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JP4173831B2 - サンプリングデバイス - Google Patents

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JP4173831B2 JP2004124241A JP2004124241A JP4173831B2 JP 4173831 B2 JP4173831 B2 JP 4173831B2 JP 2004124241 A JP2004124241 A JP 2004124241A JP 2004124241 A JP2004124241 A JP 2004124241A JP 4173831 B2 JP4173831 B2 JP 4173831B2
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Description

本発明は、血液透析、輸液又は人工心肺等の流体を流通させる流路に設置して、流路内を流通する流体を必要に応じてサンプリングすることができるサンプリングデバイスに関する。
血液透析装置は、患者の血管と該血液透析装置の間で血液を循環して流通させる流体回路を形成して、患者から取り出した血液に対して該血液透析装置内で透析等の処理を行った後、処理済みの血液を再び患者へ戻す機能を果たす装置である。この透析等の処理の間に、例えば透析液組成濃度の確認や細菌汚染を把握する目的で、その流体回路内を流れる流体をサンプリングする操作、又は流体回路内を流れる流体に対して何らかの薬剤を添加したりする操作(以下、簡単のためにこの2種の操作を「サンプリング操作」と称する)が必要とされる場合がある。そのような場合に、流体を容易にサンプリングすることができるように、流体回路の一部にサンプリングデバイスが設置される。
このような用途のサンプリングデバイスとして、例えば特開2002−14015号に開示されているデバイスが知られている。このデバイスは、図6に示すように、入口部102及び出口部103に接続されて流体を流す配管の内径と略同じ寸法の内径を有するように形成された内部流路101を有し、その内部流路101の一部にサンプリング孔104を有するデバイス本体100と、該サンプリング孔104の外側表面を覆うようにデバイス本体100に取り付けられるサンプリングポート部110とからなる構成を有している。
また、文献は不詳であるが、図7に示すように、入口部122及び出口部123を有する略円筒形状の内部流路121と、該内部流路121の長手方向の中央部から分岐するサンプリング孔124を包囲するサンプリングポート部125とが、全体として略T字形状をなすように組み合わされたデバイス本体120に、キャップ部130が取り付けられた構成を有しているデバイスも知られている。
特開2002−14015号公報
図6に示すデバイスにおいて、サンプリング孔102を直接的に封止する部材は可撓性シール体105であるが、サンプリングポート部110はこの他に、該可撓性シール体105をその外周側に沿って固定する固定ブロック106と、該固定ブロック106の空間部107に消毒液含浸体を配置し、該消毒液含浸体の外側を封止する密閉栓109とを有して構成されている。
内部流路101に流体を流す場合には、サンプリング孔102を可撓性シール体105が封止し、該可撓性シール体105をその外周側に沿って固定ブロック106が固定し、該固定ブロック106の空間部107に消毒液含浸体を配置して、該空間部107の開口部を密閉栓109が封止するという関係で互いに組み合わせられて、内部流路101を流れる流体がサンプリング孔102から漏出することを防止している。この状態を、以下、「流体の流通状態」とも称する。
内部流路101を流れる流体をサンプリングする場合には、密閉栓109を取り外し、空間部107に配置されている消毒液含浸体を取り外した後、シリンジの針を可撓性シール体105に刺し込んで、流体をシリンジに吸い込むことによってサンプリングを行うことができる。この状態を、以下、「サンプリング状態」とも称する。
サンプリング終了後、針を抜くと、可撓性シール体105はそれ自体が有している弾性によって、針が刺し込まれていた痕を自発的に封ずることができる。そこで、再び、消毒液含浸体及び密閉栓109を固定ブロック106に取り付けることによって、「流体の流通状態」に戻すことができる。
図6に示す従来技術のサンプリングデバイスは、この他にも、固定ブロック106をデバイス本体部100に固定するために複数本のボルト111を用いたり、また、空間部107を外部から液密シールするためにO−リング112を用いたりする必要があり、1つのデバイスを構成する部品の点数が多かった。そのため、このサンプリングデバイスの構成部品をそれぞれ製造すること、及びそれらの構成部品を組み立てることについて、ある程度以上の材料コスト、時間及び労力を必要とすることから、サンプリングデバイスの製品コストはある限度以上とならざるを得なかった。従って、デバイス自体の価格を低く抑えることには、限界があった。
また、部品の点数が多いため、サンプリングの際に、このサンプリングデバイスを「サンプリング状態」にするために分解したり、その後「流体の流通状態」にするために組み立てたりするための手間がかかっていた。
更に、消毒液含浸体としては、70%エタノール水などの消毒液を含浸させた脱脂綿等を用いることが多いが、「サンプリング状態」にする際に、その消毒液が可撓性シール体105の外側表面に残存していると、サンプリング針を刺し込む際に消毒液が針先に付着し、針先が内部流路101に達することによって、消毒液も内部流路101に達して、そこを流れる流体に消毒液が混入する可能性があった。
更に、特許文献1に記載されているサンプリングデバイスでは、その空間部107に消毒液含浸体が配置されることになっているが、上述のように消毒液が可撓性シール体105の外側表面に残存することを防止するために、消毒液含浸体に含浸させる消毒液の量を少なくして、消毒が不十分となる場合や、消毒液の種類が不適当なものである場合には、「サンプリング状態」と「流体の流通状態」とを複数回、交互に繰り返して実施する際に、その空間部106に大腸菌やブドウ球菌などの雑菌が付着したり、空気が存在することによってその菌が繁殖したりという可能性を完全に排除することが困難であった。
一方、図7に示す従来例では、サンプリングポート部125のサンプリング孔124に嵌合するように、キャップ部130側の内周側の下方に栓体131が突出して設けられており、サンプリングポート部125の外周面に設けられたネジ山と、キャップ部130の外周壁132の内周面に設けられたネジ山とを係合させることによって、キャップ部130がサンプリングポート部125に取り付けられている。そして、栓体131はサンプリング孔124の全体を封止するように設けられてはおらず、サンプリング孔124の入口部分に1種のくぼみ部が存在していた。
このようなサンプリングデバイスにおいて、内部流路121に流体が流通する場合に、サンプリング孔124のくぼみ部は流体が流れにくい部分となることがあり、この部分に流体の成分が長時間にわたって残留したり、場合によっては雑菌が生息及び/又は繁殖したりする事態をまねくおそれがあった。更に、内部流路121を流通する流体は、実際には、サンプリングポート部125の外周面に設けられたネジ山とそこに係合するキャップ部130との間でシールされているので、サンプリング孔124のくぼみ部から、サンプリングポート部125の外周面に設けられたネジ山までの範囲で、雑菌が繁殖し得る余地があった。
また、サンプリングデバイスはポリプロピレン等のプラスチック材料によって形成されており、中空に形成したサンプリングデバイスの壁部の厚さの寸法は非常に小さいので、サンプリングデバイスにチューブを連結する際、又はサンプリングデバイスからチューブを外す際に、過剰な力がサンプリングデバイスに加わることによって、サンプリングデバイスを破損する事態も生じていた。
以上、血液透析装置に図6又は7に示す従来技術のサンプリングデバイスを用いる場合について、上述のように課題を指摘したが、このような課題は、上記のようなサンプリングデバイスを輸液装置や人工心肺装置に用いる場合にも同様に生じ得ることである。
従って、本出願の発明は、血液透析装置、輸液装置又は人工心肺装置についてサンプリングデバイスを用いる場合に生じ得る上述のような複数の問題点を解決することができるサンプリングデバイスを提供することを目的とする。
本出願のサンプリングデバイスの発明は、左右方向を長手方向として延び、内部に主流路を有する実質的に円筒形態の主流路部、及び前記主流路部の中間部分から上向きに分岐して延び、内部に分岐流路を有する実質的に円筒形態の分岐流路部からなるサンプリングデバイス本体と、前記分岐流路部の開口端に取り付けて、分岐流路を封止するキャップ部とを少なくとも有してなるサンプリングデバイスであって、前記キャップ部は、前記分岐流路部の開口端に取り付けた状態で、前記分岐流路部の開口端における分岐流路部壁部をその厚さ方向について実質的に覆う寸法及び形状の環状のホルダー部、前記ホルダー部の内周側から分岐流路部の内周面に実質的に接して下向きに延びる内周側円筒状壁部、及び前記ホルダー部の外周側から分岐流路部の外周面に実質的に接して下向きに延びる外周側円筒状壁部とからなるキャップ基体と、該キャップ基体の少なくとも中央開口部を封止する封止体とによって形成されており、前記封止体は、前記主流路部に流体を流通させる場合に、外部からサンプリング針を刺し込むことができ、かつ、前記サンプリング針を抜いた後にサンプリング針の刺痕を自発的に封じて、内部の流体が漏れ出すことを防止し得る弾性を有する材料によって形成されていることを特徴とする。
本出願のサンプリングデバイスは、主流路部及び分岐流路部が全体として略T字形状をなすように組み合わされたサンプリングデバイス本体という1つの部材と、その分岐流路部に嵌着する略環状のキャップ基体及び該キャップ基体の開口部を封止する封止体という2つの部材からなるキャップ部によって構成されることから、デバイスを形成するために本質的に必要な部品の点数は3点ということになり、従来技術のサンプリングデバイスと対比して、部品の点数を大幅に低減させることができる。好ましい態様において、封止体はキャップ基体と、例えば二色成形によって、一体の部品として提供することができる。その場合には、封止体及びキャップ基体からなるキャップ部は1つの部材として用いることができるので、デバイスを形成するために本質的に必要な部品の点数は2点ということになる。
また、本出願のサンプリングデバイスは、サンプリングを行う際に取り外すべき部品を有さず、サンプリングを行うための準備段階の操作及びサンプリング終了後に行う操作を特に必要としないで、針を刺すという簡単な操作でサンプリングを行うことができるため、時間や手間をあまりかけずにサンプリングを行うことができる。
本出願のサンプリングデバイスは、内部に雑菌が繁殖し得る可能性のある空間を有さないため、1時間〜6時間程度の血液透析若しくは輸液の用途、又は人工心肺の用途に用いる場合であっても、菌による汚染を防止する対策をとることを実質的に省略することができる。従って、本出願のサンプリングデバイスは、特に消毒液を用いる必要もないため、サンプリング操作に伴って流路内に消毒液が混入するという事態が生じる可能性を略排除することができる。
以下、この出願の発明について、その好ましい態様を示す図面を参照しながら説明する。
(第1の形態)
図1は、この出願の発明の中で最も好ましいサンプリングデバイスの分解断面図を示している。このサンプリングデバイスは、図の紙面について左右方向を長手方向として実質的に円筒形態に延びる主流路部11、及びその主流路部11の略中央部分から上向きに分岐する分岐流路部21が、正面から観察して略T字形状に交わる形態を有するサンプリングデバイス本体10と、分岐流路部21の開口端に取り付けられるキャップ部30とによって実質的に構成されている。
サンプリングデバイス本体10の実質的に円筒形態に延びる主流路部11は、その内部に円筒形態の空間を有しており、この空間が主流路14となっている。図1に示す例では、主流路14の向かって左側の開口部が入口部12、向かって右側の開口部が出口部13となっており、主流路部11の長手方向の略中央部分から上向きに分岐流路部21が分岐して、分岐流路部21の内側には分岐流路22が設けられている。分岐流路部21が分岐する部分の主流路部11に対する位置に関しては、分岐流路部21は主流路部11の中間部分から分岐すればよい。ここで、主流路部11の中間部分とは、主流路部11の両側の端部を除く部分のことである。しかしながら、好ましい形態では、分岐流路部21は主流路部11のほぼ中央の部分から分岐する。
分岐流路22の下端側は主流路14に連絡しており、分岐流路22の上端側は分岐流路部21の開口端まで延びている。図示する形態において、分岐流路22が主流路14に連絡する部分の断面積は、分岐流路22のその他の部分の断面積よりも小さくなっているが、これは本発明について必ずしも必要な事項ではない。また、分岐流路22においてその連絡部よりも上側の部分は実質的に円筒形態となっているので、分岐流路22も全体としては実質的に円筒形態に形成されていると表現することができる。分岐流路22の内周面側において開口端に近い部分には、ネジ山24が形成されている。
この分岐流路22は、キャップ部30を取り付けることによって封止される。キャップ部30は、分岐流路部21の開口端を、分岐流路部21と同心形態で環状に覆うキャップ基体31と、そのキャップ基体31の少なくとも中央開口部37を封止する封止体39とによって構成されている。
この出願の発明において、サンプリングデバイス本体10は、金属材料、好ましくはステンレス鋼、特にSUS316によって形成することができる。また、SUS316を用いて射出成形する方法の技術が開発されており、その方法に従ってSUS316を用いると、本願の発明に係るサンプリングデバイス本体10をSUS316にて成形することができる。
キャップ基体31は、全体として、カタカナのクの字を、その右上側から左下側へ斜めに延びる2つの線が上側から下側へ延びるような向きに左回りに約45度回転させ、クの字の開いた部分が下側を向くようにした状態で、相対的に長い方の線が相対的に短い方の線よりも内側になるように配置した図形を、その相対的に長い方の線よりも更に内側に距離をおいて上下方向に延びる回転軸を想定し、その回転軸まわりで回転させて得られる回転体のような形状を有している。即ち、キャップ基体31は、図1に示すキャップ基体31を上方から観察した場合に実質的に円環状であるホルダー部32と、そのホルダー部32の内周側から下向きに延びる内周側円筒状壁部34と、ホルダー部32の外周側から下向きに延びる外周側円筒状壁部33とによって構成されている。
キャップ基体31を分岐流路部21の開口端に取り付けると、円環状のホルダー部32は分岐流路部21の開口端における円環状の端面の一部又は全部に重なることができる寸法及び形状を有しており、内周側円筒状壁部34は分岐流路部21の内周面に実質的に接しながら下方に延びており、外周側円筒状壁部33は分岐流路部21の外周面に実質的に接しながら下方に延びる関係となる。この内周側円筒状壁部34の外周面の一部又は全体には、分岐流路部21の内周面側に設けられているネジ山24に係合するネジ山36が設けられている。
キャップ基体31において、内周側円筒状壁部34及び外周側円筒状壁部33がホルダー部32から突出する高さの関係は特に決まっていないが、キャップ基体31を分岐流路部21に対して取り付けたり取り外したりする際の作業性の点から、内周側円筒状壁部34の突出高さが外周側円筒状壁部33の突出高さよりも大きい関係が最も好ましく、この場合に上述したカタカナのクの字を用いた回転体の形状に対応する。
分岐流路部21の内周面側のネジ山24に対して、キャップ基体31側の内周側円筒状壁部34の外周面のネジ山36を係合させて、キャップ基体31を分岐流路部21に取り付けると、キャップ基体31の外周側円筒状壁部33の少なくとも先端部分は分岐流路部21の外周面に当接する状態になる。このようにしてキャップ基体31を分岐流路部21に取り付けた状態を図2に示している。
図3に示すように、キャップ基体31の中央開口部37は、キャップ基体31とは別体に形成された封止体39を充填することによって封じられている。キャップ基体31を形成する材料としては、容器の蓋を構成することができる程度の剛性と、後で説明するようにサンプリング針を中央開口部37に挿入する場合に、サンプリング針の先端部が中央開口部37の壁面に対して鋭角に接触すると、サンプリング針の先端部を滑らせて、中央開口部37のより奥の方へ案内することができる程度の摩擦特性(又は固体潤滑性)を有するものが好ましい。具体的には、超高分子ポリエチレン、高密度ポリエチレン、硬質ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリアリレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、スチレン系樹脂、及びフッ素系樹脂の群から選ばれるプラスチック材料、又は2種以上のポリアロイからなるプラスチック材料をキャップ基体31の材料として用いることができる。
封止体39を形成する材料は、外部からサンプリング針を比較的容易に刺し込むことができ、かつ、そのサンプリング針を抜いた後にサンプリング針の刺痕を自発的に封じて、内部の流体が漏れ出すことを防止し得る程度の弾性を有する材料であることを要する。サンプリング針の刺痕とは、封止体39にサンプリング針を刺し込む際に、そのサンプリング針が進入して封止体39に形成される痕である。具体的には、天然ゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、ブロモブチルゴム、ハロブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、プロピレンゴム、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、スチレン・ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、多硫化ゴム、ノルボルネンゴム及び熱可塑性エラストマーの群から選ばれる弾性材料を封止体39の材料として用いることができる。尚、このような材料は、例えばバイアル瓶のキャップ部に用いられる材料として知られている。
キャップ部30は、キャップ基体31を形成した後、そのキャップ基体31をキャップ部30用の成形型の中に設置して封止体39の溶融状態の材料を注入するという、いわゆる二色成形によって製造することができる。
図3(a)は、キャップ基体31を上方から観察した状態の平面図を示している。図3(a)に実際に現れている部分は、キャップ基体31におけるホルダー部32である。図から理解できるように、ホルダー部32は円環状の平面形状を有しており、成形型の中に設置して封止体の材料を注入して、封止体の材料をホルダー部32の上面側及び下面側に行き渡らせるために、ホルダー部32には封止体の材料を流通させるスルーホール35が設けられている。図3(a)に示す例では、平面図において円環状であるホルダー部32の円をその中心を通って4等分に分割した場合の4つの扇形の各辺上において、その円について等しい半径の位置に4つのスルーホール35が設けられている。スルーホールの数は4つに限られず、その数及び配置は、使用する封止体の材料の種類、固化温度、固化時間、溶融時の粘度などを考慮して、このような成形を行うための当業者の技術的知識に基づいて、例えば、1〜12程度の数の範囲内で種々に変更することができる。
二色成形によって、ホルダー部32に封止体39を組み合わせた状態を図3(b)に示しており、ホルダー部32を実線で描いており、封止体39を二点鎖線で描いている。図3(b)は、図3(a)において線B−B’に沿った断面を矢印の向きに観察した様子を示している。図3(b)において二点鎖線で示す輪郭は、二色成形に用いるキャップ部30の成形型の輪郭にも対応している。例えば、そのような成形型の中にホルダー部32を設置し、そこへ溶融状態の封止体材料を装入すると、封止体材料は成形型の中に残存している二点鎖線で輪郭が示される空間に行き渡る。その後、封止体材料を固化させることによって、図3(b)に示す形状の封止体39が得られる。
従って、溶融状態の封止体材料は、ホルダー部32のスルーホール35の中を流通して、キャップ基体31の中央開口部37だけでなく、ホルダー部32の上面側、及びスルーホール35の中を満たし、更に、ホルダー部32の内周側円筒状壁部34と外周側円筒状壁部33との間の下側部分も満たすことができる。従って、ホルダー部32の下側部分には、円環状に封止体39が配される。ここで、説明の便宜上、キャップ基体31の中央開口部37の全体を満たして、中央開口部37の栓として機能する封止体39の部分を「栓部分」とも称し、ホルダー部32の内周側円筒状壁部34と外周側円筒状壁部33との間の下側部分に環状に配される部分を「環状部分」とも称することとする。
封止体39の栓部分は、キャップ基体31の中央部分に開口して上下方向に延びる円筒形態の中央開口部37の全体を満たしており、これに加えて、中央開口部37の下端側において、封止体39の栓部分の下側部分は、中央開口部37よりも大きな半径の部分となっている。図2に示す例において、封止体39の栓部分の下側端部の主流路14に臨む面は、主流路部11内において主流路14を形成している壁部の面と略面一となるような面となっている。従って、主流路部11内において主流路14は実質的に凹凸のない管状の流路として機能することができる。しかしながら、実際には、封止体39の栓部分の下側端部の主流路14に臨む面を、主流路14を形成する壁部の面と略面一とすることは、必ずしも常に確保できることではない。そのような場合には、封止体39の栓部分の下側端部を、主流路部11において主流路14を形成する壁部の面に対して主流路14側に若干突出する形態(主流路14内に凸な形態)とすることが、主流路14側から見て、主流路部11において主流路14を形成する壁部の面よりも凹んだ形態(主流路14から凹な形態)とすることよりも好ましい。その理由は、主流路14から凹な形態では、主流路14内に、その主流路14を形成する壁部の面よりも凹んだ部分である凹部が形成され、その凹部の所において流体の流れが悪くなる可能性があり、そうするとその凹部に雑菌が溜まったり、繁殖したりする可能性が考えられるからである。そして、主流路14内に凸な形態であれば、主流路14内において流体の流れが悪くなる部分をより少なく、好ましくは実質的になくすることができるからである。
また、図1に示すように、中央開口部37の上端部側であって、ホルダー部32の内周側の部分には、円筒形態の中央開口部37から上向きに拡がって開くテーパー部38が形成されているが、封止体39の栓部分の上側部分はそのテーパー部38の全体も満たして更に上方へ続いている。この封止体39の栓部分の頂部は、キャップ部を上方から観察して、円形のキャップ部の上面を実質的に覆うように、円形に拡がっており、図1に示すように正面側から観察して、中央部分が最も高く膨らんだドーム形態となっている。
このようなキャップ部30を分岐流路部21に対して取り付けた場合に、キャップ部30と分岐流路部21との係合部に分岐流路22側から流体が流入することがあっても、このホルダー部32の下側に存在する封止体39の環状部分はパッキンとして機能して、分岐流路22側からの流体を堰き止めることができる。従って、ホルダー部32の下側に配されている封止体39の環状部分によってキャップ部30と分岐流路部21との間から流体が漏れ出すことを有効に防止することができる。
次に、図4を参照して、本発明に係るサンプリングデバイスを使用する状態を説明する。図4(a)は、本発明のサンプリングデバイスに血液透析装置の場合において、血液を流通させるチューブ51及び52を接続した状態におけるサンプリングデバイスの平面図を示しており、図4(b)はその状態の正面図を示している。サンプリングデバイスの主流路部の2つの開口部はどちら側を入口側にしてもよい。この例では、図4(b)について向かって左側を入口部とし、右側を出口部としている。従って、チューブ51は血液が送られてくるチューブであり、チューブ52はサンプリングデバイスから血液が出て行くチューブである。このような状態のサンプリングデバイスの封止体39にサンプリング針53を刺し込む状態を、サンプリングデバイスの右側面側から観察した様子を図4(c)に示している。
尚、ホルダー部32の内周側に設けられているテーパー部38の下端部から下方に延びる内周側円筒状壁部34の内周面によって、滑らかな円筒形態の空間が形成されており、更に、キャップ基体31を形成する材料には比較的硬質であって、比較的小さい摩擦係数を有する材料を用いているので、このテーパー部38及び内周側円筒状壁部34の内周面は、サンプリング針を刺し込む場合の挿入ガイドとして機能する。
封止体39は外部からサンプリング針53を比較的容易に刺し込むことができる弾性を有するので、オペレータがサンプリング針53を真上から封止体39に略垂直に刺し込むと、サンプリング針53の先端部分は、挿入ガイドとして機能するホルダー部32のテーパー部38及び内周側円筒状壁部34の内周面によって案内されて、円滑に主流路14に達することができる。サンプリング針53を刺し込む角度が、内周側円筒状壁部34の内側の円筒状の空間の上端部から下端部へ向かって直線状に挿通することができる範囲内にあれば、ホルダー部32のテーパー部38及び内周側円筒状壁部34の内周面は、挿入ガイドとして十分に機能する。従って、サンプリング操作が目的とする流体、例えば血液の採取(サンプリング)を行うことができる。
また、上述したように、封止体39は十分な弾性を有するので、サンプリング針53を抜いた後に、封止体39はその弾性によってサンプリング針の刺痕を自発的に封じることができる。例えば、主流路14の中に−60kPa〜100kPaの範囲の圧力の流体を流通させる場合にも、サンプリング針53を抜いた後に封止体39はサンプリング針の刺痕を封じることができる。従って、サンプリング針53を抜いた後に、主流路14を流れる流体がサンプリング針の刺痕を通って封止体39の上側部分へ漏れ出すということを確実に防止することができる。
以上、本発明のサンプリングデバイスについて、その最も好ましい形態を例に挙げて説明したが、本発明に関してサンプリング又は採取と称する場合に、その流路内を流れる流体をサンプリングする操作のみを意味するのではなく、主流路14の中に刺し込んだ針を通して、何らかの薬剤を主流路14の中に添加する操作を行うことも可能であるということに留意されたい。従って、本発明のサンプリングデバイスを、血液透析、輸液又は人工心肺等の流体を流通させる流路に設置することによって、流路内を流通する流体を採取することもできるし、また、流路内を流通する流体に対して何らかの薬剤を添加したりすることもできる。
(第2の形態)
図5は、本発明のサンプリングデバイスのもう1つの好ましい態様を示している。この形態におけるサンプリングデバイスの内部の構成は、上述した第1の形態と同様であるが、主流路部の外側に膨出部60を設けた点が第1の形態と異なっている。膨出部60は、デバイスの外側において、主流路部と分岐流路部とが交わる部分の前方側及び後方に設けられて、デバイスの前後方向の厚みを大きくしている。図5において、膨出部60は、例えば赤血球のように、厚みのある円盤であって、中央部分が若干凹み、その外周部分が盛り上がる形態となっているが、この例に限られず、デバイスの前方及び後方に膨らんで、両方向から指で持ちやすい形態であればよい。従って、正面から観察した膨出部60の平面形状は円形に限られず、四角形若しくはそれ以上の多角形、又は種々の曲線及び直線の組み合わせによって囲まれた形状であってもよい。
図1は、分解した状態のサンプリングデバイスの縦断面図である。 図2は、組み合わせた状態のサンプリングデバイスの縦断面図である。 図3は、キャップ基体の平面図及びキャップ基体に封止体を取り付けた状態の縦断面図である。 図4は、チューブを接続して、使用状態にあるサンプリングデバイスを示す平面図、正面図及び側面図である。 図5は、本発明のサンプリングデバイスのもう1つ形態を示す図である。 図6は、従来技術のサンプリングデバイスを示す図である。 図7は、もう1つの従来技術のサンプリングデバイスを示す図である。
符号の説明
10…サンプリングデバイス本体、 11…主流路部、 12…入口部、 13…出口部、 14…主流路、 21…分岐流路部、 22…分岐流路、 24…ネジ山、 30…キャップ部、 31…キャップ基体、 32…ホルダー部、 33…外周側円筒状壁部、 34…内周側円筒状壁部、 35…スルーホール、 36…ネジ山、 37…中央開口部、 38…テーパー部、 39…封止体、 51、52…チューブ、 53…サンプリング針、 60…膨出部。

Claims (7)

  1. 左右方向を長手方向として延び、内部に主流路を有する実質的に円筒形態の主流路部、及び前記主流路部の中間部分から上向きに分岐して延び、内部に分岐流路を有する実質的に円筒形態の分岐流路部からなるサンプリングデバイス本体と、前記分岐流路部の開口端に取り付けて、分岐流路を封止するキャップ部とを少なくとも有してなるサンプリングデバイスであって、
    前記キャップ部は、前記分岐流路部の開口端に取り付けた状態で、前記分岐流路部の開口端における分岐流路部壁部をその厚さ方向について実質的に覆う寸法及び形状の環状のホルダー部、前記ホルダー部の内周側から分岐流路部の内周面に実質的に接して下向きに延びる内周側円筒状壁部、及び前記ホルダー部の外周側から分岐流路部の外周面に実質的に接して下向きに延びる外周側円筒状壁部とからなるキャップ基体と、該キャップ基体の少なくとも中央開口部を封止する封止体とによって形成されており、
    前記封止体は、キャップ基体の中央開口部の全体を封止する栓部分と、ホルダー部の下面側において内周側円筒状壁部と外周側円筒状壁部との間に環状に存在する環状部分とに配されており、前記主流路部に流体を流通させる場合に、外部からサンプリング針を刺し込むことができ、かつ、前記サンプリング針を抜いた後にサンプリング針の刺痕を自発的に封じて、内部の流体が漏れ出すことを防止し得る弾性を有する材料によって形成されていることを特徴とするサンプリングデバイス。
  2. 前記キャップ基体と前記封止体とが二色成型によって一体に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサンプリングデバイス。
  3. 前記キャップ基体における内周側円筒状壁部の外周面に設けられているネジ山部と、前記分岐流路部の開口端付近の内周面に設けられているネジ山部とが係合することによって、前記キャップ部がサンプリングデバイス本体に取り付けられることを特徴とする請求項1又は2記載のサンプリングデバイス。
  4. 前記キャップ基体において、ホルダー部には該ホルダー部を上下方向に貫通するスルーホールが少なくとも1箇所に設けられており
    前記栓部分の頂部はキャップ部の上面側全体を覆って、中央部分が最も高く膨らんだドーム形態となっており、
    該栓部分と前記環状部分とは、スルーホール内に配される封止体によって連絡していることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサンプリングデバイス。
  5. 前記キャップ部をサンプリングデバイス本体に取り付けた場合に、分岐流路の実質的に全体を封止体が封止することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサンプリングデバイス。
  6. 前記キャップ部をサンプリングデバイス本体に取り付けた場合に、封止体の環状部分が、前記ホルダー部と分岐流路部の開口端との間を封止することを特徴とする請求項5記載のサンプリングデバイス。
  7. 上方から観察して略円環状であるホルダー部の2箇所又はそれ以上の回転対称な位置に、スルーホールが配されている請求項4〜6のいずれかに記載のサンプリングデバイス。
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