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JP4155745B2 - レドックスフロー電池の運転方法 - Google Patents

レドックスフロー電池の運転方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、レドックスフロー電池の運転方法に関するものである。特に、電池効率がより高く、ガス発生量が少ないレドックスフロー電池の運転方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
負荷平準化用途や瞬低・停電対策用途などにレドックスフロー電池を利用することが提案されている。
【0003】
特に、バナジウムレドックスフロー電池は、▲1▼起電力が高く、▲2▼エネルギー密度が大きく、▲3▼電解液が単一元素系であるため正極電解液と負極電解液とが混合しても充電によって再生することができると言った多くの利点を有している。
【0004】
このようなバナジウムレドックスフロー電池は、充放電を繰り返すと隔膜を通して電解液中の各種イオンや溶媒が移動し、正極及び負極の電解液量の増減が起こる。例えば、アニオン隔膜を用いた場合、通常、正極側から負極側へ液移りが起こり、電解液量がアンバランスになることで一方の電気容量が著しく低下することになる。
【0005】
このような液移りに伴う問題を解消するため、従来、一定回数の充放電サイクルごとに正極電解液と負極電解液とを連通あるいは混合して液量調整を行っている。この液量調整に関する従来の技術としては、特開2001-167787号公報、実開平4-124754号公報、特開平11-204124号公報や、特開平2-195657号公報に記載のものが知られている。
【0006】
例えば、特開2001-167787号公報に記載の技術では、液量が増加したタンクから液量が減少したタンクに配管を通して電解液を戻すことで、各タンクの液量変化を一定の範囲に保持している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来は、具体的にどの程度の液量変化でどの程度の液量を移動させるかについて詳しく検討されていなかった。そのため、従来の技術では、例えば、電池効率をより向上させることが困難である。
【0008】
また、特開2001−167787号公報に記載の技術では、充放電前の設定条件として、充放電サイクルの繰り返しにより液量が減少するタンクの液量を予め他方のタンクの液量よりも多くした場合を主に評価している。しかし、液量が減少するタンクの液量を予め他方のタンクの液量よりも多くすると、充放電に利用されない電解液を余分に含むことになり、コストアップとなる。
【0009】
更に、従来は、電池評価として必要な発生ガスに関する評価をほとんど実施していない。充放電の副反応として、ガスが発生する。しかし、上記従来の技術では、発生ガスの種類や発生量について明確な知見が得られていない。そのため、電池の評価項目を効率(電力、電圧、電流)と放電電力量(初期状態との比較)のみとしており、十分な電池評価が行われていなかった。
【0010】
そこで、本発明の主目的は、ガス発生量が少なく電池効率により優れ、かつより低コストであるレドックスフロー電池の運転方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、充放電の開始時において正負両極の電解液貯蔵用タンクに貯蔵する電解液量を同量とし、かつ充放電サイクルの繰り返しに伴う電解液の液量変化の割合が規定の範囲を超える前に両タンクの液量を同等にすることで、上記の目的を達成する。
【0012】
即ち、本発明は、隔膜で分離される正極及び負極と、前記正極に循環供給される正極電解液を貯蔵する正極電解液貯蔵用タンクと、前記負極に循環供給される負極電解液を貯蔵する負極電解液貯蔵用タンクとを具えるレドックスフロー電池の運転方法である。前記各タンクには、充放電の開始時において電解液を同量貯蔵する。そして、充放電サイクルの繰り返しに伴い隔膜を通して移動した電解液の液量変化の割合が−15%以上+17%以下の範囲内にあるときに各タンクの電解液を同量に戻す。特に、液量変化の割合が0%超+5%以下の範囲内にあるときに電解液を同量に戻すことが最適である。本発明において、電解液の液量変化の割合とは、充放電の開始時における両電解液の和を2で割った平均液量に対する正極電解液量から負極電解液量を引いた液量差の割合である。
【0013】
上記構成を具える本発明は、充放電の開始時、即ち設定条件において各タンクに貯蔵する電解液を同量にすることで、コストの低減を図る。また、電解液の液量変化の割合を規定し、この規定の範囲を超える前に両タンクの電解液量を等しくするべく、液移りにより増加した液量分を減少した側のタンクに移動させることで、ガスの発生をより少なくし、電池効率をより向上させる。
【0014】
本発明において電解液の液量変化の割合を規定し、この規定の範囲を超える前に両タンクの電解液量を同量にする理由を説明する。
従来は、充放電の開始時において両タンクの電解液量を同量にして充放電を行い、作業効率上、一定時間の充放電毎に液量調整を行うことが多かった。この液量調整の頻度は、せいぜい1日1回程度であり、どれだけの液量変化でどの程度の量を移動させれば電池効率をより向上させられるかについて、明確な指針がなかった。また、従来の技術として、一方の送液圧力を大きくし、他方の送液圧力を小さくすることで、両タンクの液量を常に同量に保つ技術がある。即ち、この技術は、一方のセルに流される電解液流量を他方のセルに流される電解液流量よりも小さくして流量差をつけるものである。しかし、セルの耐圧制限のため、特にセルの面積が大きい場合、流量を小さくせざるを得ないことがある。すると、流量を小さくすることでエネルギー密度が小さくなり、結果として電池性能が低下することがある。そこで、本発明者らが検討した結果、液量変化が一定の範囲を超える前に、液が増加したタンクから液が減少したタンクに、増加した液だけ戻して両タンクの液量を同量にすれば、より優れた電池効率が得られると共に、ガスの発生量が比較的少ないことを見出した。特に、この場合、流量を調整して各タンクの液量を常に同量に維持して運転する場合よりもむしろ電池効率、エネルギー密度がよいことも見出した。
【0015】
また、充放電サイクルの繰り返しに伴う各タンクの液量の増減は、隔膜の種類及び正負極への送液圧力差で決まる。しかし、特開平2001-167787号公報のように隔膜の種類だけで液量が増減すると認識している場合、液量の増減を明確に把握できない。
【0016】
上記事項及び知見に基づき、本発明は、各タンクの電解液量を同量とした設定条件において、電解液の液量変化の割合が規定の範囲に達してそれを超える前に各タンクの電解液量を同量に戻す。
【0017】
次に、本発明において、ガス発生をより少なくする理由を説明する。バナジウムレドックスフロー電池は、充放電の副反応としてガスが発生する。例えば、正極活物質を充電しすぎると、副反応として水の分解反応により酸素が発生し、電極の酸化劣化を招き、ひいては電圧効率が低下する。
【0018】
また、本発明者らは、負極から水素、正極から二酸化炭素などのガスが発生するとの知見も得た。水素であれば最悪の場合、発火、爆発の可能性もある。二酸化炭素であれば電極が分解しており、電池効率低下としてあらわれる前に劣化が進行していることになる。
【0019】
更に、このようにガスが発生して長期的に蓄積すると、タンク耐圧に問題が生じる。そのため、ガスの発生をより少なくすることが好ましい。
【0020】
本発明において電解液量を調整する方法は、公知の技術を適用すればよい。例えば、両タンクを連通管で連結し、連通管の両端を各タンクに貯蔵する電解液の液面より上の位置で連結したり(実開平4-124754号公報参照)、連通管の両端を電解液の液面より下の位置で連結したり(特開平11-204124号公報参照)、少なくとも一方の送液圧力を調整することにより隔膜を通して電解液を逆向きに移動させたりする(特開平2-195657号公報参照)とよい。また、本発明において電解液を同量に戻すには、例えば、両タンクを連通管で連結しておき、一方のタンクから他方のタンクに電解液が移動できるよう構成することが好ましい。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
充放電の開始時において、正極電解液量と負極電解液量とを同量としたレドックスフロー電池の充放電を行い、電池効率、液エネルギー密度、ガス発生量を測定した。
【0022】
本試験に用いたレドックスフロー電池の概要を図1に示す。この電池は、イオンが通過できる隔膜4で正極セル1Aと負極セル1Bとに分離されたセル1を具える。正極セル1Aと負極セル1Bの各々には正極電極5と負極電極6とを内蔵している。正極セル1Aには、正極電解液を供給及び排出する正極電解液貯蔵用タンク2が導管7、8を介して接続されている。同様に負極セル1Bには、負極電解液を供給及び排出する負極電解液貯蔵用タンク3が導管10、11を介して接続されている。各電解液は、バナジウムイオンなどの価数が変化するイオンの水溶液を用い、ポンプ9、12で循環させ、正極電極5及び負極電極6におけるイオンの価数変化反応に伴って充放電を行う。
【0023】
本試験において電解液を移動させて両タンクの電解液量を同量にする方法を説明する。まず、両極電解液貯蔵用タンクには、同量の電解液を貯蔵しておく。各タンクの側壁には、液位センサが設けてあり、タンク内の電解液量を把握することができる。この両タンクをポンプを介して連通管で連結する。そして、充放電に伴い、各タンクの電解液量が表1に示す量に達したら、この連通管を介して充放電に伴って増加した量だけを一方のタンクから他方のタンクにポンプを利用して移動させ、両タンクの電解液量を同量に調整する。表1に示す両極電解液の量(l)、及び電解液の液量変化の割合は、同量に調整する前に測定したものである。次に、本試験において電解液量の調整方法を説明する。本試験では、図1に示すポンプ12を調整して、電解液の送液圧力を調整することで液量を変化させた。具体的には、いずれの試料も正極電解液の流量を7l/min、送液圧力を0.6×105Paと等しくし、負極電解液の流量、送液圧力を異ならせた。正極側の電解液を増加させる試料No1〜4は、負極電解液の流量を14l/min、送液圧力を1.4×105Paとし、各極の液量が表1に示す量となるまで変化させた。負極側の電解液を増加させる試料No6〜8は、負極電解液の流量を7l/min、送液圧力を0.7×105Paとし、同様に各極の液量が表1に示す量となるまで変化させた。両極の電解液を等量に維持する試料5は、負極電解液の流量を10l/min、送液圧力を1.0×105Paとした。
【0024】
【表1】
Figure 0004155745
【0025】
試験条件を以下に示す。
(電池仕様)
電極の反応面積:1000cm2×10セル
隔膜:陰イオン(アニオン)交換膜
正極電解液:4価のバナジウムイオン1.7mol/l 硫酸2.6mol/lの電解液25l
負極電解液:3価のバナジウムイオン1.7mol/l 硫酸2.6mol/lの電解液25l
【0026】
(本試験における電解液量)
上記正極電解液と上記負極電解液とを混合して、価数バランス3.5価の電解液を50l用意する。この混合電解液を正極電解液貯蔵用タンクと負極電解液貯蔵用タンクとにそれぞれ同量25l入れる。
【0027】
(充電方法)
電流密度100mA/cm2で定電流充電をはじめ、次に上限充電電圧1.60V/セルの条件で開放電圧1.55V/セルになるまで定電圧充電を行う。
【0028】
(放電方法)
電流密度100mA/cm2で定電流放電を行う。下限放電電圧1.0V/セルに達したところで放電を終了する。
【0029】
(評価方法)
上記仕様の電池を用いて、充放電開始後、各タンクの液量が表1に示す液量に変化した時点で両タンクの電解液量を同量に戻すという操作を繰り返す。このような充放電と液量調整とを繰り返す運転を1週間連続して行う。1週間の前後で、電池効率と液エネルギー密度を測定する。1週間連続充放電終了後、ガス(水素及び二酸化炭素)の発生量を測定する。
【0030】
電池効率は、{放電電圧(V)×放電電流(A)×放電時間(h)}/{充電電圧(V)×充電電流(A)×充電時間(h)}で表される。
【0031】
ガスは正極で二酸化炭素の発生を、負極で水素の発生量を測定した。ガス分析はガスクロマトグラフィー法によって行った。
【0032】
試験結果を表2に示す。また、本試験における電池効率の低下量の評価基準を表3に、同液エネルギー密度低下量の評価基準を表4に、同ガス発生量の評価基準を表5に示す。更に、電解液の液量変化の割合を示す(正極電解液量-負極電解液量)/{(正極電解液量+負極電解液量)/2}と電池効率の関係、及び(正極電解液量-負極電解液量)/{(正極電解液量+負極電解液量)/2}と液エネルギー密度の関係を図2のグラフに示す。
【0033】
【表2】
Figure 0004155745
【0034】
【表3】
Figure 0004155745
【0035】
【表4】
Figure 0004155745
【0036】
【表5】
Figure 0004155745
【0037】
表2及び図2のグラフから明らかなように、(正極電解液量-負極電解液量)/{(正極電解液量+負極電解液量)/2}が-0.15未満(-15%未満)、又は+0.17超(+17%超)となる前に両タンクの電解液の量を同量に戻す操作を行った試料No3、4及び6は、電池効率及び液エネルギー密度が高く、ガスの発生量も少ないことが分かる。特に、(正極電解液量-負極電解液量)/{(正極電解液量+負極電解液量)/2}が0超から+0.05以下(0%超から+5%以下)を超える前に各タンクの電解液を同量に戻した試料No4は、電池効率及び液エネルギー密度がより高い値を示し、ガスの発生量も極めて少ない。また、従来は、電解液を十分に流し、液量を同量に保つように運転する場合、即ち(正極電解液量-負極電解液量)/{(正極電解液量+負極電解液量)/2}が0となるように運転する場合(試料No5)、電池効率が最も優れていると考えられていた。しかし、液量変化が0(0%)よりも大きい範囲、より具体的には0(0%)超から+0.05(+5%)以下の範囲内で両タンクの液量を同量に戻す操作を行う試料No4の方が好ましい結果が得られることが分かった。また、液量を同量に戻す操作を行う試料No4は、この操作を行わない試料No5と比較してエネルギー密度も優れていた。
【0038】
本例において、電解液を移動させて両極の電解液量を同量に調整する機構を具体的に説明する。本例では、連通管にポンプを設置して正負極各タンクのどちらからでも電解液を移動させることが可能な機構を用いた。図3は、各タンクを連通管で連結した状態を示す模式図である。正極電解液貯蔵用タンク20及び負極電解液貯蔵用タンク21とは2本の連通管22及び23とで連結され、連通管22及び23は、ポンプ24を具える接続管25で連結されている。
【0039】
この場合、正極電解液貯蔵用タンク20から負極電解液貯蔵用タンク21に電解液を移動させるには、バルブ30及びバルブ31を開き、バルブ32及びバルブ33を閉じ、適宜ポンプ24を用いて行うとよい。一方、負極電解液貯蔵用タンク21から正極電解液貯蔵用タンク20に電解液を移動させるには、バルブ32及びバルブ33を開き、バルブ30及びバルブ31を閉じ、適宜ポンプ24を用いて行うとよい。この構成により、一方のタンクから他方のタンクへの電解液の移動をより効率よく行うことができる。
【0040】
本例では、連通管にポンプ24を設けた例を示したが、ポンプ24を設けず連通管とバルブのみ設け、バルブを開くことで重力に従って液が移動するようにしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように本発明レドックスフロー電池によれば、充放電に伴う電解液の液量変化の割合が規定値を超える前に両極の電解液量を同量に戻すことで、従来に比べてガス発生が少なく、かつ電池効率が高いという優れた効果を奏し得る。また、各タンクにおいて充放電開始時の電解液量を同量とすることで、余分な電解液を含むことなく経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】レドックスフロー電池の動作原理を示す説明図である。
【図2】電解液の液量変化の割合と電池効率の関係、及び電解液の液量変化の割合と液エネルギー密度の関係を示すグラフである。
【図3】正極電解液貯蔵用タンクと負極電解液貯蔵用タンクとを連通管で連結した状態を示す模式図である。
【符号の説明】
1 セル 1A 正極セル 1B 負極セル 2 正極電解液貯蔵用タンク
3 負極電解液貯蔵用タンク 4 隔膜 5 正極電極 6 負極電極
7、8、10、11 導管 9、12 ポンプ
20 正極電解液貯蔵用タンク 21 負極電解液貯蔵用タンク 22、23 連通管
24 ポンプ 25 接続管
30、31、32、33 バルブ

Claims (2)

  1. 隔膜で分離される正極及び負極と、前記正極に循環供給される正極電解液を貯蔵する正極電解液貯蔵用タンクと、前記負極に循環供給される負極電解液を貯蔵する負極電解液貯蔵用タンクとを具え、両タンクは、各タンク内の電解液量の調整が可能となるように、相互に連結されたバナジウムレドックスフロー電池の運転方法において、
    前記各タンクには、充放電の開始時において電解液が同量貯蔵され、
    充放電サイクルの繰り返しに伴い隔膜を通して移動した電解液の液量変化の割合が-15%以上+17%以下の範囲内にあるときに両タンクの電解液を同量に戻すことを特徴とするバナジウムレドックスフロー電池の運転方法。
    但し、液量変化の割合は、充放電の開始時における両電解液の和を2で割った平均液量に対する正極電解液量から負極電解液量を引いた液量差の割合とする。
  2. 液量変化の割合が0%超+5%以下の範囲内にあるときに両タンクの電解液を同量に戻すことを特徴とする請求項1に記載のバナジウムレドックスフロー電池の運転方法。
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