図1において、車両12は、比較的容量の大きい長手状の電池パック10を搭載した電気自動車或いはハイブリッド自動車である。この電池パック10は、車両用電源装置或いは蓄電装置として機能するものであり、その長手方向が車両12の幅方向と平行な状態で、ベンチ型後部座席78(図5)を支持するための座席下カバーパネル16の下側に配置されており、座席下カバーパネル16は、車室の床およびアンダーボディとして機能するフロアパネル14の上に固設されている。なお、車室とは座席が設けられた空間をいう。
上記座席下カバーパネル16は、逆U字状断面を備えた長手状部材であって、略垂直な1対の前側壁16aおよび後側壁16bと、それら前側壁16aおよび後側壁16bの上端部を相互に連結する略水平な連結壁16cとから構成されている。それら前側壁16aおよび後側壁16bの下端部がボルトなどによってフロアパネル14に固定されることにより、座席下カバーパネル16とフロアパネル14との間に、車両12の幅方向に延びる長手状の収容空間18が形成されている。この座席下カバーパネル16は、ベンチ型後部座席が非使用位置へ移動させられたときには床としても機能する。また、座席下カバーパネル16は、収容空間18の高さが電池パック10の高さよりも少し高い程度となるように、前側壁16aおよび後側壁16bの高さが設定されている。
前記電池パック10は、座席下カバーパネル16に覆われるとともに収容空間18内に収容されることにより、車両12のボディー内において車室に隣接させられえ、且つその車室から隔てられている。従って、本実施例では、座席下カバーパネル16が電源装置カバーとして機能している。また、上記フロアパネル14および座席下カバーパネル16は、鋼板などの磁性導体から成るものであるため、電磁シールドとしても機能している。なお、20は人工皮革状表層を有する軟質パネル或いは繊維状の表層を有する装飾マットなどの室内装飾部材である。
上記電池パック10は、たとえば図2の分解組立図および図3の横断面図に示すように構成されている。すなわち、電池パック10は、複数個の平板状の角型の電池セル22がその厚み方向に配列させられ且つその電池セル22間に一方向すなわち上下方向に貫通する隙間Sが設けられた電池モジュールすなわち組電池24と、その組電池24を収容するためのロアーケース26およびアッパケース28から成る電池ケースすなわち電池ケース30と、上記組電池24とロアーケース26との間に形成された気体流入室32に接続されてその気体流入室32内に車室内の空気を導びくための空気導入ダクト34と、上記組電池24とアッパケース28との間に形成された気体排出室36に接続されてその気体排出室36内の空気を排出させるための空気排出ダクト38とを備えている。なお、上記空気導入ダクト34および空気排出ダクト38は、図4以下に示されている。
上記ロアーケース26は、一枚の金属板材からプレス加工されたものであって、水平な底壁26aと、その底壁26aの両側部からその底壁26aに対して略直角に立ち上がる1対の側壁26bと、その1対の側壁26bの上端部から外側へ向かう底壁26aと平行な1対の支持壁26cと、取付穴26dを備えてその1対の支持壁26cから外側へ向かう程底壁26a側へ向かうように傾斜した取付壁26eとから構成されている。また、上記アッパケース28は、一枚の金属板材からプレス加工されたものであって、水平な底壁28aと、その底壁28aの両側部から断面L字型の階段状壁28bを介してその底壁28aに対して略直角に立ち下がる1対の側壁28cと、取付穴28dを備えてその1対の側壁28cの下端部から外側へ向かう程底壁28aから離れる側へ向かうように傾斜した取付壁28eとから構成されている。電池ケース30の下部および上部を構成するロアーケース26およびアッパケース28は、たとえば、組電池24の長手方向に平行な折れ線を境にして一枚の金属板材からプレス加工によって曲成されたものであり、幅方向の両端部に位置する取付壁26eおよび28eが取付壁26eおよび28eを通した固定ねじ58によって相互に一体的に固定されるようになっている。また、上記アッパーケース28は、たとえば射出成形によって得られた合成樹脂成形品であってもよい。
上記電池セル22は、たとえばニッケル水素電池などの二次電池を構成するための電解質および電極をそれぞれ収容した複数個たとえば6個の電槽を内部に備えた樹脂製の偏平な箱体であって、直列に接続される図示しない正端子および負端子を側面の上部に備えるとともに、過剰水素を排出するための図示しない排出口をその上面に備え、その長手方向(幅方向)すなわち図3の左右方向が車両の前後方向となるように配置されている。また、上記電池セル22は、その側面の下部から幅方向(長手方向)に突き出す脚部42を備えている。上記複数個の電池セル22は、その厚み方向において相互に重ね合わせられ且つ複数個配列された状態で、電池セル22の上下にそれぞれ設けられた2対の拘束ロッド(拘束部材)44によって互いに接近する方向に締め着けられる1対の拘束板(エンドプレート)46により互いに密着するように押圧されている。拘束板46には、上記拘束ロッド44に固定されるために上下方向へ突き出す2対のブラケット48が設けられている。
また、上記電池セル22の重ね合わせ面すなわち相互の対向面には、図3に示すように、その対向面の長辺方向の両端部において短辺方向すなわち上下方向に連なるように設けられた1対の凸条50と、その長辺方向の中間部において対向面の上下方向に連なる複数本(本実施例では5本)の凸条52と、それらの凸条50、52の間において一定の配置密度となるように所定間隔で上記対向面から突設された複数の小突起54とが設けられている。上記凸条50、52は、複数の電槽を電池セル22内に形成する隔壁の位置に対応する場所に形成されたものであって、隣接する電池セル22の凸条50、52に当接することにより拘束ロッド44によって発生する圧縮力を受けて電池セル22の変形を防止するためのものである。また、上記凸条50、52と小突起54とは、電池セル22の間に僅かな隙間Sを形成するためのものであってたとえば1.0mm程度の突き出し量となるように形成されているので、電池セル22の間には上下方向に貫通する幅寸法が2.0mm程度のスリット状の隙間Sが形成され、電池セル22と拘束板46との間には上下方向に貫通する幅寸法が1.0mm程度のスリット状の隙間Sが形成されているとともに、所定の電池セル22の凸条50、52および小突起54とそれに隣接する電池セル22の凸条50、52および小突起54とは相互に密着させられている。
前記ロアーケース26の支持壁26cの上面は、電池セル22の両端部を支持するためのものであり、支持面60として機能している。すなわち、上記ロアーケース26の内壁面には、電池セル22の幅方向寸法に対応して、その幅寸法よりも小さな間隔を有し、且つ互いに平行な状態で電池セル22の厚み方向すなわち組電池24の長手方向に延びる1対の支持面60が形成されている。
各電池セル22間の隙間Sが開口する側の端面すなわち下端面62の長手方向の両端部に位置する1対の着座面64が上記の1対の支持面60上に着座させられた状態で各電池セル22がロアーケース26に固定されることにより、前記気体流入室32が各電池セル22の下端面62とロアーケース26の1対の側壁26bとロアーケース26の底壁26aとにより形成されている。各電池セル22は、たとえばインサート成形によりその着座面64に埋設された図示しない有底円筒状のナットに固定ねじ68がロアーケース26の穴69を通して螺合されることによりそのロアーケース26に固定されている。
アッパケース28の内壁面であって前記電池セル22の上端面72の長手方向10端部に対応する位置には、その電池セル22の上端面72の長手方向の両端部に当接するように組電池24の長手方向に延びる1対の長手状のシール部材70がたとえば接着剤により固定されており、前記気体排出室36がアッパケース28の上記1対のシール部材70の間の部分と電池セル22の上端面72との間に形成されている。このシール部材70は、たとえば合成樹脂製スポンジ、軟質ゴムなどの弾性変形可能な材質により構成される。
図5の断面図に示すように、座席下カバーパネル16の連結壁16cに支持された後部座席78の下面の前側には、その後部座席78の幅方向(車両の幅方向)全体にわたって長手状の凹溝80が形成されており、その凹溝80によって、車両12の幅方向において連続し且つ座席下カバーパネル16と座席78の下面との間に形成されたスリット状の開口82を通して車両12の前方側に連通する座席下空間84が、上記座席下カバーパネル16と後部座席78の下面との間に形成されている。上記後部座席78は、たとえば120cm程度の長さ寸法(車幅方向寸法)を備えており、上記スリット状の開口82は、その後部座席78の幅寸法よりも僅かに短い全長を有し、且つ数cm程度たとえば2乃至3cm程度の幅寸法(垂直方向寸法)を備えている。また、上記座席下空間84は、後部座席78の下面の長手方向と同様の長さ寸法と、上記後部座席78或いは座席下カバーパネル16の連結壁16cの幅寸法すなわち車両前後方向の寸法の1/3程度の幅寸法(水平方向寸法)とを備えている。なお、上記座席下カバーパネル16の水平な連結壁16cの車両前方側の側縁部は、車両前方に向かうほど下方へ向かう傾斜面となるように形成されており、上記スリット状の開口82は、その傾斜面と後部座席78の車両前方側の側縁との間に形成されている。
図6は上記座席下カバーパネル16の一部を切り欠いた平面図であり、図7はその座席下カバーパネル16の断面図であり、図8はその座席下カバーパネル16の一部を切り欠いた斜視図であり、前記図5はその図6のV−V視断面を示し、上記図7は図6のVII −VII 視断面を示している。図6乃至図8に示すように、前記空気導入ダクト34は座席下空間84に間接的に連通させられており、車室内の空気が座席下空間84を経てその空気導入ダクト34に吸引されるようになっている。すなわち、カバーパネル16とフロアパネル14との間に形成された収容空間18内には、そのうちの車両右側の一部が互いに直角を成す車両前後方向に平行な仕切壁88および車両幅方向に平行な仕切壁90によって分割されることにより吸入室92が設けられており、図7に示すように一端がロアーケース26の車両右側の端部と拘束板46の下部との間の開口に接続された前記空気導入ダクト34の他端部がその仕切壁88に設けられた矩形状の開口94を通してその吸入室92に連通させられている。また、その吸入室92は、座席下カバーパネル16の長手方向の車両前側且つ右側の端部であって上記座席下空間84下に位置する複数本のスリット96を通して座席下空間84に連通させられている。また、厚み方向に貫通し且つ上記複数本の互いに平行な車幅方向のスリット96を有する合成樹脂製カバー98が、座席下カバーパネル16の端部に形成された切欠100に嵌め着けられることにより、上記スリット96が吸入室92と座席下空間84との間に設けられている。
また、冷却ファン、排気ファンなどとして機能する送風ファン31を一端に備えた空気排出ダクト38の他端は、アッパケース28の長手方向の車両左側の端部が切り欠かれることにより形成された開口に接続されており、その送風ファン31は図示しないダクトを介して車外に連通させられている。本実施例の電源装置10は、各電池セル22の温度が所定値以上となったことが検出されると、その温度上昇を抑制するために、上記空気排出ダクト38に設けられた送風ファン31が作動させられる。送風ファン31が作動させられると、たとえば図4、図5および図7の一点鎖線の矢印に示すように、車室内の空気が、スリット96、吸入室92、空気導入ダクト34、気体流入室32、各電池セル22の間の隙間S、気体排出室36、空気排出ダクト38を経て送風ファン31に引き込まれるようになっており、空気が各電池セル22の間の隙間Sを通して流されることにより各電池セル22が冷却されるようになっている。従って、本実施例では、スリット96、吸入室92、矩形状の開口94、空気導入ダクト34、気体流入室32が空気導入経路として機能し、スリット96がその空気導入経路の開口として機能する。また、気体排出室36、空気排出ダクト38、送風ファン31、図示しないダクトなどが空気導出経路として機能している。
上述のように、本実施例によれば、座席下カバーパネル16を隔てて車室に隣接する位置に組電池ケース30が設置され、その組電池ケース30内に収容された電池セル22を冷却するための車室内の空気が、座席下カバーパネル16に設けられたスリット96から導入されることから、空気導入経路(スリット96、吸入室92、矩形状の開口94、空気導入ダクト34、気体流入室32)が短くなるので、電池セル22を冷却するための空気の流通抵抗が小さくなる。従って、電池セル22の冷却効果が十分に得られる。また、空気導入経路を構成する部品たとえば空気導入ダクト34の長さが短縮されることから、空気導入ダクト34の部品価格が低下し、電池パック10が安価となる利点がある。
また、本実施例によれば、空気導入経路の開口として機能するスリット96が後部座席78の下面に対向して設けられ、その後部座席78下の座席下空間84を通して車室内空気が電池パック10の気体流入室32へ導入されるようになっている。すなわち、座席下カバーパネル16と後部座席78の下面との間に形成され、車両12の幅方向において連続し且つその座席下カバーパネル16と後部座席78の下面との間のスリット状の開口82を介して車両12の前方側に連通する座席下空間84を通して、車室内の空気が前記空気導入経路の開口として機能するスリット96内に吸引されるようになっている。このため、車両の後部座席78下に設けられた電池パック10を冷却する空気を導入するための空気導入経路の長さが短くなるので、その空気導入経路に導かれる空気の流通抵抗が小さくされる。また、空気導入経路の開口として機能するスリット96が後部座席78によって覆われるので、後部座席78下のデッドスペースが活用され、後部座席78下前面の立壁面すなわち前側壁16aに開口を設ける場合に比較して、スリット96を覆う後部座席78によって吸引騒音が軽減されるとともにゴミや埃の吸い込みが抑制される。
また、本実施例によれば、前記電池パック10は、複数個の電池セル22がその厚み方向に積層され且つそれら複数個の電池セル22の間に一方向に貫通する隙間Sが形成された長手状の組電池24を有し、その長手方向が車両の幅方向となるように、その幅方向に設けられた長椅子状の後部座席78下に配置されることから、前記空気導入経路により導かれた空気がその隙間Sを通して一方向に流通させられるので、組電池24を構成するために厚み方向に積層された複数個の電池セル22が好適に冷却され、その組電池24の寿命が確保される。
また、本実施例によれば、前記組電池24が電池ケース30に収容されることによってその電池ケース30内に電池セル22間の隙間Sを通して連通する気体流入室32および気体排出室36が上記組電池24を挟んで形成され、前記空気導入経路内の空気が気体流入室32、隙間S、気体排出室36、空気排出ダクト38を経てその空気排出ダクト38に設けられた送風ファン31により流通させられることから、組電池24が好適に冷却され、その組電池24の寿命が確保される。
また、本実施例によれば、前記空気導出経路は、電池ケース30内の気体排出室36の空気を車外に導くものであることから、電池セル22間の隙間Sを通過することにより温度が高くなった空気が車外に排出されるので、電池ケース30が配置された収容空間18内の温度上昇が抑制される利点がある。
次に、本発明の第2実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図9は、前記図5に対応する、後部座席78およびそれを支持する座席下カバーパネル16の横断面図であって図10のIX−IX視図であり、図10は上記座席下カバーパネル16の一部を切り欠いた平面図であって前記図6に対応し、図11はその座席下カバーパネル16内の要部を示す断面図であって図10のXI−XI視断面図であり、図12はその座席下カバーパネル16の斜視図である。なお、図10においては、空気排出ダクト122が省略されている。
本実施例においても、電池パック10は、フロアパネル14と座席下カバーパネル16とにより形成された収容空間18に設置されており、座席下カバーパネル16により車室に隣接する位置においてその車室と隔てられている。
その収容空間18内には、そのうちの車両前方側且つ左側の一部が、車両12の幅方向と平行な仕切り壁104およびその車両の長手方向と平行な仕切り壁105によって分割されることにより吸入室106が設けられている。このように収容空間18の一部を分割した吸入室106を設けるのは、送風ファン31が作動させられた場合に収容空間18内の比較的高温の空気が吸引されて電池パック10へ送風されることを防止し、確実に車室内の冷たい空気を吸引するためである。
図11に示すように、空気導入ダクト108は、一端がロアーケース26の車両左側の端部と拘束板46の下部との間の開口に接続され、他端には送風ファン31が接続されている。送風ファン31は、図9に示すように、その吸引口110が仕切壁104に設けられた円形の開口112に嵌めつけられている。これにより、空気導入ダクト108は吸入室106に連通させられている。また、その吸入室106は、座席下カバーパネル16の長手方向の車両左側の端部であって前記座席下空間84下に位置する複数本のスリット114を通して座席下空間84に連通させられており、吸入室106は後述するように空気導入経路の一部を構成することから、スリット114は空気導入経路の開口として機能している。スリット114を下方へ通過した空気は、吸入室106内において、側方に位置する円形の開口112へ入るように略直角に曲げられる。すなわち空気導入経路は下方に向かった後側方へ曲げられている。なお、板状の合成樹脂製カバー116は、厚み方向に貫通した上記複数本のスリット114を有し、その合成樹脂製カバー116が座席下カバーパネル16の端部に形成された切欠118を覆うように取り付けられることにより、上記スリット114が設けられている。
図9に示すように、上記吸入室106内(すなわちスリット114の下方)には、上記吸引口110を空気導入可能にスリット114側から覆う防塵防音用カバー119が設けられている。この防塵防音用カバー119は、送風ファン31の騒音を遮蔽する遮蔽板として機能するとともに、スリット114を通過した空気に含まれる埃や車室内でこぼれた液体が送風ファン31の吸引口110内に吸引されないようするためのものであり、吸引口110から離れる程フロアパネル14に接近するように傾斜した形状であって、下側の縁部すなわち先端部120とフロアパネル14との距離が、仕切壁104の開口の下端とフロアパネル14との距離よりも僅かに短くなるような長さを有して、仕切壁104の吸引口110の上側位置に固定されている。すなわち、吸入室106内において、スリット114から下方へ向かい且つ円形の開口112へ向かうように略直角に曲げられた空気導入経路の曲率中心側からその空気導入経路をさらに湾曲させて遠回りさせるように突き出す防塵防音用カバー119がスリット114側に設けられているのである。
防塵防音用カバー119が上記のように構成され、且つスリット114が防塵防音用カバー119の上方に位置するため、スリット114から下方へ導入された空気はスリット114から送風ファン31の吸引口110まで側方へ向かう最短経路を流通することができず、図9の一点鎖線に示すように流通する。すなわち、スリット114から導入された空気は、当初は略垂直下方に向かい、防塵防音用カバー119の先端付近で大きく湾曲して上方に向かう。このように空気導入経路が大きく湾曲させられていることから、スリット114を通過して埃や液体が空気導入経路内に導入されても、その埃や液体が送風ファン31の吸引口110に吸引されることが確実に防止されるのである。
また、防塵防音用カバー119の先端部120は、防塵防音用カバー119の内表面122側に丸められた形状を有している。すなわち、防塵防音用カバー119の先端部120のスリット114側の面は、先端縁124側ほど空気流通方向において下流側となるように回曲させられている。なお、上記先端縁124とは、空気の流路を最も狭める部位をいう。このように先端部120が丸められた形状を有しているのは、先端部120における空気の流線を滑らかとすることにより、その減速をできるだけ少なくするとともに、空気が流通する際に発生する騒音を減少させるためである。
さらに、防塵防音用カバー119の内表面122には、ウレタン製スポンジ状の吸音材126が貼りつけられており、また、吸入室106の底面128にも同じウレタン製スポンジ状の吸音材130が貼りつけられている。これら2つの吸音材126、130によって送風ファン31の騒音が吸収される。
電池セル22を冷却した後の空気を車外に排出するための図示しないダクトとの接続口132を一端に備えた空気排出ダクト134の他端は、図11に示すように、アッパケース28の車両左側の端部と拘束板46の上部との間の開口に接続され、電池ケース30内の気体排出室36が上記空気排出ダクト134およびそれに接続された図示しないダクトを介して車外に連通させられている。本実施例の電池パック10では、各電池セル22の温度が所定値以上となったことが検出されると、その温度上昇を抑制するために、上記空気導入ダクト108に設けられた送風ファン31が作動させられ、たとえば図9、図11、図13の一点鎖線の矢印に示すように、車室内の空気が、スリット114、吸入室106、開口112、送風ファン31、空気導入ダクト108、気体流入室32、各電池セル22の間の隙間S、気体排出室36、空気排出ダクト134を経て車外に導かれるようになっており、車室から導いた空気が各電池セル22の間の隙間Sを通して流され、各電池セル22が冷却されるようになっている。従って、本実施例では、前記座席下空間84下に開く開口として機能するスリット114、吸入室106、円形の開口112、送風ファン31、空気導入ダクト108、気体流入室32が空気導入経路として機能し、気体排出室36、空気排出ダクト134、これに接続された図示しないダクトなどが空気導出経路として機能している。
上述のように、本実施例によれば、座席下カバーパネル16を隔てて車室に隣接する位置に組電池ケース30が設置され、その組電池ケース30内に収容された電池セル22を冷却するための車室内の空気が、座席下カバーパネル16に設けられたスリット114から導入されることから、空気導入経路(スリット114、吸入室106、円形の開口112、送風ファン31、空気導入ダクト108、気体流入室32)が短くなるので、電池セル22を冷却するための空気の流通抵抗が小さくなる。従って、電池セル22の冷却効果が十分に得られる。また、本実施例によれば、空気導入経路の開口として機能するスリット114が後部座席78の下面に対向して設けられ、その後部座席78下の座席下空間84を通して車室内空気が電池パック10の気体流入室32へ導入されるようになっている。すなわち、座席下カバーパネル16と後部座席78の下面との間に形成され、車両12の幅方向において連続し且つその座席下カバーパネル16と後部座席78の下面との間のスリット状の開口136を介して車両12の前方側に連通する座席下空間84を通して、車室内の空気が前記空気導入経路の開口として機能するスリット114内に吸引されるようになっている。このため、空気導入経路を構成する部品たとえば空気導入ダクト108の長さが短縮されるなどのことから、前述の第1実施例と同様の効果が得られる。
また、本実施例によれば、組電池24が電池ケース30内に収容されることによってその電池ケース30内に電池セル22間の隙間Sを通して連通する気体流入室32および気体排出室36が上記組電池24を挟んで形成され、空気導入経路に設けられた送風ファン31によりその空気導入経路内に導かれた空気が気体流入室32、隙間S、気体排出室36を経て流通させられることから、空気導入経路に設けられた送風ファン31により空気導入経路内の空気が気体流入室32へ押し込まれて、その気体流入室32内が大気圧である電池ケース30の外よりも圧力が高くなるので、その電池ケース30外の比較的温度の高い空気の漏入による電池セル22の積層方向の温度傾斜が抑制され、その温度傾斜に起因する電池セル22間の特性のばらつきが緩和される。
因みに、送風ファン31が空気導出経路において組電池24よりも下流側に設けられる場合には、空気導入経路内の空気を気体流入室32、隙間S、気体排出室36へと引き込むことにより空気を流通させるのであるが、気体流入室32の圧力が大気圧である電池ケース30の外よりも低くなるので、図14の斜めの矢印に示すように、ロアーケース26の取付壁26eとアッパーケース28の取付壁28eとの間、および電池セル22の着座面64とこれを支持する支持壁26cとの間からたとえば60℃程度の比較的温度の高い収容空間18内の空気が漏入することがある。そのような比較的温度の高い収容空間18内の空気が漏入すると、図15に示すように、気体流入室32において下流側ほど空気の温度が高くなる温度傾斜が発生して電池セル22の温度がばらつくので、電池セル22間の特性のばらつきが発生し、電池パック10の性能が十分に得られない場合があったのである。
また、本実施例によれば、前記空気導入経路を湾曲させるように送風ファン31の吸引口110を覆う防塵防音用カバー119が設けられていることから、後部座席78を前に倒すなどしてスリット114の上方に後部座席78がなくなった状態である後部座席78の非使用状態などにおいて、車室内の異物や車室でこぼれた液体が、空気とともにスリット114から混入しても、空気と異なり、それら異物や液体は空気導入経路の湾曲に沿ってさらに下流へ流通することができないので、その防塵防音用カバー119の下流に配置された送風ファン31に、それら異物や液体が混入することが防止される。また、後部座席78を非使用状態とすると、スリット114から吸入室106内が見えるが、防塵防音用カバー119により送風ファン31が隠れるので、見栄えもよい。さらに、送風ファン31から発生する音が防塵防音用カバー119により遮蔽されるので、その音により車室の乗員に与える不快感が減少する。
また、本実施例の防塵防音用カバー119のスリット114側の面は、先端部120が先端縁124側ほど空気流通方向において下流側となっていることから、防塵防音用カバー119の先端部120と空気との摩擦抵抗が小さくなるので、空気導入経路内に導入された空気が防塵防音用カバー119付近で減速することが抑制できる。従って、電池の冷却効果が一層向上する。
次に、本発明の第3実施例を説明する。図16は、電池パック10が搭載された車両の概略断面構成図を示す。図16において、電池パック10が前側座席140(1列目座席或いは2列目座席)と後側座席142(2列目座席或いは3列目座席)との間の床板144下に搭載されている。すなわち、前側座席140と後側座席142との間の床板144下にその床板144を上壁とし、アンダーボディ145を下壁とする電池収容室146が形成され、その電池収容室146内においてアンダーボディ145上に電池パック10が設置されている。この電池収容室146の高さ方向長さは、電池パック10の高さ方向長さよりも僅かに高い程度とされている。従って、電池パック10は床板144を隔てて車室に隣接する位置に設置されている。
前側座席140の下面の後ろ側には凹溝150が形成されており、その凹溝150によって前側座席140の下面のうちの後ろ側と床板144との間には座席下空間152が形成されている。前側座席140の下面のうちの後端には、スリット状の開口154が形成されており、その開口154により座席下空間152と車室とが連通させられている。また、前側座席140のうちの後部側において前側座席140の下面と対向させられる部分の床板144には、床板144の厚み方向に貫通する複数本のスリット156が設けられ、座席下空間152はスリット156により電池収容室146内に形成された吸入室158と連通させられている。上記吸入室158は、電池収容室146の一部であって、送風ファン31の吸入口110が嵌め入れられる円形の開口112を有し車両幅方向に平行な仕切り壁160およびその仕切り壁160に対して略直交し且つ車両前後方向に平行な仕切り壁162とにより仕切られた空間である。
本実施例では、送風ファン31が作動させられると、車室内の空気が、図16の一点鎖線の矢印に示すように、座席下空間152、スリット156、吸入室158、開口112、送風ファン31、空気導入ダクト108、および図16においては図示しない気体流入室32を経て電池セル22に供給される。従って、それらスリット156、吸入室158、開口112、送風ファン31、空気導入ダクト108、気体流入室32が空気導入経路として機能し、スリット156が空気導入経路の開口として機能する。
上述のように、本実施例によれば、床板144を隔てて車室に隣接する位置に電池パック10が設置され、その電池パック10を冷却するための車室内空気が、床板144に設けられたスリット156から導入されることから、空気導入経路が短くなるので、電池パック10を冷却するための空気の流通抵抗が小さくなる。従って、電池パック10の冷却効果が十分に得られる。また、空気導入経路を構成する部品たとえば空気導入ダクト108の長さが短縮されることから、ダクトの部品価格が低下し、電池パック10が安価となる利点がある。
また、本実施例によれば、スリット156は前側座席140の下に設けられており、スリット156が前側座席140により覆われるので、空気導入経路内で空気の流通等により発生する騒音が車室に聞こえにくくなる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明は他の態様において適用される。
たとえば、前述の実施例では、空気導入経路の開口として複数本のスリット96、114、156が用いられていたが、円形或いは矩形の開口が用いられてもよい。
また、前述の実施例のスリット96、114、156には、埃や塵が空気と共に流入することを阻止するための布或いは金属網から成るフィルタが設けられていても差し支えない。
また、図5の実施例の吸入室92内であってスリット116の下方となる位置に、図9に示す防塵防音用カバー119と同様のものを、矩形の開口94を覆うように設けても差し支えない。
また、前述の実施例のスリット96、114は座席下カバーパネル16のうちの車両の幅方向の右側端部或いは左側端部に設けられていたが、電池パック10の全長が短い場合には、空気導入ダクト34或いは108が最短となるように、座席下カバーパネル16の長手方向の中間部に設けられていてもよい。
また、前述の実施例の座席下空間84は、後部座席78の下面のうちその長手方向(車両幅方向)の略全長にわたって形成されていたが、その長手方向の一部に形成されたものであってもよい。
また、前述の実施例の座席下空間84は、後部座席78の下面のうち車両前方側に形成されていたが、車両後方側に形成されてもよい。この場合には、その座席下空間84を車室に連通させるスリット状の開口は、後部座席78の下面のうちの車両後方側端縁と座席下カバーパネル16の車両後方側端縁との間に設けられることが望ましい。
また、前述の第1実施例および第2実施例では、電池パック10は後部座席78下に位置するようにすなわちその後部座席78を支持する座席下カバーパネル16とフロアパネル14との間の収容空間18内に位置するように設けられていたが、車幅方向に十分な収容空間が形成されるのであれば、前部座席下に位置するように設けられてもよい。
また、前述の第3実施例では、電池パック10は前側座席140と後側座席142との間の床下に位置させられていたが、前側座席140よりも車両の長手方向前側や後側座席142よりも車両の長手方向後側の床下に位置指せられてもよい。
また、前述の第2実施例の防塵防音用カバー119に代えて、図17および図18に示すように、その一部に空気流通口164が設けられた防塵防音用カバー166が用いられてもよい。この防塵防音用カバー166が用いられる場合には、空気流通口164を通して空気が流通するので、その先端は、たとえば図17のA−A視断面図である図18のようにフロアパネル14に当接させられてもよい。なお、空気流通口164の縁部168は、図18に示すように、空気流通方向において上流側の縁面170が、縁側(すなわち空気流通口164の中心側)ほど空気流通方向において下流側になるように湾曲させられている。
また、前述の実施例において遮蔽板として機能する防塵防音用カバー119は、送風ファン31の吸引口110から離れるほどフロアパネル14に接近するように傾斜した形状であったが、遮蔽板は、たとえば図19および図20に示す形状など、空気の流通を妨害する形状であれば他の形状であってもよい。図19は、その遮蔽板172の斜視図であり、図20は遮蔽板172が図9の防塵防音用カバー119に代えて、仕切壁104の吸引口110の開口の上側位置に取り付けられた状態を示す図である。遮蔽板172は、仕切壁104の吸引口110の上側位置に固定される長手矩形状の基部174と、その基部174の下縁から斜め下方向に向かう上側平板部176と、その上側平板部176との間に鋭角を形成するように、その上側平板部176の下縁から斜め下方向に向かう下側平板部178とから構成されている。
また、前述の第3実施例では、座席下空間152を形成するために、前側座席140の下面の後ろ側に凹溝150が形成されていたが、前側座席140を車両の前後方向にスライド可能とするために前側座席140の下にレールが設けられる場合など、凹溝150を設けなくても前側座席140の下面と床板144との間に空間が存在する場合には、凹溝150は設けられなくてもよい。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。