JP4155532B2 - インクジェット記録装置及びクリーニング制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録装置及びクリーニング制御方法に関し、特に、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録媒体上に記録を行う記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングする機能を備えたインクジェット記録装置及びクリーニング制御方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方法は、従来より、低騒音、低ランニングコスト、装置小型化の容易さ、カラー記録の容易さ等の理由からプリンタや複写機の記録部等に利用されている。
【0003】
さて、インクジェット記録方法に従う記録によれば、記録ヘッドからインク液滴を紙,OHPフィルムなどの記録媒体に吐出させるため、その吐出したインク滴以外にも発生した微細なインク滴(ミスト)や、記録媒体へ吐出したインク滴がその記録媒体表面で跳ね返るなどして記録ヘッドの吐出口面にインクが付着することがある。このようにして付着したインクが記録ヘッドの吐出口の周りに多量に集まったり、又これに紙粉等の異物が付着するとインク吐出が阻害されて思わぬ方向に吐出したり、インク液滴が吐出しないといった弊害を引き起こし、吐出不良が発生する。
【0004】
従って、このような問題を解決するために、従来のインクジェット記録装置にはミストや記録媒体からのインク滴の跳ね返りによって付着した記録ヘッドの吐出口面の不要なインク及び紙粉等を清掃除去する手段として、ゴムなどの弾性部材で形成したブレードと記録ヘッドの吐出口面を相対移動により掃拭(ワイピング)する機構を備えている。
【0005】
このワイピング動作はインクジェット記録装置の信頼性を高めるための重要な技術となっている。さらに、ワイピング動作では除去しきれなかった記録ヘッドの吐出口面に付着した異物などを取り除く手段として、インクジェット記録装置には、記録ヘッドの吐出面を覆うキャップとこれに接続された吸引ポンプからなる吸引回復機構が設けられており、吸引ポンプによって発生された負圧により記録ヘッドのインク吐出ノズル内からインクを強制的に吸出し、粘度の増したインクや異物などが取り除かれ、正常な吐出を回復するようにしている。
【0006】
ところで従来のインクジェット記録装置のワイピング動作において、記録時間に従ってその動作を実行する制御や記録ヘッドから吐出されたインクのドット数(記録ドット数)に従ってその動作を実行する制御、さらにはこれらを組み合わせた制御が行われている。通常、このワイピング動作は、記録ヘッドの吐出口面に付着したインクの濡れが吐出不良を引き起こす前に実行されるように設定されるのが一般的である。
【0007】
さらに、特開平7−125228号公報では記録ドット数および記録時間を計測し、これら計測された記録ドット数および記録時間夫々に基づいて、記録動作中のワイピング動作のタイミングを制御している。
【0008】
【発明が解決しようとしている課題】
しかしながら上記従来例では、画像記録中にワイピング動作を行うかどうかの制御しか行われていない。
【0009】
従って、記録媒体の搬送方向(副走査方向)と交叉する方向(主走査方向)に、複数のインク吐出ノズルを配列した記録ヘッドを搭載したキャリッジを往復移動して記録するシリアルタイプのインクジェット記録装置においては、記録途中にワイピング動作が実行されるとそのワイピング動作直後の記録部分の記録濃度が変化し、その結果、記録画像に濃度ムラが生じるといった現象が現れるという問題が生じていた。
【0010】
このような濃度ムラは、記録媒体上の同一画素を複数個のインク液滴で重ね記録する場合や記録媒体上の同一領域を記録ヘッドで複数回走査して画像を形成するマルチパス記録方法(ファイン記録方法と呼ぶこともある)を用いて記録した場合にも発生する。しかしながら、一定のリズムで記録が行われればインクの記録媒体へのインクの浸透も一定になり画像濃度も安定するが、記録途中のワイピング動作などにより一定のリズムがくずれた場合には、インクの記録媒体への浸透状態も不連続的に変化するために、インクの濃度変化が生じ、その結果としてその濃度変化が視覚的にはムラとして感知されるようになったものと考えられる。
【0011】
本発明は上記従来例に鑑みてなされたものであり、画像記録中のワイピング回数を制御して記録画像の濃度ムラの発生を低減するととともに、スループットを低下させることなく記録を行うことができるインクジェット記録装置及びクリーニング制御方法を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明のインクジェット記録装置は、以下のような構成からなる。
【0013】
即ち、記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録媒体を前記記録装置外に排出する排出手段と、前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするためのワイピング手段と、前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定手段と、前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント手段と、前記カウント手段によるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定手段と、前記カウント手段によるカウント数および前記測定手段により測定された経過時間に基づいて、前記記録ヘッドにより記録された記録媒体を前記排出手段によって排出する直前、排出している間、あるいは排出した後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置を備える。
【0014】
このような構成の装置には、種々の実施態様がある。
【0015】
例えば、記録動作直前又は記録動作中に所定の時間間隔で割り込み処理により所定の第1の閾値と前記カウント手段によるカウント結果とを比較する第1割り込み手段と、前記排出手段による前記記録ヘッドによる記録された記録媒体の排出時に割り込み処理により所定の第2の閾値と前記カウント手段によるカウント結果とを比較する第2割り込み手段をさらに有するようにできる。この場合、所定の第2の閾値は、所定の第1の閾値の値の60〜80%の値をとることが望ましい。
【0016】
そして、前記第1決定手段では第1割り込み手段によって得られた比較結果を用いて決定を行うようにする一方、前記第2決定手段では第2割り込み手段によって得られた比較結果を用いて決定を行うようにすると良い。
【0017】
また別の実施態様では、前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定手段を有することを前提とすれば、
記録動作直前又は記録動作中に所定の時間間隔で割り込み処理により所定の第1の閾値とカウント手段によるカウント結果とを比較する第1割り込み手段と、前記排出手段による記録ヘッドによる記録された記録媒体の排出時に割り込み処理により所定の第3の閾値と測定手段によって測定された経過時間とを比較する第3割り込み手段をさらに有するようにし、第1決定手段では第1割り込み手段によって得られた比較結果を用いて決定を行うようにする一方、第2決定手段では第3割り込み手段によって得られた比較結果を用いて決定を行うようにできる。
【0018】
なお、上記のカウント手段は、記録ヘッドによる記録動作中にカウント動作を実行することが望ましい。
【0019】
また、上記の記録ヘッドは、熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生するための電気熱エネルギ変換体を備えているインクジェット記録ヘッドであることが望ましい。
【0020】
また他の発明によれば、記録媒体へインクを吐出して記録を行う記録ヘッドのインク吐出口面を記録装置のワイピング手段によってクリーニングする際のクリーニング制御方法であって、前記記録媒体を前記記録装置外へ排出する排出工程と、前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定工程と、前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント工程と、前記カウント工程におけるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定工程と、前記カウント工程におけるカウント数および前記測定工程において測定した経過時間に基づいて、前記記録ヘッドにより記録された記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定工程とを有することを特徴とするクリーニング制御方法を備える。
【0021】
さらに他の発明によれば、記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、前記記録媒体を前記記録装置外に排出する排出手段と、前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするためのワイピング手段と、前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント手段と、前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定手段と、前記カウント手段によるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定手段と、前記測定手段により測定された経過時間に基づいて、前記排出手段による記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定手段とを有することを特徴とするインクジェット記録装置を備える。
【0022】
この構成に加えて、記録動作直前又は記録動作中に所定の時間間隔で割り込み処理により所定の第1の閾値と前記カウント手段によるカウント結果とを比較する第1割り込み手段と、前記排出手段による前記記録ヘッドによって記録された記録媒体の排出時に、割り込み処理により所定の第2の閾値と前記測定手段によって測定された経過時間とを比較する第2割り込み手段を有するようにしても良い。
【0023】
さらに、この構成において、前記第1決定手段は前記第1割り込み手段によって得られた比較結果を用いて前記決定を行い、一方、前記第2決定手段は前記第2割り込み手段によって得られた比較結果を用いて前記決定を行うようにしても良い。
【0024】
さらに他の発明によれば、記録媒体へインクを吐出して記録を行う記録ヘッドのインク吐出口面を記録装置のワイピング手段によってクリーニングする際のクリーニング制御方法であって、前記記録媒体を前記記録装置外へ排出する排出工程と、前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント工程と、前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定工程と、前記カウント工程におけるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定工程と、前記測定工程において測定した経過時間に基づいて、前記記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定工程とを有することを特徴とするクリーニング制御方法を備える。
【0025】
以上の構成により本発明は、記録媒体へインクを吐出して記録を行う記録ヘッドのインク吐出口面をワイピング手段によってクリーニングする際に、前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の吐出ドットをカウントし、そのカウント結果に基づいて、記録ヘッドによる記録媒体1頁への記録中にワイピング手段により記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定し、さらに、記録ヘッドによる記録された記録媒体を排出手段を用いて排出する時に、そのカウント結果に基づいて、ワイピング手段により記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定するよう動作する。
【0026】
【発明の実施の形態】
次に本発明を適用した一実施例を図面を参照して具体的に説明する。
【0027】
図1は本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置の概略を示す部分破断斜視図である。
【0028】
図1において、1はインクタンクとその下方に記録ヘッドを有したヘッドカートリッジである。図1から分かるように、ヘッドカートリッジ1はカラー記録を行うために、イエロ(Y)インクを収容したインクタンクとイエロインクを吐出する記録ヘッドを備えたYヘッドカートリッジ1A、マゼンタ(M)インクを収容したインクタンクとマゼンタインクを吐出する記録ヘッドを備えたMヘッドカートリッジ1B、シアン(C)インクを収容したインクタンクとシアンインクを吐出する記録ヘッドを備えたCヘッドカートリッジ1C、ブラック(K)インクを収容したインクタンクとブラックインクを吐出する記録ヘッドを備えたKヘッドカートリッジ1Dとを有している。これら4つのヘッドカートリッジは夫々互いに独立に記録装置から取り外して交換可能である。
【0029】
なお、以下の説明では、これら4つのヘッドカートリッジ全体について言及するときには単にヘッドカートリッジ1ということにする。さらに、4つのヘッドカートリッジ夫々対応して備えられた4つの記録ヘッド全体について言及するときには記録ヘッド1aとして言及する。また、記録ヘッドを駆動するための信号などを受信するために各カートリッジにはコネクタが設けられている。
【0030】
また、2は、ヘッドカートリッジ1を搭載するキャリッジである。キャリッジ2には4つのヘッドカートリッジ夫々に備えられた記録ヘッドのコネクタと電気的に接続するコネクタホルダを設けられている。キャリッジ2はその移動方向(主走査方向)に延在させて設置されたガイドシャフト3に沿って往復移動が可能である。具体的には、キャリアモータ4の駆動力がモータプーリ5、従動プーリ6およびタイミングベルト7を介してキャリッジ2に伝達され、ガイドシャフト3に沿って図中の矢印方向に往復移動する。
【0031】
一方、記録用紙などの記録媒体は8は、記録ヘッド1aによる記録位置の前後に配置されて記録媒体を挟持して搬送を行う搬送ローラ対9、10および搬送ローラ対11、12により、記録ヘッド1aの吐出口面と対向する位置(記録位置)を通して搬送される。記録媒体8はその記録位置において平坦な記録面を形成するようにその裏面をプラテン(不図示)により支持されている。この時、キャリッジ2に搭載されたヘッドカートリッジ1の記録ヘッド1aはキャリッジ2から下方へ突出して搬送ローラ10と搬送ローラ12との間に位置し、記録ヘッドの吐出口形成面が記録媒体8の記録面に平行に対向するようになっている。
【0032】
さて、この実施形態のインクジェット記録装置においては、回復系ユニット14を図1の左側にあるキャリッジ2のホームポジション側に配設してある。
【0033】
回復系ユニット14において、15はヘッドカートリッジ1の吐出口面にそれぞれ対応して設けたキャップであり、上下方向に昇降可能である。そして、キャリッジ2がホームポジションにあるときには記録ヘッド1aのインク吐出口面と接合してこれをキャッピングし、記録ヘッドのインク吐出口からインクが乾燥蒸発することによって生じるインク粘度の増大やそのインクの固着、或は、ごみなどが記録ヘッドのインク吐出口面に付着することよって吐出不良が発生するのを防いでいる。又、キャップ15はポンプ16と連通されており、記録ヘッド1aが万一吐出不良になった場合やその吐出口内にインクがなくなった時、キャップ15と記録ヘッド1aのインク吐出口面とを接合させ、ポンプ16を用いてキャップ内に負圧を生じさせてインクを吸引排出する吸引回復動作を実行する。
【0034】
さらに、18はゴムなどの弾性部材で形成されたワイピング部材としてのブレードであり、17はブレード18を保持するためのブレードホルダである。ブレード18は記録ヘッドのインク吐出口面を傷けることのないように一般的にヘッドより低い硬度の材料で作られている。また、ブレード18と記録ヘッド1aとの相対的な位置関係に対する許容度を増すために、ブレード18は弾性部材で作られる場合が多い。具体的にブレード18に使用される材料としては、天然ゴム、ニトリルゴム、ブタジェンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、塩素化ブチルゴム、シリコンゴム、ポリスチレンラバー、ポリ塩化ビニル、ポリウレタンゴム等の弾性体が一般的に使用される。また、その他にポリウレタン、ポリエチレンなどの発泡体または焼結体が使用されることもある。
【0035】
この実施形態では、キャリッジ2の移動によって駆動されるブレード昇降機構(不図示)により、ブレードホルダ17に支持されたブレード18は記録ヘッド1aのインク吐出口面に付着したインクをワイピングすべく突出(上昇)した位置(ワイピング位置)と、記録ヘッド1aのインク吐出口面と干渉しないように後退(下降)した位置(待機位置)との間とを昇降可能となっている。そして、この実施形態では、キャリッジ2が図中左側のホームポジションのキャップ位置へ移動した時に、ブレード18がワイピング位置に上昇するように構成されており、そのキャップ位置から記録領域側(図1の右側)へ移動するときにブレード18は記録ヘッド1aのインク吐出口面と当接しながら相対移動してワイピングが行われるようになっている。さらに、キャリッジ2が記録領域側に移動してブレード18がそのインク吐出口面から外れるとブレード18は待機位置に降下し、インク吐出口面と干渉しなくなるようになっている。
【0036】
ある時間連続してインク吐出が行われないと、記録ヘッド1aのインク吐出口からインクが蒸発乾燥してしまい、その結果として吐出性能が低下し記録画像の品質低下を引き起こすため、これを防止するためにインクジェット記録装置では一般的にある時間間隔毎に記録データとは無関係に所定の場所でインク吐出を行いインク吐出ノズル内のインクを排出することで、そのノズル内のインクをフレッシュなインクにする予備吐出と呼ばれる動作を行っている。
【0037】
なお、記録ヘッド1aは熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、各インク吐出ノズル内に、熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えている。
【0038】
図2は、記録ヘッド1aのインク吐出部(記録吐出部)13の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【0039】
図2において、記録媒体8と所定の間隔(例えば約0.5〜2.0ミリ程度)をおいて対面するインク吐出口面21には所定のピッチで複数のインク吐出口22が形成され、共通液室23とインク吐出口22とを連通する各液路24の壁面に沿ってインク吐出のためのエネルギーを発生する電気熱変換体(発熱抵抗体など)25が配置されている。
【0040】
この実施形態における記録ヘッド1aは、インク吐出口22の列がキャリッジ2の主走査方向と交叉する方向に並ぶような位置関係でキャリッジ2に搭載されている。そして、記録ヘッド1aに駆動信号を入力することによって、電気熱変換体25に熱エネルギーを発生させ、この熱エネルギーによって液路24内のインクに膜沸騰を生じさせ、そのとき発生する気泡の成長・収縮によって生じる圧力によってインク滴を吐出させて記録を行う。
【0041】
図3は上述のような構成をもつインクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【0042】
図3において、41はホストコンピュータ(以下、ホストという)からプリント信号を入力するインタフェース、42は装置全体を制御するマイクロプロセッサユニット(MPU)、43はMPU42が実行する制御プログラムを格納するROM、44はプリント信号や記録ヘッド1aに供給されるプリントデータ等の各種データを保存しておくDRAMである。DRAM44には、プリントドット数や記録時間なども記憶できるようになっている。
【0043】
また、45は記録ヘッド1aに対するプリントデータの供給制御を行うゲートアレイ(G.A.)であり、インタフェース41とMPU42とDRAM44との間のデータの転送制御も行うようになっている。20は記録用紙搬送のための搬送モータ、46は記録ヘッド1aを駆動するためのヘッドドライバ、47と48はそれぞれ搬送モータ20とキャリアモータ4を駆動するためのモータドライバである。
【0044】
さらに、49はセンサ群であり、記録用紙の有無を検知するセンサ、キャリッジ2のホームポジションを検知するセンサ、記録ヘッドの温度を検出するセンサなどを含んでいる。これらのセンサの出力はMPU42に送信され、これにより、キャリッジ2の位置や記録媒体の有無や環境温度をMPU42は認識することができる。
【0045】
以上のような制御構成において、インタフェースに41にプリント信号が入力すると、ゲートアレイ45とMPU42との間でプリント信号が記録用の画像データに変換される。そして、モータドライバ47、48が駆動されるとともに、ヘッドドライバ46に送られる画像データに従って記録ヘッド1aが駆動され、記録が行われる。
【0046】
次に、以上の構成の記録装置において実行されるワイピング動作について説明する。
【0047】
図4は、そのワイピング動作に係る4つの処理の関係を示すブロック図である。
【0048】
図4によれば、ワイピング動作は、記録ヘッド1aのインク吐出口から吐出されたドット数をカウントするドットカウント処理501と、記録時のワイピングのタイミングを決定するための記録時ワイピング決定処理502と、記録用紙排紙後のワイピングのタイミングを決定するための排紙後ワイピング決定処理503と、実際に記録ヘッド1aのインク吐出口面をワイピングするワイピング処理505とから構成される。
【0049】
以下に、このワイピング動作についての処理詳細を図5〜図7に示すフローチャートを参照して説明する。
【0050】
図5はワイピング制御動作のフローチャートであり、図6は記録時のワイピング動作決定のための一定時間間隔(50m秒)割り込みの処理を示すフローチャートであり、図7は記録用紙排紙後のワイピング動作決定のためのその排紙後の割り込み処理を示すフローチャートである。
【0051】
この実施形態では、一定時間間隔毎に割り込み処理を行うことによりワイピングを実行するかどうかの判定を行い、ワイピングの条件が成立していれば、DRAM44に定義されたワイピングフラグ(WFLG)をセットし、記録ヘッドの次の走査によって記録を行う前にこのワイピングフラグ(WFLG)を参照してワイピング動作を行うかどうかの制御を行っている。また、記録用紙の排紙時にも割り込み処理を行い、ここでもワイピングを実行するかどうかの判定をし、ワイピングの条件が成立していればワイピングフラグ(WFLG)をセットし、記録用紙の排紙後にこのワイピングフラグ(WFLG)を参照してワイピング動作を行うかどうかの制御を行うようにしている。
【0052】
最初に、図5のフローチャートを参照してそのワイピング動作について説明する。
【0053】
ホストから記録開始命令を受けると、まずステップS100では記録ヘッド1aからキャップ15を離し、次のステップS105ではワイピング動作を実行する。さらに、ステップS110ではドットカウンタ(Nd)とワイピングフラグをリセットして記録ドット数のカウントをスタートさせる。ここで、ワイピングフラグは2つあり夫々をワイピングフラグA(WFLGA)、ワイピングフラグB(WFLGB)とする。ここでは、ワイピングフラグを説明の便宜上2つに分けているが、必ずしもワイピングフラグを分ける必要はない。
【0054】
次に、ステップS115では記録紙を給紙して、ステップS120ではワイピングフラッグAの値をチェックする。ここで、ワイピングフラグAがセットされていれば(WFLGA=1)、処理はステップS125に進み、ブレード18を用いてワイピング動作を実行する。このワイピング動作終了後、ステップS130ではドットカウンタ(Nd)の値をリセットし、ワイピングフラッグA(WFLGA)の値もリセットし、その後処理はステップS135に進む。これに対して、ワイピングフラグAがセットされていない場合は(WFLGA=0)、処理はステップS125とS130とをスキップしてステップS135に進む。
【0055】
そして、ステップS135では、記録ヘッド1aの1走査分の記録を実行する。この記録動作において、MPU42は記録データに基づいてインク吐出が発生するドットの数をドットカウンタ(Nd)を用いてカウントする。また、記録データとは無関係に行われる予備吐出数も加えてカウントするようにしても良い。
【0056】
次に、処理はステップS140において、記録紙1頁分の記録が終了しているかどうかを調べる。ここで、その記録が終了していると判断されれば、処理はステップS145に進み記録紙を排紙する。これに対して、まだその頁の記録が終了しておらず、記録を継続すると判断された場合は、処理はステップS120に戻る。
【0057】
記録紙1頁分の記録が終了してその用紙を排紙した後、処理はステップS150において、ワイピングフラグB(WFLGB)の値をチェックする。
【0058】
ここで、ワイピングフラグBがセットされていれば(WFLGB=1)、処理はステップS155に進み、ブレード18を用いてワイピング動作を実行する。このワイピング動作終了後、ステップS160ではドットカウンタ(Nd)の値をリセットし、同時にワイピングフラグB(WFLGB)の値もリセットする。その後、処理はステップS165に進む。
【0059】
これに対して、ワイピングフラグB(WFLGB)がセットされていない場合は(WFLGB=0)、処理はステップS155とS160をスキップして、ステップS165に進む。
【0060】
最後にステップS165では、記録データがまだあるかどうか、即ち、次の頁への記録を行うための記録データがあるかどうかを調べる。ここで、そのような記録データがあれば、処理はステップS115に戻り、新たな記録紙を給紙して記録動作を続行する。これに対して、ホストから記録データがもう送られてきていなければ、処理は終了し、キャリッジ2は記録待機位置で待機するか、或は、ホームポジションに戻り、記録ヘッド1aにキャップして次の記録開始命令が送られてくるまで待機しているようにする。
【0061】
さて、ここで図4に示した処理と図5に示したフローチャートとを比較すると、ドットカウント処理501はステップS135において、記録時ワイピング動作決定処理502はステップS120において、排紙後ワイピング動作決定処理503はステップS150において、ワイピング処理505はステップS125とS155において実行されることが分かる。
【0062】
また、ワイピングフラッグA(WFLGA)の値は記録動作実行中、即ち、ステップS135の処理が実行中に、一定時間間隔(ここでは50m秒)毎に割り込みを発生させ、図6のフローチャートに示す処理を実行することによって、更新される。なお、この実施形態では割り込みのための一定時間間隔を50m秒としたが、特にこれに限定されるものではないことは言うまでもない。また、1走査分の記録を実行する前に割り込み処理をするようにしても良い。以下、図6を参照してその割り込み処理を説明する。
【0063】
割り込みが発生すると、処理はステップS170において、記録ヘッドからインク吐出が発生するドット数をカウントしたドットカウンタ(Nd)の値を所定の閾値(Nwip1)と比較する。ここで、Nd≧Nwip1であれば、ワイピングを行う条件が成立したと判断して、処理はステップS175に進み、ワイピングフラグA(WFLGA)をセットする(WFLGA=1)。これに対して、ワイピングを行うための条件が成立しない、Nd<Nwip1の場合は、そのまま割り込み処理を終了する。
【0064】
この時の閾値(Nwip1)は記録ヘッド1aの吐出口面に付着したインクミストによってインク吐出方向が不安定となったりすることやインク吐出不良などを引き起こさず、しかもできるだけ高い値に設定することが好ましい。
【0065】
次に図7に示すフローチャートを参照して排紙時の割り込み処理について説明する。この実施形態では割り込みタイミングとして排紙時としたが、そのタイミングは排紙直前でも排紙中でも排紙直後でもよい。
【0066】
まず、この割り込みが発生すると、処理はステップS190において、ドットカウンタ(Nd)の値を所定の閾値(Nwip2)と比較する。
【0067】
ここで、ワイピングを行う条件が成立するNd≧Nwip2であれば、処理はステップS195に進み、ワイピングフラグB(WFLGB)をセットする(WFLGB=1)。これに対して、ワイピングを行うための条件が成立しないN<Nwip2の場合は、そのまま割り込み処理を終了する。
【0068】
この実施形態では、閾値(Nwip2)は上述した50m秒間隔の割り込み処理時の閾値(Nwip1)よりも小さい値とし(Nwip2<Nwip1)、Nwip1の約70%程度に設定した。
【0069】
こうすることにより、ドットカウンタ(Nd)の値がワイピング条件に達していなくても、そのカウント値が閾値(Nwip1)の70%を超えていれば、排紙後にワイピング動作が行われ、その結果としてドットカウンタ(Nd)の値がリセットされるため、連続して次頁の記録動作が発生する場合でもその記録途中でワイピング動作が実行される確率を減らすことができる。一方、閾値(Nwip2)の値を小さくしすぎると、排紙後にワイピング動作が実行される確率が高くなるためスループットが下がってしまう。このことからNwip2の値はNwip1の約60〜80%程度の値に設定するのが好ましいと考えられる。
【0070】
従って以上説明した実施形態に従えば、記録紙の排紙後に所定の条件でワイピング動作を実行させるように制御することにより、次の記録紙1頁に記録を行っている間におけるワイピング頻度を低減するようにことができる。これにより、記録紙1頁内でのワイピング動作によって発生する記録濃度変化に伴う濃度ムラを低減し、高品位な画像を記録することができるのみならず、ワイピング頻度の低減により記録のスループットが低下するこも防止できる。
【0071】
加えて、記録ヘッドの吐出口面へのインクミストなどの付着でインク吐出不良が発生する前に確実にワイピングされるためインク吐出の信頼性を良好に維持することができる。
【0072】
【他の実施形態】
前述の実施形態では、ドットカウンタ(Nd)のカウント値に従ってワイピングフラグの値を制御し、そのワイピングフラグの値に従って記録動作時と記録紙排紙後におけるワイピング動作を行うかどうかを決定したが、この実施形態では、これに加えて前回のワイピング動作からの経過時間を考慮してワイピング動作を行うかどうかを決定する例について説明する。
【0073】
図8は、そのワイピング動作に係る5つの処理の関係を示すブロック図である。なお、図8において、前述の実施形態で説明したのと同じ処理には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0074】
図8によれば、前述の実施形態に加えて、この実施形態におけるワイピング動作の実行制御には、前回のワイピング動作からの経過時間をカウントするためのタイムカウント処理504が追加されている。
【0075】
以下に、このワイピング動作についての処理詳細を図9〜図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0076】
図9はワイピング制御動作のフローチャートであり、図10は記録用紙排紙後のワイピング動作決定のためのその排紙時の割り込み処理を示すフローチャートである。
【0077】
前述の実施形態では記録紙1頁に記録中にワイピング動作を実行するかどうかの決定と、排紙後にワイピング動作を実行するかどうかの決定のいずれもドットカウンタ(Nd)の値で判断していたのに対し、この実施形態では記録紙1頁に記録中にワイピング動作を実行するかどうかの決定をドットカウンタ(Nd)によるカウント値で判断し、排紙後にワイピング動作を行うかどうかの決定をタイムカウント処理504において計測される前回のワイピング動作からの経過時間で判断するようにしている。
【0078】
次に、図9のフローチャートを参照してこの実施形態に従うワイピング制御について説明する。なお、図9に示すフローチャートにおいて、前述の実施形態において既に説明したのと同じ処理ステップには同じステップ参照番号を付しその説明を省略する。ここでは、この実施形態に特徴的な処理についてのみ説明する。
【0079】
まず、記録開始命令を受けるとステップS100〜S105の後、処理はステップS110′において、ドットカウンタ(Nd)、タイムカウンタ(T)、及び、ワイピングフラグ(WFLGA、WFLGB)の値を全てリセットして、記録ドット数のカウントとタイムカウンタによる時間計測をスタートさせる。
【0080】
記録動作中においてワイピング動作が実行されると、その終了後、処理はステップS130′において、ドットカウンタ(Nd)、タイムカウンタ(T)の値をリセットして(Nd=0、T=0)再スタートさせ、ワイピングフラッグAもリセットする(WFLGA=0)。
【0081】
さて、排紙後の処理においてワイピング動作が実行されると、その終了後、処理はステップS160′において、ドットカウンタ(Nd)、タイムカウンタ(T)の値をリセットして(Nd=0、T=0)再スタートさせ、ワイピングフラッグBもリセットする(WFLGB=0)。
【0082】
なお、記録動作実行中における割り込み処理については、前述の実施形態で図6を参照して説明したのと同様の処理を実行する。
【0083】
次に、図10に示すフローチャートを参照して排紙時の割り込み処理について説明する。
【0084】
この割り込みが発生すると、処理はステップS190′において、タイムカウンタ(T)の値を所定の閾値(Twip)と比較する。ここで、T≧Twipであればワイピングを行う条件が成立したと判断して、処理はステップS195に進み、ワイピングフラグBをセットする。これに対して、T<Twipである場合には、ワイピングを行うための条件が成立しないと判断して、そのまま割り込み処理を終了する。
【0085】
さて、この実施形態でも前述の実施形態と同様に、割り込みタイミングとしては排紙直前でも排紙中でも排紙直後でもよい。
【0086】
記録ヘッド1aのインク吐出口面に付着したインクは時間が経過するに連れて、少しずつ蒸発してその粘度が上昇してくるため、時間が経ちすぎるとブレード18のみでは十分きれいに清掃しにくい状態になる。そこで、以上説明した実施形態のように排紙後のワイピング動作の実行を前回のワイピングからの経過時間によって決定してやることにより、即ち、インク粘度の上昇があまりなく清掃し易い状態においてワイピング動作を実行するように制御することにより、良好なワイピングを維持することが可能となる。
【0087】
また、記録動作のスループットも考慮して閾値(Twip)を設定すれば、排紙のたびにワイピング動作が実行されることもなくスループットの低下を招くこともない。さらに、排紙時にワイピング動作が実行された時には、そのタイミングでドットカウンタ(Nd)の値もリセットされるので、記録紙1頁の記録中におけるワイピング動作発生の頻度を低減できるので、そのワイピングによる濃度ムラによる画像品質の劣化も抑えられる。
【0088】
【さらに他の実施形態】
図11はこの実施形態に従うワイピング動作に係る5つの処理の関係を示すブロック図である。なお、図11において、前述の実施形態で説明したのと同じ処理には同じ参照番号を付し、その説明は省略する。
【0089】
前述の実施形態では記録紙1頁に記録中にワイピング動作を実行するかどうかの決定をドットカウンタ(Nd)によるカウント値で判断し、排紙後にワイピング動作を行うかどうかの決定をタイムカウント処理504において計測される前回のワイピング動作からの経過時間で判断するようにしていたのに対して、この実施形態では、図11に示すように、排紙後にワイピング動作を行うかどうかの決定をドットカウンタ(Nd)によるカウント値とタイムカウンタ(T)で計測される前回のワイピング動作からの経過時間の両方で判断するようにしている。
【0090】
次に、図12に示すフローチャートを参照して排紙時の割り込み処理について説明する。この処理は前述の2つの実施形態を融合させた形態となっている。
【0091】
即ち、この割り込み処理が発生すると、処理はステップS190において、ドットカウンタ(Nd)の値を所定の閾値(Nwip2)と比較する。
【0092】
ここで、その比較結果が、ワイピングを行う条件が成立するNd≧Nwip2であれば、処理はステップS195に進み、ワイピングフラグをセットする(WFLG=1)。これに対して、ワイピングを行う条件が成立しないNd<Nwip2である場合には、そのワイピングフラグをセットせずに処理は次のステップS190′に進む。
【0093】
ステップS190′ではタイムカウンタ(T)の値を所定の閾値(Twip)と比較する。ここで、T≧Twipであれば、ワイピングを行う条件が成立したと判断して、処理はステップS195に進み、ワイピングフラグをセットする。これに対して、T<Twipであれば、ワイピングを行う条件が成立しないと判断して、そのまま割り込み処理を終了する。
【0094】
なお、ここではドットカウンタによる条件判断ステップであるステップS190をタイムカウンタによる条件判断ステップであるステップS190′より先に行っているが、この順序は逆であっても良い。
【0095】
このような処理を実行することで、前述したは2つの実施形態の特徴を合わせ持つ処理を実行することができる。
【0096】
なお、以上説明したいずれの実施形態においても、説明を簡単にするためにドットカウンタを1つとして説明してきたが、図1に示すような構成の記録装置、即ち、複数色のインク、複数の記録ヘッドを用いてカラー記録を行う場合には、各色毎、各記録ヘッド毎にドットカウンタを用意したり、その閾値を色毎、記録ヘッド毎に変えたりして制御してもよいことは言うまでもない。例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロの4色のインクを用いてカラー記録を行う場合、カラー画像データ各色成分に関し、記録ドット数をカウントしていき、そのうちの一つでもワイピングのための条件が成立すればワイピングを行うようにすればよい。
【0097】
また、単に記録ドット数をカウントするのではなく、カウントされたドット数に記録ヘッド温度や環境温度で重み付けしたり、或は、記録デユーティで重み付けしても良いし、記録ドット数をある値に変換してカウントしていき、それら変換された値に対して閾値を設けるようにしてもよい。
【0098】
なお、以上の実施形態において、記録ヘッドから吐出される液滴はインクであるとして説明し、さらにインクタンクに収容される液体はインクであるとして説明したが、その収容物はインクに限定されるものではない。例えば、記録画像の定着性や耐水性を高めたり、その画像品質を高めたりするために記録媒体に対して吐出される処理液のようなものがインクタンクに収容されていても良い。
【0099】
以上の実施形態は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
【0100】
その代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4723129号明細書、同第4740796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式はいわゆるオンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持されているシートや液路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて膜沸騰を越える急速な温度上昇を与える少なくとも1つの駆動信号を印加することによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に1対1で対応した液体(インク)内の気泡を形成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少なくとも1つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状をすると、即時適切に気泡の成長収縮が行われるので、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成でき、より好ましい。
【0101】
このパルス形状の駆動信号としては、米国特許第4463359号明細書、同第4345262号明細書に記載されているようなものが適している。なお、上記熱作用面の温度上昇率に関する発明の米国特許第4313124号明細書に記載されている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うことができる。
【0102】
記録ヘッドの構成としては、上述の各明細書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の他に熱作用面が屈曲する領域に配置されている構成を開示する米国特許第4558333号明細書、米国特許第4459600号明細書を用いた構成も本発明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体に対して、共通するスロットを電気熱変換体の吐出部とする構成を開示する特開昭59−123670号公報や熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応させる構成を開示する特開昭59−138461号公報に基づいた構成としても良い。
【0103】
さらに、記録装置が記録できる最大記録媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているような複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満たす構成や、一体的に形成された1個の記録ヘッドとしての構成のいずれでもよい。
【0104】
加えて、上記の実施形態で説明した記録ヘッド自体に一体的にインクタンクが設けられたカートリッジタイプの記録ヘッドのみならず、装置本体に装着されることで、装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッドを用いてもよい。
【0105】
また、以上説明した記録装置の構成に、記録ヘッドに対する回復手段、予備的な手段等を付加することは記録動作を一層安定にできるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれば、記録ヘッドに対してのキャッピング手段、クリーニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体あるいはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせによる予備加熱手段などがある。また、記録とは別の吐出を行う予備吐出モードを備えることも安定した記録を行うために有効である。
【0106】
さらに、記録装置の記録モードとしては黒色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってでも良いが、異なる色の複色カラー、または混色によるフルカラーの少なくとも1つを備えた装置とすることもできる。
【0107】
以上説明した実施の形態においては、インクが液体であることを前提として説明しているが、室温やそれ以下で固化するインクであっても、室温で軟化もしくは液化するものを用いても良く、あるいはインクジェット方式ではインク自体を30°C以上70°C以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的であるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすものであればよい。
【0108】
加えて、積極的に熱エネルギーによる昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエネルギーとして使用せしめることで積極的に防止するため、またはインクの蒸発を防止するため、放置状態で固化し加熱によって液化するインクを用いても良い。いずれにしても熱エネルギーの記録信号に応じた付与によってインクが液化し、液状インクが吐出されるものや、記録媒体に到達する時点では既に固化し始めるもの等のような、熱エネルギーの付与によって初めて液化する性質のインクを使用する場合も本発明は適用可能である。このような場合インクは、特開昭54−56847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体に対して対向するような形態としてもよい。本発明においては、上述した各インクに対して最も有効なものは、上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0109】
さらに加えて、本発明に係る記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力端末として一体または別体に設けられるものの他、リーダ等と組み合わせた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を取るものであっても良い。
【0110】
なお、本発明は、複数の機器(例えばホストコンピュータ,インタフェース機器,リーダ,プリンタなど)から構成されるシステムに適用しても、一つの機器からなる装置(例えば、複写機,ファクシミリ装置など)に適用してもよい。
【0111】
また、本発明の目的は、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
【0112】
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施形態の機能を実現することになり、そのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0113】
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピディスク,ハードディスク,光ディスク,光磁気ディスク,CD−ROM,CD−R,磁気テープ,不揮発性のメモリカード,ROMなどを用いることができる。
【0114】
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0115】
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
【0116】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、記録媒体へインクを吐出して記録を行う記録ヘッドのインク吐出口面をワイピング手段によってクリーニングする際に、前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の吐出記録ドットをカウントし、そのカウント結果に基づいて、記録ヘッドによる記録媒体1頁への記録中にワイピング手段により記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定し、さらに、記録ヘッドによる記録された記録媒体を排出手段を用いて排出する時に、そのカウント結果に基づいて、ワイピング手段により記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定するので、記録媒体1頁に記録中に発生するワイピング動作の頻度が低減するので、そのワイピング動作に伴う濃度変化により記録画像に現われる濃度ムラを低減することができるという効果がある。
【0117】
さらに、ワイピング動作の頻度の低減により、ワイピング動作に伴うスループットの低下を防止することができる。
【0118】
さらにまた、適切なタイミングでなされるワイピング動作により記録ヘッドからのインク吐出の信頼性を良好に維持することができる。
【0119】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置の概略を示す部分破断斜視図である。
【図2】記録ヘッド1aのインク吐出部(記録吐出部)13の構造を模式的に示す部分斜視図である。
【図3】インクジェット記録装置の制御構成を示すブロック図である。
【図4】ワイピング動作に係る4つの処理の関係を示すブロック図である。
【図5】ワイピング制御動作のフローチャートである。
【図6】記録時のワイピング動作決定のための一定時間間隔(50m秒)割り込みの処理を示すフローチャートである。
【図7】記録用紙排紙後のワイピング動作決定のためのその排紙後の割り込み処理を示すフローチャートである。
【図8】他の実施形態に従うワイピング動作に係る5つの処理の関係を示すブロック図である。
【図9】他の実施形態に従うワイピング制御動作のフローチャートである。
【図10】他の実施形態に従う排紙後の割り込み処理を示すフローチャートである。
【図11】さらに別の実施形態に従うワイピング動作に係る5つの処理の関係を示すブロック図である。
【図12】さらに別の実施形態に従う割り込みの処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 ヘッドカートリッジ
1A Yヘッドカートリッジ
1B Mヘッドカートリッジ
1C Cヘッドカートリッジ
1D Kヘッドカートリッジ
1a 記録ヘッド
2 キャリッジ
3 ガイドシャフト
4 キャリアモータ
5 モータプーリ
6 従動プーリ
7 タイミングベルト
8 記録媒体
9、10、11、12 搬送ローラ対
13 インク吐出部(記録吐出部)
14 回復系ユニット
15 キャップ
16 ポンプ
17 ブレードホルダ
18 ブレード
20 搬送モータ
21 インク吐出口面
22 インク吐出口
23 共通液室
24 液路
25 電気熱変換体
41 インタフェース
42 MPU
43 ROM
44 DRAM
45 ゲートアレイ(G.A.)
46 ヘッドドライバ
47、48 モータドライバ
49 センサ群
501 ドットカウント処理
502 記録時ワイピング決定処理
503 排紙後ワイピング決定処理
504 タイムカウント処理
505 ワイピング処理
Claims (10)
- 記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体を前記記録装置外に排出する排出手段と、
前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするためのワイピング手段と、
前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定手段と、
前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント手段と、
前記カウント手段によるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定手段と、
前記カウント手段によるカウント数および前記測定手段により測定された経過時間に基づいて、前記記録ヘッドにより記録された記録媒体を前記排出手段によって排出する直前、排出している間、あるいは排出した後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記カウント手段は、前記記録ヘッドによる記録動作中にカウント動作を実行することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
- 記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体を前記記録装置外に排出する排出手段と、
前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするためのワイピング手段と、
前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定手段と、
前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント手段と、
第1の閾値と前記カウント手段によるカウント数とを比較することにより得られた比較結果に基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定手段と、
前記第1の閾値よりも小さな値を示す第2の閾値と前記カウント手段によるカウント数とを比較することにより得られた比較結果および前記測定手段により測定された経過時間と第3の閾値とを比較することにより得られた比較結果に基づいて、前記記録ヘッドにより記録された記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に、前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定手段とを有し、
前記第1の決定手段は、前記カウント数が前記第1の閾値以上である場合にクリーニング動作を行い、前記カウント数が前記第1の閾値未満である場合にクリーニング動作を行わないことを決定し、
前記第2の決定手段は、前記カウント数が前記第2の閾値以上である場合あるいは前記経過時間が前記第3の閾値以上である場合にクリーニング動作を行い、前記経過時間が前記第3の閾値未満であって且つ前記カウント数が前記第2の閾値未満である場合にクリーニング動作を行わないことを決定することを特徴とするインクジェット記録装置。 - 前記第2の閾値は、前記第1の閾値の値の60〜80%の値であることを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録装置。
- 前記第1決定手段は、記録動作直前または記録動作中に所定の時間間隔で割り込み処理により前記第1の閾値と前記カウント数とを比較する第1割り込み手段を有し、
前記第2決定手段は、前記排出手段による記録媒体の排出直前、排出中、あるいは排出後に割り込み処理により前記第2の閾値と前記カウント手段によるカウント数とを比較する第2割り込み手段を有することを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。 - 前記第2決定手段は、前記排出手段による記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に割り込み処理により前記第3の閾値と前記経過時間とを比較する第3割り込み手段をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のインクジェット記録装置。
- 記録ヘッドから記録媒体へインクを吐出して記録を行うインクジェット記録装置であって、
前記記録媒体を前記記録装置外に排出する排出手段と、
前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするためのワイピング手段と、
前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント手段と、
前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定手段と、
前記カウント手段によるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定手段と、
前記測定手段により測定された経過時間に基づいて、前記排出手段による記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定手段と、
を有することを特徴とするインクジェット記録装置。 - 記録媒体へインクを吐出して記録を行う記録ヘッドのインク吐出口面を記録装置のワイピング手段によってクリーニングする際のクリーニング制御方法であって、
前記記録媒体を前記記録装置外へ排出する排出工程と、
前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定工程と、
前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント工程と、
前記カウント工程におけるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定工程と、
前記カウント工程におけるカウント数および前記測定工程において測定した経過時間に基づいて、前記記録ヘッドにより記録された記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定工程と、
を有することを特徴とするクリーニング制御方法。 - 記録媒体へインクを吐出して記録を行う記録ヘッドのインク吐出口面を記録装置のワイピング手段によってクリーニングする際のクリーニング制御方法であって、
前記記録媒体を前記記録装置外に排出する排出工程と、
前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント工程と、
前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定工程と、
第1の閾値と前記カウント工程によるカウント数とを比較することにより得られた比較結果に基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定工程と、
前記第1の閾値よりも小さな値を示す第2の閾値と前記カウント工程によるカウント数とを比較することにより得られた比較結果および前記測定工程において測定した経過時間と第3の閾値とを比較することにより得られた比較結果に基づいて、前記記録ヘッドにより記録された記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定工程とを有し、
前記第1の決定工程は、前記カウント数が前記第1の閾値以上である場合にクリーニング動作を行い、前記カウント数が前記第1の閾値未満である場合にクリーニング動作を行わないことを決定し、
前記第2の決定工程は、前記カウント数が前記第2の閾値以上である場合あるいは前記経過時間が前記第3の閾値以上である場合にクリーニング動作を行い、前記経過時間が前記第3の閾値未満であって且つ前記カウント数が前記第2の閾値未満である場合にクリーニング動作を行わないことを決定することを特徴とするクリーニング制御方法。 - 記録媒体へインクを吐出して記録を行う記録ヘッドのインク吐出口面を記録装置のワイピング手段によってクリーニングする際のクリーニング制御方法であって、
前記記録媒体を前記記録装置外へ排出する排出工程と、
前記記録ヘッドから吐出されるインク液滴の数をカウントするカウント工程と、
前記ワイピング手段による前回のクリーニング動作からの経過時間を測定する測定工程と、
前記カウント工程におけるカウント数のみに基づいて、前記記録ヘッドによる記録媒体1頁の記録中に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第1決定工程と、
前記測定工程において測定した経過時間に基づいて、前記記録媒体の排出直前、排出中あるいは排出後に前記ワイピング手段により前記記録ヘッドのインク吐出口面をクリーニングするかどうかを決定する第2決定工程と、
を有することを特徴とするクリーニング制御方法。
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