JP4159063B2 - 鍛造装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、密閉空間の粗材を塑性加工する鍛造装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、リング状の平歯車等を鍛造によって加工する装置として、特公昭62−33015号に記載の鍛造法が知られている。
上記文献に記載された鍛造法は、密閉穴型のダイスと、これに嵌合するポンチとからなる密閉型を用い、加圧加工の途中で加圧力の急増のために粗材が型内へ充填される外方あるいは内方への流れが緩慢になった段階で粗材の中央部あるいは他の不要部に穴をあけ、しかる後に前記密閉型によって再加工し、設置した穴の穴径の縮小を伴わせながら加圧を進行させることによって粗材を更に外方あるいは内方へ流して型内への充填を果して加工を完了させるものである。
【0003】
具体的に上記公報には、外周に歯部を構成したポンチと、歯部に嵌合する内歯部(凹部)を側面にもつ密閉穴型のダイスとで鍛造を行う例が記載されている。粗材は歯元円に近い直径をもちかつ中央穴(不要部)が予め形成されたリング状粗材とし、製品としてリング状の平歯車を製作する。また、ポンチとダイスの中心に、摺動自在なマンドレルを備えておき、粗材中央穴の内周面はマンドレルの貫通により拘束されている。そして、ポンチをダイスに加圧し、粗材を外向きに流す。途中加工力が急増する段階でマンドレルを抜く。マンドレルは、中央穴に相当する空間を保持した状態で停止されている。この状態で再加圧を行うと、空間が縮小されて外向きの流れが再び進行し、歯部への充填が完了する。
【0004】
この後、マンドレルを圧下させることにより、縮小した空間に吐出した粗材片を除去しつつ完全な中央穴が形成され加工を完了する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の鍛造装置では、加圧中、ダイスの歯部(内歯)に充填される粗材が、該歯部の壁面に対する静的摩擦力に抵抗して流動しなければならないため、ポンチとダイスに必要な加圧力が前記静的摩擦力によって大きくなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みなされたもので、粗材の周面に形成される鍔状、ネジ状、はすば歯状あるいは平歯状の突部の形成のために、該突部に嵌合するダイス凹部の壁面と粗材との摩擦を可及的に小さくして加圧力を低減できるようにした鍛造装置を提供することを解決すべき課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく本発明の発明者等は種々検討を重ね、ダイス凹部の壁面が加圧方向に遊動できれば、流動する粗材と壁面との摩擦力を小さくできると考え、本発明を完成した。
すなわち、本発明の鍛造装置は、周面に鍔状、ネジ状、はすば歯状あるいは平歯状の突部をもつ円柱状若しくはリング状の製品の塑性加工を行う鍛造装置であって、該製品の粗材を該突部と交差する方向に加圧する少なくとも一方がスライド型の第一パンチ部材及び第二パンチ部材と、該第一パンチ部材の先端面及び第二パンチ部材の先端面に対し前記粗材の加圧方向又は加圧方向及び回転方向に遊動可能な側面周壁を構成し、該側面周壁、該第一パンチ部材の先端面及び第二パンチ部材の先端面で密閉空間を区画するとともに該側面周壁には該突部を形成するための凹部をもつダイス部材と、該ダイス部材に該第一パンチ部材と第二パンチ部材とによる該粗材への加圧力に対向した所定の圧力を付与しつつ該ダイス部材の加圧方向又は加圧方向及び回転方向への可動を行う浮遊手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
【作用】
本発明の鍛造装置においては、密閉空間が加圧方向に対向した第一パンチ部材と第二パンチ部材と側面周壁を構成するダイス部材で構成される。そして、ダイス部材は加圧方向又は加圧方向又は回転方向に所定の圧力を対向させた状態で遊動できるため、側面周壁の凹部に流動する粗材と凹部壁との摩擦が動摩擦状態となって、粗材が凹部へ流動しやすくなり、加圧力を低減することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の鍛造装置は、第一パンチ部材、第二パンチ部材、遊動可能なダイス部材及び浮遊手段とによって構成することができる。すなわち、流動を促進する空間(中央孔やその他の切欠き等の不要部)をもたない製品でも、加圧力を増大させることなく突部に粗材を充填する技術である。
【0010】
突部とは、粗材の外周面あるいは内周面に形成される鍔部、平歯部、はすば歯部あるいはねじ等である。
好適な実施形態として、第一パンチ部材及び第二パンチ部材は、粗材を加圧方向に貫通して不要部を形成する加圧方向に摺動自在な少なくとも一つのマンドレルを一体的にもつことができる。該マンドレルは、加圧途中で該不要部の容積分に等しいかそれより若干加圧方向に小さい空間を形成保持するとともに更なる加圧により該不要部の該空間に流出した粗材片をカットする。
【0011】
この実施形態によれば、マンドレルによって形成される空間に粗材が突出して流動が促進される効果と、ダイス部材が遊動して粗材と凹部壁との摩擦が小さくなる効果の両方で加圧力を低減できる。
浮遊手段は、直動形の液圧アクチュエータとこれを制御する液圧回路で構成することができる。液圧回路を用いる利点は、例えばラックとピニオンで一定の圧力を加圧力に対向して付与する場合に、モータ等の駆動手段に負荷がかかり電力消費が大きいが、液圧回路ではリリーフバルブで簡単に加圧力に対向する圧力を付与できる。
【0012】
【実施例】
本発明の鍛造装置を図面に示す実施例によって更に詳細に説明する。
実施例の鍛造装置1は、図1に示すように、図示しない加圧装置に連結される上型ベース2と、上型ベース2に固定された上パンチ(スライド型)3と、上パンチ3の内部に配置された上マンドレル4と、下型ベース5と、下型ベース5に固定された下パンチ6(固定型)と、下パンチ6の内部に配置され、上マンドレル4の先端面と対面する下マンドレル7と、下型ベース5に配置された浮遊手段10と、浮遊手段10に連結されたダイス部材8とからなる。
【0013】
ダイス部材8の内周には、製品となる粗材9の外周面に形成する平外歯(突部)に対応して上下方向につながるように内歯8a(凹部)が刻設されている。また、この内歯8aに噛み合うように上パンチ3及び下パンチ6の先端部外周には、外歯3a、6aがそれぞれ形成されている。
浮遊手段10は、下型ベース5の内部に設けられた環状又は均等間隔に複数個設けられたピストン室をもつシリンダ11と、そのピストン室内を上下するピストン12とからなる。そして、ピストン12の先端部には、ダイス8が連結されている。シリンダ11には、下方に給液ポート13が設けられ、給液ポート13には図2に示す油圧回路20から作動液が給排されるようになっている。なお、ピストン室は、均等間隔に複数個設けるよりも環状にすることでより上下方向に平行な状態でダイス部材8の上下方向への移動を行うことができる。
【0014】
図2に示されるように、作動液のタンク24と、タンク24の作動液を吸入するポンプ21と、給液ポート13とポンプ21との間に配置された電磁弁22と、電磁弁22と給液ポート13との接続点とタンク24との間に配置されたリリーフバルブ23とを有する。リリーフバルブ23は、ここでは0.5MPaの圧力がかかると開放する設定となっている。また、ポンプ21の出口側液路28と帰還液路29とを跨ぐようにリリーフバルブ25が接続されている。リリーフバルブ25は、ポンプ21の過剰吐出圧をカットするものである。
【0015】
上記鍛造装置は以下のように作動する。図1の左側に示されるように、先ずリング状の粗材9を下パンチ6と上パンチ3との間にセットする。粗材9は、中央に不要部としての中央孔9aをもち、上マンドレル4及び下マンドレル8がその中央孔9aに貫通した状態にされる。粗材9は、内径が上マンドレル4及び下マンドレル7の外径よりも若干大きい程度に設定されている。
【0016】
ダイス8は、電磁弁22が図2で右位置に切換えられているので、ポンプ21より作動液がシリンダ11のピストン室に供給されて、ピストン12が最高位まで浮上させられている。
ピストン12が最高位(所望の位置)まで浮上すると、電磁弁22は、図2で中間位置に切り換えられて、シリンダ11内に供給された作動液がリリーフバルブ23により閉じ込められた状態となる。
【0017】
次に図1の右側に示されるように、上型ベース2が下方へ加圧されることにより、上パンチ3が粗材9を塑性変形させつつ下降する。粗材9は、上方から加圧されると、図1で横方向に広がり、ダイス8の内歯8aに沿って材料流動させられる。粗材9は、変形しながらダイス8の内歯8a壁と摩擦が生じてその摩擦抵抗により、ダイス8が下方への圧力を受ける。
【0018】
ダイス8には、浮遊手段10のピストン12が連結しており、ピストン12にシリンダ11内に存在する作動液をシリンダ12の外へ押し出す力が働く。この作動液への力は、リリーフバルブ23に圧力をかけて、設定された圧力以上の圧力が生じると、その過剰な圧力は開放してタンク24へ逃される。このダイス8が下降することにより、粗材9とダイス8の内歯8a壁との間には、静的摩擦ではなく、動的摩擦が生じた状態となり、加圧力を低減することができる。
【0019】
更に本実施例では、加圧をこれ以上行っても材料流動が見込めない状態になったとき、図3左側に示されるように、上マンドレル4と下マンドレル7とが当接した状態から、上マンドレル4を上昇させて空間30を形成する。この空間30は、中央孔9aの容積分に等しいかそれより若干加圧方向に小さくなるように、上マンドレル4と下マンドレル7の距離が調整されている。
【0020】
上記空間30が形成されることにより、粗材9は図3の右側に示されるように、空間30内に材料の突出が生じる。これにより、更にダイス8の内歯部8a内への材料流動が生じ、外歯に材料が十分に充填された製品を鍛造することができる。 十分に所望の形状に材料が充填された後、上マンドレル4と下マンドル7とを下降させて、粗材9の中央孔9a内に突出した粗材片9bを切除する。かくて、低減された加圧力で十分な充填性のある製品を鍛造により製造することができる。 上記実施例は、リング状の平外歯車を製造するものであるが、はすば歯車やネジ部材でも製造することができる。この場合は、ダイス8が加圧方向及び回転方向に遊動する構成とすればよい。具体的には、シリンダ11にピストン12を回転させるガイドを設ければよい。
【0021】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、密閉空間が第一ポンチ部材及び第二ポンチ部材と該第一ポンチ部材及び第二ポンチ部材に対し加圧方向又は加圧方向及び回転方向に遊動可能な側面周壁を構成するダイス部材で区画されるため、材料流動時のダイス部材との摩擦を小さくでき、必要な加圧力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の鍛造装置の一実施例を示し左半分は加圧前の状態、右半分は加圧途中の状態を示す断面図である。
【図2】 図1の鍛造装置で再加圧した状態(左半分)と不要部を再生した状態を示す断面図である。
【図3】 図1の鍛造装置で油圧回路図である。
【符号の説明】
9…粗材、3…上パンチ(第一パンチ部材)、6…下パンチ(第二パンチ部材)、8a…内歯(凹部)、8…ダイス部材、10…浮遊手段。
Claims (2)
- 周面に鍔状、ネジ状、はすば歯状あるいは平歯状の突部をもつ円柱状若しくはリング状の製品の塑性加工を行う鍛造装置であって、
前記製品の粗材を前記突部と交差する方向に加圧する少なくとも一方がスライド型の第一パンチ部材及び第二パンチ部材と、
前記第一パンチ部材の先端面及び第二パンチ部材の先端面に対し前記粗材の加圧方向又は加圧方向及び回転方向に遊動可能な側面周壁を構成し、該側面周壁、該第一パンチ部材の先端面及び第二パンチ部材の先端面で密閉空間を区画するとともに該側面周壁には前記突部を形成するための凹部をもつダイス部材と、
前記ダイス部材に前記第一パンチ部材と第二パンチ部材とによる前記粗材への加圧力に対向した所定の圧力を付与しつつ該ダイス部材の加圧方向又は加圧方向及び回転方向への可動を行う浮遊手段と、を具備し、
前記浮遊手段は、前記第一パンチ部材又は第二パンチ部材を支持する固定のベース部材に配設され前記ダイス部材を連結したピストン及び直動の液圧シリンダ部からなる液圧アクチュエータと、前記第一パンチ部材及び第二パンチ部材の加圧操作前に該液圧アクチュエータの圧力室に作動液を供給し、加圧開始後、該圧力室の作動液圧を規制する液圧回路とからなることを特徴とする鍛造装置。 - 前記第一パンチ部材及び第二パンチ部材は、前記粗材を加圧方向に貫通して不要部を形成する加圧方向に摺動自在な上マンドレル及び下マンドレルをそれぞれ一体的にもち、該上マンドレル及び下マンドレルは、加圧途中で離間して該不要部の容積分に等しいかそれより若干加圧方向に小さい空間を形成保持するとともに更なる加圧により該不要部の該空間に流出した粗材片をカットする請求項1記載の鍛造装置。
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