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JP4194672B2 - アクリルインサート成形品とその製造方法、インサート成形用多層フィルム - Google Patents

アクリルインサート成形品とその製造方法、インサート成形用多層フィルム Download PDF

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JP4194672B2 JP15805997A JP15805997A JP4194672B2 JP 4194672 B2 JP4194672 B2 JP 4194672B2 JP 15805997 A JP15805997 A JP 15805997A JP 15805997 A JP15805997 A JP 15805997A JP 4194672 B2 JP4194672 B2 JP 4194672B2
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、成形同時絵付け品、とくに真空成形加工により製造されているパネルや計器等の自動車内装部品、自動車外装部品等の用途に用いられるアクリルインサート成形品とその製造方法、インサート成形用多層フィルムに関する。以下、フィルムを金型内に入れて成形樹脂と一体化接着させることを基本とする工法を「インサート成形」とする。
【0002】
【従来の技術】
従来のアクリルインサート成形品を製造するには、次のような方法がある。
(1)絵柄層を印刷した厚み約150μmのアクリルフィルムからなるインサート成形用フィルムを、真空成形型を用いて必要部分を三次元形状に加工した後、断裁型を用いて打ち抜き加工して必要部分を切り離し、三次元形状のアクリルフィルムをインサート成形用金型のキャビティに装着し、型閉めしてキャビティに成形樹脂を射出し、樹脂成形品の成形と同時にアクリルフィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させる方法がある。
【0003】
(2)厚み約150μmのアクリルフィルム、絵柄層、補強シート(成形樹脂に接着するもの)を積層した多層フィルムを、真空成形により必要部分を三次元加工した後、打ち抜き加工して必要部分を切り離し、三次元アクリルフィルムをインサート成形用金型のキャビティに装着し、型閉めしてキャビティに成形樹脂を射出し、樹脂成形品の成形と同時に多層フィルムの補強シート側に成形樹脂を一体化接着させる方法がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、(1)では、完成品の歩留まりや生産効率が悪かった。
つまり、従来のインサート成形用フィルムは腰が弱く容易に変形しやすい。
よって、真空成形型や断裁型、インサート成形用金型に挿入する際に、すぐ撓んでしまい型内で位置決めしにくい。このため、位置決めに時間がかかるとともに、絵柄が位置ズレした完成品が得られやすかった。
また、従来のインサート成形用フィルムは重量が小さいので安定感がない。よって、真空成形型や断裁型、インサート成形用金型内で、一旦位置決めされても型の振動などによりフィルムの位置ズレが起こりやすかった。このため、位置決めに時間がかかるとともに、絵柄が位置ズレした完成品が得られやすかった。
また、従来のインサート成形用フィルムは厚みが薄い。よって、断裁する際に、断裁型の刃と刃の隙間にアクリルフィルムを挟み込んでしまい易いため、アクリルフィルムの切断不良が起こっていた。また、三次元加工する際の真空成形時に破れや伸びムラが起こりやすかった。このため、絵柄の破れや変形、フィルムの端部にギザギザのある完成品が得られやすかった。
また、従来のインサート成形用フィルムは形態保持性が小さい。よって、仮にアクリルフィルムを三次元形状に加工できたとしても、インサート成形用金型のキャビティに移送する際に、型崩れしやすかった。このため、アクリルフィルムを移送しにくく、インサート成形用金型のキャビティに装着しにくかった。
【0005】
また、(2)ではインサート成形用フィルムが補強シートを有するため、ある程度の腰、重量、形態保持性を有し、前記(1)のような問題は起こりにくいものの、アクリル表面本来の艶や質感が損なわれたインサート成形品ができ易くなる。
つまり、アクリルフィルムはデリケートな材質であるため、真空成形型や断裁型の型表面、さらにはインサート成形用金型のキャビティ形成面の金属表面に直接密着させると、型表面の微細な凹凸の押付けや摩擦等により跡形や傷が付いたり、ホコリやゴミを拾うなどしてアクリルフィルムに微細な凹凸やホコリなどが付くためである。
【0006】
この発明は上記の欠点を解決し、アクリルフィルムの真空成形型等への挿入時に位置ずれ等しないようにしたアクリルインサート成形品の製造方法とアクリルインサート成形品、インサート成形用多層フィルムを提供することを目的とする。
【0007】
この発明のインサート成形品の製造方法は、上記目的を達成するために、保護フィルム上に、保護フィルムから剥離可能なアクリルフィルム、印刷によって形成された絵柄層が少なくとも積層された厚みが200μm〜1000μmの多層フィルムの必要部分を三次元形状に加工するとともに切り離し、三次元多層フィルムをインサート成形用金型のキャビティに装着し、型閉めしてキャビティに成形樹脂を射出し、樹脂成形品の成形と同時に三次元多層フィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させた後、樹脂成形品を金型から取り出し、保護フィルムを剥離することを特徴とするものである。また、この発明のインサート成形用多層フィルムは、上記目的を達成するために、厚み50μm以上のアクリルフィルムの片面に印刷によって絵柄層、接着層を形成し、他面に金型から取り出された後に剥離される保護フィルムを貼りあわせた多層フィルムの厚みが、200μm〜1000μmであることを特徴とする前記のアクリルインサート成形品の製造方法に使用するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、この発明についてさらに詳しく説明する。
この発明のアクリルインサート成形品の製造方法は、保護フィルム上に、保護フィルムから剥離可能なアクリルフィルム、印刷によって形成された絵柄層が少なくとも積層された厚みが200μm〜1000μmの多層フィルムの必要部分を三次元形状に加工するとともに切り離し、三次元多層フィルムをインサート成形用金型のキャビティに装着し、型閉めしてキャビティに成形樹脂を射出し、樹脂成形品の成形と同時に三次元多層フィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させた後、樹脂成形品を金型から取り出し、保護フィルムを剥離することを特徴とする。
【0009】
この発明の製造方法に適用することができるインサート成形用の多層フィルム6を、まず説明する。
一例として、多層フィルム6は、アクリルフィルム2の片面に印刷によって絵柄層4を形成し、他面に保護フィルム1を貼りあわせた多層フィルムであって、その厚みが200μm〜1000μmのものがある。
【0010】
アクリルフィルム2は、後述する真空成形や打ち抜きによって、インサート成形用金型のキャビティ形成面15の三次元形状に成形しやすく、後述する保護フィルム1から剥離可能なフィルムのことである。アクリルフィルム2は、50μm以上の厚みを有するものが好ましい。この数値であると、アクリルフィルム単体を印刷用紙として使用し、輪転印刷機によって絵柄層4や接着層5などの印刷層3をアクリルフィルム2に直接形成できるので有効である。つまり、輪転印刷機によれば、テンションがかかった状態のアクリルフィルム2がロールから巻き出されて別のロールに巻き取られる。巻き出しから巻き取りまでの間にアクリルフィルム2に印刷が施され、印刷層の乾燥や冷却を経てインサートフィルムが作成される。アクリルフィルム2が50μmより小さいと、前記テンションのために、印刷用紙としてのアクリルフィルム2に無用な延伸や熱シワ、見当不良や切断などが起こってしまいやすくなる。
【0011】
アクリルフィルム2は、例えば、ポリメチルメタクリレート80〜90重量部と、ポリブチルアクリレート20〜5重量部と添加剤(紫外線吸収剤等)0〜5重量部とからなる厚さ30〜80μmのものがある。または、ポリメチルメタクリレート50〜80重量部と、ポリブチルアクリレート15〜50重量部と添加剤(紫外線吸収剤等)0〜5重量部とからなる厚さ50〜100μmのものがある。
【0012】
アクリルフィルム2は、耐候性を有してもよい。アクリルフィルム2の耐候性は、アクリルフィルム2にもともと備わっている場合もある。この場合は、紫外線吸収剤が混入された樹脂などからなるフィルムを用いるとよい。アクリルフィルム2の耐候性は、アクリルフィルム2上に耐候性層を形成することによって得る場合がある。耐候性層は、フッ素またはアクリル樹脂からなる低温乾燥性の透明コート剤をロールコート、リバースコート、オフセット印刷、グラビア印刷などでアクリルフィルム2上に形成するものである。また、アクリルフィルム2が、低粘着処理されたものでもよい。また、アクリルフィルム2は、保護フィルム1剥離後のアクリルフィルムの表面摩擦強度を高めるためにオーバーコート層やオーバーコートフィルムを形成することもある。オーバーコート層やオーバーコートフィルムは、ハードコート層やハードコートフィルムであってもよい。また、アクリルフィルム2は、保護フィルム1剥離後のアクリルフィルム2の表面が塩化ビニルフィルムとの接触によって可塑化し固着されてしまうのを防止するための耐可塑剤保護層や耐可塑剤保護フィルムを形成することもある。これらのオーバーコート層やオーバーコートフィルム、あるいは耐可塑剤保護層や耐可塑剤保護フィルムが低粘着機能を有するようにしてもよい。アクリルフィルム2は、後述する保護フィルム1と低粘着層19を介してラミネート法などにより積層するとよい(図7参照)。積層した後にアクリルフィルム2には、ミシン目などを入れておいてもよい。
【0013】
絵柄層4は、アクリルフィルム2の表面の全面または部分に印刷によって形成される。この絵柄層4は、インサート成形品表面に文字や図形、記号等を表したり、着色表面を表したりするためのものである。なお、文字や図形、記号等を表したり、着色表面を表したりすることは、蒸着膜からなる金属蒸着層によってもできる。絵柄層4は、顔料と樹脂バインダーからなる顔料インキ層、パール顔料と樹脂バインダーからなる光輝性顔料層、染料と樹脂バインダーからなる染料インキ層の群から選ばれる少なくとも一層によって構成される。なお、この発明において使用する多層フィルムは、絵柄層以外に、例えば接着層が印刷により形成される。このように、印刷により形成される層を総称するときは、以下印刷層と称する。接着層は、後述する成形樹脂17つまり樹脂成形品18との接着性を向上させるため層である。接着層5は、ポリ塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等からなっていてもよい。印刷層3は、オフセット印刷法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法等の通常の印刷法や、ロールコート法、スプレーコート法等のコート法等により形成するとよい。接着層5は、印刷インキによって形成されたものであるため、分厚い接着シートを用いるより安価であるため有効である。
【0014】
保護フィルム1は、熱によって伸縮しにくいフィルムであり、前記絵柄層4が印刷形成されたアクリルフィルム2と貼りあわされた状態で、厚みが200μm〜1000μmの多層フィルム6となるような厚みを有するものである。多層フィルム6の厚みが200μmより小さいと、やわから過ぎない適度の変形性と、振動などによって位置ズレしない程度の安定性、三次元形状に加工された後に弱い外力によって容易に変形しない形態保持性を有しにくくなる。多層フィルム6の厚みが1000μmより大きいと、長尺の多層フィルム6をロール状に巻き取るときに巻き膨れが発生してしまうので、巻き取る量を抑える必要があるためである。保護フィルム1の厚みは、特に500μm以下であると、巻き取る量が少なすぎることがなくなるので有効である。
【0015】
保護フィルム1は、例えば、20〜1000μmのポリ塩化ビニルフィルム、非晶性または低結晶性のポリエステルフィルム、非晶性または低結晶性のポリプロピレンフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、未延伸または低延伸性のエチレンビニルアルコールフィルム、耐熱ポリエチレンフィルムなどがある。
【0016】
保護フィルム1は、アクリルフィルム2と剥離可能とするために低粘着処理されたものでもよい。低粘着処理された保護フィルムは、たとえば、保護フィルムとして、ロジン系、テンペル系、石油系などの粘着付与樹脂とポリオレフィン、ポリスチレンなどのホットメルト樹脂とが混入されたものを用いることによって、保護フィルム自体が低粘着性樹脂からなるものがある。低粘着処理は低粘着層19を形成することによって行ってもよい。低粘着層19は、天然ゴム系、合成ゴム系、シリコーン系、アクリル系などのホットメルト樹脂からなる粘着剤をリバースコート、ロールコート、グラビア印刷などで保護フィルム上に形成する方法がある。低粘着処理によって、後述する三次元加工時には保護フィルムとアクリルフィルムとは粘着されているが、手で保護フィルムをめくるには容易に剥離することができる状態となる。例えば、剥離強度として、1cm幅あたり0.01〜0.5Kg重のものがある。保護フィルム1とアクリルフィルム2とは、全面に渡って剥離可能であってもよいし、一部のみ剥離可能であってもよい。
【0017】
以下、前記多層フィルムを用いたこの発明のアクリルインサート成形品の製造方法を説明する。
【0018】
まず、保護フィルム1上に、保護フィルム1から剥離可能でアクリルフィルム2、絵柄層4を有する厚みが200μm〜1000μmの多層フィルム6の必要部分を三次元形状に加工するとともに切り離し、三次元多層フィルムを得る(図1参照)。多層フィルム6は、ロール軸に一旦巻き取ってロール状巻物として、後述する真空成形装置10やプレス切断装置7に、連続的に挿入してもよい。あるいは、所定の大きさの枚葉状の多層フィルム6として、後述する真空成形装置10やプレス切断装置7に、連続的に挿入してもよい。
【0019】
多層フィルム6を三次元形状に加工するには、例えば、真空成形装置10やプレス成形装置など、通常のプラスチックシートを所望の立体形状に成形する手段を用いるとよい。真空成形装置10やプレス成形装置で用いる型は、後述する所望の三次元形状の樹脂成形品18を成形するためのインサート成形用金型のキャビティ形成面15と全く同じ形状の凹部を有するものであって、多層シートを凹部内面に密着させるタイプのものがある。あるいは、インサート成形用金型のキャビティ形成面15を写した凸部12を有するものであって、多層フィルム6を凸部外面に密着させるタイプのものがある。後者のタイプでは、アクリルフィルム2と凸部12との間には印刷層3が介することになる。真空成形装置10は真空吸引孔11を有する。多層フィルム6を加工しやすくするために、プレス成形あるいは真空成形時に、多層フィルム6を加熱して軟化させもよい。
【0020】
多層フィルム6の切り離しは、ナイフあるいは切断刃9を有する打ち抜き型からなるプレス切断装置7、摺動切断金型、あるいは加熱切断装置、レーザー切断装置、トムソン打ち抜き装置、ハイゼル打ち抜き装置、ポンス打ち抜き装置など、通常のプラスチックシートの切断手段を用いるとよい。切り離しにより、多層フィルム6の必要部の形状は、後述する所望の三次元形状の樹脂成形品18を成形するためのインサート成形用金型のキャビティ形成面15からはみ出ない形状となる。あるいは、多層フィルム6の必要部の形状は、後述するインサート成形用金型によって得られる所望の三次元形状の樹脂成形品18の周縁より、少なくともはみ出ないような形状がある。
【0021】
多層フィルム6を三次元形状に加工することと、多層フィルム6の切り離しとは、どちらを先におこなってもよいが、切断刃付きプレス金型を用いることによって、同時におこなうこともできる(図1参照)。
【0022】
次に、三次元多層フィルム20をインサート成形用金型のキャビティに装着し、型閉めしてキャビティに成形樹脂17を射出し、樹脂成形品18の成形と同時に三次元多層フィルム20の絵柄層4側に成形樹脂17を一体化接着させた後、樹脂成形品18を金型から取り出し、保護フィルム1を剥離する(図2〜図6)。
【0023】
インサート成形用金型は、射出成形用や圧縮成形用の金型などがある。インサート成形用金型は、成形樹脂17を射出するゲート部16を有する固定型14と可動型13などからなり、固定型14と可動型13とが型閉めされることによって、固定型14および可動型13のキャビティ形成面15によって囲まれた単数あるいは複数のキャビティが形成されるものがある。キャビティは樹脂成形品18に孔部を形成するものであってもよい。三次元多層フィルム20を装着するキャビティ形成面15は固定型14あるいは可動型13のいずれに形成されていてもよい。多層フィルム6は、その印刷層側が固定型14のキャビティ形成面15に対向するように挿入してもよいし、その印刷層側が可動型13のキャビティ形成面15に対向するように挿入してもよい。
三次元多層フィルム20を真空成形装置10やプレス切断装置7からインサート成形用金型への移送は、ロボットで三次元多層フィルム20をつかんで自動的に行ってもよいし、人手でつかんで行ってもよい(図2参照)。
三次元多層フィルム20の装着は、射出成形用金型のキャビティ形成面15から吸引することによって固定するようにしてもよい。
【0024】
成形樹脂17としては、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ナイロン樹脂など樹脂がある。多層フィルム6を三次元形状に加工していない場合は、成形樹脂17の射出圧などによって、多層フィルム6を金型のキャビティ形成面15に密着させることになる。
樹脂成形品18を冷却した後、型開きして、印刷によって絵柄層4が積層されたアクリルフィルム2が三次元形状の樹脂成形品18表面に一体化接着されたアクリルインサート成形品を取り出す(図5参照)。最後に保護フィルム1を剥離する(図6参照)
【0025】
【実施例】
実施例1
以下の条件で、自動車外装部品用モールを製造した。
インサート用多層フィルムの保護フィルムは、ウレタン樹脂により低粘着処理された厚さ200μmの非晶質ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。アクリルフィルムは、厚さ200μmの三菱レイヨン社製HBS006(エッチビーエスゼロゼロロク)を用いた。印刷層は、光輝性顔料層、接着層を積層した。金属蒸着層は、アクリルフィルムと光輝性顔料層との間に厚さ400Åのクロム蒸着膜で積層した。光輝性顔料層は、アルミ顔料入りアクリル樹脂系インキを用いてグラビア印刷法で形成した。接着層は、塩素化ポリプロピレン樹脂系インキを用いてグラビア印刷法で形成した。このインサート用多層フィルムは、まず、アクリルフィルムの片面に印刷によって前記各層を形成し、他面に保護フィルムを貼りあわせた後、60℃の温度で乾燥後常温に冷却したものであって、積層後の厚みは412μmであった。このインサート用多層フィルムをロール軸に一旦巻き取ってロール状巻物とした。このロール状巻物からインサート成形用多層フィルムを巻き出し、切断刃付きプレス金型内に挿入した。切断刃付きプレス金型は、射出成形用金型のキャビティ形成面に密着する内面を有する凹部が形成され、凹部には真空吸引孔が形成されたものであった。インサート成形用多層フィルムを前記凹部に真空吸引して自動車外装部品用モールの三次元形状に真空成形加工し、三次元多層フィルムとした。三次元多層フィルムをプレス金型の切断刃で分断して、ロール状巻物のインサート用多層フィルムから切り離した。真空成形加工は、280℃のヒーターで多層フィルムを150℃度程度に加熱しながら、1、5気圧の真空吸引力で真空成形で行った。次にこの三次元多層フィルムの保護フィルムがキャビティ形成面に密着するようにインサート成形用金型のキャビティに装着した。次に固定型と可動型とを型閉めして形成されたキャビティに、成形温度200℃〜220℃、金型温度40℃〜60℃で、ポリプロピレン樹脂を成形樹脂として射出成形し、樹脂成形品の成形と同時に多層フィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させ、ポリプロピレン樹脂成形品を冷却した後、樹脂成形品を金型から取り出し、保護フィルムおよび低粘着層と、アクリルフィルムおよび印刷層との剥離を行った。金属色のアクリルフィルムが最表面に現れた15mm厚のモールを得た。
【0026】
実施例2
以下の条件で、自動車内装部品用木目コンソーラを製造した。
インサート用多層フィルムの保護フィルムは、ウレタン樹脂により低粘着処理された厚さ75μmの耐熱ポリエチレンフィルムを用いた。アクリルフィルムは、厚さ200μmの三菱レイヨン社製HBS006(エッチビーエスゼロゼロロク)を用いた。印刷層は、木目導管柄層、木目下地層、接着層からなる。木目導管柄層は、カーボンブラック入りアクリル樹脂系インキを用いてグラビア印刷法で形成した。木目下地層は、ベンガラ入りアクリル樹脂系インキを用いてスクリーン印刷法で形成した。接着層は、ビニル樹脂系インキを用いてスクリーン印刷法で形成した。このインサート用多層フィルムは、まず、アクリルフィルムの片面に印刷によって前記各層を形成し、他面に保護フィルムを貼りあわせた後、70℃の温度で乾燥後常温に冷却したものであって、積層後の厚みは293μmであった。このインサート用多層フィルムをロール軸に一旦巻き取ってロール状巻物とした。このロール状巻物からインサート成形用多層フィルムを巻き出し、切断刃付きプレス金型内に挿入した。切断刃付きプレス金型は、射出成形用金型のキャビティ形成面に密着する内面を有する凹部が形成され、凹部には真空吸引孔が形成されたものであった。インサート成形用多層フィルムを前記凹部に真空吸引して自動車内装部品用コンソーラの三次元形状に真空成形加工し、三次元多層フィルムとした。三次元多層フィルムをプレス金型の切断刃で分断して、ロール状巻物のインサート用多層フィルムから切り離した。真空成形加工は、250℃のヒーターで多層フィルムを140度程度に加熱しながら、1.2気圧の真空吸引力で真空成形で行った。成形加工時間は約5秒であった。次にこの三次元多層フィルムの保護フィルムがキャビティ形成面に密着するようにインサート成形用金型のキャビティに装着した。次に固定型と可動型とを型閉めして形成されたキャビティに、成形温度200℃〜220℃、金型温度40℃〜60℃で、ポリプロピレン樹脂を成形樹脂として射出成形し、樹脂成形品の成形と同時に多層フィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させ、ポリプロピレン樹脂成形品を冷却した後、樹脂成形品を金型から取り出し、保護フィルムおよび低粘着層と、アクリルフィルムおよび印刷層との剥離を行った。木目柄のアクリルフィルムが最表面に現れた8mm厚のコンソーラを得た。
【0027】
実施例3
以下の条件で、シルバー色のサイドマットガードを製造した。
インサート用多層フィルムの保護フィルムは、ウレタン樹脂により低粘着処理された厚さ200μmの塩化ビニルフィルムを用いた。アクリルフィルムは、厚さ200μmの三菱レイヨン社製HBS006(エッチビーエスゼロゼロロク)を用いた。印刷層は、光輝性顔料層、下地顔料層、接着層からなる。光輝性顔料層は、アルミ顔料入りウレタン樹脂系インキを用いてリバースコート法で形成した。下地顔料層は、グレー色のウレタン樹脂に、酸化チタン10部/カーボンブラック1部の割合で混ぜ合わせたインキを用いてリバースコート法で形成した。接着層は、塩素化ポリプロピレン樹脂系インキを用いてリバースコート法で形成した。このインサート用多層フィルムは、まず、アクリルフィルムの片面に印刷によって前記各層を形成し、他面に保護フィルムを貼りあわせた後、60℃の温度で乾燥後常温に冷却したものであって、積層後の厚みは447μmであった。このインサート用多層フィルムをロール軸に一旦巻き取ってロール状巻物とした。このロール状巻物からインサート成形用多層フィルムを巻き出し、切断刃付きプレス金型内に挿入した。切断刃付きプレス金型は、射出成形用金型のキャビティ形成面に密着する内面を有する凹部が形成され、凹部には真空吸引孔が形成されたものであった。インサート成形用多層フィルムを前記凹部に真空吸引して自動車外装部品用モールの三次元形状に真空成形加工し、三次元多層フィルムとした。三次元多層フィルムをプレス金型の切断刃で分断して、ロール状巻物のインサート用多層フィルムから切り離した。真空成形加工は、280℃のヒーターで多層フィルムを160℃程度に加熱しながら、1、8気圧の真空吸引力で真空成形で行った。次にこの三次元多層フィルムの保護フィルムがキャビティ形成面に密着するようにインサート成形用金型のキャビティに装着した。次に固定型と可動型とを型閉めして形成されたキャビティに、成形温度200℃〜230℃、金型温度40℃〜60℃で、ポリプロピレン樹脂を成形樹脂として射出成形し、樹脂成形品の成形と同時に多層フィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させ、ポリプロピレン樹脂成形品を冷却した後、樹脂成形品を金型から取り出し、保護フィルムおよび低粘着層と、アクリルフィルムおよび印刷層との剥離を行った。シルバー色のアクリルフィルムが最表面に現れたサイドマットガードを得た。
【0028】
【発明の効果】
この発明のアクリルインサート成形品の製造方法は、保護フィルム上に、少なくとも保護フィルムから剥離可能なアクリルフィルム、印刷によって形成された絵柄層が積層された厚みが200μm〜1000μmの多層フィルムの必要部分を三次元形状に加工するとともに切り離し、三次元多層フィルムをインサート成形用金型のキャビティに装着し、型閉めしてキャビティに成形樹脂を射出し、樹脂成形品の成形と同時に三次元多層フィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させた後、樹脂成形品を金型から取り出し、保護フィルムを剥離することを特徴とする。
また、この発明のアクリルインサート成形品は印刷によって絵柄層が積層されたアクリルフィルムが、三次元形状の樹脂成形品表面に一体化接着されていることを特徴とする。
また、この発明のインサート用多層フィルムは、厚み50μm以上のアクリルフィルムの片面に印刷によって絵柄層、接着層を形成し、他面に保護フィルムを貼りあわせた多層フィルムの厚みが、200μm〜1000μmであることを特徴とする。
【0029】
この発明では、インサート用多層フィルムのアクリルフィルムが保護フィルムによって保護された状態で、三次元形状への加工、必要部の切り離し、インサート成形を行えるので、アクリルフィルムが真空成形型や断裁型の型表面、さらにはインサート成形用金型のキャビティ形成面の金属表面に直接密着することを避けることができる。このため、型表面の微細な凹凸による跡形や摩擦により傷が付いたり、ホコリやゴミを拾うなどしてアクリルフィルムに微細な凹凸やホコリなどが付いたりしない。
【0030】
また、この発明では、保護フィルムで補強されしかも厚みが200μm〜1000μmである固有のインサート成形用多層フィルムを用いるので、以下の理由により、完成品の歩留まりや生産効率がよくなる。
つまり、この発明で用いるインサート成形用多層フィルムには腰がもたらされるので、真空成形型や断裁型、インサート成形用金型に挿入する際に簡単には撓まず、型内で位置決めしやすい。このため、位置決めが素早くでき、絵柄の位置ズレのない完成品が得られる。
また、この発明で用いるインサート成形用多層フィルムには重量感と安定感がもたらされるので、真空成形型や断裁型、インサート成形用金型内で、一旦位置決めされた後、型の振動などによりフィルムの位置ズレが起こりにくい。このため、位置決めが素早くでき、絵柄の位置ズレのない完成品が得られる。
また、この発明で用いるインサート成形用多層フィルムは分厚いので、断裁する際に、断裁型の刃と刃の隙間にアクリルフィルムを挟み込んでしまうことがなく、フィルムの切断不良が起こりにくい。また、三次元加工する際の真空成形時に破れや伸びムラが起こりにくい。このため、絵柄の破れや変形、フィルムの端部にギザギザのない完成品が得られる。
また、この発明で用いるインサート成形用多層フィルムには形態保持性がもたらされるので、アクリルフィルムを三次元形状に加工し、インサート成形用金型のキャビティに移送する際に、型崩れしにくい。このため、アクリルフィルムを移送しやすく、インサート成形用金型のキャビティに装着しやすい。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のアクリルインサート成形品の製造方法の一工程の一つを示す断面図である。
【図2】この発明のアクリルインサート成形品の製造方法の一工程の一つを示す断面図である。
【図3】この発明のアクリルインサート成形品の製造方法の一工程の一つを示す断面図である。
【図4】この発明のアクリルインサート成形品の製造方法の一工程の一つを示す断面図である。
【図5】この発明のアクリルインサート成形品の製造方法の一工程の一つを示す断面図である。
【図6】この発明のアクリルインサート成形品の製造方法の一工程の一つを示す断面図である。
【図7】この発明のインサート成形用多層フィルムの製造工程の一つを示す断面図である。
【符号の説明】
1 保護フィルム
2 アクリルフィルム
3 印刷層
4 絵柄層
5 接着層
6 多層フィルム
7 プレス切断装置
8 打ち抜き型
9 切断刃
10 真空成形装置
11 真空吸引孔
12 凸部
13 可動型
14 固定型
15 キャビティ形成面
16 ゲート部
17 成形樹脂
18 樹脂成形品
19 低粘着層
20 三次元多層フィルム

Claims (2)

  1. 保護フィルム上に、保護フィルムから剥離可能なアクリルフィルム、印刷によって形成された絵柄層が少なくとも積層された厚みが200μm〜1000μmの多層フィルムの必要部分を三次元形状に加工するとともに切り離し、三次元多層フィルムをインサート成形用金型のキャビティに装着し、型閉めしてキャビティに成形樹脂を射出し、樹脂成形品の成形と同時に三次元多層フィルムの絵柄層側に成形樹脂を一体化接着させた後、樹脂成形品を金型から取り出し、保護フィルムを剥離することを特徴とするアクリルインサート成形品の製造方法。
  2. 厚み50μm以上のアクリルフィルムの片面に印刷によって絵柄層、接着層を形成し、他面に金型から取り出された後に剥離される保護フィルムを貼りあわせた多層フィルムの厚みが、200μm〜1000μmであることを特徴とする請求項1に記載のアクリルインサート成形品の製造方法に使用するインサート成形用多層フィルム。
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