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JP4182713B2 - 印刷版材料 - Google Patents

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JP4182713B2
JP4182713B2 JP2002288541A JP2002288541A JP4182713B2 JP 4182713 B2 JP4182713 B2 JP 4182713B2 JP 2002288541 A JP2002288541 A JP 2002288541A JP 2002288541 A JP2002288541 A JP 2002288541A JP 4182713 B2 JP4182713 B2 JP 4182713B2
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  • Materials For Photolithography (AREA)
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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は印刷版材料に関し、特にコンピューター・トゥー・プレート(CTP)方式により画像形成が可能な印刷版材料に関する。
【0003】
【従来の技術】
印刷データのデジタル化に伴い、安価で取扱いが容易でPS版と同等の印刷適性を有したCTPが求められている。特に近年、特別な薬剤による現像処理が不要であって、ダイレクトイメージング(DI)機能を備えた印刷機に適用可能であり、また、PS版と同等の使い勝手を有する、汎用タイプのサーマルプロセスレスプレートへの期待が高まっている。
【0004】
DI用のサーマルプロセスレスプレートとしては、例えばアグファ社製のThermo Liteが挙げられるが、機上現像操作が必要であり、PS版と同じ印刷機のシーケンスで印刷を開始した場合の刷り出し性は不十分である。また、版面のスクラッチ汚れ耐性(ひっかいた部分が印刷汚れとなる)も低く、取扱い性に十分な配慮が必要とされる。さらに、サーマルレーザーでの露光後の検版性は特に考慮されていないため、露光可視画性をほとんど有していない。
【0005】
これに対して汎用のプロセスレスプレートに必要とされるのは、PS版となんら印刷条件を変更することなく、(もちろん機上現像操作も必要とすることなく)刷り出すことのできる刷り出し性に加えて、常識の範囲での取り扱いにおけるスクラッチ汚れ耐性と画像記録後の可視画性である。
【0006】
CTPにおいては将来的には検版という作業は行われなくなるとの予想もされているが、現状のワークフローにおいては依然として必要とされており、このため、サーマルプロセスレスプレートにおいては、画像記録後の可視画性、特にサーマルレーザーを用いた場合の露光可視画性が重要な性能の一つとして挙げられる。
【0007】
サーマルプロセスレスプレートの画像形成に主として用いられるのは近赤外〜赤外線の波長を有するサーマルレーザー記録方式である。この方式で画像形成可能なサーマルプロセスレスプレートには、大きく分けて、後述するアブレーションタイプと熱融着画像層機上現像タイプが存在する。
【0008】
アブレーションタイプとしては、例えば、特開平8−507727号、同6−186750号、同6−199064号、同7−314934号、同10−58636号、同10−244773号に記載されているものが挙げられる。
【0009】
これらは、例えば、基材上に親水性層と親油性層とをいずれかの層を表層として積層したものである。表層が親水性層であれば、画像様に露光し、親水性層をアブレートさせて画像様に除去し、親油性層を露出することで画像部を形成することができる。特開平7−314934号では親水性層と親油性層との間に赤外線を吸収してアブレートする高融点のチタンまたはチタン合金層を用いることが開示されている。
【0010】
ただし、アブレートした表層の飛散物による露光装置内部の汚染が問題となるため、親水性層上にさらに水溶性の保護層を設けてアブレートした表層の飛散を防止し、印刷機上で保護層とともにアブレートした表層を除去する方式も提案されている。
【0011】
アブレーションタイプの場合、耐刷性を向上させるということは、上記の表層の強度を上げるということに関連し、耐刷性を向上させると感度低下や、解像度低下を招くため、これらのバランスを取りつつ耐刷性を向上させるには大きな困難を伴う。
【0012】
また、表層とその下の層との色相を異なるものとしておくことで露光可視画性を付与することが可能であるが、そのためには表層を完全にアブレートさせて除去する必要がある。これは、例えば露光装置内にアブレーション飛散物を吸引除去するようなクリーナーを設置することで達成は可能であるが、装置コストが大幅に上がるため好ましくない。
【0013】
上述のような保護層を設けたタイプでは、アブレーション飛散物が残存するため、例え表層とその下の層との色相を異なるものとしても良好な露光可視画性は得られない。
【0014】
上記を解決する手段として、「印刷機上で除去可能な親水性オーバーコート層に、露光によって光学濃度を変化させることのできるシアニン系赤外線吸収色素を20質量%以上含有させる」方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この方法によれば確かに良好な露光可視画性が得られるが、印刷機上で除去される層中に多量の色素を含有させ、露光によって色素をさらに発色させるにしろ、或いは退色させるにしろ、露光部もしくは未露光部のいずれかは発色濃度の高い層となるため、機上現像による印刷機汚染は避けられないものとなることは明らかである。
【0015】
一方、熱融着画像層機上現像タイプとしては、親水性層もしくはアルミ砂目上に画像形成層に熱可塑性微粒子と水溶性の結合剤とを用いたものが開示されている(例えば、特許文献2参照。)。前述のアグファ社製のThermo Liteは、このタイプのプロセスレスプレートである。
【0016】
このタイプで耐刷性を向上させるためには、例えば、特開平9−171250号に開示されているように、上記画像形成層中に水溶性結合剤を架橋させる架橋剤を含有させ、画像部の強度を向上させる方法等が考えられる。しかし、このような方法では機上現像性、つまりは刷り出し性を劣化させることになるため、たとえ耐刷性が向上するとしても好ましくない方法である。このように、機上現像タイプの印刷版材料では刷り出し性と耐刷性の両立が非常に困難である。
【0017】
また、露光可視画性の付与には、例えば特開平11−240270号に記載されているような赤外線吸収色素の露光退色を利用したものが挙げられるが、このような色素を画像形成層に添加した場合、未露光部と露光部との色差を大きくして露光可視画性を向上させることは、即ち未露光部の着色濃度を上げることになり、未露光部の機上現像時の印刷機汚染が問題となる。
【0018】
このように、従来の技術では、プロセスレスプレートに十分な刷り出し性、耐刷性及び露光可視画性を付与することが非常に困難であった。
【0019】
【特許文献1】
特開2002−205466号公報
【0020】
【特許文献2】
米国特許第2,938,397号明細書
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、汎用プロセスレスプレートとして十分な刷り出し性、耐刷性及び露光可視画性とを有した印刷版材料の提供にある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記の目的は、以下の構成により達成された。
【0023】
1.基材上に、非金属粒子のコアを金属または合金の層で被覆した粒子(a)を含有する層(A)を有し、かつ該粒子(a)を被覆する金属または合金の層が複数層からなり、該金属または合金の層の少なくとも一つの層が、融点が300℃以下であり、その内側に金、銅、ニッケルのいずれか1種を含む金属または合金の層を有することを特徴とする印刷版材料。
【0024】
2.前記粒子(a)を被覆する金属または合金が、鉛を含有しないことを特徴とする前記1項に記載の印刷版材料。
【0025】
3.前記粒子(a)のコアである非金属粒子が、インク着肉性であることを特徴とする前記1または2項に記載の印刷版材料。
【0026】
4.前記粒子(a)を含有する層(A)が、水に不溶な親水性マトリクス中に該粒子(a)を分散した層であることを特徴とする前記1〜3項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0027】
5.前記粒子(a)を含有する層(A)の上に、親水性層(B)を有することを特徴とする前記1〜4項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0028】
6.最表層に水溶性素材を含有する保護層を有することを特徴とする前記1〜5項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0029】
7.前記基材上の少なくとも1層が、光熱変換素材を含有することを特徴とする前記1〜6項のいずれか1項に記載の印刷版材料。
【0035】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の印刷版材料は、基材上に非金属粒子のコアを金属または合金で被覆した粒子(a)を含有する層(A)を有する印刷版材料である。
本発明の印刷版材料は赤外線レーザー露光で画像形成されることが好ましく、露光部の粒子(a)を被覆する極薄層の金属が熱溶融して、溶融した金属がそれ自身の表面張力によって比表面積を低下させることで粒子(a)のコア粒子表面(もしくは露光で熱溶融する金属層の直下の表面)を露出させて画像形成が行われるものである。この態様では、粒子(a)を被覆する極薄層の金属が光熱変換機能を有していることが好ましい。
【0036】
本発明に用いることができる金属被覆粒子は、例えば特開平9−204815号、同9−306231号、同9−306232号、同11−329060号、WO98/46811、特開2001−126532号、特開2001−247974号に記載されている方法により、コア粒子に無電解メッキで金属被覆層を形成することで作製することが可能である。
【0037】
このように作製された金属被覆粒子を、さらに親水性素材で被覆して親水性表面を有する粒子とすることもできる。親水性素材としては、後述する親水性の結合剤、架橋剤等を用いることができる。
【0038】
粒子(a)の粒径としては、0.1〜20μmであることが好ましく、0.5〜10μmであることがより好ましい。好ましい範囲内で粒径分布を有していても良く、また、異なる平均粒径を有する複数種の粒子を併用してもよい。
【0039】
0.1μm以下では上述の露光によるコア粒子表面露出が不十分となる懸念があり、また、20μmよりも大きい場合は解像度が低下したり、層(A)の表面が必要以上の表面粗さを有するようになり好ましくない。
【0040】
層(A)中の粒子(a)の含有量としては、層全体の30〜99質量%であることが好ましく、50〜90質量%であることがより好ましい。30質量%未満では画像形成が不十分となり、また、99質量%を超えると層(A)の強度を維持することが困難となる。
【0041】
層(A)の厚さ(平均値)としては、好ましい範囲は粒子(a)の平均粒径によって異なるが、平均粒径の±50%の範囲にあることが好ましく、±30%の範囲にあることがより好ましい。これは、層(A)内で粒子(a)が一層になって配列する、つまりは粒子(a)が厚み方向に重なって存在しない(存在する場合でもその比率が低い)ことが好ましいということを意味する。
【0042】
層(A)には粒子(a)以外に後述する親水性の結合剤、架橋剤、光熱変換素材、界面活性剤等を含有することができる。つまり、層(A)は水に不溶な親水性マトリクス中に粒子(a)が分散された層であることが好ましい。
【0043】
層(A)おいては未露光部が非画像部となるため、粒子(a)の表面が親水性であるかまたは、粒子(a)の表面を上記親水性結合剤が水に不溶の状態で被覆することで、親水性表面となっていることが好ましい。
【0044】
親水性結合剤が粒子(a)の表面を被覆している態様においても、露光により粒子(a)表面の金属層が溶融して移動し、露光部表面の親水性結合剤の下部に空隙が形成されることになり、親水性結合剤は印刷機上で湿し水やインクを用いた通常の印刷過程で除去可能、つまりは機上現像可能となる。
【0045】
良好な機上現像性を得るためには粒子(a)の表面を被覆している親水性結合剤は2.0μm以下の厚さであることが好ましく、0.01〜1.0μmであることがより好ましい。0.01μm未満では刷り込んだ際に非画像部の地汚れが発生する懸念がある。
【0046】
本発明に係る粒子(a)を被覆する金属または合金の融点が300℃以下であるが、このような素材のうち、金属単体としては、たとえばIn(156.2℃)、Sn(232℃)、Bi(274.1℃)が挙げられる。
【0047】
このような低融点の金属または合金の被覆層も、やはりメッキにより形成することができる。具体的な方法としては、特開平11−1791号、同11−21673号、同11−61426号、特開2000−26991号、同2000−87252号、同2001−164396号、同2001−172791号に記載の方法を挙げることができる。これらのなかでも、無電解メッキ法で行うことが好ましい。
【0048】
また、本発明の印刷版材料の好ましい態様の一つとしては、粒子(a)を被覆する金属または合金が鉛を含有しない態様が挙げられる。これは環境対応として好ましいためである。
【0049】
さらに、本発明の印刷版材料の好ましい態様としては、粒子(a)のコアである非金属粒子がインク着肉性であることが挙げられる。これは、一般的にマット剤として用いられるポリメチルメタクリレートやスチレン、アクリルといった樹脂粒子を好ましく用いることができる。また、表面を処理してインク着肉性を付与した無機粒子も用いることができる。処理には公知のシランカップリング剤等を用いることができる。
【0050】
また、本発明の印刷版材料は粒子(a)を被覆する金属または合金が、複数層からなるものである。これは、より表層側となる金属または合金層を形成するにあたって、下地処理として別の金属層を形成しておくことにより、層の密着強度が向上したり、生産性が向上したりする場合などに行うことができる。
【0051】
この態様のうちの一つとして、粒子(a)を被覆する金属または合金が複数層からなり、被覆層の一つが融点が300℃以下である金属または合金の層であり、その内側に金、銅、ニッケルのいずれかを含む金属または合金の層を有する態様を挙げることができる。この態様の場合は、融点が300℃以下である金属または合金の層が溶融することにより、内側の金、銅、ニッケルのいずれかを含む金属または合金の層の表面が露出して画像が形成される。金、銅、ニッケルのいずれかを含む金属または合金の層はインク着肉性を有しているため、印刷版の画像部として好ましく用いることができる。
【0052】
表面に金メッキ等を有する粒子としては、公知の導電性微粒子を用いることも可能である。例えば、積水ファインケミカル社製の「ミクロパールAU」シリーズは、樹脂粒子に金メッキを施したものである。この粒子をコアとして、表面にさらに本発明の融点が300℃以下である金属または合金の層を形成することで、本態様の粒子(a)を作製することができる。この場合は、コア粒子自体が導電性を有するため、電解メッキによる方法を適用することも可能である。
【0053】
本発明の別の態様として、層(A)の上に親水性層(B)を有する態様が挙げられる。親水性層(B)を設けることによって、印刷適性を改善したり、刷り込んだ際の非画像部の地汚れ発生を抑制することによって耐刷性を向上させたりすることが可能となる。親水性層(B)も露光部において機上現像性を有することが好ましいため、0.01〜2.0μmの薄層であることが好ましく、0.05〜1.0μmであることがより好ましい。
【0054】
親水性層(B)には層(A)の親水性マトリクスと同様の素材を用いることができるが、層(A)の親水性マトリクスよりも多孔質であることが印刷適性を改善する上で好ましい態様である。
【0055】
さらに、本発明では、最表層に水溶性素材を含有する保護層を有する態様も挙げることができる。この態様では、スクラッチ等によって版面にキズを受けた際にもその箇所が印刷汚れになりにくくなる利点がある。保護層自体は機上現像性を有していることが必要である。
【0056】
水溶性素材としては、その他に、界面活性剤や潤滑剤等を含有させることができる。潤滑剤としては、公知のワックス類が使用可能であるが、特に、脂肪酸アミドワックスを好ましく用いることができる。
【0057】
また、基材上のいずれかの層が光熱変換素材を含有することもできる。
また、基材上に非金属粒子のコアを金属または合金で被覆した粒子(a)を含有する層(A)を有する感熱記録材料において、粒子(a)の被覆層の少なくとも一つの層が、融点が300℃以下である金属または合金の層であり、かつ、粒子(a)最表層と、融点が300℃以下である金属または合金の層の下の粒子表面との色調が異なる感熱記録材料も有用である。
【0058】
印刷版材料に限ることなく、本発明の構成を有する感熱記録材料は、塗布形成することが可能であり、高感度かつ高解像度を有し、特に赤外線レーザー露光による画像形成に適した感熱記録材料である。
【0059】
金属薄層を用いた感熱記録材料としては、蒸着法などのドライプロセスを用いる場合が考えられるが、特殊な設備が必要であるためコスト増となる問題がある。一方、塗布形成により金属薄層を形成させる方法も特開平11−263070号、同11−268418号、特開2000−94839号に開示されているが、工程が煩雑であり、やはりコスト増につながる。
【0060】
本発明の構成を適用した感熱記録材料は基材上に、一層塗布形成することだけでも製造可能であり、非常にシンプルであるためコストダウンが可能となる。
【0061】
さらに、基材上に非金属粒子のコアを金属または合金で被覆した粒子(a)を含有する層(A)を有する感熱記録材料の画像形成方法であって、粒子(a)の被覆層の少なくとも一つの層が、融点が300℃以下である金属または合金の層であり、かつ、粒子(a)最表層と、融点が300℃以下である金属または合金の層の下の粒子表面との色調が異なる感熱記録材料を赤外線レーザーを用いて画像様に露光し、露光部の粒子(a)の融点が300℃以下である金属または合金の層を溶融させて、該層による粒子(a)の被覆率を減少させることでその下の粒子表面を露出させ、識別可能な画像を形成させる感熱記録材料の画像形成方法も有用である。
【0062】
前記画像形成方法では、画像形成最低温度が300℃以下と比較的低温であるため、高感度化が可能であり、また、画像形成層中の素材を除去することなく画像形成が可能であるため、露光装置に特別の吸引装置を付加する必要もなく、装置汚染の懸念なしに画像形成を行うことができる。
【0063】
親水性層マトリクスを形成する素材としては、金属酸化物が好ましい。
金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むことが好ましい。例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。該金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でも良い。平均粒径としては、3〜100nmであることが好ましく、平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていても良い。
【0064】
上記金属酸化物微粒子は、その造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0065】
本発明には、上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは、比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、良好な強度を得ることができる。
【0066】
上記コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液として、アルカリ性を呈することが好ましい。
【0067】
本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称である。本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカとは、一次粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。パールネックレス状(即ち、真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが、真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられる。
【0068】
製品名としては「スノーテックス−PS−S(連結した状態の平均粒子径は110nm程度)」、「スノーテックス−PS−M(連結した状態の平均粒子径は120nm程度)」及び「スノーテックス−PS−L(連結した状態の平均粒子径は170nm程度)」があり、これらにそれぞれ対応する酸性の製品が「スノーテックス−PS−S−O」、「スノーテックス−PS−M−O」及び「スノーテックス−PS−L−O」である。
【0069】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、親水性層マトリクスの多孔質化材として好ましく使用できる。
【0070】
これらの中でも、アルカリ性である「スノーテックスPS−S」、「スノーテックスPS−M」、「スノーテックスPS−L」を用いると、親水性層の強度が向上し、また、印刷枚数が多い場合でも地汚れの発生が抑制され、特に好ましい。
【0071】
また、コロイダルシリカは粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明には平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、3〜15nmであることが更に好ましい。また、前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが地汚れ発生を抑制する効果が高いため、アルカリ性のコロイダルシリカを使用することが特に好ましい。
【0072】
平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては、日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0073】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは、前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0074】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの比率は95/5〜5/95が好ましく、70/30〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70が更に好ましい。
【0075】
また、コロイダルシリカとしては、溶剤に分散されたものも使用可能である。このようなコロイダルシリカとしては、日産化学社製の「オルガノシリカ」を好ましく使用することができる。
【0076】
本発明の親水性層マトリクスの多孔質化材として、粒径が1μm未満の多孔質金属酸化物粒子を含有することができる。多孔質金属酸化物粒子としては、後述する多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子、もしくはゼオライト粒子を好ましく用いることができる。
【0077】
多孔質シリカ粒子は一般に湿式法または乾式法により製造される。湿式法ではケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0078】
多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。多孔質アルミノシリケート粒子は、例えば特開平10−71764号に記載されている方法により製造される。即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として、加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して、3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0079】
粒子の多孔性としては、細孔容積で0.5ml/g以上であることが好ましく、0.8ml/g以上であることがより好ましく、1.0〜2.5ml/g以下であることが更に好ましい。
【0080】
細孔容積は塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため、塗膜の耐久性が低下する。細孔容積が0.5ml/g未満の場合には、印刷性能がやや不十分となる場合がある。
【0081】
ゼオライトは結晶性のアルミノケイ酸塩であり、細孔径が0.3〜1nmの規則正しい三次元網目構造の空隙を有する多孔質体である。天然及び合成ゼオライトを合わせた一般式は、次のように表される。
【0082】
(M1、M2 1/2m(AlmSin2(m+n))・xH2
ここで、M1、M2は交換性のカチオンであって、M1はLi+、Na+、K+、Tl+、Me4+(TMA)、Et4+(TEA)、Pr4+(TPA)、C7152 +、C816+等であり、M2はCa2+、Mg2+、Ba2+、Sr2+、C8182 2+等である。また、n≧mであり、m/nの値つまりはAl/Si比率は1以下となる。Al/Si比率が高いほど交換性カチオンの量が多く含まれるため極性が高く、従って親水性も高い。好ましいAl/Si比率は0.4〜1.0であり、更に好ましくは0.8〜1.0である。xは整数を表す。
【0083】
本発明で使用するゼオライト粒子としては、Al/Si比率が安定しており、また、粒径分布も比較的シャープである合成ゼオライトが好ましく、例えばゼオライトA:Na12(Al12Si1248)・27H2O;Al/Si比率1.0、ゼオライトX:Na86(Al86Si106384)・264H2O;Al/Si比率0.811、ゼオライトY:Na56(Al56Si136384)・250H2O;Al/Si比率0.412等が挙げられる。
【0084】
Al/Si比率が0.4〜1.0である親水性の高い多孔質粒子を含有することで親水性層自体の親水性も大きく向上し、印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなる。また、指紋跡の汚れも大きく改善される。Al/Si比率が0.4未満では親水性が不充分であり、上記性能の改善効果が小さくなる。
【0085】
また、本発明の印刷版材料の親水性層マトリクスは層状粘土鉱物粒子を含有することができる。該層状鉱物粒子としては、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物、及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。中でも、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、更に好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものが更に好ましい。
【0086】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0087】
平板状層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が1μm未満であり、平均アスペクト比が50以上であることが好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性、及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。粒子径が上記範囲より大きくなると、塗膜に不均一性が生じて、局所的に強度が弱くなる場合がある。また、アスペクト比が上記範囲以下である場合、添加量に対する平板状の粒子数が少なくなり、増粘性が不充分となり、粒子物の沈降を抑制する効果が低減する。
【0088】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを作製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0089】
本発明の親水性層マトリクスにはその他の添加素材として、ケイ酸塩水溶液も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0090】
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているかまたは本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0091】
また、水溶性樹脂もしくは水分散性樹脂を含有してもよい。水溶性樹脂、水分散性樹脂としては、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明には水溶性樹脂として、多糖類を用いることが好ましい。
【0092】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0093】
本発明に用いられる親水性マトリクスは、公知の架橋剤によって架橋することが好ましいが、例えば上記の水溶性樹脂は、少なくともその一部が水溶性の状態のまま、水に溶出可能な状態で存在するように架橋の程度を調整することも可能である。これは、水溶性の素材であっても、架橋剤等によって架橋し、水に不溶の状態になると、その親水性は低下して印刷適性を劣化させる懸念があるためである。
【0094】
また、さらにカチオン性樹脂を含有しても良く、カチオン性樹脂としては、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は微粒子状の形態で添加しても良い。これは、例えば、特開平6−161101号に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0095】
また、本発明の親水性層の塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系またはF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%が更に好ましい。
【0096】
また、本発明の親水性層はリン酸塩を含むことができる。本発明では親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%が更に好ましい。
【0097】
光熱変換素材としては下記のような素材を含有することができるが、可視光に強い着色のある素材、例えば黒色顔料などは、機上現像されうる層には添加量を層全体の5質量%以下とすることが好ましく、0〜3質量%であることが好ましい。
【0098】
機上現像されうる層である、層(A)、親水性層(B)、保護層に添加する場合には後述の赤外線吸収色素を用いることが好ましく、赤外線吸収色素の中でも可視光での着色が少ない色素を用いることが好ましい。添加量としては、層全体の0.1〜10質量%であり、0.2〜5質量%が好ましい。
【0099】
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。カーボンとしては特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることが更に好ましい。
【0100】
グラファイトとしては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0101】
金属としては粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でも良い。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0102】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。
【0103】
前者としては、黒色酸化鉄(Fe34)や、前述の二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。
【0104】
後者とては、例えばSbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn23(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)などが挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al23・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は、0.5μm以下、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
【0105】
これらの光熱変換素材のうち、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物がより好ましい素材として挙げられる。
【0106】
具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは、特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号等に開示されている方法により製造することができる。
【0107】
本発明に用いる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号に開示されている処理を施すことが好ましい。これらの複合金属酸化物は添加量に対する着色、つまり、光熱変換効率が良好である。
【0108】
これらの複合金属酸化物は、平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は、粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。したがって、これらの複合金属酸化物粒子は、層の塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。
【0109】
赤外線吸収色素としては、一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素などの有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体などが挙げられる。具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
保護層用水溶性素材としては、親水性層に含有可能な素材として挙げた水溶性樹脂を用いることができる。その中でも、多糖類を用いることが好ましい。
【0111】
また、上記以外では、オリゴ糖を用いることもできる。
オリゴ糖は水に速やかに溶解するため、印刷装置上での保護層の除去も非常に速やかとなり、特別な除去操作を意識することなく、通常のPS版の刷出し操作と同様の操作で刷出すことで除去可能であって、刷出しの損紙が増加することもない。
【0112】
また、オリゴ糖は親水性層(B)や層(A)の親水性を低下させる懸念もなく、良好な印刷適性を維持することができるため、好ましく使用できる。オリゴ糖の中でもトレハロースは、比較的純度の高い状態のものが工業的に安価に入手可能可能であり、水への溶解度が高いにもかかわらず、吸湿性は非常に低く、機上現像性、及び保存性共に非常に良好であって好ましい。
【0113】
基材としては、印刷版の基板として使用される公知の材料を使用することができる。例えば、金属板、プラスチックフィルム、ポリオレフィン等で処理された紙、上記材料を適宜貼り合わせた複合基材等が挙げられる。基材の厚さとしては、印刷機に取り付け可能であれば特に制限されるものではないが、50〜500μmのものが一般的に取り扱いやすい。
【0114】
金属板としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられるが、比重と剛性との関係から特にアルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、アルミニウムとする)が好ましい。アルミニウム板は、通常その表面に存在する圧延・巻取り時に使用されたオイルを除去するためにアルカリ、酸、溶剤等で脱脂した後に使用される。脱脂処理としては特にアルカリ水溶液による脱脂が好ましい。また、塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。例えば、ケイ酸塩やシランカップリング剤等のカップリング剤を含有する液に浸漬するか、液を塗布した後、十分な乾燥を行う方法が挙げられる。陽極酸化処理も易接着処理の一種と考えられ、使用することができる。また、陽極酸化処理と上記浸漬または塗布処理を組み合わせて使用することもできる。
【0115】
また、公知の方法で粗面化されたアルミニウム板や、それに上記の易接着処理を組み合わせた基材も使用することもでき、公知の方法で粗面化し陽極酸化処理を行い、必要に応じて表面処理を行った、いわゆるアルミ砂目を基材として用いることもできる。
【0116】
前述のように、アルミニウムに陽極酸化層を設けた基材は、陽極酸化層の表面処理を適切に行うことによって、陽極酸化層を本発明の親水性層として用いることも可能である。
【0117】
プラスチックフィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類等を挙げることができる。特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートが好ましい。これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射処理等が挙げられる。また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。
【0118】
プラスチックフィルムの表面を粗面化した基材も用いることができる。
また、複合基材としては、上記材料を適宜貼り合わせて使用するが、塗布層を形成する前に貼り合わせても良く、また、塗布層を形成した後に貼り合わせても良く、印刷機に取り付ける直前に貼り合わせても良い。
【0119】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明の実施態様は、これらに限定されるものではない。
【0120】
実施例1
〔基材の作製〕
(基材1)
厚さ175μmのPETフィルムの片面に下記の手順で下塗り層を形成し、基材1とした。
【0121】
(第一下塗り層)
PET基材の塗布面にコロナ放電処理を施した後、下記組成の塗布液を、20℃、相対湿度55%の雰囲気下でワイヤーバーにより乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布した。その後、140℃で2分間乾燥を行った。
【0122】
〈第一下塗り層組成〉
Figure 0004182713
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0123】
(第二下塗り層)
上記フィルムの第一下塗り層を形成した面にコロナ放電処理を施した後、下記組成の塗布液を、35℃、相対湿度22%の雰囲気下でエアーナイフ方式により乾燥後の膜厚が0.1μmとなるように塗布した。その後、140℃で2分間乾燥を行った。
【0124】
〈第二下塗り層組成〉
ゼラチン 9.6g
界面活性剤(A) 0.4g
硬膜剤(b) 0.1g
以上に蒸留水を加えて1000mlとし、塗布液とした。
【0125】
【化1】
Figure 0004182713
【0126】
(基材2)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(材質1050、調質H16)を、50℃の1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬し、溶解量が2g/m2になるように溶解処理を行い水洗した後、25℃の0.1質量%塩酸水溶液中に30秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。
【0127】
次いでこのアルミニウム板を、塩酸10g/L、アルミを0.5g/L含有する電解液により、正弦波の交流を用いて、ピーク電流密度が50A/dm2の条件で電解粗面化処理を行なった。この際の電極と試料表面との距離は10mmとした。電解粗面化処理は12回に分割して行い、一回の処理電気量(陽極時)を40C/dm2とし、合計で480C/dm2の処理電気量(陽極時)とした。また、各回の粗面化処理の間に5秒間の休止時間を設けた。
【0128】
電解粗面化後は、50℃に保たれた1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬して、粗面化された面のスマット含めた溶解量が2g/m2になるようにエッチングし、水洗し、次いで25℃に保たれた10%硫酸水溶液中に10秒間浸漬し、中和処理した後水洗した。次いで、20%硫酸水溶液中で、20Vの定電圧条件で電気量が150C/dm2となるように陽極酸化処理を行い、さらに水洗した。
【0129】
次いで、水洗後の表面水をスクイーズした後、70℃に保たれた1質量%の3号ケイ酸ソーダ水溶液に30秒間浸漬し、水洗を行った後に80℃で5分間乾燥し、基材2を得た。基材2のRaは450nmであった(WYKO社製RST Plusを使用し、40倍で測定した)。
【0130】
(基材3)
電解粗面化処理及びその後のエッチング処理を行わずに陽極酸化処理を行った以外は基材2と同様にして、基材3を得た。同様にRaは220nmであった。〔金属被覆粒子(a)の作製〕
(金属被覆粒子(a)−1)
コア粒子として、シリコーン樹脂(ポリメチルシルセスキオキサン)微粒子であるトスパール120A(GE東芝シリコーン社製、平均粒径2μm)を用いた。
【0131】
コア粒子をアミン錯塩系アルカリキャタリスト:OPC−50インリューサ(奥野製薬社製)液に、液を攪拌しながら添加して分散した。次いでジメチルアミノボランを添加して、25℃で3分間還元した。これを濾過、洗浄してから下記組成の無電解メッキ浴(1)中で65℃でメッキを行い、浸漬時間を調整することで、平均0.2μm厚のSn−Bi合金被覆層を形成した。次いで、これを濾過、洗浄し、さらにアルコールで洗浄した後に乾燥して金属被覆粒子(a)−1を得た。
【0132】
[無電解メッキ浴(1)組成]
メタンスルホン酸第一スズ(Sn2+として) 40g/L
メタンスルホン酸ビスマス(Bi3+として) 3g/L
メタンスルホン酸 80g/L
チオ尿素 120g/L
エチレンジアミンテトラメチレンリン酸 30g/L
次亜リン酸 30g/L
(金属被覆粒子(a)−2)
コア粒子として、トスパール145A(GE東芝シリコーン社製、平均粒径4.5μm)を用いた以外は粒子(a)−1と同様にして、金属被覆粒子(a)−2を得た。
【0133】
(金属被覆粒子(a)−3)
コア粒子としてカーボンブラックで黒色に着色したアクリルコポリマー微粒子:ラブコロール020(3M)ブラック(平均粒径3μm、大日精化社製)を用いた。
【0134】
特開2001−247974号の実施例1に記載された方法に従って、粒子表面を処理し、パラジウム触媒を吸着させて表面を活性化させた。
【0135】
次いで、無電解メッキ浴(1)を用いて粒子(a)−1と同様にして平均0.2μm厚のSn−Bi合金被覆層を形成した。次いで、これを濾過、洗浄し、さらにアルコールで洗浄した後に乾燥して金属被覆粒子(a)−3を得た。
【0136】
(金属被覆粒子(a)−4)
特開平11−329060号の実施例2に記載された方法に従って、平均粒径3μmのジビニルベンゼン共重合体粒子に定法の無電解メッキにより0.15μm厚のNiメッキを行い、次いで置換メッキによってAuの厚さが60nmの粒子を得た。
【0137】
次いで、無電解メッキ浴(1)を用いて粒子(a)−1と同様にして平均0.2μm厚のSn−Bi合金被覆層を形成した。次いで、これを濾過、洗浄し、さらにアルコールで洗浄した後に乾燥して金属被覆粒子(a)−4を得た。
【0138】
〔塗布液の作製〕
〈層(A)の塗布液の作製〉
表1の組成の素材を十分に攪拌混合した後、濾過して層(A)−1〜4の塗布液を作製した。(表中、単位記載のない数値は質量部を示す、以下同)
【0139】
【表1】
Figure 0004182713
【0140】
〈親水性層塗布液の作製〉
表2の組成の素材をホモジナイザを用いて十分に攪拌混合した後、濾過して親水性層の塗布液を作製した。
【0141】
【表2】
Figure 0004182713
【0142】
〈保護層用塗布液の作製〉
表3の組成を十分に混合攪拌した後、濾過して保護層用塗布液を作製した。
【0143】
【表3】
Figure 0004182713
【0144】
(感熱記録材料の作製)
表4に示した基材と塗布液との組み合わせ層(A)を、ワイヤーバーで表に示した乾燥付量となるように塗布して、参考例の感熱記録材料を作製した。
【0145】
層(A)の乾燥条件は80℃3分間で行い、次いで60℃24時間のエイジングを行った。
【0146】
(画像形成)
画像形成は赤外線レーザー露光により行った。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、レーザービームの焦点を印刷版材料表面に合わせて、露光エネルギーを150mJ/cm2から50mJ刻みで600mJ/cm2とさせた各条件で、2400dpi(尚、dpiとは2.54cm当たりのドット数を表す。)、175線で画像を形成した。評価用の画像として、ベタ画像と1〜99%の網点画像を用いた。
【0147】
(露光可視画性の評価)
露光済の材料の露光可視画性の程度を目視で評価し、結果を表4に示した。尚、表中の記号は下記の評価結果を示している。
【0148】
◎:非常に明瞭な画像が得られている
○:明瞭な画像が得られている
△:画像の確認は可能である
×:画像を確認しにくい
(感度評価)
露光可視画性が得られているサンプルをルーペで評価し、適正露光エネルギーを評価した。適正露光エネルギーは50%網点のスクエアドットがほぼ50%の網点面積となっている露光エネルギーとし、結果を表4に示した。
【0149】
(露光装置汚染評価)
赤外線露光時にサンプル表面を厚さ12μmのPETフィルムでカバーし、ペットフィルムへの付着物の有無、着色の程度を評価した。結果を表4に示した。
【0150】
尚、表中の記号は下記の評価結果を示している。
◎:実質的に付着物なし
○:わずかに白色の付着物あり
△:白色の付着物あり
×:着色した付着物あり
【0151】
【表4】
Figure 0004182713
【0152】
表4より、参考例の感熱記録材料は露光装置汚染を生じることなく、低露光エネルギーで画像形成が可能であることがわかる。
【0153】
実施例2
(印刷版材料の作製)
表5に示した基材と塗布液との組み合わせで、各層をワイヤーバーで表に示した乾燥付量となるように塗布して実施例の印刷版材料を作製した。
【0154】
層(A)及び親水性層の乾燥条件は100℃3分間で行い、次いで60℃24時間のエイジングを行った。
【0155】
保護層はエイジング後に塗布形成し、乾燥条件は60℃3分間で行った。
(比較印刷版材料の作製)
基材2に表6に示した組成のインク着肉層を乾燥付量が0.7g/m2となるように塗布し、100℃で3分間乾燥した。次いで、特開平11−268418号の実施例1記載の方法に従ってビスマス分散液を作製した。このビスマス分散液をインク着肉層の上にビスマス量が平均して0.2μm厚となるように塗布し、100℃で3分間乾燥し、ビスマス層を形成した。しかしながら、インク着肉層表面は基材2の表面粗さに由来する凸凹を有しているため、ビスマス層は表面の凹部では厚く、凸部では薄く形成されていた。
【0156】
次いで、この上に前記親水性層を乾燥付量が0.5g/m2となるように塗布し、100℃で3分間乾燥した。これを60℃24時間のエイジングを行って、比較例の印刷版材料を得た。
【0157】
(画像形成)
画像形成は赤外線レーザー露光により行った。露光には波長830nm、スポット径約18μmのレーザービームを用い、レーザービームの焦点を印刷版材料表面に合わせて、露光エネルギーを150mJ/cm2から50mJ刻みで600mJ/cm2とさせた各条件で、2400dpi、175線で画像を形成した。評価用の画像として、ベタ画像と1〜99%の網点画像を用いた。
【0158】
(露光可視画性の評価)
露光済の印刷版材料の露光可視画性の程度を目視で評価し、結果を表5に示した。なお、表中の記号は下記の評価結果を示している。
【0159】
◎:非常に明瞭な画像が得られている
○:明瞭な画像が得られている
△:画像の確認は可能である
×:画像を確認しにくい
(印刷方法)
印刷機:三菱重工業(株)製DAIYA1F−1の版胴に印刷版材料を取り付け、コート紙、湿し水:アストロマーク3(日研化学研究所製)2質量%、インク(東洋インク(株)製トーヨーキングハイエコーM紅)を使用して印刷を行った。印刷開始のシークエンスはPS版の印刷シークエンスで行い、特別な機上現像操作は行わなかった。印刷は5万枚まで行った。
【0160】
(刷り出し性評価)
刷り出し時、良好なS/N(非画像部に地汚れがなく、かつ、画像部網点画像が良好に再現され、ベタ濃度が適正範囲となっている)を有した印刷物が得られるまでの印刷枚数を評価した。結果を表5に示した。なお、表中の記号は下記の評価結果を示している。また、印刷物に画像が得られなかったサンプルについては画像なしと表記した。
【0161】
◎:10枚未満
○:10枚以上20枚未満
△:20枚以上40枚未満
×:40枚以上
(感度評価)
印刷された紙面上の画像をルーペで評価し、適正露光エネルギーを評価した。適正露光エネルギーは50%網点のスクエアドットがほぼ50%の網点面積となっている露光エネルギーとし、結果を表5に示した。
【0162】
(スクラッチ汚れ耐性評価)
印刷版材料サンプルの非画像部に印刷前にHEIDON試験機を用いて荷重を変化させてスクラッチ跡をつけておき、印刷開始から100枚目の時点でどの荷重までが汚れとなっていないかを評価した。触針には0.3mmφのサファイア針を用いた。結果を表5に示した。なお、表中の記号は下記の評価結果を示している。
【0163】
◎:150g以上
○:100g以上150g未満
△:50g以上100g未満
×:50g未満
(耐刷性評価:画像部)
上記感度評価で適性露光エネルギーとした露光エネルギーで形成された画像部の3%の網点が1/5程度欠落した段階で耐刷枚数とし、結果を表5に示した。
【0164】
(耐刷性評価:非画像部)
非画像部に地汚れが生じた段階で耐刷枚数とし、結果を表5に示した。
【0165】
【表5】
Figure 0004182713
【0166】
【表6】
Figure 0004182713
【0167】
表5から、本発明の印刷版材料は、アルミ基材を用いた場合でも感度低下が少なく、高感度な印刷版材料になっていることがわかる。これは、金属被覆粒子(a)のコア粒子として用いている樹脂粒子が断熱効果を発現していることによるものであると考えられる。また、露光可視画性を有するにもかかわらず装置汚染の懸念がなく、また、良好な刷り出し性と十分な耐刷性を有していることがわかる。
【0168】
また、本発明の態様のひとつである親水性層を設けた本発明2−2、2−5においては、刷り込みによる非画像部の汚れ発生も抑制されて、さらに良好な耐刷性が得られている。また、もうひとつの態様である保護層を有する本発明2−1〜2−4では、汎用CTPとしても十分に良好な取扱い性を有していることがわかる。
【0169】
一方、比較例の印刷版材料も画像形成から印刷評価までを上記実施例と同様にして行った。その結果、露光による可視画性は得られたが、ビスマス層の膜厚ムラに起因する画像形成ムラが観察された。印刷を行っても同様に画質の低い印刷物しか得られず、本発明の印刷版材料に比較し明らかに劣っていた。
【0170】
【発明の効果】
本発明により、高感度で、かつ露光装置汚染がなく、良好な刷り出し性と十分な耐刷性を有する印刷版材料を提供することができた。

Claims (7)

  1. 基材上に、非金属粒子のコアを金属または合金の層で被覆した粒子(a)を含有する層(A)を有し、かつ該粒子(a)を被覆する金属または合金の層が複数層からなり、該金属または合金の層の少なくとも一つの層が、融点が300℃以下であり、その内側に金、銅、ニッケルのいずれか1種を含む金属または合金の層を有することを特徴とする印刷版材料。
  2. 前記粒子(a)を被覆する金属または合金が、鉛を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の印刷版材料。
  3. 前記粒子(a)のコアである非金属粒子が、インク着肉性であることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷版材料。
  4. 前記粒子(a)を含有する層(A)が、水に不溶な親水性マトリクス中に該粒子(a)を分散した層であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の印刷版材料。
  5. 前記粒子(a)を含有する層(A)の上に、親水性層(B)を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の印刷版材料。
  6. 最表層に水溶性素材を含有する保護層を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の印刷版材料。
  7. 前記基材上の少なくとも1層が、光熱変換素材を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の印刷版材料。
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