立した配筋となるため、コンクリート躯体CRの外壁W及び床スラブS2と同時並行、又は別々に型枠組み作業及びコンクリート打設が可能であって、作業計画の自由度があること、従来例ロ(図11(B))の如きバルコニー表裏面への断熱層付設作業が不要となること、従来例イ(図11(A))の如き居住部内への断熱材付加、及び付加断熱材により生ずる段差の平坦化処理が不要であることより、従来のバルコニー形成手段より形成作業性が遥かに良くて建築コストが低減出来る。
【0015】
また、バルコニーBは、建物の耐力壁W、及び窓や出入口を配置した非耐力壁Aw等の外壁面がセメント板1aと断熱層1bとの複合パネル1を備え、バルコニー床スラブS1の基端Bb(図2)が断熱層1bに当接しているのが好ましい。
この場合、外壁面W,Awの複合パネル1は、バルコニー床スラブ当接面では外装材としてのセメント板1aを除去した形態となるため、コンクリート躯体外面(外壁面W,Awの壁コンクリートWC外面)とバルコニー床スラブ基端面との間隔が断熱層1bの厚みのみと狭くなり、従って、支持鋼棒2に対する撓み抑制上有利であると共に、例え、バルコニー床スラブS1に構造上無視出来る程度の微少撓みが生じてもセメント板(外装材)1aを損傷する恐れはない。
【0016】
また、支持鋼棒2が、断熱層1bの貫通孔H1部では耐火被覆材3によって被覆保護されているのが好ましい。
この場合、耐火被覆材3としては、耐火性、断熱性に富み、鋏で切断出来る、例えばカオウール(イソライト工業(株)商品名)やフイブロック(積水化学工業(株)商品名)等の使用が好都合である。
そして、支持鋼棒2は、バルコニーの撓みに対抗する強度を常時保持しているが、貫通孔H1部で耐火被覆材3によって保護されているため、火災時の断熱層1bの燃焼に対しても、支持鋼棒2の加熱劣下による支持力の低下は防止出来、バルコニーの耐火性が保証出来る。
【0017】
また、支持鋼棒2は、バルコニー床スラブS1内ではシース15内に配置し、バルコニー床スラブS1側の先端のナット33の締着によってバルコニー床スラブS1に圧縮応力Fを付与するのが好ましい。
尚、シース15は、支持鋼棒2を挿通し、外周のコンクリートの支持鋼棒2への接触を阻止する保護管であれば良いが、0.4mm厚で内径が異形PC鋼棒等の支持鋼棒2の挿通可能な径の薄鋼板製の管が好ましい。
この場合、支持鋼棒2は、居住部床スラブS2側では、コンクリート打設と同時にコンクリートと一体化するが、バルコニー床スラブS1側では、コンクリート打設してもシース15によってコンクリートと非接触となる。
【0018】
従って、居住部床スラブS2とバルコニー床スラブS1とのコンクリート打設が同時であっても、前後であっても、支持鋼棒2のバルコニー床スラブS1内に存在する部分のみに引張応力Dの付加が可能となり、支持鋼棒2は、居住部床スラブS2内での固定に対してバルコニー床スラブS1先端でのナット33の締着による引張りにより、バルコニー床スラブS1のみへの圧縮応力Fの付加が可能となり、作業も容易となる。
【0019】
また、シース15は、断熱層1b側の当接板29の受パイプ29bと、バルコニー床スラブ先端のコンクリート凹欠部30に配置した支圧板32の受パイプ32bとに嵌入配置するのが好ましい。
図10(A)に示す如く、支圧板(32)は支鋼鋼棒2への引張応力Dを付与する際の加圧力を受ける板であり、床スラブS1が圧縮応力Fを受けてプレストレストコンクリートとなるための応力Fの作用板であるが、シース15は、一端を、当接板29の受パイプ29bに、他端を、支圧板32の受パイプ32bに、長手方向にルーズ形態で嵌挿することにより、圧縮応力Fの影響を受けないように配置出来、且つ、床スラブS1の型枠組み時の配置作業も容易である。
【0020】
また、図10の如く、支持鋼棒2先端でのナット33による締着を、バルコニー床スラブS1先端のコンクリート凹欠部30で実施し、バルコニー床スラブS1への圧縮応力F付与後に、該凹欠部をコンクリート充填するのが好ましい。
この場合、充填コンクリートは、凹欠部30内に露出形態で存在する支圧板32、突出形態のナット33及び支持鋼棒2の先端との一体化により好適に保持されるが、必要に応じて異形鋼棒を支圧板32に溶接固定して充填コンクリートの保持をすれば良い。
【0021】
そして、コンクリート凹欠部30は、パラペットPaへの配置と出来、支持鋼棒2の堅張固定により、バルコニー床スラブS1は、支持基端Bbから先端Btまでの全幅がプレストレストコンクリートと出来て強固なバルコニーとなると共に、支持鋼棒2先端の充填コンクリートによる保護によって外気から支持鋼棒2への熱橋作用も抑制出来る。
【0022】
また、断熱層1bの貫通孔H1は、図8に示す如く、支持鋼棒挿通孔H2及び受パイプ29bを有する当接板29でバルコニーB側を閉止して耐火被覆材3を充填するのが好ましい。
この場合、当接板29は、受パイプ29bをバルコニーB側として貫通孔H1を閉止する形態で予め断熱層1bに止着し、耐火被覆材3は、シース15及び支持鋼棒2を配置した後、居住部側から充填するので耐火被覆材3の完全な充填作業が容易である。
そして、室内側からの火災による断熱層1bの損傷に際しても、耐火被覆材3が支持鋼棒2の加熱劣下を保護するため、バルコニーBは耐火性となり、火災時の避難経路にも利用出来る。
【0023】
また、支持鋼棒2は、図10(A)に示す如く、バルコニー床スラブS1の上層部を貫通しているのが好ましい。
バルコニー床スラブS1は、支持鋼棒2の引張り状態での固定によりプレストレストコンクリート体となるものであり、支持鋼棒2をバルコニー床スラブS1の上層部、即ち、床スラブS1下面から支持鋼棒中心までの寸法tdより床スラブS1上面から支持鋼棒中心までの寸法tuが小となる上層部、に配置するので床スラブS1内での圧縮応力Fによって床スラブS1は若干持上り気味の圧縮状態となり、床スラブS1は、片持ち支持形態でありながら垂直荷重に対して強大な撓み抵抗を発揮する。
【0024】
また、支持鋼棒2は、図10(A)に示す如く、居住部床スラブS2内では、直交する補強筋14を備え、且つ端部に定着板35を備えているのが特に好ましい。
この場合、補強筋14は、各支持鋼棒2それぞれに短寸の異形鋼棒を溶接、又は結束すれば良く、また配筋時に、各支持鋼棒2間に亘る長寸の異形鋼棒を溶接、又は結束しても良いが、支持鋼棒2の引張応力Dの影響の特に大きな壁W部に配置するのが有効である。
【0025】
従って、バルコニー床スラブS1内での支持鋼棒2への強大な引張応力Dを支える居住部床スラブS2内の支持鋼棒2は、支持鋼棒2と補強筋14とのコンクリート接着力及び定着板35のコンクリート支持力によって有効に支持されるため、図1の如き、支持鋼棒2を居住部R側に十分な長さで配置可能な場合は勿論、バルコニー床スラブS1が居住部床スラブS2と出入口穴によって100mm程度の段差が生じ、居住部床スラブ端にドロップパネル(図示せず)を採用することにより支持鋼棒2の固定部(居住部R側配置部)が短くなる場合にも、支持鋼棒2群の強固な支持力を発揮する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明を図2(A)に示す片廊下型の共同住宅の間取りを備えた鉄筋コンクリート外断熱建物のバルコニーBや共用廊下Hwに適用する。
1戸の住宅は、建物の長辺方向が、L1(6600mm)で、短辺方向がL2(7200mm)で47.52mのスペースであり、その外、X1通からX2通の長さ(L1)が6600mm、Y1通からY2通の長さ(L3)1800mmがバルコニーBであり、X1通からX2通の長さ(L1)が6600mm、Y3通からY4通の長さ(L4)1350mmが共用廊下Hwである。
【0027】
また、バルコニーBに関しては、長辺方向のL1及び短辺方向のL3で1戸分を一体形成し、隣戸へ連続形成している。
バルコニーBの基端Bbにはコンクリート壁W及び窓、出入口用開口部Awが存在し、隣戸間にはプライバシー保護のための隔板27を配置する。
また、共用廊下Hwに関しては、階段及び建物正面玄関に連続しており、廊下Hwの基端Hbには、コンクリート壁W及び出入口用開口部Awが存在する。
尚、本発明にあっては、共用廊下Hwも、構造上はバルコニーBと同一であるので、以下、バルコニーBの実施態様例として詳述する。
【0028】
〔バルコニーBの形状(図1)〕
図1に示す如く、バルコニーBの基端Bbの厚さT3は250mmで先端厚T4は200mmで、パラペットPaの高さT5及び幅Pwは150mmであり、バルコニー床スラブS1は中央から先端へと厚さを減少し、コンクリートの重量も軽減する。
また、パラペットPaには、慣用の笠木21、底板24b及び手摺柱24aを介した手摺24を配置する。
また、床スラブS1上及び基端立上り部には慣用の防水層20を配置する。
【0029】
〔複合パネル(図3)〕
複合パネル1は、図3に示す如く、外装材としての、厚さT1が25mmで通気用の条溝を備えた押出成形セメント板1aと、厚さT2が75mmの発泡プラスチック系断熱層(JISA9511の硬質ウレタンフォーム)との接着一体化積層品であり、標準サイズが幅(S)490mm、高さ(h1)2880mmであり、並列接続して壁コンクリートの外枠として用いるため、壁型枠組用のセパレータ挿入孔を中央に、壁コンクリート(耐力壁)に固着する皿ボルト挿入用孔を両端部に備えたものである。
【0030】
そして、図3のパネル1は、図2(A)のY2通、Y3通に配置するパネル、即ち、バルコニーBの床スラブS1と当接するパネルであり、該パネル1は、図10(A)に示す如く、上部ではバルコニーの床スラブS1に当接するため、パネル上端よりd1(265mm)を、下部ではバルコニー床スラブS1上面の防水層20処理のため、パネル下端よりd2(200mm)を、断熱層1bのむき出しとする。
【0031】
〔外壁(図2)〕
外壁のコンクリート壁(耐力壁)Wの壁量(長さ、厚さ)及び配置形態は建物の設計により決まるものであるが、コンクリート壁Wは、壁厚Twが180mm厚(最上階は150mm)の鉄筋コンクリート造で、鉄筋は10mm径の異形鋼棒の縦横組みのダブル(複筋)で配筋する。
バルコニー床スラブS1(共用廊下床スラブS3)は、居住部床スラブS2内に定着した支持鋼棒2群により保持され、外壁の耐力壁Wは居住部床スラブS2の荷重(固定荷重、積載荷重)や応力を基礎に伝達するものであり、従って、支持鋼棒2の配置位置は耐力壁Wの位置に影響されない。
即ち、外壁の非耐力壁(開口部)Awにあっても、居住部床スラブS2からバルコニー床スラブS1へと支持鋼棒2を突出配置する。
【0032】
〔バルコニー躯体の形成〕
イ.〔コンクリート壁Wの形成〕
図5は、固化した下階のバルコニー床スラブS1、及び居住部床スラブS2上にコンクリート壁型枠を立設した状態の断面図である。
まず、固化床スラブS1,S2で挟着形態の下階断熱層1b´と位置合わせしてバルコニー側に桟木(幅50mm、厚さ25mm)4aをバルコニー床スラブS1の表面Sfにコンクリート釘打ちし、慣用のセパレータ5a、Pコン5b、KPコン5c、フォームタイ6の型枠金物を取付けた複合パネル1を、断熱層1bを桟木4aに当接して立設し、チェーンで仮固定する。
【0033】
また、複合パネル1の下部のセメント板1aの欠如部d2には、桟木4bを断熱層1bに当接配置し、パネル中間部にはパイプ(横端太)8aを当接し、パネル上部には、壁型枠とバルコニーBの型枠とを固定する桟木4cの下部に縦桟木4dを配置し、該縦桟木4dにパイプ(横端太)8aを当接し、慣用のリブ座金9をフォームタイ6に嵌挿してナット10によりパイプ(横端太)8aを固定し、複合パネルの外型枠を形成する。
【0034】
次に慣用の壁鉄筋の配筋組立てを行い、内側の壁型枠を組立てる。
内側の壁型枠は、桟木4a´をコンクリート壁Wの位置に符号して床スラブ表面Sf´にコンクリート釘で固定し、予め型枠合板7bの上下に桟木4e,4c´を配置した型枠パネルを桟木4a´に載置して4eと4a´とを釘固定する。立設した型枠パネルの型枠合板7bより突出したPコン5bのネジにフォームタイ6を締着固定し、パイプ(縦端太)8bを型枠に当接立設し、外側(バルコニー側)型枠組立て同様に、パイプ(横端太)8a、リブ座金9を用い、フォームタイ6にナット10を締着し、パイプ8a,8bを固定し内型枠を形成する。
【0035】
ロ.〔床スラブ型枠の形成(図5、図6)〕
床スラブ型枠は、パイプサポート11を約1.2m間隔で床スラブS1,S2表面に立設し、パイプサポート11の上部にパイプ(大引)8cを載置し、次いで、パイプ(大引)8cに間隔30cmでパイプ(根太)8dを載置配列し、パイプ(根太)8dに型枠合板7a(バルコニー側)、7a´(居住部側)を載置し、桟木4c,4c´及びパイプ(大引)8cに配置した桟木4f,4f´(図6)を介して釘打ち固定し、パラペットPaのコンクリート止枠18aを桟木4f´に釘打ち固定して床スラブ型枠を形成する。
次いで、床スラブ型枠上に、居住部R、バルコニーBの順で床スラブ筋を配筋する。
【0036】
ハ.〔支圧板32の取付け(図7、図9)〕
図7(A)は、凹欠型枠31のパラペット内への配置状態を示す水平断面図であり、図7(B)は凹欠型枠31の斜視図である。
支圧板32は、図9(A)に示す如く、肉厚が12mmで、1辺100mmの正方形鋼板であり、中央には支持鋼棒2の挿通孔H2を、四隅に釘孔H4を穿設し、内面中央部には、2mm厚で内径34mmの鋼管を40mm突出形態で挿通孔H2外周に溶接固定して受パイプ32bを付設し、外面上部より挿通孔H2の内周面に開口する10mm径の斜孔H5を穿孔したものである。
【0037】
支圧板32の取付けは、図7(B)に示す如く、両側側板31a、下部に支持鋼棒挿通孔H2を有する前板31b、及び底板3cによって形成した高さ(30h)が275mm、長さ(30w)が200mm、幅(30d)が85mmの凹欠型枠31を作成し、図7(A)に示す如く、シース15の先端15tを受パイプ32bに挿入して凹欠型枠31の前板31bに釘打ち固定し、凹欠型枠31を、図6の如く、コンクリート止枠18aに上端を揃えて釘打ち固定し、桟木19bで止枠18aと型枠18bとを釘打ち固定する。
また、止枠18aの凹欠型枠対応位置には凹欠型枠31内でのナット33操作用の開口H18を設ける。
【0038】
ニ.〔当接板29の取付け(図8、図9)〕
当接板29としては、図9(B)に示す如く、塩化ビニル系樹脂により、2mm厚、径100mmで中央に支持鋼棒挿入用孔H2を備えた円板29aに、3.1mm厚で内径31mmの塩化ビニル系樹脂製の受パイプ29bを40mm突出した形態で孔H2の外周に接着固定したものを準備する。
そして、図8の如く、シース15の基端15bを受パイプ29bに嵌入して円板29bを断熱層1bに貫通孔H1を閉止する形態に止着する。
【0039】
ホ.〔バルコニー床スラブ下端筋の配筋(図5)〕
バルコニーBの床スラブS1の配筋組立ては、順次、短辺方向の下端筋12a、長辺方向の下端筋12b、長辺方向の上端筋13b、短辺方向の上端筋13aの順で下部から組み上げる。
即ち、短辺方向下端筋12aは、Y2側(基端側)に床スラブ基端Bbと支持鋼棒2との補強のための長さ200mmの屈曲アンカー部12a´を、Y1側にパラペットPaの縦筋兼用の長さ300mmの屈曲アンカー部(図示せず)を備えた13mm径の異形鋼棒であって、短辺方向下端筋12aを間隔200mmでアンカー部を上向きに配筋し、次に両端に長さ200mmの屈曲アンカー部(図示せず)を備えた10mm径の異形鋼棒の長辺方向下端筋12bを間隔200mmでアンカー部を上向きに配筋し、下端筋12a,12bを針金結束する。
【0040】
ヘ.〔支持鋼棒2の配置(図4、図6、図10)〕
支持鋼棒2は、図9(C)に示す如く、径23mm、長さL10がバルコニーBにあっては2905mm、共用廊下Hwにあっては2455mmの異形PC鋼棒(JISG3109)であり、PC鋼棒の竹節状の突起部2aがナット締着用のネジ山である。
配置形態は、図4に示す如く、X1通からX2通までの長さL1(6600mm)に等間隔L13で12本の支持鋼棒2を配置する。
【0041】
図6は、支持鋼棒2の配置状態を示す縦断側面図であって、シース15は、バルコニーB先端の薄肉部でも、tu(上部寸法)=1/3tu(下部寸法)前後に配置する。
そして、支持鋼棒2の取付けは、予め、凹欠型枠31に固定した支圧板32の受パイプ32bにシース(薄鋼板製)15の先端15tを挿入し、次いでシース15の基端15bに当接板29の受パイプ29bを嵌合して当接板29を断熱層1bに貫通孔H1を閉止する形態に位置合せして接着固定しておく。
この場合、シース15の管の長さは、支圧板32と当接板29間寸法より10〜15mm短くし、嵌合配置を容易にする。
【0042】
支持鋼棒2は、居住部R側より、断熱層1bの貫通孔H1→当接板29の挿入孔H2→シース15内→支圧板32の挿入孔H2→凹欠型枠31の挿入孔H2へと挿通して先端がコンクリート止枠18aより30mm内側の位置まで挿入し、居住部床スラブS2内に長さL12(1150mm以上)を配置し、配筋支持用の慣用のスペーサー28でシース15及び支持鋼棒2の適所を支承保護する。
そして、コンクリートのシース15内への侵入を阻止するために、当接板の受パイプ29b及び支圧板の受パイプ32bとシース15との接合部に接着テープ(ビニルテープ)を巻く。
【0043】
次に、コンクリート止枠18aに穿設したナット操作用の開口H18(80mm径の孔)を介して前板31bより50mm前後突出した形態の支持鋼棒2の先端にナット33を締着し、ナット33と支圧板32とで凹欠型枠31の前板31bを挟着して支持鋼棒2の位置調整及び位置保持をする。
そして、居住部R側では、断熱層1bの貫通孔H1内の支持鋼棒外周に、耐火、耐水、断熱、吸音、遮音機能を具備するブランケット状の繊維系不燃材(商品名カオウール)を耐火被覆材3として充填する。
また、居住部R側での支持鋼棒には、図10に示すように、断熱層1b寄りの位置に直交補強筋14を差渡し状に上下に配置して結束し、端部には定着板としての座金35をナット34により固定する。
【0044】
ト.〔バルコニー床スラブ上端筋の配筋〕
次に、バルコニーBの床スラブS1上端筋13として、両端に長さ200mmの屈曲アンカー部(図示せず)を備えた10mm径の異形鋼棒の長辺方向上端筋13bを間隔200mmでアンカー部を下向きに配置し、次に、Y2通側(バルコニー基端側)に長さ200mmの屈曲アンカー部13a´(図5)を備えた13mm径の異形鋼棒の短辺方向上端筋13aを200mm間隔に配筋し、長辺方向上端筋13bの下方に適宜高さのスペーサー(図示せず)を配置し、上端筋13の高さを保持して上端筋13a,13bを結束維持する。
また、短辺方向下端筋12aと型枠合板7aとの間には、慣用のスペーサーブロック(図示せず)を挿入して鉄筋の位置を保持する。
【0045】
チ.〔床スラブS1の形成〕
次に、図6に示す如く、パラペットPa部の型枠18bを適宜間隔(標準900mm)に配置した支持金物(図示せず)によって床スラブS1下面の型枠7aと固定し、桟木19bでパラペットの幅を確保する。
また、複合パネル1の断熱層1bの上端辺に、幅16w(200mm)の型枠合板16を、断熱層1bから、居住部R側には15mmを、バルコニーB側には110mm突出させて載置し、型枠合板16を適宜間隔(標準:900mm)に配置した支持金具17によって床スラブS1下面の型枠合板7aと固定する。
そして、型枠合板16と型枠18bとを桟木19aで釘打ち固定し、パラペットPa部の型枠18bの姿勢を保持する。
【0046】
そして、居住部R側床スラブS2型枠、壁型枠、及びバルコニー床スラブS1型枠内にコンクリート打設し、居住部R側床スラブS2にあっては、上端の型枠合板16を表面Sf´の規定定規とし、バルコニーB側床スラブS1にあっては、型枠合板16の下面を床スラブ表面Sfの定規としてコンクリートを鏝仕上げし、バルコニー床スラブS1の表面Sfを居住部R床スラブS2の表面Sf´より段差d3(図4(A)、標準:11mm)保って形成する。
【0047】
即ち、型枠合板16の使用により、複合パネル1の上端の断熱層1b端面へのコンクリート付着を阻止し、上方複合パネル1の立設が居住部床スラブS2のコンクリート不陸に影響されないようにする。
また、パラペットPaも、バルコニー床スラブS1の型枠形成と同時に、図6に示す如く、コンクリート止枠18a、型枠18b及び桟木19a、桟木19bで型枠組みし、バルコニー床スラブS1へのコンクリート打設により形成する。
【0048】
リ.〔支持鋼棒2への応力付与(図10)〕
コンクリート打設後、支持鋼棒2先端に締着したナット33を取外し、止枠18a及び凹欠型枠31を取外す。
次に、躯体CRのコンクリートの圧縮強度が設計基準強度に到達したのを確認し、支持鋼棒2の先端に再度ナット33を締着して、予め構造計算による位置までレンチを用いてナット33を締着し、支持鋼棒2に引張応力Dを負荷する。
次に、凹欠部30の支圧板32の斜孔H5よりモルタルを注入してシース15と支持鋼棒2との隙間(空間)にモルタル26を充填し、パラペットPaのコンクリート凹欠部30の外面を閉ざす形態に型板(図示せず)をコンクリート釘で固定し、凹欠部30内にコンクリートを打設して支持鋼棒2とナット33との締着部をコンクリートで埋設保護する。
【0049】
〔バルコニーBの仕上げ〕
図1、図10に示す如く、複合パネル1の下部の高さd2(200mm)のセメント板1a欠如部の断熱層1bに、15mm厚のラスモルタル23を塗布し、モルタル23の乾燥後に、モルタル23と、コンクリート打設時に金鏝仕上げした床スラブコンクリート表面Sfにアスファルトプライマーを塗布し、アスファルトルーフィングを載置して歩行用アスファルト防水層20を形成する。
勿論、パラペットPaの立上り部及び上端辺も同様に防水層を形成する。
【0050】
パラペットPa上端辺には、慣用の防水層の押え、及び仕上見切材の笠木21を載置する。
また、複合パネル1の立上り防水層20の上端にも、笠木と同様の役目を成す水切金具22を配置する。
次いで、パラペットPaの上端辺には、後付けアンカー(図示せず)でパラペットPaに固定した底板24bを介して支柱(手摺柱)24aを立設し、手摺24を設置する。
また、バルコニー床スラブS1の下面の複合パネル1との空間にはシーリング25aを、水切金具22と複合パネル1のセメント板1a下端との空間にはシーリング25bを充填する。
また、バルコニーBにあっては、各戸の境界にプライバシー保護、及び緊急避難用の隔板27を配置する。
【0051】
〔実施例効果〕
得られるバルコニーBにあっては、使用した計12本の支持鋼棒2の断熱層1b貫通部での合計断面積が、同一バルコニーを従来例イ(図11(A))、ロ(図11(B))で形成する場合のバルコニー側から居住部側へ連通する配向鉄筋(連通床スラブ筋)の合計断面積の略半分以下(片持スラブでは35〜45%となる)と出来ること、バルコニー床スラブS1のコンクリートと建物コンクリート躯体とを、75mm厚の硬質ウレタンフォーム断熱層1bで完全遮断したことにより、熱橋作用は従来例イ(図11(A))、ロ(図11(B))のもののコンクリート打ち放しバルコニーの1/2以下に軽減出来る。
【0052】
また、バルコニー床スラブS1は、コンクリート打設形成のみで形成し、建物のコンクリート躯体CRとは熱的に遮断されたバルコニーBとなるため、その後の、例えば従来例イでのコンクリート躯体内側での断熱材付与、従来例ロ(図11(B))でのバルコニー全周面への断熱層付与等の熱橋抑制対策が不要であり、バルコニーBの形成は、プレストレストコンクリート化の工数を勘案しても、従来例イ、ロよりも工数が遥かに少なく、且つ、従来例イ、ロのバルコニーよりも遥かに低コストで形成出来る。
【0053】
また、シース15の配置や支持鋼棒への耐火被覆材3の付与作業はあるものの、シース15の配置及び支持鋼棒2の配置はバルコニーB及び居住部Rへのコンクリート配筋時に施工出来、バルコニー床スラブS1の型枠組み、配筋、コンクリート打設が、建物コンクリート躯体側(耐力壁W,非耐力壁Aw及び居住部床スラブS2)と同時並行的に実施出来、従来のバルコニーの最も作業性の良い図11(A)(従来例イ)でのコンクリート打ち放し状態までと略同等の作業性で遂行出来る。
【0054】
また、支持鋼棒2は、バルコニー床スラブS1の上面Sfからスラブ厚の略1/3の上層部に配置するため、床スラブS1のプレストレスト化は中間から上層部により作用することとなり、バルコニー床スラブS1は若干持上り気味の圧縮変形となり、強大な抗撓み性を内在し、しかも、居住部R側の補強筋14及び定着板29によって支持鋼棒2は、構造計算どおりの床スラブS1への圧縮応力を長期に亘って持続する。
従って、バルコニー床スラブS1は、十分な強度及び耐久性を発揮する。
【0055】
また、シース15の配置も、支圧板32及び当接板29を用いることと、シース15の長さを支圧板と当接板との間隔寸法より若干短くしたことにより、両端の受パイプ32b,29bへの嵌入も容易である。
そして、支持鋼棒2の配置は、当接板29を予め断熱層1bのバルコニー側に貼着し、支圧板32を予め凹欠型枠31に配置した後、居住部R側からシース15内を貫通挿入するため、作業が容易であると共に、耐火被覆材3(カオウール)の充填も、支持鋼棒2のナット33による凹欠型枠31への位置固定状態下での当接板29面への居住部Rからの簡単な押込み手作業で容易に実施出来、支持鋼棒2への居住部R側での補強筋14の配置作業や、定着板35のナット34での止着作業も、支持鋼棒2が、位置固定された状態での作業であるため容易である。
【0056】
〔その他〕
本発明バルコニーB及び共用廊下Hwを付設する外壁面のうち、耐力壁W以外の開口部を有する非耐力壁Aw部は、耐力壁W同様に複合パネル1と壁コンクリートWCで形成しても良いが、本出願人等の所有する特許第2999980号の断熱複合パネルのみの帳壁とし、断熱層を耐力壁Wの断熱層1bと面一に配置利用するのが好ましく、この場合は非耐力壁Aw部は、もはや壁コンクリートWCが存在せず、従って外壁Aw部での壁型枠組み、及びコンクリート打設が不要となり、建築施工が合理化出来る。
また、支持鋼棒2の配置位置保持を、実施態様例ではスペーサー28を用いたが、居住部R側では支持鋼棒2を、バルコニーB側ではシース15を、上端筋13から針金で吊下げて保持固定しても良い。
また、実施態様例では、各支持鋼棒2を各凹欠部30内で処理したが、凹欠型枠31を各支持鋼棒端に亘る長尺型枠(図示せず)とすれば、支持鋼棒2先端への引張応力Dの付与、及びコンクリート被覆保護が合理化出来、充填打設コンクリートの脱落防止のための凹欠部30内への配筋作業も容易となる。
【0057】
【発明の効果】
本発明バルコニーBは、鉄筋コンクリート造外断熱建物から突出形態の鉄筋コンクリート造バルコニーでありながら、バルコニー床スラブS1をコンクリート躯体CRと外壁の断熱層1bで熱的に完全遮断し、バルコニーBの形成時のコンクリート打設によって基端Bbと断熱層1bとを当接一体化して支持鋼棒2群の外気との接触を完全に遮断しているため、バルコニー床スラブS1から建物コンクリート躯体CRへの熱橋は、外気熱の直接伝達の阻止された各支持鋼棒2のみとなって、大幅に抑制軽減出来、鉄筋コンクリートバルコニーBの形成後は、何ら熱橋防止処置を施す必要がなく、建物コンクリート躯体内部の壁及び床は、コンクリート打ち放しの状態で使用に供することが可能となる。
【0058】
また、バルコニー床スラブS1と建物コンクリート躯体とは、単に支持鋼棒2のみで連結するだけであって、バルコニーB側の配筋と建物躯体(居住部)側の配筋の連続性が無いため、バルコニーB側の型枠組み、配筋、コンクリート打設作業が、建物コンクリート躯体CRのそれと同時並行的にも、別作業としても遂行可能となり、鉄筋コンクリート造バルコニーの建築の作業性が良い。
そして、支持鋼棒2の配置形態、配置本数は、構造計算に基づいて自在であるため、片持ちスラブ形態でさえあれば、連続したバルコニーや、床スラブが突出した庇、及び外廊下等への採用も自在である。
【0059】
しかも、バルコニー床スラブS1は、支持鋼棒2群によってプレストレストコンクリート体となっているため、撓み抗力が大で、十分な積載負荷抗力を備えた耐久性のあるバルコニーを提供する。
従って、本発明は、耐力壁Wを含む外壁の配置形態と、支持鋼棒の材料、寸法の選択とも併せ、機能上からも、美観上からも建物の設計の自由度が大となり、需要者(建築主)の要望に応えたバルコニー付住宅の提供を、しかも低コストでの提供を可能とする、極めて実用性の高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明バルコニーの一部切欠斜視図である。
【図2】本発明実施例建物の説明図であって、(A)は間取平面図、(B)は縦断側面図である。
【図3】本発明実施例建物に用いる複合パネルの一部切欠斜視図である。
【図4】実施例の支持鋼棒2の配置平面図である。
【図5】本発明実施例の型枠組みの一部切欠縦断面図である。
【図6】図4のB−B線断面での型枠組み説明図である。
【図7】図6のA部説明図であって、(A)は平面図、(B)は凹欠型枠31の斜視図である。
【図8】図6のB部拡大図である。
【図9】本発明の実施例使用部材説明図であって、(A)は支圧板の斜視図、(B)は当接板の斜視図、(C)は支持鋼棒の側面図、(D)は支持鋼棒の断面図である。
【図10】本発明のバルコニーの説明図であって、(A)は一部切欠縦断面図、(B)は(A)の矢印B視図である。
【図11】従来例説明斜視図であって、(A)は従来例イを、(B)は従来例ロを、(C)は従来例ハを示す図である。
【符号の説明】
1:複合パネル、 1a:セメント板、
1b,1b´:断熱層、 2:支持鋼棒(支持棒)、
3:耐火被覆材、
4a,4b,4c,4d、4e,4f,4f´:桟木、
5a:セパレータ、 5b:Pコン、
5c:KPコン、 6:フォームタイ、
7a,7a´,7b:型枠合板、
8a,8b,8c,8d:型枠パイプ(端太パイプ)、
9:リブ座金、 10:ナット(型枠用ナット)、
11:パイプサポート、 12:下端筋(下端配筋)、
12a:短辺方向下端筋、
12a´,13a´:屈曲アンカー部、 12b:長辺方向下端筋、
13:上端筋(上端配筋)、 13a:短辺方向上端筋、
13b:長辺方向上端筋、 14:補強筋、
15:シース、 16:型枠合板、
17:支持金具、
18a:コンクリート止枠(型枠)、 18b:型枠、
19a,19b:桟木、
20:防水層、 21:笠木、
22:水切金具、 23:モルタル(ラスモルタル)、
24:手摺、 24a:手摺柱、
24b:底板、 25a,25b:シーリング、
26:モルタル(グラウト)、 27:隔板、
28:スペーサー、 29:当接板(円板)、
29b:受パイプ、
30:コンクリート凹欠部(凹欠部)、 31:凹欠型枠、
32:支圧板、 32b:受パイプ、
33,34:ナット、 35:定着板(座金)、
B:バルコニー、 Bb:基端(バルコニー基端)、
Bt:先端(バルコニー先端)、
CR:コンクリート躯体、 H1:貫通孔(孔)、
H2:挿通孔(挿入用孔)、 H5:斜孔、
H18:開口、 Hw:共用廊下、
R:居住部、
S1:バルコニー床スラブ(床スラブ)、
S2:居住部床スラブ(床スラブ)、 Sf,Sf´:床スラブ表面、
W:コンクリート壁(耐力壁)、
Aw:非耐力壁(窓、出入口開口部)

Claims (9)

  1. 断熱層(1b)でコンクリート層の外面を熱的に被覆したコンクリート躯体(CR)の外側に、鉄筋コンクリート造のバルコニー床スラブ(S1)を突出付設して支持鋼棒(2)群のみによって支持した構造であって、バルコニー床スラブ(S1)は、形成時のコンクリート打設によって基端(Bb)を断熱層(1b)と当接一体化して、断熱層(1b)によって建物のコンクリート躯体(CR)と熱的に遮断し、支持鋼棒(2)群は、断熱層(1b)の貫通孔(H1)を通って建物のコンクリート躯体(CR)内部からバルコニー床スラブ(S1)内部を貫通支持し、且つ、バルコニー床スラブ(S1)には支持鋼棒(2)群によってコンクリート躯体(CR)への圧縮応力(F)を付与すると共に、各支持鋼棒(2)先端を熱的に被覆保護した、鉄筋コンクリート造外断熱建物に於けるバルコニー。
  2. 建物の外壁(W,Aw)がセメント板(1a)と断熱層(1b)との複合パネル(1)を備え、バルコニー床スラブ(S1)の基端(Bb)が断熱層(1b)に当接している請求項1のバルコニー。
  3. 支持鋼棒(2)は、断熱層(1b)の貫通孔(H1)部では耐火被覆材(3)によって被覆保護した、請求項1又は2のバルコニー。
  4. 支持鋼棒(2)は、バルコニー床スラブ(S1)内ではシース(15)内に配置し、バルコニー床スラブ(S1)側の先端のナット(33)の締着によってバルコニー床スラブ(S1)に圧縮応力(F)を付与した、請求項1乃至3のいずれか1項のバルコニー。
  5. シース(15)は、断熱層(1b)側の当接板(29)の受パイプ(29b)と、バルコニー床スラブ先端のコンクリート凹欠部(30)に配置した支圧板(32)の受パイプ(32b)とに嵌入配置した請求項4のバルコニー。
  6. 支持鋼棒(2)先端でのナット(33)による締着を、バルコニー床スラブ(S1)先端のコンクリート凹欠部(30)で実施し、バルコニー床スラブ(S1)への圧縮応力(F)付与後に、該凹欠部をコンクリート充填した請求項4又は5のバルコニー。
  7. 断熱層(1b)の貫通孔(H1)は、支持鋼棒挿通孔(H2)及び受パイプ(29b)を有する当接板(29)でバルコニー(B)側を閉止して耐火被覆材(3)を充填した、請求項1乃至6のいずれか1項のバルコニー。
  8. 支持鋼棒(2)は、バルコニー床スラブ(S1)の上層部を貫通している、請求項1乃至7のいずれか1項のバルコニー。
  9. 支持鋼棒(2)は、居住部床スラブ(S2)内では、直交する補強筋(14)を備え、且つ端部に定着板(35)を備えている、請求項1乃至8のいずれか1項のバルコニー。
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