===開示の概要===
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかにされる。
主走査方向に移動可能な印刷ヘッドと、被印刷体を送るための被印刷体送り手段と、を有し、前記印刷ヘッドからインクを吐出して前記被印刷体に印刷を行う印刷装置において、前記被印刷体の端のうち前記被印刷体送り手段により先行して送られる先行端を、複数の点で検知して前記被印刷体の傾きを求め、求められた前記傾きに応じて、主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることを特徴とする印刷装置。
前記被印刷体の端のうち前記被印刷体送り手段により先行して送られる先行端を、複数の点で検知して前記被印刷体の傾きを求め、求められた前記傾きに応じて、主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることにより、インクの消費量を減少させることができる。
また、前記被印刷体の全表面を対象として印刷を行うこととしてもよい。
縁なし印刷の場合には、印刷用紙の端部にも印刷を行うため上記手段によるメリットがより大きくなる。
また、光を発するための発光手段と、前記発光手段の主走査方向への移動に応じて主走査方向に移動する前記光を受光するための受光センサと、を備え、前記先行端が、位置決めされた前記発光手段により発せられた光を遮ることによる前記受光センサの出力値の変化を前記発光手段の位置を変えて複数回検知して、前記被印刷体の傾きを求めることとしてもよい。
このようにすれば、先行端の位置を簡易に特定することができる。
また、主走査方向において互いに異なる第一位置及び第二位置で前記被印刷体の先行端が前記光を遮ることによる前記出力値の変化を検知して、前記第一位置から前記第二位置までの主走査方向の距離と、第一位置において前記出力値の変化が検知されてから第二位置において前記出力値の変化が検知されるまでの被印刷体の送り量と、に基づいて、前記被印刷体の傾きを求めることとしてもよい。
このようにすれば、受光センサの出力値の変化を検知する回数を最小限とすることができ、手順を簡略化することができる。
また、前記被印刷体を静止させ、かつ、前記発光手段を主走査方向に移動させて、前記発光手段により発せられた前記光が前記被印刷体の端を遮ることによる前記受光センサの出力値の変化を検知して、前記端の位置を特定し、前記傾きと該端の位置に応じて、主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることとしてもよい。
このようにすれば、主走査方向に移動する印刷ヘッドからインクを吐出させる適切な開始位置又は終了位置を決定するための情報がより多くなるから、適切な前記開始位置又は終了位置を精度よく決定できる。
また、前記発光手段により発せられた前記光が前記被印刷体の端を遮ることによる前記受光センサの出力値の変化を二回検知して、二つの前記端の位置を特定し、前記傾きと二つの前記端の位置に応じて、前記開始位置又は前記終了位置又はその双方を変化させることとしてもよい。
このようにすれば、主走査方向に移動する印刷ヘッドからインクを吐出させる適切な開始位置又は終了位置を決定するための情報がより多くなるから、適切な前記開始位置又は終了位置をさらに精度よく決定できる。
また、前記印刷ヘッドを備え主走査方向に移動可能な移動部材に、前記発光手段と前記受光センサが設けられていることとしてもよい。
このようにすれば、移動部材と発光手段及び受光センサの移動機構を共通化することができるというメリットが生じる。
また、前記移動部材を主走査方向に移動させて、前記発光手段により発せられた前記光が前記被印刷体の端を遮ることによる前記受光センサの出力値の変化を検知した後に、該検知に基づいて、前記移動部材を再び主走査方向に移動させた際の主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることとしてもよい。
このようにすれば、印刷ヘッドのノズルの一部について前記検知の有無に関わらず前もってインクの吐出を開始させなければならない不都合等を回避することができるというメリットが生じる。
また、主走査方向に移動可能な印刷ヘッドと、被印刷体を送るための被印刷体送り手段と、を有し、前記印刷ヘッドからインクを吐出して前記被印刷体の全表面を対象として印刷を行う印刷装置において、光を発するための発光手段と、前記発光手段の主走査方向への移動に応じて主走査方向に移動する前記光を受光するための受光センサと、を備え、前記印刷ヘッドを備え主走査方向に移動可能な移動部材に、前記発光手段と前記受光センサが設けられており、主走査方向において互いに異なる第一位置及び第二位置で、前記被印刷体の端のうち前記被印刷体送り手段により先行して送られる先行端が、位置決めされた前記発光手段により発せられた光を遮ることによる前記受光センサの出力値の変化を検知して、前記第一位置から前記第二位置までの主走査方向の距離と、第一位置において前記出力値の変化が検知されてから第二位置において前記出力値の変化が検知されるまでの被印刷体の送り量と、に基づいて、前記被印刷体の傾きを求め、前記被印刷体を静止させ、かつ、前記移動部材を主走査方向に移動させて、前記発光手段により発せられた前記光が前記被印刷体の端を遮ることによる前記受光センサの出力値の変化を二回検知して、二つの前記端の位置を特定し、前記傾きと二つの前記端の位置に応じて、前記移動部材を再び主走査方向に移動させた際の主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることを特徴とする印刷装置。
このようにすれば、既述の総ての効果を奏するため、本発明の目的が最も有効に達成される。
また、主走査方向に移動可能な印刷ヘッドと、被印刷体を送るための被印刷体送り手段と、を有し、前記印刷ヘッドからインクを吐出して前記被印刷体に印刷を行う印刷装置による印刷方法において、前記被印刷体の端のうち前記被印刷体送り手段により先行して送られる先行端を、複数の点で検知して前記被印刷体の傾きを求めるステップと、求められた前記傾きに応じて、主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させるステップと、を備えることを特徴とする印刷方法。
前記被印刷体の端のうち前記被印刷体送り手段により先行して送られる先行端を、複数の点で検知して前記被印刷体の傾きを求め、求められた前記傾きに応じて、主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることにより、インクの消費量を減少させることができる。
また、インクの消費量を減少させることができるという前記効果を奏する上記方法を印刷装置に実行させるためのコンピュータプログラムを実現することも可能である。
また、コンピュータ本体、コンピュータ本体に接続可能な表示装置、及び、コンピュータ本体に接続可能な印刷装置であって、主走査方向に移動可能な印刷ヘッドと、被印刷体を送るための被印刷体送り手段と、を有し、前記印刷ヘッドからインクを吐出して前記被印刷体に印刷を行う印刷装置であって、前記被印刷体の端のうち前記被印刷体送り手段により先行して送られる先行端を、複数の点で検知して前記被印刷体の傾きを求め、求められた前記傾きに応じて、主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させる印刷装置、を具備することを特徴とするコンピュータシステム。
このようにして実現されたコンピュータシステムは、システム全体として従来システムよりも優れたシステムとなる。
===装置の全体構成例===
図1は、本発明の一例としての印刷システムの構成を示すブロック図である。この印刷システムは、コンピュータ90と、印刷装置の一例としてのカラーインクジェットプリンタ20と、を備えている。なお、カラーインクジェットプリンタ20とコンピュータ90とを含む印刷システムは、広義の「印刷装置」と呼ぶこともできる。また、図示はしないが、上記コンピュータ90、上記カラーインクジェットプリンタ20、CRT21や液晶表示装置等の表示装置、キーボードやマウス等の入力装置、フレキシブルドライブ装置やCD−ROMドライブ装置等のドライブ装置等から、コンピュータシステムが構築されている。
コンピュータ90では、所定のオペレーティングシステムの下で、アプリケーションプログラム95が動作している。オペレーティングシステムには、ビデオドライバ91やプリンタドライバ96が組み込まれており、アプリケーションプログラム95からは、これらのドライバを介して、カラーインクジェットプリンタ20に転送するための印刷データPDが出力される。画像のレタッチなどを行うアプリケーションプログラム95は、処理対象の画像に対して所望の処理を行い、また、ビデオドライバ91を介してCRT21に画像を表示している。
アプリケーションプログラム95が印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データをアプリケーションプログラム95から受け取り、これをカラーインクジェットプリンタ20に供給する印刷データPDに変換する。プリンタドライバ96の内部には、解像度変換モジュール97と、色変換モジュール98と、ハーフトーンモジュール99と、ラスタライザ100と、ユーザインターフェース表示モジュール101と、UIプリンタインターフェースモジュール102と、色変換ルックアップテーブルLUTと、が備えられている。
解像度変換モジュール97は、アプリケーションプログラム95で形成されたカラー画像データの解像度を、印刷解像度に変換する役割を果たす。こうして解像度変換された画像データは、まだRGBの3つの色成分からなる画像情報である。色変換モジュール98は、色変換ルックアップテーブルLUTを参照しつつ、各画素毎に、RGB画像データを、カラーインクジェットプリンタ20が利用可能な複数のインク色の多階調データに変換する。
色変換された多階調データは、例えば256階調の階調値を有している。ハーフトーンモジュール99は、いわゆるハーフトーン処理を実行してハーフトーン画像データを生成する。このハーフトーン画像データは、ラスタライザ100によりカラーインクジェットプリンタ20に転送すべきデータ順に並べ替えられ、最終的な印刷データPDとして出力される。印刷データPDは、各主走査時のドットの形成状態を示すラスタデータと、副走査送り量を示すデータと、を含んでいる。
ユーザインターフェース表示モジュール101は、印刷に関係する種々のユーザインターフェースウィンドウを表示する機能と、それらのウィンドウ内におけるユーザの入力を受け取る機能とを有している。
UIプリンタインターフェースモジュール102は、ユーザインターフェース(UI)とカラーインクジェットプリンタ間のインターフェースを取る機能を有している。ユーザがユーザインターフェースにより指示した命令を解釈して、カラーインクジェットプリンタへ各種コマンドCOMを送信したり、逆に、カラーインクジェットプリンタから受信したコマンドCOMを解釈して、ユーザインターフェースへ各種表示を行ったりする。
なお、プリンタドライバ96は、各種コマンドCOMを送受信する機能、印刷データPDをカラーインクジェットプリンタ20に供給する機能等を実現する。プリンタドライバ96の機能を実現するためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で供給される。このような記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコードなどの符号が印刷された印刷物、コンピュータの内部記憶装置(RAMやROMなどのメモリ)および外部記憶装置等の、コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用できる。また、このようなコンピュータプログラムを、インターネットを介してコンピュータ90にダウンロードすることも可能である。
図2は、カラーインクジェットプリンタ20の主要な構成の一例を示す概略斜視図である。このカラーインクジェットプリンタ20は、用紙スタッカ22と、図示しないステップモータで駆動される紙送りローラ24と、プラテン26と、ドットを形成するための印刷ヘッドを備え移動可能な移動部材の一例としてのキャリッジ28と、キャリッジモータ30と、キャリッジモータ30によって駆動される牽引ベルト32と、キャリッジ28のためのガイドレール34とを備えている。また、キャリッジ28には、多数のノズルを備えた印刷ヘッド36と、後に詳述する反射型光学センサ29が搭載されている。
印刷用紙Pは、用紙スタッカ22から紙送りローラ24によって巻き取られてプラテン26の表面上を紙送り方向(以下、副走査方向ともいう)へ送られる。キャリッジ28は、キャリッジモータ30により駆動される牽引ベルト32に牽引されて、ガイドレール34に沿って主走査方向に移動する。なお、主走査方向とは、図に示すように副走査方向に垂直な2つの方向をいう。また、印刷用紙Pをカラーインクジェットプリンタ20へ供給するための給紙動作、印刷用紙Pをカラーインクジェットプリンタ20から排出させるための排紙動作も上記紙送りローラ24を用いて行われる。
===反射型光学センサの構成例===
図3は、反射型光学センサ29の一例を説明するための模式図である。反射型光学センサ29はキャリッジ28に取り付けられ、例えば発光ダイオードから構成される発光手段の一例としての発光部38と例えばフォトトランジスタから構成される受光センサの一例としての受光部40を有している。発光部38から発した光、すなわち入射光は、印刷用紙Pや発せられた光の方向に印刷用紙Pがない場合にはプラテン26により反射され、その反射光は受光部40で受光され、電気信号に変換される。そして、受光した反射光の強さに応じた受光センサの出力値として、電気信号の大きさが測定される。
なお、上記においては、図に示されるように、発光部38と受光部40は、一体となって反射型光学センサ29という機器を構成することとしたが、発光機器と受光機器のように各々別個の機器を構成してもよい。
また、上記においては、受光した反射光の強さを得るために、反射光を電気信号に変換した後に電気信号の大きさを測定することとしたが、これに限定されるものではなく、受光した反射光の強さに応じた受光センサの出力値を測定することができればよい。
===キャリッジ周辺の構成例===
次にキャリッジ周辺の構成について説明する。図4は、インクジェットプリンタのキャリッジ28周辺の構成を示した図である。
図4に示したインクジェットプリンタは、被印刷体送り手段の一例としての紙送りを行う紙送りモータ(以下、PFモータともいう)31と、印刷用紙Pにインクを吐出する印刷ヘッド36が固定され、主走査方向に駆動されるキャリッジ28と、キャリッジ28を駆動するキャリッジモータ(以下、CRモータともいう)30と、キャリッジ28に固定されたリニア式エンコーダ11と、所定の間隔にスリットが形成されたリニア式エンコーダ用符号板12と、PFモータ31用の不図示のロータリ式エンコーダ13と、印刷用紙Pを支持するプラテン26と、PFモータ31によって駆動されて印刷用紙Pを搬送する紙送りローラ24と、CRモータ30の回転軸に取付けられたプーリ25と、プーリ25によって駆動される牽引ベルト32とを備えている。
次に、上記のリニア式エンコーダ11及びロータリ式エンコーダ13について説明する。図5は、キャリッジ28に取付けられたリニア式エンコーダ11の構成を模式的に示した説明図である。
図5に示したリニア式エンコーダ11は、発光ダイオード11aと、コリメータレンズ11bと、検出処理部11cとを備えている。検出処理部11cは、複数(例えば4個)のフォトダイオード11dと、信号処理回路11eと、例えば2個のコンパレータ11fA、11fBとを有している。
発光ダイオード11aの両端に抵抗を介して電圧VCCが印加されると、発光ダイオード11aから光が発せられる。この光はコリメータレンズ11bにより平行光に集光されてリニア式エンコーダ用符号板12を通過する。リニア式エンコーダ用符号板12には、所定の間隔(例えば1/180インチ(1インチ=2.54cm))毎にスリットが設けられている。
リニア式エンコーダ用符号板12を通過した平行光は、図示しない固定スリットを通って各フォトダイオード11dに入射し、電気信号に変換される。4個のフォトダイオード11dから出力される電気信号は信号処理回路11eにおいて信号処理され、信号処理回路11eから出力される信号はコンパレータ11fA、11fBにおいて比較され、比較結果がパルスとして出力される。コンパレータ11fA、11fBから出力されるパルスENC−A、ENC−Bがリニア式エンコーダ11の出力となる。
図6は、CRモータ正転時及び逆転時におけるリニア式エンコーダ11の2つの出力信号の波形を示したタイミングチャートである。
図6(a)及び図6(b)に示すように、CRモータ正転時及び逆転時のいずれの場合も、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。CRモータ30が正転しているとき、即ち、キャリッジ28が主走査方向に移動しているときは、図6(a)に示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が進み、CRモータ30が逆転しているときは、図6(b)に示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が遅れる。そして、パルスENC−A及びパルスENC−Bの1周期Tは、キャリッジ28がリニア式エンコーダ用符号板12のスリット間隔を移動する時間に等しい。
そして、リニア式エンコーダ11の出力パルスENC−A、ENC−Bの各々の立ち上がりエッジ、立ち上がりエッジが検出され、検出されたエッジの個数が計数され、この計数値に基づいてCRモータ30の回転位置が演算される。この計数はCRモータ30が正転しているときは1個のエッジが検出されると「+1」を加算し、逆転しているときは、1個のエッジが検出されると「−1」を加算する。パルスENC−A及びENC−Bの各々の周期は、リニア式エンコーダ用符号板12の、あるスリットがリニア式エンコーダ11を通過してから次のスリットがリニア式エンコーダ11を通過するまでの時間に等しく、かつ、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。このため、上記計数のカウント値「1」はリニア式エンコーダ用符号板12のスリット間隔の1/4に対応する。これにより上記計数値にスリット間隔の1/4を乗算すれば、その乗算値に基づいて、計数値が「0」に対応する回転位置からのCRモータ30の移動量を求めることができる。このときリニア式エンコーダ11の解像度はリニア式エンコーダ用符号板12のスリットの間隔の1/4となる。
一方、PFモータ31用のロータリ式エンコーダ13はロータリ式エンコーダ用符号板14がPFモータ31の回転に応じて回転する回転円板である以外は、リニア式エンコーダ11と同様の構成となっており、2つの出力パルスENC−A、ENC−Bを出力し、かかる出力に基づいてPFモータ31の移動量を求めることができる。
===カラーインクジェットプリンタの電気的構成例===
図7は、カラーインクジェットプリンタ20の電気的構成の一例を示すブロック図である。このカラーインクジェットプリンタ20は、コンピュータ90から供給された信号を受信するバッファメモリ50と、印刷データを格納するイメージバッファ52と、カラーインクジェットプリンタ20全体の動作を制御するシステムコントローラ54と、メインメモリ56と、EEPROM58とを備えている。システムコントローラ54には、さらに、キャリッジモータ30を駆動する主走査駆動回路61と、紙送りモータ31を駆動する副走査駆動回路62と、印刷ヘッド36を駆動するヘッド駆動回路63と、反射型光学センサ29の発光部38、受光部40を制御する反射型光学センサ制御回路65と、既述のリニア式エンコーダ11と、既述のロータリ式エンコーダ13と、が接続されている。また、反射型光学センサ制御回路65は、受光部40により受光される反射光から変換される電気信号を測定するための電気信号測定部66を備えている。
コンピュータ90から転送された印刷データは、一旦、バッファメモリ50に蓄えられる。カラーインクジェットプリンタ20内では、システムコントローラ54が、バッファメモリ50から印刷データの中から必要な情報を読み取り、これに基づいて、主走査駆動回路61、副走査駆動回路62、ヘッド駆動回路63等に対して制御信号を送る。
イメージバッファ52には、バッファメモリ50で受信された複数の色成分の印刷データが格納される。ヘッド駆動回路63は、システムコントローラ54からの制御信号に従って、イメージバッファ52から各色成分の印刷データを読出し、これに応じて印刷ヘッド36に設けられた各色のノズルアレイを駆動する。
===印刷ヘッドのノズル配列例===
図8は、印刷ヘッド36の下面におけるノズル配列を示す説明図である。この印刷ヘッド36は、副走査方向に沿った一直線上にそれぞれ配列されたブラックノズル列とカラーノズル列とを有している。本明細書においては、「ノズル列」を「ノズル群」とも呼ぶ。
ブラックノズル列(白丸で示す)は、180個のノズル#1〜#180を有している。これらのノズル#1〜#180は、副走査方向に沿って一定のノズルピッチk・Dで配置されている。ここで、Dは副走査方向のドットピッチであり、kは整数である。副走査方向のドットピッチDは、主走査ライン(ラスタライン)のピッチとも等しい。以下では、ノズルピッチk・Dを表す整数kを、単に「ノズルピッチk」と呼ぶ。ノズルピッチkの単位は「ドット」であり、これは副走査方向のドットピッチを意味している。
図8の例では、ノズルピッチkは4ドットである。但し、ノズルピッチkは、任意の整数に設定することができる。
カラーノズル列は、イエロー用ノズル群Y(白三角で示す)と、マゼンタ用ノズル群M(白四角で示す)と、シアン用ノズル群C(白菱形で示す)とを含んでいる。なお、この明細書では、有彩色インク用のノズル群を「有彩色ノズル群」とも呼ぶ。各有彩色ノズル群は、60個のノズル#1〜#60を有している。また、有彩色ノズル群のノズルピッチは、ブラックノズル列のノズルピッチkと同じである。有彩色ノズル群のノズルは、ブラックノズル列のノズルと同じ副走査位置に配置されている。
印刷時には、キャリッジ28とともに印刷ヘッド36が主走査方向に一定速度で移動している間に、各ノズルからインク滴が吐出される。但し、印刷方式によっては、すべてのノズルが常に使用されるとは限らず、一部のノズルのみが使用される場合もある。
===第一の実施の形態===
次に、図9及び図10を用いて、本発明の第一の実施の形態について説明する。図9は、印刷ヘッド36と反射型光学センサ29と印刷用紙Pの位置関係を模式的に表した図であり、図10は、第一の実施の形態を説明するためのフローチャートである。
先ず、最初に、ユーザがアプリケーションプログラム95等において印刷を行う旨を指示する(ステップS2)。本指示を受け取ったアプリケーションプログラム95が、印刷命令を発すると、コンピュータ90のプリンタドライバ96が、画像データをアプリケーションプログラム95から受け取り、これを各主走査時のドットの形成状態を示すラスタデータと副走査送り量を示すデータとを含む印刷データPDに変換する。さらに、プリンタドライバ96は、かかる印刷データPDを各種コマンドCOMとともに、カラーインクジェットプリンタ20に供給する。カラーインクジェットプリンタ20は、これらを、バッファメモリ50により受信した後に、イメージバッファ52又はシステムコントローラ54へ送信する。
また、ユーザは印刷用紙Pのサイズや縁なし印刷を行う旨をユーザインターフェース表示モジュール101に指示することが可能である。ユーザによる当該指示は、ユーザインターフェース表示モジュール101により受け取られ、UIプリンタインターフェースモジュール102へ送られる。UIプリンタインターフェースモジュール102は、指示された命令を解釈して、カラーインクジェットプリンタ20へコマンドCOMを送信する。カラーインクジェットプリンタ20は、コマンドCOMをバッファメモリ50により受信した後に、システムコントローラ54へ送信する。
カラーインクジェットプリンタ20は、システムコントローラ54に送信された命令に基づいて、副走査駆動回路62により紙送りモータ31を駆動させる等して、印刷用紙Pの給紙を行う(ステップS4)。
次に、システムコントローラ54は、主走査駆動回路61によりCRモータ30を駆動させて、キャリッジ28を所定の位置(以下、第一位置ともいう)に移動させて位置決めする(ステップS6)。そして、リニア式エンコーダ11の出力パルスに基づいてCRモータ30の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すればキャリッジ28の第一位置を記憶する(ステップS8)。
さらに、システムコントローラ54は、反射型光学センサ制御回路65により、位置決めされたキャリッジ28に備えられた反射型光学センサ29を制御し、当該反射型光学センサ29の発光部38からプラテン26に向けて光を発する(ステップS10)。
図9(a)及び図9(b)に示すように紙送りモータ31によりさらに印刷用紙Pが送られると、やがて、図9(b)に示すように印刷用紙Pの端のうち紙送りモータ31により先行して送られる先行端(以下、上端ともよぶ)が上記発光部38から発光された光を遮ることとなる(ステップS12)。このときに、発光部38から発せられた光の入射先は、プラテン26から印刷用紙Pに変わるから、その反射光を受光した反射型光学センサ29の受光部40の出力値である電気信号の大きさは変化する。そして、この電気信号の大きさを電気信号測定部66により測定し、印刷用紙Pの上端が前記光を通過したことを検知する。
また、このときに、システムコントローラ54は、ロータリ式エンコーダ13の出力パルスに基づいてPFモータ31の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すれば印刷用紙Pの送り量を記憶する(ステップS14)。
次に、システムコントローラ54は、主走査駆動回路61によりCRモータ30を駆動させて、キャリッジ28を前記第一位置から所定の位置(以下、仮位置ともいう)に移動させて位置決めする(ステップS16)。所定の位置は、前記第一位置から見て主走査方向の上流側又は下流側のどちらでもよい。本実施の形態においては、図9(b)及び図9(c)に示すように、キャリッジ28を上流側に移動させて位置決めしている。
そして、システムコントローラ54は、反射型光学センサ制御回路65により反射型光学センサ29を制御して、上記発光部38から発せられた光の反射光を上記受光部40にて受光し、その出力値である電気信号の大きさを電気信号測定部66により測定する。さらに、システムコントローラ54は、かかる測定値を所定の閾値と比較し、前記光の入射先が印刷用紙Pであるか否かを判定する(ステップS18)。すなわち、光の入射先が、印刷用紙Pである場合とそうでない場合(すなわち、プラテン26である場合)では、双方の色などの相違により、反射光の強さが異なってくるので、反射光の強さに応じた前記受光センサの出力値を所定の閾値と比較することにより、前記光の入射先が印刷用紙Pであるか否かを判定することが可能となる。
次に、当該判定の結果、前記光の入射先が印刷用紙Pであると判定された場合には、システムコントローラ54は、主走査駆動回路61によりCRモータ30を駆動させて、キャリッジ28を前記第一位置から見て前記仮位置側と逆側の所定の位置(以下、第二位置ともいう)に前記仮位置から移動させて位置決めする(ステップS20)。逆に、前記光の入射先が印刷用紙Pでないと判定された場合には、システムコントローラ54は、キャリッジ28を前記第一位置から見て前記仮位置側と同じ側の所定の位置、すなわち第二位置に前記仮位置から移動させて位置決めする(ステップS22)。そして、リニア式エンコーダ11の出力パルスに基づいてCRモータ30の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すればキャリッジ28の第二位置を記憶する(ステップS24)。
なお、前記光の入射先が印刷用紙Pでないと判定された場合には、前記仮位置からキャリッジ28を第二位置に移動させることなく、仮位置を第二位置としてもよい。
本実施の形態においては、図9(c)に示すように、光の入射先が印刷用紙Pであると判定されるから、システムコントローラ54は、図9(c)及び図9(d)に示すようにキャリッジ28を前記仮位置側と前記第一位置から見て逆側の所定の位置(以下、第二位置ともいう)に前記仮位置から移動させて位置決めしている(ステップS20)。
さらに、図9(d)及び図9(e)に示すように紙送りモータ31によりさらに印刷用紙Pが送られると、やがて、図9(e)に示すように印刷用紙Pの上端が上記発光部38から発光された光を遮ることとなる(ステップS26)。このときに、発光部38から発せられた光の入射先は、プラテン26から印刷用紙Pに変わるから、その反射光を受光した反射型光学センサ29の受光部40の出力値である電気信号の大きさは変化する。そして、この電気信号の大きさを電気信号測定部66により測定し、印刷用紙Pの上端が前記光を通過したことを検知する。
また、このときに、システムコントローラ54は、ロータリ式エンコーダ13の出力パルスに基づいてPFモータ31の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すれば印刷用紙Pの送り量を記憶する(ステップS28)。
次に、システムコントローラ54は、ステップS8において記憶されたキャリッジ28の第一位置と、ステップS24において記憶されたキャリッジ28の第二位置と、ステップS14で記憶された印刷用紙Pの送り量と、ステップS28で記憶された印刷用紙Pの送り量とから、印刷用紙Pの傾きを求める。
図11を用いて、さらに詳細に説明を加える。図11は印刷用紙Pの傾きを求める方法の例を説明するための図である。
図上に実線で示された右上がりの直線は、印刷用紙Pの上端を表している。さらに、図上に示された直線の左端は印刷用紙Pの上端の右端(以下、上右端ともいう)を、直線の右端は印刷用紙Pの上端の左端を表している。直線と印刷用紙Pの上端に関して、左右が逆になっているのは、紙送り方向を図面の上側から下側への方向としているからである。
また、図に示す通り、キャリッジ28の第一位置を点AとしたときのステップS8において記憶された第一位置を数値aとする。同様に、キャリッジ28の第二位置を点BとしたときのステップS24において記憶された第二位置を数値bとする。なお、数値a、bとも、便宜上、印刷用紙Pの上右端の主走査方向の位置を基準とした値としているが、これに限定されるものではなく、他の位置でも構わない。
さらに、紙送り方向に着目すると、キャリッジは主走査方向にのみ移動するから、図上の点Aと点Bの位置の差pは、そのままステップS14で記憶された印刷用紙Pの送り量とステップS28で記憶された印刷用紙Pの送り量との差を表す。したがって、ステップS14とステップS28において記憶された数値から差pを求めることができることとなる。
次に、数値a、b、pから、印刷用紙Pの傾きを求める。図に示される通り、当該傾きは、例えば、主走査方向と前記直線との角θで表される。図からも明らかなように、角θ=tan−1(p/(b−a))という関係がある。
このようにして、ステップS8、S14、S24、S28において記憶された数値から、印刷用紙Pの傾きが求められる(ステップS30)。
次に、図9(e)及び図9(f)に示すように、システムコントローラ54は、主走査駆動回路61によりCRモータ30を駆動させて、キャリッジ28を移動させる。やがて、図9(f)に示すように印刷用紙Pの端が上記発光部38から発光された光を遮ることとなる(ステップS32)。このときに、発光部38から発せられた光の入射先は、印刷用紙Pからプラテン26に変わるから、その反射光を受光した反射型光学センサ29の受光部40の出力値である電気信号の大きさは変化する。そして、この電気信号の大きさを電気信号測定部66により測定し、印刷用紙Pの端が前記光を通過したことを検知する。
そして、リニア式エンコーダ11の出力パルスに基づいてCRモータ30の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すればキャリッジ28の位置(以下、第三位置ともいう)を記憶する(ステップS34)。
次に、図9(f)及び図9(g)に示すように、印刷用紙Pに縁なし印刷を行うために、システムコントローラ54は、CRモータ30を駆動させて、キャリッジ28をさらに移動させる。
そして、図9(g)及び図9(h)に示すように、キャリッジ28を主走査方向に移動させつつ、印刷ヘッド36からインクを吐出して縁なし印刷を行う(ステップS38)。
ここで、インクの吐出を開始又は終了する位置について、図12を用いて説明する。図12はインクの吐出を開始又は終了する位置の説明図である。
図12における印刷ヘッド36と反射型光学センサ29と印刷用紙Pの位置関係は、図9(h)のそれに相当する。図の左側に示された印刷ヘッド36が主走査方向に移動しつつ、当該印刷ヘッド36のノズルからインクを吐出して印刷用紙Pに印刷を行い、当該印刷ヘッド36は図の右側に示された位置へ到達する。印刷用紙Pに描かれた6本の直線は、印刷ヘッド36のノズルからインクを吐出して形成されたドットの集合を表している。ノズル配列については、図8を用いて既に説明した通りであるが、図12においては理解を容易くするために、一列のノズル群から構成されており、かつ、8つのノズルが備えられている印刷ヘッドを例として示している。
そして、本実施例においては、上記8つのノズルのうち、図に示すノズルNのインクの吐出を開始又は終了する位置を決定する方法を説明するが、他のノズルについても同様の考え方で決定することができる。
先ず、図12に示された印刷用紙Pの左下部に着目する。図に示すように、反射型光学センサ29とノズルNの紙送り方向の距離をy1、印刷用紙Pの傾きを角θ、前記第三位置Cと印刷用紙Pの端のうち主走査方向に移動する印刷ヘッド36のノズルNが通過する点との主走査方向の距離をx1とすると、x1=y1×tanθという関係が成立する。距離y1は既知であるから、角θにステップS30により求められた印刷用紙Pの傾きを代入することにより、距離x1を求めることができる。
同様に、図12に示された印刷用紙Pの中央下部に着目すると、図に示すように、反射型光学センサ29とノズルNの紙送り方向の距離をy1、印刷用紙Pの傾きを角θ、前記第二位置Bと印刷用紙Pの端のうち主走査方向に移動する印刷ヘッド36のノズルNが2回目に通過する点との主走査方向の距離をx2とすると、x2=y1/tanθという関係が成立する。距離y1は既知であるから、角θにステップS30により求められた印刷用紙Pの傾きを代入することにより、距離x2を求めることができる。
そして、ステップS34において記憶された主走査方向の第三位置Cと前記x1とに基づいて、ノズルNのインクの吐出を開始する位置を決定し、ステップS24において記憶された主走査方向の第二位置Bと前記x2とに基づいて、ノズルNのインクの吐出を終了する位置を決定することができる(ステップS36)。
すなわち、システムコントローラ54は、主走査駆動回路61を制御してCRモータ30を主走査方向に動かしつつ、ヘッド駆動回路63を制御して、印刷ヘッド36を駆動し、第三位置Cより距離x1だけ遅らせてノズルNからのインクの吐出を開始し、第二位置Bより距離x2だけ早くノズルNからのインクの吐出を終了する(ステップS38)。
また、図9(g)から図9(h)へのキャリッジ28の主走査方向への移動により、反射型光学センサ29の発光部38から発光された光が印刷用紙Pの端を遮ることとなる。すなわち、印刷用紙Pと反射型光学センサ29との位置関係が図9(f)及び図9(e)に示す関係にあるときに、上記現象が発生する。このときに、既述の通り、その反射光を受光した反射型光学センサ29の受光部40の出力値である電気信号の大きさは変化する。そして、この電気信号の大きさを電気信号測定部66により測定し、印刷用紙Pの端が前記光を通過したことを検知する(ステップS38)。
そして、リニア式エンコーダ11の出力パルスに基づいてCRモータ30の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すればキャリッジ28の位置(以下、図9(f)に対応するキャリッジ28の位置を第四位置、図9(e)に対応するキャリッジ28の位置を第五位置ともいう)を記憶する(ステップS40)。
次に、図9(h)及び図9(i)に示すように、システムコントローラ54は、CRモータ30を駆動させて、キャリッジ28を移動させ、また、紙送りモータ31を駆動させて、印刷用紙Pを所定量紙送りし、次の縁なし印刷に備える(ステップS42)。なお、このときに、システムコントローラ54は、ロータリ式エンコーダ13の出力パルスに基づいてPFモータ31の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すれば印刷用紙Pの送り量を記憶する(ステップS44)。
そして、図9(i)及び図9(j)に示すように、キャリッジ28を主走査方向に移動させつつ、印刷ヘッド36からインクを吐出して縁なし印刷を行う(ステップS48)。
ここで、インクの吐出を開始又は終了する位置について、図13を用いて説明する。図13はインクの吐出を開始又は終了する位置の説明図である。
図13における印刷ヘッド36と反射型光学センサ29と印刷用紙Pの位置関係は、図9(j)のそれに相当する。図の左側に示された印刷ヘッド36が主走査方向に移動しつつ、当該印刷ヘッド36のノズルからインクを吐出して印刷用紙Pに印刷を行い、当該印刷ヘッド36は図の右側に示された位置へ到達する。印刷用紙Pに描かれた12本の直線は、印刷ヘッド36のノズルからインクを吐出して形成されたドットの集合を表しており、このうち図上で上から数えて偶数番目の直線はステップS38において形成されたものであり、奇数番目の直線は本ステップにおいて形成されるものである。
また、図において、二つの反射型光学センサ29を示しているが、下側に点線で示された反射型光学センサ29は、印刷用紙Pの前記所定量紙送りを行う前の反射型光学センサ29と印刷用紙Pとの相対位置を示すために表したものである。そして、図に示すように、下側に点線で示された反射型光学センサ29の紙送り方向の位置は、既述の第四位置D及び第五位置Eの紙送り方向の位置と一致している。
ノズル配列については、図8を用いて既に説明した通りであるが、図13においては理解を容易くするために、一列のノズル群から構成されており、かつ、8つのノズルが備えられている印刷ヘッドを例として示している。
そして、本実施例においては、上記8つのノズルのうち、図に示すノズルNのインクの吐出を開始又は終了する位置を決定する方法を説明するが、他のノズルについても同様の考え方で決定することができる。
先ず、図13に示された印刷用紙Pの左下部に着目する。図に示すように、下側に点線で示された反射型光学センサ29とノズルNの紙送り方向の距離をy2、印刷用紙Pの傾きを角θ、前記第四位置Dと印刷用紙Pの端のうち主走査方向に移動する印刷ヘッド36のノズルNが通過する点との主走査方向の距離をx3とすると、x3=y2×tanθという関係が成立する。距離y2は既知の前記距離y1から既述の印刷用紙Pの所定の紙送り量を減じた値に等しいから、角θにステップS30により求められた印刷用紙Pの傾きを代入することにより、距離x3を求めることができる。なお、前記所定の紙送り量は、ステップS28とステップS44において記憶された数値の差をとることにより求めることが可能である。
同様に、図13に示された印刷用紙Pの中央下部に着目すると、図に示すように、下側に点線で示された反射型光学センサ29とノズルNの紙送り方向の距離をy2、印刷用紙Pの傾きを角θ、前記第五位置Eと印刷用紙Pの端のうち主走査方向に移動する印刷ヘッド36のノズルNが2回目に通過する点との主走査方向の距離をx4とすると、x4=y2/tanθという関係が成立する。距離y2は既知の前記距離y1から既述の印刷用紙Pの所定の紙送り量を減じた値に等しいから、角θにステップS30により求められた印刷用紙Pの傾きを代入することにより、距離x4を求めることができる。
そして、ステップS40において記憶された主走査方向の第四位置Dと前記x3とに基づいて、ノズルNのインクの吐出を開始する位置を決定し、ステップS40において記憶された主走査方向の第五位置Eと前記x4とに基づいて、ノズルNのインクの吐出を終了する位置を決定することができる(ステップS46)。
すなわち、システムコントローラ54は、主走査駆動回路61を制御してCRモータ30を主走査方向に動かしつつ、ヘッド駆動回路63を制御して、印刷ヘッド36を駆動し、第四位置Dより距離x3だけ遅らせてノズルNからのインクの吐出を開始し、第五位置Eより距離x4だけ早くノズルNからのインクの吐出を終了する(ステップS48)。
また、図9(i)から図9(j)へのキャリッジ28の主走査方向への移動により、反射型光学センサ29の発光部38から発光された光が印刷用紙Pの端を遮ることとなる。このときに、既述の通り、その反射光を受光した反射型光学センサ29の受光部40の出力値である電気信号の大きさは変化する。そして、この電気信号の大きさを電気信号測定部66により測定し、印刷用紙Pの端が前記光を通過したことを検知する(ステップS48)。
そして、リニア式エンコーダ11の出力パルスに基づいてCRモータ30の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を、換言すればキャリッジ28の位置を記憶する(ステップS50)。
次に、システムコントローラ54は、CRモータ30を駆動させて、キャリッジ28を移動させ、また、紙送りモータ31を駆動させて、印刷用紙Pを所定量紙送りし、次の縁なし印刷に備える。以下の手順は、既に説明したものと同様であり、ステップS50で記憶されたキャリッジ28の位置と前記所定量に基づいて印刷ヘッド36の各ノズル毎のインク吐出開始及び終了位置を決定し、これに基づいて印刷用紙Pに縁なし印刷を行う。そして、かかる手順を繰り返すことにより縁なし印刷を完了する。
なお、以上の処理を行うためのプログラムは、EEPROM58に格納されており、かかるプログラムはシステムコントローラ54により実行される。
印刷用紙が曲がって(斜めに)給紙されることも考慮に入れて、印刷用紙よりやや大きめの、換言すれば、印刷用紙の大きさと比べてある程度マージンを持たせた印刷データを用意し本印刷データに基づき印刷用紙に印刷を行う手法においては、印刷用紙以外の領域に印刷が行われる可能性があり、無駄にインクを消費してしまうという問題が生じる。
そこで、このように、印刷用紙Pの上端を、複数の点で検知して印刷用紙Pの傾きを求め、求められた傾きに応じて、主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることによりインクの消費量を減少させることとすれば、上記問題を解決することが可能となる。
なお、上記においては、ステップS14及びステップS28で、PFモータ31の基準位置からの移動量を求め、当該移動量を印刷用紙Pの送り量として記憶し、この差を第一位置において受光センサの出力値の変化が検知されてから第二位置において受光センサの出力値の変化が検知されるまでの印刷用紙の送り量としたが、ステップS28でPFモータ21の移動量を求める場合の基準位置をステップS14におけるPFモータ31の位置として、印刷用紙の送り量を得ても良い。また、ステップS28とステップS44において記憶された数値の差から所定の紙送り量を求める既述の手順やステップS8とステップS24において記憶された数値の差から主走査方向の距離を求める既述の手順についても同様のことがいえる。
また、上記においては、第一位置、仮位置、及び、第二位置を所定の位置としたが、任意の位置としてもよい。また、第一位置、及び、第二位置を所定の位置とした場合には、その後の、第一位置及び第二位置を記憶する手順、すなわち、ステップS8及びS24は省略してもよい。
また、ステップS38において、第三位置Cより距離x1だけ遅らせてノズルNからのインクの吐出を開始し、第二位置Bより距離x2だけ早くノズルNからのインクの吐出を終了することとしたが、ある程度マージンを持たせて、距離x1より小さい距離(x1−Δ1)だけ遅らせてノズルNからのインクの吐出を開始し、距離x2より小さい距離(x2−Δ2)だけ早くノズルNからのインクの吐出を終了することとしてもよい。また、ステップS48においても同様に、距離x3より小さい距離(x3−Δ3)だけ遅らせてノズルNからのインクの吐出を開始し、距離x4より小さい距離(x4−Δ4)だけ早くノズルNからのインクの吐出を終了することとしてもよい。
===その他の実施の形態===
以上、一実施形態に基づき本発明に係る印刷装置等を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、被印刷体として印刷用紙を例にとって説明したが、被印刷体として、フィルム、布、金属薄板等を用いてもよい。
また、コンピュータ本体と、このコンピュータ本体に接続可能な表示装置と、前記コンピュータ本体に接続可能な前述の実施形態に係るプリンタと、必要に応じて備えられるマウスやキーボード等の入力装置、フレキシブルディスクドライブ装置、及び、CD−ROMドライブ装置を有するコンピュータシステムも実現可能であり、このようにして実現されたコンピュータシステムは、システム全体として従来システムよりも優れたシステムとなる。
前述の実施形態に係るプリンタに、コンピュータ本体、表示装置、入力装置、フレキシブルディスクドライブ装置、及び、CD−ROMドライブ装置がそれぞれ有する機能又は機構の一部を持たせてもよい。例えば、プリンタが、画像処理を行う画像処理部、各種の表示を行う表示部、及び、デジタルカメラ等により撮影された画像データを記録した記録メディアを着脱するための記録メディア着脱部を備える構成としてもよい。
なお、上記実施の形態では、カラーインクジェットプリンタについて説明したが、本発明は、モノクロインクジェットプリンタにも適用可能である。
なお、上記実施の形態においては、印刷用紙Pの全表面を対象として印刷を行うこと、すなわちいわゆる縁なし印刷を行うこととしたが、これに限定されるものではなく、例えば、印刷用紙Pの全表面ではないが、広範囲に印刷を行う場合において、上記手段は有効な効果を発揮する。
ただし、縁なし印刷の場合には、印刷用紙の端部にも印刷を行うため上記手段によるメリットがより大きくなる。
また、上記実施の形態では、光を発するための発光部38と、本発光部38の主走査方向への移動に応じて主走査方向に移動する前記光を受光するための受光部40と、を備え、前記上端が、位置決めされた発光部38により発せられた光を遮ることによる受光部40の出力値の変化を発光部38の位置を変えて複数回検知して、印刷用紙Pの傾きを求めることとしたが、これに限定されるものではない。
ただし、このようにすることにより、上端の位置を簡易に特定することができるという点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
また、上記実施の形態では、主走査方向において互いに異なる第一位置及び第二位置で印刷用紙Pの上端が前記光を遮ることによる受光部40の出力値の変化を検知して、第一位置から第二位置までの主走査方向の距離と、第一位置において出力値の変化が検知されてから第二位置において出力値の変化が検知されるまでの被印刷体の送り量と、に基づいて、印刷用紙Pの傾きを求めることとしたが、これに限定されるものではない。
ただし、このようにすることにより、受光センサの出力値の変化を検知する回数を最小限とすることができ、手順を簡略化することができるという点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
また、上記実施の形態においては、印刷用紙Pを静止させ、かつ、発光部38を主走査方向に移動させて、発光部38により発せられた光が印刷用紙Pの端を遮ることによる受光部40の出力値の変化を検知して、印刷用紙Pの端の位置を特定し、前記傾きと該端の位置に応じて、主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、前記傾きのみに応じて、主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることとしてもよい。
ただし、このようにすることにより、主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる適切な開始位置又は終了位置を決定するための情報がより多くなるから、適切な前記開始位置又は終了位置を精度よく決定できるという点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
また、上記実施の形態においては、発光部38により発せられた光が印刷用紙Pの端を遮ることによる受光部40の出力値の変化を二回検知して、二つの前記端の位置を特定し、前記傾きと二つの前記端の位置に応じて、前記開始位置又は前記終了位置又はその双方を変化させることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、前記傾きと前記二つの端のうちの一方の端の位置のみに応じて、主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることとしてもよい。
ただし、このようにすることにより、主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる適切な開始位置又は終了位置を決定するための情報がより多くなるから、適切な前記開始位置又は終了位置を精度よく決定できるという点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
また、上記実施の形態においては、印刷ヘッド36を備え主走査方向に移動可能なキャリッジ28に、発光部38と受光部40が設けられていることとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、キャリッジ28と発光部38及び受光部40を、主走査方向に別個に移動可能とする構成としてもよい。
ただし、このようにすることにより、キャリッジ28と発光部38及び受光部40の移動機構を共通化することができる点で、上記実施の形態の方が望ましい。
また、上記実施の形態においては、ステップS38からステップS48に示した通り、キャリッジ28を主走査方向に移動させて、発光部38により発せられた光が印刷用紙Pの端を遮ることによる受光部40の出力値の変化を検知した(ステップS38)後に、該検知に基づいて、キャリッジ28を再び主走査方向に移動させた際の主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させる(ステップS48)こととしたが、これに限定されるものではなく、例えば、一回のキャリッジ28の主走査方向への移動において、前記受光部40の出力値の変化を検知し、該検知に基づいて、主走査方向に移動する印刷ヘッド36からインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させることとしてもよい。
ただし、後者の方法においては、受光部40の出力値の変化を検知した時点で、印刷ヘッド36のノズルの一部が印刷用紙Pの端をすでに通過してしまっている場合があり、かかるノズルについては、前記検知の有無に関わらず前もってインクの吐出を開始させる等の対策が必要となる。一方で、実施の形態に係る方法にはこのような不都合がないため、この点でより望ましい。
また、上記実施の形態においては、前記第一位置で前記出力値の変化が検知された後に、前記発光部38と前記受光部40を前記第一位置から主走査方向の上流側又は下流側のどちらかに移動させ、前記発光部38により発光された光を受けた前記受光部40の出力値により、前記光が印刷用紙Pに当てられたと判定された場合には、判定を行った側と前記第一位置から見て逆側に前記第二位置を設定し、前記光が印刷用紙Pに当てられていないと判定された場合には、判定を行った側と前記第一位置から見て同じ側に前記第二位置を設定することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば、このような手順を省略させて、前記第二位置を設定してもよい。
ただし、上記手順を踏まないで、仮に前記光を当てたならばその入射先が印刷用紙である側に前記第二位置が設定されてしまった場合には、当該第二位置において印刷用紙の上端が光を遮るようにするためには、印刷用紙をバックフィードさせる必要がある。したがって、このような不都合を回避することができるという点で、上記実施の形態の方がより望ましい。
また、上記において、印刷用紙Pを静止させ、かつ、発光部38を主走査方向に移動させて、発光部38により発せられた光が印刷用紙Pの端を遮ることによる受光部40の出力値の変化を検知して、前記端の位置を特定し、求められた傾きと該端の位置に応じて、主走査方向に移動する前記印刷ヘッドからインクを吐出させる開始位置又は終了位置又はその双方を変化させたが、適切な当該開始位置又は終了位置を決定するために用いられる情報である前記端の位置は、必ずしも直前に特定されたものである必要はない。