次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る複合プリンタの外観を示す図である。この複合プリンタ1は、文書等の原稿をスキャンイメージデータとして取り込むスキャナ機能と、スキャンイメージデータやアプリケーションデータ等の印刷対象データを印刷イメージデータにして印刷用紙に印刷するプリンタ機能とを有している。複合プリンタ1は、その内部に制御装置を備え、この制御装置が統括的に制御して、各種機能を実現している。
同図に示すように、複合プリンタ1の本体上面には、液晶パネルおよび各種ボタンが設けられ、ユーザインターフェース11を形成している。ユーザは、このユーザインターフェース11を介して、原稿の読み取りや印刷の指示、各種読み取り条件設定や印刷条件の設定等を行うことができる。
また、複合プリンタ1の本体上面には、原稿を載置するガラス面を有する原稿台12と蓋13とが設けられている。原稿台12の下方には、図示していないが、原稿台12のガラス面に載置された原稿に光を照射する光源と、その反射光を受ける光センサとが設けられている。複合プリンタ1は、ユーザインターフェース11を介してユーザから画像読み取り指示/印刷指示を受け付けると、原稿台12に載置された原稿を読み取り、内部のメモリ上に所定のデータフォーマットでスキャンイメージデータとして格納する。続いて、複合プリンタ1は、メモリ上に格納されているスキャンイメージデータに基づいて印刷用紙に対する印刷を行う。複合プリンタ1は、印刷後、印刷用紙を排紙トレー14に排出する。
また、複合プリンタ1の本体前面には、外部インターフェースとしてのカードスロット15が設けられている。カードスロット15は、例えばPCMCIA規格に準拠しており、このような規格に準拠したメモリカード(図示せず)を着脱可能に構成されている。複合プリンタ1は、例えば、メモリカードがカードスロット15に挿入され、装着されたことを検出すると、液晶パネルに印刷実行指示を促すメッセージを表示する。ユーザは、これに対して必要に応じて印刷条件を設定するための操作を行って、印刷指示を与えることできる。複合プリンタ1は、ユーザから印刷指示を受け付けると、メモリカード内に記録されている画像データを読み出して、印刷用紙に対する印刷を行う。複合プリンタ1は、印刷後、印刷用紙を排紙トレー14に排出する。
図2は、本実施形態に係る複合プリンタ1のハードウェア構成を示すブロックダイアグラムである。プロセッサ21は、各種の制御プログラムを実行する。つまり、ROM22に格納された各種のプログラムは、プロセッサ21に実行されることにより、他のハードウェアと共働して、複合プリンタに所定の機能を実現させる。本実施形態では、ユーザインターフェース機能、スキャナ機能、イメージ生成機能、および印刷制御機能等が少なくとも実現される。
外部インターフェース回路24は、プロセッサ21がカードスロット15に装着されたメモリカードに対してアクセスを可能にするためのものである。プロセッサ21は、この外部インターフェース回路24を介してメモリカードに記憶された画像データをRAM23にロードした後、設定された印刷条件に従って、そのロードされた画像データに基づく印刷イメージデータを生成する。
スキャナ回路25は、原稿台12に載置された原稿を読み取り、スキャンイメージデータとして取り込むためのものである。プロセッサ21は、このスキャナ回路25により取り込まれたスキャンイメージデータをRAM23にロードした後、設定された印刷条件に従って、スキャンイメージデータに基づく印刷イメージデータを生成する。スキャナ回路25は、画像入力の方式(原稿をレンズで縮小して読み取る縮小光学系方式や、原稿幅のCCDを使用して原稿を等倍に読み取る密着光学系方式など)に応じたものを用いることができる。また、スキャナ回路25は、原稿の色情報を読み取るために、所定の方法(モノクロリニアCCDとカラーフィルタを組み合わせる方法や、それ自体が色分解機能を有するカラーリニアCCDを使用する方法等)に応じたものを用いることができる。
イメージメモリ26は、生成された印刷イメージデータを記憶するためのものである。エンジンコントローラ27は、プリントエンジン28の動作を制御しながら、イメージメモリ26に記憶された印刷イメージデータを読み出して、プリントエンジン28に供給する。エンジンコントローラ27は、例えば、イメージメモリ26に所定のバンド幅の印刷イメージデータが展開された時点で、プロセッサ21から送られる印刷実行命令をトリガとして起動される。
プリントエンジン28は、例えば、紙送り機構やプリントヘッドなどによって構成され、紙などの印刷媒体に印刷を行うものである。プリントエンジン28は、レーザプリンタやシリアルプリンタといったプリンタの種類に応じたものを用いることができる。
ユーザインターフェース回路29は、液晶パネルおよび各種ボタンにより実現されるユーザインターフェース11を制御するためのものである。
図3は、プリントエンジン28に備えられる縁無し印刷に対応した印刷機構の主要部分を概略的に示す。
複合プリンタ1内の紙送り装置によって送られる用紙113の排出経路には、吐出されたインクを受ける面とは反対の面から用紙113を支えるプラテン111が設けられている。プラテン111には、キャリッジ115の走行路に対向した箇所に、キャリッジ115の印刷ヘッドから吐出されたインクを吸収するためのインク吸収体116が埋め込まれている。
インク吸収体116は、例えばウレタン樹脂であり、キャリッジ115の走査方向に沿って長く、紙送り方向に沿って一定の幅を有している。これにより、キャリッジ115の往復走行に伴って、用紙113の上端より上及び下端より下にインクが吐出されてしまっても、そのインクをインク吸収体116が受けて吸収するので、用紙113外に吐出されたインクによってプラテン111が汚れてしまわないようになっている。
また、インク吸収体116は、左端部分117A、右端部分117D、及びそれらの間の所定部分117B及び117Cが、紙送り方向及びそれの逆方向に幅広に(つまり長く)なっている。これにより、キャリッジ115の往復走行に伴って、用紙113の左端より左及び右端より右にインクが吐出されてしまっても、そのインクをインク吸収体116が受けて吸収するので、用紙113外に吐出されたインクによってプラテン111が汚れてしまわないようになっている。なお、幅広になっている部分は、インク吸収体116の特定の部分117A〜117Dだけである。これら特定の部分の117A〜117Dのキャリッジ走行方向での位置は、それぞれ、プラテン111を汚すことなく縁無し印刷することができる複数の用紙サイズにそれぞれ対応している。プラテン111を汚すことなく縁無し印刷することができる用紙サイズは、複合プリンタ1が対応可能な複数の用紙サイズの全てとすることもできるし、或いは、一部の特定のサイズ、例えば規格のA4サイズ(210×297mm)、B5サイズ(182×257mm)、及びはがきサイズ(100×148mm)に限ることもできる。インク吸収体116は、用紙113のサイズが例えばA4サイズであれば、117Aと117Dの部分で用紙113の左端及び右端の外に吐出されたインクを吸収し、用紙113のサイズが例えばB5サイズであれば、117Bと117Dの部分で用紙113の左端及び右端の外に吐出されたインクを吸収し、用紙113のサイズが例えばはがきサイズであれば、117Cと117Dの部分で用紙113の左端及び右端の外に吐出されたインクを吸収する。
以上のような構成により、縁無し印刷しても、用紙113外に吐出されたインクによってプラテン111が汚れてしまうということがないようになっている(なお、図3を参照して説明した構成についてのより具体的な内容は、本願出願人が過去に行った特許出願に添付した明細書及び図面(日本国特許願2000-275965及び2000-295861)に記載されている)。縁無し印刷は、後述するプリンタモード及び複合プリンタモードの場合に、ユーザの要求に応じて行うことができる。
本実施形態は、印刷画像がユーザに視覚的に違和感を与えない程度に原稿画像に対して拡大されるように、スキャナ回路25の制御の下で取り込んだスキャンイメージデータに基づいて印刷イメージデータを生成する際に印刷倍率を調整し、印刷することができる。
印刷倍率(つまり、印刷イメージデータを生成するためにスキャンイメージデータに適用される拡大倍率)は、原稿台上の原稿と、スキャナ機構によりスキャンされるスキャン領域との間のサイズ及び位置の関係に応じて、次のように調整され得る。例えばスキャン領域が原稿と一致するかまたはそれより大きいサイズに設定されて、その内側に原稿を包含する場合には、スキャンされたスキャン領域のイメージに包含された原稿のイメージのサイズが印刷用紙のサイズに対応するように、印刷倍率が調整される。他方、スキャン領域が原稿より小さいサイズに設定されて、それが原稿の領域の内側に包含される場合には、スキャンされたスキャン領域のイメージが印刷用紙のサイズに対応するように、印刷倍率が調整される。ここで、上述した原稿領域またはスキャン領域のイメージが「印刷用紙のサイズに対応する」とは、原稿領域またはスキャン領域のイメージが印刷用紙に完全に重なり合って一致することを意味するより、むしろ好適には、原稿領域またはスキャン領域のイメージの外縁部分が印刷用紙の外縁境界の外側へ、印刷位置制御の誤差を吸収するための僅かな距離だけはみ出すように、原稿領域またはスキャン領域のイメージが印刷用紙のサイズより僅かに大きく拡大されることを意味している。印刷倍率は、スキャン領域と実際の原稿サイズとの関係によって規定されるが、ユーザに違和感を与えないようにするために、好適には104〜106%程度であり、より好適には105%程度である。
より具体的には、前者の例としては、図4に示すように、複合プリンタ1が、原稿サイズとしてA4サイズが指定され、原稿600を取り込む場合、A4サイズの原稿600と一致するか、または、原稿600より僅かに大きくてその原稿600を包含するスキャン領域602を設定し、このスキャン領域602をスキャンする。この場合には、スキャン領域602内の原稿600から外側へはみだ出した外縁部分(ハッチングで示された領域)604は、本来、印刷結果に現れるべきでない余分な領域である。A4サイズの印刷用紙に対して4辺縁無し印刷を行うことが指定された場合、複合プリンタ1は、点線矢印に示されるように、スキャンイメージデータ(スキャン領域602のイメージデータ)を印刷倍率だけ拡大する。このときの印刷倍率は、拡大されたスキャンイメージ610内の原稿イメージ608のサイズ(垂直及び水平寸法)が、印刷用紙606のサイズ(A4サイズ)に対応するように、すなわち、拡大された原稿イメージ608が印刷用紙606より垂直及び水平方向に僅かに大きくて、印刷用紙606を包含するように、調整される。複合プリンタ1は、拡大されたスキャンイメージ610内の原稿イメージ608の外側に部分(ハッチングで示された領域)612を破棄し、原稿イメージ608のデータを印刷に使用する。これにより、前述したスキャン領域602内の余分な領域604が印刷されず、ユーザにとって4辺縁無し印刷として満足のいく印刷結果を得ることができるようになる。また、ロール紙のような垂直方向(典型的には紙送り方向)632に長い連続的な印刷用紙630への2辺縁無し印刷が指定された場合には、上述した印刷倍率は、図22に示すように、拡大されたスキャンイメージ610内の原稿イメージ608のサイズ(この場合は、水平方向634の寸法)が、印刷用紙630のサイズ(この場合は、水平方向634の寸法)に対応するように、すなわち、拡大された原稿イメージ608が印刷用紙630より水平方向634で僅かに大きくて、水平方向634で印刷用紙630を包含するように、調整される。なお、この印刷倍率は、スキャンイメージ608の水平寸法だけでなく垂直寸法にも同様に適用される(つまり、拡大ではスキャンイメージ608の水平と垂直の寸法比が保たれる)から、スキャンイメージ608は垂直方向にも拡大される。図22に示すように、印刷用紙620の下端(紙送り方向での先端)がカットされている場合、印刷処理において、拡大された原稿イメージ608の印刷用紙620に対する位置合わせを、拡大された原稿イメージ608が印刷用紙620の下端から外側へ僅かにはみ出るように行うことで、印刷用紙620の左、右及び下の3辺での縁無し印刷がなされる。
また、後者の例としては、図5に示すように、複合プリンタ1が、原稿サイズとしてA4サイズが指定され、原稿600を取り込む場合、A4サイズの原稿600より小さくて、その原稿600に包含されるようなスキャン領域620を設定し、このスキャン領域620をスキャンする。この場合には、原稿600内のスキャン領域620から外側へはみだ出した外縁部分(ハッチングで示された領域)622は、スキャンされない。A4サイズの印刷用紙に対して4辺縁無し印刷を行うことが指定された場合、複合プリンタ1は、点線矢印に示されるように、スキャンイメージデータ(スキャン領域620のイメージデータ)を印刷倍率だけ拡大する。このときの印刷倍率は、拡大されたスキャンイメージ624のサイズ(垂直及び水平寸法)が、印刷用紙606のサイズ(A4サイズ)に対応するように、すなわち、拡大されたスキャンイメージ624が印刷用紙606より垂直及び水平方向に僅かに大きくて、印刷用紙606の領域を包含するように、調整される。これにより、ユーザにとって4辺縁無し印刷として満足のいく印刷結果を得ることができるようになる。また、ロール紙のような垂直方向(典型的には紙送り方向)632に長い連続的な印刷用紙630への2辺縁無し印刷が指定された場合には、上述した印刷倍率は、図23に示すように、拡大されたスキャンイメージ624のサイズ(この場合は、水平方向634の寸法)が、印刷用紙630のサイズ(この場合は、水平方向634の寸法)に対応するように、すなわち、拡大されたスキャンイメージ624が印刷用紙630より水平方向634で僅かに大きくて、水平方向634で印刷用紙630の領域を包含するように、調整される。なお、この印刷倍率は、スキャンイメージ620の水平寸法だけでなく垂直寸法にも同様に適用される(つまり、拡大では、スキャンイメージ620の水平と垂直の寸法比が保たれる)から、スキャンイメージ620は垂直方向にも拡大される。図23に示すように、印刷用紙620の下端(紙送り方向での先端)がカットされている場合、印刷処理において、拡大された原稿イメージ608の印刷用紙620に対する位置合わせを、拡大された原稿イメージ608が印刷用紙620の下端から外側へ僅かにはみ出るように行うことで、印刷用紙620の左、右及び下の3辺での縁無し印刷がなされる。
図4、図5、図22及び図23に示した例では、複合プリンタ1は、原稿台12上の原稿600に基づいて、スキャン領域602または620を設定する。この場合、複合プリンタ1は、スキャン領域602または620を設定する前に、原稿600が原稿台上の何処に在るかを認識する必要がある。その目的のために、複合プリンタ1は、原稿600を検出する方法、原稿600を想定する方法、及び原稿600の領域をユーザから指定される方法のいずれかを用いることができる。原稿600を検出する方法では、複合プリンタ1は、スキャン領域602または620を設定する前に、原稿台12の全体をスキャンするというプレスキャンを行ない、そして、スキャンされた原稿台12の全体のイメージを処理することで、原稿600を自動的に検出する(例えば、スキャンされた原稿台イメージの中で輝度値が所定の閾値より高い領域を抽出し、その抽出された領域が原稿600の領域であると認識する)。原稿600を想定する方法では、ユーザから指定された原稿600のサイズに応じて予め定められた原稿台上の領域を、原稿600であると想定する(例えば、ユーザからA4サイズが指定された場合、原稿台上の所定のコーナー(原点)から垂直方向へ210mm及び水平方向へ297mmの長方形領域を、原稿600とみなす)。原稿600の領域をユーザから指定される方法では、複合プリンタ1は、プレスキャンを行ない、スキャンされた原稿台イメージを表示して、表示された原稿台イメージの中から任意の領域をユーザが選択することを可能にし、そして、ユーザにより選択された領域を原稿600であると想定する。
図6は、本実施形態に係る複合プリンタ1の動作を説明するためのフローチャートである。同図では、スキャナ機能により原稿を画像として取り込んだ後、それをプリント機能により印刷するまでの処理の一連の流れを1つのフローチャートで示している。
すなわち、ユーザが原稿台12に原稿を載置して蓋13を閉じ、ユーザインターフェース11を操作して、画像読み取り/印刷指示を与えると、複合プリンタ1は、スキャナ回路25の制御の下、スキャナ機構を制御して原稿読み取り動作を行い、読み取った画像をスキャンイメージデータとしてRAM23に一時的に格納する(STEP501)。スキャナ機構による読み取り完了後、複合プリンタ1は、スキャンイメージデータを印刷イメージデータに変換し、これをイメージメモリ26に展開する。このとき、複合プリンタ1は、もとの画像(原稿画像)に対して印刷画像が拡大されるように、予め設定された印刷倍率(例えば105%)にしたがってイメージデータに変換する(STEP502)。そして、複合プリンタ1は、イメージデータに変換終了後、イメージメモリ26に格納されたイメージデータをプリントエンジン28に供給し、印刷用紙に対する印刷を実行する(STEP503)。なお、プリントエンジン28に対する印刷イメージデータの供給は、例えば、イメージメモリ26に所定バンド幅分の印刷イメージデータが格納された段階で、開始されるようにしてもよい。
以上のように、本実施形態によれば、印刷画像がユーザに視覚的に違和感を与えない程度に原稿画像に対して拡大されるように取り込んだスキャンイメージデータに基づいて印刷倍率を調整した印刷イメージデータを生成し、これにしたがって印刷しているので、画像取り込みの際のスキャン領域に余分な領域を含む場合や原稿全体を取り込むことができず余白領域を含む場合であっても、このような余分な領域や余白領域が印刷結果に現れないことになり、4辺縁無し印刷として満足のいく結果を得ることができる。特に、本実施形態によれば、スキャナ機構やプリント機構の機械的精度を向上させることなく、満足のいく4辺縁無し印刷を実現することができる、製品コストを低く抑えたまま、ユーザの要求に応えることができることになる。
次に、本発明に従う複合プリンタの第2の実施形態について説明する。
この複合プリンタは、例えば、図1及び図2に示した構成を有しており、さらに、複合プリンタとしての機能だけでなく、単体のイメージスキャナとしての機能と、単体のインクジェットプリンタとしての機能を兼ね備えている。この複合プリンタは、スキャナモード、プリンタモード、及び複合プリンタモードをユーザが選択可能に有しており、これらのモードをユーザの要求に応じて択一的に実行することができる、すなわちマルチモードに使用することができる(以下、この複合プリンタを「マルチモード複合プリンタ」と称する)。
マルチモード複合プリンタは、スキャナモードを指定された場合には、原稿台の所定位置に置かれた原稿のイメージを光学的に読み取ってスキャンイメージデータを生成し、そのスキャンイメージデータを、パーソナルコンピュータ等の図示しないホスト装置に送る処理を行う。プリンタモードを指定された場合には、マルチモード複合プリンタは、図示しないホスト装置から印刷イメージデータを受けて、その印刷イメージデータが表すイメージを、ユーザ指定の印刷用紙に印刷する処理を行う。複合プリンタモードを指定された場合には、マルチモード複合プリンタは、原稿台に置かれた原稿を読み取って生成したスキャンイメージデータに基づいて印刷イメージデータを生成し、その印刷イメージデータが表す印刷イメージを、ユーザ指定の印刷用紙に印刷する処理を行う。
マルチモード複合プリンタに備えられる図示しない操作パネルには、マルチモード複合プリンタに対して所望の設定や命令をするための複数のボタンと、マルチモード複合プリンタにおいて現在設定されているモードやマルチモード複合プリンタの状態等が表示されるディスプレイ画面が備えられている。ユーザは、この操作パネルを用いて、スキャナモード、プリンタモード、及び複合プリンタモードを切り替えることができる。また、ユーザは、複合プリンタモードの場合には、操作パネルを用いて、後述する「通常複写モード」、「完全縁無し複写モード」、及び「準縁無し複写モード」を選択的に指定したり、複写枚数(部数)を設定したりすることができる。
以下、図7以降を参照して、「通常複写モード」、「完全縁無し複写モード」、及び「準縁無し複写モード」を実行するマルチモード複合プリンタについて詳細に説明する。
図7は、「通常複写モード」を実行した場合の複写結果を示す。なお、以下の説明を分かりやすくするため、この図に示す原稿43のサイズと印刷用紙47のサイズは同一であるものとし、また、複写倍率は、「等倍」であるとする(これらは、以下の図8〜図11についても同様とする)。
「通常複写モード」は、原稿43のイメージを余白有りで複写するためのモードである。このモードは、原稿43のイメージを縁無しで複写するべく他のモード(すなわち、「完全縁無し複写モード」又は「準縁無し複写モード」)が設定された場合であっても、印刷用紙47のサイズが縁無し印刷に対応した上記特定のサイズでなければ自動的に設定されるモードである。
「通常複写モード」では、印刷開始位置がばらつくことによって印刷用紙47の外にインクが吐出されてしまうことを確実に防ぐ(別の観点からすれば、印刷開始位置がばらついても印刷用紙47の上下左右の端に確実に余白を形成する)のに十分な、通常複写用のプリンタマージン45A(例えば+3mm)が設定される。
また、「通常複写モード」では、原稿読取り開始位置がばらついても原稿43のイメージを確実に読取ることが可能なスキャナマージン41が設定される。スキャナマージン41は、通常複写用プリンタマージン45Aよりも小さい値(例えば1.5mm)に設定される(この値は、他のモード「完全縁無し複写モード」及び「準縁無し複写モード」の場合でも同様である)。なぜなら、イメージスキャナ23の機械精度をプリンタ24のそれよりも高くすることが可能であり、それにより、印刷開始位置のばらつきよりも原稿読取り開始位置のばらつきの方を小さくすることができるからである。
「通常複写モード」では、以下のようにして複写が行われる。
すなわち、イメージスキャナは、原稿台に置かれた原稿43の、予め設定されているスキャナマージン41より内側の範囲(つまりスキャン領域)44をスキャンする。これにより、スキャナ回路によって、スキャン領域44内のスキャンイメージ80を表したスキャンイメージデータが生成される。
マルチモード複合プリンタ内のプロセッサは、スキャンイメージデータが表すスキャンイメージ80のサイズを、通常複写用のプリンタマージン45Aだけ印刷用紙47の縁から内側に入った印刷用紙47内の領域(印刷領域)100に収まるサイズに修正して、サイズ修正されたスキャンイメージ44Aを表す印刷イメージデータを生成し、その印刷イメージデータに基づいてスキャンイメージ44Aを印刷用紙47に印刷する。
具体的には、マルチモード複合プリンタ内のプロセッサは、通常複写用プリンタマージン45Aに基づいて、スキャンイメージ80の右端及び下端を含む部分から、通常複写用プリンタマージン45Aと同じ幅を持った部分44Bをトリムする。さらに、プロセッサは、トリムされて残った方形領域の上端及び左端を含む部分から、通常複写用プリンタマージン45Aからスキャナマージン41を差し引いたマージンを含んだ部分44Cをトリムする(部分44Cは、上端及び左端を含む部分の代わりに、下端及び右端を含む部分であっても良い)。そして、プロセッサは、エンジンコントローラを制御して、スキャナイメージ80から上述した部分44B及び44Cをトリムすることにより残った印刷対象部分(つまりサイズ修正されたスキャンイメージ)44Aを、印刷用紙47の中央に位置するように(換言すれば、印刷対象部分44Aの中心が、印刷用紙47の中心に重なるように)用紙47に印刷する。これにより、印刷対象部分44Aが印刷された印刷用紙47の上下左右の端近傍には、通常複写用プリンタマージン45Aに等しい余白が生じる。なお、印刷対象部分44Aを用紙47の中央に位置させるための印刷開始位置は、印刷対象44Aの左上端を原点として、予め決められていても良いし、1ページ印刷する毎に算出されて決められても良い。
以上のような方法により、スキャナマージン41がプリンタマージン45Aよりも小さくても、プリンタマージン45Aに等しい余白を確保した等倍の複写が可能になる。
図8は、「完全縁無し複写モード」を実行した場合の複写結果を示す。
「完全縁無し複写モード」は、原稿43のイメージを、全く余白が形成されることなく複写するためのモードである(このモードは、例えば、印刷用紙47のサイズが縁無し印刷に対応した上記特定のサイズでなければ実行することができない)。
「完全縁無し複写モード」では、スキャンイメージ80が、印刷用紙47のサイズよりも大きいサイズに拡大された上で印刷用紙47に印刷される。縁無し印刷を確実に成功させるためのスキャンイメージのサイズとしては、マルチモード複合プリンタの印刷機構の機械制度に基づく印刷開始位置のばらつきを考慮すると、例えば、スキャンイメージを用紙47の中央に配置したときに、そのイメージが用紙の上下左右の縁から少なくとも3mmはみ出すぐらいのサイズである。このはみ出した部分200の幅を広義に解釈して「プリンタマージン」と言えば、「完全縁無し複写モード」では、完全縁無し複写用のプリンタマージン45Bが予め設定されており、そのプリンタマージン45Bに基づいて複写が行われることになる。完全縁無し複写用のプリンタマージン45Bは、印刷されるイメージのサイズを確実に用紙47からはみ出るようなサイズにし以って確実に余白が形成されない印刷を実行することを目的として設定されるものであり、印刷されるイメージの全体が確実に用紙47内に収まるようにし以って用紙47外にインクが吐出されてプラテン111が汚れてしまわないようにすることを目的として設定された通常複写用のプリンタマージン45Aとは対称的なものである。そこで、この実施形態では、通常複写用のプリンタマージン45Aのサイズを正の値で示し、完全縁無し複写用のプリンタマージン45Bを負の値(例えば−3mm)で表すことにする。
さて、「完全縁無し複写モード」では、以下のようにして複写が行われる。
すなわち、スキャナ回路は、予め設定されたスキャナマージン41だけ原稿43の縁から内側に入った原稿43内の領域(つまりスキャン領域内)のイメージを読み取り、スキャンイメージ80を取得する。
マルチモード複合プリンタ内のプロセッサは、プリンタマージン45Bに基づいて、取得されたスキャンイメージ80を拡大したイメージ80Aを生成する。ただし、ここで拡大されたイメージ80Aの倍率は、従来の縁無し印刷プリンタの技術をそのまま従来の複合プリンタに適用したものよりも確実に小さい。なぜなら、この実施形態では、スキャナマージン41が、通常複写のための大きいプリンタマージン45Aと等しいサイズにされておらず、スキャナ機構の高い機械精度に応じた小さいサイズに設定されているからである。これにより、縁無しの複写を行っても等倍に近い複写が可能になる。
さて、プロセッサは、スキャンイメージ80を拡大してイメージ(以下、拡大スキャンイメージ)80Aにしたら、エンジンコントローラを制御して、拡大スキャンイメージ80Aにおける原稿43の中心C1が複写結果として印刷用紙47の中心C2に重なるように、拡大スキャンイメージ80Aを用紙47に印刷する。これにより、印刷用紙47の中央に、原稿43のスキャン領域内のイメージが縁無しで複写される(但し、スキャンイメージ80は印刷用紙47のサイズよりも大きく拡大されるため、スキャンイメージ80の全範囲が用紙47上に乗るわけではない)。なお、このような複写を行うための印刷開始位置は、予め決められていても良いし、1ページ印刷する毎に算出されて決められても良い。
図9は、「準縁無し複写モード」を実行した場合の複写結果を示す。
「準縁無し複写モード」は、「完全縁無し複写モード」よりも所望の複写倍率(例えば等倍)に近い倍率で、縁無しの原稿イメージを得るためのモードである。
「準縁無し複写モード」では、通常複写用のプリンタマージン45A(例えば+3mm)よりも小さくて完全縁無し複写用のプリンタマージン45B(例えば−3mm)よりも大きいサイズ(例えば−1.5mm)のプリンタマージン(以下、準縁無し複写用のプリンタマージン)45Cが設定される。このため、「準縁無し複写モード」では、印刷されるときの拡大スキャンイメージ80Bのサイズは、通常複写用のプリンタマージン45Aだけ印刷用紙47の縁から内側に入った用紙47内の領域に収まるサイズより大きく、且つ、「完全縁無し複写モード」において印刷される読取りイメージ80Aのサイズよりも小さくなる。その結果、「準縁無し複写モード」で複写された場合には、全く余白が形成されないか、或いは、余白が形成されても「通常複写モード」の場合よりも狭い余白が印刷用紙47上の少なくとも1つの縁に形成されるかのいずれかが起こる。全く余白が形成されない複写が行われ得るので、「準縁無し複写モード」は、「完全縁無し複写モード」の場合と同様に、印刷用紙47のサイズが縁無し印刷に対応した上記特定のサイズでなければ実行することができない。
「準縁無し複写モード」では、「完全縁無し複写モード」の場合と同様にして複写が行われる。
すなわち、スキャナ回路は、予め設定されたスキャナマージン41だけ原稿43の縁から内側に入った原稿43内の領域のイメージを読み取り、スキャンイメージ80を取得する。
マルチモード複合プリンタ内のプロセッサは、プリンタマージン45Cに基づいて、取得されたスキャンイメージ80を拡大してイメージ(以下、拡大スキャンイメージ)80Bを生成する。ここで拡大スキャンイメージ80Bの倍率は、上述したように、「完全縁無し複写モード」の場合よりも小さい。これにより、縁無し印刷に成功したときは、複写されたイメージは、「完全縁無し複写モード」による縁無しのイメージよりも所望倍率(例えば等倍)に近いイメージになっている。
さて、プロセッサは、拡大スキャンイメージ80Bを生成したら、エンジンコントローラを制御して、拡大スキャンイメージ80Bにおける原稿43の中心C1が複写結果として印刷用紙47の中心C2に重なるように、拡大スキャンイメージ80Bを用紙47に印刷する。これにより、印刷用紙47の中央に、原稿43のスキャン領域内のイメージ80が縁無しで複写され得る。なお、このような複写を行うための印刷開始位置は、予め決められていても良いし、1ページ印刷する毎に算出されて決められても良い。
以上が、「準縁無し複写モード」の説明である。なお、このモードにおいて、プリンタマージン45Cは、上述した条件を満たしていれば(すなわち、通常複写用のプリンタマージン45Aから完全縁無し複写用のプリンタマージン45Bの範囲内であれば)、どのようなサイズであっても構わない。例えば、図10に示すように、準縁無し複写用のプリンタマージン45Cを0mmとすれば、ユーザ所望の複写倍率(例えば等倍)に最も近い完全な縁無し複写を行うことが(確実ではないが)できる。また、図11に示すように、準縁無し複写用のプリンタマージン45Cをスキャナマージン41と同じ1.5mmとすれば、ユーザの要求に完全にマッチした複写倍率で、(わずかな余白は生じるが)実質的な縁無し複写を行うことができる(この場合、スキャンイメージ80は、そのまま印刷されても良いし、準縁無し複写モード用のプリンタマージン45Cに基づいて所定の部分44Dがトリムされた後に印刷されても良い)。
また、「準縁無し複写モード」では、所定のアルゴリズムに従って(例えばマルチモード複合プリンタの状態に基づいて)、準縁無し複写用のプリンタマージン45Cが上述した範囲内で自動的に調節されるようにしても良い。具体的には、スキャンイメージ80の倍率が特定の範囲内(例えば、ユーザ所望の複写倍率が100%(等倍)であれば100%〜105%の範囲内)で自動的に調節されることによって、準縁無し複写モード用のプリンタマージン45Cが上述した範囲内で調節されても良い。スキャンイメージ80の倍率が調節された場合、例えば図12に示すように、調節された倍率に基づいて拡大されたスキャンイメージ80Aの印刷開始位置も、計算又は予め用意されているテーブル(各倍率に対応した各印刷開始位置が記録されているテーブル)に基づいて調節される。
以下、上述したマルチモード複合プリンタにおいて実行される複写の処理流れを図13を参照して説明する。なお、以下の説明では、説明の便宜上、原稿と印刷用紙のサイズは同一であるものとし、印刷用紙のサイズは、完全縁無し複写に対応したサイズであるものとする。また、ユーザに指定される複写倍率は等倍であるものとする。
マルチモード複合プリンタは、操作パネル上の複写実行ボタン(図示せず)が押されたときに、複写を開始する(ステップS0)。
このとき、ユーザに指定されているモードが「通常複写モード」である場合には(S1で「通常複写モード」)、以下のような流れで処理が行われる(なお、以下の説明は、図13を参照する)。
すなわち、まず、原稿台に置かれた原稿のイメージがスキャナマージン41(例えば1.5mm)に基づいて読み取られて(S2)、スキャンイメージ80が取得される。そして、そのスキャンイメージ80は、通常複写用のプリンタマージン45A(例えば3mm)に基づいて、先に説明したようにして、スキャンイメージ80からそれの周縁部分44B及び44Cがトリムされる(S3)。トリムされて残った部分44Aは、上記のように計算又は予め用意されているテーブルに基づいて印刷開始位置が調節された後(S8)、印刷用紙47の略中央に印刷される(S9)。
また、複写を開始するとき(ステップS0)、ユーザに指定されているモードが「完全縁無し複写モード」である場合には(S1で「完全縁無し複写モード」)、以下のような流れで処理が行われる(なお、以下の説明は、図12と共に図7を参照する)。
すなわち、まず、原稿台に置かれた原稿のイメージが読み取られて(S4)、スキャンイメージ80が取得される。そして、そのスキャンイメージ80は、完全縁無し複写用のプリンタマージン45B(例えば−3mm)に基づいて拡大される(S5)。拡大されたスキャンイメージ80Aは、上記のように計算又は予め用意されているテーブルに基づいて印刷開始位置が調節された後(S8)、印刷用紙47に印刷される(S9)。
また、複写を開始するとき(ステップS0)、ユーザに指定されているモードが「準縁無し複写モード」である場合には(S1で「準縁無し複写モード」)、以下のような流れで処理が行われる(なお、以下の説明は、図13と共に図9〜図11を参照する)。
すなわち、まず、原稿台に置かれた原稿のイメージが読み取られて(S11)、スキャンイメージ80が取得される。そして、そのスキャンイメージ80のサイズは、予め設定されている又はこの複写時に所定のアルゴリズムで算出された準縁無し複写用のプリンタマージン45C(例えば+3mm〜−3mmの範囲内の或る値)に基づいて修正(若干の拡大(例えば101〜105%のいずれかの倍率での拡大)、或いは、特定部分のトリム)される(S7)(但し、準縁無し複写用のプリンタマージン45Cのサイズがスキャナマージン41のサイズと同一であれば、修正する必要無し)。サイズ修正されたイメージは、上記のように計算又は予め用意されているテーブルに基づいて印刷開始位置が調節された後(S8)、印刷用紙47に印刷される(S9)。
以上が、この実施形態に係るマルチモード複合プリンタにおける複写の流れである。
なお、この流れにおいて、原稿43と用紙47のサイズが異なっていれば、マルチモード複合プリンタは、原稿43と用紙47のサイズの違いに基づいて(原稿43と用紙47の各サイズは、所定のセンサにより認識しても良いし、ユーザから通知されることによって認識しても良い)、自動的に複写倍率を調整することができる(換言すれば、原稿読取りイメージのサイズを調整することができる)。
例えば、原稿43のサイズが写真のL版(サービス版)で用紙47のサイズがA4であれば、原稿43のイメージを用紙47の全体に適切に通常複写するべく複写倍率を233%に設定する(以下、この機能を「フィットページ機能」と称する)。この場合、「準縁無し複写モード」では、マルチモード複合プリンタは、準縁無し複写用のプリンタマージン45Cを上述した範囲内(すなわち、通常複写用のプリンタマージン45A〜完全縁無し複写用のプリンタマージン45Bの範囲内)で調節するために、上記調整した複写倍率「233%」を更に特定の範囲内(例えば233%〜252%の範囲内)で調節することができる。調節された倍率に基づいてサイズ修正されたスキャンイメージの印刷開始位置も、図14に示すように、計算又は予め用意されているテーブル(各倍率に対応した各印刷開始位置が記録されているテーブル)に基づいて調節することができる。
また、上述した流れにおいて、ユーザに指定された印刷用紙47のサイズが縁無し印刷に対応したサイズでない場合に、「完全縁無し複写モード」又は「準縁無し複写モード」が指定されたときは、指定された複写モードを実行することができない旨のメッセージが、操作パネルのディスプレイ画面に表示される。
また、上述した流れにおいて、等倍より大きい複写倍率(つまり拡大複写)又は等倍より小さい複写倍率(つまり縮小複写)がユーザから指定されているときは、スキャンイメージ80のサイズが、その複写倍率に基づいて拡大又は縮小される。拡大又は縮小された原稿読取りイメージは、上述の各種の複写モードにおいて、プリンタマージン45A、45B、又は45Cを基にした印刷領域に収まらない場合は、上記印刷領域に収まるようにサイズ修正(縮小、又は、印刷領域からはみ出した部分がトリム)される。一方、拡大又は縮小されたスキャンイメージは、プリンタマージン45A、45B、又は45Cを基にした印刷領域に収まる場合は、特にサイズ修正されること無くそのまま、或いは、その印刷領域にマッチするサイズに拡大された上で、印刷用紙47の略中央に印刷される。
また、上述した流れにおいて、マルチモード複合プリンタは、指定された複写倍率(又はフィットページ機能によって算出された複写倍率)と、指定された複写モードとのうちどちらを優先するかの選択を受付けても良い。この場合、複写倍率を優先することを選択された場合は、マルチモード複合プリンタは、その複写倍率に従ってスキャンイメージ80のサイズを修正した結果、たとえ、サイズ修正されたイメージをそのまま印刷したのではユーザ指定の複写モードを遂行することができなくても(例えば、「完全縁無し複写モード」を指定されているにも拘わらずに余白が生じる印刷がされてしまう場合であっても)、指定されている複写倍率に従って、そのサイズ修正されたイメージをそのまま印刷する。一方、マルチモード複合プリンタは、複写モードを優先することを指定された場合、ユーザ指定の複写倍率に従ってサイズ修正されたイメージをそのまま印刷したのではユーザ指定の複写モードを遂行することができないときは(例えば、「完全縁無し複写モード」を指定されているにも拘わらずに余白が生じる印刷がされてしまうときは)、ユーザ指定の複写モードを遂行すべく、サイズ修正されたイメージを更にサイズ修正した上で印刷する。
以上、上述した第2の実施形態によれば、スキャナマージン41が、通常複写のための大きいプリンタマージン45Aと等しいサイズにされること無く、スキャナ機構の高い機械精度に応じた小さいサイズに設定される。これにより、従来の縁無し印刷プリンタの技術をそのまま従来の複合プリンタに適用したものよりも、ユーザ所望の倍率(例えば等倍)に近い縁無しの複写が可能になる。
また、上述した第2の実施形態によれば、通常複写と完全縁無し複写との中間的な複写を実行するためのモード「準縁無し複写モード」が用意される。準縁無し複写モードでは、スキャンイメージ80のサイズが、通常複写のときよりも大きく、完全縁無し複写のときよりも小さく修正される。このため、ユーザ所望の倍率(例えば等倍)により近い倍率で、完全縁無しの複写が行われ得る。
ところで、この第2の実施形態では、以下のような変形例も考えられる。
すなわち、マルチモード複合プリンタの操作パネル(或いは、マルチモード複合プリンタにホスト装置が接続されていればそのホスト装置のディスプレイ画面)に、図15に例示するような、プリンタマージン調節画面1000を表示する。プリンタマージン調節画面1000を用いて、プリンタマージンを所定の範囲内で自由に調節することができる。以下、プリンタマージン調節画面1000について詳細に説明する(なお、この実施形態では、スキャナマージンは「1.5mm」とする)。
プリンタマージン調節画面1000には、原稿サイズ表示エリア1001と、指定印刷倍率表示エリア1005と、印刷用紙サイズ表示エリア1002と、プリンタマージン調節エリア1003と、プリンタマージン調節後印刷倍率表示エリア1004とが設けられている。
原稿サイズ表示エリア1001には、原稿台60にセットされた原稿のサイズが表示される。なお、このエリア1001に表示される原稿サイズは、マルチモード複合プリンタが自動的に識別したものであっても良いし、ユーザが手動で入力したものであっても良い。
印刷用紙サイズ表示エリア1002には、印刷対象として現在設定されている用紙のサイズが表示される。
指定印刷倍率表示エリア1005には、ユーザに手動で指定された印刷倍率(例えば100%)が表示される。なお、例えば、原稿サイズ表示エリア1001に表示される原稿サイズと、印刷用紙サイズ表示エリア1002に表示される印刷用紙サイズとが異なる場合には、このエリア1005に表示される印刷倍率は、ページフィット機能により自動的に調節された印刷倍率であっても良い。
プリンタマージン調節エリア1003には、複数種類(例えば5種類)のプリンタマージンがタッチパネル式等の方法で選択可能に表示される。また、プリンタマージン調節エリア1003には、選択可能な複数種類のプリンタマージンの各々に対して、そのプリンタマージンで実際に印刷した場合にどのように印刷されるかの説明(どのように印刷されるかを識別することができるマーク等であっても良い)も表示されている。
プリンタマージン調節後印刷倍率表示エリア1004には、上述した複数種類のプリンタマージンにそれぞれ対応した複数種類(例えば5種類)のプリンタマージン調節後印刷倍率が表示されている。「プリンタマージン調節後印刷倍率」とは、指定された印刷倍率において、どのようにプリンタマージンを設定するとどのような印刷倍率に変更されてしまうかを表す。この図で言えば、例えば、100%印刷(つまり等倍印刷)を指定した場合に、スキャンマージン「1.5mm」と同じ大きさのプリンタマージン「1.5mm」を選択すれば、確実に100%印刷できることが表されている。また、例えば、100%印刷を指定したとしても、スキャナマージン「1.5mm」と大きく異なるプリンタマージン「−3mm」に設定してしまえば、印刷倍率は105%と大きくなってしまうことが表されている。プリンタマージン調節後印刷倍率表示エリア1004に表示される各々のプリンタマージン調節後印刷倍率は、指定される印刷倍率(つまり指定印刷倍率表示エリア1005に表示される印刷倍率)が変わればそれに応じて自動的に変化する。
この実施形態では、ユーザは、このプリンタマージン調節画面1000において、複数種類のプリンタマージンの中から所望のプリンタマージンを選択することができ、その選択されたプリンタマージンに基づいて複写が行われる。これにより、好みに合った複写結果を精度良く得ることができるようになる。
なお、プリンタマージンの調節形態は、図15に示した形態に限られない。例えば、所定値刻みで増加又は減少させるような方法でも良い。
上述の実施形態に様々な変形を加えることもできる。例えば、複合プリンタにおけるプリンタ機構は、インクジェットプリンタに限らず、他の種類のプリンタ、例えば、レーザプリンタであっても良い。また、縁無し印刷可能な用紙サイズは、上記3種類に限定されない。それより多くても少なくも良い(例えば、写真のL版や2L版も、縁無し印刷可能な用紙サイズとするように印刷機構等を構成することができる)。
図16は、本発明に従う複合プリンタの第3の実施形態の要部の構成と機能を示す。
この複合プリンタは、図1に示したような機械的構造を有し、そして、図16に示すように、その内部に、スキャナ回路210、ASIC(Application Specific IC)220、ファームウェア(つまり、ファームウェアを実行するマイクロプロセッサ)230、プリントエンジン240及び記憶装置250を有する。
スキャナ回路210は、イメージスキャン処理211を行なって、原稿台上に置かれている原稿のイメージをスキャンして読み取る。このとき、ファームウェア230は、スキャン制御231を行なって、ユーザにより指定された原稿サイズに応じて決まるスキャン領域をスキャンするようにイメージスキャン処理211を制御する。スキャナ回路210から出力された原稿のスキャンイメージデータ251は、例えばRAM又はハードディスクのような記憶装置250に一時的に記憶される。
ASIC220は、記憶装置250からスキャンイメージデータ251を読み込み、そして、イメージ拡大処理221を行なって、そのスキャンイメージデータ251を幾分拡大する(例えば、原稿サイズがA4版のときは拡大率は105%、原稿サイズが葉書サイズのときは拡大率は109%、など)。拡大されたイメージデータ252は、記憶装置250に一時的に記憶される。その後、ASIC220は、記憶装置250から拡大イメージデータ252を読み込み、そして、色変換・ハーフトーニング処理222を行なって、その拡大イメージデータ252(例えば、RGBフルカラーイメージデータ)を、インクドットのマトリックスで擬似的に元イメージを表現した拡大ドットイメージデータ253(例えば、CMYKバイナリイメージデータ)に変換する。拡大ドットイメージデータ253は、記憶装置250に一時的に記憶される。ところで、この実施形態では、イメージ拡大処理221と色変換・ハーフトーニング処理222を行なうために、ASICを使用しているが、これは例示に過ぎず、必ずしもそうである必要はない。ASICに代えて又はそれと併用して、例えば、ファームウェアのようなコンピュータプログラムを実行することで、イメージ拡大処理221と色変換・ハーフトーニング処理222の一方又は双方を行なうこともできる。
ファームウェア230は、記憶装置250から拡大ドットイメージデータ253を読み込み、そして、トリミング処理232を行なって、拡大ドットイメージデータ253から不要な周縁部分を除去した残り部分を有効な印刷イメージデータ254として取り出す。取り出された印刷イメージデータ254は一時的に記憶装置250に記憶され、その後、プリントエンジン240に転送される。プリントエンジン240は、印刷イメージデータ254を用いてプリントヘッドを駆動することでプリントアウトを生成する。
図17は、4辺縁無し複写を行なう場合における、スキャナ回路210によってスキャンされる原稿台のスキャン領域を説明するための、原稿台の平面図を示す。
図17において、参照番号260は、この複合プリンタのケーシングにより構成される原稿台用のフレームを示す。このフレーム260内に、ガラス板の原稿台261がはめ込まれている。ユーザは、ガラス原稿台261上に所望サイズの原稿を載置して、載置された原稿のサイズを例えばA4サイズ又はB5サイズのように、複合プリンタに対して指定することができる。複合プリンタは、ガラス原稿台261上に載置された実際の原稿のサイズや配置を知らないが、しかし、ユーザ指定されたサイズの原稿262が、ガラス原稿台261上に規定の姿勢と配置で(例えば、図17に例示するように、その原稿262の左上端、上短辺及び左長辺がそれぞれガラス原稿台261の左上端、上短辺及び左長辺に一致した姿勢と配置で)、載置されているものと想定することができる。このように想定された原稿262を、以下、実際の原稿と区別する意味で「想定原稿」という。
複合プリンタは、ガラス原稿台261上での想定原稿262の占める領域をその外側へ所定寸法の上下左右マージン264、265、266及び267分だけ若干拡大させ、その拡大された領域263をスキャン領域として設定する。要するに、想定原稿262が上下左右マージン264、265、266及び267分の余裕をもってスキャン領域263内に完全に包含されるように、スキャン領域263が設定される。このようにスキャン領域263を想定原稿262より適度に大きく設定することで、原稿台261上に置かれた実際の原稿のサイズがユーザ指定されたサイズと一致している限り、実際の原稿の姿勢と配置が上記の規定のそれから多少ずれていても、及び、スキャナ機構の機械的精度に起因して実際のスキャン領域が設定されたスキャン領域263から位置的に僅かにずれたとしても、大抵の場合、実際の原稿は実際のスキャン領域内に入ることになる(つまり、実際の原稿の全領域がスキャンされることになる)。例えば、上及び左マージン264及び266が1.5mm、下及び右マージン265及び267が3mmとすることができる。
複合プリンタは、このように想定原稿262より若干大きいスキャン領域263をスキャンして、そのスキャン領域263のイメージデータを、図16に示したスキャンイメージデータ251として出力する。上述したように、大抵の場合、出力されたスキャンイメージデータ251には、ガラス原稿台261上に置かれた実際の原稿の全領域のイメージデータが包含されている。
図18は、4辺縁無し複写を行なう場合における、イメージ拡大処理221とトリミング処理232を説明するための、イメージのサイズを示す図である。
図18に矢印279で示すように、イメージ拡大処理221では、スキャン領域263のイメージデータ(図16のスキャンイメージデータ251)が、その中心点263Cを中心にして、所定の拡大率で拡大されて、図示の領域(以下、拡大スキャン領域)271のサイズをもつイメージデータになる。この拡大スキャン領域271のイメージデータが、図16に示した拡大イメージデータ252である。この拡大スキャン領域271のイメージデータ内では、元の想定原稿262のイメージデータは、矢印278に示すように、予めユーザにより指定された印刷媒体(印刷用紙)272より若干大きい領域(以下、拡大用紙領域という)273のサイズをもつイメージデータに拡大される。この拡大用紙領域273は、印刷媒体272のサイズを外側へ所定寸法の上下左右のプリンタマージン274、275、276及び277分だけ拡大したサイズに等しい。
その後、トリミング処理232では、拡大スキャン領域271のイメージデータのうち、拡大用紙領域273の外側の部分280(図18ではクロスハッチングで示されている)が除去されて、拡大用紙領域273のイメージデータだけが取り出される。こうして取り出された拡大用紙領域273のイメージデータが、図16に示す印刷イメージデータ254である。この印刷イメージデータ254がプリントエンジン340に転送されて、印刷ヘッドを駆動する。
上述したように印刷イメージデータ254(拡大用紙領域273のイメージデータ)は、印刷媒体272のサイズを外側へ所定寸法の上下左右のプリンタマージン274、275、276及び277分だけ拡大したサイズに等しい。これにより、プリントエンジン340の紙送り機構の機械的精度に起因してプラテン上に供給される実際の印刷媒体の位置が規定位置から若干ずれたとしても、大抵の場合、その実際の印刷媒体は、印刷ヘッドによってスキャンされることになるプラテン上の印刷イメージデータの領域(拡大用紙領域273)内に完全に入ることになる。これにより、4辺縁無し複写が可能になる。ここで、上記上下左右のプリンタマージン274、275、276及び277の具体的寸法としては、例えば3mmを採用することができる。
必ずしもそうであるわけではないが、多くの場合、原稿サイズと印刷媒体のサイズは同じである。この場合、イメージ拡大処理221で用いる拡大率の具体的値として、例えば、指定された原稿サイズが規格のA4サイズ(210×297mm)であれば例えば105%、指定された原稿サイズが葉書サイズ(100×148mm)であれば例えば109%が採用できる。
図19は、本発明に従う複合プリンタの第4の実施形態の要部の構成と機能を示す。
この複合プリンタは、図1に示したような機械的構造を有し、そして、図19に示すように、その内部に、スキャナ回路310、ASIC(Application Specific IC)320、ファームウェア(つまり、ファームウェアを実行するマイクロプロセッサ)330、プリントエンジン340及び記憶装置350を有する。
スキャナ回路310は、プレスキャン処理311及び本スキャン処理312を手動又は自動で行なうことができる。4辺縁無し複写を行なう場合、スキャナ回路310は、自動的に、プレスキャン処理311と本スキャン処理312をこの順序で連続して自動的に行なう。プレスキャン処理311及び本スキャン処理312が行なわれるとき、ファームウェア330は、スキャン制御332を行なって、ぞれぞれの処理のスキャン領域と解像度を制御する。
プレスキャン処理311では、原稿が置かれる可能性のある全領域(例えば、ガラス原稿台の全体領域)が、所定の低い解像度(例えば、50dpi)で高速にスキャンされる。プレスキャン処理311によって得られた原稿台全体のプレスキャンイメージデータ351は、例えばRAM又はハードディスクのような記憶装置350に一時的に記憶される。
プレスキャン処理311が行なわれた後、ファームウェア330は、記憶装置350からプレスキャンイメージデータ351を読み込み、そして、プレスキャンイメージデータ351に対して原稿領域検出処理331を行なって、原稿台上における実際の原稿の領域を検出する。
原稿領域検出処理331の方法には、様々な方法が採用し得る。その内の一つを例示すると以下の(1)〜(5)の手順のとおりである。
(1) プレスキャンイメージデータ351の各画素の輝度値が、所定のしきい値に基づき2値化される。しきい値は、例えば、輝度値の範囲が0〜255である場合、例えば210とすることたができる。
(2) 2値プレスキャンイメージデータ351が低解像度化される。例えば、2値プレスキャンイメージデータ351の4×4=16画素についてOR演算を行った結果が、低解像度化された2値プレスキャンイメージデータ351の1画素になる。この例では、2値プレスキャンイメージデータ351の解像度は元の4分の1に低下する。なお、以下では、2値プレスキャンイメージデータ351の元の解像度を第2解像度、低解像度化後の解像度を第1解像度と呼ぶこととする。
(3) 低解像度化で得られた第1解像度の2値プレスキャンイメージデータ351に対してラベリング処理を適用する。ラベリング処理には種々のアルゴリズムを用いることができるが、一例として8方向連結に基づく2パス方式のラベリング処理を用いることができる。ラベリング処理の結果、第1解像度の2値プレスキャンイメージデータ351内から、画素値が1であって互いに連結している画素群(画素値1のラベル領域)が抽出される。
(4) 抽出されたラベル領域に対して、ノイズ除去処理を適用して、原稿をプレスキャンしたい際に入り込んだゴミや埃などに起因するノイズ領域をラベル領域から除去する。
(5) ノイズ除去処理の後、ラベル領域を完全に包囲する最小の矩形領域を、原稿領域として抽出する。
以上のようにして、プレスキャンイケージデータ351から原稿領域が検出されると、その原稿領域の原稿台上での位置を表した原稿領域データ355が記憶装置350に一時的に記憶される。プレスキャンイメージデータ351は記憶装置350から消去される。
この後、スキャナ回路310による本スキャン処理312が自動的に実行される。本スキャン処理312のとき、ファームウェア330は、原稿領域データ355を用いて、検出された原稿領域の全域が完全にスキャンされるように(つまり、検出された原稿領域がスキャン領域内に完全に包含されるように)、スキャン領域を制御する。この場合、スキャン領域は、検出された原稿領域に正確に一致するように制御されても、あるいは、検出された原稿領域よりも所定のスキャナマージン分だけ若干大きくなるように制御されてもよい。本スキャン処理312で得られた本スキャンイメージデータ352は記憶装置350に一時的に記憶される。
ASIC320は、記憶装置350から本スキャンイメージデータ352を読み込み、そして、イメージ拡大処理321を行なって、本スキャンイメージデータ352を幾分拡大する。拡大されたイメージデータ352は、記憶装置350に一時的に記憶される。その後、ASIC320は、記憶装置350から拡大イメージデータ353を読み込み、そして、色変換・ハーフトーニング処理322を行なって、その拡大イメージデータ353(例えば、RGBフルカラーイメージデータ)を、インクドットのマトリックスで擬似的に元イメージを表現した拡大ドットイメージデータ354(例えば、CMYKバイナリイメージデータ)に変換する。拡大ドットイメージデータ354は、記憶装置350に一時的に記憶される。なお、ASICに代えて又はそれと併用して、例えば、ファームウェアのようなコンピュータプログラムを実行することで、イメージ拡大処理321と色変換・ハーフトーニング処理322の一方又は双方を行なうようにしてもよい。
ファームウェア330は、記憶装置350から拡大ドットイメージデータ354を読み込み、そして、トリミング処理333を行なって、拡大ドットイメージデータ354から不要な周縁部分を除去して、その残り部分を有効な印刷イメージデータ356として取り出す。取り出された印刷イメージデータ356は一時的に記憶装置350に記憶され、その後、プリントエンジン340に転送される。プリントエンジン340は、印刷イメージデータ356を用いてプリントヘッドを駆動することでプリントアウトを生成する。
図20は、4辺縁無し複写を行なう場合における、プレスキャンと本スキャンにおけるスキャン領域を説明するための、原稿台の平面図を示す。
図20において、この複合プリンタのケーシングにより構成される原稿台用のフレーム260内に、ガラス板の原稿台261がはめ込まれている。ユーザは、ガラス原稿台261上に所望サイズの原稿362を載置して、複合プリンタに対して4辺縁無し複写の実行を要求することができる。すると、複合プリンタは、上述したプレスキャン処理311を行なう。プレスキャン処理311では、原稿362が置かれている可能性のある全領域を包含する領域、例えば、ガラス原稿台261より若干広い領域361に、スキャン領域が設定される。複合プリンタは、このプレスキャンのスキャン領域361を高速にスキャンして、このスキャン領域361のイメージデータ(図19のプレスキャンイメージデータ351)を出力する。
続いて、上述した原稿領域検出処理331が行なわれて、スキャン領域361の中から実際の原稿領域362が検出される。その後、上述した本スキャン処理312が行なわれて、検出された原稿領域362がスキャンされる。本スキャン処理312でのスキャン領域は、原稿領域362と全く同じであっても、それより所定のスキャナマージン分だけ若干大きくても良い(要するに、原稿領域362がスキャン領域263内に完全に包含されるようになっていればよい)が、以下では、説明を簡単にするため、原稿領域362と全く同じスキャン領域が採用された場合を想定して説明を行なう。
図21は、4辺縁無し複写を行なう場合における、イメージ拡大処理321とトリミング処理333を説明するための、イメージのサイズを示す図である。
図21に矢印378で示すように、イメージ拡大処理321では、原稿領域362のイメージデータ(図19の本スキャンイメージデータ352)が、その中心点362Cを中心にして拡大されて、図示のような領域(以下、拡大原稿領域という)371のサイズをもつイメージデータになる。この拡大原稿領域371のイメージデータが、図19に示した拡大イメージデータ353である。この拡大原稿領域371の縦長又は横長(好ましくは、縦長と横長のうち短い方)は、予めユーザにより指定された印刷媒体(印刷用紙)272より若干大きい領域(以下、拡大用紙領域)273に等しい。この拡大用紙領域273は、印刷媒体(印刷用紙)272のサイズを外側へ所定寸法の上下左右のプリンタマージン274、275、276及び277分だけ拡大したサイズに等しい。原稿領域362の縦横寸法比と印刷媒体272のそれとが同じ場合には、拡大原稿領域371は拡大用紙領域273に一致する。図21に示された例のように、原稿領域362の縦横寸法比と印刷媒体272のそれとが異なる場合には、拡大原稿領域371は、縦又は横の寸法において、拡大用紙領域273よりも大きい。ここで、上記上下左右のプリンタマージン274、275、276及び277の具体的寸法としては、例えば3mmを採用することができる。
その後、トリミング処理333では、拡大原稿領域371のイメージデータのうち、拡大用紙領域273の外側の部分372(図21ではクロスハッチングで示されている)が除去されて、拡大用紙領域273のイメージデータだけが取り出される。こうして取り出された拡大用紙領域273のイメージデータが、図21に示す印刷イメージデータ356である。この印刷イメージデータ356がプリントエンジン340に転送されて、印刷ヘッドを駆動する。
ところで、上述した第1から第4の実施形態に係る複合プリンタは、いずれも、原稿台12上に置かれた原稿そのものの領域に基づいて、スキャン領域を設定する。しかし、変形例として、複合プリンタは、原稿そのものではなく、原稿台内の一部の領域、特に、原稿内の特定の複写対象(例えば、特定の文字、文字列、写真、絵、図形、又はそれらの組み合わせなど)が表示されている領域に基づいて、スキャン領域を設定することもできる。図24は、その例を示す。図24に示すように、原稿600内には、例えば、文字列640や写真(又は絵)(ハッチングで示されたもの)641が表示されている。複写対象が、原稿600全体ではなく、例えば文字列640のみ又は写真641のみである場合がある。例えば、複写対象が文字列640のみである場合、複合プリンタは、原稿600内の文字列640の領域644を認識し、この文字列領域644に基づいて、スキャン領域646又は648を設定することができる。このとき、複合プリンタは、文字列640の領域644と一致するかまたはそれより僅かに大きいスキャン領域646を設定してもよいし、あるいは、文字列640の領域644より僅かに小さいスキャン領域648を設定してもよい。また、例えば複写対象が写真641のみである場合、複合プリンタは、原稿600内の写真641の領域642を認識して、この写真領域642に基づいてスキャン領域650又は652を設定することができる。このとき、複合プリンタは、写真領域642と一致するかまたはそれより僅かに大きいスキャン領域650を設定してもよいし、あるいは、写真領域642より僅かに小さいスキャン領域652を設定してもよい。このように原稿600そのものの領域ではなく複写対象の領域に基づいてスキャン領域を設定するためには、複合プリンタは、複写対象の領域が原稿上の何処であるかを前もって認識する必要がある。この目的のために、複合プリンタは、複写対象の領域を検出する方法及び複写対象の領域をユーザから指定される方法のいずれかを用いることができる。複写対象の領域を検出する方法では、複合プリンタは、プレスキャンによって得られた原稿台のイメージを処理することで、複写対象(例えば、図24に示した文字列640又は写真641)を自動的に検出して、そして、検出された複写対象を包含する最小の矩形領域を、複写対象の領域とみなすことができる。また、複写対象の領域をユーザから指定される方法では、複合プリンタは、プレスキャンによって得られた原稿台のイメージを表示して、表示された原稿台イメージの中から複写対象領域をユーザが選択することを可能にし、そして、ユーザにより選択された領域を、複写対象の領域とみなすことができる。このように原稿内の複写対象の領域に基づいてスキャン領域が設定される場合における、複合プリンタ1の動作及び機能は、上述した第1から第4の実施形態にかかる複プリンタの動作及び機能の説明中を、その中の用語「原稿」を用語「複写対象」に置き換えて読むことで、説明され得る。
上述した第1〜第4の実施形態にかかる複合プリンタは、上述した機能に加えて、さらに以下の第1及び第2の機能を備えても良い。
第1の機能は、スキャナ回路とは別の画像データソースからイメージデータを入力して、そのイメージデータの4辺又は2辺縁無し印刷を行うという縁なしプリントモードの機能である。ここで、スキャナ回路とは別の画像データソースには複合プリンタ内のものと複合プリンタ外のものとがあり得る。複合プリンタ内の画像データソースとしては、例えば、複合プリンタ内のEEPROMのような不揮発性メモリや内蔵型ハードディスクのような等のデータストレージデバイスがある。複合プリンタ外の画像データソースとしては、パーソナルコンピュータ等のホスト装置、ハードディスク、デジタルカメラ、携帯電話機、PDA、可搬型記録媒体(例えば複合プリンタに装着可能なメモリカード)等の画像データ出力装置であって、所定の通信インターフェース(例えばUSB又はブルートゥース(商標))を介して複合プリンタに接続可能なものがある。
縁無し複写モード及び縁無しプリントモードの選択又は切り替えは、ユーザの手動で制御されても良いし、複合プリンタによって自動的に制御されてもよい。例えば外部の画像データソースが通信可能に接続された、或いは上記別の画像データソースからイメージデータを受信した等の所定のイベントに応答して、複合プリンタが自動的に縁無しプリントモードを選択するようになっていて良い。
第2の機能は、スキャナ回路によりスキャンされたイメージデータと、上述したスキャナ回路とは別の画像データソースから入力されたイメージデータとを重ね合わせて印刷するという重ね合せプリントモードの機能である。、縁無し複写モード、縁無しプリントモード及び重ね合わせプリントモードの選択又は切り替えは、ユーザの手動で又は自動的に制御されるようにすることができる。
重ね合せプリントモードにおいて4辺又は2辺縁無し印刷が行われる場合、スキャンイメージデータ又は入力されたイメージデータの拡大処理は、それらの重ね合わせの処理が行われる前又は重ねられた後のどちらで行われても良い。また、重ね合せプリントモードにおいて、スキャンイメージデータ又は入力されたイメージデータ又は重ね合わされたイメージデータに対して、追加のイメージ操作、例えば、追加の拡大又は縮小処理、各種のフィルタ処理(例えば、色調補正、フルカラー画像からモノクローム画像への変換、又は色調変更など)などを加えることもできる。
また、重ね合せプリントモードにおいて、スキャンイメージデータのどの位置に入力イメージデータのどの位置を重ねるかという重ね合せの位置の設定は、ユーザの手動により制御されても良いし、あるいは、複合プリンタにより自動的に制御されても良い(例えば、スキャンイメージデータの中心位置に、入力イメージデータの印刷対象領域の中心位置が自動的に一致させられる)。
また、重ね合せプリントモードにおいて、入力イメージデータは、例えば、複合プリンタ外部の画像データソース、例えばデジタルカメラから供給される写真画像データであっても良いし、あるいは、複合プリンタ内部の画像データソースに予め記憶されている装飾画像データであっても良い。ここで、「飾り部品画像データ」とは、例えば、背景、飾り枠、挿絵、その他の文字、図形、図柄、模様など、印刷イメージに加えらることができる種々の装飾イメージのデータである。
図25は、上述した第4の実施形態に縁なしプリントモードと重ね合せプリントモードの機能を加えた変形例を示す。
縁なしプリントモードが行われる場合、図25に点線矢印で示すように、複合プリンタのイメージ入力回路702が、画像データソース700からイメージデータ704を入力する。この入力イメージデータ704についてイメージ拡大処理321が行われ、それにより、入力イメージデータ704(又はその中の印刷対象の領域)が、印刷用紙より僅かに大きいサイズに拡大されて、拡大イメージデータ710となる。以後、すでに説明した縁無し複写モードと同様のやり方で、拡大イメージデータ710が印刷イメージデータ714に変換され、4辺又は2辺縁無し印刷が行われる。
重ね合せプリントモードが行われる場合、図25に一点鎖線矢印で示すように、複合プリンタのイメージ入力回路702が、画像データソース700からイメージデータ704を入力する。そして、重ね合わせ処理706が行われて、イメージ入力回路702からの入力イメージデータ704(又はその中の印刷対象の領域)と、スキャナ回路310からの本スキャンイメージデータ352(又はその中の複写対象の領域)とが重ね合わされて、重ね合わせイメージデータ708となる。この重ね合わせイメージデータ708についてイメージ拡大処理321が行われ、それにより、重ね合わせイメージデータ708に含まれれる入力イメージデータ704(又はその中の印刷対象の領域)と本スキャンイメージデータ352(又はその中の複写対象の領域)の一方又は双方が、印刷用紙より僅かに大きいサイズに拡大されて、重ね合わせイメージデータ708が拡大イメージデータ710となる。例えば、入力イメージデータ704と本スキャンイメージデータ352のうちの一方が写真イメージであり、他方がその写真イメージの4辺縁に付けられるべき縁飾りのイメージである場合、写真イメージは拡大されずに(元のサイズが維持されても、必要に応じて縮小されてもよい)、又は、縁飾りのイメージだけが印刷用紙より僅かに大きく拡大され、そして、両者が重ね合わされて重ね合わせイメージデータ708となることができる。あるいは、写真イメージと縁飾りのイメージの双方が印刷用紙より僅かに大きく拡大され、そして、両者が重ね合わされて重ね合わせイメージデータ708となってもよい。このように重ね合わされる複数のイメージのどれを拡大し、どれを拡大しないか(又は縮小するか)は、ユーザによって選択されても、複合プリンタによって自動的に選択されてもよい。以後、すでに説明した縁無し複写モードと同様のやり方で、拡大イメージデータ710が印刷イメージデータ714に変換され、4辺又は2辺縁無し印刷が行われる。
以上、本発明の好適な幾つかの実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であって、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。例えば、ファクシミリ送信機が原稿をスキャンして、そのスキャンイメージデータをファクシミリ受信機に送信に、ファクシミリ受信機がそのスキャンイメージデータを用いて4辺又は2辺縁無し印刷を行うようなファクシミリ通信システムにも、本発明は適用可能である。
上記の実施形態では原稿台上に1つのスキャン領域が設定される。しかし、変形例として、原稿台上に複数のスキャン領域が設定されることもできる。例えば、1つの原稿に複数の写真画像が存在する場合、それら複数の写真画像にそれぞれ対応して複数のスキャン領域が設定され得る。あるいは、一連の写真フレームをもつ写真フィルムストリップ(原稿)をスキャンするためのフィルムスキャナが用いられる場合、1つの写真フィルムストリップ内の複数の写真フレームにそれぞれ対応して複数のスキャン領域が設定され得る。或いは、1つの原稿の表裏の両面の画像をスキャンするための両面スキャンナが用いられる場合、少なくとも、原稿の2の面にぞれぞれ対応した2つのスキャン領域が設定され得る。そして、複数のスキャン領域の各々について、4辺又は2辺縁なし複写を行うための本発明の原理に従う画像処理が行われ得る。
また、上記の実施形態では、フラットな原稿台をもつフラットベースタイプのイメージスキャナが用いられる。しかし、変形例として、他のタイプのイメージスキャナ、例えば、回転可能なドラム形の原稿台をもつドラムタイプのイメージスキャナ、ストライプ形の原稿台とオートシートフィーダを有し、原稿シートを原稿台上でオートシートフィーダにより移動することでスキャニングを行なうオートシートフィーダタイプのイメージスキャナ、外表面にストライプ形の原稿台をもつ小型のボディを有し、ユーザが手に掴まれたボディの原稿台が原稿シートをワイプするように移動することでスキャニングを行うポータブルタイプのスキャナなどが用いられてもよい。